特許第6584773号(P6584773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584773
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20190919BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20190919BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20190919BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08L7/00
   C08L1/02
   B60C1/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-254227(P2014-254227)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-113560(P2016-113560A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】中村 文彦
【審査官】 前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−051941(JP,A)
【文献】 特開2009−051942(JP,A)
【文献】 特開2010−209174(JP,A)
【文献】 特開2011−012110(JP,A)
【文献】 特開2000−086825(JP,A)
【文献】 特開2012−140544(JP,A)
【文献】 特開2011−173986(JP,A)
【文献】 特開2011−046875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対して、空隙率が75〜95%の多孔性セルロース粒子3〜15質量部と、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシル基及びエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する架橋されたジエン系ポリマー粒子であってガラス転移温度が−80〜−10℃であるポリマーゲル1〜30質量部と、を含有するタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
植物性粒状体、及び/又は、植物の多孔質性炭化物の粉砕物を更に含有する、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴム組成物からなるトレッドを備えた空気入りタイヤ。
【請求項4】
ジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対して、空隙率が75〜95%の多孔性セルロース粒子3〜15質量部を配合したタイヤ用ゴム組成物において、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシル基及びエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する架橋されたジエン系ポリマー粒子であってガラス転移温度が−80〜−10℃であるポリマーゲル1〜30質量部を配合したことを特徴とする、経年によるゴム硬度の上昇を抑える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに用いるのに好適なゴム組成物、及び、それを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スタッドレスタイヤのような氷上路面での走行性能(即ち、氷上性能)が要求されるタイヤにおいては、低温での柔軟性を持たせて氷上路面に対する接地性を向上するために、トレッドに用いられるゴム組成物に、ガラス転移温度の低いジエン系ゴムを用いて、ゴム硬度を低く設定している。また、氷上摩擦力を高めるために、種子の殻や果実の核を粉砕した植物性粒状体を配合したり、また、氷上の水膜を除去する竹炭粉末を配合したりすることが知られている。
【0003】
氷上性能を向上させる技術として、特許文献1には、空隙率が75〜95%の多孔性セルロース粒子をトレッドゴムに配合することが開示されている。このようにトレッドゴムに多孔性セルロース粒子を配合することにより、耐摩耗性の低下を抑えつつ氷上性能を向上することができるが、経年変化によりゴムが硬くなると、氷上性能が低下してしまうという問題がある。従来、多孔性セルロース粒子を配合した系において、経年によるゴムの硬度変化を抑制する有効な方策は知られていなかった。
【0004】
なお、特許文献2には、冬用タイヤトレッド用ゴム組成物において、ガラス転移点の低い架橋されたジエン系ポリマー粒子であるポリマーゲルを配合することが開示されている。しかし、この文献において、ポリマーゲルは、凝着摩擦力を向上して氷上性能を改善するために配合されており、多孔性セルロース粒子を配合した系に添加することで、経年によるゴムの硬度変化を抑制できることは開示されていない。
【0005】
特許文献3には、ガラス転移点の高いポリマーゲルをリグニン誘導体と併用することにより、補強性及び低発熱性を維持しつつタイヤの軽量化を図ることが開示されており、更に、リグニン誘導体がセルロースなどの糖類を含むものであってもよいことが記載されている。また、特許文献4には、ヒドロキシル基を含むポリマーゲルを含有するゴム組成物が開示されており、更に任意のフィラーとしてセルロースを用いてもよいことが開示されている。しかし、これらの文献に記載のセルロースは、氷上性能の向上に寄与する多孔性セルロース粒子ではなく、多孔性セルロース粒子とポリマーゲルとの併用は示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−012110号公報
