(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6584711
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】口腔ケア組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/98 20060101AFI20190919BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20190919BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20190919BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20190919BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
A61K8/98
A61Q11/00
A61K8/34
A61K8/25
A61K8/73
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-81648(P2019-81648)
(22)【出願日】2019年4月23日
【審査請求日】2019年4月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500423994
【氏名又は名称】株式会社たかくら新産業
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】特許業務法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】高倉 健
【審査官】
田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−192530(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/000251(WO,A1)
【文献】
特開2009−040756(JP,A)
【文献】
特開2005−239633(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第106420497(CN,A)
【文献】
特開2002−325779(JP,A)
【文献】
Medicated Dental Paste,Mintel GNPD,2008年11月,ID1000657,URL,https://www.portal.mintel.com
【文献】
Dental Essence Whitening Gel,Mintel GNPD,2013年 5月,ID2067152,URL,https://www.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 35/00−35/768
A61K 36/06−36/068
A61C 15/00−17/40
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリシルクの粉末、溶剤、研磨剤、湿潤剤及び増粘剤を含み、
前記口腔ケア組成物の全量に対して、前記エリシルクの粉末を1質量%以下の範囲内で含み、
前記口腔ケア組成物の全量に対して、前記溶剤を1〜2質量%の範囲内で含み、
前記口腔ケア組成物の全量に対して、前記研磨剤を0.5〜0.6質量%の範囲内で含み、
前記口腔ケア組成物の全量に対して、前記湿潤剤を90〜92質量%の範囲内で含み、
前記口腔ケア組成物の全量に対して、前記増粘剤を0.6〜0.7質量%の範囲内で含む、
口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記エリシルク粉末の長さは、50μm〜500μmの範囲内である、
請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔ケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、虫歯や口臭に悩みを抱える人々が増加している。これらは、歯科・口臭外来を受診して治療を受けることで改善するが、日常の家庭内での予防ケアも非常に重要視されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また現在、「天然の」製品に対する関心が高まっている。理由の一因として、合成化学薬品の有害な副作や、環境に対する影響などが挙げられる。天然由来の製品は、有害な副作用をほとんど又はまったく有していないという実験的証拠も出されつつある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/143220号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの観点から、虫歯や口臭の予防又は治療を目的として、天然由来の活性成分を含む口腔ケア製品の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑み提案されたものであり、その目的として、一つの側面では、虫歯や口臭の予防又は治療を目的として、天然由来の活性成分を含む口腔ケア製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る口腔ケア組成物は、エリシルクの粉末を含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、一つの側面では、虫歯や口臭の予防又は治療を目的として、天然由来の活性成分を含む口腔ケア組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る口腔ケア組成物の効果の一例を説明するための図である。
