(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両の衝突防止のためのレーダ装置においては、高速道路などでの高速走行時には、走行方向に長い検出距離が必要とされる一方で、蛇行した道路やカーブなどでの低速走行時には、走行方向の検出距離は短くてもよいが、車幅方向に広い検出領域が必要とされる。上述した特許文献1〜3は、このような事情を考慮して、近距離検出領域と遠距離検出領域とを形成するものであるが、特許文献1では2つの投射源(アンテナ)が必要なため構成が複雑となる。特許文献2では、投射源(レーザ)は1つで済むが、ビームをスキャンして各検出領域を形成するので、そのための制御回路が必要となり、やはり構成が複雑となる。
【0008】
一方、特許文献3によれば、曲率の異なるレンズによって光学的に遠距離検出領域と近距離検出領域が形成されるので、特許文献1、2のような不具合は解消される。しかしながら、特許文献3では、遠距離検出領域におけるレーザ光の上下方向の光強度分布は、レーザ光の上側部分と下側部分とで同じである。遠距離検出領域では、レーザ光の上側部分は、遠方まで投光されて遠くの物体を検出するのに寄与するが、レーザ光の下側部分は、地面に向かうため遠方まで投光されず、遠くの物体を検出するのに寄与しない。したがって、レーザダイオードにおいては、遠距離検出領域のレーザ光の下側部分の光強度に相当する電気エネルギーが無駄に消費されることになる。
【0009】
本発明の課題は、発光素子の消費電力を抑制しつつ、遠距離検出領域と近距離検出領域を形成することが可能な車両用光学式レーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る車両用光学式レーダ装置は、車両の前方へ光を投光する投光部と、車両の前方にある物体で反射した前記光を受光する受光部とを備えている。投光部は、光を出射する発光素子と、発光素子から出射した光を、車両の車幅方向および上下方向に拡散させて、車両の前方へ投光する投光レンズとを含む。投光レンズは、投光する光の下側領域における車幅方向の広がり角が、上側領域における車幅方向の広がり角よりも大きな角度となるように、当該光を拡散させる。
【0011】
このような構成によると、投光レンズから投光される光によって、広がり角が小さく光強度が大きい上側検出領域と、広がり角が大きく光強度が小さい下側検出領域とが形成される。このため、上側検出領域によって、遠くにある物体を検出することができるとともに、下側検出領域によって、近くにある物体を検出することができる。また、遠方の物体の検出に必要な上側検出領域に光を集中させることで、光全体のエネルギーを低減して、発光素子の消費電力を少なくすることができる。
【0012】
本発明では、投光レンズは、車幅方向に配列された複数のシリンドリカルレンズを備えていてもよい。この場合、シリンドリカルレンズのそれぞれは、下側の曲率が上側の曲率よりも大きくなるように形成される。
【0013】
本発明では、シリンドリカルレンズのそれぞれは、第1曲率を有する上側シリンドリカルレンズと、第1曲率より大きい第2曲率を有する下側シリンドリカルレンズとから構成されていてもよい。
【0014】
本発明では、シリンドリカルレンズのそれぞれは、上側から下側に向かうにつれて曲率が漸増する形状に形成されていてもよい。
【0015】
本発明では、投光レンズは、単一のシリンドリカルレンズを備えていてもよい。この場合、シリンドリカルレンズは、下側の曲率が上側の曲率よりも大きくなるように形成される。
【0016】
本発明では、単一のシリンドリカルレンズは、第1曲率を有する上側シリンドリカルレンズと、第1曲率より大きい第2曲率を有する下側シリンドリカルレンズとから構成されていてもよい。
【0017】
本発明では、単一のシリンドリカルレンズは、上側から下側に向かうにつれて曲率が漸増する形状に形成されていてもよい。
【0018】
本発明では、発光素子から出射した光を平行光に変換するコリメートレンズが、投光レンズと一体に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、発光素子の消費電力を抑制しつつ、遠距離検出領域と近距離検出領域を形成することが可能な車両用光学式レーダ装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る車両用光学式レーダ装置(以下、単に「光学式レーダ装置」という。)の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0022】
