【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によればこの課題は、独立請求項1、13及び15に記載された、接続部材を備えた板ガラス、及びこの板ガラスの製造方法並びにその使用によって解決される。従属請求項には有利な実施形態が示されている。
【0011】
本発明の課題は、コネクションブリッジを有する少なくとも1つの接続部材を備えた板ガラスにおいて、本発明に従い接続部材の材料組成とコネクションブリッジの材料組成とを、それぞれ異ならせることにより解決される。本発明による板ガラスは、少なくとも一部分の上に導電性構造体を備えた少なくとも1つの基板と、導電性構造体の少なくとも一部分の上に設けられた少なくとも1つの電気的接続部材と、接続部材の少なくとも一部分の上に設けられたコネクションブリッジと、電気的接続部材を少なくとも一部分で導電性構造体と接続する鉛フリーはんだ材料とを含んでいる。その際、接続部材の材料組成は、基板と接続部材の熱膨張率の差が5×10
-6/℃よりも小さくなるように選定される。このようにすることで、板ガラスの熱応力が低減し、付着特性が改善される。ただし、適切な熱膨張率を有する材料は、剛性及び/又は電気抵抗が高いことが多い。しかしコネクションブリッジの剛性が高いと、変形させるのが難しくなり、このことにより、コネクションブリッジを上に曲げることでブリッジポジションを後から調整する可能性に制限が加わる。コネクションブリッジの電気抵抗が高いことも、同様に不都合である。その理由は、組み込まれた状態において、接続部材を介して導電性構造体に電圧を加えなければならないからであり、電圧が同じであれば、抵抗が高いと電流の流れが低下してしまうからである。
【0012】
従来技術により知られているように、コネクションブリッジがじかに作り込まれた一体型の接続部材の場合には、接続部材とコネクションブリッジが必然的に同じ材料から成るので、接続部材は適合した熱膨張率を有する一方で、コネクションブリッジの剛性が高くなりすぎ、及び/又はコネクションブリッジの導電率が低くなり、或いはその逆のことが起こってしまう。これに対し、本発明のようにコネクションブリッジとともに接続部材を二体型で形成し、即ち2つの部分から成るようにすれば、それぞれ異なる材料を組み合わせることができ、したがってこの場合、接続部材自体を、適合された熱膨張率(基板のCTEとの差が5×10
-6/℃よりも小さいCTE)を有する材料によって形成する一方、コネクションブリッジを、十分良好に変形可能な銅含有材料によって構成するのである。接続部材とコネクションブリッジの材料組成をそれぞれ異なるように選定することで、これら両方の部品の材料をそれ相応の要求に合わせて最適に整合させることができる。本発明によるコネクションブリッジは中実に成形されていて銅を含んでいる。これによってコネクションブリッジは、良好に変形可能になるなるとともに、柔軟になりすぎることもない。
【0013】
容易に変形可能なコネクションブリッジであれば、力を少ししかかけずに望ましいポジションまで曲げることができる。したがって、このプロセスを手で行うことができる。また、コネクションブリッジを中実な部材として実装することにより保証されるのは、変形後もコネクションブリッジが適切なポジションのところに保持されるようになることである。このことによって、板ガラスを組み込むとき又はコネクションブリッジを接触接続するときに発生する比較的僅かな力で、そのポジションが変化してしまうことが回避される。さらにこのようにすることで、板ガラスを組み込んだ状態であっても、近づいて取り扱うことのできる正確に規定されたブリッジポジションが得られるようになる。さらにケーブルやフラット導体などのように、中実ではないフレキシブルな形態は除外される。このような形態は、コネクションブリッジとして使用するのには、まったく適していない。本発明によればコネクションブリッジの電気抵抗は、コネクションブリッジにおいて大きな電圧降下が生じないように選定される。このように、本発明によるコネクションブリッジを備えた接続部材によれば、2つの部分から成る形態ゆえに、適切な個所で用いられる材料の有利な特性が最適なかたちで利用され、従来技術により公知の一体型の接続部材の欠点が回避される。
【0014】
