特許第6584593号(P6584593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584593
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20190919BHJP
   G05B 19/409 20060101ALI20190919BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   B23Q17/00 E
   G05B19/409 C
   G05B19/418 Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-115705(P2018-115705)
(22)【出願日】2018年6月19日
(62)【分割の表示】特願2015-542464(P2015-542464)の分割
【原出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2018-183866(P2018-183866A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2018年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】鈴山 惠史
(72)【発明者】
【氏名】古川 和也
(72)【発明者】
【氏名】小川 正
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−175442(JP,A)
【文献】 特開2013−048304(JP,A)
【文献】 特開2006−102913(JP,A)
【文献】 特開平07−200037(JP,A)
【文献】 実開平01−081259(JP,U)
【文献】 特開平07−160316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00
B23Q 1/00
B23Q 41/08
G05B 19/409
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを回転可能に把持する主軸装置と、
保持した工具をワークに対して移動させる駆動装置と、
前記主軸装置および前記駆動装置の駆動を制御する制御装置と、
前記制御装置および他の工作機械の制御装置に接続され、自身が搭載された工作機械の所定情報の画面および、前記他の工作機械の所定情報の画面とをそれぞれ切り換えて表示する表示器とを有し、
前記表示器が、自身が搭載された工作機械の所定情報を表示するための第1操作画面と、その他の工作機械の所定情報を表示するための第2操作画面とを階層的に表示し、且つ、前記第1操作画面を初期画面として表示するものである工作機械。
【請求項2】
前記表示器が、自身が搭載された工作機械の隣に位置する前記他の工作機械の制御装置に接続されたものである請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記主軸装置と前記駆動装置とが機体上下方向に配置され、前記主軸装置および前記駆動装置と前記制御装置とが機体前後方向に配置され、前記主軸装置、前記駆動装置および前記制御装置が幅寸法の狭い外装カバー内に収められた請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の工作機械によって構成される加工機械ラインを構成する一つの工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
NC旋盤などの工作機械では、例えば作業者により、シーケンスプログラムに従った機械の動作チェックが行われる。その際、工作機械の操作パネルにはラダー図画面が表示され、同図に基づいて接点のON/OFF切り換えが行われる。一方で、そうした切り換えによって生じる出力状態の確認が必要であるため、作業者は、操作パネルの表示をI/Oモニタ画面に切り換える。そして、そもそも作業者は、動作確認を行うに際して、当該工作機械における各個操作画面を操作パネルに表示させることにより、動作のための操作確認を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−048304号公報
