(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記二官能性エポキシ樹脂が、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ジグリシジルジヒドロキシナフタレン及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の予備含浸複合材料。
前記二官能性エポキシ樹脂が、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ジグリシジルジヒドロキシナフタレン及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の予備含浸複合材料を作成するための方法。
【背景技術】
【0002】
複合材料は典型的に、2種の主な構成成分として、樹脂マトリクスと強化繊維から構成される。複合材料は、複合部品の物理的限界及び特性が非常に重要な航空宇宙産業の分野等の要求レベルの高い環境において機能を発揮することを求められることが多い。
【0003】
予備含浸複合材料(プリプレグ)は、複合部品の製造の際に広く使用される。プリプレグは、典型的に未硬化樹脂と繊維強化材を含む結合体であり、最終的な複合部品に成形及び硬化するのが容易な形態をしている。繊維強化材に樹脂を予備含浸させることにより、製造者は、繊維ネットワーク中に含浸される樹脂の量及び位置を注意深く制御することができ、樹脂を、必要とされるように確実にネットワーク中に分配させることができる。複合部品中の繊維と樹脂の相対的な量及び繊維ネットワーク内の樹脂の分布は、部品の構造特性に影響することがよく知られている。プリプレグは、耐荷重又は一次構造部品、並びに特に、翼、胴体、隔壁及び操舵面等の航空宇宙機用の一次構造部品を製造する際に使用するための好ましい材料である。これらの部品には、十分な強度、損傷許容性及びこのような部品に日常的に確立されている他の要件が備わっていることが重要である。
【0004】
通常、航空宇宙機用のプリプレグに使用される繊維強化材は、多方向織布又は互いに平行に延びる繊維を含有する一方向テープである。繊維は、典型的に、多数の個々の繊維又はフィラメントの束の形態をしており、それは「トウ」と称される。繊維又はトウは、細断されて、そして樹脂中にランダムに配向して、不織マットを形成することもできる。これらの種々の繊維強化材構造は、注意深く制御した量の未硬化樹脂と組み合される。得られたプリプレグは、典型的に保護層の間に配置され、そして貯蔵又は製造施設への輸送のために巻き取られる。
【0005】
プリプレグは、ランダムに配向して細断された一方向テープの不織マットを形成する、細断一方向テープの短いセグメントの形態をしていてもよい。このタイプのプリプレグは、「準等方性細断」(“quasi−isotropic chopped”)プリプレグと称される。準等方性細断プリプレグは、細断された繊維というよりはむしろ、短い長さの細断一方向テープ(チップ)がマット中でランダムに配向している点を除いて、より伝統的な不織繊維マットプリプレグに類似している。
【0006】
硬化複合材料の圧縮強度は、強化繊維とマトリクス樹脂の個々の特性、及びこれらの2種類の成分間の相互作用によって殆どが決定される。加えて、繊維−樹脂体積比は、重要なファクターである。複合部品の圧縮強度は、典型的に、室温で乾燥条件下にて測定される。しかし、圧縮強度は、通常、高められた温度(180°F)で湿潤条件下にて測定される。多くの部品は、このような高温且つ湿潤条件下では、圧縮強度がかなり低下する。
【0007】
多くの航空宇宙機用途では、複合部品は、室温/乾燥条件、及び高温/湿潤条件の両方の下で高い圧縮強度を示すことが望ましい。しかし、より高温/より湿潤な条件下で圧縮強度を一定に保つ試みは、損傷許容性及び層間破壊靭性等の他の必要な特性について悪影響を与えることがしばしばある。
【0008】
モジュラス(modulus)がより高い樹脂を選択することは、複合体の圧縮強度を高める効果的な方法であり得る。しかし、このような樹脂の選択は、損傷許容性(典型的に衝撃後圧縮(CAI)強度等の圧縮特性の低下により測定される)を減少させる傾向がある。従って、圧縮強度と損傷許容性の両方を同時に高めることは非常に困難である。
【0009】
多数層のプリプレグは通常、積層構造を有する複合部品を形成するのに使用される。このような複合部品の層間剥離は、深刻な不具合の態様である。層間剥離は、2つの層が互いに剥離する場合に生じる。重要な設計制限ファクターには、層間剥離を開始するのに必要なエネルギーとそれが伝播するのに必要なエネルギーの両方が含まれる。層間剥離の開始と成長は、しばしば、モードI及びモードII破壊靭性を検査することによって決定される。破壊靭性は通常、一方向繊維配向を有する複合材料を使用して測定される。複合材料の層間破壊靭性は、G1c(ダブルカンチレバービーム:Double Cantilever Beam)及びG2c(エンドノッチフレックス:End Notch Flex)試験を使用して定量される。モードIでは、予備亀裂積層破壊は、剥離力により支配され、モードIIでは、亀裂は、せん断力により伝播する。
【0010】
層間破壊靭性を高める簡単な方法は、プリプレグの層間のインターリーフとして熱可塑性シートを導入することによりマトリクス樹脂の延性を高めることであった。しかし、このアプローチには、使用が困難な硬い非粘着性材料を生じる傾向がある。別のアプローチは、繊維層間に約20から50ミクロンの厚みの高靭化樹脂中間層を含ませることであった。高靭化樹脂には、熱可塑性粒子が含まれる。ポリアミドは、このような熱可塑性粒子として使用されてきた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の予備含浸複合材料(プリプレグ)は、高構造強度及び損傷許容性が要求される航空宇宙産業及び他のいずれかの用途における複合部品を形成するのに使用されている現在のプリプレグの代替物として使用することができる。本発明には、プリプレグを作成するのに使用されている現在の樹脂に代えて、本発明の樹脂配合物に置換えることが含まれる。従って、本発明の樹脂配合物は、従来のプリプレグ製造及び硬化プロセスのいずれにおいても使用するのに好適である。