コネクションブリッジを備えた接続部材は、マルチピースで構成され、少なくともツーピースで構成され、その際、接続部材とコネクションブリッジは、それぞれが少なくとも1つの部品として形成される。1つの有利な実施形態によれば、接続部材はコネクションブリッジとともにツーピースで構成されており、したがってこの場合、接続部材とコネクションブリッジは、それぞれが1つの部品から成る。別の選択肢として、接続部材とコネクションブリッジがそれぞれ、任意の個数の複数の個別部分から成るようにしてもよい。
【0015】
1つの有利な実施形態によれば、銅を含有するコネクションブリッジの材料組成の電気抵抗率は、0.5μΩ・cm〜20μΩ・cmであり、好ましいのは1.0μΩ・cm〜15μΩ・cm、特に好ましいのは1.5μΩ・cm〜11μΩ・cmである。このようにすることで、熱膨張率を基板に整合させた接続部材と、導電率を向上させたコネクション部材とから成る、格別有利な組み合わせが得られるようになる。従来技術による同等の一体型接続部材も、同様に熱膨張率が基板に整合されているけれども、コネクションブリッジの電気抵抗がかなり高いので、不都合なことに大きな電圧降下が発生してしまう。
【0016】
接続部材は少なくとも1つのコンタクト面を有しており、このコンタクト面の上において、接続部材が鉛フリーはんだ材料によって面全体にわたり、導電性構造体の一部分と接合されている。1つの有利な実施形態によれば、接続部材はブリッジ形状に構成されており、その際に接続部材は、導電性構造体と接触接続させるための2つの脚部を有しており、それらの脚部の間に、導電性構造体とはじかに面接触していない盛り上げて形成された区間が存在する。好ましくは、ブリッジ形状に高くされたこの区間に、コネクションブリッジが取り付けられる。接続部材が、単純なブリッジ形状を含むようにしてもよいし、複雑なブリッジ形状を含むようにしてもよい。例えばこの場合に考えられるのは、脚部に丸みが付けられたダンベル型の形状であり、これによって均等な引っ張り応力分布が生じるようになるとともに、均等なはんだ分布を生じさせることもできる。好ましいのは、はんだ付け脚部を細長く構成した接続部材を用いることであり、その際、接続部材の各脚部は、接続部材の上に取り付けられるコネクションブリッジと同じ方向を指している。このように設計することで、好ましくは引き抜き力が高められる。この実施形態の場合にも、コンタクト面の領域で接続部材の角に丸みを付けることができ、そのようにすれば、はんだが均等に分布するようになるし、角のところに引っ張りの最大値が発生するのも回避される。
【0017】
接続部材の熱膨張率は、0℃〜300℃の温度範囲において、有利には9×10
-6/℃〜13×10
-6/℃にあり、格別有利には10×10
-6/℃〜11.5×10
-6/℃、さらに格別有利には10×10
-6/℃〜11×10
-6/℃、特に10×10
-6/℃〜10.5×10
-6/℃にある。
【0018】
接続部材は、コネクションブリッジとは異なり高い剛性を有しており、かつ変形しにくい。このことで、コネクションブリッジを湾曲させたときに接続部材が変形してしまうのが回避される。ブリッジ形状の接続部材であると特に、コネクションブリッジを変形させたときにブリッジ領域に捻れが発生し、これによって接続部材と導電性構造体との間のはんだ接続も損傷してしまう。接続部材のこのような変形は、適切な幾何学的形状の選択によって回避される一方、変形しにくい材料を使用することによっても回避される。1つの有利な実施形態によれば、接続部材の材料は20℃において、150kN/mm
2以上の弾性率を有し、特に好ましくは190kN/mm
2以上の弾性率を有する。
【0019】
本発明による接続部材は、チタン、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、銅、亜鉛、スズ、マンガン、ニオブ、及び/又はクロム、及び/又はこれらの材料から成る合金、を含んでいる。
【0020】
好ましくは、接続部材はクロム含有の鋼を含み、この場合、クロムの含有率は10.5重量%以上である。モリブデン、マンガン又はニオブなど他の合金成分によって、耐食性が向上し、或いは抗張力又は冷間成形性などの機械的特性が変化する。
【0021】
