特許第6584804号(P6584804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584804
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】水電解装置、保管庫及び冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/10 20060101AFI20190919BHJP
   C25B 9/00 20060101ALI20190919BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20190919BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   C25B1/10
   C25B9/00 A
   C25B15/08 302
   F25D23/00 302Z
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-62225(P2015-62225)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-180166(P2016-180166A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2018年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100088487
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 允之
(72)【発明者】
【氏名】深沢 大志
(72)【発明者】
【氏名】真竹 茂
(72)【発明者】
【氏名】八木 亮介
(72)【発明者】
【氏名】内藤 勝之
(72)【発明者】
【氏名】吉永 典裕
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 芳浩
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−066453(JP,A)
【文献】 特開2013−066877(JP,A)
【文献】 特開2014−059075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26−53/28
C25B 1/00−15/08
F25D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と、
陽極と、
前記陰極と前記陽極に挟持された電解質膜と、
前記陰極と電気的に接続した陰極集電板と、
前記陽極と電気的に接続した陽極集電板と、
前記陽極と熱的に接続した伝熱板と、
前記陽極と前記陰極に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記電圧印加手段を制御する制御部と、
前記伝熱板で挟まれた領域に気体中の水蒸気を吸着する水吸着手段と、
前記水吸着手段に水蒸気を含む気体を強制接触させる気体供給排気手段を、
前記水吸着手段が吸着した水分を脱離する水脱離手段と、
を有し、
前記伝熱板と前記水吸着手段とで構成された水供給部により、大気から得られる水を陽極に供給する構成とし、かつ、
前記水吸着手段は、以下の(A)または(B)を満たす水電解装置。
(A)平均厚さが5mm以上20mm以下の水吸着脱離材を有し、かつ前記水吸着脱離材は第1の粒子群を有する。
(B)平均厚さが3mm以上15mm以下の水吸着脱離材を有し、かつ前記水吸着脱離材は、第2の粒子群と第3の粒子群を有し、前記第2の粒子群のモード径は、前記第3の粒子群のモード径より小さい。
【請求項2】
陰極と、
陽極と、
前記陰極と前記陽極に挟持された電解質膜と、
前記陰極と電気的に接続した陰極集電板と、
前記陽極と電気的に接続した陽極集電板と、
前記陽極と熱的に接続した伝熱板と、
前記陽極と前記陰極に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記電圧印加手段を制御する制御部と、
前記伝熱板で挟まれた領域に気体中の水蒸気を吸着する水吸着手段と、
前記水吸着手段に水蒸気を含む気体を強制接触させる気体供給排気手段を、
前記水吸着手段が吸着した水分を脱離する水脱離手段と、
を有し、
前記伝熱板と前記水吸着手段とで構成された水供給部により、大気から得られる水を陽極に供給する構成とし、かつ、
前記水吸着手段は、平均厚さが5mm以上20mm以下の水吸着脱離材を有し、かつ前記水吸着脱離材は第1の粒子群を有することを満たす水電解装置。
【請求項3】
陰極と、
陽極と、
前記陰極と前記陽極に挟持された電解質膜と、
前記陰極と電気的に接続した陰極集電板と、
前記陽極と電気的に接続した陽極集電板と、
前記陽極と熱的に接続した伝熱板と、
前記陽極と前記陰極に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記電圧印加手段を制御する制御部と、
前記伝熱板で挟まれた領域に気体中の水蒸気を吸着する水吸着手段と、
前記水吸着手段が吸着した水分を脱離する水脱離手段と、
を有し、
前記伝熱板と前記水吸着手段とで構成された水供給部により、大気から得られる水を陽極に供給する構成とし、かつ、
前記水吸着手段は、平均厚さが3mm以上15mm以下の水吸着脱離材を有し、かつ前記水吸着脱離材は、第2の粒子群と第3の粒子群を有し、前記第2の粒子群のモード径は、前記第3の粒子群のモード径より小さいことを満たす水電解装置。
【請求項4】
前記請求項1または2に記載の水電解装置は、前記水吸着脱離材は1つの粒度分布を有する水吸着脱離材であって、前記(1)乃至(4)のうちのいずれか1つ以上を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の水電解装置。
(1)前記第1の粒子群は、10μm以上5mm以下の範囲に粒度分布のモード径を有する。
(2)前記水吸着脱離材の充填率は、40%以上である。
(3)前記水吸着脱離材は、前記水吸着脱離材の質量の25質量%以上70質量%以下の水を吸着する。
(4)前記第1の粒子群は、B型シリカゲル、ゼオライト、アクリル系微粒子と低結晶性粘土と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体のうちのいずれか1種以上を含む。
【請求項5】
前記請求項1または3に記載の水電解装置は、前記水吸着脱離材は2つ以上の粒度分布を有する水吸着脱離材であって、前記(5)乃至(8)のうちのいずれか1つ以上を満たすことを特徴とする請求項1又は3に記載の水電解装置。
(5)前記第2の粒子群は、0.3mm以上1mm以下の範囲に粒度分布のモード径を、前記第3の粒子群は、2mm以上4mm以下の範囲に粒度分布のモード径を有する。
(6)前記水吸着脱離材の充填率は、50%以上である。
(7)前記水吸着脱離材は、前記水吸着脱離材の質量の25質量%以上70質量%以下の水を吸着する。
(8)前記第2の粒子群および第3の粒子群は、B型シリカゲル、ゼオライト、アクリル系微粒子と低結晶性粘土と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体のうちのいずれか1種以上を含む。
【請求項6】
容器と、
前記容器に備えられた蓋と
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水電解装置と、を備えたことを特徴とする保管庫。
【請求項7】
前記水脱離手段は、前記水吸着脱離材を加熱して前記水吸着脱離材に吸着した前記水吸着脱離材の質量の25質量%以上70質量%以下の水を脱離させることを特徴とする請求項6に記載の保管庫。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の保管庫を備えたことを特徴とする冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、水電解装置、保管庫及び冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の保存性を高めるために、保存空間の酸素濃度を下げることを、電解質膜を用いた電気化学的反応によって行う減酸素装置(水電解装置)が知られている。
この装置は、電解質膜を陽極と陰極で挟んだ減酸素セルを備える。このセルは陽極を食品等の保存空間に面して配設される。減酸素装置は、陽極に水が存在する状態で、陽極と陰極間に電圧を印加して運転される。それにより、陽極において水が酸素とプロトンに電気分解されるとともに、電気分解で生じたプロトンが電解質膜を通して陰極に移動し、陰極において酸素と反応して水の生成反応が行われるので、水の生成反応に伴って陰極側の保存空間の酸素を減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−76739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、安定に動作する水電解装置、保管庫及び冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態にかかる水電解装置は、陰極と、陽極と、陰極と陽極に挟持された電解質膜と、陰極と電気的に接続した陰極集電板と、陽極と電気的に接続した陽極集電板と、陽極と熱的に接続した伝熱板と、陽極と陰極に電圧を印加する電圧印加手段と、電圧印加手段を制御する制御部と、伝熱板で挟まれた領域に気体中の水蒸気を吸着する水吸着手段と、水吸着手段に水蒸気を含む気体を強制接触させる気体供給排気手段を、水吸着手段が吸着した水分を脱離する水脱離手段と、を有し、伝熱板と水吸着手段とで構成された水供給部により、大気から得られる水を陽極に供給する構成とし、かつ、水吸着手段は、以下の(A)または(B)を満たす。(A)平均厚さが5mm以上20mm以下の水吸着脱離材を有し、かつ水吸着脱離材は第1の粒子群を有する。(B)平均厚さが3mm以上15mm以下の水吸着脱離材を有し、かつ水吸着脱離材は、第2の粒子群と第3の粒子群を有し、第2の粒子群のモード径は、第3の粒子群のモード径より小さい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の水電解装置の概念図である。