【
図2】本実施形態に係る口腔ケア組成物の効果の他の例を説明するための図である。
【
図3】本実施形態に係る口腔ケア組成物の効果の他の例を説明するための図である。
【
図4】本実施形態に係る口腔ケア組成物の効果の他の例を説明するための図である。
【
図5】本実施形態に係る口腔ケア組成物の効果の他の例を説明するための図である。
【
図6】本実施形態に係る口腔ケア組成物の効果の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態に係る口腔ケア組成物について、詳細に説明する。
【0011】
(必須成分)
本実施形態に係る口腔ケア組成物は、エリシルクの粉末を含む。
【0012】
エリシルクは、シルクを作る絹糸昆虫のうち「エリ蚕の繭」から作られるシルクであり、紫外線カット機能や防臭機能を有することが知られている。エリシルクは、他のヤママユガから作られるシルクの糸と比較しても細く、また、カイコから作られるシルクの糸と比較しても柔らかいという特長を有する。さらに、エリシルクの表面は細かい凹凸を有し、断面にはナノチューブが多数存在するため、本発明者は口腔ケア組成物にエリシルクの(物理的)粉砕粉末を配合させることにより、汚れの吸着力が高い口腔ケア組成物が得られることを見出した。
【0013】
エリシルクを物理的粉砕した後の粉末の断面の直径は、10μm〜50μmであることが好ましく、エリシルク粉末の長さは、50μm〜500μmであることが好ましい。
【0014】
本実施形態に係る口腔ケア組成物におけるエリシルク粉末の配合量は、通常、口腔ケア組成物全量に対して、10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下であり、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0015】
(主要成分)
本実施形態に係る口腔ケア組成物は、通常の口腔ケア組成物と同様に、溶剤、研磨剤、湿潤剤、増粘剤などの成分を含んでいても良い。下記に各々の成分について一例を説明する。
【0016】
(溶剤)
本実施形態に係る口腔ケア組成物は、基材となる溶剤として水(活性天然水)、エタノール(サトウキビ由来の天然のエタノール)、グリセリンを使用した。
【0017】
溶剤は、口腔ケア組成物の総重量に対して、通常1〜2質量%の量で使用する。
【0018】
(研磨剤)
研磨剤は、歯の表面に傷をつけずに歯垢やステインなどの歯の表面の汚れを落とすものであり、本実施形態においては、シリカ、バンブサアルンジナセア茎、炭酸カルシウムを使用した。他にも、ゼオライト、真珠層末、サンゴ末等の公知の研磨剤を使用することができる。
【0019】
研磨剤は、口腔ケア組成物の総重量に対して、0.5〜0.6質量%の量で使用することができる。なお、本実施形態において、「シリカ」は、二酸化ケイ素材料を指し、含水シリカ、コロイドシリカ、研磨シリカ、清浄シリカ及びこれらの混合物を全て含む。また、シリカは、通常、1〜100μm程度の平均粒子径を有する。
【0020】
(湿潤剤)
本実施形態に係る口腔ケア組成物は、適度の湿り気と可塑性を与える湿潤剤を含む。湿潤剤としては、アロエベラ液汁、サボンソウエキス、海塩、オリーブ葉エキスを使用した。他にも、ナタマメ種子エキス、グリセリン、カミツレ花エキス、チョウジエキスなどの天然の湿潤剤が挙げられる。
【0021】
湿潤剤は、例えば、口腔ケア組成物の総重量に基づき、通常90〜92質量%の量で使用する。
【0022】
(増粘剤)
増粘剤は、原材料の紛体と液体成分を結合させ、保型性を保持するものであり、キサンタンガムを使用した。他にも、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ブドウ糖等の増粘剤を使用することができる。
【0023】
増粘剤は、例えば、口腔ケア組成物の総重量に基づき、通常0.6〜0.7質量%の量で使用する。
【0024】
(その他の成分)
本実施形態に係る口腔ケア組成物は、保護材、香味材、香料などのその他の成分を含んでいてもよい。
【0025】
保護材は、口腔ケア組成物の変質を防ぐものであり、保湿成分ともなる天然成分由来の、オリーブ脂肪酸K、ヤシ脂肪酸Kを使用した。
【0026】
香味剤は、口腔ケア組成物に香味を付与し、使用時の爽快感を与えるものであり、ステビアエキスを使用した。
【0027】