【特許文献2】特開2008−024792号公報
【特許文献3】特開2010−248282号公報
【特許文献4】特表2010−525123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように初期の氷上性能だけでなく、氷上性能の経年変化を抑制することも求められるところ、従来技術ではかかる要求に対して十分に応えられているとはいえず、改善が求められる。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、経年によるゴム硬度の上昇を抑えて、多孔性セルロース粒子による優れた氷上性能が低下するのを抑制することができるタイヤ用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対して、空隙率が75〜95%の多孔性セルロース粒子3〜15質量部と、ヘテロ原子を含む官能基を有する架橋されたジエン系ポリマー粒子であってガラス転移温度が−80〜−10℃であるポリマーゲル1〜30質量部と、を含有するものである。
【0010】
本発明に係る空気入りタイヤは、かかるゴム組成物からなるトレッドを備えたものである。また、本発明は、ジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対して、空隙率が75〜95%の多孔性セルロース粒子3〜15質量部を配合したタイヤ用ゴム組成物において、ヘテロ原子を含む官能基を有する架橋されたジエン系ポリマー粒子であってガラス転移温度が−80〜−10℃であるポリマーゲル1〜30質量部を配合したことを特徴とする、経年によるゴム硬度の上昇を抑える方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多孔性セルロース粒子を配合した系において、更に上記ポリマーゲルを配合したことにより、経年によるゴム硬度の上昇を抑えることができ、多孔性セルロース粒子による優れた氷上性能が経年により低下することを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0013】
本実施形態に係るゴム組成物は、ジエン系ゴムからなるゴム成分に対して、多孔性セルロース粒子と、官能基を有するポリマーゲルを配合してなるものである。
【0014】
ゴム成分として用いられる上記ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴムなど、タイヤトレッド用ゴム組成物において通常使用される各種ジエン系ゴムが挙げられる。これらジエン系ゴムは、いずれか1種単独で、又は2種以上ブレンドして用いることができる。
【0015】
該ゴム成分として、好ましくは、天然ゴムと他のジエン系ゴムとのブレンドを用いることであり、特に好ましくは、天然ゴム(NR)とポリブタジエンゴム(BR)とのブレンドゴムを用いることである。両者の比率は、特に限定しないが、ゴム組成物の低温特性と加工性及び耐引き裂き抵抗性とのバランスを考慮して、NR/BRの比率が質量比で30/70〜80/20であることが好ましく、40/60〜70/30でもよい。
【0016】
上記多孔性セルロース粒子は、空隙率75〜95%という多孔質構造を持つセルロース粒子であり、ゴム組成物に配合することにより、氷上性能を著しく向上させることができる。多孔性セルロース粒子の空隙率が75%以上であることにより、氷上性能の向上効果に優れ、また、空隙率が95%以下であることにより、粒子の強度を高めることができる。該空隙率は、より好ましくは80〜90%である。
【0017】
多孔性セルロース粒子の空隙率は、一定質量の試料(即ち、多孔性セルロース粒子)の体積をメスシリンダーで測定し、嵩比重を求めて、下記式から求めることができる。
空隙率[%]={1−(試料の嵩比重[g/ml])/(試料の真比重[g/ml])}×100
ここで、セルロースの真比重は1.5である。
【0018】
多孔性セルロース粒子の粒径は、特に限定しないが、耐摩耗性の観点から、平均粒径が1000μm以下のものが好ましく用いられる。平均粒径の下限は、特に限定されないが、5μm以上であることが好ましい。平均粒径は、より好ましくは100〜800μmであり、更に好ましくは200〜800μmである。
【0019】
多孔性セルロース粒子としては、長径/短径の比が1〜2である球状粒子が好ましく用いられる。このような球状構造の粒子を用いることにより、ゴム組成物中への分散性を向上して、氷上性能の向上や耐摩耗性の維持に寄与することができる。長径/短径の比は、より好ましくは1.0〜1.5である。
【0020】
多孔性セルロース粒子の平均粒径と、長径/短径の比は、次のようにして求められる。すなわち、多孔性セルロース粒子を顕微鏡で観察して画像を得て、この画像を用いて、粒子の長径と短径(長径と短径が同じ場合には、ある軸方向の長さとこれに直交する軸方向の長さ)を100個の粒子について測定し、その平均値を算出することで平均粒径が得られ、また、長径を短径で割った値の平均値により長径/短径の比が得られる。
【0021】
このような多孔性セルロース粒子としては、レンゴー株式会社から「ビスコパール」として市販されており、また、特開2001−323095号公報や特開2004−115284号公報に記載されており、それらを好適に用いることができる。
【0022】
多孔性セルロース粒子の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して、0.3〜20質量部の範囲内であることが好ましい。配合量が0.3質量部以上であることにより、氷上性能の向上効果を高めることができ、また、20質量部以下であることにより、ゴム硬度が高くなりすぎるのを抑えることができ、耐摩耗性の悪化も抑制することができる。多孔性セルロース粒子の配合量は、より好ましくは1〜15重量部であり、更に好ましくは3〜15質量部である。