図2】実施形態の水電解装置の概念図である。
図3】実施形態の水吸着脱離材の粒度分布を示すグラフ((a)、(b))である。
図4】実施形態の水電解装置の概念図である。
図5】実施形態の水電解装置の概念図である。
図6】実施形態の水吸着脱離材の粒度分布を示すグラフである。
図7】実施形態の水吸着脱離材の充填率を示すグラフである。
図8】実施形態の保管庫の概念図である。
図9】実施形態の保管庫の動作にかかるチャート図である。
図10】実施形態の保管庫の概念図である。
図11】実施形態の保管庫の動作にかかるチャート図である。
図12】実施形態の保管庫の概念図である。
図13】実施形態の保管庫の概念図である。
図14】実施形態の冷蔵庫の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に複数の実施形態を例に、水電解装置、減酸素装置を備えた保管庫と減酸素装置を備えた保管庫を有する冷蔵庫について説明する。
(実施形態1)
図1図2に実施形態1の水電解装置100の断面概念図を示す。実施形態1の水電解装置100は、陰極2と、陽極4と、陰極2と陽極4に挟持された電解質膜1と、陰極2と電気的に接続した陰極集電板3と、陽極4と電気的に接続した陽極集電板5と、複数部からなる伝熱板6と、陽極と陰極に電圧を印加する電圧印加手段10と、電圧印加手段を制御する制御部11と、伝熱板6で挟まれた領域に空気などの気体中の水蒸気を吸着する水吸着手段と、水吸着手段が吸着した水分を脱離する水脱離手段とを備える。水電解素子(減酸素素子)は、水の電気分解反応を行う電解質膜1と、陰極2と、陽極4とで、構成される。実施形態の水電解装置100は、水吸着手段として、水吸着脱離材7と、水吸着脱離材7に空気などの水蒸気を含む気体を強制接触させる気体供給排気手段13とを有し、また、水脱離手段として、水吸着脱離材7を加熱する発熱部9を有する。陽極4、陰極2と電解質膜1で構成される膜電極接合体は、水吸着脱離材7を加熱する水脱離手段である。従って、図1の水電解装置100は、水脱離手段として、膜電極接合体と発熱部9を有する。水供給部8は、伝熱板6と水吸着脱離材7とで構成される。以下、水蒸気を含む気体を、水蒸気を含む気体の例である空気と略記する。
【0008】
電解質膜1は、陰極2と陽極4の間に存在する。電解質膜1は、酸性のプロトン伝導性材料が用いられる。陽極4で生成したプロトン(H)は、電解質膜1を通り、陰極2へ移動する。プロトン伝導性材料としては、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂や無機物などが挙げられる。スルホン酸基を有するフッ素系樹脂は、例えば、パーフルオロスルホン酸重合体であるデュポン社製のナフィオン(商標)や旭硝子社製のフレミオン(商標)等が挙げられる。無機物としては、例えば、タングステン酸、リンタングステン酸、硝酸リチウム等が挙げられる。
【0009】
陰極2は、電解質膜1と陰極集電板3との間に存在し、陰極集電板3の面に形成されていることが好ましい。陰極2は、酸素還元反応触媒を含むことが好ましい。酸素還元反応触媒としては、白金、炭素触媒や窒素を含む炭素触媒(カーボンアロイ触媒)等が好ましい。酸素還元反応触媒は、例えば、バインダーと混合されている。酸素還元反応触媒とバインダーとの混合物は、陰極触媒層となり、陰極集電板3に担持されていることが好ましい。
【0010】
カーボンアロイ触媒は、炭素原子の集合体を主体とした化合物であり、炭素原子の一部が窒素原子で置換されたものである。触媒全体としては導電性や高比表面積を有するためにアモルファスやsp3炭素が含まれるが、窒素はsp2炭素の骨格中に、ピリジン型、ピロール・ピリドン型、Nオキサイド型、3配位型のうち少なくともいずれかの形態で炭素原子が窒素原子で置換されたものが含まれる。
【0011】
陰極2で用いられるバインダーとしては、イオン伝導性バインダーを用いることが好ましい。Nafion(登録商標)などのプロトン伝導性バインダーをイオン伝導性バインダーとして用いることが好ましい。
【0012】
陰極集電板3は、陰極2と電気的に接続し、陰極2の酸素還元反応触媒に酸素を供給できる導電性材料が用いられる。陰極集電板3は、減酸素装置100を駆動する電圧印加手段10と電気的に低抵抗に接続し、陰極触媒層の電極支持材料となるものが好ましい。陰極集電板3として、燃料電池などで持いられているガス拡散層(例えばカーボンペーパーなどの多孔質材)と同様の多孔質材、チタンメッシュ、SUSメッシュ、ニッケルメッシュ等を用いることができる。陰極集電板3には、陰極2で水が生成した場合に、その水を排出するための孔が設けられていることが好ましい。
【0013】
陽極4(第2の電極)は、電解質膜1と陽極集電板5との間に存在する。陽極4は、水を電気分解する能力を有した陽極触媒(水電解触媒)を少なくとも有する。この触媒は陽極集電板5にも担持されていることが好ましい。水電解触媒としては、たとえば、酸化ルテニウム(RuO)、酸化イリジウム(IrO)などの電気伝導性貴金属酸化物と酸化チタン(TiO)、酸化スズ(SnO)、酸化タンタル(Ta)、などのマトリックス酸化物との複合酸化物があり、触媒の活性、耐久性、コストなどを勘案して選択すればよく、これらに限定されるものではない。具体的には、RuO−TiO、RuO−IrO、RuO−IrO‐TiO、RuO−SnO、RuO−Ta、IrO−Taなどが挙げられる。陽極5には、生成した酸素を排気しやすくするための開口部を設けてもよい。陽極5の開口部は、例えば、横方向のスリット、縦方向のスリットや、横方向と縦方向のスリットを組み合わせたものである。
【0014】
陽極集電板5は、陽極4と水供給部8の伝熱材7の間に存在する。陽極集電板5は、陽極4と電気的に接続し、陽極4の反応で消費する水を陽極4へ通す。陽極集電板5は、電気伝導性、電気化学的な安定性、触媒との密着性などを考慮して選択すればよい。陽極集電板5として、例えば、電解工業の分野で利用実績のあるチタン、銅やアルミニウムなどのエキスパンドメタル、パンチングメタルなどを用いることができる。このようなチタン表面に前述の複合酸化物薄膜で被覆した電極は寸法安定性(DSA:Dimensionally Stable Anode)電極と呼ばれている。陽極集電板5には、陽極4の反応で用いられる水(水蒸気)を透過する開口部が図1のように設けられることが好ましい。陽極集電板5の開口部は、例えば、横方向のスリット、縦方向のスリットや、横方向と縦方向のスリットを組み合わせたものである。
【0015】
次に実施形態の陰極2および陽極4における電極反応について説明する。陽極4では、水電解反応が生じ、陰極2では、減酸素反応が生じる。
電解質膜1に酸性のプロトン伝導性材料を用いた場合について説明する。両電極に電圧を印加すると陽極4、陰極2で次の反応(反応式1−2)が生じる。
【0016】
陽極4
2HO→O+4H+4e (反応式1)
陰極2
+4H+4e→2HO (反応式2)
そこで、陰極2には、生成した水を排出するための孔などを陰極集電板3に設けることが好ましい。
【0017】
水供給部8は、陽極集電板5と加熱部9との間に存在する。水供給部8から陽極4の間には、水供給部8から陽極4への水供給の供給経路となるつながった空間を有する。水供給部8は、伝熱材6と水吸着脱離材7とが交互に存在する部材で構成される。伝熱材6は、水吸着脱離材7を挟持することが好ましい。伝熱材6は、陽極4と熱的に接続していることが好ましい。水吸着脱離材7は、熱伝導および水を含んだ空気拡散効率の観点から図1のように複数部(2部以上)設けられることが好ましい。伝熱材6は図2図1の水電解装置100のA−A’の断面概念図を示す。図2の概念図では、伝熱材6(6A−6F)と水吸着脱離材7(7A−7E)が交互に並んだ水供給部8と、水供給部8の両側にフィルター12と、気体供給排気手段13とを有する。水供給部8と気体供給排気手段13の間にフィルター12が存在してもよいし、水供給部8とフィルター12の間に気体供給排気手段13が存在してもよい。フィルター12および気体供給排気手段13は、図2のように水供給部8の側面の両側に存在してもよいし、水供給部8の側面の片側にのみ存在してもよい。
【0018】
伝熱材6は、伝熱性に優れた材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、銅、アルミニウムと炭素のいずれかを含むことが好ましい。伝熱材6(6A−6F)は、図1のように背板で支持されていてもよいし、背板が省略され、水供給部8の側面部材、陽極集電板5や加熱部9などで支持されていてもよい。陽極集電板5に設けられる孔の大きさが、水吸着脱離材7に含まれる粒子の大きさよりも大きい場合は、水供給部8と陽極集電板5との間には、水吸着脱離材7が陽極集電板5側へ移動することを妨げる網目状の部材を設けることが好ましい。
【0019】
