特許第6584494号(P6584494)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6584494メラニン産生細胞のHMGB1活性化を阻害する方法、そのような阻害に好適な薬剤を特定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584494
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】メラニン産生細胞のHMGB1活性化を阻害する方法、そのような阻害に好適な薬剤を特定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20190919BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20190919BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20190919BHJP
【FI】
   G01N33/53 DZNA
   G01N33/53 M
   G01N37/00 102
   !C07K14/47
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-513676(P2017-513676)
(86)(22)【出願日】2015年9月8日
(65)【公表番号】特表2017-532547(P2017-532547A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】US2015048819
(87)【国際公開番号】WO2016040242
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2017年3月10日
(31)【優先権主張番号】62/050,008
(32)【優先日】2014年9月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(72)【発明者】
【氏名】レオ ティモシー ラフリン ザ セカンド
(72)【発明者】
【氏名】箱崎 智洋
(72)【発明者】
【氏名】ウェンジュー ジャオ
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0040608(US,A1)
【文献】 特表2013−541342(JP,A)
【文献】 特開2012−201649(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/111729(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0026551(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/178944(WO,A1)
【文献】 特表2017−530116(JP,A)
【文献】 International Journal of Genomics,2014年,Vol.2014 Article ID 970607,Page.1-15
【文献】 獣医臨床皮膚科,2007年,Vol.13 No.3,Page.141-147
【文献】 隔月刊Cosmetic Stage,2009年12月25日,Vol.4 No.2,Page.9-12
【文献】 Fragr J,2011年 5月15日,Vol.39 No.5,Page.19-24
【文献】 Mon Book Derma,2010年 3月15日,No.163,Page.47-54
【文献】 Exp Cell Res,2000年 1月10日,Vol.254 No.1,Page.25-32
【文献】 EMBO Reports,2011年12月,Vol.12 No.12,Page.1293-1299
【文献】 日本大腸肛門病学会雑誌,2002年 5月,Vol.55 No.5,Page.248 口-I-13
【文献】 福田光則,Varp分子の新たな機能「樹状突起形成の促進作用」を発見−メラニン色素のケラチノサイトへの関与−,2011年12月13日,URL,http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/%28HP%29tohokuuniv-press20111213_2.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53 − 33/92
G01N 37/00
C07K 14/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚色調剤としての試験薬を特定する方法であって、
a.約1,000セル/mL〜約2,000,000セル/mLの濃度の細胞を第1の媒質中に懸濁させて試験用懸濁液を提供する工程と、
b.前記試験用懸濁液の少なくとも一部を第1の容器に入れる工程と、
c.前記第1の容器中の前記懸濁させた細胞の少なくとも一部を試験薬に接触させて試験用サンプルを作成する工程と、
d.前記試験用サンプル中に存在する1以上のバイオマーカーの濃度を決定する工程であって、ここで前記1以上のバイオマーカーは、高移動度グループタンパク質B1(HMGB1)、HMGB1の発現及び/又は調節に関連付けられるメッセンジャーRNA(HMGB1 mRNA)、及びこれらの組合せから選択される工程と、
e.(d)の前記バイオマーカーの濃度を対照と比較する工程と、
f.(i)前記試験用サンプル中に存在するHMGB1の濃度が対照に対して増加しておらず、(ii)前記試験用サンプル中に存在するHMGB1の濃度が増加しているが、対照のHMGB1の濃度よりも少なく、若しくは、(iii)前記試験用サンプル中に存在するHMGB1の濃度が増加しているが、試験用サンプルのHMGB1の濃度の増加の平均率が対照のHMGB1の濃度の増加の平均率よりも少ないことを示す場合、並びに/又は(i)前記試験用サンプル中に存在するHMGB1 mRNAの濃度が対照に対して低下しており、(ii)前記試験用サンプル中に存在するHMGB1 mRNAの濃度が増加しているが、対照のHMGB1 mRNAの濃度よりも少なく、若しくは、(iii)前記試験用サンプル中に存在するHMGB1 mRNAの濃度が増加しているが、試験用サンプルのHMGB1 mRNAの濃度の増加の平均率が対照のHMGB1 mRNAの濃度の増加の平均率よりも少ないことを示す場合に、皮膚色調剤としての前記試験薬を特定する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記試験用懸濁液の少なくとも一部を第2の容器に入れて対照を提供し、前記対照中に存在するHMGB1の濃度を決定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の容器中の前記懸濁させた細胞の少なくとも一部を、ガラクトミセス発酵濾液、セイヨウスモモ(Prunus domestica)抽出物、ヒドロキシ桂皮酸、メチルヒドロキシ桂皮酸、グリセロールモノリシノレエート、及びこれらの組合せから選択される活性剤に接触させて、対照サンプルを提供することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記試験用サンプルから上澄みを抽出する工程、前記上澄み中のHMGB1の濃度を測定する工程、及び前記上澄み中に存在するHMGB1の濃度に基づいて前記試験用サンプル中に存在するHMGB1の濃度を決定する工程を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記試験用サンプル中の前記細胞の少なくとも一部を溶解させ、前記試験用サンプルの総タンパク質濃度を決定し、前記試験用サンプルの前記HMGB1の濃度を前記総タンパク質濃度に対して正規化させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞は、ケラチン産生細胞、線維芽細胞、及びマクロファージからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試験用サンプル中の前記細胞の少なくとも一部を化学的に溶解させ、前記試験用サンプルの総タンパク質濃度を決定し、前記試験用サンプル中に存在するHMGB1の濃度を前記総タンパク質濃度に対して正規化させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記試験用サンプル中の前記細胞の少なくとも一部を化学的に溶解させ、HMGB1 