【0023】
上記ポリマーゲルは、架橋されたジエン系ポリマー粒子であり、本実施形態ではヘテロ原子を含む官能基を有するものが用いられる。かかるポリマーゲルを配合することにより、多孔性セルロース粒子を配合したゴム組成物において経年によるゴム硬度の上昇を抑えることができ、その結果、氷上性能の経年による低下を抑制することができる。
【0024】
該ポリマーゲルは、ゴム分散液を架橋することにより製造することができるゲル化ゴムであり、ゴムゲルと称することもできる。ゴム分散液としては、乳化重合により製造されるゴムラテックス、溶液重合されたゴムを水中に乳化させて得られるゴム分散液などが挙げられ、また、架橋剤としては、有機ペルオキシド、有機アゾ化合物、硫黄系架橋剤など挙げられる。また、ジエン系ポリマー粒子の架橋は、乳化重合中に、架橋作用を持つ多官能化合物との共重合によっても行うことができる。具体的には、特開平10−204225号公報、特表2004−504465号公報、特表2004−506058号公報、特表2004−530760号公報などに開示の方法を用いることができる。
【0025】
ポリマーゲルを構成するジエン系ポリマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、ブタジエン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴムなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上併用してもよい。好ましくは、ポリブタジエンゴム及び/又はスチレンブタジエンゴムを主成分とするものである。
【0026】
ポリマーゲルのガラス転移温度(Tg)は、0℃以下であることが好ましく、氷上性能の低下を抑えることができる。ガラス転移温度は、−90〜0℃であることが好ましく、より好ましくは−10〜−80℃である。なお、ガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定される値(昇温速度20℃/分)である。
【0027】
ポリマーゲルの平均粒子径は、特に限定されず、例えば、DIN 53 206によるDVN値(d50)が5〜2000nmでもよく、10〜500nmでもよく、20〜200nmでもよい。
【0028】
本実施形態で用いるポリマーゲルは、ヘテロ原子を含む官能基を有するものであり、上記多孔性セルロース粒子の持つヒドロキシル基等の官能基との間で相互作用可能である(即ち、反応性ないし親和性を持つ)ことから、性能改善に寄与しているものと推測される。かかるポリマーゲルの官能基としては、酸素原子や窒素原子などのヘテロ原子を持つものが挙げられ、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシル基及びエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種が好適なものとして挙げられる。ここで、アミノ基としては、1級アミノ基だけでなく、2級もしくは3級アミノ基でもよい。なお、2級又は3級アミノ基の場合、置換基である炭化水素基の炭素数は合計で15以下であることが好ましい。アルコキシ基としては、−OR(但し、Rは例えば炭素数1〜4のアルキル基)として表させるメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられ、また、例えばトリアルコキシシリル基、アルキルジアルコキシシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基などのアルコキシシリル基として含まれるものであってもよい。カルボキシル基としては、例えば、マレイン酸、フタル酸、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられ、マレイン酸やフタル酸などのジカルボン酸の無水物からなる酸無水物基でもよい。これらの中でも、ポリマーゲルの官能基としてはヒドロキシル基が好ましい。
【0029】
このような官能基を有するポリマーゲルは、ジエン系ポリマーの重合時に上記官能基が導入されたモノマーを用いて合成してもよく、また重合後の活性末端に上記官能基を導入してなる末端変性ポリマーを用いることもできる。また、重合時の開始剤に上記官能基を発生させるものを用いることで、ポリマー末端に官能基を導入してもよい。また、上記架橋によりジエン系ポリマー粒子を作製した後に、その粒子表面のC=C二重結合に対して上記官能基を有する化合物を反応させることにより、粒子表面に官能基を組み込むこともできる。
【0030】
ポリマーゲルの配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して、1〜30質量部の範囲内であることが好ましい。配合量が1質量部以上であることにより、ゴム硬度の経年変化を抑制する効果を高めることができる。また、配合量が30質量部以下であることにより、耐摩耗性の低下を抑えることができる。ポリマーゲルの配合量、より好ましくは、上記ゴム成分100質量部に対して3〜20質量部である。
【0031】
本実施形態に係るゴム組成物には、多孔性セルロース粒子及びポリマーゲルとともに、植物性粒状体、及び/又は、植物の多孔質性炭化物の粉砕物を更に配合してもよい。これらの植物性粒状体や多孔質性炭化物の粉砕物を併用することにより、氷上性能を更に向上することができる。
【0032】