【特許文献2】特開平05−324037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、工作機械などでは作業者が複数の画面を表示し、各々の表示画面を確認しながら作業を進めることがある。しかし、従来の工作機械では、操作パネルの画面をその都度切り換えなければならなかった。そのため、操作パネルの画面表示を頻繁に切り換えなければならず、作業効率が良くないだけでなく、同時に複数の画面を見ることができなのは不便であった。この点、表示技術として複数の画面を重ねて表示するマルチ表示機能や、2画面に分割する分割表示機能などがある。しかし、マルチ表示機能は、下に重ねられた画面が作業者には見えないため、有効なものとはいえない。また、画面を2分割するような分割表示機能は、表示が小さくなり、縦横比も変化してしまうため、作業者にとって見難い表示形態である。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、他の工作機械の所定情報の表示が可能な工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る工作機械は、ワークを回転可能に把持する主軸装置と、保持した工具をワークに対して移動させる駆動装置と、前記主軸装置および前記駆動装置の駆動を制御する制御装置と、前記制御装置および他の工作機械の制御装置に接続され、自身が搭載された工作機械の所定情報の画面および、前記他の工作機械の所定情報の画面とをそれぞれ切り換えて表示する表示器とを有し、前記表示器が、自身が搭載された工作機械の所定情報を表示するための第1操作画面と、その他の工作機械の所定情報を表示するための第2操作画面とを階層的に表示し、且つ、前記第1操作画面を初期画面として表示するものである


【発明の効果】
【0007】
前記構成によれば、複数の工作機械が並べられた場合、表示器に自身の工作機械の所定情報を表示するだけではなく、他の工作機械の所定情報を表示することもできるため、作業者が他の工作機械を操作するに当たり、他の工作機械の表示器の表示だけではなく、前記工作機械の表示器にも他の工作機械の所定情報が表示されるため、例えば他の工作機械に対して行う動作チェックにおいて、そのラダー図とI/Oモニタを一度に確認することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】加工機械ラインの一実施形態を示した斜視図である。
図2】加工機械ラインを構成する工作機械の内部構造を示した斜視図である。
図3】加工機械ラインにおける工作機械同士の関係を示した図である。
図4】加工機械ラインを構成する工作機械の制御システムを表すブロック図である。
図5】工作機械のディスプレイに表示された所定情報の情報源をイメージした標準状態の図である。
図6】工作機械のディスプレイに表示された所定情報の情報源をイメージした他機選択状態の図である。
図7】工作機械のディスプレイに表示されたメインメニュー画面を示した図である。
図8】工作機械のディスプレイに表示された他機選択画面を示した図である。
図9】工作機械のディスプレイに表示された他機選択画面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係る工作機械の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施形態の加工機械ラインを示した斜視図である。加工機械ライン1は、ベース2上に4台の工作機械10(10A,10B,10C,10D)が搭載されている。4台の工作機械10は、いずれも同じ型のNC旋盤であり、内部構造および全体の形状や寸法が同じものである。そして、後述するように、各工作機械10の制御装置が集線装置により互いに接続されている。また、加工機械ライン1には、各々の工作機械10に対してワークを搬送する不図示のオートローダーが設けられている。
【0010】
ここで「加工機械ライン」とは、一定の関係をもった複数の工作機械が接近して配置された工作機械群をいう。本実施形態の加工機械ライン1は、図示するように、4台の工作機械10が幅方向(Y軸方向)にほぼ接した状態で配置されている。ただ、加工機械ラインは、工作機械同士が互いに距離をとって配置されたものであってもよい。また、図示するように、一直線に配置されるほか、例えば前面側が円弧状になるように、各工作機械10の後方側の間隔を広げて配置するものであってもよい。
【0011】
本実施形態の工作機械10が特徴的なのは、幅寸法が狭く、機体同士も極めて接近させた配置をしているため、加工機械ライン1全体が非常にコンパクトなことである。そのため、加工機械ライン1を取り扱う作業者の作業エリアがとても小さい。
【0012】
工作機械10は、全体が外装カバー3によって覆われており、内部に加工部が設けられている。図2は、工作機械10の内部構造を示した斜視図である。この工作機械10は、エンドミルやドリルなどの回転工具、或いはバイトなどの切削工具を保持したタレットを備えるタレット旋盤である。工作機械10は、工作物(ワーク)を把持するチャック11を備えた主軸台12、工具が取り付けられたタレット装置13、そのタレット装置13をZ軸やX軸に沿って移動させるZ軸駆動装置やX軸駆動装置、駆動部を制御するための制御装置15などを備えている。