水吸着脱離材7は、空気中の水分を物理的又は化学的に吸着し、水分を脱離することのできる材料である。水吸着脱離材7は、空気中の水分を吸着する。水吸着脱離材7を加熱することで、水吸着脱離材7と水吸着脱離材7周囲(気体)も加熱され、そして、吸着した水を脱離することができる。つまり、加熱によって水吸着脱離材7周囲の温度が上昇する。そして、水吸着脱離材7周囲の雰囲気の相対湿度が低下する。そして、吸着等温線に従って水吸着脱離材7が水分を放出する。水吸着脱離材7は、空気との接触面を多くするため,多孔質体であることが好ましい。物理吸着もしくは化学吸着する水吸着脱離材7によって水分を吸着し、加熱することで水分を脱離することが可能である。水吸着脱離材7としては、水を吸着し放出する材料を用いることができる。水を吸着し放出する材料としては、例えばB型シリカゲル、ゼオライト、アクリル系微粒子や低結晶性粘土と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体などが挙げられる。
【0020】
実施形態の水電解装置100は、大気中の空気に含まれる水を吸着した水分を陽極4の水電解反応に用いることを想定している。減酸素反応を十分に行うには、多くの水が陽極4の反応に供給されることが好ましい。多くの水を陽極4へ供給するためには、水吸着脱離材7が多くの水を吸着することが好ましい。実施形態では、水吸着後において水吸着脱離材7の質量(乾燥質量)の25%質量%以上70%質量%以下の質量の水を吸着していることが好ましい。なお、水吸着脱離材7の乾燥質量とは、水吸着脱離材7が含水率2.0%時の質量である。また、水吸着量とは、実施形態の水電解装置100の水吸着脱離材7と水を含んだ空気を15時間以上20時間以下接触させた時の水の吸着量である。水を含んだ空気は、0℃以上10℃以下で相対湿度が60%以上の空気であることが好ましい。低吸着量(25質量%未満)の場合、水電解反応に必要な水分量の確保のためには多くの水吸着脱離材7を必要とするが、水吸着脱離材7の厚みが増してしまう。一方、水吸着後において水吸着脱離材7の質量(乾燥質量)の70質量%よりも水吸着量が多いと、水吸着脱離材7が割れるなどして劣化しやすくなる、また、陽極4への水供給量が過多になり易いため、陽極4を劣化させてしまうことが好ましくない。
【0021】
この目的に合致する吸着材として、主としてB型シリカゲルが好適に用いられる。一般的にシリカゲルは化学吸着(シラノール基:Si-OHによる吸着)と、物理吸着(毛細管凝縮による吸着)による広範囲にわたる吸着特性をもつ。A型シリカゲルは二酸化ケイ素の微粒子が緻密に集合し、大きな表面積を有している。この表面に無数のシラノール基(水の分子等と結合しやすい基)をもつため、水と性質の近い物質を選択的に吸着(化学吸着)する。一方、B型シリカゲルは二酸化ケイ素の微粒子が緩やかに集合し、表面積はA型シリカゲルよりも小さい。このため、シラノール基による化学吸着よりも、微粒子間の間隙への毛細管凝縮による物理的吸着が優先的に働く。この物理的吸着力は緩やかなので、B型シリカゲルは低相対湿度に置く、もしくはシリカゲルの周囲を加熱すると、吸着水を徐々に放出する性質を持っている。B型のシリカゲルは、A型のシリカゲルと比較して、相対湿度が高い場合に、水の吸着量を高めることができる。そこで、シリカゲルとしては、A型シリカゲルよりもB型シリカゲルの方が実施形態の水吸着脱離材7として好適である。なお、シリカゲルのA型とB型は、JIS Z 0701−1977 1種(包装用シリカゲル乾燥剤)に定められている。この他の吸着材として、東洋紡株式会社の高機能アクリル微粒子、タフチック(商標)HUシリーズに代表されるアクリル系微粒子が挙げられる。吸湿性高分子の特徴を生かし、高い吸湿機能を有しており耐久性も高い。
【0022】
水吸着脱離材7は、伝熱板6に挟まれた領域に層状に存在し、粒子又は粒子が集合した多孔質の塊が好ましい。水吸着脱離材7の粒子の粒度分布は1つの分布を有する第1の粒子群を有することが好ましい。ここで、図3(a)から図3(b)を用いて、水吸着脱離材7の粒子の粒度分布が1つの分布を有するもの(第1の粒子群)について説明する。図3(a)と図3(b)は、水吸着脱離材7の粒度分布を示すグラフである。1つの分布を有するとは、粒度分布が1つのモード径Xを有すること、または、粒度分布が2つ以上のモード径を有する場合において、2つ以上のモード径のうちの存在比率が高い上位1位と2位のモード径であるX(存在比率が1位と2位のモード径のうち、モード径が小さい方)とX(存在比率が1位と2位のモード径のうち、モード径が大きい方)が、X/X<10の関係を満たすことを意味する。水吸着脱離材7は、第1の粒子群からなることがより好ましい。水吸着脱離材7の粒度分布は、第1の粒子群の1つの分布を有することが好ましい。
【0023】
第1の粒子群は、直径10μm以上5mm以下の範囲内にモード径を有することが好ましい。また、第1の粒子群のD10は、10μm以上であり、D90は5mm以下であることがより好ましい。第1の粒子群は、球状粒子、破砕状粒子又は球状体粒子と破砕状粒子の混合物であることが好ましい。
【0024】
粒度分布は、レーザー回折散乱式粒度分布計で求められる体積粒度分布であって、球状体粒子と破砕状粒子の直径は、体積球相当径から求められる。多孔質の塊の大きさは、特に限定されない。第1の粒子群は、上記のB型シリカゲル、ゼオライト、アクリル系微粒子や低結晶性粘土と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体などのうちの1種以上を含み、さらに、塩化カルシウムやポリリン酸カリウムなどのうちの1種以上を含んでもよい。
【0025】
水吸着脱離材7の平均厚さは、5mm以上20mm以下であることが好ましい。平均厚さが5mm未満であると、水吸着脱離材7の絶対量が確保できない。そのため、水吸着脱離材7が十分な水の吸着量を確保できず、陽極4における水不足を招く。また、平均厚さが20mmを超えると、水吸着脱離材7の絶対量は十分であるものの水を多く含む空気の拡散性が低下するため、水吸着脱離材7が十分な水の吸着量を確保できない。水吸着脱離材7の平均厚さの算出方法は、例えば、長方形状の水吸着脱離材7を格子状に4等分割し、分割された領域の中心点(4点)の厚さと、水吸着脱離材5の中心点(1点)の厚さの計5点の厚さを平均することで求められる。そこで、水吸着手段は、平均厚さが5mm以上20mm以下の水吸着脱離材を有し、かつ水吸着脱離材は第1の粒子群を有することがより好ましい。
【0026】
水吸着脱離材7は、十分な水の吸着量を確保する観点から伝熱材6に挟まれた領域で高密度に充填していることが好ましい。そこで、伝熱材6に挟まれた領域における水吸着脱離材7の充填率は、40%以上であることが好ましく、最密充填で充填されることがより好ましい。
【0027】
水吸着脱離材7への加熱は、水電解素子の電気分解反応に伴って発熱する膜電極接合体を熱源とすることができるため、発熱部9無しに水電解素子の動作時に、水吸着脱離材7周囲を加熱して、水吸着脱離材7から水分を脱離することができる。水吸着脱離材7を5℃以下にすることで、水吸着脱離材7は水を吸着しやすくなる。また、水吸着脱離材7を15℃以上70℃以下にすることで、水吸着脱離材7は水を脱離しやすくなる。膜電極接合体からの熱だけでは、水吸着脱離材7周囲の相対湿度を下げることができず、水を十分に脱離することが困難な環境で実施する場合等は、図1のとおり発熱部9を設けることが好ましい。
【0028】
フィルター12は、水吸着脱離材7への不純物の付着を防ぐために水供給部8の空気の導通口に設けられることが好ましい。フィルター12は、空気(水を含む)を導通し、油分やたんぱく質などの水吸着脱離材7と吸着することで、水吸着脱離材7を劣化させる物質を通さないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、不織布構造を有する繊維などが好適に用いられる。図2では、水供給部8の側面の伝熱板6(6A−6F)の間を空気が流れるように水電解装置100が構成されているため、フィルター12を水供給部8の側面に設けている。フィルター12は、水供給部8の側面以外の空気の導通口に設けられてもよい。
【0029】
気体供給排気手段13は、水吸着脱離材7への水分を含む空気の供給を制御する手段である。気体供給排気手段13としては、例えば、シャッター、送風機、及びシャッターと送風機の組み合わせ等が挙げられる。気体供給排気手段13として、送風機が用いられる場合、水供給部8が水吸着を行う時において、水送風機を動作させることによって、水供給部8の一方の側面から水を含む空気を取り入れ、空気と水吸着脱離材7を強制的に接触させて、水を吸着させ、他方の側面から空気を排気することができる。水供給部8が水脱離を行う時においては、送風機の動作を停止させることで、水供給部8内の空気の側面方向の流れを妨げて、水分の漏れを減らすことができる。気体供給排気手段13として、シャッターと送風機を組み合わせることで、シャッターを開け、送風機を動作させることによって、水供給部8が水吸着を行う時において、水供給部8の一方の側面から水を含む空気を取り入れ、空気と水吸着脱離材7を接触させて、水を吸着させ、他方の側面から空気を排気することができる。そして、シャッターを閉じ、送風機の動作を停止させることで、水供給部8が水脱離を行う時において、水供給部8から放出される水分が、陽極4側以外へ漏れることを防ぐことができる。なお、水脱離を行う時においては、シャッターを閉じて、外気の流入を防ぐ状態で、水供給部8内の空気を拡散させるために、送風機を動作させてもよい。送風機は連続動作させてもよいし、間欠的に断続運転させてもよい。
【0030】
