(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584433
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】極低温移送ホース
(51)【国際特許分類】
F16L 11/20 20060101AFI20190919BHJP
F16L 59/153 20060101ALI20190919BHJP
F16L 11/12 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
F16L11/20
F16L59/153
F16L11/12 Z
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-569972(P2016-569972)
(86)(22)【出願日】2015年5月28日
(65)【公表番号】特表2017-517698(P2017-517698A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】EP2015061896
(87)【国際公開番号】WO2015181321
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2018年2月27日
(31)【優先権主張番号】14290155.2
(32)【優先日】2014年5月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514012834
【氏名又は名称】トレルボルグ・インダストリー・エスエーエス
【氏名又は名称原語表記】Trelleborg Industrie SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202577
【弁理士】
【氏名又は名称】林 浩
(72)【発明者】
【氏名】ラガリーグ ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマリー ジェームス
【審査官】
藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−189397(JP,A)
【文献】
特開昭63−225792(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0202620(US,A1)
【文献】
米国特許第03845974(US,A)
【文献】
特表2010−500523(JP,A)
【文献】
特開平11−193899(JP,A)
【文献】
特開2009−243518(JP,A)
【文献】
実開昭61−148996(JP,U)
【文献】
独国実用新案第8504102(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 9/14
F16L 11/02
F16L 11/04
F16L 11/12
F16L 11/20
F16L 59/147
F16L 59/153
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホース・イン・ホース設計であり、沖合用に構成される、極低温移送ホースであって、前記ホースは、
極低温流体用の流路を定める内側ホースと、
前記内側ホースを囲む外側ホースと、
前記外側ホースと前記内側ホースとを隔てる環状絶縁ボリューム中で前記外側ホースと前記内側ホースとの間に挟まれる中間絶縁要素と、
を備え、
前記中間絶縁要素は多層構造を備え、それぞれの層がオープン構造絶縁材料を含み、前記オープン構造絶縁材料は3Dファブリックを含む、極低温移送ホース。
【請求項2】
請求項1に記載の極低温移送ホースであって、前記3Dファブリックは、ポリマー材料を含む、極低温移送ホース。
【請求項3】
請求項1または2に記載の極低温移送ホースであって、前記中間絶縁要素は、50層まで備え、前記オープン構造絶縁材料のそれぞれの層の厚さは2‐20mmの範囲である、極低温移送ホース。
【請求項4】