mRNAを分離し、標識化し、マイクロアレイに対してハイブリダイゼーションする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記試験薬を第2の媒質に希釈する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記試験薬を0.0001%〜10% w/vの濃度に希釈する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記対照が、前記試験用サンプルと同種の細胞を含む細胞懸濁液である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記対照が可溶化剤を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記可溶化剤がジメチルスルホキシドである、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メラニン産生細胞のHMGB1活性化の阻害を向上させるスキンケア活性剤を特定する方法、そのような活性剤を含有する組成物、及びそのような組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メラニンは、皮膚の色素沈着における基本的な組成物であり、観察されている皮膚の色素沈着の多くは、ケラチン産生細胞におけるメラノソームの負荷及び定着の如何によって決まる。メラニンは、基本的なレベルで、酵素チロシナーゼ及び基質としてのL−チロシンに関与するメラニン産生細胞内の複雑な反応セットにより生成される。メラニン形成は、紫外線の負荷に対する幹細胞因子やエンドセリンー1等のケラチン産生細胞に端を発するパラクリン因子によって誘導され得る。メラニン形成の間、チロシナーゼは、L−チロシンのDOPA(L−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン)への変換及びDOPAのドーパキノンへの変換を触媒する。ドーパキノンは、更なる変換を受けてメラニンを形成する。メラニンは、樹状突起として知られるメラニン産生細胞の細長いフィラメントに沿ってケラチン産生細胞へ移動されるメラノソームとして知られる細胞小器官内で凝集する。表皮における各メラニン産生細胞には約36のケラチン産生細胞があるため、メラニン形成細胞は、これらの樹状構造によって隣接するケラチン産生細胞に「到達して」メラノソームを移動させる。ケラチン産生細胞を運ぶメラニンはその後、持続する再生過程において上方へと皮膚表面へ向かって移動する。
【0003】
およそ1500の遺伝子産物がメラノソーム内で発現し、そのうちの600は任意の所定の時間に発現し、そのうちの100はメラノソームに固有のものであると考えられている。加えて、シグナル伝達、メラニン産生細胞内でのメラノソームの輸送、ケラチン産生細胞へのメラノソームの移動に関与する多くの調節要素が存在する。その経路によっては比較的十分に解明されているものもあるが、そうではないものもある。メラニンの移動に関与する生化学的経路を特定し、よりよく理解することは、色素過剰及びメラニンの過剰生産を抑制する皮膚色調剤の識別につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、メラニン産生細胞からケラチン産生細胞へのメラニンの移動を阻害するスキンケア活性剤を特定することが望ましいだろう。また、そのような活性剤を含む色素過剰の肌の外観を改善するための化粧組成物を定式化することも望ましいだろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、皮膚色調剤としての試験薬を特定するスクリーニング方法を開示する。スクリーニング方法は、約1,000セル/mL〜約2,000,000セル/mLの濃度の細胞を第1の媒質中に懸濁させて試験用懸濁液を提供する工程と、前記試験用懸濁液の少なくとも一部を容器に入れる工程と、前記容器中の前記懸濁させた細胞の少なくとも一部を試験薬に接触させて試験用サンプルを提供する工程と、前記細胞を溶解する工程と、前記試験用サンプル中の高移動度グループタンパク質B1(HMGB1)、HMGB1の発現及び/又は調節に関連付けられるメッセンジャーRNA(HMGB1 mRNA)、及び/又はHMGB1の発現及び/又は調節に関連付けられるマイクロRNA(HMGB1 miRNA)の濃度を決定する工程と、前記試験用サンプル中に存在するHMGB1、HMGB1 mRNA、及びHMGB1 miRNAの濃度を対照と比較する工程と、前記試験用サンプル中に存在するHMGB1の濃度がHMGB1の濃度の増加に対応せず、HMGB1 mRNAの濃度がHMGB1 mRNAの転写における下方制御に対応し、並びに/若しくはHMGB1 miRNAの濃度がHMGB1 miRNAの上方制御に対応する場合に、皮膚色調剤としての前記試験薬を特定する工程を含む。いくつかの例では、本明細書のスクリーニング方法は、以下の特徴のうち1つ以上を含んでもよく、その組み合わせは問わない。前記細胞は、媒質に懸濁していてもよい、ケラチン産生細胞、線維芽細胞、及びマクロファージからなる群から選択される工程と、前記任意の媒質が含まれる場合に、前記細胞を前記試験薬に接触させる前に前記媒質を取り除く工程と、前記試験用懸濁液中の前記媒質と同一又は異なっていてもよい媒質中に前記試験薬を希釈させる工程と、前記試験薬を0.0001%から10% w/vの濃度に希釈する工程と、前記対照にジメチルスルホキシド等の可溶化剤を含める工程。
【0006】
更に、本明細書には、皮膚色調剤としての試験薬を特定するスクリーニング方法であって、約1,000セル/mL〜約2,000,000セル/mLの濃度のメラニン産生細胞を第1の媒質中に懸濁させて試験用懸濁液を提供する工程を含む方法も開示されている。前記試験用懸濁液の少なくとも一部を容器に入れ、前記容器中の前記懸濁させたメラニン産生細胞の少なくとも一部をHMGB1に接触させ、次に試験薬に接触させる。前記試験用サンプル中の前記メラニン産生細胞の樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさを決定し、対照と比較する。前記試験薬は、測定された前記樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさが樹状突起形成度の増加及び細胞体の大きさの増大のうち少なくとも1つに対応しない場合、皮膚色調剤として特定される。
【0007】
本明細書には、改善された皮膚色調剤としての試験薬を特定するスクリーニング方法も開示されている。この方法は、約1,000セル/mL〜約2,000,000セル/mLの濃度の細胞を第1の媒質中に懸濁させて試験用懸濁液を提供する工程を含む。前記試験用懸濁液の少なくとも一部を第1の容器と第2の容器に入れる。第1の容器中の懸濁させた細胞の少なくとも一部を試験薬に接触させて試験用サンプルを提供し、第2の容器中の懸濁させた細胞の少なくとも一部を活性剤に接触させて対照サンプルを提供する。活性剤は、ガラクトミセス発酵濾液、セイヨウスモモ(Prunus domestica)抽出物、ヒドロキシ桂皮酸、メチルヒドロキシ桂皮酸、グリセロールモノリシノレエート、及びこれらの組合せから選択される。対照サンプル及び試験用サンプル中の細胞は溶解され、各サンプルについてHMGB1の濃度が決定される。試験用サンプル中のHMGB1の濃度が対照サンプルに対するHMGB1の濃度の増加に対応しない場合、この試験用サンプルが改善された皮膚色調剤として特定される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】HMGB1に接触したメラニン産生細胞の樹状突起形成度の増加を示すグラフである。
