(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584429
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】フリー接続システムを備えた発光織物要素
(51)【国際特許分類】
H05B 33/02 20060101AFI20190919BHJP
H05B 33/06 20060101ALI20190919BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20190919BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20190919BHJP
H05B 33/24 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
H05B33/02
H05B33/06
H05B33/14 A
H05B33/14 Z
H05B33/24
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-563985(P2016-563985)
(86)(22)【出願日】2014年4月23日
(65)【公表番号】特表2017-514281(P2017-514281A)
(43)【公表日】2017年6月1日
(86)【国際出願番号】ES2014070349
(87)【国際公開番号】WO2015162308
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2017年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】516299866
【氏名又は名称】ライト フレックス テクノロジー エス.エル.
【氏名又は名称原語表記】LIGHT FLEX TECHNOLOGY, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】特許業務法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クル、マーテン
(72)【発明者】
【氏名】バックシン、ビクトリア
(72)【発明者】
【氏名】カセラス コール、クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ペレス デ ラ ホズ、サンティアゴ
【審査官】
川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−152066(JP,A)
【文献】
特開2006−282997(JP,A)
【文献】
特開平06−260285(JP,A)
【文献】
特開2009−164143(JP,A)
【文献】
特開2005−085756(JP,A)
【文献】
特開2014−003026(JP,A)
【文献】
特表2006−520617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/02
H05B 33/06
H05B 33/14
H05B 33/24
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリー接続システムを備えた発光織物要素であって、
・基材層(2);
・第1電極(3);
・活性誘電層(4);
・エレクトロルミネッセンス材料、例えば硫化亜鉛からなる中間エレクトロルミネッセンス層(5);
・第2電極(6);
・透明導電層(7);
・前記基材層(2)とつなげられた反射性上部層(8)と、
・前記第1電極(3)と前記第2電極(6)とを、動作のための電子制御システムおよび電源に接続する接続部品(11)とから構成された少なくとも1つのエレクトロルミネッセンスランプを含む構造を有し、
前記上部層(8)は前記織物要素(1)の全長に沿って複数のスペース(9)を有し、
前記接続部品(11)は前記織物要素(1)の長さ方向に沿って所望の位置に結合されるクリップと複数の金属ピン(10)とを有し、
前記複数の金属ピンは織物要素(1)の全長に沿ったあらゆる位置でスペース(9)に挿入でき、
前記複数の金属ピンは前記織物要素に対する前記クリップの結合位置に応じた前記複数のスペース(9)のうち所望の複数のスペース(9)に挿入され、前記クリップの結合に伴って前記第1電極(3)と前記第2電極(6)とにそれぞれ接続されることを特徴とする発光織物要素。
【請求項2】
請求項1に記載のフリー接続システムを備えた発光織物要素であって、前記接続部品(11)の前記複数の金属ピン(10)は、前記複数のスペース(9)に挿入され、前記第1電極(3)と前記第2電極(6)とにそれぞれさし込まれる発光織物要素。
【請求項3】
請求項1ないし2のいずれかに記載のフリー接続システムを備えた発光織物要素であって、前記接続部品(11)は、前記電子制御システムおよび電源用のバッテリにつながれるワイヤレス接続システムを含んだことを特徴とする発光織物要素。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のフリー接続システムを備えた発光織物要素であって、連続式で製造された帯の形態にあることを特徴とする発光織物要素。