本発明による接続部材は好ましくは少なくとも、66.5重量%〜89.5重量%の鉄、10.5重量%〜20重量%のクロム、0重量%〜1重量%の炭素、0重量%〜5重量%のニッケル、0重量%〜2重量%のマンガン、0重量%〜2.5重量%のモリブデン、0重量%〜2重量%のニオブ、及び0重量%〜1重量%のチタン、を含んでいる。これらに加え接続部材は、バナジウム、アルミニウム、窒素といった他の元素の添加物を含むことができる。
【0022】
接続部材は特に好ましくは少なくとも、73重量%〜89.5重量%の鉄、10.5重量%〜20重量%のクロム、0重量%〜0.5重量%の炭素、0重量%〜2.5重量%のニッケル、0重量%〜1重量%のマンガン、0重量%〜1.5重量%のモリブデン、0重量%〜1重量%のニオブ、及び0重量%〜1重量%のチタン、を含んでいる。これらに加え接続部材は、バナジウム、アルミニウム、窒素といった他の元素の添加物を含むことができる。
【0023】
接続部材は特に格別好ましくは少なくとも、77重量%〜84重量%の鉄、16重量%〜18.5重量%のクロム、0重量%〜0.1重量%の炭素、0重量%〜1重量%のマンガン、0重量%〜1重量%のニオブ、0重量%〜1.5重量%のモリブデン、及び0重量%〜1重量%のチタン、を含んでいる。これらに加え接続部材は、バナジウム、アルミニウム、窒素といった他の元素の添加物を含むことができる。
【0024】
クロム含有鋼、特にいわゆるステンレス鋼は、経済的なコストで利用できる。しかも、クロム含有鋼から成る接続部材は、例えば銅などから成る他の慣用の接続部材に比べて、高い剛性を有しており、このことから接続部材の好ましい安定性が得られるようになる。このことによって、好ましいブリッジ形状の接続部材の場合には特に、コネクションブリッジを変形したときに接続部材が捻れてしまうのを回避できる。さらにクロム含有鋼のはんだ特性は、熱伝導率がいっそう高いことから、例えばチタンなどから成る数多くの従来の接続部材よりも良好である。特に適切なクロム含有鋼は、EN 10 088-2に準拠する材料番号1.4016, 1.4113, 1.4509及び1.4510の鋼である。
【0025】
接続部材の材料厚は、好ましくは0.1mm〜2mmであり、特に好ましくは0.2〜1mm、特に著しく好ましくは0.3mm〜0.5mmである。1つの有利な実施形態によれば、接続部材の材料厚はそのすべての領域において一定である。このことは、接続部材の製造が容易であるという点で格別有利である。
【0026】
コネクションブリッジは、銅又は銅含有合金を含む。さらにチタン、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、亜鉛、スズ、マンガン、ニオブ、ケイ素、及び/又はクロム、及び/又はこれらの材料から成る合金、を含めることができる。この場合、適切な材料組成は、その電気抵抗に応じて選定される。
【0027】
1つの有利な実施形態によれば、コネクションブリッジは、45.0重量%〜99.9重量%の銅、0重量%〜45重量%の亜鉛、0重量%〜15重量%のスズ、0重量%〜30重量%のニッケル、及び0重量%〜5重量%のケイ素、を含んでいる。電解銅のほか、種々の真鍮又は青銅の合金が材料として適しており、例えば洋銀又はコンスタンタンが適している。
【0028】
格別好ましくはコネクションブリッジは、58重量%〜99.9重量%の銅及び0重量%〜37重量%の亜鉛を含み、特に60重量%〜80重量%の銅及び20重量%〜40重量%の亜鉛を含んでいる。
【0029】
コネクションブリッジの材料の特別な例として、材料番号CW004A(以前の2.0065)の電解銅、及び材料番号CW505L(以前の2.0265)のCuZn30を挙げておく。
【0030】
コネクションブリッジは好ましくは、接続部材のブリッジ形状に構成された部分に取り付けられ、この部分は導電性構造体とじかには面接触していない。ここでコネクションブリッジの役割は、接続部材を車両の車載電子系統と接続できるようにすることである。この場合、電流は、接続部材の脚部を介して、コネクションブリッジが配置されている接続部材の中央部に流れ、さらにコネクションブリッジに向かって流れる。したがって中央部に取り付けられたコネクションブリッジは、それぞれ異なる部分電流が加算されるノードポイントを成している。この理由から、コネクションブリッジの電気抵抗は、このノードポイントにおいてできるかぎり高い導電率となるようにする目的で、つまりはできるかぎり電圧降下を少なくする目的で、特に重要である。