シリカゲルなどの水吸着脱離材7は水の吸着過程と水の脱離過程で異なる吸着等温線を示すことが知られている。水吸着脱離材7そのものの水の吸着過程の速度は、水の脱離過程の速度よりも早く、水脱離過程での水の脱離条件が重要となる。実施形態の水吸着脱離材7は、十分な水を供給するために厚くする必要がある。すると、通常とは逆の、水の吸着過程の速度は、水の脱離過程の速度よりも遅くなることがわかった。また、水吸着脱離材7の奥行を増加させても、奥行を増加させた領域の水吸着脱離材7の内部における水を多く含んだ空気の拡散性が低下するため水の吸着量が効率的に増加しない。また、厚すぎる水吸着脱離材7は、水を吸着させるのにより多くの時間を要するだけでなく、水脱離を行う時において、熱伝導性が低下することで水吸着脱離材7周囲の気体の相対湿度を低下させるまでに時間を要し必要水分量の回収に時間がかかる。さらに、実施形態では、低温環境下においても、一日に最低1サイクルの水電解反応(減酸素反応)を行うために必要な水を水吸着脱離材7に吸着させることが重要となるため、短い時間で多くの水を水吸着脱離材7が吸着する必要性がある。一日に最低1サイクルの水電解反応(減酸素反応)を行う具体例としては、一日のうち、20時間以内で水吸着を行い。4時間以内で水吸着脱離材7からの水の放出、水電解反応と減酸素反応を行うことが好ましく、15時間以内で水吸着を行い、2時間以内で水吸着脱離材7からの水の脱離、水電解反応と減酸素反応を行うことがより好ましい。そこで、短時間で十分な水吸着量を確保する観点から水吸着脱離材7の厚さを上述の5mm以上20mm以下にすることが好ましい。しかし10mm以上20mm以下の厚さで充填率を40%以上にすると、水吸着脱離材7の厚さと充填率に起因して、水を多く含んだ空気の拡散性が低下して、水の吸着速度が低下しやすい。そこで、実施形態の減酸素装置では、水吸着脱離材7が伝熱板6に挟まれた領域で最密充填となる充填密度であっても、気体供給排気手段13を設けることによって、水分を含んだ多くの空気が水吸着脱離材7と接触することで、水吸着脱離材7の水吸着による水吸着量の増加速度を増加させることができる。かかる観点から、気体供給排気手段13としては、送風機もしくは送風機とシャッターを組み合わせたものが好ましい。
【0031】
発熱部9は、水脱離手段であって、水供給部8の水吸着脱離材7を加熱する。発熱部9によって、水吸着脱離材7の周囲も加熱される。発熱部9は、水供給部8と熱結合していることが好ましい。膜電極接合体の発熱で水吸着脱離材7が水を十分に脱離することができるなど、発熱部9が無くても陽極4に十分な水が供給可能な場合などに、発熱部9は、省略される。発熱部9としては、電気抵抗体やペルチェ素子など、電気によって発熱する電子部品だけでなく、水電解装置100を取り付けた装置の排熱などを利用してもよい。
【0032】
電圧印加手段10は、陰極2と陽極4に電気的に接続し、両極に電圧を印加する。電圧印加手段10が印加する電圧によって、陰極2および陽極4で電極反応が行われる。電圧印加手段10は、制御部11によって、電圧を印加する条件(電圧、電流、時間、時機)が制御される。電圧印加手段10と制御部11は、発熱部9と接続して、制御部11によって動作制御された電圧印加手段10によって、発熱部9を駆動してもよい。
【0033】
制御部11は、電圧印加手段10の動作を制御する。制御部11は、図示しない酸素濃度センサや水電解装置と取り付ける容器の開閉情報を基にマイコンやPLD(プログラマブルロジックデバイス)などの集積回路で処理することで、手動の動作スイッチを用いてもよいし、集積回路とスイッチの両方を用いてもよい。制御部11は、水吸着脱離材7と接触させる空気の温度及び相対湿度(または絶対湿度)の情報を基に、気体供給排気手段13の動作を制御してもよい。
【0034】
実施形態1の減酸素装置100では、水の吸着速度を向上させて、限られたサイクル時間内で水吸着脱離材7の水の吸着量を増加させることができる。
【0035】
(実施形態2)
図4図5に実施形態2の水電解装置101の断面概念図を示す。実施形態2の水電解装置101は、実施形態1の水電解装置100と同様に、陰極2と、陽極4と、陰極2と陽極4に挟持された電解質膜1と、陰極2と電気的に接続した陰極集電板3と、陽極4と電気的に接続した陽極集電板5と、複数部からなる伝熱板6と、陽極と陰極に電圧を印加する電圧印加手段10と、電圧印加手段を制御する制御部11と、伝熱板6で挟まれた領域に空気中の水分を吸着する水吸着手段と、水吸着手段が吸着した水分を脱離する水脱離手段とを備える。水電解素子は、水の電気分解反応を行う電解質膜1と、陰極2と、陽極4とで、構成される。水電解装置101は、水吸着手段として、水吸着脱離材7とを有し、また、水脱離手段として、水吸着脱離材7を加熱する加熱する発熱部9を有する。
【0036】
図5図4の減酸素装置101のA−A’の断面概念図を示す。図5の概念図では、伝熱材6(6A−6F)と水吸着脱離材7(7A−7E)が交互に並んだ水供給部8と、水供給部8の両側にフィルター12を有する。フィルター12は、水供給部8の両側又は空気が流入する片側に設けられることが好ましい。
【0037】
実施形態2の減酸素装置101は、水吸着脱離材7が2つ以上の分布を有すること、つまり、第2の粒子群と第3の粒子群を有すること、そして、気体供給排気手段13としての送風機を設けないこと以外は、実施形態1の減酸素装置100と共通する。実施形態1と実施形態2とで、共通する説明については省略する。実施形態2においても、水吸着後において水吸着脱離材7の質量(乾燥質量)の25質量%以上70質量%以下の質量の水を吸着していることが好ましい。なお、短時間もしくは低相対湿度においても水吸着量を水吸着脱離材7の質量の30質量%以上や50質量%以上にする場合等は、気体供給排気手段13を省略しないことが好ましい。
【0038】
実施形態では、水吸着脱離材7が多くの水を吸着するために以下の物性を有することが好ましい。水吸着脱離材7は小粒径の第2の粒子群と大粒径の第3の粒子群の両方を有することが好ましい。従って、水吸着脱離材7の粒度分布は2以上の分布(分布の山)を有することが好ましい。水吸着脱離材7に2以上の分布を有する水吸着脱離材7を用いることで、最密充填時の充填率を、1つの粒度分布を有する水吸着脱離材7を用いた場合の最密充填時の充填率よりも向上させることができる。なお、第2の粒子群の平均直径は、第3の粒子群の平均直径よりも小さい。
【0039】
ここで、図6を用いて、水吸着脱離材7の粒子の粒度分布が2つ以上の分布を有するもの(第2の粒子群と第3の粒子群)について説明する。図6は、水吸着脱離材7の粒度分布を示すグラフである。2つ以上の分布を有するとは、2つ以上のモード径のうちの存在比率が高い上位1位と2位のモード径であるX(存在比率が1位と2位のモード径のうち、モード径が小さい方)とX(存在比率が1位と2位のモード径のうち、モード径が大きい方)が、X/X≧10の関係を満たすことを意味する。
【0040】
第2の粒子群は、直径0.3mm以上1mm以下の範囲内にモード径を有することが好ましい。第2の粒子群のD10は、0.3mm以上であり、D90は1mm以下であることがより好ましい。また、第3の粒子群は、直径2mm以上4mm以下の範囲内にモード径を有することが好ましい。第3の粒子群のD10は、2mm以上であり、D90は4mm以下であることがより好ましい。
【0041】
ここで、さらに図7を用いて、粒度分布が2つの場合の第2の粒子群と第3の粒子群のモード径と混合比率と充填率の関係について説明する。図7は、横軸が第2の粒子群の比率([第2の粒子群の粒子の個数]/([第2の粒子群の粒子の個数]+[第3の粒子群の粒子の個数])であり、縦軸が充填率(最密充填率)を示す。そして、図7には、X/Xが2から10000までの水吸着脱離材7の充填率を示す。図7中の、実線は、X/X=2の充填率を示す。破線は、X/X=5の充填率を示す。一点長鎖線は、X/X=10の充填率を示す。2点長鎖線は、X/X=2の充填率を示す。細破線は、X/X=50の充填率を示す。細一点長鎖線は、X/X=100の充填率を示す。細2点長鎖線は、X/X=1000の充填率を示す。極細破線は、X/X=10000の充填率を示す。細二点長鎖線と極細破線は、ほとんど重なっている。X/X=2の時、第2の粒子群の比率を40%程度としても充填率は、52%程度であり、また、X/X=5の時、第2の粒子群の比率を30%程度としても充填率は、62%程度であり、X/X=1の時の最密充填である50%と比較して大きな充填率の改善は見込めない。X/X≧10では、第2の粒子群と第3の粒子群の存在比率を最適化することで水吸着脱離材7の充填率を70%以上にすることができるため、X/X≧10が好ましい。このように、水吸着脱離材7が2つ以上の分布を有する時、水吸着脱離材7の充填率を70%以上や80%以上に向上させることで水吸着脱離材7の厚さをより減らすことに寄与する。
【0042】
第2の粒子群と第3の粒子群のモード径比率は、充填率を高める観点から、X/X≧10であることが好ましく、X/X≧100であることがより好ましく、X/X≧1000であることがさらにより好ましい。水吸着脱離材7は、さらに、直径が0.05mm以上0.1mm以下の範囲にモード径を有する第4の粒子群を含んでもよいし、直径が6mm以上の範囲にモード径を有する第5の粒子群を含んでもよい。ただし、小粒径の粒径が小さすぎると、粒子間の反発により充填率が低下してしまう。そこで、最も径の小さい粒度分布の平均直径は、0.05mm以上であることが好ましい。なお、第4の粒子群の粒子数は、Xに含まれ、第5の粒子群の粒子数は、Xに含まれる。第4の粒子群と第5の粒子群は、粒子の大きさ以外は、第2の粒子群と第3の粒子群と同様である。そこで、水吸着手段は、平均厚さが3mm以上15mm以下の水吸着脱離材を有し、かつ水吸着脱離材は、第2の粒子群と第3の粒子群を有し、第2の粒子群のモード径は、第3の粒子群のモード径より小さいことがより好ましい。
【0043】
第2の粒子群および第3の粒子群は、球状粒子、破砕状粒子又は球状体粒子と破砕状粒子の混合物であることが好ましい。粒度分布は、レーザー回折散乱式粒度分布計で求められる体積粒度分布であって、球状体粒子と破砕状粒子の直径は、体積球相当径から求められる。多孔質の塊の大きさは、特に限定されない。
【0044】
第2の粒子群および第3の粒子群は、上記のB型シリカゲル、ゼオライト、アクリル系微粒子や低結晶性粘土と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体などのうちの1種以上の粒子を含む。