【請求項5】
請求項1に記載のフリー接続システムを備えた発光織物要素であって、前記基材層(2)は処理された非プラスチック織物層であることを特徴とする発光織物要素。
【請求項6】
請求項1に記載のフリー接続システムを備えた発光織物要素であって、前記上部層(8)は反射層であることを特徴とする発光織物要素。
【請求項7】
請求項6に記載のフリー接続システムを備えた発光織物要素であって、前記要素は、その全面で反射特性を有し、同様に、前記エレクトロルミネッセンスランプも、接続されたときに、反射エリアと一致して、その全面で発光することを特徴とする発光織物要素。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれかに記載のフリー接続システムを備えた発光織物要素であって、前記上部層(8)の端(8b)と前記基材層(2)との間は、はんだジョイントにより結合されることを特徴とする発光織物要素。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の目的
本発明は、この明細書のタイトルに示すように、フリー接続システムを備えた発光織物要素に関し、それは、その特定の構成に固有な利益および革新的特徴を提供し、それは、以下に詳細に説明されるとともに、現在の技術水準において特筆すべき目新しさとなる。
【0002】
本発明の目的は、視認性が低い状況下でエマージェンシーサービスによって使用される被服へと応用されるタイプの織物要素へとフォーカスされ、それは、エレクトロルミネッセンスランプを構成する一連の層で構成され、更には、反射性であり、結合点の位置を制限なしに変更可能とする構造を有するように設計されているという特別な特徴を有し、これにより、製造を、寸法を制限する切れ端毎とする代わりに連続にして、所望のサイズまたは形状へと切断されることを可能とする。
【0003】
発明の応用分野
本発明の応用分野は、エレクトロルミネッセンス反射ファブリックおよび類似の要素の製造のための産業領域の範囲内にある。
【0004】
発明の背景
視認性が僅かでしかない状況において被服を着用している人の安全のための、その被服での反射要素の使用は、よく知られている。しかしながら、これら要素は、それらへ光が照らされたときにのみ見ることができるため、制限された有効性を有している。
【0005】
電源に接続されたときに特有の光を放出するシート状の複数の層からなり、視認性が僅かでしかない状況において保護および安全のために設計された被覆へと組み込まれ得るエレクトロルミネッセンスランプの存在も、よく知られている。
【0006】
しかしながら、これらシートには、それらの端に接続を有し、これは必然的にそれらの設計に制限を与え、更に、それらの製造は特定の最大長さを有する寸法の切れ端を使用することによってなされなければならず、これは連続製造のシステムと比較して仕立てにおいて常に不利益をもたらすという事実に主に由来した、ある制限がある。
【0007】
他方で、上述したシートが組み込まれる基材は、通常、ポリカーボネートまたはポリエステルからなり、通常、上部保護層はPVCまたはポリカーボネートのシートであり、これは、シートを、フレキシビリティをわずかなものにして撓まないようにするか、ニット編みもしくはクロッシェ編み布などの非プラスチック布または印刷織布のテキスチャを有するようにする。
【0008】
したがって、現在知られているシステムの前述した制限に対して利益を提供する、改良されたタイプの発光要素を有することが望ましく、その要素の開発が、本発明の本質的な目的である。
【0009】
現在の技術水準への参照として、本発明の目的に関連した公知の数多くの様々な文献へハイライトすることは重要であり、それらの中でも、最も関連しているもの、例えば、以下の特許は注目に値する。
【0010】
−米国特許出願公開第2010231113号は、いくつかの実施形態では互いに不連続であってもよい1以上のエレクトロルミネッセンス構造を、1以上の逆反射構造に加えて含み、任意に、エレクトロルミネッセンス構造および逆反射構造を覆うように設置された除去可能なキャリアフィルムを含んだ「積層型反射性エレクトロルミネッセンス物品」に関する。
【0011】
−国際公開WO2010022317号は、照明または非照明条件下でトゥルーカラーパレットを表示するように構成されたグラフィックディスプレイアッセンブリを意味している「フレキシブル背面照光式ディスプレイ」に関する。このグラフィックディスプレイアッセンブリは、背面照光式エレクトロルミネッセンス(EL)パネルと光学インターフェース層とを含んでいる。
【0012】
−米国特許出願公開第2007161314号は、前面電極と、蛍光体層と、誘電層と、背面電極層とを含んだ「エレクトロルミネッセンス光を生じさせる方法」に関する。接続デバイスが各分割電極エリアに取り付けられ、それらは電源へと接続されるように適合されている。
【0013】
