(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の集中豪雨は、いわゆるゲリラ豪雨のように、ごく短時間で想定外の大きな雨量となる場合が多い。このような集中豪雨の場合、水位検知器で水位を検知してからエレベーターの運転休止動作、浸水防止運転、防水シャッタの閉止等の浸水対応動作を開始しても、エレベーターへの浸水を防止できない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、集中豪雨発生の際のエレベーターへの浸水を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエレベーターシステムは、エレベーターと、前記エレベーターの運行制御を行う制御装置と、前記制御装置と接続され、気象情報提供サービスセンタと通信を行う通信装置と、を含むエレベーターシステムであって、
前記気象情報提供サービスセンタは、各地の集中豪雨情報を含む気象情報と前記エレベーターの設置地点の住所とを格納するデータベースを含み、前記エレベーターの前記設置地点の周辺で集中豪雨が発生する可能性があると判断した場合には、降雨開始予想時刻を含む集中豪雨発生予測メールを発信し、前記通信装置は、
前記集中豪雨発生予測メールを前記気象情報提供サービスセンタから受信した際に、
前記集中豪雨発生予測メールから前記降雨開始予想時刻を抽出し、抽出した前記降雨開始予想時刻をメール受信信号と共に前記制御装置に出力し、前記制御装置は、前記通信装置から前記メール受信信号
と前記降雨開始予想時刻とが入力された際に、
前記降雨開始予想時刻に応じて前記エレベーターの浸水対応動作を行わせるタイミングを調整し、前記エレベーターに浸水対応動作を行わせること
、を特徴とする。
【0009】
本発明のエレベーターシステムにおいて、前記浸水対応動作は、浸水が予想される階に前記エレベーターを停止させないように前記エレベーターを運行する浸水退避運行としてもよい。
【0010】
本発明のエレベーターシステムにおいて、前記エレベーターの浸水を防止する浸水防止装置を含み、前記制御装置は、前記エレベーターの運行制御と前記浸水防止装置の駆動制御とを行い、前記浸水対応動作は、浸水が予想される階に前記エレベーターを停止させないように前記エレベーターを運行する浸水退避運行あるいは前記浸水防止装置の作動のいずれか一方または両方としてもよい。
【0011】
本発明のエレベーターシステムは、第1エレベーターと、前記第1エレベーターの運行制御を行う第1制御装置と、前記第1制御装置と接続され、気象情報提供サービスセンタと通信を行う第1通信装置と、第2エレベーターと、前記第2エレベーターの運行制御を行う第2制御装置と、前記第2制御装置と接続され、前記第1通信装置と通信を行う第2通信装置と、を含むエレベーターシステムであって、前記第1通信装置は、前記第1エレベーターの設置地点の周辺で集中豪雨が発生する可能性があることを通知する集中豪雨発生予測メールを前記気象情報提供サービスセンタから受信した際にメール受信信号を前記第1制御装置と前記第2通信装置とに出力し、前記第1制御装置は、前記第1通信装置から前記メール受信信号が入力された際に、前記第1エレベーターに浸水対応動作を行わせ、前記第2通信装置は、前記第1通信装置から前記メール受信信号が入力された際に、前記メール受信信号を前記第2制御装置に出力し、前記第2制御装置は、前記第2通信装置から前記メール受信信号が入力された際に、前記第2エレベーターに浸水対応動作の予報を行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、集中豪雨発生の際のエレベーターへの浸水を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら実施形態のエレベーターシステム100について説明する。
図1に示すように、本実施形態のエレベーターシステム100は、建屋10の昇降路11の中に設置されたエレベーター20と、エレベーター20の運行制御を行う制御装置27と、気象情報提供サービスセンタ40およびエレベーター管理情報センタ50との間で通信を行う通信装置28とを含んでいる。
【0015】