【0045】
水吸着脱離材7の平均厚さは、3mm以上15mm以下であることが好ましい。平均厚さが3mm未満であると、水吸着脱離材7の絶対量が確保できない。そのため、水吸着脱離材7が十分な水の吸着量を確保できず、陽極4における水不足を招く。また、平均厚さが15mmを超えると、水吸着脱離材7の絶対量は十分であるものの水を多く含む空気の拡散性が低下するため、一日、1サイクルで水電解装置を動作させる場合、20時間以下もしくは15時間以下の時間内では、水吸着脱離材7が十分な水の吸着量を確保できない。充填率と厚さの観点から水吸着脱離材7のXとXは、10≦X/X≦100を満たすことがより好ましい。
【0046】
水吸着脱離材7は、実施形態1と同様に充填率が高いことが好ましい。実施形態2では、第2の粒子群と第3の粒子群を有するため、充填率を高めることができる。水吸着脱離材7の水の吸着量を増加させる観点から、水吸着脱離材7の充填率は、60%以上が好ましい。
【0047】
二成分系(2つ以上の粒度分布)では充填率を高めることが可能となるため、水吸着脱離材7の厚みを薄くすることができ、水の吸着量を増やすことができる。水吸着脱離材7の厚さを薄くすることで、水吸着脱離材7における蒸気拡散性が向上する。つまり、実施形態の水電解装置(減酸素装置)101は、蒸気と水吸着脱離材7との接触機会が増えるという利点を有する。実施形態1の減酸素装置100では設けた送風機を省略しても、陽極4での反応に十分な水を水供給部8が供給することができる。送風機を省略することで、構成の簡略化に伴う故障率の低下、消費電力の低下の利点が実施形態の水電解装置101に生じる。さらに、家庭内で夜間に動作させる場合には、特に動作音を小さくすることができるため、騒音低下の観点から好ましい。実施形態では、安定に水電解素子の減酸素反応に必要な水を陽極4へ十分に供給しつつ、これらの利点を享受することができる。
【0048】
(実施形態3)
実施形態3は、実施形態1の水電解装置(減酸素装置)100を備えた保管庫200に関する。実施形態の保管庫200は、減酸素システムを有する。実施形態3では、水電解装置を減酸素装置として用いる。図8に実施形態3の保管庫200を示す。図8の保管庫200は、容器14と、容器14に備えられた蓋15と、容器14に備えられた減酸素装置100とを有する。
【0049】
容器14は、保管庫200の容器である。容器14の減酸素空間16には、図示しない被保管物が保管される。容器14には、被保管物を出し入れ可能な蓋15が設けられる。容器14は、被保管物を低酸素状態で保管することが可能である。蓋15を閉めることで、減酸素空間16は気密性を有することが好ましい。容器14及び蓋15は、高分子化合物や金属などの、空気(酸素)透過性の低い材料を用いて構成されることが好ましい。
【0050】
減酸素装置100は、容器14の壁面に設けられる。減酸素装置100の陰極2は、容器14内、つまり、減酸素空間16中に存在する。陰極2において、酸素を消費する上述の減酸素反応を行うことによって、容器14内の酸素濃度を低減することができる。
【0051】
容器14には、圧力調整用の開口部がさらに備えられていることが好ましい。陰極2での減酸素反応によって、酸素が消費され水が生成されると容器14内の圧力が低下する。実施形態では、容器14内の酸素濃度を数%から十数%(例えば、5%から15%)減らすため、容器14を密閉していると、容器14内の圧力が低下する。そのため、容器14が減圧に耐えられるように、強度のある容器14を用いることが好ましい。また、容器14内の圧力変化を防ぐために、容器14の壁面に開口部もしくは圧力調整弁を設けてもよい。
【0052】
実施形態では、陽極4での水電解反応を安定に行うために、陽極4での水電解反応の原料となる水を安定に供給することが好ましい。そこで、水吸着脱離材7は、乾燥時の水吸着脱離材7の質量の25質量%以上70質量%以下の水を吸着することが好ましい。水吸着脱離材7の水吸着量が25質量%未満であると、水吸着脱離材7の量に対して陽極4への水供給量が少なく、安定して水電解反応が行われず、水電解電圧が上昇してしまいやすい。また、陽極4で、水電解反応が十分に行われないと、陰極2の酸素還元反応で必要なプロトンが十分に供給されず、陰極反応が停止してしまう。さらに、水吸着脱離材7の水吸着量が25質量%未満であると多くの水吸着脱離材7を必要とするため水を脱離する際に加熱する水吸着脱離材7が多くなり、水の脱離に大きなエネルギーを要してしまう。また、水吸着脱離材7の水吸着量が70質量%を超えると、水吸着脱離材7が割れるなどして劣化しやすくなることで、水吸着量や水脱離量が減少してしまうため好ましくない。水吸着脱離材7の量は、陰極2側の容器14の体積と、目的とする低下後の酸素濃度と、水吸着脱離材7の水吸着に伴う質量増加率から求められる。以下に減酸素反応に必要な水吸着脱離材7の量(質量)の求める方法の一例を示す。
【0053】
運転開始前の容器14の酸素濃度を大気(21%)、温度5℃とする。容器14の容量をL(リットル)、到達酸素濃度をx(%)、電圧印加手段10を用いて陰極2と陽極4間に流れる電流をI(アンペア)とする。なお、ここでは、空気中の水の蒸気圧は無視できるほど小さいため、容器14に含まれるガス種は酸素、および窒素のみを考える。
【0054】
減酸素運転を行う前の容器14に含まれる酸素のモル数は気体の状態方程式より0.21×(L/RT)と記述できる。ここで、Rは気体常数(J/mol×K)、Tは5℃における絶対温度(278.15K)である。また、酸素分圧および窒素分圧は、それぞれ0.21(atm)、0.79(atm)である。次に、酸素濃度x(%)に達した時の容器14の圧力をP(atm)とすると、酸素分圧はP×(x/100)(atm)、窒素分圧はP×(1−(x/100))と表せる。減酸素運転実施前後で容器14に含まれる窒素濃度は不変であることから、0.79=P×(1−(x/100))が成立する。これよりP=0.79/(1−(x/100))が得られる。したがって、酸素分圧はx/100×(0.79/(1−(x/100)))と表すことができ、気体の状態方程式より、酸素のモル数は(L/RT)×(x/100)×(0.79/(1−(x/100)))となる。
【0055】
したがって、減酸素運転により陰極2で消費した酸素モル数は、0.21×(L/RT)−(L/RT)×(x/100)×(0.79/(1−(x/100)))と求められる。また、陽極4で消費される水のモル数は、反応式(1)と反応式(2)から、陰極2で消費した酸素のモル数の半分であることから、0.21×(L/RT)−(L/RT)×(x/100)×(0.79/(1−(x/100)))/2と求められる。上記計算は容器14が密閉されている仮定の下で行った。酸素濃度が減少するに従って、容器内は減圧となるため、それに耐えうる耐圧仕様の容器14の設計が必要である。そのため容器14の一部に開口部又は圧力調整弁を設け、常に減酸素容器内を大気圧(1atm)に保持させつつ、酸素濃度を減少させることも可能である。ただ、この場合、外部から空気を取り込むため、1molの酸素を消費する際、0.79molの窒素、0.21molの酸素が減酸素容器内に流入することになり、密閉容器で1molの酸素を消費する時、開口部又は圧力調整弁を設けた容器14では0.79molの酸素が消費される。従って、容器14の一部に開口部又は圧力調整弁を設けた場合、減酸素運転により陰極2で消費した酸素モル数は、0.21×(L/RT)−(L/RT)×(x/100)×(0.79/(1−(x/100)))/0.79と求められる。また、陽極4で消費される水のモル数は、0.21×(L/RT)−(L/RT)×(x/100)×(0.79/(1−(x/100)))/(2×0.79)と求められる。
【0056】
次に減酸素の還元反応O+4H+4e→2HOで消費される酸素は反応に必要な電子の1/4であることを考慮すると、酸素濃度x(%)に達するまでに必要な時間t(H)は、(4F/60×60×I)×0.21×(L/RT)−(L/RT)×(x/100)×(0.79/(1−(x/100)))となる。ここでFはファラデー定数(C/mol)である。このような計算式にしたがって酸素濃度x(%)に達するまでに必要な時間を求めることが可能である。なお、上記計算は容器14が密閉されている仮定の下で行った。そのため容器14の一部に開口部又は圧力調整弁を設けた場合において、酸素濃度x(%)に達するまでに必要な時間t(H)は、(4F/60×60×I)×0.21×(L/RT)−(L/RT)×(x/100)×(0.79/(1−(x/100)))/0.79で求められる。
【0057】
上述の条件から求められた量以上の水を水吸着脱離材7が吸着していることが好ましい。実施形態では、被保管物を減酸素状態の空間16内に保管することで、保管性を高める。そこで、減酸素状態を長くするために、減酸素状態に至るまでの時間は、4時間以下もしくは2時間以下といった短時間であることが好ましい。なお、水吸着脱離材7は、水の吸着量が増えると水の脱離量が増えるため、減酸素の反応時間を短縮することができ、さらに、水吸着工程の時間を長くすることができる点で、水吸着脱離材7の水吸着量が多いことが好ましい。そして、水吸着脱離材7の水脱離量が水吸着脱離材7の質量に対して25質量%以上であると、水脱離率が高く、水吸着脱離材7の絶対量を減らせることができる。水吸着脱離材7の量を減らすことで、水吸着脱離材7の加熱に必要なエネルギーを減らすことができ、発熱部9を省略しても膜電極接合体からの発熱で水吸着脱離材7周囲の相対湿度を下げることができる。水吸着脱離材7の加熱に必要なエネルギーが少ないと、かかる加熱に伴い容器14内の温度上昇を抑えることができる。以上のことから、水吸着脱離材7の水脱離率量も水吸着脱離材7の質量に対して25質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