【0013】
ここで、Z軸は、把持したワークを回転させる主軸台2の回転軸(主軸)と平行な水平軸である。X軸は、Z軸に対して直交し、タレット装置13の工具をZ軸に対して進退させる移動軸であり、垂直方向である。X軸方向は、図1に示す工作機械10及び加工機械ライン1ともに上下方向である。
【0014】
工作機械10は、ベース2の上を移動できるように、車輪を備えた可動ベッド16を備え、その可動ベッド16に対して主軸台12が固定されている。主軸台12は、回転自在に支持された主軸にチャック11と主軸側プーリ17とが一体になり、主軸用サーボモータ18の回転が与えられるよう構成されている。一方、タレット装置13は、Z軸スライド22に搭載され、更にそのZ軸スライド22がX軸スライド26に搭載された構成をしている。Z軸スライド22は、ベース21が昇降可能なX軸スライド26に固定され、そのベース21にはガイド201が形成されている。そしてZ軸スライド22がベース21内を摺動してZ軸に平行な水平方向に移動自在な構成となっている。
【0015】
Z軸駆動装置には、Z軸スライド22をZ軸方向に移動させるため、Z軸用サーボモータ23の回転出力を直進運動に変換するボールネジ駆動方式が採用されている。すなわち、Z軸用サーボモータ23の駆動によりボールネジが回転し、その回転運動がボールナットの直線運動に変換され、Z軸スライド22がZ軸と平行な方向に移動するよう構成されている。こうしたZ軸駆動装置はベース21に搭載されている。主軸台12の横には起立したコラム25が可動ベッド16に固定されている。
【0016】
コラム25には、主軸台12側に垂直方向に延びた2本のガイド27が平行に設けられ、そのガイド27に対してX軸スライド26が摺動自在に取り付けられている。X軸スライド26は、ガイド27に沿った昇降が可能であり、このX軸駆動装置にもモータの回転出力をX軸スライド26の昇降運動に変換するため、ボールネジ駆動方式が採用されている。X軸用サーボモータ28の駆動によりボールネジが回転し、その回転運動がボールナットの直線運動に変換され、X軸スライド26の昇降が可能になる。そして、こうした工作機械10の動作制御などを行うための制御装置15が可動ベッド16のZ軸方向の端部(工作機械10の後方)に配置されている。
【0017】
このような構成の工作機械10は、コラム25が主軸台12の横に近接して起立し、X軸スライド26が垂直方向に昇降する構成がとられている。すなわち、工作機械10のX軸は垂直である。そのため、X軸スライド26に固定されたZ軸スライド22は常に主軸台12上に位置していることとなる。工作機械10は、このように主軸台12、Z軸およびX軸駆動装置、そしてタレット装置13が極めて狭い幅寸法(Y軸方向の寸法)内に収められている。更に、制御装置15がほぼ同じ寸法内に収まるように配置されているため、前述したように、工作機械10の幅寸法が狭く構成されている。
【0018】
工作機械10は、可動ベッド16がベース2上を移動することにより、図2に示した内部構造部分を前後方向に引き出すことが出来るように構成されている。前方へ引き出された場合には、工具の交換やワーク変更に伴う段取り換え等が行われ、後方側へ引き出された場合には工作機械10そのものの交換が行われる。このように、工作機械10は、ベース2に対して引き出し可能であるため、工作機械10同士が近接して配置されているにも拘わらず、各工作機械10のメンテナンス、段取り換え、交換等の作業を簡単に行うことが可能である。
【0019】
幅寸法が小さい工作機械10は、その前面部に作業者の目線の高さに合わせて操作パネル20が取り付けられている。図1に示すように、操作パネル20は全ての工作機械10に取り付けられ、加工機械ライン1全体では4台の操作パネル20が連続して並べられている。工作機械10の幅寸法が狭いため、隣り合う操作パネル20同士の距離も接近しており、作業者が一つの操作パネル20だけでなく隣の操作パネル20も確認可能な配置である。
【0020】
次に、図3は、加工機械ライン1における工作機械同士の関係を示した図である。一つの工作機械10では、操作パネル20が制御装置15に接続され、制御装置15の記憶部に格納された当該工作機械10自身の所定情報をディスプレイ51に表示することができ、入力部52からの信号入力が可能な構成になっている。加工機械ライン1は、一つのベース2に対して2台の工作機械10が搭載され、合計4台の工作機械10を有している。各ベース2には集線装置であるハブ(HUB)6が設けられ、2台の工作機械10(10Aと10B、10Cと10D)の各々の制御装置15が接続されている。更に、各ベース2に設けられたハブ6同士も接続されている。
【0021】