【0018】
本発明の予備含浸複合材料は、強化繊維と未硬化樹脂マトリクスから構成される。強化繊維は、プリプレグ産業で使用される従来の繊維構造のいずれであってもよい。マトリクス樹脂には、二官能性エポキシ樹脂及び/又は二より多い官能性を有する多官能性芳香族エポキシ樹脂から成る樹脂成分が含まれる。マトリクス樹脂には、更に熱可塑性粒子成分、熱可塑性高靭化剤及び硬化剤が含まれる。本発明の特徴は、熱可塑性粒子成分がポリアミド12粒子及びポリアミド11粒子の混合物から構成されることである。
【0019】
PA12粒子及びPA11粒子の混合物を含む熱可塑性高靭化エポキシ樹脂により、特にIM7炭素繊維等のある一定の炭素繊維と組合せた場合、高い層間破壊靭性を有する硬化積層体が提供されることを発見した。
【0020】
マトリクスの樹脂成分を形成するのに使用される二官能性エポキシ樹脂は、任意の好適な二官能性エポキシ樹脂であってもよい。これには、2つのエポキシ官能基を有する任意の好適なエポキシ樹脂が含まれることがわかるであろう。二官能性エポキシ樹脂は、飽和、不飽和、脂環式(cycloaliphatic)、脂環式(alicyclic)又は複素環式であってもよい。二官能性エポキシは、単独で又は多官能性エポキシ樹脂と組合せて使用して、樹脂成分を形成してもよい。多官能性エポキシのみを含有する樹脂成分も可能である。
【0021】
二官能性エポキシ樹脂には、例えば、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(任意選択で臭素化)のジグリシジルエーテル、フェノール−アルデヒド付加物のグリシジルエーテル、脂肪族ジオールのグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、エピコート(Epikote)、エポン(Epon)、芳香族エポキシ樹脂、エポキシ化オレフィン、臭素化樹脂、芳香族グリシジルアミン、複素環式グリシジルイミジン及びアミド、グリシジルエーテル、フッ素化エポキシ樹脂、又はこれらの任意の組合せをベースとするものが含まれる。二官能性エポキシ樹脂は、好ましくはビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ジグリシジルジヒドロキシナフタレン、又はこれらの任意の組合せから選択される。最も好ましくは、ビスフェノールFのジグリシジルエーテルである。ビスフェノールFのジグリシジルエーテルは、Huntsman Advanced Materials (Brewster、ニューヨーク)からAralditeGY281及びGY285の商品名で、並びにCiba−Geigy(所在地)からLY9703の商品名で市販されている。二官能性エポキシ樹脂は、単独で又は他の二官能性エポキシ又は多官能性エポキシとのいずれかの好適な組合せで使用して、樹脂成分を形成することができる。
【0022】
樹脂成分は、二より多い官能性を有する1種以上のエポキシ樹脂を含むことができる。好ましい多官能性エポキシ樹脂は、三官能性又は四官能性のものである。多官能性エポキシ樹脂は、三官能性と多官能性エポキシの組合せとすることができる。多官能性エポキシ樹脂は、飽和、不飽和、脂環式(cycloaliphatic)、脂環式(alicyclic)又は複素環式とすることができる。
【0023】
好適な多官能性エポキシ樹脂には、例えば、フェノール及びクレゾールエポキシノボラック、フェノール−アルデヒド付加物のグリシジルエーテル、二脂肪族(dialiphatic)ジオールのグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、芳香族エポキシ樹脂、二脂肪族トリグリシジルエーテル、脂肪族ポリグリシジルエーテル、エポキシ化オレフィン、臭素化樹脂、芳香族グリシジルアミン、複素環式グリシジルイミジン及びアミド、グリシジルエーテル、フッ素化エポキシ樹脂又はこれらの任意の組合せをベースとするものが含まれる
【0024】
三官能性エポキシ樹脂は、化合物の主鎖にあるフェニル環のパラ又はメタ位に直接又は間接のいずれかで置換された3つのエポキシ基を有するものとして理解されるでろう。四官能性エポキシ樹脂は、化合物の主鎖にあるフェニル環のメタ又はパラ位に直接又は間接のいずれかで置換された4つのエポキシ基を有するものとして理解されるでろう。
【0025】
フェニル環は、追加的に他の好適な非エポキシ置換基で置換されていてもよい。好適な置換基には、例えば、水素、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシル、アリール、アリールオキシル、アラルキルオキシル、アラルキル、ハロ、ニトロ、又はシアノラジカルが含まれる。好適な非エポキシ置換基は、フェニル環にパラ又はオルト位にて結合することができ、又はエポキシ基によって占有されていないメタ位に結合することができる。好適な四官能性エポキシ樹脂には、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(三菱ガス化学社(日本、東京、千代田区)からTetrad−Xの名称下で市販されている。)及びErisys GA−240(CVC Chemicals(Morrestown、ニュージャージー)から)が含まれる。好適な三官能性エポキシ樹脂には、例えば、フェノール及びクレゾールエポキシノボラック、フェノール−アルデヒド付加物のグリシジルエーテル、芳香族エポキシ樹脂、二脂肪族トリグリシジルエーテル、脂肪族ポリグリシジルエーテル、エポキシ化オレフィン、臭素化樹脂、芳香族グリシジルアミン及びグリシジルエーテル、複素環式グリシジルイミジン及びアミド、グリシジルエーテル、フッ素化エポキシ樹脂又はこれらの任意の組合せをベースとするものが含まれる。
【0026】