【0058】
次に保管庫の減酸素にかかる動作について説明する。実施形態3の減酸素装置100の運転方法は、水吸着脱離材7と水分を含む空気を接触させて水吸着脱離材7に水を吸着させる水吸着工程(ステップ1)と、水吸着脱離材7が吸着した水を脱離させる水脱離工程(ステップ2)とを有する。実施形態3では、気体供給排気手段13として、シャッターと送風機を有する減酸素装置100の動作について説明する。送風機は、シャッターとフィルター12の間に存在する。なお、シャッターを省略した気体供給排気手段13を用いる場合は、シャッターの動作を省略すればよい。図9に実施形態3の保管庫200の動作のチャート図を示す。図9のチャート図には、S1AからS1Fまでの水吸着工程と、S2AからS2Gまでの水脱離工程が示されている。水吸着工程は、水吸着手段によって行われ、水脱離工程は、水脱離手段によって行われる。
【0059】
まず、ステップ1の水吸着脱離材7と水を含む空気を接触させて水吸着脱離材7に水を吸着させる水吸着工程について説明する。水吸着工程は、水吸着を開始する工程S1Aと、シャッターを開ける工程S1Bと、送風機を動作させる工程S1Cと、水吸着量Mが基準水吸着量MSETと比較する工程S1Dと、送風機を停止させる工程S1Eと、シャッターを閉じる工程S1Fとを有する。
【0060】
水吸着を開始する工程S1Aは、水吸着工程を開始するための制御部11からの指示である。制御部11からの指示は、水脱離工程の終了や操作者によるスイッチの操作などをきっかけとする。
【0061】
水吸着を開始する工程S1Aの次工程であるシャッターを開ける工程S1Bと、送風機を動作させる工程S1Cとは、気体供給排気手段13を動作させる工程である。シャッターを省略す場合は、シャッターを開ける工程S1Bの工程は省略される。シャッターを開け、送風機を動作させて、水吸着脱離材7に水を含んだ空気を接触させる。減酸素装置100は、自然対流による水吸着脱離材7と水を含んだ空気との接触では、水吸着脱離材7の内部における空気拡散が十分ではないため、水吸着脱離材7と空気との接触量を増やすために送風機を用いる。
【0062】
送風機を動作させる工程S1Cの次工程である水吸着量Mが基準水吸着量MSETと比較する工程S1Dは、水吸着脱離材7が十分な水を吸着したか判定する工程である。水吸着量が不十分な場合は、送風機を動作させる工程S1Cに戻り、送風を続ける。水吸着脱離材7が十分な水を吸着したか判定する工程では、水吸着脱離材7または水吸着脱離材7を含む部材(例えば水供給部8)に質量センサを設けて、送風後の質量を測定して求められた水吸着量である質量Mが予め定められた質量MSET以上であれば、次工程に移る。本工程は、実際に吸着量を測定せずに、送風時間から水吸着量を推定するなどしてもよい。水吸着量を推定する場合は、送風される空気の温度や湿度の情報を基に、必要な送風時間を定めることができる。送風される空気の温度や湿度の情報は、測定値、外部装置から送信された数値、操作者によって設定された数値などを採用することができる。質量MSETは、水脱離工程で、脱離される水の量以上であればよい。
【0063】
水吸着量Mが基準水吸着量MSETと比較する工程S1Dの次工程である送風機を停止させる工程S1Eと、シャッターを閉じる工程S1Fは、気体供給排気手段13を停止させる工程である。シャッターを省略す場合は、シャッターを閉じる工程S1Bの工程は省略される。本工程によって、水吸着工程は終了する。
【0064】
次に、ステップ2の水吸着脱離材7が吸着した水を脱離させる水脱離工程について説明する。水脱離工程は、水脱離を開始する工程S2Aと、発熱部9を動作させる工程S2Bと、伝熱部6の温度Tと基準温度TSETを比較する工程S2Cと、減酸素素子を動作させる工程S2Dと、水脱離量Nと基準水脱離量NSETと比較する工程S2Eと、減酸素素子を停止させる工程S2Fと、発熱部9を停止させる工程S2Gとを有する。
【0065】
水脱離を開始する工程S2Aは、水脱離工程を開始するための制御部11からの指示である。制御部11からの指示は、水吸着工程の終了、操作者による水吸着工程開始スイッチの操作や容器14の扉15が長時間閉状態を開始する時刻などをきっかけとすることができる。容器14の扉15が長時間閉状態を開始する時刻は、扉15の開閉情報を解析して求められた時刻もしくは操作者が設定した時刻であることが好ましい。
【0066】
水脱離を開始する工程S2Aの次工程である発熱部9を動作させる工程S2Bは、制御部11からの信号により発熱部8を動作させて、水吸着脱離材7から水を脱離させるための熱源を発生させる工程である。熱源に発熱部9を用いず、電極の発熱を熱源とする場合は、S2BとS2Cの工程は省略される。発熱部9を用いない場合は、空気中の水が先に陽極4で消費され、陽極4の発熱によって、次第に水吸着脱離材7から水が脱離される。
【0067】
発熱部9を動作させる工程S2Bの次工程である伝熱部6の温度Tと基準温度TSETを比較する工程S2Cは、伝熱部6が水吸着脱離材7から水が多く脱離される温度に達しているか判断する工程である。基準温度TSETは、例えば、60℃以上80℃以下である。60℃より低温であると、水脱離速度が低く、80℃より高温であると容器14内の温度が上昇しやすくなってしまうことが好ましくない。伝熱部6の温度は、他の部材の温度を測定して推定してもよいし、発熱部9を動作させた消費電力などから推定してもよい。また、温度が上がり過ぎないように、減酸素素子の動作中において、制御部11が発熱部9の動作を制御することが好ましい。
【0068】
伝熱部6の温度Tと基準温度TSETを比較する工程S2Cの次工程である減酸素素子を動作させる工程S2Dは、電圧印加手段10を用いて陽極4および陰極2へ電圧を印加する工程である。
【0069】
減酸素素子を動作させる工程S2Dの次工程である水脱離量Nと基準水脱離量NSET(NSET1、NSET2)と比較する工程S2Eは、水吸着脱離材7の水脱離率量が水吸着脱離材7の質量に対して25質量%以上70質量%以下の範囲内であるかどうか判定する工程である。水脱離量NがNSET1以上であれば、減酸素素子の運転を停止し、水脱離量NがNSET2を超えないように減酸素素子を運転する。基準水脱離量NSET(NSET1、NSET2(SET1<NSET2))は、25質量%以上70質量%以下の範囲内で定められる。NSET1は、25質量%以上70質量%未満である。NSET2は、25質量%より大きく70質量%以下である。なお、水吸着脱離材7の水脱離量は、水吸着脱離材7の質量の測定値でもよいし、容器14内の減酸素素子の運転開始前後の酸素濃度の差から求められた推定値、発熱部9の消費電力および運転時間から求められた推定値や減酸素素子の消費電力から推定値などを採用してもよい。
【0070】
水脱離量Nと基準水脱離量NSETと比較する工程S2Eの次工程である減酸素素子を停止させる工程S2Fは、水脱離量が定められた範囲に達した時に電圧印加手段10を制御して減酸素素子の運転を停止させる工程である。
【0071】
発熱部9を停止させる工程S2Gは、水吸着脱離材7からの水の脱離を停止させるために、発熱部9からの発熱を停止させる工程である。本工程S2Gは、減酸素素子を停止させる工程S2Fの前に行ってもよいし、S2Eの工程で求められた水脱離量Nの値に基づいて、予め発熱部9を停止させてもよい。
【0072】
上記に説明した工程によって、減酸素装置100を動作させることによって、水吸着工程では、水吸着手段を用いることで、水吸着脱離材7の水吸着量を25質量%以70質量%以下とし、水脱離工程では、水脱離手段を用いることで、水吸着脱離材7の水脱離率量が水吸着脱離材7の質量に対して25質量%以上70質量%以下とすることができ、減酸素装置を安定的に動作させ、容器14内の酸素濃度を低下させることができる。
【0073】
(実施形態4)
実施形態4は、実施形態2の水電解装置(減酸素装置)101を備えた保管庫201に関する。実施形態4では、水電解装置を減酸素装置として用いる。図10に実施形態3の201を示す。図10の保管庫201は、容器14と、容器14に備えられた蓋15と、容器14に備えられた減酸素装置101とを有する。図11に実施形態4の保管庫201の動作のチャート図を示す。図11のチャート図には、S1AからS1Dまでの水吸着工程と、S2AからS2Gまでの水脱離工程が示されている。実施形態4の保管庫201は、減酸素装置101が異なることと、送風機の動作がないこと以外は実施形態3と共通する。
【0074】
実施形態4では、実施形態2の減酸素装置101を用いているため、送風機を用いていないが、水吸着脱離材7に第2の粒子群と第3の粒子群を有する吸着脱離材を用いるなどしている。従って、実施形態4の保管庫200に置いても20時間以内もしくは15時間以内に十分な量の水を吸着することができる。水の脱離についても実施形態3と同様に行うことができるため、減酸素装置101を用いた保管庫201も、減酸素装置100を用いた保管庫200と同様の効果を有する。
【0075】
(実施形態5)
実施形態5は減酸素装置102を備えた保管庫202に関する。図12に実施形態5の保管庫202を示す。図12の保管庫202は、容器14と、容器14に備えられた蓋15と、容器14に備えられた減酸素装置102とを有する。減酸素装置102は、陰極2と、陽極4と、陰極2と陽極4に挟持された電解質膜1と、陰極2と電気的に接続した陰極集電板3と、陽極4と電気的に接続した陽極集電板5と、複数部からなる伝熱板6と、陽極と陰極に電圧を印加する電圧印加手段10と、電圧印加手段10を制御する制御部11と、伝熱板6で挟まれた領域に空気中の水分を吸着する水吸着手段と、水吸着手段が吸着した水分を脱離する水脱離手段とを備える。減酸素素子(水電解素子)は、水の電気分解反応を行う電解質膜1と、陰極2と、陽極4とで、構成される。実施形態の水電解装置100は、水吸着手段として、水吸着脱離材7と、水吸着脱離材7に空気を強制接触させる気体供給排気手段13とを有し、また、水脱離手段として、水吸着脱離材7を加熱する加熱する発熱部9を有する。水供給部8は、伝熱板6と水吸着脱離材7とで構成される。