香料は、口腔ケア組成物に香りを付け、使用時の爽快感を与えるものであり、スペアミント油、セイヨウハッカ油、ティーツリー葉油、ビターオレンジ果皮エキス、パセリエキス、セイヨウハッカ葉エキス、ローズマリーエキス、セージ葉エキス、タチジャコウソウ葉エキスを使用した。他にも、キシリトール、レモングラス油、グレープフルーツ果皮油、ニオイテンジクアオイ油、マンダリンオレンジ果皮油、ライム油、レモン果皮油などの天然の香料を使用することができる。
【0028】
その他の成分は、例えば、口腔ケア組成物の総重量に基づき、4.7〜7.9質量%の量で使用することができる。
【0029】
(口腔ケア組成物の製造方法)
上記説明した本実施形態に係る口腔ケア組成物の原料を原料検査した後、定量混合してバルクを製造し、物性試験、異物試験、香調試験、色調検査等の種々の検査後、容器に充填する。
【0030】
(実施例)
次に、具体的な実施例を参照することにより、本実施形態に係る口腔ケア組成物をより詳細に説明する。
【0031】
<吸着力評価>
先ず、本実施形態に係る口腔ケア組成物が、汚れに対して優れた吸着力を有することを確認した実施例について説明する。
【0032】
図1に、10枚のガラス基材に、市販の口紅を付着させた写真の例を示す。
図2に、比較例1として、
図1で示したガラス基材を、歯磨き粉(株式会社たかくら新産業製:メイドオブオーガニクス ホワイトニング トゥースペースト)を付着させた歯ブラシで10秒間こすった後の写真の例を示す。また、
図3に、
図2の後に、流水で10秒間ガラス基材を流した後の写真の例を示す。
【0033】
また、
図4に、
図1で示した例と同様の方法で、10枚のガラス基材に、市販の口紅を付着させた写真の例を示す。
図5に、実施例1として、
図4で示したガラス基材を、比較例1で使用した歯磨き粉にエリシルク粉末を1質量%配合した歯磨き粉を付着させた歯ブラシで10秒間こすった後の写真の例を示す。また、
図6に、
図2の後に、流水で10秒間ガラス基材を流した後の写真の例を示す。なお、使用したエリシルク粉末は、直径約13μm×25μmの楕円形の断面形状を有し、平均長さが100μm〜300μm程度のエリシルク粉末を使用した。
【0034】
図2と
図5との比較から、本実施形態に係る口腔ケア組成物は、エリシルク粉末を含むため、エリシルク粉末を含まない場合よりも、歯ブラシを用いて擦った後に汚れが吸着することがわかった。
【0035】
また、
図3と
図6との比較から、本実施形態に係る口腔ケア組成物は、エリシルク粉末を含むため、エリシルク粉末を含まない場合よりも、流水で流した後の汚れの残渣が少ないことがわかった。
【0036】
<歯に対する摩耗評価>
先ず、本実施形態に係る口腔ケア組成物が、歯のエナメル質を傷つけないことを確認した実施例について説明する。
【0037】
基板としてイーエムジャパン株式会社製のスーパースムースシリコンマウント5×7mm(モース硬度:6.5〜7)に各実施例及び各比較例の歯磨き粉を塗布し、指で約200gの強さで10往復擦り、十分に洗浄した。洗浄後の試料について、日立製作所製の電界放出型走査型電子顕微鏡SU8010を用いて、基板の中央部及び摩擦方向の先端部(両端部)の表面観察した。なお、歯のエナメル質のモース硬度は約6であり、歯を磨くさいの歯ブラシの荷重は100〜200g程度が良いとされている。
【0038】
使用した歯磨き粉は下記の通りである。
【0039】
実施例2:株式会社たかくら新産業製:メイドオブオーガニクス ホワイトニング トゥースペーストにエリシルク粉末を0.1質量%配合した歯磨き粉、
実施例3:株式会社たかくら新産業製:メイドオブオーガニクス ホワイトニング トゥースペーストにエリシルク粉末を1質量%配合した歯磨き粉、
比較例2:株式会社たかくら新産業製:メイドオブオーガニクス ホワイトニング トゥースペースト、
比較例3:ライオン株式会社製:クリニカエナメルパールホワイトフローラルミント、
比較例4:ライオン株式会社製:デントブリリアントモアFaフレッシュスペアミント、
比較例5:サンスター株式会社製:薬用オーラツープレミアムKステインクリアアロマティックミント、
を使用した。
【0040】
傷の大きさ及び傷の密度について、上記の走査型電子顕微鏡画像を目視で確認し、下記の通り評価した
傷の大きさの評価
○:傷が見られない
△:小さな傷が見られる
×:中程度の傷が見られる
××:大きな又は長い傷が見られる
傷の密度の評価
○:傷が見られない
△:部分的に傷が見られる
×:全体に傷が散見される
××:全体に多くの傷が見られる
とした。
【0043】
表1に示されるように、本実施形態に係る口腔ケア組成物は、エリシルクの粉末を含むため、歯のエナメル質と同様の硬度を有する基板に対して、通常の歯磨きと同程度の圧力をかけて磨いた場合であっても傷を発生させないことがわかった。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る口腔ケア組成物は、エリシルクの粉末を含むため、汚れに対する優れた吸着力を有し、かつ、歯の傷の発生も起こさない優れた口腔ケア組成物である。
【要約】
【課題】虫歯や口臭の予防又は治療を目的として、天然由来の活性成分を含む口腔ケア組成物を提供する。
【解決手段】エリシルクの粉末を含む、口腔ケア組成物。
【選択図】
図1