エレベーター20は、乗客を乗せて昇降するかご22と、かご22を吊り下げるロープ23と、ロープ23のかご22と反対側の端部に取り付けられた錘25と、ロープ23を駆動する巻上機24とを備えている。巻上機24は、昇降路11の上部に配置された機械室21に設置されている。また、エレベーター20の制御装置27と通信装置28も機械室21の内部に設置されている。このように、通信装置28は、エレベーター20、制御装置27と同一地点に設置されている。かご22には乗客が乗降するドア26が設けられている。また、建屋10の乗り場階12にはドア26と連動して開閉する乗り場ドア13が設けられている。建屋10の乗り場ドア13の前面には、昇降路11の内部への浸水を防止する浸水防止装置である防水シャッタ15が取り付けられている。なお、
図1中の破線で囲った(a)は、乗り場ドア13と防水シャッタ15とを建屋10の側から見た図である。
【0016】
制御装置27は、かご22の内部に配置された行き先階ボタンや乗り場階12に配置された呼びボタンに応じて巻上機24や図示しないブレーキを制御してかご22を昇降、停止させると共に、かご22のドア26と乗り場ドア13の開閉を行う。また、制御装置27は、防水シャッタ15の開閉制御も行う。制御装置27は、内部に情報処理を行うCPUとエレベーター20の制御プログラム、制御データ等を格納するメモリとを備えるコンピュータである。
【0017】
通信装置28は、インターネット等の通信ネットワーク30を介してエレベーター管理情報センタ50の通信装置51との間で通信を行うと共に、通信ネットワーク30を介して気象情報提供サービスセンタ40の通信装置41からメールの受信を行う。また、通信装置28は、制御装置27と接続されてデータ、信号の授受を行うよう構成されている。通信装置28は、通信機能と共に、内部に情報処理を行うCPUと動作プログラムあるいはデータを格納するメモリとを含むコンピュータであり、受信したメールの内容を分析してデータを抽出したり、受信したメールからメール受信信号を生成したりすることができる。
【0018】
エレベーター管理情報センタ50は、エレベーター20に異常が発生していないかどうか等を遠隔監視する設備で、サーバである情報処理装置52は、エレベーター20の設置地点、型番、製造番号、故障履歴、運転履歴、保守履歴等の各種データに基づいて、エレベーター20の異常の発生を監視する。エレベーター20の遠隔監視は、例えば、制御装置27が所定のスケジュールに従ってエレベーター20の運転データを通信装置28に出力し、通信装置28がこの運転データをエレベーター管理情報センタ50に送信する。エレベーター管理情報センタ50の情報処理装置52は、通信装置51を介して入力されたエレベーター20の運転データを分析し、エレベーター20の状態を監視する。
【0019】
気象情報提供サービスセンタ40は、サーバである情報処理装置42の中に各地の集中豪雨情報を含む気象情報を格納している。また、情報処理装置42は、データベースを有し、その中に、顧客の登録地、メールアドレス等を格納している。気象情報提供サービスセンタ40は、データベースに格納している各地の集中豪雨情報から、例えば、10分から30分以内の短時間の内に顧客の登録地の周辺で集中豪雨が発生する可能性がある場合には、登録された顧客のメールアドレスに対して
図2に示すような集中豪雨発生予測メールを発信する。
【0020】
次に、エレベーターシステム100の動作について
図3を参照しながら説明する。以下の説明では、気象情報提供サービスセンタ40のデータベースの登録地には、通信装置28の設置地点でもあるエレベーター20の設置地点が登録されており、メールアドレスには、通信装置28の固有メールアドレスが登録されているとして説明する。また、以下の説明では、エレベーター20の浸水対応動作は、浸水が予想される地下階および地上階にエレベーター20を停止させず、二階以上の階にのみ停止するようにエレベーター20を運行する浸水退避運行と、地下階および地上階の防水シャッタ15を閉める浸水防止装置の作動であるとして説明する。
【0021】
気象情報提供サービスセンタ40の情報処理装置42は、データベースに格納している集中豪雨情報に基づいて登録地であるエレベーター20の設置地点の周辺に10分から30分以内に集中豪雨が発生する可能性があると判断した場合、登録メールアドレスである通信装置28の固有メールアドレスに向けて
図2に示すような集中豪雨発生予測メールを発信する。
図2に示すように、集中豪雨発生予測メールには、件名として「集中豪雨発生予測メール」、通信日時、登録地としてエレベーター20の設置地点の住所が含まれている。また、文中には、「登録地の周辺で集中豪雨、雷雨発生の可能性があります」という定形文と、降雨開始予想時間である雨の降り出し予想時間が記載されている。また、文末には、発信者名が「気象情報提供サービスセンタ」と記載されている。