まず、光学式レーダ装置の全体構成を、
図1を参照しながら説明する。なお、
図1〜
図3は、後述する各実施形態に共通のものである。
【0023】
図1に示した光学式レーダ装置100は、車両に搭載される装置であって、たとえば
図2に示すように、車両200のフロントガラス201の内側上部に設けられている。なお、
図2において、Xは車幅方向を表しており、Yは上下方向を表している(
図3以下も同様)。光学式レーダ装置100は、車両200の前方に存在する先行車両、歩行者、障害物などの物体を検出するとともに、車両200から当該物体までの距離を計測する。光学式レーダ装置100には、投光部1、受光部2、信号処理部3、物体検出部4、制御部5、および出力部6が備わっている。
【0024】
投光部1は、投光レンズ12と、発光素子13と、駆動回路14とを有している。投光レンズ12は、発光素子13から出射した光を車両200の前方へ投光する。本実施形態では、発光素子13はレーザダイオードから構成されている。駆動回路14は、発光素子13に駆動電流を供給して当該素子を発光させる。なお、
図1では図示を省略しているが、投光レンズ12と発光素子13との間には、
図8に示すように、コリメートレンズ11が配置されている。
【0025】
受光部2は、受光レンズ21と、受光素子22とを有している。受光レンズ21は、投光レンズ12から投光されたレーザ光が物体で反射した反射光を集光する。受光素子22は、本実施形態ではフォトダイオードから構成されており、受光レンズ21で集光された光を受光して電気信号に変換する。
【0026】
信号処理部3は、受光素子22から出力される電気信号を増幅する増幅回路や、増幅回路の出力信号をサンプリングして、デジタル信号に変換するA/D変換回路などから構成されている。信号処理部3の出力は、物体検出部4に与えられる。
【0027】
物体検出部4は、信号処理部3の出力信号に基づいて、車両200の前方に存在する先行車両、歩行者、障害物などの物体を検出するとともに、車両200から当該物体までの距離を算出する。これらの具体的な方法についてはよく知られており、また本発明の特徴とするところでもないので、詳細な説明を省略する。物体検出部4の出力は、制御部5に与えられる。
【0028】
制御部5は、マイクロコンピュータなどから構成されており、投光部1、受光部2、および信号処理部3に対して、所定の制御を行う。また、制御部5は、物体検出部4の出力信号に基づいて、先行車両や歩行者あるいは障害物との異常接近の有無を判定し、その判定結果を出力部6へ送る。
【0029】
出力部6は、制御部5から受け取った判定結果を、車両に搭載されている電子制御装置(図示省略)へ出力する。電子制御装置は、当該判定結果に基づいて、運転者に異常を報知する必要がある場合は、車内のディスプレイに警報を表示したり、スピーカから音声による警報を出力したりする。また、電子制御装置は、衝突を防止するために、自動的にブレーキを作動させるなどの制御も行う。
【0030】
図3は、光学式レーダ装置100の外観の一例を示している。光学式レーダ装置100は、合成樹脂からなるハウジング40を備えており、このハウジング40内に投光レンズ12、受光レンズ21、および雨滴センサ15が収納されている。ハウジング40は、カバー40aと、このカバー40aが嵌合するケース40bとから構成される。カバー40aには、3つの開口部41〜43が形成されている。開口部41には投光レンズ12が臨んでおり、開口部42には受光レンズ21が臨んでおり、開口部43には雨滴センサ15が臨んでいる。雨滴センサ15は、たとえば赤外光を投光し、フロントガラスで反射した赤外光の光量に基づいて雨滴の量を検出するものである。本発明では、雨滴センサ15は必須のものではないので、
図1では図示を省略してある。
図1における信号処理部3、物体検出部4、制御部5、および出力部6の各ブロックは、ケース40bの内部に配置された回路基板(図示省略)に設けられている。
【0031】
次に、本発明の特徴である投光レンズ12について詳述する。まず、第1実施形態による投光レンズ12の構造に関して、