例示的な三官能性エポキシ樹脂は、トリグリシジルメタ−アミノフェノールである。トリグリシジルメタ−アミノフェノールは、Huntsman Advanced Materials(Monthey、スイス)からAraldite My0600の商品名で、そして住友化学株式会社(大阪、日本)からELM−120の商品名で市販されている。別の例示的な三官能性エポキシ樹脂は、トリグリシジルパラ−アミノフェノールである。トリグリシジルパラ−アミノフェノールは、Huntsman Advanced Materials(Monthey、スイス)からAraldite MY0510の商品名で市販されている。
【0027】
好適な多官能性エポキシ樹脂の追加的な例には、例えばN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(TGDDM、Araldite MY720及びMY721としてHuntsman Advanced Materials(Monthey、スイス)から、又はELM434としてSumitomoから市販されている。)、パラアミノフェノールのトリグリシジルエーテル(Aradite MY0500又はMY0510としてHuntsman Advanced Materialsから市販されている。)、Tactix556(Huntsman Advanced Materialsから市販されている。)等のジシクロペンタジエン系エポキシ樹脂、トリス−(ヒドロキシルフェニル)、及びTactix742(Huntsman Advanced Materialsから市販されている。)等のメタン系エポキシ樹脂が含まれる。他の好適な多官能性エポキシ樹脂には、DEN438(Dow Chemnicals(Midland MI)から)、DEN439(Dow Chemicalsから)、Araldite ECN1273(Huntsman Advanced Materialsから)、及びAraldite ECN1299(Huntsman Advanced Materialsから)が含まれる。
【0028】
好ましい樹脂成分には、二官能性エポキシ、三官能性エポキシ及び四官能性エポキシが含有される。好ましい樹脂成分では、二官能性エポキシ樹脂は、樹脂マトリクスの全重量をベースとして7重量%から27重量%の範囲で存在する。好ましくは、二官能性エポキシ樹脂は、樹脂マトリクスの全重量をベースとして12重量%から22重量%の範囲で存在する。より好ましくは、二官能性エポキシ樹脂は、樹脂マトリクスの全重量をベースとして15重量%から19重量%の範囲で存在する。三官能性エポキシ樹脂は、樹脂マトリクスの全重量をベースとして15重量%から35重量%の範囲で存在する。好ましくは、三官能性エポキシ樹脂は、樹脂マトリクスの全重量をベースとして20重量%から30重量%の範囲で存在する。より好ましくは、三官能性エポキシ樹脂は、樹脂マトリクスの全重量をベースとして24重量%から28重量%の範囲で存在する。四官能性エポキシ樹脂は、樹脂マトリクスの全重量をベースとして5重量%から15重量%の範囲で存在する。好ましくは、四官能性エポキシ樹脂は、樹脂マトリクスの全重量をベースとして8重量%から12重量%の範囲で存在する。より好ましくは、四官能性エポキシ樹脂は、樹脂マトリクスの全重量をベースとして9重量%から11重量%の範囲で存在する。好ましい樹脂成分において3つのタイプのエポキシ樹脂に対する種々の好ましい範囲の組合せが可能である。
【0029】
本発明に従って、プリプレグのマトリクスには、ポリアミド12から構成されるポリアミド粒子及びポリアミド11から構成されるポリアミド粒子から成る熱可塑性粒子成分も含まれる。
【0030】
ポリアミド12粒子は、多くの供給源から市販されている。好ましいポリアミド12粒子は、Kobo ProductsからSP10Lの商品名で市販されている。SP10L粒子には、98重量%のPA12が含有されている。粒子サイズ分布は、7ミクロンから13ミクロン、平均粒子サイズは10ミクロンである。粒子密度は、1g/cm
3である。このPA12粒子は、水分含量を除いて、少なくとも95重量%のPA12であると好ましい。
【0031】
ポリアミド11粒子も、多くの供給源から市販されている。好ましいポリアミド11粒子は、ArkemaからRislan PA11の商品名で市販されている。これらの粒子には、98重量%を超えるPA11が含有され、そして15ミクロンから25ミクロンの粒子サイズ分布である。平均粒子サイズは、20ミクロンである。Rislan PA11粒子の密度は、1g/cm
3である。PA11粒子は、水分含量を除いて、少なくとも95重量%のPA11であると好ましい。
【0032】
好ましくは、PA12及びPA11の両方のポリアミド粒子は、100ミクロン未満の粒子サイズを有するべきである。粒子は、5から60ミクロンのサイズ範囲が好ましく、より好ましくは5から30ミクロンである。平均粒子サイズは、5から20ミクロンであると好ましい。粒子は、形が規則的又は非規則的であってもよい。例えば、粒子は、実質的に球形であってもよく、又はそれらは、ギザギザ形の粒子とすることができる。PA11粒子は、PA12粒子より大きい平均粒子サイズを有すると好ましい。好ましくは、PA12の平均粒子サイズは、5から15ミクロンの範囲であり、そしてPA11の平均粒子サイズは、15から25ミクロンの範囲であろう。
【0033】
熱可塑性粒子成分は、マトリクスの全重量をベースとして5重量%から20重量%の範囲で存在する。好ましくは、5から15重量の熱可塑性粒子が存在する。最も好ましくは、マトリクスが、9から13重量%の熱可塑性粒子を含有する。PA12とPA11の粒子の相対的な量は変動してよい。PA12粒子の重量は、好ましくはPA11粒子の重量に等しいか又はそれより大きい。PA12粒子の重量はPA11粒子の重量より大きいと好ましい。PA12粒子:PA11粒子の好ましい重量比は、1.1:1.0から1.5:1.0の範囲である。
【0034】