【0022】
図3のステップS101に示すように、通信装置28は、気象情報提供サービスセンタ40から集中豪雨発生予測メールを受信するまで待機する。集中豪雨発生予測メールの受信の有無は、メールの発信元のアドレスによって判断してもよいし、メールの文中に発信者名として「気象情報提供サービスセンタ」の文字が含まれていることによって判断するようにしてもよい。
【0023】
通信装置28は、気象情報提供サービスセンタ40から集中豪雨発生予測メールを受信したら、
図3のステップS101でYESと判断して
図3のステップS102に進む。
【0024】
通信装置28は、
図3のステップS102で、
図2に示す集中豪雨発生予測メールの文中のテキストデータの中から、降雨開始予想時刻を抽出し、
図3のステップS103に進んで制御装置27に出力するメール受信信号を生成する。そして、
図3のステップS104に進んで、制御装置27に対してメール受信信号と降雨開始予想時刻データを出力する。
【0025】
制御装置27は、通信装置28からメール受信信号と降雨開始予想時刻データが入力されると、
図3のステップS105において、浸水対応動作開始時刻を計算する。浸水対応動作が浸水退避運行と浸水防止装置の作動の場合、制御装置27は浸水退避運行の開始時刻と、浸水防止装置作動開始時刻を算出する。例えば、制御装置27は、エレベーター20の浸水退避運行の開始時刻を降雨開始予想時刻の20分前、浸水防止装置である地下階および地上階の防水シャッタ15を閉めるのは、その5分後のように各開始時刻を計算する。そして、制御装置27は、その時刻になるまで待機する。このように、制御装置27は、降雨開始予想時刻に応じてエレベーター20の浸水対応動作を行わせるタイミングを調整する。
【0026】
そして、浸水対応動作の開始時刻になったら、制御装置27は、
図3のステップS106に進んで、浸水対応動作を開始する。先の例によれば、制御装置27は、まず、エレベーター20の浸水退避運行を開始し、エレベーター20が地下階および地上階に停止せず、二階以上の階にのみ停止するように停止階を制限する。そして、5分間、浸水退避運行を行ったら、地下階および地上階の防水シャッタ15の閉止を開始する。防水シャッタ15の閉止には、1−2分程度の時間がかかる。この結果、降雨開始予想時刻の10分前には、浸水対応動作への移行が完了する。
【0027】
その後、集中豪雨が始まったら浸水対応動作状態を保持して、
図3のステップS107に示すように、浸水対応動作が解除されるまで待機する。
【0028】
浸水対応動作の解除にはいろいろな方法があるが、例えば、エレベーター20の管理者が降雨の終了を確認して制御装置27の解除ボタンを押すことによって浸水対応動作を解除してもよい。
【0029】
浸水対応動作が解除されたら、制御装置27は、
図3のステップS108に進んで、防水シャッタ15を開放し、その後、浸水退避運行を停止して全ての階にかご22が停止する通常運行に戻す。
【0030】
以上説明したように、本実施形態のエレベーターシステム100は、エレベーター20の設置地点と同一地点に設置されている通信装置28が集中豪雨発生予測メールを受信したことにより、エレベーター20に浸水対応動作を行わせるので、集中豪雨が発生する前にエレベーター20を浸水対応動作状態に移行させることができる。これにより、集中豪雨発生の際のエレベーター20への浸水を効果的に抑制することができる。また、集中豪雨発生により乗客の閉じ込めが発生することを抑制することができる。
【0031】
また、本実施形態のエレベーターシステム100では、エレベーター管理情報センタ50からの指令等によらず、気象情報提供サービスセンタ40から送信される集中豪雨発生予測メールによってエレベーター20に浸水対応動作を開始させるようにしている。このため、エレベーター管理情報センタ50からポーリングによって指令等を送信する際のような指令送信の遅れが無く、タイムリーに浸水対応動作を開始することができる。これにより、集中豪雨発生の際のエレベーター20への浸水や乗客の閉じ込めの発生を効果的に抑制することができる。
【0032】