−米国特許第5491377号も、基材層と、中間蛍光体層と、活性誘電層と、第2電極と、導体と、保護層または封入材とを備えた「エレクトロルミネッセンスランプおよび方法」に関し、それは、この場合、全ての層(背面または下部電極は任意の例外)に使用される単一の非吸湿性バインダを提供し、これにより、温度変化の結果としての層間剥離や湿気に対する感受性を低減させる。
【0014】
しかしながら、前述した発明および特許のいずれも、単独でも組み合わせによっても、ここにクレームする本発明を記述するものではない。
【0015】
発明の説明
それゆえ、本発明が提案する、フリー接続システムを備えた発光織物要素は、それを採用することにより前述した目的へ申し分なく到達することができるので、その応用分野において特筆すべき目新しさとなり、これを可能とし、公知のものから区別する、それを特徴づける細部は、本明細書の末尾に含まれる特許請求の範囲に正式に書き留められている。
【0016】
前述しているように、本発明の目的である織物要素は、視認性が低い場合に、それ自体の光の放出と、それと同時に反射光とを通じて、ユーザへの保護を提供するべく、被服および他の織物物品へ応用されるように設計されており、エマージェンシーサービスによって使用される被服は、この用途の明白な一例である。
【0017】
したがって、本発明の織物要素は、具体的には、すでに知られているエレクトロルミネッセンスシートに類似した構成を有しており、基材層と、第1電極と、活性誘電層と、エレクトロルミネッセンス素子の中間層、例えば、Zn硫化物と、第2電極と、透明導電層と、上部層とから構成された一連の層を備え、反射層である上部層が、その中央エリアと基材層をつなぐ端とに、コネクタの挿入に適した、連続した一連のスペースを有しているという独特な特徴を有しており、それは、有利には、このように構成された織物要素に沿ったあらゆる位置にコネクタを組み込むことができる可能性を提供する。
【0018】
この可能性は、ひいては、織物要素を、最大長さへの制限なしに、連続ロールとして製造できることを可能にし、したがって、1つのピースの端にコネクタを必ずしも有している必要はなく、そのピースはあらゆる寸法またはサイズへ裁断される可能性を有する。
【0019】
他方で、あらゆる公知のエレクトロルミネッセンス物品について、3つの異なる基本要素、すなわち、エレクトロルミネッセンスランプと、電源のためのバッテリを備えた電子制御システムと、両者の間のケーブルまたはコネクタとが必要であることはよく知られている。
【0020】
それゆえ、本発明の織物要素では、コネクタは1つのプラスチックピースでつくられ、それは、クリップによって織物要素のあらゆる位置に結合され、2つのグラフトされた金属ピンを有し、それらは、接続のシールを保ち、それらの端にコネクタを必要としない。そのうえ、この接続部品は、グラフトされた金属ピンが外部表面へ現れて、電子制御システムおよびバッテリに、双方の要素間のケーブルによる物理的接続を有する必要なしにつながれることを可能とし、このシステムに対する追加の利益に寄与する。
【0021】
最後に、基材層について非プラスチック織物材料の使用が想定されることを強調することは、それは、フレキシビリティと、ニット編みもしくはクロッシェ編み布または印刷織布に非常に類似した撓みとを提供することから重要であり、それは、それを反射層へ結合させるべく、高周波融着の技術を使用し、双方の層が完全に結合されるように真空にする特別な処理プロセスを経る。
【0022】
こうするうえで、表面の100%に反射性を有し、さらに、反射エリアと一致して、その表面の100%でその独自の光を放出することも、そのように望まれる場合は、コネクタをつなげたときに可能である織物要素を製造することが可能である。
【0023】
エレクトロルミネッセンス表面は、警官隊の典型的なバテンバーグパターン、説明用の文字または名称、例えば、「警察」、「消防署」、「自動車クラブ」、自動車ブランドなどのように不連続であり、これと同時に、その反射能力の100%を保ちうる。
【0024】
したがって、記述されるフリー接続システムを備えた発光織物要素は、意図される目的についてこれまで知られていない構造および構成上の特徴を有する革新的な構造からなり、その理由は、その有用性とともに、要求される独占性の特権を得るための十分な根拠をそれに与える。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本記述を補完するために、および、本発明の特徴をより容易に理解できるようにする目的で、本明細書に、その一部をなし、例示を目的とし、本発明を限定するものではない以下の図面を添付する。
【
図1】
図1は、本発明の目的であるフリー接続システムを備えた発光織物要素の拡大概略断面図であって、その構造および配置を有する複数の層が描かれた図である。
【
図2】
図2は、先行する図に示されているものと類似して、本発明に係る織物要素の複数の層の構造の概略図であって、ここでは、基材層と反射層とがすでに結合され、コネクタが組み込まれて描かれている図を示している。
【
図3】
図3は、本発明の織物要素がすでに組み入れられている衣類のピースの概略図であって、そこで、そのコネクタのレイアウトを見ることができる図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