図2】HMGB1に接触したメラニン産生細胞の細胞体の大きさの増大を示すグラフである。
図3】HMGB1処理前のメラニン産生細胞の顕微鏡写真である。
図4】HMGB1処理後のメラニン産生細胞の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において説明に使用される用語は、単に特定の例を記載するためであり、限定されるものではない。明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他の意味を示さない限り、同様に複数形を含むものとする。特に記述されない限り、全ての比率は、組成物の重量によるものである。特に明記しない限り、全ての比は重量比である。有効桁の数は、表示された量に対する限定を表すものでも、計測値の精度に対する限定を表すものでもない。特に具体的に指定しない限り、全ての数量は、「約」という単語によって修飾されているものと理解される。特別の定めのない限り、測定は全て25℃で行われる。全ての数値範囲は、より狭い範囲を含む。区切られた上下の範囲限界は互換性があり、明示的に区切られていない更なる範囲を作る。
【0010】
本発明の組成物は、本明細書に記載の必須成分並びに任意選択的成分を含む、それらから本質的になる、又はそれらからなることができる。本明細書で使用するとき、「から本質的になる」とは、組成物又は構成成分が、追加成分を含み得ることを意味するが、追加成分が請求項に係る組成物又は方法の基本的かつ新規の特性を実質的に変えない場合に限る。
【0011】
配列表
本明細書のSEQ ID NO:1から16のアミノ酸又はヌクレオチド配列を示す配列表が、「13534M seq list ST25」というファイル名のASCIIテキストファイルとして本願と同時に出願されている。このASCIIテキストファイルは、2015年9月8日に作成したもので、サイズは4.24KBである。MPEP § 605.08及び米国特許規則§ 1.52(e)に従い、このASCIIテキストファイルの主題は本明細書に参照により組み込まれる。
【0012】
定義
「年齢による染み」は、内因性又は外因性の加齢要因による色素過剰スポットを意味する。
【0013】
組成物に関連して使用される「塗布する」又は「塗布」は、本発明の組成物を表皮等のヒト皮膚表面上に塗布し又拡げることを意味する。
【0014】
「樹状突起形成度」は、本明細書に記載される方法によって測定された樹状突起の全長を意味する。樹状突起形成度は、Essen Bioscience(ミシガン州Ann Arbor)から入手可能なIncucyte ZOOM(登録商標)生細胞イメージングシステムによって測定してもよい。
【0015】
「樹状突起」は、メラニン産生細胞の細胞体から隣接するケラチン産生細胞へ、メラノソームを移動させるように働くメラニン産生細胞の分岐突起物を意味する。
【0016】
「誘導体」は、相対する分子と類似しているものの、特定の官能性部分が異なっている分子を意味する。好適な官能基としては、エステル、エーテル、アミド、アミン、カルボン酸、ヒドロキシル、ハロゲン、チオール及び/又は関連する分子の塩誘導体が挙げられる。
【0017】
「皮膚科学的に許容可能な」は、記載される組成物又は構成成分が、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応などがなく、ヒトの皮膚組織と接触して使用するのに好適であることを意味する。
【0018】
本明細書で使用される「色素過剰スポット」は、局部的かつ慢性の又は全身性のメラニン過剰生成により、隣接する皮膚の領域よりも色素沈着の程度の大きい皮膚の限定的な領域を指す。色素過剰スポットは、典型的には、直径約2mm〜約10mmであるが、より小さい又は大きい領域である可能性もある。色素過剰スポットは、加齢による染み、日焼けによる染み(sun spot)、黒子(solar lentigo)、低メラニン性病変(hypo-melanotic lesion)、そばかす及び肝斑スポットのうちの1つ以上を含むことができる。
【0019】
「顔の皮膚表面」とは、額、眼窩周囲、頬、口周囲、顎、及び鼻の皮膚表面のうちの1つ以上を意味する。
【0020】
「RNA」は、リボ核酸を意味する。
【0021】
「安全かつ有効な量」とは、所望の効果を誘導するには十分であるが、深刻な副作用を避けるために低い(すなわち、当事者の健全な裁量内で危険率に対して妥当な効果を提供する)化合物又は組成物の量を意味する。
【0022】
「皮膚」は、ケラチン産生細胞、線維芽細胞、及びメラニン産生細胞等の細胞から構成される、哺乳類の最外保護被覆を意味する。皮膚は、外側の表皮層及びその下の真皮層を含む。皮膚には、毛髪及び爪、並びに一般に皮膚に関連付けられる、例えば、筋細胞、メルケル細胞、ランゲルハンス細胞、マクロファージ、幹細胞、脂腺細胞、神経細胞及び脂肪細胞などのその他の種類の細胞も含まれる。
【0023】
「スキンケア」は、皮膚の状態の制御及び/又は改善を意味する。非限定的な例として、より滑らかでより凹凸のない外観及び/又は感触を提供することによって皮膚の外観及び/又は感触の改善、皮膚の1以上の層の厚さの増大、皮膚の弾性又は弾力の改善、皮膚の堅さの改善、皮膚の外観の脂っぽさ、テカリ、光沢のなさの軽減、皮膚の水和状態又は湿潤さの改善、小皺及び/又は皺の外観の改善、皮膚剥脱又は落屑の改善、皮膚の肉付き、皮膚の保護遮断性の改善、皮膚の色合いの改善、赤み又は皮膚斑点の外観の軽減、及び/又は皮膚の明るさ、輝き、又は透明さの改善が挙げられる。
【0024】
「スキンケア活性剤」は、皮膚に適用したときに、即時的及び/又は持続的な効果を、皮膚又は一般に皮膚において見られる細胞型にもたらす化合物又は化合物の組み合わせを意味する。スキンケア活性剤は、皮膚又は皮膚に関連する細胞を制御及び/又は改善(例えば、皮膚の弾性の改善、皮膚の湿潤さの改善、皮膚の状態の改善、細胞の代謝の改善)してもよい。
【0025】
「スキンケア組成物」は、皮膚の状態を制御及び/又は改善する組成物を意味する。
【0026】
「皮膚色調剤」は、メラニン生成シグナル、メラニンの合成、メラニン産生細胞とケラチン産生細胞との間でのメラニンの移動、及び/又はケラチン産生細胞でのメラニン分解を調節するスキンケア活性剤を意味する。皮膚色調剤は、皮膚美白剤又は色素沈着低下の美容薬剤として作用することにより、まだらな皮膚色調及び色素過剰スポットの外観を改善することができる。
【0027】
「皮膚色調」は、一過性ではなく全体的なメラニン合成による、皮膚におけるメラニンの全体的な外観を指す。皮膚色調は一般に、皮膚の広い範囲にわたり特徴付けられる。その範囲は、100mm2未満が理想的であり得るが、顔の皮膚又はその他の身体の皮膚表面(例えば腕、脚、背中、手、首、腰、腹)の全体等の、より大きい範囲も考えられる。皮膚色調は、画像分析により測定することができる。例えば、全体的な明るさは、L***色空間内のL*座標により測定することができる(International Commission on Illumination)。メラニンマッピング等の発色団マッピング及びメラニン濃度は、全体的な皮膚色調の指標として使用することができる。発色団マップデータから平均メラニンを計算することができる。加えて、皮膚色調の均一性はメラニン均一性から測定することができ、メラニン均一性も発色団マップデータから計算することができる。好適な発色団マッピング法は、以下の実施例にて論じられる。
【0028】
皮膚の色素沈着は、表皮基底層におけるメラニン産生細胞におけるメラニンの生成に関与するプロセスである。ヒトに観察される皮膚の色素沈着の多くは、ケラチン産生細胞におけるメラノソームの負荷及び定着の如何によって決まるが、それを誘発する一連の複雑な生化学プロセスはいまだに解明されていない。驚くべきことに、SEQ ID NO:1で表される高移動度グループタンパク質B1(「HMGB1」)は、メラニン産生細胞の増殖を助長することなく、ヒト初代メラニン産生細胞中の樹状突起形成度及び細胞体領域の成長を刺激することが発見されている。この発見が、メラニン産生細胞からケラチン産生細胞へのメラノソームの移動に必要な輸送基盤の刺激による、皮膚の色素沈着におけるHMGB1を直接的に示している。
【0029】