プリプレグマトリクス樹脂には、少なくとも1種の硬化剤が含まれる。好適な硬化剤は、本発明のエポキシ官能性化合物の硬化を促進するものであり、そして特に、このようなエポキシ化合物の開環重合を促進するものである。特に好ましい実施態様では、このような硬化剤には、その開環重合においてエポキシ官能性化合物(単数又は複数)と重合するこのような促進性の化合物が含まれる。2種以上のこのような硬化剤を組合せて使用することができる。
【0035】
好適な硬化剤には、無水物、特にポリカルボン酸無水物、例えばナジック酸無水物(NA)、メチルナジック酸無水物(MNA−Aldrichから入手可能である。)、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物(HHPA−Anhydrides and Chemicals Inc.(Newark N.J.)から入手可能である。)、メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA−Anhydrides and Chemicals Inc.から入手可能である。)、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(MHHPA−Anhydrides and Chemicals Inc.から入手可能である。)、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサクロロエンドメチレン−テトラヒドロフタル酸無水物(クロレンド酸無水物−Velsicol Chemical Corporation(ローズモント、イリノイ州)から入手可能である。)、無水トリメリット酸、ピロメリット酸二無水物、無水マレイン酸(MA−Aldrichから入手可能である。)、無水コハク酸(SA)、ノネニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物(DDSA−Anhydrides and Chemicals Inc.から入手可能である。)、ポリセバシン酸ポリ無水物、及びポリアゼライン酸ポリ無水物が含まれる。
【0036】
更に、好適な硬化剤は、芳香族アミン、例えば、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、及びポリアミノスルホン、例えば4,4'−ジアミノジフェニルスルホン(4,4'−DDS、Huntsmanから入手可能である。)、4−アミノフェニルスルホン、及び3,3'−ジアミノジフェニルスルホン(3,3'−DDS)を含むアミンである。更に、好適な硬化剤には、ポリオール、例えば、エチレングリコール(EG、Aldrichから入手可能である。)、ポリプロピレングリコール、及びポリビニルアルコール、並びにフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、例えば平均分子量が約550から650のフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、平均分子量が約600から700のp−t−ブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、及び平均分子量が約1200から1400のp−n−オクチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂が含まれていてよく、これらは、それぞれHRJ2210、HRL−2255、及びSP−1068としてSchenectady CHemicals Inc.(Schenectady N.Y.)から入手可能である。更に、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂について、CTUグアナミン及び分子量が398のフェノール−ホルムアルデヒド樹脂の組合せ(CG−125としてAjinomoto USA Inc.(Teaneck N.J.)から市販されている)も好適である。
【0037】
種々の市販の組成物を本発明の硬化剤として使用することができる。このような組成物の一つは、AH−154、即ちジシアンジアミド型配合物であり、Ajinomoto USA Inc.から入手可能である。好適な他のものには、Ancamide400(これはポリアミド、ジエチルトリアミン及びトリエチレンテトラアミンの混合物である。)、Ancamide506(これはアミドアミン、イミダゾリン、及びテトラエチレンペンタミンの混合物である。)、及びAncamide1284(これは4,4’−メチレンジアニリン及び1,3−ベンゼンジアミンの混合物である。)が含まれ、これらの配合物は、Pacific Anchor Chemical,Performance Chemical Division Air,Products and Chemicals,Inc.(Allentown、Pa)から入手可能である。
【0038】
追加的な好適な硬化剤には、Sigma Aldrich(St.Louis,Missouri)から入手可能なイミダゾール(1,3−ジアザ−2,4−シクロペンタジエン)、Sigma Aldrichから入手可能な2−エチル−4−メチルイミダゾール、及び、Air Products&Chemicals, Inc.から入手可能なAnchor 1170等の三フッ化ホウ素アミン錯体が含まれる。
【0039】
更に追加的な好適な硬化剤には、3,9−ビス(3−アミノプロピル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(これはATUとしてAjinomoto USA Inc.から市販されている。)、そして脂肪族ジヒドラジド(これは、Ajicure UDHとして、同じくAjinomoto USA Inc.から市販されている。)、そしてメルカプト−末端ポリスルフィド(これは、LP540としてMorton International Inc.(シカゴ、イリノイ州)から市販されている。)が含まれる。
【0040】