前述の図面にかんがみて、および、採用されているナンバリングにしたがい、いかに詳細に示しかつ説明する部品および要素を具備した、本発明のフリー接続システムを備えた発光織物要素の、好ましいが非限定的である実施形態の一例を、そこに確認することができるであろう。
【0027】
したがって、図面において確認できるように、当該織物要素(1)は、連続した帯の形状を有しており、
・基材層(2);
・好ましくは銀(Ag)からなる第1電極(3);
・活性誘電層(4);
・少なくとも1つの元素、エレクトロルミネッセンス塩または化合物、例えば硫化亜鉛(ZnS)からなる中間エレクトロルミネッセンス層(5);
・好ましくは金(Ag)からなる第2電極(6);
・第2電極(6)との電気接点を有し、中間エレクトロルミネッセンス層(5)を被覆した透明導電層(7);および
・端部で基材層(2)とつなげられた反射性上部層(8)
からなる少なくとも1つのエレクトロルミネッセンスランプを含む構造を有している。
【0028】
中間エレクトロルミネッセンス層(5)の硫化亜鉛(ZnS)は、他のエレクトロルミネッセンス元素または化合物、例えば、銅、マグネシウム、マンガンなどでドープされた硫化亜鉛によって置き換えられうる。
【0029】
第1電極(3)、有機成分からなる中間エレクトロルミネッセンス層(5)、および第2電極(6)によって形成されるアッセンブリは、まとめてグループ化され、市販のタイプのような、有機発光ダイオード(OLED)の帯を構成しうる。
【0030】
図1および2に描かれた例では、上部層(8)は、中央エリア(8a)と、この層を基材層(2)へつないでいるそれぞれの横方向の縁(8b)との間に、この織物要素(1)の全長に沿って複数のスペース(9)を有していることを特徴としており、好ましくは、接続部品(11)の金属ピン(10)がこの全長のいずれかの位置で挿入され、この接続部品は、電子制御システムおよびその動作のための電源への接続を提供し、このピースは、いずれの位置にも設置されるように抜き取り可能である。
【0031】
好ましい実施形態では、記述した織物要素(1)は、ロール・ツー・ロールプロセスで連続的に製造されたストリップからなり、ピースの端におけるコネクタの存在は正確ではなく、それがどのような寸法へ、例えば、
図3の例に示されるような被服(12)へ適用されることを許容する。
【0032】
さらには、接続部品(11)は、好ましくは、クリップの形態のプラスチックピースからなり、したがって、織物要素のあらゆる位置で、ツールを必要することなしに、容易かつ迅速に連結および解放し、その上には、金属ピン(10)が、このピースが織物要素(1)へ取り付けられると、接続のシールを確実にするようにグラフトされている。そのうえ、任意に、この接続部品(11)は、それを、電子制御システム、および、エレクトロルミネッセンスランプに給電するバッテリ、好ましくは充電式バッテリ、例えば「Sepura」(登録商標)につなぐために、ワイヤレス接続システム(図示せず)を含み、これにより、接続部品とバッテリとの間のケーブルまたは物理的接続の存在を回避する。
【0033】
好ましくは、上部層(8)は反射層であり、また、好ましくは、基材層(2)は、都合よく取り扱われる非プラスチック織物層である。
【0034】
図面は、第1電極(3)および第2電極(6)が導電性の帯であり、それらの双方が互いに平行に基材(2)上に配置された場合を示しているが、第1電極(3)が基材(2)上に配置された下部電極であり、第2電極(6)が上部層(8)と隣接した上部電極である場合も可能である。双方の場合において、接続部品(11)のピン(10)は、
図1ないし3に示されるように、織物要素(1)の反射性上部層(8)側の同一面に存在することができる。ピン(10)は、反対側であって、織物要素(1)の縁の1つの近くに存在していることも可能である。
【0035】
エレクトロルミネッセンスデバイスは、基材層(2)、第1電極(3)、活性誘電層(4)、ZnSからなる中間層(5)、第2電極(6)、および透明導電層(7)であり、基材(2)上に直接印刷され、封入後、エレクトロルミネッセンス層(8)は、その端の位置で、基材層(2)と接合される。そのうえ、上部層(8)と基材層(2)との縁(8b)での接合は、高周波はんだ付けおよび真空はんだ付けのふさわしいプロセスによってなされる。
【0036】
全体で、織物要素(1)は、その全面で反射特性を有しており、同様に、そのエレクトロルミネッセンスランプは、接続されたときに、反射エリアと一致して、その全面で光を放出する。そのうえ、それは、あらゆる光のデザイン、例えば、四角形、放射状の線、または名称を印刷し、反射特性の本来の様子を100%保ちつつ、そのようなデザインを放射することができる。
【0037】
このように、本発明がどのようなものであるかを、それをどのように実行するかとともに十分に説明しており、あらゆる当業者が本発明の範囲とそれから導かれる利益とを理解するべく、この説明を更に長くする必要はないと考えられる。本発明が、その基本原理が変更、変化または修正されない限り、その本質の範囲内で、例示の目的で詳述したものとは細部において相違し、要求される保護が同様に及ぶ他の実施形態にしたがって実行されてもよいことに留意しなければならない。