HMGB1は、クロマチンタンパク質としての役割が知られており、終末糖化産物受容体(「RAGE」)に対する配位子及びある種のToll様受容体(「TLR」)として機能することが知られている。HMGB1は、更に、炎症における好中球浸潤におけるその役割に対してUVB曝露後にケラチン産生細胞から放出されることも知られており、炎症経路を介して皮膚の色素沈着に間接的に関わっているのではないかと考えられていた。しかし、本発見以前には、HMGB1はメラノソームの移動における役割、すなわち皮膚の色素沈着に直接的に関わっていることは知られていなかった。結果として、皮膚の目標領域におけるHMGB1の活性阻害及び/又はHMGB1の下方制御によって、色素過剰スポット及び/又はまだらな皮膚色調の外観を改善できる可能性がある。
【0030】
図1は、HMGB1(Sigmaから入手可能な組み換えHisタグHMGB1)に接触したメラニン産生細胞の樹状突起形成度の増加を示す。図1に示すように、HMGB1で処理したメラニン産生細胞は、3日間の後、対照と比較して大幅に長い樹状突起を示している。図1で使用された試験用サンプル及び対照は、本方法に従って調整及び分析された。
【0031】
図2は、HMGB1(Sigmaから入手可能な組み換えHisタグHMGB1)に接触したメラニン産生細胞の細胞体の大きさの増大を示す。図2に示すように、HMGB1で処理したメラニン産生細胞は、3日間の後、対照と比較して大幅に大きい細胞体の大きさを示している。図1で使用された試験用サンプル及び対照は、本方法に従って調整及び分析された。
【0032】
図3及び図4は、(それぞれ)HMGB1で処理前後のメラニン産生細胞の顕微鏡写真である。図3及び図4から分かるように、HMGB1で処理したメラニン産生細胞は、樹状突起形成度が増加し、細胞体の大きさが増大している。
【0033】
皮膚色調剤を特定する方法
HMGB1がメラニン産生細胞の増殖を助長することなく、ヒト初代メラニン産生細胞中の樹状突起形成度及び細胞体領域の成長を刺激するという驚くべき発見から、皮膚色調剤を特定する新たな方法が導かれている。本方法は、潜在的な皮膚色調剤としての試験薬及び試験薬の組合せを、当該検定内のHMGB1濃度及び/又は活性を制御するための試験薬の能力に基づいて特定する、試験管内スクリーニング検定のための便利な手段を提供する。本方法により評価される試験薬は、当該技術分野において既知の任意の好適な手法により選択することができる。例えば、接続性マッピングを使用して、遺伝子発現特性、生物学的プロセス、関心経路又はテーマと関連付けられる特定の遺伝子又は遺伝子群を調製することが知られている試験薬を特定してもよい。潜在的な皮膚色調剤を特定するための接続性マッピングに使用する非限定的な例は、ハコザキらにより2013年3月27日に出願された米国特許公開公報第2013/0261007A1号に開示されている。
【0034】
ある試験薬又は試験薬の組合せが選択されると、当該試験薬に細胞のサンプルを接触させる。本方法での使用に適する細胞は、HMGB1を生成することができるもの(例えば、ケラチン産生細胞及び線維芽細胞等の皮膚の細胞が特に好適である)であれば特に限定されない。当該細胞は、ドナーから培養してもよいし、並びに/若しくは商業的に入手可能な細胞株を販売する供給業者から購入してもよい。当該細胞は、好適な媒質(例えばLife Technologiesから入手可能なEpiLife(登録商標))中で培養してもよいし、並びに/若しくは試験用サンプルの作成前に(例えば1時間から2週間)恒温放置してもよい。当該細胞を含む試験用サンプルは、好適な媒質中に懸濁又は付着していてもよく、試験薬及びその他の必須又は任意成分が好適な容器(例えば、12ウェルプレート)に入れて提供される。各試験用サンプルは、測定されているバイオマーカーの検出のための適切な感度(例えば、少なくとも1,000細胞/mL、典型的には2,000,000細胞/mL未満)を提供するために十分な細胞を含む必要がある。細胞、試験薬、及び他の成分は、必要に応じて任意の順番で容器に添加してもよい。例えば、試験用サンプルは、大量の細胞を好適な容器に入れ、そこに試験薬を添加することにより形成されてもよい。別の例では、試験用サンプルは、好適な容器に試験薬及び任意で他の成分を入れ、この容器に細胞及び任意で他の成分を添加することにより調整されてもよい。いくつかの例では、試験用サンプルは、細胞を含むものの懸濁培地を含まない。例えば、容器に懸濁させた細胞を入れた後、懸濁培地を取り除いてもよい。いくつかの例では、試験薬を、例えば1:1000の希釈率で好適な細胞懸濁培地等の溶液に組み込み、その後、試験用サンプルに添加してもよい。試験用サンプルは、本明細書に記載される特定の特性を測定する際に、従来どおりのあらゆる保存、培養、その他のサンプル調整技術を施されてもよい。
【0035】
いくつかの例では、本方法は対照サンプルを使用してもよい。対照サンプルは、試験薬を含まない点を除いては、試験用サンプルと本質的に同様に調製されてもよい。あるいは、対照は異なる懸濁培地及び/又は異なる種類の細胞を含んでもよい。対照サンプルにおける選択された指標(例えば、バイオマーカーの濃度、樹状突起形成度、又は細胞体の大きさ)を試験用サンプルと本質的に同様に測定してもよいが、必ずしもその必要はない。刺激に対する細胞の生存能力及び/又は応答性を確認するために知られている様々な陽性及び/又は陰性対照の本方法への使用も検討されている。
【0036】
本発明の細胞、試験薬、及び/又はサンプルの保存、調整、及び/又は処理に任意に使用される懸濁培地は、典型的には水溶液である。したがって、水性懸濁培地が試験用サンプルに含まれ、不水溶性の試験薬が試験される場合、試験用サンプル及び/又は投薬サンプル(すなわち、試験薬を含有する溶液)には、試験薬を溶かすために適切な可溶化剤を含むことが好ましい場合がある。異なる溶解度(例えば、水溶性及び不水溶性)を有する複数の試験薬を試験する場合には、1つの対照を使用することが好ましい。対照に1以上の可溶化剤を含むことにより、同じ対照を水溶性及び不水溶性の試験薬の両方に使用することができる。測定されている特定の特性に影響を及ぼさない可溶化剤が好ましい。好適な可溶化剤の非限定的な例として、ジメチルスルホキシド(「DMSO」)が挙げられる。
【0037】
試験用サンプルの調整を完成させる際に、細胞を試験薬及び任意で他の成分に接触させる。次に、試験用サンプルを関心の特定の指標について分析する(例えば、バイオマーカーの濃度、樹状突起形成度、及び/又は細胞体の大きさ)。指標を測定するために、試験用サンプル中の細胞を試験薬に接触させてから、少なくとも1時間(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は48時間以上までも)は放置することが好ましい場合がある。特定の時間(細胞を試験薬に接触させてから、例えば、6、12、24、又は48時間)における関心の指標の変化量及び/又は変化率を決定するために、1時間ごと又はその他の所望の間隔で関心の指標を測定することが好ましい場合がある。薬剤がある指標を検知可能に変性するのに必要な時間は、選択された試験薬によって異なり得る。したがって、試験薬の活性を観察し、当該試験薬が皮膚色調剤として特定されるか否かを決定するために適切な時間を選択することが重要である。
【0038】