硬化剤(単数又は複数)は、適切な温度でマトリクスの硬化を提供するように選択される。マトリクスの適切な硬化を提供するのに必要な硬化剤の量は、硬化される樹脂のタイプ、必要な硬化温度及び硬化時間を含む多数のファクターに依存して変わるであろう。硬化剤には、典型的に、シアノグアニジン、芳香族及び脂肪族アミン、酸無水物、ルイス酸、置換尿素、イミダゾール及びヒドラジンも含まれていてよい。各特定の状況に必要な硬化剤の特定の量は、十分に確立された日常的な実験により決定することができる。
【0041】
例示的な好ましい硬化剤には、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4’−DDS)及び3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS)が含まれ、両方ともHuntsmanから市販されている。
【0042】
硬化剤は、未硬化マトリクスの10重量%から30重量%の範囲の量で存在する。好ましくは、硬化剤は、15重量%から25重量%の範囲の量で存在する。より好ましくは、硬化剤は、未硬化マトリクスの18重量%から24重量%の範囲で存在する。
【0043】
3,3’−DDSは、特に好ましい硬化剤である。これは、19重量%から23重量%の範囲の量で単独の硬化剤として使用するのが好ましい。少量(2重量%未満)の他の硬化剤、例えば4,4’−DDSを、必要に応じて、含むことができる。
【0044】
本発明のマトリクスには、熱可塑性高靭化剤も含まれる。任意の好適な熱可塑性ポリマーを、高靭化剤として使用することができる。典型的には、熱可塑性ポリマーは、樹脂マトリクスに、硬化剤の添加前に加熱により樹脂マトリクス中に溶解する粒子として添加される。熱可塑性剤が実質的に高温マトリクス樹脂前駆体(即ち、エポキシ樹脂のブレンド)中に溶解すると、前駆体は冷却され、そして残りの成分(硬化剤と不溶性熱可塑性粒子)が添加される。
【0045】
例示的な熱可塑性高靭化剤/粒子には、以下の熱可塑性物質のいずれかが単独又は組合せのいずれかで含まれる:即ち、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、高性能炭化水素ポリマー、エラストマー、及びセグメント化したエラストマーである。
【0046】
高靭化剤は、未硬化樹脂マトリクスの全重量をベースとして、5重量%から26重量%の範囲で存在する。好ましくは、高靭化剤は、8重量%から23重量%の範囲で存在する。より好ましくは、高靭化剤は、13重量%から18重量%の範囲で存在する。好適な高靭化剤は、例えば、Sumikaexcel 5003Pの商品名で販売されている粒子ポリエーテルスルホン(PES)であり、これは、Sumitomo Chemicalsから市販されている。5003Pの代替物としては、Solvay ポリエーテルスルホン105RP、又は非ヒドロキシル末端等級、例えばSolvay 1054Pがある。高密度PES粒子は高靭化剤として使用することができる。PESの形態は、PESが樹脂形成の間に溶解するので、特に重要ではない。高密度PES粒子は、米国特許第4,945,154号の教示に従って作成することができ、この内容を、参照により本明細書に援用する。高密度PES粒子は、Hexcel Corporation(Dublin CA)からもHRI−1の商品名で市販されている。高靭化剤の平均粒子サイズは、マトリクス中でPESの完全な溶解を促進し且つ確実にするために、100ミクロン未満であるべきである。
【0047】
マトリクスは、プリプレグの粘着性及び外形又は硬化複合部品の強度及び損傷許容性に悪影響を与えない場合は、追加的な成分、例えば性能強化剤又は改変剤及び追加的な熱可塑性ポリマーを含んでいてよい。性能強化剤又は改変剤は、例えば可撓性付与剤、非粒子高靭化剤、促進剤、コアシェルゴム、難燃剤、湿潤剤、顔料/染料、UV吸収剤、抗真菌化合物、充填剤、導電性粒子、及び粘度調整剤から選択することができる。
【0048】
好適な促進剤は、通常使用されてきたウロン化合物のいずれかである。促進剤の特定の例には、N,N−ジメチル,N’−3,4−ジクロロフェニル尿素(Diuron)、N’−3−クロロフェニル尿素(Monuron)、及び好ましくは、N,N−(4−メチル−m−フェニレンビス[N’,N’−ジメチル尿素](例えば、Degussaから入手可能なDyhard UR500)が含まれ、単独でも組合せても使用することができる。
【0049】
好適な充填剤には、例えば単独又は組合せのいずれかで以下のいずれかが含まれる:即ち、シリカ、アルミナ、チタニア、ガラス、炭酸カルシウム及び酸化カルシウムである。
【0050】
好適な導電性粒子には、例えば単独又は組合せのいずれかで以下のいずれかが含まれる:即ち、銀、金、銅、アルミニウム、ニッケル、炭素の導電性等級、バックミンスターフラーレン、カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーである。金属被覆充填剤も使用することができ、例えば、ニッケル被覆炭素粒子及び銀被覆銅粒子である。
【0051】
マトリクスには、少量(5重量%未満)の追加的な非エポキシ熱硬化性重合体樹脂を含むことができる。いったん硬化すると、熱硬化性樹脂は、溶融及び再成形には適さない。本発明の好適な非エポキシ熱硬化性樹脂材料には、非限定的に、フェノールホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン(メラミン)、ビスマレイミドの樹脂群、ビニルエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、シアン酸エステル樹脂、エポキシドポリマー、又はこれらの任意の組合せが含まれる。熱硬化性樹脂は、好ましくはエポキシド樹脂、シアン酸エステル樹脂、ベンゾオキサジン及びフェノール樹脂から選択される。必要に応じて、マトリクスには、更に好適なフェノール性基含有樹脂、例えばレゾルシノール系樹脂、及びカチオン性重合により形成される樹脂、例えばDCPD−フェノールコポリマーが含まれる。更に追加的な好適な樹脂は、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、及び尿素−ホルムアルデヒド樹脂である。
【0052】