【0031】
コネクションブリッジを種々の幾何学的形状で成形することができ、細長い形状にするのが好ましい。この場合、丸みの付けられた実施形態も平坦な実施形態も考えられる。有利であるのは、矩形で細長いコネクションブリッジを用いることであり、このようにすることで、接続部材上にコネクションブリッジを最適な状態で取り付けのためのフラットな面が実現される。このような矩形のコネクションブリッジの幅は、2mm〜8mmであり、好ましくは4mm〜7mm、特に好ましくは4.5mm〜6.5mmであり、他方、その高さは、0.2mm〜2mmであり、好ましくは0.5mm〜1.5mm、特に好ましくは0.7mm〜9mmである。コネクションブリッジの長さは、広範囲にわたり可変である。コネクションブリッジの最小長は、コネクションブリッジを電圧源に導電接続する目的で選ばれる接触接続手段に依存する。つまり、コネクションブリッジの自由端上にスライドさせてはめ込む差し込み接続であると、例えばコネクションブリッジとじかにはんだ付けされるケーブルなどよりも所要スペースが大きくなる。コネクションブリッジの自由端が基板とはもはや平行に延在せず、基板から離れる向きを指すよう、コネクションブリッジを変形するのが有利である。したがってコネクションブリッジは、このような変形を実現するのに十分な長さでなければならない。一般的には、10mm〜150mmの長さのコネクションブリッジが用いられ、好ましくは20mm〜80mmの長さのものが用いられる。
【0032】
1つの有利な実施形態によれば、コネクションブリッジは、高さが0.8mmであり、幅が4.8mm又は6.3mm又は9.5mmの規格の自動車用ブレード端子を、コネクションブリッジの自由端に差し込めるようなサイズに選定されている。特に好ましいのは、幅6.3mmのコネクションブリッジの実施形態を適用することである。その理由は、このようなサイズは、この分野で一般に使用されているDIN 46244に準拠した自動車用ブレード端子にマッチしているからである。慣用の自動車用ブレード端子のサイズに合わせてコネクションブリッジを規格化すれば、基板の導電性構造体を車載電源と接続するための簡単かつリバーシブルな構成を得ることができる。このようにすれば、接続ケーブルのケーブル破損が生じても、欠陥パーツを交換するためにはんだ付けを新たに行う必要がなく、代替ケーブルをコネクションブリッジに差し込むだけよい。ただし別の選択肢として、コネクションブリッジの電気的な接触接続を、はんだ付け又は圧着接続によって実施してもよい。
【0033】
コネクションブリッジの接触接続のために利用可能な接続ケーブルは基本的に、導電性の構造を電気的に接触接続するために当業者に知られているすべてのケーブルである。導電性コア(内部導体)のほか、有利にはポリマーの絶縁性外装も接続ケーブルに含めることができ、その際、接続部材と内部導体との導電接続が可能となるよう、好ましくは接続ケーブルの終端領域において絶縁性外装が除去されている。
【0034】
接続ケーブルの導電性コアが、例えば銅、アルミニウム、及び/又は銀、或いはこれらの材料の合金又は混合物を含むようにすることができる。導電性コアを、例えば撚線又は単線として実装することができる。接続ケーブルの導電性コアの断面積は、本発明による板ガラスを使用するのに必要とされる電流耐性に合わせられ、当業者が適宜選定することができる。断面積は、例えば0.3mm
2〜6mm
2である。
【0035】
コネクションブリッジは接続部材と導電接続されており、これらの部材を種々のはんだ技術又は溶接技術によって接続することができる。好ましくはコネクションブリッジと接続部材とは、電極を用いた抵抗溶接、超音波溶接、又は摩擦溶接によって接続される。
【0036】