請求項3に記載の極低温移送ホースであって、前記内側ホースは、約500mm(20インチ)の内径を有し、前記中間絶縁要素は7層を備え、そのそれぞれが約7mmの厚さを有する、極低温移送ホース。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の極低温移送ホースであって、前記中間絶縁要素は、前記ホースに沿って延びる本体絶縁部と、前記ホースのそれぞれの端に配置された端部と、を備え、前記本体絶縁部は可撓性を有するが、前記端部は非可撓性であり、前記本体絶縁部は前記オープン構造材料を含み、前記端部は金属部を備える、極低温移送ホース。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の極低温移送ホースであって、フィルムが、前記中間絶縁要素の絶縁層の各対の間に挟まれる、極低温移送ホース。
【請求項7】
請求項6に記載の極低温移送ホースであって、前記フィルムは、プラスチックフィルムである、極低温移送ホース。
【請求項8】
請求項6または7に記載の極低温移送ホースであって、前記フィルムの厚さは50μm‐0.5mmの範囲にある、極低温移送ホース。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の極低温移送ホースであって、前記内側ホースは結合シールスリーブを備える、極低温移送ホース。
【請求項10】
請求項9に記載の極低温移送ホースであって、前記結合シールスリーブはUHMW‐PEフィルムを含む、極低温移送ホース。
【請求項11】
請求項10に記載の極低温移送ホースであって、前記内側ホースは、PETファブリックと、PTFEフィルムと、前記UHMW‐PEフィルムと、の層で構成される、極低温移送ホース。
【請求項12】
請求項11に記載の極低温移送ホースであって、前記UHMW‐PEフィルムの厚さは、50μm‐2mmの範囲にある、極低温移送ホース。
【請求項13】
請求項11に記載の極低温移送ホースであって、前記PTFEフィルムの厚さは、12.7μm‐0.5mmの範囲にある、極低温移送ホース。
【請求項14】
請求項1に記載の極低温移送ホースを製造する方法であって、
(i)極低温流体用の流路を定める前記内側ホースを提供するステップと、
(ii)前記内側ホースを囲む前記外側ホースを提供するステップと、
(iii)前記内側ホースと前記外側ホースとの間に挟まれる前記中間絶縁要素を配置するステップであって、前記中間絶縁要素が多層構造として形成され、それぞれの層がオープン構造絶縁材料を含む、ステップと、
を含む方法。
【請求項15】
極低温液体を運ぶための請求項1〜13のいずれかに記載の極低温移送ホースの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホース・イン・ホース設計の極低温移送ホースおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
極低温移送ホースは、例えば特許文献1から、当技術分野ですでに知られており、特許文献1では基本的な種類の極低温移送ホースが記載され、それは、内側ホースと、内側ホースの周りに配置された外側ホースと、を含む。これらの2つのホースの間の空間には、絶縁材料が配置されている。
【0003】
特許文献2では、外管と、内管構造と、絶縁層と、を含む極低温移送用のホースが記載されている。外管は、ゴム層と補強層とから成り、内管構造は、管状体を含む。絶縁層は、内管構造に組み込まれる、および/または内管構造と外管との間に配置される。内管構造の部品は、全て互いに対して動くことができる、すなわち、それらは互いに、結合されない、あるいは接着固定されない。これは、層が、内管構造の屈曲の際に互いに対して動くことができるようにするためである。
【0004】
この種の複合ホースは、フィルムを重ね巻きすることによって締め付けられる。その結果として、構造は共に結合されない。これは、完全でない密封シール、いわゆる「ラビリンスシール」、をもたらし、少量の液体が、重なりの間におよび構造内に入り込み得る。「ラビリンスシール」は、100%タイトではない。それは、漏水率を減少させるだけである。ホースが極低温用途に使用されるとき、これは問題となる。重なりの間に残った液体が、ホースのウォームアップの際に液体から蒸気に変化するからである。これは、ホースを著しく損傷し得る。
【0005】
極低温流体に適するホースの別の例は、特許文献3に開示されている。このホースは、漏れを検出する手段を備え、言ってみると漏れがこの種のホースで発生する。それは、液化窒素ガスがほとんど通過しない絶縁層をさらに備える。よりタイトなホースが望ましいことは、明らかである。
【0006】
さらなる背景技術について、特許文献4および特許文献5も同じく言及されるべきである。
【0007】