上記植物性粒状体としては、種子の殻、果実の核、穀物及びその芯材などの粉砕物が挙げられ、これらの少なくとも1種を配合することができる。例えば、胡桃(クルミ)、杏(あんず)、椿、桃、梅、銀杏、落花生、栗などの果実の核や種子の殻の粉砕物、米、麦、アワ、ひえ、とうもろこしなどの穀物の粉砕物や、トウモロコシの穂芯などの穀物芯材の粉砕物などが挙げられる。これらは氷よりも硬いので、氷上路面に対して引っ掻き効果を発揮することができる。植物性粒状体は、ゴムとのなじみを良くして脱落を防ぐために、ゴム接着性改良剤で表面処理されたものを用いてもよく、ゴム接着性改良剤としては、例えば、レゾルシン・ホルマリン樹脂初期縮合物とラテックスの混合物を主成分とするもの(RFL液)が挙げられる。
【0033】
植物性粒状体の平均粒径は、特に限定されないが、引っ掻き効果を発揮するとともにトレッドからの脱落を防止するため、90%体積粒径(D90)が100〜600μmであることが好ましく、より好ましくは150〜500μmであり、更に好ましくは200〜400μmである。D90は、レーザ回折・散乱法により測定される粒度分布(体積基準)における積算値90%での粒径を意味する。
【0034】
上記多孔質性炭化物の粉砕物は、木、竹などの植物を材料として炭化して得られる炭素を主成分とする固体生成物からなる多孔質性物質を粉砕してなるものであり、氷上路面に発生する水膜の吸水・除水効果を高めることができる。多孔質性炭化物の粉砕物の一例として、竹炭の粉砕物(竹炭粉砕物)を用いてもよい。竹炭粉砕物は、窯を用いて竹材を蒸し焼きにして炭化して得られた竹炭を、公知の粉砕機を用いて粉末状に粉砕することにより得ることができる。多孔質性炭化物の粉砕物の粒径は、特に限定されないが、90%体積粒径(D90)が10〜500μmであることが好ましい。
【0035】
これらの植物性粒状体や多孔質性炭化物の粉砕物を配合する場合、その配合量は、両者の合計量で、上記ゴム成分100質量部に対して、0.5〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。一実施形態として、植物性粒状体の場合、その配合量は、ゴム成分100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。
【0036】
本実施形態に係るゴム組成物は、上記した各成分に加え、通常のゴム工業で使用されているカーボンブラックやシリカなどの補強性充填剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸、軟化剤、可塑剤、老化防止剤(アミン−ケトン系、芳香族第2アミン系、フェノール系、イミダゾール系等)、加硫剤、加硫促進剤(グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系等)などの配合薬品類を通常の範囲内で適宜配合することができる。
【0037】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。例えば、スタッドレスタイヤ等のウインタータイヤのトレッド部に用いる場合、ゴム組成物の低温性能、耐摩耗性能やゴムの補強性などの観点から、窒素吸着比表面積(N2SA)(JIS K6217−2)が70〜150m2/gであり、かつDBP吸油量(JIS K6217−4)が100〜150ml/100gであるものが好ましく用いられる。具体的にはSAF級,ISAF級,HAF級のカーボンブラックが例示される。カーボンブラックの配合量としては、上記ゴム成分100質量部に対して10〜80質量部程度の範囲が好ましく、より好ましくは15〜50質量部である。
【0038】
シリカとしても、特に限定されず、例えば湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカが好ましく用いられる。シリカのBET比表面積(JIS K6430に記載のBET法に準じて測定)は、特に限定されず、90〜250m2/gであることが好ましく、より好ましくは150〜220m2/gである。配合量としては、ゴムのtanδのバランスや補強性などの観点から、上記ゴム成分100質量部に対して10〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは15〜50質量部である。
【0039】
シリカを配合する場合、スルフィドシラン、メルカプトシランなどのシランカップリング剤を併用することが好ましく、その配合量はシリカ配合量に対して2〜20質量%であることが好ましい。
【0040】
なお、カーボンブラック及び/又はシリカからなる補強性充填剤の配合量は、特に限定されず、例えば、上記ゴム成分100質量部に対して10〜150質量部でもよく、20〜100質量部でもよく、30〜80質量部でもよい。
【0041】
上記加硫剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄成分が挙げられ、特に限定するものではないが、その配合量は上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部であり、更に好ましくは1〜3質量部である。また、加硫促進剤の配合量としては、ゴム成分100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0042】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、第一混合段階(ノンプロ練り工程)で、ジエン系ゴムに対し、多孔性セルロース及びポリマーゲルとともに、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加して混練し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階(プロ練り工程)で加硫剤及び加硫促進剤を添加して混練することにより、ゴム組成物を調製することができる。
