(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584427
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】浮動式の振り子質量体ストッパ
(51)【国際特許分類】
F16F 15/14 20060101AFI20190919BHJP
F16F 15/134 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
F16F15/14 Z
F16F15/134 A
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-560496(P2016-560496)
(86)(22)【出願日】2015年3月19日
(65)【公表番号】特表2017-510768(P2017-510768A)
(43)【公表日】2017年4月13日
(86)【国際出願番号】DE2015200172
(87)【国際公開番号】WO2015149787
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2018年3月16日
(31)【優先権主張番号】102014206177.6
(32)【優先日】2014年4月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ディンガー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン マイエンシャイン
【審査官】
大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102011100895(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/14
F16F 15/134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクを伝達するための装置(100)であって、該装置(100)は、
回転軸線(105)を中心として回転可能に配置された入力側(110)および出力側(115)と、
少なくとも1つの振り子フランジ(145,150)と、前記回転軸線(105)を中心として分配され、半径方向で移動可能に配置された複数の振り子質量体(155)と備えた遠心力振り子(140)と、
前記振り子質量体(155)の半径方向内側に設けられた、半径方向内方に向かって運動させられた前記振り子質量体(155)の制動のための弾性的なストッパエレメント(170)と、
を備え、
前記ストッパエレメント(170)が、一体的に、前記回転軸線(105)を取り囲んで環状に延びており、
前記ストッパエレメント(170)を半径方向でセンタリングするための弾性的なエレメント(805)をさらに備えることを特徴とする、トルクを伝達するための装置(100)。
【請求項2】
前記ストッパエレメント(170)が、閉じられたリングの形状を有している、請求項1記載の装置(100)。
【請求項3】
前記ストッパエレメント(170)の内径が、前記回転軸線(105)を中心として延びているストッパ面(705)の外径よりも、予め規定された遊び(710)の分だけ大きく形成されている、請求項2記載の装置(100)。
【請求項4】
前記ストッパエレメント(170)は、回転面において前記遊び(710)の量だけ自由に移動可能である、請求項3記載の装置(100)。
【請求項5】
前記ストッパエレメント(170)は、前記回転軸線(105)を中心として回転可能である、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置(100)。
【請求項6】
前記弾性的なエレメント(805)が、前記ストッパエレメント(170)と、半径方向内側に位置するエレメント(810)との半径方向の間で作用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置(100)。
【請求項7】
前記弾性的なエレメント(805)は、波形リング(820)を含む、請求項6記載の装置(100)。
【請求項8】
前記弾性的なエレメント(805)は、エラストマ(815)を含む、請求項6記載の装置(100)。
【請求項9】
前記弾性的なエレメント(805)は、前記ストッパエレメント(170)に一体的に形成されている、請求項6記載の装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクを伝達するための装置に関する。特に本発明は、自動車のパワートレーンにおいて使用するためのトルク伝達装置に関する。