いくつかの例では、関心の指標が1以上のバイオマーカーである。関心のバイオマーカーの非限定的な例としては、HMGB1濃度、HMGB1の発現及び/又は調節に関連付けられるメッセンジャーRNA(「mRNA」)、及びHMGB1の発現及び/又は調節に関連付けられるマイクロRNA(「miRNA」)が挙げられる。試験用サンプル中で測定される選択されたバイオマーカーの濃度は、対照と比較され、試験薬がバイオマーカーの発現及び/又は調節に影響を与えていると示されているか否かが決定される。いくつかの例では、関心のバイオマーカーは、試験用サンプルの上澄みから分離されてもよい。これに加えて、又は代えて、バイオマーカーは、例えば細胞を溶解させることにより細胞自身から分離されてもよい。細胞を溶解させるために浄化剤又は他の化学的手段を使用して、機械的な溶解技術や凍結溶解技術の長い試験時間に関連付けられる変動を抑えることが好ましい場合がある。関心のバイオマーカー及び/又は総タンパク質含有量は、溶解された細胞から、例えばビシンコニン酸(「BCA」)タンパク質検定(すなわち、HMGB1濃度又は総タンパク質)又は標識化mRNA及び/又はmiRNAを使用して適切なマイクロアレイに対してハイブリダイゼーションすることにより、決定してもよい。HMGB1の濃度が関心のバイオマーカーであるとき、試験薬が皮膚色調剤として特定されるのは、測定されたHMGB1の濃度が「HMGB1濃度の増加に対応しない」場合である。この場合、(i)試験用サンプルのHMGB1濃度が対照に対して増加しておらず、(ii)試験用サンプルのHMGB1の濃度が増加しているが、対照のHMGB1の濃度よりも少なく、又は、(iii)試験用サンプルのHMGB1の濃度が増加しているが、試験用サンプルのHMGB1の濃度の増加の平均率が対照のHMGB1の濃度の増加の平均率よりも少ないことを示している。HMGB1遺伝子によって符号化されたmRNA(「HMGB1 mRNA」)が関心のバイオマーカーであるとき、試験薬が皮膚色調剤として特定されるのは、「HMGB1 mRNAの転写が下方制御している」場合である。この場合、(i)HMGB1 mRNAの濃度が対照に対して低下しており、(ii)試験用サンプルのHMGB1 mRNAの濃度が増加しているが、対照のHMGB1 mRNAの濃度よりも少なく、又は、(iii)試験用サンプルのHMGB1 mRNAの濃度が増加しているが、試験用サンプルのHMGB1 mRNAの濃度の増加の平均率が対照のHMGB1 mRNAの濃度の増加の平均率よりも少ないことを示している。HMGB1遺伝子の発現の転写後の調節に関連付けられるmiRNA(「HMGB1 miRNA」)、例えばRNAサイレンシングを経たものが関心のバイオマーカーであるとき、試験薬が皮膚色調剤として特定されるのは、「HMGB1 miRNAが上方制御している」場合である。この場合、(i)試験用サンプルのHMGB1 miRNAの濃度が対照に対して増加しており、(ii)試験用サンプルのHMGB1 miRNAの濃度が低下しているが、対照のHMGB1 miRNAの濃度の低下よりも少なく、又は、(iii)試験用サンプルのHMGB1 miRNAの濃度が低下しているが、試験用サンプルのHMGB1 miRNAの濃度の低下の平均率が対照のHMGB1 miRNAの濃度の低下の平均率よりも少ないことを示している。
【0039】
本明細書における関心のバイオマーカーとして使用されるmiRNAの非限定的な例として、それぞれSEQ ID NO:2から16で表される、hsa−let−7b−5p、hsa−let−7e−5p、hsa−let−7g−5p、hsa−miR−100−5p、hsa−miR−148a−3p、hsa−miR−148b−3p、hsa−miR−181d−5p、hsa−miR−18a−3p、hsa−miR−193b−3p、hsa−miR−22−3p、hsa−miR−26b−5p、hsa−miR−328−3p、hsa−miR−652−3p、hsa−miR−877−3p、hsa−miR−92a−3pが挙げられる。これらのmiRNAは、例えばHMGB1の合成のために符号化するmRNAを転写後にサイレンシングすることにより、HMGB1の発現を調整すると考えられている。mRNA及びmiRNAの濃度を決定する好適な方法を以下により詳細に述べる。
【0040】
いくつかの例では、HMGB1の活性を調整する能力に基づいて試験薬を検査することが好ましい場合がある。上述のように、驚くべきことにHMGB1がメラニン産生細胞中の樹状突起形成度及び細胞体の成長を促すことが発見された。これにより、メラニン産生細胞の樹状突起形成度及び/又は細胞体の成長における変化を、試験薬が皮膚色調剤として特定されるか否かを決定する指標として使用し得る。試験薬がHMGB1の活性を調整する作用機序は、HMGB1のメラニン産生細胞中の樹状突起形成を促す能力が阻害されさえしていれば特に限定されない。例えば、試験薬は、HMGB1がケラチン産生細胞(又は他の細胞)から放出されることを阻害し、HMGB1がメラニン産生細胞と結合し、又はメラニン産生細胞に取り込まれることを阻害し(例えば、メラニン産生細胞における分子結合部位を奪い、又は他の方法で不活性化することによって)、及び/又はHMGB1を不活性にしてもよい。
【0041】
メラニン産生細胞中の樹状突起形成度及び細胞体の成長を阻害する試験薬の能力は、メラニン産生細胞のサンプルを試験薬に接触させ、樹状突起形成度及び/又は細胞体の成長における変化を測定し、測定された指標を対照と比較して試験薬が皮膚色調剤として特定されるか否かを決定することによって、決定されてもよい。いくつかの例では、試験用サンプルがHMGB1源を含んでいることが重要である。例えば、ある量のHMGB1(例えば、Sigmaから入手可能な組み換えHisタグHMGB1)を試験用サンプルに含めてもよく(例えば、最終濃度0.1μg/mL)、又は刺激されてHMGB1を生成することができる別の種類の細胞を試験用サンプルに含めてもよい。対照は、試験薬と接触させる前にメラニン産生細胞の樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさを測定し、対照におけるメラニン産生細胞の樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさを測定し、並びに/若しくは入手可能であれば科学系の文献からメラニン産生細胞の樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさを入手することによって得てもよい。
【0042】
試験薬が皮膚色調剤として特定されるのは、メラニン産生細胞の測定された樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさが「樹状突起形成度の増加及び/又は細胞体の大きさの増大」に対応しない場合である。この場合、(i)試験用サンプルの樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさが対照に対して増加しておらず、(ii)試験用サンプルの樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさが増加しているが、対照の樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさよりも少なく、又は、(iii)試験用サンプルの樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさが増加しているが、試験用サンプルの樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさの増加率が対照の樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさの増加率よりも少ないことを示している。メラニン産生細胞の樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさの変化は、試験薬との接触後、いかなるタイミングで(例えば、1〜48時間、4〜36時間、6〜32時間、8〜28時間、又は12〜24時間の間)決定されてもよい。いくつかの例では、試験薬との接触後1時間ごとにメラニン産生細胞の樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさを測定し、約24時間の測定に基づいてメラニン産生細胞の樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさの変化率及び/又は変化量を測定することが好ましい場合がある。メラニン産生細胞の樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさは、異なるタイミングで1以上のメラニン産生細胞の画像を撮影し、好適なコンピュータソフトウェアを使用してその画像を分析することによって測定されてもよい。好適な撮像システムの例として、メーカーの指示に従って操作されるINCUCYTE ZOOMブランドの生細胞撮像システム(Essen Bioscience(ミシガン州Ann Arbor)から入手可能)が挙げられる。メラニン産生細胞の樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさを測定する方法の例を以下に述べる。