以上の説明では、エレベーター20の浸水対応動作としてかご22の地下階、地上階への停止を制限する浸水退避運行と、防水シャッタ15を閉止することの2つを行うこととして説明したが、これに限らず、例えば、エレベーター20のかご22を上の階に停止させた状態でエレベーター20の運行を停止させた状態としてもよい。また、浸水退避運行と防水シャッタ15の閉止のいずれか一方のみを行うようにしてもよい。また、通信装置28は、集中豪雨発生予測メールを受信した際に、エレベーター管理情報センタ50にもメール受信信号を発信し、エレベーター管理情報センタ50は、入力されたメール受信信号に基づいてエレベーター20に近接して設置されている他のエレベーター20に対して浸水対応動作開始の指令を送信して、近接して設置されている他のエレベーター20に浸水対応動作を開始させてもよい。
【0033】
なお、上記の説明では、通信装置28は1つのエレベーター20の1つの制御装置27と接続されていることとして説明したが、これに限らず、例えば、複数のエレベーター20が設置されている一つのビルの中に1つの通信装置28を設け、1つの通信装置28と各エレベーター20の各制御装置27とを接続し、1つの通信装置28から複数の制御装置27に対してメール受信信号、降雨開始予想時刻のデータを出力するように構成してもよい。
【0034】
また、降雨開始予想時刻は、例えば、集中豪雨発生予測メールが集中豪雨発生予想時刻の10分前に発信されるような場合には、降雨開始予想時刻を抽出し、降雨開始予想時刻に応じてエレベーター20の浸水対応動作を行わせるタイミングを調整することなく、集中豪雨発生予測メールを受信したら、すぐに浸水対応動作を開始するようにしてもよい。
【0035】
次に、
図4を参照しながら、他のエレベーターシステム200について説明する。先に
図1から
図3を参照して説明したエレベーターシステム100と同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0036】
図4に示すように、エレベーターシステム200は、第1エレベーター20と第2エレベーター120を備えている。第1エレベーター20は第1制御装置27と第1通信装置28とを備えている。また、第2エレベーター120は、第2制御装置127と第2通信装置128とを備えている。第1エレベーター20、第2エレベーター120、第1制御装置27、第2制御装置127、第1通信装置28、第2通信装置128の構成は、先に
図1から
図3を参照して説明したエレベーター20、制御装置27、通信装置28と同様である。ただし、第1通信装置28と第2通信装置128とは通信ネットワーク35を介して相互に通信することができる構成となっている。なお、第2エレベーター120は、第1エレベーター20の近隣に設置されているものである。
【0037】
次に
図5を参照しながら、エレベーターシステム200の動作について説明する。以下の説明では、第2エレベーター120は第1エレベーター20の近隣に設置されているが、第1エレベーター20の第1通信装置28が集中豪雨発生予測メールを受信した際に、まだ、集中豪雨発生予測メールを受信していない場合の動作について説明する。
【0038】
図5のステップS201に示すように、第1通信装置28は、集中豪雨発生予測メールを受信するまで待機している。そして、第1通信装置28は、集中豪雨発生予測メールを受信したら、
図5のステップS202に進み、第1制御装置27にメール受信信号を出力すると共に、第2通信装置128に対してメール受信信号を発信する。第2通信装置128は、
図3のステップS203に示すように、第1通信装置28からのメール受信信号を受信したら、
図5のステップS204に示すように、第2制御装置127にメール受信信号を出力する。
【0039】
図5のステップS205に示すように、第2制御装置127は、第2通信装置128からのメール受信信号が入力されたら、浸水対応動作を開始する予報を出力する。予報の出力は、例えば、「集中豪雨が近づいています。もうすぐ地下階と一階には停止しなくなります。」、あるいは、「集中豪雨が近づいています。もうすぐエレベーターの運行を停止しますので、乗客の方は速やかにエレベーターから降りて下さい」等をかご122の中のディスプレイに表示したり、かご122の中のスピーカを通じて音声を流したりすることを行う。
【0040】
これにより、エレベーターシステム200では、集中豪雨発生予想メールを受信していない第2エレベーター120において、早期に集中豪雨の際の浸水対応動作を行うことができ、集中豪雨発生の際の第2エレベーター120への浸水を効果的に抑制することができる。また、集中豪雨発生により乗客の閉じ込めが発生することを抑制することができる。
【0041】
なお、第1通信装置28からメール受信信号が入力される第1制御装置27の動作は、先に説明した
図3のステップS105からS108と同様である。