図4および
図5を参照しながら説明する。
図4は、第1実施形態の投光レンズ12の外観を示している。
図5において、(a)は投光レンズ12の平面図、(b)は同正面図、(c)は同底面図、(d)は同左側面図をそれぞれ示している。
【0032】
図4に示すように、投光レンズ12は、基部120と、レンズ部123とから構成される。基部120は、光の屈折が生じない直方体の形状に形成されている。レンズ部123は、上側レンズ部121と、下側レンズ部122とから構成される。上側レンズ部121は、基部120の上側に基部120と一体に形成されており、複数の上側シリンドリカルレンズ12aが車幅方向Xに配列されたレンズアレイからなる。上側シリンドリカルレンズ12aのそれぞれは、凸レンズで構成されている。下側レンズ部122は、基部120の下側に基部120と一体に形成されており、複数の下側シリンドリカルレンズ12bが車幅方向Xに配列されたレンズアレイからなる。上側シリンドリカルレンズ12aのそれぞれと、下側シリンドリカルレンズ12bのそれぞれとは対をなしており、上下方向Yに連続している(
図5(b)、(d)参照)。また、上側シリンドリカルレンズ12aの曲率(第1曲率)に比べて、下側シリンドリカルレンズ12bの曲率(第2曲率)が大きくなっている(
図4、
図5(c)参照)。
【0033】
図6は、
図4の投光レンズ12から1個のシリンドリカルレンズ12a、12bを切り出した単体レンズ12Pと、この単体レンズ12Pによるレーザ光の拡散状態を模式的に示した図である。単体レンズ12Pの上側シリンドリカルレンズ12aの曲率は小さいため、当該レンズから投光されるレーザ光の広がりの程度は小さい。一方、単体レンズ12Pの下側シリンドリカルレンズ12bの曲率は大きいため、当該レンズから投光されるレーザ光の広がりの程度は大きい。その結果、
図6(a)に示すように、単体レンズ12Pの上半分から投光されるレーザ光によって、車幅方向Xに幅が狭い上側投光領域Raが形成され、単体レンズ12Pの下半分から投光されるレーザ光によって、車幅方向Xに幅が広い下側投光領域Rbが形成される。なお、単体レンズ12Pから投光されるレーザ光は、
図6(b)に示すように、上下方向Yにも拡散する。
【0034】
図7は、投光レンズ12のレンズアレイ全体から投光されるレーザ光の拡散状態を模式的に示した図である。上述したように、
図6の単体レンズ12Pにより、幅狭の上側投光領域Raと幅広の下側投光領域Rbとが形成される結果、
図7に示すように、投光レンズ12から投光されるレーザ光によって、車幅方向Xに幅が狭い上側投光領域R1、および車幅方向Xに幅が広い下側投光領域R2が形成される。
【0035】
図7において、投光レンズ12の後方には、コリメートレンズ11が配置されている。このコリメートレンズ11は、
図8に示すように、発光素子13(レーザダイオード)と投光レンズ12との間に介在しており、発光素子13から出射したレーザ光を平行光に変換して、投光レンズ12へ入射させる。投光レンズ12に入射した平行光は、上側シリンドリカルレンズ12aおよび下側シリンドリカルレンズ12bにおいて、車幅方向Xと上下方向Yに拡散され、
図7に示したような上側投光領域R1および下側投光領域R2を形成する。
【0036】
図9は、車両200に搭載された光学式レーダ装置100から投光されるレーザ光によって、車両前方に形成される検出領域を示す模式図である。αは、投光されたレーザ光の上側領域における車幅方向Xの広がり角を表しており、βは、投光されたレーザ光の下側領域における車幅方向Xの広がり角を表している。
図9からわかるように、下側領域の広がり角βは、上側領域の広がり角αよりも大きい(β>α)。広がり角αの上側投光領域R1は、上下方向Yにおけるa位置とb位置との間に形成される検出領域であり、広がり角βの下側投光領域R2は、上下方向Yにおけるb位置とc位置との間に形成される検出領域である。以下では、R1を上側検出領域、R2を下側検出領域と呼ぶ。なお、
図9においてハッチングで示した部分は、後述の
図11における破線Wの位置での各検出領域R1、R2の断面を表している。
【0037】
発光素子13から出射するレーザ光は、上側と下側で光強度が一様であるが、投光レンズ10を通過したレーザ光は、上側と下側で光強度が一様でなくなる。
図10は、