【0043】
いくつかの例では、メラニン産生細胞を試験薬及びある量のHMGB1に接触させることによって、メラニン産生細胞の樹状突起形成度及び/又は細胞体の成長を阻害する試験薬の能力を決定することが好ましい場合がある。試験用サンプルは、メラニン産生細胞のサンプル(例えば、1,000から2,000,000細胞/mL又は約200,000)を、任意に媒質中に懸濁され、試験薬及びある量のHMGB1を好適な容器(例えば、96ウェルプレート)に入れて提供することによって形成されてもよい。試験薬は、直接試験用サンプルに添加されてもよく、又は試験薬は上述のように投薬溶液として添加されてもよい(例えば、細胞媒質の1:1000の希釈率で組み込まれる)。HMGB1は、試験薬の前、後、又は同時に試験用サンプルに添加されてもよい(例えば、HMGB1は試験薬と同じ投薬溶液に含められ、並びに/若しくは細胞懸濁液中に含められていてもよい)。HMGB1は、メラニン産生細胞の樹状突起形成及び/又は細胞体の成長を刺激するために十分な量である必要がある。対照サンプルは、試験薬を含まない点を除いては、試験用サンプルと本質的に同様に調製されてもよい。
【0044】
いくつかの例では、メラニン産生細胞中の樹状突起形成度及び/又は細胞体の成長を阻害する試験薬の能力は、メラニン産生細胞及び1以上の他の種類の細胞を試験薬に、当該他の種類の細胞におけるHMGB1の生成を誘発する刺激に曝す前、間、又は後に、接触させることによって決定することが好ましい場合がある。試験用サンプルは、メラニン産生細胞のサンプル及び他の種類の細胞(例えば、1,000〜2,000,000細胞/mL)を、任意に媒質中に懸濁され、試験薬及びある刺激物(刺激の形態によって異なる)を好適な容器(例えば、96ウェルプレート)に入れて提供することによって形成されてもよい。本明細書で好適に使用される他の種類の細胞は、与えられた刺激(例えば、ケラチン産生細胞、線維芽細胞、及び/又はマクロファージ)に対してHMGB1を発現することが知られてさえいれば特に限定されない。刺激物も特に限定されず、選択された細胞の種類においてHMGB1の発現を誘発することが知られてさえいれば、化学物質(例えば、炎症マーカー、活性酸素種、酸又は塩基)、エネルギー(例えば、紫外線照射、熱、振動)、又は何かの欠如(例えば、酸素又は炭素量の低減)の形態を取ってもよい。この刺激物は、その形態に適する形で細胞に接触される。試験薬は、細胞が刺激物に接触される前、間、又は後に添加してもよい。試験薬は、直接試験用サンプルに添加されてもよく、又は試験薬は上述のように投薬溶液として添加されてもよい(例えば、細胞媒質の1:1000の希釈率で組み込まれる)。対照サンプルは、試験薬を含まない点を除いては、試験用サンプルと本質的に同様に調製されてもよい。
【0045】
いくつかの例では、メラニン産生細胞の樹状突起形成度を増加させ並びに/若しくは細胞体の大きさを増大させる、HMGB1に事前に曝されたメラニン産生細胞を、試験用サンプルに含めてもよい。このようにして、誘発された変化を反転させる、並びに/若しくは変化率を抑える試験薬の能力を評価してもよい。
【0046】
試験用サンプル及び(使用する場合)対照サンプル中のメラニン産生細胞の樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさは、細胞を試験薬に接触させた後で測定される。メラニン産生細胞の樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさの変化は、上述のように、試験薬と接触させた後、いかなるタイミングで決定してもよい。メラニン産生細胞の樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさの変化を、メラニン産生細胞を試験薬に接触させた約24時間後の測定値に基づいて決定することが好ましい場合がある。樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさの測定された変化を、対照の樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさと比較して、試験薬が皮膚色調剤として特定されるか否かを決定する。メラニン産生細胞の測定された樹状突起形成度及び/又は細胞体の大きさが樹状突起形成度の増加及び/又は細胞体の大きさの増大に対応しない場合、試験薬は皮膚色調剤として特定される。
【0047】
いくつかの例では、本明細書の方法を、1以上の他の検定がその前後に行われる、段階的なスクリーニング検定で使用してもよい。例えば、本方法は更なる検査のための試験薬を特定するより高生産性の検定に続いてもよいし、本方法によって皮膚色調剤として特定された試験薬の適性を更に評価する検定を本方法の後に続けて行ってもよい。例えば、試験薬は、第1の検定における発現HMGB1を阻害する能力に基づいて皮膚色調剤として特定されてもよく、続いて、第2の検定におけるメラニン産生細胞の樹状突起形成度の増加及び/又は細胞体の大きさの増大を阻害する能力に基づいて皮膚色調剤として更に特定されてもよい。いくつかの例では、第1の検定は比較的高生産性の検定として使用される能力に基づいて選択され、一方で第2の検定は異なる又は複数の生物学的経路に働きかける活性剤又は活性剤の組合せを特定するように選択されてもよい。
【0048】
組成物
本発明の方法は、美容的処置、調節、改善、及び/又はまだらな皮膚の色調及び/又は色素過剰スポットを防ぐことを意図した組成物に使用される皮膚色調剤を特定するために使用可能である。これらの化粧組成物は、哺乳動物の皮膚表面、特にヒトの皮膚に塗布されるためのものである。組成物は、限定するものではないが、溶液、懸濁液、ローション、クリーム、ゲル、化粧水、スティック、ペンシル、スプレー、エアゾル、軟膏、クレンジング洗剤液及びクレンジング棒状固形物(cleansing liquid washes and solid bar)、シャンプー及びヘアコンディショナー、ペースト、フォーム、パウダー、ムース、髭剃りクリーム、ティッシュ、細片(strip)、パッチ、電気駆動パッチ、創傷被覆材及び粘着性包帯、ヒドロゲル、フィルム形成製品、顔及び皮膚マスク(不溶性シートを有する及び有さない)、ファンデーション、アイライナー及びアイシャドウ等の化粧品等の、非常に様々な製品形態を有し得る。組成物の形態は、組成物中に存在する場合、選択される具体的な皮膚科学的に許容可能な担体に従い得る。
【0049】
本明細書に記載の組成物は、上述の本方法によって特定される安全且つ有効な量の皮膚色調剤を、1以上の任意のその他の成分と共に含んでいる。皮膚色調剤は、HMGB1の発現を調整し、並びに/若しくはHMGB1の活性を直接的又は間接的に阻害することにより、色素過剰の肌の外観を改善するために、組成物に含まれている。本明細書での使用に好適な任意のその他の成分としては、この種の化粧組成物に安全に使用されることが知られているいかなる成分をも含む(例えば、軟化剤、保湿剤、ビタミン、ペプチド、糖アミン、日焼け止め活性剤(又は日焼け止め剤)、紫外線吸収剤、着色剤、界面活性剤、フィルム形成組成物、レオロジー変性剤)。本組成物に使用される好適な任意のその他の成分の非限定的な例は、Millikinらにより2008年2月28日に出願された米国特許公開公報第2008/0206373号に開示されている。
【0050】
スキンケア組成物の製造方法