【0002】
自動車のパワートレーンには、トルクを伝達するための装置が、たとえば駆動エンジンと変速機との間に、設けられている。装置は、任意に、クラッチと、パワートレーンにおける回転不整の切離しもしくは除去するための1つまたは複数の装置を有している。この回転不整は、特に駆動エンジンにより引き起こされ得る。駆動エンジンは、内燃機関、特に往復動機関を含み得る。しかし、伝達される回転運動における不整は、たとえば変速機に連結されている駆動ホイールを介して、逆方向にも入力され得る。
【0003】
回転不整を除去するためには、遠心力振り子を使用することが知られている。この場合、振り子フランジは、パワートレーンの回転する構成部材に結合されている。振り子フランジには、振り子質量体が取り付けられており、該振り子質量体は、回転面において、振り子フランジにおける予め規定された振り子軌道上で移動可能に取り付けられている。振り子質量体は、短期間の回転加速を受容するためのエネルギアキュムレータを形成する。
【0004】
振り子質量体が、静止位置から出て回転軸線を中心として変位させられると、振り子質量体は振り子軌道により半径方向内方に押しやられる。この領域では、振り子質量体はぴったりとストッパに、または互いに対して衝突することになるので、これにより騒音発生が生じ得る。さらに、ストッパエレメントの領域において激しい摩耗が引き起こされ得る。この摩耗は、遠心力振り子の寿命を減じ得る。
【0005】
したがって、本発明の課題は、遠心力振り子を有するトルクを伝達するための装置を提供することであり、この場合、遠心力振り子は、半径方向内方に向かって移動する振り子質量体の改善された制動を可能にする。この課題は、本発明により、独立請求項に記載の特徴を有する装置により解決する。従属請求項は有利な態様を成す。
【0006】
トルクを伝達するための本発明に係る装置は、回転軸線を中心として回転可能に配置された入力側および出力側を備えている。装置はさらに、少なくとも1つの振り子フランジと、回転軸線を中心として分配され、半径方向で移動可能に配置された複数の振り子質量体とを備えた遠心力振り子を備えている。さらに、振り子質量体の半径方向内側には、半径方向内方に向かって運動される振り子質量体を制動するための弾性的なストッパエレメントが設けられており、ストッパエレメントは、一体的に、つまりワンピースに回転軸線を取り囲んで環状に延びている。
【0007】
通常、振り子質量体は、同一の、もしくは互いに一致する形式で、その振り子軌道上を運動する。特に、その半径方向の運動は、互いに対して調整されていてよい。環状に延びるストッパエレメントは、振り子質量体の衝突時に自動的に、回転軸線に関する理想的な位置へと運動され得る。これにより、弾性的なストッパエレメントと、たとえば振り子フランジのような構成部材との間に残っている力が吸収される。振り子質量体のエネルギは、これによって改善されて穏やかに解消され得る。これ以下において、回転軸線を中心として分配されている構成部材は、有利には回転軸線を中心とした円周上に位置しているものとする。この場合、構成部材は、特に均一に円周上に分配されていてよい。1つのバリエーションにおいて、構成部材は、回転軸線を中心とした、同一の大きさの、しかし軸方向で僅かにずらされた複数の円周上に位置していてもよい。
【0008】
1つの態様において、ストッパエレメントはリングの形状を有している。リングは、一方の側で開放している、つまり予め規定された合口を有している。別の態様では、ストッパエレメントは閉じられたリングの形状を有している。これにより、回転軸線上に延びる振り子質量体への力もしくはインパルスが改善されてストッパエレメント内に分配され得る。
【0009】
1つの態様において、ストッパエレメントの内径は、回転軸線を中心として延びるストッパ面の外径よりも、予め規定された遊びの分だけ大きく形成されている。予め規定された遊びは、この場合、ストッパエレメントの半径方向の変形と同一の大きさであってよいことが予め規定されていてよい。ストッパエレメントの自動的なセンタリングにより、変形も自動的に分配されていてよい。振り子質量体の、互いに対して僅かにずれたインパルスもしくは力は、自動的にストッパエレメントの僅かに偏心的な支承をもたらす。
【0010】