上記から、改善の余地があることは明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2008/071637A2
【特許文献2】国際公開第2008/017868A2
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/0017337A1
【特許文献4】米国特許第3845974A
【特許文献5】米国特許出願公開第2010/018337A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術よりも改善した、および上述の欠点を解消または少なくとも緩和する、新しい種類の極低温移送ホースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、添付の請求項1に定められる極低温移送ホースによって今では達成されており、好ましい実施形態が従属請求項に記載されている。その目的は、添付の請求項18に記載の方法によっても達成される。
【0011】
本発明の第1態様では、以下を備える極低温移送ホースが提供される:極低温流体用の流路を定める内側ホース、内側ホースを囲む外側ホース、および外側ホースと内側ホースとの間に配置された中間絶縁要素。絶縁要素は、多層構造を備え、それぞれの層は、オープン構造材料を含む。オープン構造材料と組み合わせられた多層構造は、好ましい絶縁性能を有するホースを提供する。
【0012】
好ましくは、オープン構造材料は、3Dファブリックを備える。これは有利である。それは、この種のホース構造で使用される従来技術のファブリックよりも多くの絶縁空気を含み得るからである。
【0013】
好ましい実施形態では、3Dファブリックは、ポリマー材料を備え、それは好ましくはPETである。ポリマー材料を使用することは有利である。それは低温で十分可撓性を有するからである。さらに、PETは、極低温で、脆弱にならずに、特に可撓性を有したままである材料である。PETの別の利点は、その優れた耐疲労性と、それが極低温で脆くならないことである。それは編物ファブリックであるので、それは、曲げおよび圧縮の後で、その厚さと他の特性とを保つ。PETファブリックは、可撓性と圧縮能力の好ましい組み合わせを特徴とする。
【0014】
別の実施形態では、絶縁要素は、いくつかの層を備え、好ましくは50層までであり、3‐20層が最も好ましい。オープン構造絶縁材料のそれぞれの層の厚さは、2‐20mmの範囲であってよい。層の数は、極低温移送ホースの直径によって決まり、ホースの可撓性を依然として維持しながら、絶縁効果を最大限に高めるのに役立つ。
【0015】
一実施形態では、内側ホースは、約500mm(20インチ)の内径を有し、この実施形態では絶縁要素は7〜9、好ましくは8、層を備え、そのそれぞれが約7mmの厚さである。これは、絶縁のそれほど多くない層のために、絶縁性能と可撓性との好ましい組み合わせを有する500mm(20インチ)ホースを提供する。
【0016】
別の実施形態では、中間絶縁要素は、ホースに沿って延びる本体絶縁部と、ホースのそれぞれの端に配置された端部と、を備える。本体部は可撓性を有し、端部は非可撓性である。この構造の利点は、極低温移送ホースの本体部は可撓性を有するが、非可撓性端部は2つのホースの予想される相互接続の安定性を提供することである。
【0017】
好ましくは、中間絶縁要素の本体部は、オープン構造材料を含み、端部は、金属部および絶縁部を備える。これは、ホース全体を良好に絶縁し、ホースの大部分が可撓性を有し、金属部のおかげで、端部は、ホースを、別の極低温移送ホースと相互接続するのに十分安定にする。
【0018】
金属部は、アルミニウムを含んでよく、それは、軽量であるという利点を有する。
【0019】
好ましい実施形態では、フィルムが、絶縁要素の絶縁層の各対の間に挟まれる。フィルムの厚さは、50μm〜0.5mmの範囲であってよい。フィルムの利点は、熱対流を制限することによって、それがホースの絶縁を高めることである。それは、障壁を作り出し、渦形成を制限する。
【0020】
好ましくは、絶縁要素の絶縁層の各対の間に挟まれたフィルムは、UHMW‐PEを含む。これは有利な材料である。それは耐摩耗性に優れているからである。一実施形態では、UHMW‐PEフィルムの厚さは、50μm‐0.5mmの範囲にある。
【0021】