【0076】
図13図12の保管庫のA−A’の断面概念図を示す。図13の概念図では、伝熱材6(6A−6F)と水吸着脱離材7(7A−7E)が交互に並んだ水供給部8と、水供給部8の両側にフィルター12と、気体供給排気手段13とを有する。図12の減酸素素子(水電解素子)は、水の電気分解反応を行う電解質膜1と、陰極2と、陽極4とで、構成される。実施形態の減酸素装置102は、水吸着手段として、水吸着脱離材7と水吸着脱離材7に空気を強制接触させる気体供給排気手段13とを有し、また、水脱離手段として、水吸着脱離材7と水吸着脱離材7を加熱する加熱手段とを有する。水吸着脱離材7以外の構成については、実施形態1乃至4と共通する。共通する構成に関する説明は省略する。また、保管庫202の減酸素装置202の動作は、実施形態3と共通するため、減酸素装置102の動作に関する説明も省略する。
【0077】
水吸着脱離材7は、伝熱板6に挟まれた領域に層状に存在し、粒子又は粒子が集合した多孔質の塊が好ましい。水吸着脱離材7は、上述のシリカゲル(B型シリカゲル)、ゼオライト、アクリル系微粒子や低結晶性粘土と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体などのうちの1種以上を用いることができる。塩化カルシウムやポリリン酸カリウムなどのうちの1種以上も水吸着脱離材7にさらに含んでもよい。伝熱板6の間に水吸着脱離材7が充填され、その粒径および充填率は任意の値を採用することができる。水吸着量を増加させる観点から、水供給部8の側面には、実施形態1の水電解装置100もしくは実施形態3の保管庫200と同様に送風機を備えた気体供給排気手段13を備えていることが好ましい。水吸着脱離材7の平均厚さは、5mm以上20mm以下が好ましい。かかる平均厚さの水吸着脱離材7であれば、気体供給排気手段13によって、水を含んだ空気が拡散しにくい厚さ方向の深部にまで空気を拡散することができ、水吸着脱離材7の水吸着率を向上させることができる。なお、水吸着脱離材7の平均厚さが5mm未満であると、水吸着脱離材7の水吸着量が少なくなり、減酸素装置102の水電解反応に十分な水を供給できないおそれがあって好ましくない、また、水吸着脱離材7の平均厚さが20mmより大きいと送風機を用いて水吸着脱離材7と水を含んだ空気を強制接触させたとしても、厚さ方向の深部において、空気拡散性の低さから、20時間以内、もしくは15時間以内に水を吸着しにくい場合があるため好ましくない。また、4時間以内、もしくは、2時間以内に水を脱離させる観点からも、水吸着脱離材7の平均厚さは、20mm以下であることが好ましい。
【0078】
(実施形態6)
図14に実施形態5の冷蔵庫300の概念図を示す。冷蔵庫300は、冷蔵庫の野菜室を想定した冷蔵空間に保管庫を設けた応用例である。実施形態5の保管庫は、引き出し式の蓋15を備えた容器14と、減酸素装置100を有する。容器14内には、減酸素装置の運転によって酸素濃度が低下する空間16を有する。減酸素装置および保管庫については、上記実施形態1乃至4において、説明したものと共通するため、その説明を省略する。保管庫200の減酸素装置は、実施形態1の減酸素装置100に限定されるものではなく、他の実施形態の減酸素セルでもよいし、また、これらの変形例の減酸素セルでもよい。
【0079】
図14の概念図に示す冷蔵庫300は、筐体17と、第1の冷蔵空間18と、第2の冷蔵空間19と、第1の冷凍空間20と、第2の冷凍空間21と、観音開き式の第1の扉22と、スライド式の第2の扉23と、スライド式の第3の扉24と、スライド式の第4の扉25と、冷蔵サイクル用Rエバ26と、冷凍サイクル用Rエバ27と、棚板28と、引き出し式のチルド容器29と、ドアポケット30と、引き出し31と、保管庫200とを有する。
図14の概念図には、冷蔵庫300の一部の構成を示している。冷蔵庫300は、図示しない圧縮機、断熱材、製氷室や電子回路などをさらに有する。
【0080】
第1の冷蔵空間18と第2の冷蔵空間19は、冷蔵サイクル用Rエバ26で冷却された空気によって冷却される。また、第1の冷凍空間20と第2の冷凍空間21は、冷凍サイクル用Rエバ27で冷却された空気によって冷却される。
【0081】
保管庫200は、設置位置を限定するものではないが、冷蔵庫の野菜室を想定した第2の冷蔵空間19に設けられることが好ましい。野菜の一部は、呼吸によって、酸化が進むため、保管庫200へ野菜を保管することによって、野菜の酸化による劣化を防ぐことができる。保管庫200の陽極で生成した酸素や陰極で生成した液体水は、図示しない経路によって冷蔵庫外に排出させてもよい。
【0082】
以下、保管庫の実施例を示す。
(実施例1)
実施例1は、実施形態3の保管庫に関する例である。
容器14の容量を10L、水吸着脱離材7として、粒度分布が1つの平均粒子径1mmのB型シリカゲル用いた。陽極の触媒は酸化イリジウム、陰極の触媒はカーボン粒子に担持された白金微粒子を、電解質膜はデュポン社製のナフィオンを用いた。減酸素装置運転前の容器14内は酸素濃度21%(大気)、減酸素室の温度を5℃であった。吸着材に水分を吸着させる時間を20時間、発熱部9を用いて吸着材の水分を放出させる時間を2時間とした。吸着材には予め十分加熱し、吸着水分を除去したB型シリカゲル10gを伝熱板6AからFの間(5箇所)に入れた。このとき吸着材の平均厚みは約5mmであった。気体供給排気手段13を作動し、水供給部8に空気を送風し、蒸気の吸着を開始した。減酸素装置3を温度5℃、湿度70%に保持された冷蔵庫中で20時間保持した。吸着過程終了後、シリカゲルの重量は3g増加していたことから、乾燥シリカゲル重量に対する水分の吸着率は30%であった。その後、発熱部9を作動し、水分の放出を開始した。制御部11と電圧印加手段10を用いて印加電流を2.4Aに設定し、2時間、陽極4における水の電気分解、陰極2における酸素の還元反応を行い、容器14内の酸素濃度を減少させた。なお、容器14には一部リーク箇所を設け、運転中の容器内の圧力が常に大気圧と等しくなるようにした。
【0083】
容器14内に酸素濃度モニターを入れ、容器14内の酸素濃度変化を観察したところ、減酸素運転前に21%を示した酸素濃度が、2時間後には14%に低下しており、式(4)から求めた計算値と一致していることを確認した。水分放出後のシリカゲルの重量は10gであり、吸着した水分はすべて放出したことを確認した。したがって、実施例1における水の蒸気の質量減少幅は吸着材重量の30%と算出できた。容器14内の酸素濃度減少の間、陽極4、陰極2間のセル電圧は約1.2Vを示し、安定した値を示したことから、吸着材による水分供給がバランスよくおこなわれていることが示唆された。
【0084】
次に20時間水分吸着、2時間水分放出を1サイクルとし、100サイクルによる耐久性試験を実施した。耐久性試験前の単セル電圧と比べて、耐久性試験後におけるセル電圧の低下率は約8%であった。電圧低下率は低く、陽極4への水の供給量が十分なため電極の劣化を抑えることができ、減酸素運転を安定に行えたことがサイクル特性からも分かった。
【0085】
(比較例1)
比較例1では気体供給排気手段13を作動せず、自己拡散による蒸気の吸着を開始した。実施例1と同条件で20時間、上記の吸着を行った。吸着過程終了後、シリカゲルの重量は0.6g増加していたことから、乾燥シリカゲル重量に対する水分の吸着率は6%であった。その後、発熱部9を作動し、実施例1と同じ条件で、陽極4で水電解反応を、陰極2で酸素の還元反応を行った。
【0086】
容器14内の酸素濃度変化を観察したところ、減酸素運転前に21%を示した酸素濃度が、2時間後には14%に低下しており、式(4)から求めた計算値と一致していることを確認した。水分放出後のシリカゲルの重量は10gであり、吸着した水分はすべて放出したことを確認した。したがって、比較例1における水の蒸気の重量減少幅は吸着材重量の6%と算出できた。容器14内の酸素濃度減少の間、陽極4、陰極2間のセル電圧は約1.35Vを示し、実施例より150mV程高い。陽極4への水分供給量が実施例と比べて少ないため、陽極4における水不足のため、過電圧が上昇したと考えられる。
【0087】
次に20時間水分吸着、2時間水分放出を1サイクルとし、100サイクルによる耐久性試験を実施した。耐久性試験前の単セル電圧と比べて、耐久性試験後におけるセル電圧の低下率は約15%であった。実施例1と比べて、比較例1では、セル電圧の低下率が増えていることが分かる。この原因は陽極の過電圧が高いため、陽極の劣化が加速されたためと考えられる。気体供給排気手段13による吸着水分量の確保が、減酸素素子(水電解素子)の高耐久性化に寄与していることが分かった。
【0088】
(実施例2)
実施例2は、実施形態4の保管庫に関する例である。
容器14の容量を10L、水吸着脱離材7として、平均粒子径2mmのB型シリカゲル、および平均粒子径0.3mmのB形シリカゲルを混合したものを用いた。平均粒子径0.13mmのB形シリカゲルの混合分率を0.2となるように調整した。このとき水吸着脱離材7の充填率は約60%であった。陽極の触媒は酸化イリジウム、陰極の触媒はカーボン粒子に担持された白金微粒子を、電解質膜はデュポン社製のナフィオン(商標)を用いた。
【0089】