有利には、ストッパエレメントは、回転面において、遊びの量だけ自由に移動可能である。特に、ストッパエレメントは、別の半径方向の支承部なしでも十分に機能する。ストッパエレメントは、このような形式で浮動式に支承されていてよい。
【0011】
ストッパエレメントは、回転軸線を中心として回転可能に取り付けられていてもよい。ストッパエレメントの回動性により、回転軸線に関するストッパエレメントの自動的な位置決めのために寄与し得る別の自由度が使用され得る。
【0012】
別の態様では、ストッパエレメントを半径方向でセンタリングするための弾性的なエレメントが設けられている。ストッパエレメントは、これにより、回転軸線を中心とした回転時に過剰なアンバランスが発生させられることを、阻止されていてよい。そうでない場合には、このアンバランスは、振り子質量体がストッパエレメントに接触していない場合に主に発生し得る。
【0013】
弾性的なエレメントは、有利には、ストッパエレメントと、半径方向内側に位置する構成部材との半径方向の間で作用する。半径方向内側に位置する構成部材は、上述のストッパ面を含んでいてよい。特に、弾性的なエレメントは、上述の遊び内に収容されていてよく、この場合、ストッパエレメントの可動性は、弾性的なエレメントの最終的な圧縮性により、遊びの量よりも小さくされ得る。
【0014】
有利な態様では、弾性的なエレメントは、波形リングを含んでいる。この波形リングは、簡単かつ廉価に製造可能であり得る。別のバリエーションでは、弾性的なエレメントはエラストマを含んでいる。弾性的なエレメントは、回転軸線を中心とした予め規定された点に配置されているか、または回転軸線を取り囲んで環状に延びていてよい。エラストマは、その圧縮性の改善された緩衝を提供することができる。
【0015】
さらに別の態様では、弾性的なエレメントが、ストッパエレメントに一体的に形成されている。特に、弾性的なエレメントは、半径方向内方に突出する1つまたは複数のタブ、舌片または区分を含んでいてよく、上述のストッパ面のような半径方向内側に位置するエレメントに関して弾性的に作用する。
【0016】
本発明を添付の図面に関連して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】
図1および
図2に示した装置の別の実施の形態を示す断面図である。
【
図4】
図1および
図2に示した装置の別の実施の形態を示す断面図である。
【
図5】
図1および
図2に示した装置の別の実施の形態を示す断面図である。
【
図7】
図1から
図6に示した装置の実施の形態を示す断面図である。
【
図8】
図6および
図7に示した遠心力振り子の別の実施の形態を示す図である。
【
図9】
図6および
図7に示した遠心力振り子の別の実施の形態を示す図である。
【
図10】
図6および
図7に示した遠心力振り子の別の実施の形態を示す図である。
【
図11】
図6および
図7に示した遠心力振り子の別の実施の形態を示す図である。
【0018】
図1は、回転軸線105を中心としてトルクを伝達するための装置100の断面図を示している。装置100は特に、たとえば自動車のパワートレーンにおいて使用され得る。装置100は、回転運動もしくはトルクを入力側110と出力側115との間で伝達し、この場合に回転運動の不整を遮断するかもしくは除去するために、調整されている。
【0019】
入力側110は、
図1に図示された有利な実施の形態では、外側歯列を有するクラッチディスク(図示せず)に噛み合うための内側歯列125を備えたクラッチバスケット120を含んでいる。クラッチバスケット120、クラッチディスクおよび別のクラッチバスケットは、トルクを制御可能に伝達するためのクラッチに含まれていてよい。出力側115は、ハイドロダイナミック式のトルクコンバータ、特にそのタービンに結合されていてよい。
【0020】
入力側110は、弾性的なエレメント130の第1の軸方向の端部に係合し、回転軸線105を中心として配置されている。弾性的なエレメント130は、種々異なる実施の形態において、真っ直ぐな円筒コイルばねまたは回転軸線105を中心として延びる円弧形コイルばねを含んでいてよい。さらに、弾性的なエレメント130は、直列または並列に配置された複数の弾性的なエレメントを含んでいてよい。弾性的なエレメント130は、ダンパ135の部材であり、ダンパ135内で、弾性的なエレメント130は通常、回転可能な2つの構成部材の間に以下のように緊締されている。すなわち、これらの構成部材の正方向の回動だけではなく逆方向の回動も、弾性的なエレメント130の圧縮を生ぜしめるように緊締される。ダンパ135は、入力側110の回転不整を出力側115から遮断する。図示していない別の実施の形態において、ダンパ135には、装置100を通る力伝達経路において別のダンパ135が接続してよい。