樹脂マトリクスは、標準的なプリプレグマトリクス処理に従って作成される。一般に、種々のエポキシ樹脂は、室温で一緒に混合されて、樹脂混合物を形成し、これに熱可塑性高靭化剤が添加される。その後、この混合物を、約120℃に約1から2時間加熱して、熱可塑性高靭化剤を溶解する。その後、混合物を約80℃に冷却し、そして成分の残り(熱可塑性粒子成分、硬化剤、及び(存在するならば)他の添加剤)を、樹脂に混合して、最終的なマトリクス樹脂を形成し、これを繊維強化材に含浸させる。
【0053】
マトリクス樹脂は、既知のプリプレグ製造技術のいずれかに従って、繊維強化材に適用される。繊維強化材に、十分に又は部分的にマトリクス樹脂を含浸させることができる。別の実施形態では、マトリクス樹脂は、繊維強化材の近傍にあり且つ接触した別の層として繊維強化材に適用することができるが、実質的に繊維強化材に含浸しない。プリプレグは、典型的に保護フィルムで両側をカバーされ、早期硬化を回避するために、典型的に室温より十分に低く維持した温度で、貯蔵及び輸送のためにロールアップされる。必要であれば、他のプリプレグ製造プロセス及び貯蔵/輸送システムのいずれかを使用することができる。
【0054】
プリプレグの繊維強化材は、合成若しくは天然の繊維又はこれらの組合せを含むハイブリッド又は混合繊維系から選択することができる。繊維強化材は、好ましくは繊維ガラス、炭素又はアラミド(芳香族ポリアミド)繊維等の任意の好適な材料から選択することができる。繊維強化材は、好ましくは炭素繊維である。好ましい炭素繊維は、3,000から15,000の炭素フィラメント(3Kから15K)を含有するトウ(tows)の形態である。6,000又は12,000の炭素フィラメント(6K又は12K)を含有する市販の炭素繊維トウが好ましい。
【0055】
本発明の樹脂配合物は、炭素トウが10,000から14,000のフィラメントを含有し、引張強度が750から860ksiであり、引張モジュラスが35から45Msiであり、破断歪みが1.5から2.5%であり、密度が1.6から2.0g/cm
3であり、そして長さ当たりの重量が0.2から0.6g/mである場合、高いGlc値(3.0より高い)を有する積層体を提供する際に特に効果的である。6K及び12KのIM7炭素トウ(Hexcel Corporationから入手可能である。)が好ましい。IM7 12K繊維は、引張強度が820ksiであり、引張モジュラスが40Msiであり、破断歪みが1.9%であり、密度が1.78g/cm
3であり、そして長さ当たりの重量が0.45g/mである。IM7 6K繊維は、引張強度が800ksiであり、引張モジュラスが40Msiであり、破断歪みが1.9%であり、密度が1.78g/cm
3であり、そして長さ当たりの重量が0.22g/mである。
【0056】
繊維強化材には、亀裂のある(即ち、ストレッチ破断した)もしくは選択的に不連続な繊維、又は連続した繊維が含まれてもよい。亀裂のある又は選択的に不連続な繊維を使用することにより、完全に硬化する前に複合材料のレイアップ(lay−up)を促進し、成形性を改良することができると想定される。繊維強化材は、織布、非捲縮、不織布、一方向、又は多軸織物構造形態、例えば準等方細断プリプレグであってよい。織布形態は、平織り、サテン、又は綾織スタイルから選択することができる。非捲縮及び多軸形態は、多くの積層(plies)及び繊維配向を有することができる。このようなスタイル及び形態は、複合体強化材分野でよく知られており、そしてHexcel Reinforcements(Villeurbanne、フランス)を含む多くの会社から市販されている。
【0057】
プリプレグは、連続的なテープ、トウプレグ、ウェブ、又は細断された長さ(細断及びスリット作業は、含浸後任意の時点で行うことができる)の形態であってよい。プリプレグは、接着性又は表面フィルムとすることができ、そして追加的に織布、編物及び不織布の両方の種々の形態のキャリアを埋設することができる。プリプレグは、例えば硬化の間に空気の除去を促進するために、完全に又は部分的にのみ含浸させてよい。
【0058】
例示的な好ましいマトリクス樹脂には、15重量%から19重量%のビスフェノールFジグリシジルエーテル(GY285);24重量%から28重量%のトリグリシジル−m−アミノフェノール(MY0600);8重量%から13重量%の四官能性エポキシ(MY721);高靭化剤として13重量%から18重量%のポリエーテルスルホン(5003P);4重量%から9重量%のポリアミド12粒子(SP10L);2重量%から7重量%のポリアミド11粒子(RislanPA11)(ここでポリアミド12粒子:ポリアミド11粒子の重量比は、1.2:1.0から1.4:1.0である);及び、硬化剤として18重量%から23重量%の3,3’−DDSが含まれる。
【0059】
プリプレグは、複合部品を形成するのに使用される標準的な技術のいずれかを使用して、成形することができる。典型的に、1つ以上のプリプレグの層を、好適なモールド中に配置し、そして硬化して最終的な複合部品を形成する。本発明のプリプレグは、当該技術分野で既知の任意の好適な温度、圧力、及び時間の条件を使用して完全に又は部分的に硬化させることができる。典型的には、プリプレグは、160℃と190℃の間の温度のオートクレーブ中で硬化される。複合材料は、マイクロ波放射、電子ビーム、ガンマ放射、又は他の好適な熱又は非熱放射から選択される方法を使用して硬化させることができる。
【0060】
本発明の改良されたプリプレグから作成される複合部品は、航空宇宙機の多数の一次構造物及び二次構造物(翼、胴体、隔壁等)等の物品を作成する際に用途が見出されるであろうが、高圧縮強度、層間破壊靭性及び衝撃損傷耐性が必要とされる自動車、鉄道及び海洋船舶の用途を含む多くの他の高性能複合体の用途においても有用であろう。
【0061】
次に、本発明をより容易に理解するため、以下の背景情報及び本発明の諸例が参考になるだろう。
【実施例】
【0062】
例1