好ましい実施形態では、内側ホースは、結合シールスリーブを備える。結合シールスリーブは、ホースをほぼ完全にタイトにし、重大な損傷を引き起こし得るホース構造に入り込むことがないことを保証する。ほぼ完全にタイトなシールスリーブがあることの利点は、液体が構造に入り込むことができず、ホースに損傷を引き起こさないことである。好ましくは、結合シールスリーブは、UHMW‐PEを含み、それは、耐摩耗性に優れているので、有利な材料である。UHMW‐PEの他の利点は、極低温でも、非常に優れた耐疲労性である。この材料は、周囲温度で低溶融温度および機械的特性を有し、このことによって、それがホースの製造プロセスに有利になる。
【0022】
一実施形態では、内側ホースは、PETファブリック、PTFEフィルムおよびUHMW‐PEフィルムの層で構成される。この設計の利点は、PETファブリックが構造を絶縁して静水圧を支えるのに寄与することである。さらに、それはホースの絶縁に寄与し、UHMW‐PEフィルムはシールスリーブを形成し、PTFEフィルムは、PETファブリックとUHMW‐PEフィルムとの間の保護障壁を形成する。製造中、この障壁構造は有利である。それは、溶融UHMW‐PEフィルムがPETファブリックに浸透しないことを、意味するからである。好ましくは、UHMW‐PEフィルムの厚さは、50μm‐2mmの範囲にあり、PTFEフィルムの厚さは、12.7μm‐0.5mmの範囲であってよい。
【0023】
本発明の第2態様では、極低温移送ホースの製造方法が、提供される。その方法は、極低温流体用の流路を定める内側ホースを提供するステップと、内側ホースを囲む外側ホースを提供するステップと、内側ホースと外側ホースとの間に挟まれる絶縁要素を配置するステップと、を含む。絶縁要素は、多層構造として形成され、それぞれの層が、オープン構造絶縁材料を含む。
【0024】
本発明の実施形態が、以下に記載される。添付の図式的図面が参照され、それは、発明概念がどのように実行に移されるかについての非限定的例を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】極低温移送ホースの軸方向断面であり、2つのホース部分が接続される結合部を示している。
【
図3】拡大した
図2に示されている中間絶縁要素の断面部分である。
【
図4】拡大した、
図2に示されている、内側ホースの断面部分であり、結合シールスリーブ、および製造プロセス後に取り除かれる異なる材料の複数の層を含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
特定の実施形態が、これから以下により完全に記載され、添付図面が参照される。本発明は、しかしながら、多くの異なる形態で具体化されてよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈すべきでない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が徹底的で完全であるように、および本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように、例として提供される。
【0027】
ホース・イン・ホース概念は、被搬送流体と接触する内側ホースと、補強外側ホースと、を典型的に含む。内側ホースと外側ホースとは、環状絶縁ボリュームによって分けられる。
【0028】
内側ホースは、極低温で可撓性を有したままであり、静水圧を支え、一方、外側ホースは、アセンブリを補強および強化し、重度の外部荷重を支え、および圧力から生じる伸びを制限する(いわゆる「エンドキャップ効果」のため)。
【0029】
外側ホースは、マリンボンドホース技術に基づき、それは、鋼製ケーブルおよび鋼製リングで補強されたゴムで作られている。それらの材料が持ちこたえることができる最低温度は、−50℃である。
【0030】
ホース・イン・ホース設計は、絶縁アニュラスを充填する材料についての特定の要件につながる。第1に、絶縁の熱的性能は、熱侵入および従ってボイルオフガス生成を制限しながら、外側ホース部品を−50℃を上回るように維持できることが、望ましい。絶縁材料の等価熱伝導率は、100mW/mK未満である必要がある。第2に、絶縁材料は、極低温で可撓性を有したままであることが、望ましい。第3に、ホースが圧力を受けているとき、内側ホースと外側ホースとの間の応力分布は、絶縁材料上に内側ホースによって加えられる接触圧力をもたらし、それは、絶縁厚さを減少させる傾向がある。絶縁性能を維持するために、材料が高圧縮剛性を呈することが、望ましい。
【0031】
絶縁、またはスペーサー、ホースのファブリックは、好ましくは、2つの壁を含み、両方の壁をつないでいるマルチフィラメント糸および多数のモノフィラメント糸で編まれた、二重壁編物ファブリックである。