【0021】
弾性的なエレメント130の第2の軸方向の端部には、遠心力振り子140が係合する。遠心力振り子140は、弾性的なエレメント130に軸方向で面している第1の振り子フランジ145と、軸方向で弾性的なエレメント130から離れた側に位置する第2の振り子フランジ150とを含んでいる。第1の振り子フランジ145と第2の振り子フランジ150との軸方向の間では、振り子質量体155が、回転軸線105を中心とした回転面内で移動可能に、第1の振り子フランジ145および第2の振り子フランジ150に設けられている。振り子質量体155の半径方向の内側では、第1の振り子フランジ145および第2の振り子フランジ150は、互いに対して力接続式に結合されている。選択的には、第1の振り子フランジ145および第2の振り子フランジ150の間に別の力接続式の接続部、たとえば振り子質量体155の半径方向外方の力接続式の接続部、またはピンの形状の力接続式の接続部が設けられていてよく、この場合、ピンは、1つの実施の形態において、振り子質量体155に設けられた軸方向の切欠きを通じて延びていて、この切欠きと共に、振り子質量体155の振り子軌道を確定するためのスライドガイドを形成する。
【0022】
有利には、ダンパ135もしくは弾性的なエレメント130および振り子質量体155は、半径方向外側に位置している。特に、ダンパ135および遠心力振り子140の半径方向外側の輪郭が、装置100の半径方向外側の輪郭も規定していると有利である。クラッチバスケット120の使用時に、少なくとも弾性的なエレメント130と、さらに有利には振り子質量体155のできるだけ大きな半径方向外側の区分とが、クラッチバスケット120の半径方向外側に延びているとさらに有利である。図示された実施の形態では、遠心力振り子140は、軸方向でクラッチバスケット120に対してずらされて位置している。
【0023】
遠心力振り子140を弾性的なエレメント130に結合するためには、種々異なるバリエーションが設けられている。図示されたバリエーションでは、第1の振り子フランジ145の区分が軸方向で突出しているもしくは軸方向に曲げ出されており、これにより、弾性的なエレメント130の端面に接触することができる。突出した区分は、弾性的なエレメント130と第1の振り子フランジ145との間で力伝達するための係合エレメント160の機能を満たしている。この場合にさらに有利には、振り子フランジ145が振り子質量体155の半径方向内側で軽く段付けされていて、これにより、振り子フランジ145の、係合エレメント160へとガイドされる区分を、軸方向で振り子質量体155から遠ざけることができる。これにより、振り子質量体155の運動が、弾性的なエレメント130の運動または圧縮に左右されないことがより改良されて保証される。ダンパ135と遠心力振り子140との間の力伝達の作用に基因する第1の振り子フランジ145の可能な軸方向の変位は、振り子質量体155が第1の振り子フランジ145において緊締されることなしに、ひいては振り子質量体155の、回転軸線105を中心とした回転面における運動が阻止されることはなしに、許容され得る。
【0024】
特に弾性的なエレメント130が円弧形コイルばねとして実施されている場合に、弾性的なエレメント130を半径方向の外面で支持するためには、当付け部165が設けられていてよい。図示された実施の形態では、この当付け部165は、別個の構成部材として実施されていて、入力側110もしくはクラッチバスケット120を力接続式に弾性的なエレメント130の端面に結合しているフランジに結合されている。
【0025】
振り子質量体155の半径方向の内側には、ストッパエレメント170が設けられていて、これにより、振り子質量体155をその運動時に半径方向内方に向かって制動することができる。ストッパエレメント170は一体的に、つまりワンピースに回転軸線105を取り囲んで環状に延びていて、有利には閉じられたリングの形状を有している。リング形状は、1箇所で開いていてもよく、この箇所におけるリングの両端部は、予め規定された合口を含んでいてよい。
【0026】
図2は、