本発明に従った好ましい例示的な樹脂配合物を、表1に示す。室温にてエポキシ成分とポリエーテルスルホンとを混合して、樹脂ブレンドを形成し、これを120℃にて60分間加熱し、ポリエーテルスルホンを完全に溶解することにより、マトリクス樹脂を調製した。この混合物を80℃に冷却し、そして成分の残りを添加し、そして完全に混合した。
【表1】
【0063】
例示的なプリプレグを、一方向炭素繊維の1以上の層に表1の樹脂配合物を含浸させることにより調製した。一方向炭素繊維(Hexcel Corporationから入手可能な12K IM7)を使用して、プリプレグを作成したが、ここでマトリクス樹脂は、未硬化プリプレグの全重量の35重量パーセントになり、繊維目付は、1平方メートル当たり145グラム(gsm)となった。種々のプリプレグのレイアップを、標準的なプリプレグ製造手順を使用して調製した。プリプレグを177℃のオートクレーブ中で約2時間硬化した。その後、硬化プリプレグを標準的な試験に供して、損傷に対する許容性(CAI)及び層間破壊靭性(G1c及びG2c)を測定した。
【0064】
衝撃後圧縮強度(Compression after Impact:CAI)を、32プライの準等方性積層体に対して270インチ−ポンドの衝撃を使用して測定した。積層体を、177℃で2時間オートクレーブ中で硬化した。最終的な積層体の厚みは、約4.5mmであった。圧密化はc−スキャンによって確認した。サンプルを、BMS8−276についてのBoeing試験法BSS7260に従って、機械加工し、衝撃を与え、そして試験した。それらの値を、公称0.18インチの硬化積層体厚みに正規化した。
【0065】
G1c及びG2cは、硬化積層体の層間破壊靭性を測定する標準的な試験である。G1c及びG2cは、以下のように測定した。26−プライの一方向積層体を、レイアップの中間面で、一つの端部に平行に、繊維方向に対して垂直に挿入した亀裂スターターとして作用する3インチのフルオロエチレンポリマー(FEP)フィルムと共に硬化した。積層体を2時間177℃でオートクレーブ中にて硬化し、3.8mmの公称厚みを得た。圧密度をC−スキャンによって確認した。G1c及びG2cの両方のサンプルを、同じ硬化積層体から機械加工した。G1cを、Boeing試験法BSS7233に従って試験し、そしてG2cをBSS7320に従って試験した。G1c及びG2cの値は正規化しなかった。
【0066】
乾燥条件下の室温における0°圧縮強度をBSS7260に従って測定した。湿潤条件下の180°Fにおける0°圧縮強度もBSS7260に従って測定した。
【0067】
硬化プリプレグのCAIは、54.7であり、G1c及びG2cは、それぞれ3.6と10.4であった。CAI及びG2cは、両方とも構造部品についての許容限界を十分に超えている。しかし、3.6のG1cは、非常に高く、予期しなかった。3.0以上のG1c値は、層間破壊靭性について非常に高い値であると考えられる。乾燥条件下の室温における0°圧縮強度は293であり、そして湿潤条件下の180°Fにおける0°圧縮強度は、188であった。
【0068】
例2
別の例示的なプリプレグを、例1と同じ方法で調製した。プリプレグは、繊維強化材が12K IM10であることを除いて、例1と同じであった。IM10は、一方向炭素繊維材料であり、Hexcel Corporation(Dublin、CA)からも入手可能である。IM10 12K繊維は、引張強度が1010ksiであり、引張モジュラスが45Msiであり、破壊歪みが2.0%であり、密度が1.79g/cm
3であり、そして長さ当たりの重量が0.32g/mである。例示的なプリプレグには、未硬化プリプレグの全重量の35重量パーセントの量でマトリクス樹脂が含まれ、そしてIM10繊維の繊維目付は、145グラム/平方メートル(gsm)であった。
【0069】
32−プライ及び26−プライの例示的な積層体を硬化し、そして例1と同じ方法で試験した。硬化プリプレグのCAIは54.4であり、G1c及びG2cは、それぞれ2.1と9.1であった。CAI、G1c及びG2cは、全て構造部品についての許容限界を超えている。繊維がIM7炭素繊維である例1のプリプレグの方が、G1cがかなり高いので好ましい。乾燥条件下の室温における0°圧縮強度は271であり、そして湿潤条件下の180°Fにおける0°圧縮強度は193であった。
【0070】
例3〜5
3つの他の例示的なプリプレグを、PA12粒子及びPA11粒子の量を変えたことを除いて、例2と同じ方法で調製した。例示的なマトリクス配合物を表2に示す。例示的なプリプレグには、未硬化プリプレグの全重量の35重量パーセントの量でマトリクス樹脂が含まれ、そして12K IM10繊維の繊維目付は、1平方メートル当たり145グラム(gsm)であった。
【表2】
【0071】
硬化した例示的プリプレグを、例1と同じ試験手順に供した。その結果を表3に示す。
【表3】
【0072】
圧縮強度、CAI、G1c、及びG2cは、全て構造部品についての許容限界を超えている。PA12粒子とPA11粒子の量は、G1c及びG2cの両方の層間破壊靭性を最大にするために、全樹脂重量の5から20重量%であると好ましい。更に、PA12粒子の重量が、PA11粒子の重量より大きいと好ましい。好ましい比は1.1:1から1.5:1である。
【0073】
比較例1
比較プリプレグを、例1と同じ方法で調製し、そして硬化した。比較マトリクス配合物として、Arkema(フランス)からOrgasol 1002及びOrgasol 3803の商品名で市販されているポリアミド粒子を含有するものを用いた。Orgasol 1002は、20ミクロンの平均粒子サイズを有する100%のPA6粒子から構成される。Orgasol 3803は、80%のPA12と20%のPA6のコポリマーであり、平均粒子サイズが17から24ミクロンである粒子から構成される。プリプレグを例1と同じIM7炭素繊維を使用して調製した。プリプレグは、35重量%の樹脂を含有し、そして145gsmの繊維目付を有した。比較プリプレグに使用した配合を表4に示す。
【表4】
【0074】