【0032】
PETの糸は、その優れた疲労性能、および極低温で働く性能のために、絶縁材料として選択される。この材料は、極低温での可撓性と、高圧縮剛性と、を併せ持った直交異方性特性を呈する。この材料のオープン構造は、本質がアニュラスから酸素および水分を取り除くことにある、迅速アニュラスブランケットを可能にする。潜在的天然ガス浸透も、容易に排気される。500mmの内径を有するホースについて、絶縁アニュラスは、3Dファブリックの8層で充填されることができ、3Dファブリックの8層は、それぞれ6mm厚さであり、自然対流を低減するようにUHMW‐PEフィルムによって隔てられる。
【0033】
図1および2に関し、本発明の実施形態に従った沖合用の2つの極低温移送ホース1の接続部の断面が、示されている。2つのホース1またはホースアセンブリは、
図1では非可撓性端部8を介して相互接続され、極低温流体用のオープン流路3を作り出している。
【0034】
図2では、本発明の実施形態に従った極低温移送ホースの断面が、示されている。ホース1は、「ホース・イン・ホース」概念に基づき、極低温ホースが、環状絶縁ボリュームによって隔てられた内側ホースと外側ホースとを備えている。内側ホースは、内側ホースを完全にシールする薄い結合シールスリーブを備えてよい。シールスリーブがほぼ完全にタイトであるので、流体は、ホース構造内に入り込むことができない。スリーブの回旋形状および薄い厚さの結果として、それは、極低温で可撓性を有したままである。極低温移送ホース1は、内側ホース2と、外側ホース4と、中間絶縁要素5と、を含む。外側ホース4は、鋼製ケーブルおよびリング14で補強された、例えば主に天然ゴムである、軟質ゴムを備える。内側ホース2は、螺旋ワイヤ15の2つの層によって取り巻かれ、それは、内側ホース2に回旋状の外観を与え、ホース1の可撓性を高める。
【0035】
中間絶縁要素5は、本体絶縁部7と、ホース1の両端に配置された端部8と、を含む。本体絶縁部7は、ホース1に沿って延び、可撓性を有し、一方、端部8は、2つの隣り合うホース部分の間に安定した相互接続を形成するように、非可撓性である。本体絶縁部7は、多層オープン構造絶縁材料を含み、それは、PETを含んでいる3Dファブリックを含み、
図3により詳しく示され、これに関連してより徹底的に記載されている。多層構造の層6の数は、ホース1の直径によって決まり、ホース1の絶縁と可撓性との好ましい組み合わせを提供する。
【0036】
実施された試験は、絶縁材料の7‐9層、特に8つの3Dファブリック層、が有利な結果を証明することを示している。変形では、変更された絶縁層構造が使用され、内側ホースを覆うフリース材料の1つの層、およびそしてフリース層を覆う8つの3Dファブリック層を含んでいる。
【0037】
非可撓性端部8は、金属部を含み、それは好ましくはアルミニウムを含む。さらに、非可撓性端部8は絶縁部を有し、絶縁部は、好ましくは硬質フォームを含むが、それは、少なくともある程度、可撓性繊維状フリース材料、またはオープン構造絶縁材料も含み得る。非可撓性端部8も絶縁を備えるので、ホース1の大部分は絶縁され、冷たさが構造から漏れ得る部分はほとんどない。
【0038】
図3は、中間絶縁要素5の多層オープン構造絶縁材料の一部の一例を、拡大して示す。この実施形態では、絶縁要素5は、絶縁材料(すなわちオープン構造3Dファブリック材料)の4つの層6を備える。一実施形態では、中間絶縁要素5のオープン構造絶縁材料は、ポリマー材料を含み、それは好ましくはPETである。オープン構造絶縁材料の厚さ(すなわち1つの絶縁層6)は、好ましくは2mm‐20mmの範囲にある。500mm(20インチ)直径ホースでは、オープン構造絶縁材料の厚さは、好ましくは6mmである。絶縁要素5の層の数は、ホース1の直径によって異なるが、全てのホースは、絶縁5が材料のいくつかの層6を備えるという共通点がある。500mm(20インチ)ホースでは、絶縁の7つの層6が、好ましい。絶縁層6の好ましい数は、他の実施形態では2〜50の範囲であり得る。
【0039】
3Dファブリックのそれぞれの層6の間に、プラスチックフィルム10が挟まれる。このフィルム10は、一実施形態では、好ましくはUHMW‐PEを含んでいるプラスチックフィルムであり得る。フィルム10の厚さは、好ましくは50μm‐0.5mmの範囲にある。500mm(20インチ)直径ホースの場合では、フィルム10の厚さは、好ましくは80μmである。フィルム10は、熱対流を制限することによってホース1の絶縁を向上させるために構造内に提供される。フィルム10は、熱対流用の障壁を形成する。それは、渦形成も制限し、こうしてホース1の絶縁性能を向上させる。