図1に示した装置100を斜視図で示している。第1の振り子フランジ145は、有利にはディスク状に実施されている。この場合、図示の実施の形態では、複数の係合エレメント160が軸方向で突出している。第1の振り子フランジ145の、半径方向で係合エレメント160に向かってガイドされる区分の段付けは、押込み加工部もしくはエンボス加工部として確認可能である。さらにピン205が示されている。ピン205は、第1の振り子フランジ145および第2の振り子フランジ150を、半径方向外側の領域において力接続式に互いに結合している。振り子質量体155の半径方向内側の領域では、第1の振り子フランジ145および第2の振り子フランジ150の、軸方向の構成部材、特にリベットによる結合部が設けられている。この結合部のためには、回転軸線105を中心として分配された一連の切欠き210が設けられている。
【0027】
図3は、
図1および
図2に示した装置100の別の実施の形態の断面図を示している。図示された実施の形態では、第1の振り子フランジ145の半径方向外側の領域が軸方向に延びている。これにより、弾性的なエレメント130の、半径方向外側で、当付け部165を形成することができる。弾性的なエレメント130との力接続式の係合のためには、上述の突出部が設けられ得るか、または別個の係合エレメント160が、第1の振り子フランジ145に接続されていて、これにより、端面側で弾性的なエレメント130の端部に接触することができる。係合エレメント160は、たとえばリベットまたは溶接により、第1の振り子フランジ145に取り付けられていてよい。
【0028】
第1の振り子フランジ145は、第2の振り子フランジ150よりも短く半径方向内方に向かって延びていて、これにより、入力側110もしくはクラッチバスケット120を力接続式に弾性的なエレメント130に結合するフランジであって、さらに半径方向内方に向かって延び得るフランジのために軸方向の構造空間を提供することができる。第1の振り子フランジ145および第2の振り子フランジ150の、もしくは図示の実施の形態では単に第2の振り子フランジ150の半径方向内側の領域は、回転軸線105に関して半径方向で、たとえばハブ305によって支承されているために、調整されていてよい。遠心力振り子140とハブ305との間のトルクの伝達はこの領域において可能である。
【0029】
図4は、
図1および
図2に示した装置100のさらに別の実施の形態の別の断面図を示している。
図3に関して上記で説明した実施の形態とは異なり、ここでは弾性的なエレメント130のための当付け部165が、
図1に示した実施の形態においてそうであるように、別個の構造エレメントとして形成されている。この別個の構造エレメントは、入力側110もしくはクラッチバスケット120に結合されている。しかし、第1の振り子フランジ145は、係合エレメント160を形成するために軸方向で突出していない。その代わりに、係合エレメント160は、
図2に示した実施の形態においてそうであるように、別個のエレメントとして構成されている。
【0030】
振り子質量体155の半径方向内側に、結合部405が設けられている。これにより、入力側110もしくはクラッチバスケット120またはこれらに結合されたフランジを軸方向で両振り子フランジ145,150に結合することができる。結合部405は、特にピンまたはリベット結合部を含んでいてよい。図示された実施の形態では、例示的にまたもやハブ305が設けられている。このハブ305には、第1の振り子フランジ145の、半径方向内側の少なくとも1つの延長部が結合されている。出力側115を形成するために、別のフランジ410が、任意に同一の結合部によって、トルク接続式に遠心力振り子140に接続されていてよい。そうでない場合には、出力側115は、ハブ305によって形成されていてもよい。
【0031】
別の実施の形態では、入力側110もしくはクラッチバスケット120の半径方向内方に向けられた区分が、回転軸線105に関して半径方向で、特にハブ305のショルダまたは別の半径方向の当付け面において支承されるために、調整されていてよい。
【0032】
図5は、
図1および
図2に示した装置100の別の実施の形態の断面図を示している。前述の実施の形態とは異なり、ここでは遠心力振り子140が、唯1つの振り子フランジ145を含んでおり、かつ2つの振り子質量体155が設けられている。これらの振り子質量体155は、振り子フランジ145の互いに異なる軸方向の側に位置している。振り子質量体155は、たとえば振り子フランジ145内の切欠きを通って延びるピンを用いて有利には互いに結合されており、この場合、切欠きは、ピンと一緒にスライドガイドを形成することができる。振り子フランジ145は、