こうして加工機械ライン1には、4台ある工作機械10の制御装置15同士がハブ6を介して接続され、LAN(Local Area Network)が構築されている。よって、いずれの工作機械10(例えば、工作機械10A)であっても、そのディスプレイ51には、自身の工作機械10(10A)に関する所定情報を表示することができるとともに、他の工作機械10(例えば、工作機械10B)に関する所定情報を表示することもできるようになっている。
【0022】
加工機械ライン1には、ワーク自動搬送装置であるオートローダーが組み付けられており、その駆動制御装置である搬送用制御装置7が一つのベース2内に設けられている。この搬送用制御装置7もハブ6に接続され、全ての工作機械10の制御装置15に接続されている。そのため、4台あるどの工作機械10のディスプレイ51にも、オートローダーに関する所定情報を表示することができるようになっている。
【0023】
ここで、図4は、工作機械10の制御システムを表すブロック図である。制御装置15を中心とした制御部は、マイクロプロセッサ(CPU)31、ROM32、RAM33、不揮発性メモリ34、I/Oユニット35、操作パネル20などがバスライン39を介して接続されている。CPU31は制御部全体を統括制御するものであり、ROM32にはCPU31が実行するシステムプログラムや制御パラメータ等が格納され、RAM33には一時的に計算データや表示データ等が格納される。また、不揮発性メモリ34は、CPU31が行う処理に必要な情報を記憶し、工作機械10のシーケンスプログラムなど、ディスプレイ51に表示するラダー図などの所定情報が格納されている。また、後述する操作パネル20による画面表示を実行するための表示制御プログラムも格納されている。操作パネル20は、表示器としてのディスプレイ51の他、操作ボタンなどからなる入力部52が設けられている。
【0024】
そして、この制御部には、I/Oユニット35に接続されたプログラマブル・マシン・コントローラ(PMC)36が設けられ、ラダー形式で作成されたシーケンスプログラムによって工作機械10が制御される。加工プログラムによるM機能、S機能及びT機能の各機能指令は、これらがシーケンスプログラムによって必要な信号に変換され、I/Oユニット35から主軸台12やタレット装置13などの工作機械駆動部40に出力が行われる。
【0025】
I/Oユニット35には、工作機械10の主要構造である主軸台やZ軸駆動装置、X軸駆動装置などの工作機械駆動部40の他にオートローダー45が接続され、各駆動部を制御するための制御信号の入出力が行われる。オートローダー45は、ワークを把持して搬送するローダを駆動するためのローダ駆動部、工作機械10の前面部に設けられた自動扉を開閉するための自動扉駆動部、ワークを固定する冶具を作動するための冶具駆動部を備えている。そして、バスライン39にはLAN用インターフェイス37が接続され、ハブ6を介して他の工作機械10との通信が可能な状態となっている。また、外部のパソコンなどを接続するための外部インターフェイス38も設けられている。
【0026】
マシニングセンタ等のNC工作機械では、例えば作業者がディスプレイ51の画面に表示されるシーケンスを見ながら機械の動作チェックが行われる。本実施形態の工作機械10においても同様である。シーケンス表示としては、シーケンスプログラムをリレーのコイルと接点を用いて表現したラダー図が使用される。動作チェックは、作業者がディスプレイ51に対し、該当する工作機械10のラダー図などの所定情報を表示させ、その画面を確認しながら行われる。
【0027】
動作チェックの際にはラダー図の他、各個操作情報やI/Oモニタも利用される。そのため作業者は、ディスプレイ51上にラダー図画面、各個操作画面、I/Oモニタ画面を表示することになる。具体的には、先ず、ディスプレイ51上に各個操作画面が表示される。作業者は、各個操作画面から、工作機械10に所定の動作を行わせた場合に、信号のON/OFFが実際にどのように変化するのかを確認することができる。すなわち、各個操作画面により工作機械10の操作確認ができる。次に、状況確認を行うため、ディスプレイ51がラダー図画面の表示に切り換えられる。作業者は、このラダー図画面を確認しながら手動で操作スイッチを操作して工作機械10の運転を行う。そして、ディスプレイ51は、I/Oモニタ画面への切り換えが行われる。作業者は、動作ごとに信号のON/OFF状態がどのようになっているのかをI/Oモニタ画面から確認する。
【0028】
このように、工作機械10について動作チェックなどを行う場合、作業者は複数の情報を確認しなければならず、その都度該当する情報を表示させるためにディスプレイ51の画面を切り換えなければならない。しかし、画面を切り換えながら行う作業は非効率であるため、複数の情報を示した画面を同時に表示して確認できることが望まれる。なお、ディスプレイ51に所定情報を表示して行う作業は、動作チェックばかりではなく、ワークに対する加工修正などについても行われる。その際にも、例えば、加工プログラムを示す画面、マクロ変数を表示する画面、そして加工軌跡を表す画面など、複数の画面を同時に確認することの要求がある。