【0040】
中間絶縁要素5の製造プロセス中に、窒素ガスが好ましくは絶縁層6を通過し、絶縁要素5が完全にシールされる前に、空気(すなわち酸素および水分)を取り除く。空気除去の理由は、中間絶縁要素5の内部の氷生成を回避するためである。そのような氷生成は、絶縁性を低減するからである。
【0041】
図4は、極低温移送ホース1の一実施形態の製造プロセスの一部中の内側ホースを構成している材料の異なる層を示す。この実施形態では、製造プロセスは、以下のステップを備える:マンドレルに異なる材料を巻くステップ、アセンブリを加熱するステップ、いくつかの層を取り除くステップ、巻く、加熱する、取り除く、および層の所望の数が実現するまでそのように続けるステップ。マンドレルに巻かれた材料は、この実施形態では、ホースの内側から順に、鋼線15、ファブリック12の2つの層、第1のフィルム13の1つの層、第2のフィルム11の2つの層、第1のフィルム13の1つの層、ファブリック12の1つの層、およびPAテープ16、である。
【0042】
異なる材料11,12,13,15,16の層を巻いた後で、内側ホース2構造全体は、第2のフィルム11の融点を上回る点まで加熱される。第2のフィルム11は、こうして溶融されるが、第2フィルム11からファブリック12を離す第1のフィルム13のおかげで、ファブリック12に溶融フィルム11が進入しない。内側ホース2構造は、それから室温に戻るように冷まされ、その後、PAテープ16、ファブリック12の最後の層、および第1のフィルム13の最後の層が、取り除かれる。
【0043】
製造プロセスは、ファブリック12の2つの追加の層、第1のフィルム13の1つの層、第2のフィルム11の2つの層、第1のフィルム13の1つの層、ファブリック12の1つの層、およびPAテープ16、を巻くことによって進行する。ホース構造2は再び加熱され、フィルム11のさらなる層が溶融される。この巻き、加熱/溶融、除去および冷却プロセスは、層の所望の量が実現するまで繰り返される。さらに、製造プロセスは、外側鋼線15を巻くことによって終了する。
【0044】
流体移動阻止シールが、こうしてフィルム11の溶融層(結合シールスリーブ11とも称される)によって内側ホース2に実現する。これは、流体が構造に入り込むリスクを低下させ、および従って流体が液体から気体に変化する際にホースを損傷するリスクを低下させる、極低温移送ホース1を提供する。
【0045】
第1のフィルム13は、PTFEを含み、このフィルム13の厚さは、12.7μm‐0.5mmの範囲にある。第2のフィルム11は、UHMW‐PEを含み、100%タイトである結合シールスリーブ11を形成する。UHMW‐PEフィルム11の厚さは、50μm‐2mmの範囲にある。鋼線15の直径は、2mm‐20mmの範囲にある。ファブリック12は、PETを含む。PET‐ファブリック12の厚さは、0.55mmである。PAテープは、高張力下で重なり合って巻かれる。PAテープは、鋼線と同じピッチで巻かれる。
【0046】
本発明の実施形態に従った3D絶縁の極低温移送ホースが、従来の種類の極低温移送ホースと比較して試験された。試験された3D絶縁ホースは、PET‐ファブリック、UHMW‐PEフィルムおよびPTFEフィルムの層を備える内側ホース、中間3D絶縁要素、および最後にゴム材料の外側ホース、によって構成された。外側ホースは、鋼製ケーブルおよびワイヤ補強を有した。3D絶縁要素は、PETの3Dファブリックの層で構成された。試験された従来技術のホースは、基本的に背景技術で言及された特許文献1で開示された種類のものであり、それは、内側ホースおよび外側プラスチックホースによって構成された。内側ホースと外側ホースとの間に、フリース絶縁材料が配置された。
【0047】
極低温での圧縮剛性および崩壊圧の試験が、実施された。これらの絶縁試験の結果は、以下の表に示される。
【0049】
これらの試験から、3D絶縁要素は本発明の実施形態に従って構成されたホースの特性を向上させることが分かる。
【0050】
当然のことながら、発明概念は上記の実施形態に限定されず、多くの変更が、添付の請求項に記載された発明の範囲内で実現可能である。記載されているように、層の数は、絶縁要素およびホース寸法内で異なってよく、壁の厚さ等も同様に異なってよい。