硬化した比較プリプレグを、例1と同じ方法で試験した。CAIは、57.9であり、そしてG1c及びG2cは、それぞれ2.1と7.3であった。乾燥条件下の室温における0°圧縮強度は、269であり、湿潤条件下の180°Fにおける0°圧縮強度は、160であった。硬化した比較プリプレグのG1cは、本発明に従ってエポキシ樹脂を使用して作成した例1の硬化プリプレグのG1c値よりかなり低かったが、それには、樹脂マトリクスの全重量をベースとして全量で11重量%のSP10Lポリアミド12粒子とRislanポリアミド粒子が含まれ、そしてSP10L粒子:RislanPA11粒子の比は1.3:1である。
【0075】
比較例2〜4
比較例プリプレグ(比較例2から比較例4)を、12K IM10繊維を使用して、例2と同じ方法で調製した。比較マトリクス用の配合物を表5に示す。RislanPA11粒子は、ポリアミド11で形成されており、Arkemaから市販されている。RislanPA11粒子は平均粒子サイズが20ミクロンであった。
【表5】
【0076】
硬化プリプレグを、例1と同じ試験手順に供した。その結果を表6に示す。
【表6】
【0077】
比較例2は、繊維支持体が、12K IM7炭素繊維の替わりに12K IM10炭素繊維であることを除いて、比較例1と同じである。両方の比較例は、同等の層間破棄靭性(それぞれ2.2と2.1)を有している。これは、熱可塑性粒子が
PA6およびPA12/PA6コポリマーから形成されている場合に、繊維の種類が、G1cに殆ど影響を与えないことを意味する。従って、例1及び2に示した本発明に従う樹脂マトリクスを用いたとき、12K IM10炭素繊維から12K IM7炭素繊維へと同様に変更した場合に、層間破棄靭性が2.1から3.6に増加することは予期し得ない結果である。
【0078】
比較例3及び4は、許容可能な層間破壊靭性を有する。しかし、CAI値は50未満であり、それは、本発明に従う樹脂配合物を使用して得たCAI値よりも非常に低い。
【0079】
このように説明してきた本発明の例示的な実施態様から、当業者は、開示範囲内のことは、単なる例示であり、且つ種々の他の代替物、用途及び改変物が本発明の範囲内で可能であることに気づくべきである。従って、本発明は上記の実施態様に限定されず、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
本発明に包含され得る諸態様は、以下のとおり要約され得る。
[1].
予備含浸複合材料であって、
A)強化繊維;並びに
B)未硬化樹脂マトリクスであって、
前記マトリクスが、
a)少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む樹脂成分;
b)ポリアミド12粒子とポリアミド11粒子の混合物を含む熱可塑性粒子成分;
d)熱可塑性高靭化剤;及び
e)硬化剤
を含む、未硬化樹脂マトリクス;
を含む、予備含浸複合材料。
[2].
前記樹脂成分が、二官能性エポキシ樹脂、三官能性エポキシ樹脂及び四官能性エポキシ樹脂を含む、上記態様1に記載の予備含浸複合材料。
[3].
前記二官能性エポキシ樹脂が、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ジグリシジルジヒドロキシナフタレン及びこれらの組合せからなる群から選択される、上記態様2に記載の予備含浸複合材料。
[4].
前記三官能性エポキシ樹脂が、三官能性メタ−グリシジルアミンであり、且つ前記四官能性エポキシ樹脂が、四官能性パラ−グリシジルアミンである、上記態様3に記載の予備含浸複合材料。
[5].
前記強化繊維が、炭素繊維である、上記態様1に記載の予備含浸複合材料。
[6].
前記強化繊維が、炭素繊維である、上記態様5に記載の予備含浸複合材料。
[7].
前記ポリアミド12粒子の重量が、前記ポリアミド11粒子の重量よりも大きい、上記態様1に記載の予備含浸複合材料。
[8].
前記高靭化剤が、ポリエーテルスルホンである、上記態様1に記載の予備含浸複合材料。
[9].
前記硬化剤が、芳香族アミンである、上記態様1に記載の予備含浸複合材料。
[10].
前記芳香族アミンが、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンである、上記態様9に記載の予備含浸複合材料。
[11].
硬化した上記態様1に記載の予備含浸複合材料を含む複合部品。
[12].
G1c層間破壊靭性が、3.0を超える上記態様11に記載の複合部品。
[13].
前記複合部品が、航空機の1次構造の少なくとも一部を形成する、上記態様12に記載の複合部品。
[14].
予備含浸複合材料を作成するための方法であって、前記方法が、
A)強化繊維を供給する工程;並びに
B)前記強化繊維に未硬化樹脂マトリクスを含浸させる工程であって、
前記マトリクスが、
a)少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む樹脂成分;
b)ポリアミド12粒子とポリアミド11粒子の混合物を含む熱可塑性粒子成分;
d)熱可塑性高靭化剤;及び
e)硬化剤
を含む、含浸工程
を含む、上記方法。
[15].
前記樹脂成分が、二官能性エポキシ樹脂、三官能性エポキシ樹脂及び四官能性エポキシ樹脂を含む、上記態様14に記載の予備含浸複合材料を作成するための方法。
[16].
前記二官能性エポキシ樹脂が、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ジグリシジルジヒドロキシナフタレン及びこれらの組合せからなる群から選択される、上記態様15に記載の予備含浸複合材料を作成するための方法。
[17].
前記三官能性エポキシ樹脂が、三官能性メタ−グリシジルアミンであり、且つ前記四官能性エポキシ樹脂が、四官能性パラ−グリシジルアミンである、上記態様16に記載の予備含浸複合材料を作成するための方法。
[18].
前記強化繊維が、炭素繊維である、上記態様14に記載の予備含浸複合材料を作成するための方法。
[19].
上記態様1に記載の予備含浸複合材料を硬化させる工程を含む、複合部品を作成するための方法。
[20].
前記複合部品が、航空機の1次構造の少なくとも一部を形成する、上記態様19に記載の複合部品を作成するための方法。