図3に示した実施の形態に類似して、軸方向で屈曲されるか、または突出させられていてよく、これにより、弾性的なエレメント130の軸方向の端部に接触することができる。その他は、
図5に示した実施の形態は、弾性的なエレメント130の領域において、
図4に示した実施の形態のように構成されている。半径方向内側の領域において、振り子フランジ145は、
図3に関連して上記で詳細に説明されているように、特にハブ305の、半径方向の当付け面に接触することができる。
【0033】
図6は、
図1〜
図5に示した装置100の動作原理を示している。図面の上側領域には、回転軸線105を中心として分配されている複数の振り子質量体155がそれぞれ静止位置に配置されている位置において遠心力振り子140が図示されている。この静止位置では、振り子質量体155と回転軸線105との間の半径方向間隔は最大である。この場合、複数の振り子質量体155が、回転軸線105を中心とした円周上に均等に分配されていると有利である。この場合、振り子質量体155同士の周方向の相対的な間隔は、有利には同じである。2つまたは好ましくはより多くの振り子質量体155が設けられていてよい。この場合、これらの振り子質量体155が、唯1つの振り子フランジ145の軸方向の両側に配置されているか、または2つの振り子フランジ145,150の軸方向の間に配置されているかは、以下の図面においても同様に、重要ではない。
【0034】
振り子質量体155の半径方向内側には、ストッパエレメント170が配置されている。このストッパエレメント170は、一体的にかつ有利にはリング状に形成されている。リング形状とはこの場合、その長手方向軸線が回転軸線105を中心として位置している任意の、有利には不変の横断面を備えているストッパエレメント170であると理解される。有利には、リング状のストッパエレメント170は閉じられて形成されている。しかし、図示された実施の形態では、予め規定された幅の合口605を備えた開いたストッパエレメント170が設けられている。この場合、合口605において、ストッパエレメント170の端部が向かい合って位置している。
【0035】
図6の下側領域には、上に図示されたものと同一の遠心力振り子140が図示されているが、振り子質量体155は、半径方向内方に向かって移動され、かつストッパエレメント170に当て付けられている。振り子質量体155を半径方向内方に移動させるためには、振り子質量体155は、通常、
図6の上側領域に図示された位置から回転軸線105を中心として変位される必要がある。遠心力振り子140の運動時に、このことは常に同一方向で行われるので、回転軸線105からの個別の振り子質量体155の半径方向の間隔は、通常は互いに同一である。
【0036】
ストッパエレメント170は、弾性的に変形可能であるか、または弾性的に支承されているので、振り子質量体155は制動される。この場合に、ストッパエレメント170が、少なくとも振り子質量体155の衝突時に、この振り子質量体155によって回転軸線105に関して位置調整されると有利である。ストッパエレメント170への振り子質量体155の力もしくはインパルスは、これにより別の振り子質量体155に伝達され、たとえば振り子フランジ145のような位置固定された構成部材によっては受容される必要はない。ストッパエレメント170は、「浮動式」に振り子フランジ145に支承され得るので、ストッパエレメントは、回転軸線105を中心とした回転面において、予め規定された量だけ移動可能である。有利には、ストッパエレメント170も、回転軸線105を中心として回転可能に支承されている。
【0037】
図7は、
図1〜
図6に示した装置100の実施の形態の断面図を示している。この切断面は、回転軸線105を通って延びている。実質的に、遠心力振り子140だけが図示されている。この場合、例示的に2つの振り子フランジ145,150を備えた実施の形態が選択されており、2つの振り子フランジ145,150は、振り子質量体155の、互いに異なる軸方向の側に位置している。半径方向内側の領域において、遠心力振り子140は、例示的に任意のハブ305に結合されている。
【0038】
ストッパエレメント170は、振り子質量体155の半径方向内側に位置しており、
図7の図面において、回転軸線105に対してセンタリングされている。ストッパエレメント170の半径方向内側には、ストッパ面705が設けられている。このストッパ面705は、予め規定された遊び710によって、ストッパエレメント170から半径方向で離されている。ストッパエレメント170は、回転軸線105を中心とした回転面において遊び710の範囲内で自由に移動することができるか、または回転軸線105を中心として回転することができる。