図9のハッチング部分におけるレーザ光の強度分布を正規化して示したものである。横軸は、
図9の上下方向Yのa、b、cの各位置を表しており、縦軸は、レーザ光の光強度を表している。上側検出領域R1では、広がり角αが小さくレーザ光の拡散が少ないことから、単位面積あたりの光エネルギーが大きくなって、光強度は大きくなる。一方、下側検出領域R2では、広がり角βが大きくレーザ光の拡散が多いことから、単位面積あたりの光エネルギーが小さくなって、光強度は小さくなる。
【0038】
このように、本実施形態では、レーザ光の上下方向Yの光強度分布は、上側検出領域R1と下側検出領域R2とで異なっている。そして、レーザ光は、光強度が大きいほど遠方まで到達する。したがって、
図11に示すように、上側検出領域R1は、広がり角αが小さく光強度の大きいレーザ光が、遠方まで達する遠距離検出領域となり、下側検出領域R2は、広がり角βが大きく光強度の小さいレーザ光が、遠方まで達しない近距離検出領域となる。
【0039】
図11において、車両200の前方を先行車両300が走行している場合、車両200に搭載されている光学式レーダ装置100は、上側検出領域R1(遠距離検出領域)において先行車両300を検出することができる。その一方、車両200に近い斜め前方位置にある物体M(歩行者や障害物)は、広がり角αの小さい上側検出領域R1では検出することができない。しかるに、この物体Mは、広がり角βの大きい下側検出領域R2(近距離検出領域)において検出することができる。
【0040】
以上のように、本実施形態によれば、シリンドリカルレンズ12a、12bがそれぞれ車幅方向Xに複数配列された投光レンズ12を用い、下側シリンドリカルレンズ12bの曲率を、上側シリンドリカルレンズ12aの曲率よりも大きくしている。このため、投光レンズ12から投光されるレーザ光によって、広がり角αが小さい上側検出領域R1(遠距離検出領域)と、広がり角βが大きい下側検出領域R2(近距離検出領域)とが形成されるので、遠くにある物体と、近くにある物体のいずれをも検出することができる。また、これらの検出領域R1、R2は、投光レンズ12によって光学的に形成されるため、特許文献2のようにレーザ光をスキャンする必要がない。
【0041】
しかも、本実施形態によれば、前述のように、レーザ光の上下方向Yの光強度分布が、上側検出領域R1と下側検出領域R2とで異なっており、下側検出領域R2の光強度が、上側検出領域R1の光強度よりも小さくなっている。特許文献2や特許文献3では、上下方向に一様な光強度分布を持ったレーザ光が投光されて遠距離検出領域が形成されるため、遠方の物体の検出に寄与しない下側領域の光エネルギーが無駄となる。しかるに、本実施形態では、上側検出領域R1においてのみレーザ光の強度が大きくなるので、下側検出領域R2における光エネルギーの無駄を解消できる。つまり、遠方の物体の検出に必要な上側検出領域R1に光を集中させることで、レーザ光全体の光エネルギーを低減し、レーザダイオード(発光素子13)の消費電力を少なくすることができる。
【0042】
次に、投光レンズ12の第2実施形態について、
図12〜
図15を参照しながら説明する。まず、本実施形態による投光レンズ12の構造を、
図12および
図13を参照しながら説明する。
図12は、第2実施形態の投光レンズ12の外観を示している。
図13において、(a)は投光レンズ12の平面図、(b)は同正面図、(c)は同底面図、(d)は同左側面図をそれぞれ示している。
【0043】
図12に示すように、投光レンズ12は、基部120と、レンズ部123とから構成される。基部120は、光の屈折が生じない直方体の形状に形成されている。レンズ部123は、基部120と一体に形成されており、複数のシリンドリカルレンズ12cが車幅方向Xに配列されたレンズアレイからなる。各シリンドリカルレンズ12cは、凸レンズで構成されている。各シリンドリカルレンズ12cは、上側から下側に向かうにつれて曲率が漸増する形状に形成されており、レンズ上端において曲率が最も小さく、レンズ下端において曲率が最も大きくなっている(
図12、
図13(a)(c)参照)。
【0044】
図14は、