【0029】
そこで、従来例で示したような複数画面の表示方法があるが、一つのディスプレイに複数の画面を表示することは有効ではなかった。この点、加工機械ライン1は、複数の工作機械10が接近して配置され、それぞれにディスプレイ51が備えられている。しかもLANが構築され、全ての工作機械10は、制御装置15同士が互いにハブ6によって通信可能な構成となっている。そこで、本実施形態では、ラダー図などの工作機械10毎の所定情報を表示するに当たり、各工作機械10において、自身の所定情報をディスプレイ51に表示するだけではなく、他の工作機械10の所定情報についても表示できるようにした。
【0030】
ところで、複数ある加工機械の間で通信が可能な加工機械ラインについては、例えば、本出願人が既に提案している上記特許文献1を挙げることができる。これは、複数の加工機械が配置され、回路基板に対して順に電気部品を装着して電気回路板を組み立てるものである。各々の加工機械には独立した制御装置が備えられ、その制御装置同士が通信装置によって接続されている。そして、1つの加工機械がマスタとなり、残る加工機械がスレーブとして関連付けられている。従って、この加工機械ラインでは、マスタの加工機械からスレーブの加工機械へ電気回路板に関する情報が供給され、また、スレーブの加工機械からは当該装置自身の状況がマスタの加工機械へ供給される。
【0031】
こうした従来の加工機械ラインによれば、マスタの加工機械のディスプレイからスレーブの加工機械の情報を取得することができる。しかし、これは加工機械ライン全体で作業効率を向上させるものであるが、各々の加工機械について動作チェックなどを行うことには効果を発揮しない。マスタの加工機械にしか情報を集約することができず、スレーブの加工機械が積極的に情報を取得することができないからである。この点、本実施形態の加工機械ライン1には主従の関係はなく、各々の工作機械10において他の工作機械10の所定情報をディスプレイ51に表示することが可能である。
【0032】
そこで次に、加工機械ライン1を構成する一つの工作機械10Bにおいて前述した動作チェックを行う場合を具体的に説明する。図5は、工作機械10のディスプレイ51に表示された所定情報の情報源をイメージした標準状態の図である。標準状態では、ディスプレイ51Aに工作機械10Aの所定情報の画面(A画面)が表示され、ディスプレイ51Bに工作機械10Bの所定情報の画面(B画面)が表示され、ディスプレイ51Cには工作機械10Cの所定情報の画面(C画面)が表示される。すなわち、ディスプレイ51には、各々のディスプレイ51が搭載されている工作機械10自身の所定情報が表示される。
【0033】
そして、工作機械10Bについて動作チェックを行う場合には、両隣の工作機械10A,10Cのディスプレイ51A,51Cが利用される。すなわち、以下に示す他機選択操作により、工作機械10A,10Cのディスプレイ51A,51Cの画面が、図6に示すように、工作機械10Bの所定情報を表示するB画面に切り換えられる。図6は、工作機械10のディスプレイ51に表示された所定情報の情報源をイメージした他機選択状態の図である。
【0034】
動作チェックの対象となっている工作機械10Bには、通常操作によりディスプレイ51Bに自身のラダー画面(B2画面)が表示される。そして、工作機械10A,10Cには、作業者によって他機選択操作が行われ、左隣の工作機械10Aには工作機械10Bの各個操作画面(B1画面)が表示され、右隣りの工作機械10Cには、工作機械10BのI/Oモニタ画面(B3画面)が表示される。すなわち、他機選択操作が行われた工作機械10では、ディスプレイ51に自身の所定情報ではなく、選択した工作機械10の所定情報が表示される。なお、「左」「右」とは、図1に示す加工機械ライン1の前に立った作業者から見た方向を指すこととする(以下同じ)。
【0035】
こうした他機選択操作は、作業者がディスプレイ51に表示される画面に従い、操作パネル20の入力部52を操作することにより行われる。工作機械10では、ディスプレイ51に表示される操作画面が階層的に構成され、作業者の遷移操作により所定情報の画面がディスプレイ51に表示されるようになっている。図7は、ディスプレイ51に表示されるメインメニュー画面を示した図である。メインメニュー画面60は、工作機械10のディスプレイ51に初期画面として表示されるものである。
【0036】