【0039】
例示的に、ストッパエレメント170は、方形の横断面を有している。別の横断面形状、特に面取りされたコーナを有する方形、円形または楕円形も同様に可能である。
【0040】
図8は、
図6および
図7に示した遠心力振り子140の別の実施の形態を示している。遠心力振り子140の、
図8に示された区分は、回転軸線105に関連してストッパエレメント170を半径方向でセンタリングするための弾性的なエレメント805を含んでいる。弾性的なエレメント805は、たとえば、半径方向に作用するばねによって形成されていてよい。特に、図示された円筒形コイルばねが使用され得る。1つの実施の形態では、複数の弾性的なエレメント805が、回転軸線105を中心として分配されており、有利には均等に分配されている。弾性的なエレメント805は、半径方向内側に位置する構成部材810に関して支持されており、該構成部材810は、例示的には振り子フランジ145,150の区分によって形成されている。弾性的なエレメント805は、遊び710の領域内に位置しており、その制限された半径方向の圧縮性により、ストッパエレメント170の、回転軸線105に関する運動遊び空間を、遊び710の量よりも小さくすることができる。
【0041】
図9は、弾性的なエレメント805の2つの別の実施の形態を、
図8に示した配置で示している。弾性的なエレメント805として、それぞれ1つのエラストマ815が設けられている。エラストマ815は、左側に図示された実施の形態では円形に、かつ右側に図示された実施の形態では8の字形の横断面を有している。有利には、エラストマ815は、回転軸線105を完全に取り囲んで環状に延びている。この場合、エラストマ815は、負荷されていない状態で、ストッパエレメント170にも、半径方向内側に位置するエレメント810にも接触していてよく、または遊びが、エラストマ815の片方または両方の側に空けられたままであってよい。
【0042】
図10は、弾性的なエレメント805のさらに別の実施の形態を、
図8に示した配置で示している。左側の領域には、
図7〜
図9の視線方向に相当する、回転軸線105に沿った断面図が図示されているのに対して、右側の領域には、回転軸線105に対して垂直方向に延びる切断面を有する横断面が図示されている。図示された実施の形態では、弾性的なエレメント805が、波形リング820により形成されている。波形リング820は、たとえば金属薄板ストリップから製造可能である。波形リング820は、回転軸線105を取り囲んで環状に延びている。この場合、波形リング820の半径は、交互に増減する。この場合、波形リング820が負荷されていないと、波形リング820は、ストッパエレメント170と、内側に位置するエレメント810との間の遊び710を完全に占めていてよく、または半径方向で片側または両側に間隙を残していてよい。
【0043】
図11は、
図8の配置の弾性的なエレメント805のさらに別のバリエーションを示している。左側および右側の図面は、
図10に示した視線方向と同じ視線方向を示している。この場合、弾性的なエレメント805は、板ばね825として実施されている。この板ばね825は、ストッパエレメント170と一体的に結合されている。板ばね825は、舌片または突出部としてストッパエレメント170から突出するように加工されていてよい。図示された実施の形態では、板ばね825は対でストッパエレメント170の軸方向の両側に設けられている。別の配置、特に軸方向で片側の板ばね825、または回転軸線105を中心とした円周にわたってストッパエレメント170の軸方向で交互の側で突出するように加工されている板ばね825も同様に可能である。
【符号の説明】
【0044】
100 トルクを伝達するための装置
105 回転軸線
110 入力側
115 出力側
120 クラッチバスケット
125 内側歯列
130 弾性的なエレメント
135 ダンパ
140 遠心力振り子
145 第1の振り子フランジ
150 第2の振り子フランジ
155 振り子質量体
160 係合エレメント
165 当付け部
170 ストッパエレメント
205 ピン
210 切欠き
305 ハブ
405 結合部
410 フランジ
605 合口
705 ストッパ面
710 遊び
805 弾性的なエレメント
810 半径方向内側に位置する構成部材
815 エラストマ
820 波形リング
825 板ばね