図12の投光レンズ12から1個のシリンドリカルレンズ12cを切り出した単体レンズ12Qと、この単体レンズ12Qによるレーザ光の拡散状態を模式的に示した図である。シリンドリカルレンズ12cの上端における曲率は小さいため、当該レンズから投光されるレーザ光の広がりの程度は小さい。一方、シリンドリカルレンズ12cの下端における曲率は大きいため、当該レンズから投光されるレーザ光の広がりの程度は大きい。そして、シリンドリカルレンズ12cの上端から下端までの間は、曲率が漸増するので、レーザ光の広がりの程度も漸増する。その結果、
図14(a)に示すように、単体レンズ12Qの上半分から投光されるレーザ光によって、車幅方向Xに幅が狭い上側投光領域Rcが形成され、単体レンズ12Qの下半分から投光されるレーザ光によって、車幅方向Xに幅が広い下側投光領域Rdが形成される。なお、単体レンズ12Qから投光されるレーザ光は、
図14(b)に示すように、上下方向Yにも拡散する。
【0045】
図15は、投光レンズ12のレンズアレイ全体から投光されるレーザ光の拡散状態を模式的に示した図である。上述したように、
図14の単体レンズ12Qにより幅狭の上側投光領域Rcと幅広の下側投光領域Rdとが形成される結果、
図15に示すように、投光レンズ12から投光されるレーザ光によって、車幅方向Xに幅が狭い上側検出領域R3、および車幅方向Xに幅が広い下側検出領域R4が形成される。
図15に示されているコリメートレンズ11は、
図7のコリメートレンズ11と同じもので、発光素子13(レーザダイオード)と投光レンズ12との間に介在している。
【0046】
以上のような第2実施形態の投光レンズ12を用いた場合も、車両の前方に、広がり角が小さく光強度が大きい上側検出領域R3(遠距離検出領域)と、広がり角が大きく光強度が小さい下側検出領域R4(近距離検出領域)とを形成することができる。このため、第1実施形態と同様に、遠距離にある物体と近距離にある物体のいずれをも検出することができる。
【0047】
また、第2実施形態においても、レーザ光の上下方向Yの光強度分布が、上側検出領域R3と下側検出領域R4とで異なり、下側検出領域R4の光強度は、上側検出領域R3の光強度よりも小さくなる。このため、第1実施形態と同様に、遠方の物体の検出に寄与しない下側検出領域R4における光エネルギーの無駄を解消し、レーザ光全体の光エネルギーを低減して発光素子13の消費電力を少なくすることができる。
【0048】
次に、投光レンズのさらに他の実施形態につき、
図16〜
図21を参照しながら説明する。
【0049】
図16は、第3実施形態による投光レンズ12の外観図である。この投光レンズ12は、
図4に示した投光レンズ12の変形例であって、コリメートレンズ12fを一体に形成したものである。コリメートレンズ12fは、レンズ部123と反対側で基部120と一体に形成されており、レーザ光を平行光にしてレンズ部123へ入射させる。その他の部分については、
図4の投光レンズ12と同じであるので、重複説明は省略する。本実施形態によると、
図7のようにコリメートレンズ11を投光レンズ12と別に設ける場合に比べて、レンズ部123に対するコリメートレンズ12fの位置精度が向上するとともに、部品点数が少なくなって組立工数を削減することができる。
【0050】
図17は、第4実施形態による投光レンズ12の外観図である。この投光レンズ12は、
図12に示した投光レンズ12の変形例であって、
図16と同様のコリメートレンズ12fを一体に形成したものである。その他の部分については、
図12の投光レンズ12と同じであるので、重複説明は省略する。本実施形態においても、
図15のようにコリメートレンズ11を投光レンズ12と別に設ける場合に比べて、レンズ部123に対するコリメートレンズ12fの位置精度が向上するとともに、部品点数が少なくなって組立工数を削減することができる。
【0051】
図18は、第5実施形態による投光レンズ12の外観図である。この投光レンズ12は、
図4に示した投光レンズ12の変形例であって、レンズ部123を2個の単一のシリンドリカルレンズ12A、12Bで構成したものである。12Aは、上側レンズ部を構成する上側シリンドリカルレンズであり、12Bは、下側レンズ部を構成する下側シリンドリカルレンズである。上側シリンドリカルレンズ12Aの曲率(第1曲率)に比べて、下側シリンドリカルレンズ12Bの曲率(第2曲率)は大きくなっている。本実施形態によると、
図4のようなレンズアレイを有する投光レンズ12に比べて、レンズの加工が容易となる。
【0052】