メインメニュー画面60には、工作機械10に関する複数の所定情報から一の情報を選択するための選択ボタンが配置されている。本実施形態の場合、工作機械10の所定情報とはラダー図、各個操作情報、I/Oモニタ情報、異常情報、取扱説明書などである。そこで、こうした所定情報を選択するため、メインメニュー画面60にはラダー図ボタン61、各個操作ボタン62、I/Oモニタボタン63、異常情報ボタン64、取扱説明書ボタン65、加工調整ボタン66の各選択ボタンが設定されている。
【0037】
選択ボタンの一つが作業者によって選択されると、該当する選択ボタンに応じた下位階層の画面へと遷移し、階層が複数の場合には更に下位へ向けて選択が行われる。そして、対応する所定情報の画面がディスプレイ51に表示される。選択ボタンの選択は、操作パネル20に設けられた入力部52のボタン操作などによって行われる。なお、ディスプレイ51は、入力装置を一体にしたタッチパネル式の構成にしたものであってもよい。そうすれば、作業者は画面の選択ボタンに直接触れることで容易に選択を行うことができる
【0038】
ところで、メインメニュー画面60には、他の工作機械10の所定情報を表示させるための他機選択ボタン68が配置されている。これは、作業者が操作している工作機械10(例えば工作機械10C)以外の工作機械10(例えば工作機械10B)の所定情報を、操作している工作機械10のディスプレイ51に表示するためのものである。例えば、工作機械10Cにて、作業者により他機選択ボタン68が選択された場合には、図8に示す他機選択画面70がディスプレイ51に表示される。なお、この他機選択画面70は、初期画面であるメインメニュー画面60の上位の階層に位置しており、他機選択ボタン68が選択れた場合には階層が上方に遷移して表示されることになる。
【0039】
他機選択画面70は、3つのボタンが配置され、左右両隣に位置する工作機械10を選択するための他機指定ボタン71,72と、自身のメインメニュー画面60に戻すための解除ボタン73とが設定されている。工作機械10Cの他機選択画面70の場合は、図示するように、他機指定ボタン71に左隣の工作機械10Bを示すM/C[B]の文字が表示され、他機指定ボタン72には右隣の工作機械10Dを示すM/C[D]の文字が表示される。そこで、作業者によって他機指定ボタン71が選択されたとすれば、工作機械10Cのディスプレイ51には、工作機械10Bのメインメニュー画面60が表示される。そして、前述したようにラダー図ボタン61などの選択ボタンが作業者によって選択されると、操作ボタンに応じた下位階層の画面へと遷移し、工作機械10Bに関する所定情報の画面が工作機械10Cのディスプレイ51に表示されることとなる。
【0040】
他機選択画面70は、2つの他機選択ボタン71,72が配置されているが、加工機械ライン1の端に位置する工作機械10A,10Dは、それぞれ片側に他機が存在しない。そのため、工作機械10Aであれば、左側に対応した他機選択ボタン71が何の表示もなく機能しないものとなっている。そして、工作機械10Dであれば、右側に対応した他機選択ボタン72が何の表示もなく機能しないものとなっている。ただし、他機選択ボタンは、2つではなく3つにしてもよい。加工機械ライン1は4台の工作機械10で構成されているため、他機選択ボタンによって自身以外の工作機械10を選択することができる。
【0041】
本実施形態では、前述したように他機選択画面70がメインメニュー画面60より上位の階層に設けられている。そして、工作機械10の起動時には、下位の階層にあるメインメニュー画面60が初期画面としてディスプレイ51に表示される構成となっている。従って、作業者が行う通常の操作では、メインメニュー画面60を起点として下位の階層へと画面が切り換えられることになる。すなわち、画面の切り換えに際して上位の遷移はメインメニュー画面60に戻ることである。そのため、ディスプレイ51の画面がいつの間にか他の工作機械10に関する所定情報の表示に切り換わってしまい、そのことに作業者が気付かないといった状況を回避することができる。
【0042】
しかし、作業者が他機選択画面70を選択して他の工作機械10に関する所定情報の表示に切り換えた場合に、そのこと自体を忘れてしまうことなども考えられる。そこで、表示する工作機械10の対象が切り換わった場合には、そのことが分かるように、各工作機械10の所定情報毎に画面が色分けされるなど、何らかの識別標識を画面に表示することが好ましい。例えば、画面の背景を、工作機械10Aは「赤」、工作機械10Bは「青」、工作機械10Cは「黄」、工作機械10Dは「緑」とする。そうすれば、図5に示したディスプレイ51A,51B,51Cは、それぞれ背景が赤、青、黄となり、図6に示したディスプレイ51A,51B,51Cは、全ての背景が青になり、工作機械10Bの所定情報を表示していることが一見して分かる。また、一定時間操作が途絶えた場合には、他機との通信を遮断してメインメニュー画面70に戻るようにしてもよい。