【0043】
本実施形態に係るゴム組成物は、例えば乗用車用、トラックやバスの重荷重用など各種用途のタイヤに用いることができ、好ましくは空気入りタイヤのトレッド部、また、例えばスタッドレスタイヤやスノータイヤなどのウインタータイヤのトレッド部のためのゴム組成物として好適に用いられる。
【0044】
一実施形態に係る空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いてゴム用押し出し機などによりタイヤのトレッド部を作製し未加硫タイヤを成型した後、例えば140〜180℃で加硫成型することにより製造することができる。キャップベース構造の空気入りタイヤに適用される場合は、接地面側のキャップトレッドにのみに本実施形態のゴム組成物を適用すればよい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従い、まず、第一混合段階で、硫黄と加硫促進剤を除く成分を添加混合し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で硫黄と加硫促進剤を添加混合して(排出温度=90℃)、タイヤトレッド用ゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
【0047】
・NR:RSS3号
・BR:JSR(株)製「BR01」
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シーストKH(N339)」(N2SA=93m2/g、DBP=119ml/100g)
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」(BET=205m2/g)
・シランカップリング剤:デグサ社製「Si75」
・パラフィンオイル:JX日鉱日石サンエナジー(株)製「JOMOプロセスP200」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1号」
・老化防止剤:住友化学(株)製「アンチゲン6C」
・ワックス:日本精蝋株式会社製「OZOACE0355」
・加硫促進剤:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
【0048】
・植物性粒状体:クルミ殻粉砕物(株式会社日本ウォルナット製「ソフトグリット#46」)に対し、特開平10−7841号公報の段落0015に記載に方法に準じてRFL処理液で表面処理を施したもの(処理後の植物性粒状体のD90=300μm)。
【0049】
・多孔性セルロース粒子1:レンゴー株式会社製「ビスコパールミニ」(平均粒径=400μm、粒子の長径/短径の比=1.11、空隙率=87%)
・多孔性セルロース粒子2:レンゴー株式会社製「ビスコパールミニ」(平均粒径=700μm、粒子の長径/短径の比=1.09、空隙率=80%)
・セルロース微粉末:パルプをボールミルで粉砕した後ふるい分けしたセルロースパウダー(平均粒径=300μm、空隙率=34%)。
【0050】
・ポリマーゲル1:ランクセス社製「ナノプレンM20」、SBRをベースとするTg=−20℃のヒドロキシ基を有するポリマーゲル
・ポリマーゲル2:ランクセス社製「ナノプレンBM750H」、BRをベースとするTg=−75℃のヒドロキシ基を有するポリマーゲル
【0051】
得られた各ゴム組成物について、硬度を測定した。また、各ゴム組成物を用いて乗用車用スタッドレスタイヤを作製した。タイヤサイズは185/65R14として、そのトレッドに各ゴム組成物を適用し、常法に従い加硫成型することによりタイヤを製造した。得られた各タイヤについて、氷上制動性能及び耐摩耗性を評価した(使用リムは14×5.5JJ)。各測定、評価方法は次の通りである。硬度と氷上制動性能についての評価は、老化前と老化後のそれぞれについて行った。老化は、70℃のオーブンで2週間熱劣化させることにより行った。
【0052】
・硬度:JIS K6253に準拠したデュロメータ タイプAにより、150℃×30分で加硫した試験片(厚みが12mm以上のもの)について、常温(23℃)での硬度を測定した。
【0053】
・氷上制動性能:上記タイヤ4本を2000ccの4WD車に装着し、氷盤路(気温−3±3℃)上で40km/h走行からABS作動させて制動距離を測定し(n=10の平均値)、制動距離の逆数について比較例1の老化前の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど制動距離が短く、氷上路面での制動性能に優れることを示す。
【0054】
・耐摩耗性(老化前):上記タイヤ4本を2000ccの4WD車に装着し、一般乾燥路面において2500km毎に左右ローテーションさせながら10000km走行させて、走行後の4本のトレッド残溝深さの平均値を、比較例1を100とする指数表示で示した。数値の大きいものほど耐摩耗性が良好である。
【0055】
結果は表1に示す通りである。比較例1では、多孔性セルロース粒子を配合したことにより、優れた氷上制動性能は得られたものの、老化後の硬度上昇が大きく、老化により氷上制動性能が大きく低下した。これに対し、多孔性セルロース粒子とともにポリマーゲルを配合した実施例1〜5では、老化後の硬度上昇が抑えられており、多孔性セルロース粒子を配合したことによる優れた氷上制動性能が、老化後においても大きく低下することなく、ほぼ維持されていた。比較例2では、ポリマーゲルの配合量が多すぎて、耐摩耗性の低下が大きかった。比較例3では、多孔性セルロース粒子の配合量が多すぎて、硬度が大きく、また耐摩耗性にも劣っていた。比較例4では、多孔性セルロース粒子を配合していないので、また、比較例5では、多孔性でないセルロース粉末を用いたので、老化前後ともに氷上制動性能に劣っていた。
【0056】
【表1】