板ガラスの少なくとも一部分に導電性構造体が取り付けられており、この導電性構造体は好ましくは銀を含んでおり、格別好ましくは銀粒子とガラスフリットを含んでいる。本発明による導電性構造体の層厚は、好ましくは3μm〜40μm、特に好ましくは5μm〜20μmであり、さらに格別好ましくは7μm〜15μm、特に8μm〜12μmである。接続部材は、コンタクト面を介して導電性構造体の一部分の領域と面全体にわたり接続されている。この場合、電気的な接触接続は、鉛フリーはんだ材料によって行われる。導電性構造体を、例えば板ガラスに被着されたワイヤ又はコーティングの接触接続に用いることができる。この場合、導電性構造体は、例えばバスバーの形状で、板ガラスの互いに反対側の周縁部に取り付けられる。バスバーに取り付けられた接続部材を介して、電圧を供給することができ、これによって導電性のワイヤもしくはコーティングを介して、一方のバスバーから他方へと電流が流れ、板ガラスが加熱される。このような加熱機能に代わる選択肢として、本発明による板ガラスをアンテナ導体と組み合わせて使用することができ、或いは板ガラスの安定した接触接続が必要とされる他の任意の形態も考えられる。
【0037】
基板には好ましくはガラスが含まれ、特に好ましくは平板ガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、及び/又はソーダ石灰ガラスが含まれる。とはいえ、基板はポリマーを含むものであってもよく、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボナイト、ポリメチルメタクリレート、ポリスチロール、ポリブタジエン、ポリニトリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、及び/又はこれらのコポリマー又は混合物、を含むものであってもよい。好ましくは、この基板は透明である。基板の厚さは、好ましくは0.5mm〜25mmであり、特に好ましくは1mm〜10mm、特に格別好ましくは1.5mm〜5mmである。
【0038】
基板の熱膨張率は、8×10
-6/℃〜9×10
-6/℃であるのが好ましい。基板は好ましくは、0℃〜300℃の温度範囲おいて熱膨張率が8.3×10
-6/℃〜9×10
-6/℃であるガラスを含む。
【0039】
導電性構造体は、鉛フリーはんだ材料を介して接続部材と導電接続されている。この場合、鉛フリーはんだ材料は、接続部材の下面に位置するコンタクト面のところに配置されている。
【0040】
鉛フリーはんだ材料の層厚は、好ましくは600μm以下であり、特に好ましくは150μm〜600μmであり、特に300μmよりも薄い。
【0041】
鉛フリーはんだ材料には、好ましくは鉛が使われていない。このことは、電気的な接続部材を備えた本発明による板ガラスは環境親和性があるという点で、格別に有利である。本発明の内容に即していえば、鉛フリーはんだ材料とは、電気機器及び電子機器における指定危険材料の使用を制限する欧州共同体の指令2002/95/ECに従い、0.1重量%以下の含有量の鉛しか含まないはんだ材料、好ましくは鉛を含まないはんだ材料、のことを意味する。
【0042】
鉛フリーはんだ材料は一般的に、鉛含有はんだ材料よりも延性が少ないので、接続部材と板ガラスとの間に生じる機械的な応力をあまり良好に補償することはできない。しかしながら、本発明による接続部材によって、クリティカルな機械的応力を回避できることが判明した。好ましくははんだ材料には、スズ及びビスマス、インジウム、亜鉛、銅、銀、又はそれらから成る組成物が含まれる。本発明によるはんだ組成物中、スズの含有量は、3重量%〜99.5重量%であり、好ましくは10重量%〜95.5重量%、特に好ましくは15重量%〜60重量%である。本発明によるはんだ組成物中、ビスマス、インジウム、亜鉛、銅、銀、又はそれらの組成物の含有量は、0.5重量%〜97重量%、好ましくは10重量%〜67重量%であり、この場合、ビスマス、インジウム、銅、又は銀を0重量%とすることができる。はんだ組成物に、ニッケル、ゲルマニウム、アルミニウム、又はリンを、0重量%〜5重量%の含有率で含めることができる。特に格別好ましいのは、本発明によるはんだ組成物が、Bi40Sn57Ag3, Sn40Bi57Ag3, Bi59Sn40Ag1, Bi57Sn42Ag1, In97Ag3, In60Sn36.5Ag2Cu1.5, Sn95.5Ag3.8Cu0.7, Bi67In33, Bi33In50Sn17, Sn77.2In20Ag2.8, Sn95Ag4Cu1, Sn99Cu1, Sn96.5Ag3.5, Sn96.5Ag3Cu0.5, Sn97Ag3、又はこれらの混合物を含むことである。
【0043】