減酸素装置運転前の容器14内は酸素濃度21%(大気)、減酸素室の温度を5℃であった。吸着材に水分を吸着させる時間を20時間、水脱離手段を用いて吸着材の水分を放出させる時間を2時間とした。吸着材には予め十分加熱し、吸着水分を除去したB型シリカゲル10gを伝熱板6AからFの間(5箇所)に入れた。このとき吸着材の平均厚みは約4mmであった。空気供給排気手段13を作動し、水供給部8に空気を送風し、蒸気の吸着を開始した。保管庫200を温度5℃、湿度70%に保持された冷蔵庫中で20時間保持した。吸着過程終了後、シリカゲルの重量は3.5g増加していたことから、乾燥シリカゲル重量に対する水分の吸着率は35%であった。その後、発熱部9を作動し、水分の放出を開始した。制御部11と電圧印加手段10を用いて印加電流を2.4Aに設定し、2時間、陽極4における水の電気分解、陰極2における酸素の還元反応を行い、容器14内の酸素濃度を減少させた。なお、容器14には一部リーク箇所を設け、運転中の容器内の圧力が常に大気圧と等しくなるようにした。
【0090】
容器14内に酸素濃度モニターを入れ、容器14内の酸素濃度変化を観察したところ、減酸素運転前に21%を示した酸素濃度が、2時間後には14%に低下しており、式(4)から求めた計算値と一致していることを確認した。水分放出後のシリカゲルの重量は10gであり、吸着した水分はすべて放出したことを確認した。したがって、実施例1における水の蒸気の質量減少幅は吸着材重量の35%と算出できた。容器14内の酸素濃度減少の間、陽極4、陰極2間のセル電圧は約1.15Vを示し、安定した値を示したことから、吸着材による水分供給がバランスよくおこなわれていることが示唆された。
【0091】
次に20時間水分吸着、2時間水分放出を1サイクルとし、100サイクルによる耐久性試験を実施した。耐久性試験前の単セル電圧と比べて、耐久性試験後におけるセル電圧の低下率は約7%であった。電圧低下率は低く、陽極4への水の供給量が十分なため電極の劣化を抑えることができ、減酸素運転を安定に行えたことがサイクル特性からも分かった。
【0092】
(比較例2)
比較例2は、実施例2の水吸着脱離材7を変更した例である。
比較例2では水吸着脱離材7として、平均粒子径2mmのB型シリカゲル、および平均粒子径0.01mmのB形シリカゲルを混合したものを用いた。平均粒子径0.01mmのB形シリカゲルの混合分率を0.2となるように調整した。このとき水吸着脱離材7の充填率は約45%であり、二成分系にもかかわらず充填率は低下した。粒径が小さすぎたため、粒子間の反発により充填率が低下したと考えられる。実施例2と同条件で20時間、上記の吸着を行った。吸着過程終了後、シリカゲルの重量は2.5g増加していたことから、乾燥シリカゲル重量に対する水分の吸着率は25%であった。その後、発熱部9を作動し、実施例1と同じ条件で、陽極4で水電解反応を、陰極2で酸素の還元反応を行った。
【0093】
容器14内の酸素濃度変化を観察したところ、減酸素運転前に21%を示した酸素濃度が、2時間後には14%に低下しており、式(4)から求めた計算値と一致していることを確認した。水分放出後のシリカゲルの重量は10gであり、吸着した水分はすべて放出したことを確認した。したがって、比較例2における水の蒸気の重量減少幅は吸着材重量の25%と算出できた。容器14内の酸素濃度減少の間、陽極4、陰極2間のセル電圧は約1.25Vを示し、実施例より100mV程高い。アノードへの水分供給量が実施例と比べて少ないため、アノードにおける水不足のため、過電圧が上昇したと考えられる。
【0094】
次に20時間水分吸着、2時間水分放出を1サイクルとし、100サイクルによる耐久性試験を実施した。耐久性試験前の単セル電圧と比べて、耐久性試験後におけるセル電圧の低下率は約10%であった。実施例2と比べて、比較例2では、セル電圧の低下率が増えていることが分かる。この原因は陽極の過電圧が高いため、陽極の劣化が加速されたためと考えられる。空気供給排気手段13による吸着水分量の確保が、減酸素素子(水電解素子)の高耐久性化に寄与していることが分かった。
【0095】
(実施例3)
実施例3は、実施例1の水吸着雰囲気を変更した例である。
容器14の容量を10L、水吸着脱離材7として、1つの粒度分布をする平均粒子径1mmのB型シリカゲルを用いた。陽極の触媒は酸化イリジウム、陰極の触媒はカーボン粒子に担持された白金微粒子を、電解質膜はデュポン社製のナフィオン(商標)を用いた。減酸素装置運転前の容器14内は酸素濃度21%(大気)、減酸素室の温度を5℃であった。吸着材に水分を吸着させる時間を20時間 、発熱部9を用いて吸着材の水分を放出させる時間を2時間とした。吸着材には予め十分加熱し、吸着水分を除去したB型シリカゲル10gを伝熱板6AからFの間(5箇所)に入れた。このとき吸着材の平均厚みは約5mmであった。空気供給排気手段13を作動し、水供給部8に空気を送風し、蒸気の吸着を開始した。連続送風で、保管庫200を温度5℃、湿度90%に保持された冷蔵庫中で20時間保持した。吸着過程終了後、シリカゲルの重量は7g増加していたことから、乾燥シリカゲル重量に対する水分の吸着率は70%であった。その後、発熱部9を作動し、水分の放出を開始した。制御部11と電圧印加手段10を用いて印加電流を2.4Aに設定し、2時間、陽極4における水の電気分解、陰極2における酸素の還元反応を行い、容器14内の酸素濃度を減少させた。なお、容器14には一部リーク箇所を設け、運転中の容器内の圧力が常に大気圧と等しくなるようにした。
【0096】
容器14内に酸素濃度モニターを入れ、容器14内の酸素濃度変化を観察したところ、減酸素運転前に21%を示した酸素濃度が、2時間後には14%に低下しており、式(4)から求めた計算値と一致していることを確認した。水分放出後のシリカゲルの重量は10gであり、吸着した水分はすべて放出したことを確認した。したがって、実施例3における水の蒸気の質量減少幅は吸着材重量の70%と算出できた。容器14内の酸素濃度減少の間、陽極4、陰極2間のセル電圧は約1.05Vを示し、安定した値を示したことから、吸着材による水分供給がバランスよくおこなわれていることが示唆された。
【0097】
次に20時間水分吸着、2時間水分放出を1サイクルとし、100サイクルによる耐久性試験を実施した。耐久性試験前の単セル電圧と比べて、耐久性試験後におけるセル電圧の低下率は約6%であった。電圧低下率は低く、陽極4への水の供給量が十分なため電極の劣化を抑えることができ、減酸素運転を安定に行えたことがサイクル特性からも分かった。
【0098】
(実施例4)
実施例4は、実施例2の水吸着雰囲気を変更した実験例である。
容器14の容量を10L、水吸着脱離材7として、平均粒子径2mmのB型シリカゲル、および平均粒子径0.3mmのB形シリカゲルを混合したものを用いた。平均粒子径0.13mmのB形シリカゲルの混合分率を0.2となるように調整した。このとき水吸着脱離材7の充填率は約60%であった。陽極の触媒は酸化イリジウム、陰極の触媒はカーボン粒子に担持された白金微粒子を、電解質膜はデュポン社製のナフィオン(商標)を用いた。減酸素装置運転前の容器14内は酸素濃度21%(大気)、減酸素室の温度を5℃であった。吸着材に水分を吸着させる時間を20時間 、発熱部9を用いて吸着材の水分を放出させる時間を2時間とした。吸着材には予め十分加熱し、吸着水分を除去したB型シリカゲル10gを伝熱板6AからFの間(5箇所)に入れた。このとき吸着材の平均厚みは約5mmであった。空気供給排気手段13を作動し、水供給部8に空気を送風し、蒸気の吸着を開始した。保管庫201を温度5℃、湿度90%に保持された冷蔵庫中で17時間保持した。吸着過程終了後、シリカゲルの重量は7g増加していたことから、乾燥シリカゲル重量に対する水分の吸着率は70%であった。その後、発熱部9を作動し、水分の放出を開始した。制御部11と電圧印加手段10を用いて印加電流を2.4Aに設定し、2時間、陽極4における水の電気分解、陰極2における酸素の還元反応を行い、容器14内の酸素濃度を減少させた。なお、容器14には一部リーク箇所を設け、運転中の容器内の圧力が常に大気圧と等しくなるようにした。
【0099】
容器14内に酸素濃度モニターを入れ、容器14内の酸素濃度変化を観察したところ、減酸素装置3運転前に21%を示した酸素濃度が、2時間後には14%に低下しており、式(4)から求めた計算値と一致していることを確認した。水分放出後のシリカゲルの重量は10gであり、吸着した水分はすべて放出したことを確認した。したがって、実施例1における水の蒸気の質量減少幅は吸着材重量の70%と算出できた。容器14内内の酸素濃度減少の間、陽極4、陰極2間のセル電圧は約1.05Vを示し、安定した値を示したことから、吸着材による水分供給がバランスよくおこなわれていることが示唆された。
【0100】
次に20時間水分吸着、2時間水分放出を1サイクルとし、100サイクルによる耐久性試験を実施した。耐久性試験前の単セル電圧と比べて、耐久性試験後におけるセル電圧の低下率は約6%であった。電圧低下率は低く、陽極4への水の供給量が十分なため電極の劣化を抑えることができ、減酸素運転を安定に行えたことがサイクル特性からも分かった。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1…電解質膜、2…陰極、3…陰極集電板、4…陽極、5…陽極集電板極、6…伝熱板、7…水吸着脱離材、8…水供給部、9…発熱部、10…電圧印加手段、11…制御部、12…フィルター、13…気体供給排気手段、14…容器、15…蓋、16…減酸素空間、17…筐体、18…、第1の冷蔵空間、19…第2の冷蔵空間、20…第1の冷凍空間、21…第2の冷凍空間、22…第1の扉、23…第2の扉、24…第3の扉、25…第4の扉、26…冷蔵サイクル用Rエバ、27…冷凍サイクル用Rエバ、28…棚板、29…引き出し式チルド容器、30…ドアポケット、31…引き出し式冷凍スペース、100〜102…減酸素セル、200…保管庫、300…冷蔵庫
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