本明細書のスクリーニング方法は、1以上の皮膚色調剤を特定するために使用され、その皮膚色調剤がスキンケア組成物に組み込まれる。当該組成物は、局所用スキンケア組成物を製造する技術分野において既知であるような従来の方法によって調製され得る。このような方法は、通常、加熱、冷却、真空の適用等を用いて又は用いずに、成分を1つ以上の工程で混合して比較的均一な状態にすることを伴う。一般に、エマルションは、最初に水相物質を脂肪相物質とは別個に混合し、その後2相を適宜組み合わせて、所望の連続相を得ることにより調製される。組成物を、安定性(物理的安定性、化学的安定性、光安定性)、及び/又は活性物質の送達を最適化するように調製することが重要である。この最適化には、適切なpH(例えば7未満)、活性剤と複合体を形成して、安定性又は送達に有害な影響を与え得る材料の排除(例えば混入鉄の排除)、複合体形成を防止する手法(例えば、適切な分散剤又は二重区画包装)の使用、適切な光安定性の手法(例えば、日焼け止め剤/日焼け防止剤の配合、不透明包装の使用)の使用等を挙げることができる。
【0051】
皮膚の処理方法
処置、塗布、調節、又は改善の様々な方法において、前述した組成物を使用することができる。組成物は、HMGB1阻害を必要とする対象皮膚表面に塗布されてもよい。例えば、組成物は、色素過剰スポット又はまだらな色調を含む皮膚表面に塗布されてもよい。最も問題の皮膚表面は、顔の皮膚表面、手及び腕の皮膚表面、足及び脚の皮膚表面、並びに首及び胸の皮膚表面(例えば、デコルタージュ)等の、衣服で覆われない皮膚表面である傾向がある(が、これらに限定されない)。特に、色素過剰スポットの識別は額、口周囲、頤、眼窩周囲、鼻及び/又は頬の皮膚表面を含む顔の皮膚表面であってもよい。
【0052】
本方法は、組成物による処置のために皮膚表面を識別する工程を含んでもよい。色素過剰スポットは、使用者、又は例えば皮膚科医、美容師、若しくは他の介護者等の第三者により識別されてもよい。識別は、寸法及び/又は色に基づいて、処置を必要とする皮膚の色素過剰スポットを視覚的に検査することにより行われてもよい。メラニンの識別は、SIAscope(登録商標)V(Astron Clinica,Ltd.,UKから入手可能)又はVISIA(登録商標)Complexion Analysisシステム(Canfield Scientific,Inc.,Fairfield,NJから入手可能)等の市販の撮像装置により行われてもよい。両方の装置は、皮膚の画像を収集し、メラニン等の発色団を識別することが可能である。次にこれらの画像を使用して、色素過剰スポット又はまだらな色調を識別することができる。
【0053】
組成物を皮膚表面に塗布する多数の投与計画が存在する。本組成物は、処置期間中、少なくとも1日1回、1日2回、又は1日により頻繁に適用され得る。1日2回適用する場合、1回目と2回目の適用には少なくとも1〜約12時間間隔を空ける。組成物は典型的に、朝及び/又は夜就寝前に塗布される。
【0054】
組成物は、皮膚表面にて十分な接触時間残留され、及び/又は、十分な回数、繰り返し塗布されて、所望のHMGB1阻害を達成してもよい。所定の実施形態において、接触時間は、約1時間、2時間、6時間、8時間、12時間又は24時間を超える。接触時間は、組成物の塗布から、組成物が除去される迄の時間である。所定の実施形態において、組成物は、基質を濯ぎ又は洗浄することにより除去され得る。
【0055】
処置期間は、理想的には、HMGB1阻害を与えるのに十分な時間である。処置期間は、色素過剰スポットの外観の改善、メラニンにおける低減、又は皮膚色調の均一化を提供するのに十分な時間であり得る。改善は、色素過剰スポットの大きさの検知可能性の低下、色素過剰スポットの色の薄化(例えば、色の明るさの上昇)、又は色素過剰スポットのメラニンの減少であってもよい。処置期間は、単一の塗布又は多数の塗布を含むことができる。組成物は、1日1度以上塗布されてもよい。例えば、組成物は、少なくとも1日2回塗布される。少なくとも1週間にわたって多数の塗布が行われてもよい。代替的に、処置期間は、約4週間を超え、又は約8週間を超えてもよい。ある実施形態において、処置期間は、数ヶ月(すなわち3〜12ヶ月)又は数年間続き得る。
【0056】
組成物を皮膚表面に塗布する工程は、局部的塗布により行われてもよい。組成物の塗布に関連して、用語「局部的な」、「局部」又は「局部的に」は、組成物が標的範囲(色素過剰スポット等)に送達される一方、処置を必要としない、近傍の皮膚表面への送達を最小限にすることを意味する。局部的塗布により、適度の量の組成物が、色素過剰スポット等の標的範囲に隣接した範囲に塗布される(即ち、組成物は幾分かの拡がりを有することなく、色素過剰スポットの境界線内に塗布され又は残留する見込みはない)ことが理解される。組成物又は皮膚科学的に許容可能な担体の形態は、局所的塗布が容易となるように選択する必要がある。本発明の所定の実施形態は、組成物を色素過剰スポットに局部的に塗布することを想定しているが、本発明の組成物は1つ以上の顔の皮膚表面に対してより全般的に又は広く塗布されて、顔の皮膚領域内の色素過剰スポットの外観を低減できることを認識するであろう。
【0057】
好適な方法は、上記の工程のうちの任意の1つ以上を含み得る。ケラチン産生細胞のHMGB1活性を阻害する1つの好適な方法は、グリセロールモノリシノレエート(CAS:141−08−2)、ヒドロキシ桂皮酸(CAS:7400−08−0)、ガラクトミセス発酵濾液(INCI:Galactomyces Ferment Filtrate、例えば、Pitera(登録商標))、加水分解セイヨウスモモ(Prunus domestica)抽出物(INCI:ブチレングリコール、水、加水分解セイヨウスモモ、例えば、Clariju(登録商標))、これらの誘導体、及びこれらの組合せから選択される皮膚色調剤を含む組成物を塗布する工程を含んでいる。ケラチン産生細胞のHMGB1活性を阻害する別の好適な方法は、グリセロールモノリシノレエート、ヒドロキシ桂皮酸、ガラクトミセス発酵濾液、及び/又は加水分解セイヨウスモモ(Prunus domestica)抽出物を皮膚表面に塗布することを含み、組成物はケラチン産生細胞のHMGB1活性を阻害するのに十分な期間、少なくとも毎日塗布される。
【0058】
試験方法
以下の方法は、本発明の様々な実施形態の所定の特徴及び利点を説明するために提供され、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。試験方法は、本方法で使用される細胞のプレーティング、投薬、培養に適した手段を提供するものである。更に試験方法は、RNA及びタンパク質を分離、分析するのに適した手段を提供する。更に試験方法は、メラニン産生細胞の樹状突起形成度及び細胞体を判定するのに適した手段を提供する。試験方法の説明にて、特定の細胞、材料、及び/又は器具が例示されるが、当業者であれば、ここで開示されたものと同等の、その他の細胞種類、材料及び/又は容器を使用して本試験方法を利用できよう。
【0059】
プレート
40,000細胞/1mLのケラチン産生細胞懸濁液210mLを、好適な媒質を使用して、細胞懸濁液を生成する。細胞懸濁液2mLを、適宜1つ以上の12ウェルプレートの、適切な数のウェルに入れる。細胞のピペットの際に、ウェルごとに速度と挿入角度を同一とする。12ウェルプレートを、一晩37℃で恒温放置する。細胞プレーティング品質が低い場合(例えば、プレートに細胞が貼り付いていない、シーディング密度が不均一である)、破棄してやり直す。
【0060】
投薬調製
試験薬を所望の濃度(例えば0.0001%から10%)まで好適な媒質(例えば細胞懸濁液の生成に用いられた媒質と同じ)で希釈し、投薬媒質を調整する。好適なレベルまで(例えば0.0001%〜10%、0.01%〜8%、0.1%〜5%、又は0.5%〜3%)試験薬を希釈することは、スキンケア組成物に対する試験薬の生体内効果をシミュレーションするのに重要となり得る。このようなレベルのスキンケア組成物に、スキンケア活性剤が含まれるのは一般的でなくはない。任意で、試験用サンプルに可溶化剤0.1%が含まれるよう、好適な可溶化剤を含める。12ウェルプレートの各ウェルに、投薬媒質2mLを加え、4℃で一晩又は試験用サンプルに試験薬を加えるまで恒温放置する。
【0061】
投与
調製された投薬媒質を、37℃のインキュベータに少なくとも30分又はpHが均等になるまで置いておく。投薬媒質が温められ、適切なpHとなれば、細胞を投与する。投与された細胞を6時間37℃で恒温放置する。
【0062】
培養