1つの有利な実施形態によれば、はんだ材料にはビスマスが含まれる。ビスマスを含有するはんだ材料によって、本発明による接続部材が板ガラスに極めて良好に付着するようになり、板ガラスの損傷を回避できることが判明した。はんだ材料組成物におけるビスマスの含有率は、好ましくは0.5重量%〜97重量%であり、特に好ましくは10重量%〜67重量%、特に格別好ましくは33重量%〜67重量%、特に50重量%〜60重量%である。はんだ材料には、ビスマスのほか好ましくはスズ及び銀、又はスズと銀と銅が含まれる。1つの格別に有利な実施形態によれば、はんだ材料は少なくとも、35重量%〜69重量%のビスマス、30重量%〜50重量%のスズ、1重量%〜10重量%の銀、及び0重量%〜5重量%の銅を含んでいる。1つの格別有利な実施形態によれば、はんだ材料は少なくとも、49重量%〜60重量%のビスマス、39重量%〜42重量%のスズ、1重量%〜4重量%の銀、及び0重量%〜3重量%の銅を含んでいる。
【0044】
さらに別の有利な実施形態によれば、はんだ材料は、90重量%〜99.5重量%のスズを含んでおり、好ましくは95重量%〜99重量%、特に好ましくは93重量%〜98重量%で含んでいる。はんだ材料には、スズのほか好ましくは0.5重量%〜5重量%の銀、及び0重量%〜5重量%の銅が含まれている。
【0045】
はんだ材料は、接続部材のはんだ領域と導電性構造体との間のスペースから、好ましくは1mmよりも僅かな漏れ幅で漏れ出るだけである。1つの有利な実施形態によれば、最大漏れ幅は0.5mmよりも小さく、例えばほぼ0mmである。このことは、板ガラスにおける機械的な応力の低減、接続部材の付着、はんだの節約、という点で、格別有利である。この場合、はんだ領域外縁から、はんだ材料がはみ出てはんだ材料層厚が50μmの層厚を下回った部位までの間隔を、最大漏れ幅と定義する。最大漏れ幅は、はんだ付けプロセス後、凝固したはんだ材料において測定される。望ましい最大漏れ幅は、はんだ材料体積と、接続部材と導電性構造体との間の垂直方向距離とを適切に選定することによって達せられ、これらは簡単な実験により求めることができる。接続部材と導電性構造体との間の垂直方向距離を、適切なプロセス工具例えばスペーサが一体化された工具などによって設定することができる。最大漏れ幅が負であってもよく、つまり電気的接続部材のはんだ領域と導電性構造体とにより形成されるスペース内に後退するようにしてもよい。本発明による板ガラスの1つの有利な実施形態によれば、接続部材のはんだ領域と導電性構造体とにより形成されたスペースにおける最大漏れ幅は、凹状のメニスカスの形状で後退している。凹状のメニスカスの形状は例えば、はんだ付けプロセスにおいてはんだがまだ液状である期間中に、スペーサと導電性構造体との垂直方向距離を長くすることにより形成される。これにより得られる利点とは、板ガラスにおいて、特にはんだ材料の大きなはみ出しが生じるクリティカルな領域において、機械的応力が低減されることである。
【0046】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、接続部材のコンタクト面にスペーサが設けられており、好ましくは少なくとも2つのスペーサ特に好ましくは少なくとも3つのスペーサが設けられている。この場合に有利であるのは、例えば型押しや深絞りなどによって、スペーサを接続部材と一体的に形成することである。好ましくはスペーサは、幅0.5×10
-4m〜10×10
-4mであり、高さ0.5×10
-4m〜5×10
-4m、特に好ましくは1×10
-4m〜3×10
-4mである。スペーサを設けることによって、一定の厚さで一様に溶融する均質なはんだ材料層が得られる。これにより接続部材と板ガラスとの間に生じる機械的応力を低減することができ、さらに接続部材の付着を向上させることができる。このことは、鉛フリーはんだ材料を使用したときに特に有利である。それというのも鉛フリーはんだ材料はその延性が小さいことから、鉛含有はんだ材料に比べて機械的応力を良好に補償することができないからである。