【0043】
よって、本実施形態では、一つの工作機械10において他機選択画面70に従って操作パネル20が操作されると、工作機械10の制御装置15同士がLANで接続されていることにより、入力部52からの指令信号に基づいて他の工作機械10から所定情報を取得し、自身のディスプレイ51に表示することができる。例えば、工作機械10Bの動作チェックを行う場合に、横に並んだ3つのディスプレイ51に対し、図6に示すように、各個操作画面(B1画面)、ラダー図画面(B2画面)、I/Oモニタ画面(B3画面)をそれぞれ表示させることにより、作業者は、同時に工作機械10Bに関する情報を確認することができる。しかも、加工機械ライン1は、工作機械10Bの前に立った作業者は、左右の工作機械10A,10Cのディスプレイ51までの距離が短いため、その立ち位置からほとんど移動することなく3つ全てのディスプレイ51を確認することができる。
【0044】
加工機械ライン1にはオートローダー45の搬送用制御装置7がLANを介して各工作機械10の制御装置15に接続され、通信が可能な状態で構成されている。従って、オートローダー45には専用のディスプレイが存在しないが、それ自身の所定情報を工作機械10のディスプレイ51に表示させることができる。その際、操作パネル20のディスプレイ51には、図7に示すメインメニュー画面60の他機選択ボタン68が選択れた場合に、図9に示す他機選択画面75が表示されるようにする。他機選択画面75には、他機選択ボタン76,77と解除ボタン78の他に、オートローダー選択ボタン79が設定されている。
【0045】
オートローダー選択ボタン79が選択されることにより、ディスプレイ51にはオートローダー45に関する所定情報を選択するためのメインメニュー画面が表示され、作業者の遷移操作によりオートローダーの所定情報画面がディスプレイ51に表示される。加工機械ライン1は非常にコンパクトな構成になっているため、オートローダー専用の操作パネルを設けることができない。しかし、本実施形態では、工作機械10の操作パネル20を使用することで、その欠点を解消している。そして、オートローダー専用の操作パネルが必要なくなったことで、加工機械ライン1の構成を簡素化でき、費用を抑えることもできる。
【0046】
ところで、前記実施形態では、4台の工作機械10の全てに操作パネル20が搭載された加工機械ライン1を示した。しかし、操作パネル20を着脱可能な構成にして、必要な場合に特定の工作機械10に付け替えるようにしてもよい。これにより、加工機械ライン1は、より簡素化できて費用を抑えることもできる。その際、加工機械ライン1は、例えば通常時は工作機械10A,10Cに操作パネル20を装着する。工作機械10B,10Dについては、工作機械10A,10Cに搭載された操作パネル20を使用し、他機選択画面70から自身に関する所定情報の表示させるようにすればよい。工作機械10同士の距離が極めて近いため、作業者にとって使用上特に問題はない。前述した動作チェックのように3つの画面が必要な場合には、操作パネルを他から持ってきて装着するようにしてもよい。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、加工機械ライン1構成する工作機械10を全て同型のものとして説明したが、その一部または全ての工作機械が異なるものであってもよい。
また、加工機械ライン1が4台の工作機械10によって構成された場合について説明したが、2台以上であれば台数に限定はない。そして、各工作機械の配置についても発明の効果が達成できるのであれば特に制限はない。
【0048】
また、前記実施形態では、本発明の利用例として工作機械の動作チェックを例に挙げて説明した。しかし、その他にも様々な場面での利用が可能である。また、3つの画面を表示させた場合を説明したが、表示画面は2つ或いは4つなどであってもよい。
また、前記操作パネル20をパネルコンピュータにし、搭載された工作機械10の制御装置15を介さず直接、他の工作機械10の制御装置15から所定情報を取得するようにしてもよい。更に、そのパネルコンピュータを無線LANで繋ぎ、どの工作機械10に対しても設置できるようにするのが好ましい。そうすれば、加工機械ライン1を構成する全ての工作機械10にパネルコンピュータを備える必要がなくなる。
【符号の説明】
【0049】
1:加工機械ライン 6:ハブ 7:搬送用制御装置 10(10A,10B,10C,10D):工作機械 15:制御装置 20:操作パネル 51(51A,51B,51C):ディスプレイ 52:入力部 60:メインメニュー画面 70:他機選択画面

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図9