図19は、第6実施形態による投光レンズ12の外観図である。この投光レンズ12は、
図12に示した投光レンズ12の変形例であって、レンズ部123を1個の単一のシリンドリカルレンズ12Cで構成したものである。シリンドリカルレンズ12Cは、上側から下側に向かうにつれて曲率が漸増する形状に形成されている。本実施形態の場合も、
図12のようなレンズアレイを有する投光レンズ12に比べて、レンズの加工が容易となる。
【0053】
図20は、第7実施形態による投光レンズ32の外観図である。この投光レンズ32は、
図4の投光レンズ12のシリンドリカルレンズを凹レンズとしたものである。詳しくは、投光レンズ32は、基部320と、レンズ部323とから構成される。基部320は、光の屈折が生じない直方体の形状に形成されている。レンズ部323は、上側レンズ部321と、下側レンズ部322とから構成される。上側レンズ部321は、基部320の上側に基部320と一体に形成されており、複数の上側シリンドリカルレンズ32aが車幅方向Xに配列されたレンズアレイからなる。上側シリンドリカルレンズ32aのそれぞれは、凹レンズで構成されている。下側レンズ部322は、基部320の下側に基部320と一体に形成されており、複数の下側シリンドリカルレンズ32bが車幅方向Xに配列されたレンズアレイからなる。上側シリンドリカルレンズ32aのそれぞれと、下側シリンドリカルレンズ32bのそれぞれとは対をなしており、上下方向Yに連続している。また、上側シリンドリカルレンズ32aの曲率(第1曲率)に比べて、下側シリンドリカルレンズ32bの曲率(第2曲率)が大きくなっている。
【0054】
このように、シリンドリカルレンズ32a、32bを凹レンズで構成した場合も、曲率の小さい上側シリンドリカルレンズ32aではレーザ光の広がり角が小さく、曲率の大きい下側シリンドリカルレンズ32bではレーザ光の広がり角が大きくなる。したがって、投光レンズ32は、
図4の投光レンズ12と同様の機能を有している。
【0055】
図21は、第8実施形態による投光レンズ32の外観図である。この投光レンズ32は、
図12の投光レンズ12のシリンドリカルレンズを凹レンズとしたものである。詳しくは、投光レンズ32は、基部320と、レンズ部323とから構成される。基部320は、光の屈折が生じない直方体の形状に形成されている。レンズ部323は、複数のシリンドリカルレンズ32cが車幅方向Xに配列されたレンズアレイからなる。シリンドリカルレンズ32cのそれぞれは、凹レンズで構成されており、上側から下側に向かうにつれて曲率が漸増する形状に形成されている。
【0056】
このように、シリンドリカルレンズ32cを凹レンズで構成した場合も、曲率の小さい上側ではレーザ光の広がり角が小さく、曲率の大きい下側ではレーザ光の広がり角が大きくなる。したがって、投光レンズ32は、
図12の投光レンズ12と同様の機能を有している。
【0057】
本発明では、以上述べた実施形態以外にも、種々の実施形態を採用することができる。たとえば、
図18〜
図21の投光レンズ12、32に、
図16や
図17に示されているコリメートレンズ12fを一体に形成してもよい。また、
図18のシリンドリカルレンズ12A、12Bや、
図19のシリンドリカルレンズ12Cを、凹レンズとしてもよい。
【0058】
図4や
図16においては、上側シリンドリカルレンズ12aと、下側シリンドリカルレンズ12bを共に凸レンズとしたが、上側シリンドリカルレンズ12aを凸レンズとし、下側シリンドリカルレンズ12bを凹レンズとしてもよい。逆に、上側シリンドリカルレンズ12aを凹レンズとし、下側シリンドリカルレンズ12bを凸レンズとしてもよい。同様に、
図18において、上側シリンドリカルレンズ12Aを凸レンズとし、下側シリンドリカルレンズ12Bを凹レンズとしてもよい。逆に、上側シリンドリカルレンズ12Aを凹レンズとし、下側シリンドリカルレンズ12Bを凸レンズとしてもよい。
【0059】
図12や
図17において、シリンドリカルレンズ12cを、上半分が凸レンズで下半分が凹レンズとなるような形状、あるいは、上半分が凹レンズで下半分が凸レンズとなるような形状にしてもよい。同様に、
図19において、シリンドリカルレンズ12Cを、上半分が凸レンズで下半分が凹レンズとなるような形状、あるいは、上半分が凹レンズで下半分が凸レンズとなるような形状にしてもよい。