6時間恒温放置の内、最後の20分で、顕微鏡で全てのウェルを視認する。形態変化、毒性、沈殿が認められた全ての対照及びサンプルの写真を撮る(例えば顕微鏡写真)。12ウェルプレートの媒質を、バケツに放り込む。ペーパータオルで軽く叩いて、更に媒質を除去する。プレートを逆さにして新しいペーパータオルに1〜2分置き、更に軽く叩いて残留した媒質を除去する。8チャネルMATRIXブランドのピペット(1つ置きのチャネルに先端部を備える)を使用して、各ウェルに700μLのTRIzol(登録商標)ブランドの試薬を添加する。各ウェルからの溶菌液を、1つ置きのチャネルにのみ充填された8チャネルピペットを使用して、96ウェルプレートに移動させる。粘着質のプレートカバーを96ウェルプレートにくっつけて、−20℃で保管する。
【0063】
RNA分離
全RNA(スモールRNAを含む)を、メーカーの指示に従ってQIAgen(登録商標)(ドイツ、Helden)のmiRNeasy Miniカラムを使用して、細胞溶菌液から分離させる。溶菌液は、短い渦流によって均質化されており、精製の準備が整うまで−80℃で冷凍されてもよい。精製のために、溶菌液は氷の上で解凍され、一旦クロロホルムに抽出される。抽出物の水相にエタノールを添加し、この混合物をRNeasy(登録商標)ブランドスピンカラムに添加する。カラムを洗浄し、汚染物を取り除き、精製された全RNAをカラムからヌクレアーゼを含まない温水に溶出させる。RNA量は、NanoDrop(登録商標)8000ブランド分光光度計(Thermo Scientific(マサチューセッツ州Waltham))を使用して決定する。RNAの品質及び完全性は、Agilent(登録商標)2100ブランドBioAnalyze(カリフォルニア州Santa Clara)を使用して確認される。精製されたRNAはー80℃で保管する。
【0064】
mRNA分析
250ngの全RNAは、Beckman Coulter(登録商標)(インディアナ州Indianapolis)Biomek(登録商標)FXpブランド自動化ワークステーションでの使用に最適化されたAffymetrix(登録商標)HT 3’IVT Expressブランドプロトコルを使用してGeneChip(登録商標)ブランドのマイクロアレイターゲットに変換される。標識化された対象は、一晩Affymetrix(登録商標)U219−96ブランドのマイクロアレイプレートに対してハイブリダイゼーションされ、続いて、Affymetrix(登録商標)GeneTitan(登録商標)ブランドの器具でメーカーの指示に従って洗浄、染色、スキャンされる。
【0065】
miRNA分析
1ugの全RNAを、Affymetrix(登録商標)FlashTag Biotin HSRブランドの標識化キット及び提供されるプロトコルを使用して標識化する。ビオチン標識化されたRNAは、一晩Affymetrix(登録商標)miRNA 3.0−96ブランドのマイクロアレイプレートに対してハイブリダイゼーションされ、続いて、Affymetrix(登録商標)GeneTitan(登録商標)ブランドの器具で提供されるプロトコルに従って洗浄、染色、スキャンされる。
【0066】
ケラチン産生細胞からのHMGB1の定量
ケラチン産生細胞(又は他の細胞)は、上述のように、約200,000細胞/ウェルのシーディング密度で12ウェルプレートに入れ、5%のCO2を加えて37℃で一晩恒温放置する。ケラチン産生細胞は、試験薬を含有する投薬媒質と共に投薬され、プレートは更に20時間インキュベータに戻される。それぞれの上澄みを回収し、ELISA(USCN Life Sciences)を使用してHMGB1の濃度をメーカーの指示に従って分析する。細胞は、Glo Lysis Buffer(Promega)によって溶解され、タンパク質濃度をメーカーの指示に従ってPIERCEブランドのビシンコニン酸検定キットを使用して決定する。ELISAによって決定されHMGB1の値は、細胞からの総タンパク質濃度に正規化させる。
【0067】
メラニン産生細胞の樹状突起形成度及び大きさの測定
ヒト初代メラニン産生細胞(ATCC)を、T150フラスコ中で2パッセージにわたり培養する。樹状突起形成度の実験に関して、メラニン産生細胞は96ウェルプレート(クリアな)に約5000細胞/ウェルの密度で入れる。このプレートを、37℃で5%のCO2のインキュベータ内に収められたIncucyte ZOOM(登録商標)生細胞撮像システム(Essen Bioscience(ミシシッピ州Ann Arbor))に入れる。位相モードを使用して、毎時20X画像を収集する。Neurite Outgrowth Software Package(Essen)を使用して、細胞体の大きさ、樹状突起形成度、及び細胞の数を測定する。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
本例では、試験薬を、HMGB1の濃度を低減させるその能力に基づいて、皮膚色調剤として特定する本方法の能力を証明する。表1は、ケラチン産生細胞を異なる濃度のヒドロキシ桂皮酸(「HCA」)又はメチルヒドロキシ桂皮酸(「ME−HCA」)に接触させた結果のHMGB1の濃度を変化を示す。対照サンプルは、試験薬はないが、試験用サンプルと同様である。表1の試験用サンプル及び対照は、本方法に従って調整及び分析された。表1に示すように、HCA及びME−HCAにより、対照に対してHMGB1レベルが十分に低減された。したがって、HCA及びME−HCAが、本方法に係る皮膚色調剤として特定される。
【0069】
【表1】
【0070】
(実施例2)
本例では、試験薬を、HMGB1の濃度を低減させるその能力に基づいて、皮膚色調剤として特定する本方法の能力を更に証明する。以下の表2は、ケラチン産生細胞を異なる濃度のPitera(登録商標)から商業的に入手可能なガラクトミセス発酵濾液(「GFF」)又はClariju(登録商標)から商業的に入手可能なセイヨウスモモ(Prunus domestica)抽出物に接触させた結果のHMGB1の濃度の変化を示す。対照サンプルは、試験薬はないが、試験用サンプルと同様である。表2の試験用サンプル及び対照は、本方法に従って調整及び分析された。表2に示すように、GFF及びプルヌスにより、対照に対してHMGB1レベルが十分に低減された。したがって、GFF及びプルヌスが、本方法に係る皮膚色調剤として特定される。
【0071】
【表2】
【0072】
本明細書で開示する寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限られるとして理解されるべきではない。むしろ、特に断らない限り、そのような各寸法は、記載された値及びその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味するものとする。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。
【0073】
あらゆる相互参照又は関連特許若しくは関連出願を含む、本明細書に引用される全ての文献は、明確に除外ないしは別の方法で限定されない限り、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いずれの文献の引用も、こうした文献が本願で開示又は特許請求される任意の発明に対する先行技術であることを容認するものではなく、また、こうした文献が、単独で、あるいは他の任意の参照文献との任意の組合せにおいて、こうした発明のいずれかを教示、示唆又は開示していることを容認するものでもない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照することによって組み込まれた文書内の同じ用語の意味又は定義と競合する程度に、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0074】
以上、本発明の特定の諸実施形態を図示、説明したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び改変を行いうる点は当業者には自明であろう。したがって、本発明の範囲内に含まれるそのような全ての変更及び修正は、添付の特許請求の範囲にて網羅することを意図したものである。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]