【0047】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、基板とは逆側の接続部材表面においてコンタクト面とは反対側に、少なくとも1つのコンタクトバンプが配置されており、このコンタクトバンプは、はんだプロセス中、接続部材をはんだ付け工具と接触させる役割を果たす。コンタクトバンプは好ましくは、少なくともはんだ付け工具と接触する領域において、凸状に湾曲した形状に成形される。さらに好ましくはコンタクトバンプの高さは0.1mm〜2mmであり、特に好ましくは0.2mm〜1mmである。コンタクトバンプの長さと幅は、好ましくは0.1mm〜5mmであり、特に格別好ましくは0.4mm〜3mmである。この場合に有利であるのは、例えば型押しや深絞りなどによって、コンタクトバンプを接続部材と一体的に形成することである。はんだ付けのために、コンタクト面が平坦に成形されている電極を用いることができる。この電極平面がコンタクトバンプと接触状態におかれる。その際、電極平面は基板表面と平行に配置される。電極平面とコンタクトバンプとが接触した領域により、はんだ付け部位が形成される。その際、はんだ付け部位のポジションは、コンタクトバンプの凸状表面において基板表面まで最大の垂直方向距離を有するポイントによって定まる。はんだ付け部位のポジションは、接続部材の上のはんだ付け電極のポジションには左右されない。このことは、はんだ付けプロセス中に再現可能な均一な熱分布を生じさせる点で、格別有利である。はんだ付けプロセス中の熱分布は、コンタクトバンプのポジション、サイズ、配置、及び形状によって定まる。
【0048】
電気的接続部材は、少なくともはんだ材料に面したコンタクト面にコーティング(湿潤層)を有しており、このコーティングには、ニッケル、銅、亜鉛、スズ、銀、金、又はこれらの材料から成る合金、又はこれらの材料から成る複数の層が含まれ、特に銀が含まれる。このようにすることで、はんだ材料による接続部材の湿潤特性が向上し、さらには接続部材の付着特性が向上する。
【0049】
本発明による接続部材は、好ましくはニッケル、スズ、銅、及び/又は銀によってコーティングされている。格別好ましくは本発明による接続部材に、有利にはニッケル及び/又は銅から成る付着促進層が設けられており、さらにこれに加えて、有利には銀から成るはんだ付け可能な層が設けられている。本発明による接続部材は、特に格別好ましくは、0.1μm〜0.3μmのニッケルによって、及び/又は3μm〜20μmの銀によって、コーティングされている。さらに接続部材に対し、ニッケルめっき、スズめっき、銅めっき、及び/又は銀めっきを施してもよい。ニッケルと銀によって、接続部材の電流耐性及び耐食性並びにはんだ材料による湿潤特性が改善される。
【0050】
オプションとして、コネクションブリッジにもコーティングを施すことができる。ただしコネクションブリッジのコーティングは必須ではなく、その理由は、コネクションブリッジとはんだ材料がじかに接触するわけではないからである。つまり、コネクションブリッジの湿潤特性を最適化する必要はない。したがって、コネクションブリッジのコーティングを省くことができ、接続部材だけがコーティングされることから、接続部材及びコネクションブリッジを備えた本発明による板ガラスの製造コストが低減される。
【0051】
1つの別の選択肢による実施形態によれば、コネクションブリッジにコーティングが施され、このコーティングには、ニッケル、銅、亜鉛、スズ、銀、金、又はこれらの材料から成る合金、又はこれらの材料から成る複数の層が含まれ、好ましくは銀が含まれる。好ましくはコネクションブリッジは、ニッケル、スズ、銅、及び/又は銀によってコーティングされる。コネクションブリッジは、特に格別好ましくは、0.1μm〜0.3μmのニッケルによって、及び/又は3μm〜20μmの銀によって、コーティングされる。さらにコネクションブリッジに対し、ニッケルめっき、スズめっき、銅めっき、及び/又は銀めっきを施してもよい。
【0052】
電気的接続部材の形状によって、接続部材と導電性構造体との間のスペースに1つ又は複数のはんだ溜まりを形成することができる。接続部材におけるはんだ溜まりとはんだの湿潤特性によって、中間のスペースからはんだ材料が漏れ出るのが回避される。はんだ溜まりを、矩形、円形、又は多角形の形状にすることができる。
【0053】
本発明はさらに、コネクションブリッジを有する二体型の接続部材を備えた板ガラスの製造方法にも関する。この方法は、以下のステップを有する。即ち、
a)コネクションブリッジを、接続部材の上面に導電的に取り付けるステップと、
b)接続部材の下面の少なくとも1つのコンタクト面に、鉛フリーはんだ材料を塗布するステップと、
c)接続部材を鉛フリーはんだ材料とともに、導電性構造体の上に配置するステップと、
d)接続部材を導電性構造体とはんだ付けするステップと
を有する。
【0054】
導電性構造体を、それ自体公知の方法により基板に取り付けることができ、例えばスクリーン印刷法によって取り付けることができる。導電性構造体の取り付けを、上述のステップa)及びステップb)の前、又はこれらのステップ中、或いはこれらのステップの後のタイミングで、実施することができる。
【0055】
はんだ材料は好ましくは、規定の層厚、体積、形状、及び配置で、小さいプレート又は平坦な液滴として、接続部材の上に塗布される。はんだ材料の小プレートの層厚は、好ましくは0.6mm以下である。この場合、はんだ材料の小プレートの形状を、コンタクト面の形状にマッチさせるのが有利である。コンタクト面が例えば矩形状に形成されているならば、はんだ材料の小プレートを矩形状にするのがよい。
【0056】
電気的接続部材と導電性構造体とを電気的に接続する際のエネルギーは、有利にはパンチ、熱極、ピストンはんだ付け、マイクロフレームはんだ付け、好ましくはレーザはんだ付け、熱風はんだ付け、誘導はんだ付け、抵抗はんだ付け、及び/又は超音波によって、供給される。
【0057】
好ましくはコネクションブリッジは、接続部材表面に溶接又ははんだ付けされる。特に有利であるのは、コネクションブリッジを電極抵抗溶接、超音波溶接、又は摩擦溶接によって、接続部材の上に取り付けることである。
【0058】
ステップd)に続いて、オプションとしてコネクションブリッジの変形が行われる。車体に板ガラスが取り付けられた後では、コネクションブリッジの自由端にはほとんど届かなくなってしまうので、コネクションブリッジを変形することで、極めて容易にブリッジのポジションに近づいて取り扱うことができるようになる。さらにこのように曲げることによって、正確に規定されたブリッジポジションが得られるようになる。変形後、コネクションブリッジの自由端は基板から離れる方向を指すようになる。コネクションブリッジの自由端と基板表面とが成す角度は、要求に応じて任意に選定可能である。また、本発明によるコネクションブリッジは容易に変形可能であるので、コネクションブリッジを曲げるためにごく僅かな力を加えるだけでよい。コネクションブリッジは中実な材料から構成されており、柔軟になりすぎることもないので、塑性変形を実施して、コネクションブリッジのポジションを正確に規定することができる。本発明によるコネクションブリッジの変形は、工具を用いず手だけで実施される。その際に僅かな力が加わっても、コネクションブリッジよりもかなり剛性のある接続部材の捻れが阻止される。さらにこのようにすることで、それに伴うはんだ部位の損傷も防止される。
【0059】
板ガラスが車両に組み込まれ、必要に応じて変形された後、コネクションブリッジは、プラグコネクタ、例えば銅から成る薄片、撚線又は編組線を介して、車載電子系統に接続される。好ましくは、持続的な安定性を保証しかつ接点のすべりを阻止する一方、リバーシブルでもあるプラグコネクタが選択される。このようにすれば、コネクションブリッジと車載電子系統との間の接続ケーブルに損傷が発生した場合、それを簡単に交換することができる。これに対し、先に挙げた別の接触接続手法であると、接点のはんだ付け又は溶接が必要となる。
【0060】
本発明はさらに、導電性構造体を備えた本発明による板ガラスの使用にも関するものであり、本発明による板ガラスは、車両、建築用ガラス、又は構造用ガラスに使用され、特に自動車、レール車両、航空機又は船舶に使用される。この場合、接続部材は、板ガラスの導電性構造体例えば発熱体又はアンテナなどを、外部の電気系統例えば増幅器、制御ユニット又は電圧源などと接続するために用いられる。特に本発明によれば、本発明による板ガラスはレール車両又は自動車において用いられ、有利にはフロントウィンドウガラス、リアウィンドウガラス、サイドウィンドウガラス、及び/又はルーフウィンドウガラスとして用いられ、特に加熱可能なガラスとして、又はアンテナ機能を備えたガラスとして用いられる。
【0061】
次に、図面及び実施例を参照しながら本発明について詳しく説明する。図面は概略的なものであり、原寸通りに描かれたものではなく、これらの図面によって本発明が限定されてしまうものではない。