(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記境界部は、前記スライドレール側を向くとともに、下方に向かうにつれて車幅方向内側に向けて傾斜するスライドレール側傾斜面と、前記固定部側を向くとともに、車両上方に向かうにつれて車幅方向内側に向けて傾斜する固定部側傾斜面と、を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両荷室構造。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態を
図1ないし
図8を用いて説明する。なお、
図4における右側を車両後方とし、左側を車両前方とするとともに、紙面奥側を車幅方向外側とし、手前側を車幅方向内側として説明する。
【0013】
車両10は、
図1及び
図2に示すように、後部に荷室11(車両荷室)が設けられている。荷室11は、車両10の後部開口12からアクセス可能とされている。また、荷室11の車両前方には、シートバックの裏面13Aが鉛直方向に沿って立ち上がる形で後部座席13が配設されている。荷室11の上方には、水平方向に沿って延在する形でトノカバー14が配設されている。なお、トノカバー14は後述するトノカバー係止部23A,23B(
図4参照)に係脱可能に係止されており、荷室11は、そのレイアウトに応じて、トノカバー14を取り外して用いることができる。
【0014】
荷室11は、
図1に示すように、側壁をなす一対のデッキサイドトリム20,20と、床面15Aをなすデッキボード15とを備えている。なお、
図1においては、手前側のデッキサイドトリム20を省略して示すとともに、デッキサイドトリム20の形状を簡略化して示している。デッキボード15は、水平方向に沿って延在する板状をなし、その上面15Aに荷物を載置可能とされている。デッキボード15の下方には、いわゆるラゲージアンダースペースと呼ばれる収納空間が形成されている。なお、本実施形態では、デッキボード15が1の板状部材で構成されるものを例示したが、デッキボードは複数の板状部材に分割して構成されていてもよい。
【0015】
デッキサイドトリム20は、
図1に示すように、鉛直方向及び車両前後方向に沿って延在する板状をなし、その車幅方向内側を向く面が荷室11内に臨む内面20Aとされている。なお、このようなデッキサイドトリム20は、トランクサイドトリム又はラゲージサイドトリムと呼ばれることもある。一対のデッキサイドトリム20,20は、左右対称に構成されており、以下の説明においては、
図1の奥側(車両10の進行方向右側)に位置するデッキサイドトリム20について説明するとともに、手前側(車両10の進行方向左側)に位置するデッキサイドトリムについての説明を省略する。
【0016】
デッキサイドトリム20には、
図3に示すように、その車両前側かつ下側に、ホイールハウスに倣う形で荷室11内に膨出するホイールハウス部21が設けられている。また、デッキサイドトリム20は、その後端部22が後部開口12の開口縁に倣う形とされている。デッキサイドトリム20には、ホイールハウス部21の上方にトノカバー係止部23Aが設けられとともに、後端部22の上部にトノカバー係止部23Bが設けられている。トノカバー係止部23A,23Bには、トノカバー14の被係止部(不図示)が係止され、デッキサイドトリム20の上端部に沿ってトノカバー14を張設可能とされている(
図2参照)。
【0017】
一対のデッキサイドトリム20,20は、ホイールハウス部21,21と、後端部22,22以外の部分を占める一般部24,24が平行状をなして配設されている。そして、デッキサイドトリム20,20は、一般部24,24の間に一対の支持部材50A,50Bをそれぞれ架設可能に設けられている。デッキサイドトリム20において一対の支持部材50A,50Bを架設するための構成については、後に説明する。
【0018】
一対の支持部材50A,50Bは、
図1及び
図2に示すように、デッキサイドトリム20,20の間にそれぞれ架設されて、可撓性を有する面状部材55を張設する構成とされている。一対の支持部材50A,50Bは、デッキサイドトリム20,20の間に架設された状態で、互いに平行状をなし、車幅方向に沿って延びる対称軸を軸として左右対称に構成されている。以下の説明においては、一対の支持部材50A,50Bについて、双方が後述するレール側固定部27に固定されるときには、より車両前方に位置する方を支持部材50Aと呼ぶとともに他方を支持部材50Bと呼び、いずれか一方がレール側固定部27に固定され、かつ他方が後述する下側固定部28に固定されるときには、レール側固定部27に固定される方を支持部材50Aと呼ぶとともに下側固定部28に固定される方を支持部材50Bと呼ぶ。また、一対の支持部材50A,50Bの各部の構成を説明する際には、支持部材50Aについて説明して、支持部材50Bについての説明を省略する。
【0019】
支持部材50Aは、
図6に示すように、棒状をなし、その長手方向を車幅方向に一致させた姿勢で配される。支持部材50Aは、車幅方向外側に伸びる方向に付勢された状態で伸縮可能に設けられている。具体的には、支持部材50Aは、パイプ状をなす棒状部51と、棒状部51の両端に配された端部52,52とを有し、デッキサイドトリム20,20の間に架設された状態で端部52の内部に配されたバネ53が棒状部51とデッキサイドトリム20の間で圧縮されることで、端部52が棒状部51から離れる方向に付勢されるとともに、棒状部51から端部52の端面52Aまでの長さが伸縮可能とされている(
図8参照)。このような端部52における伸縮機構は、支持部材50Aの長手方向における両端に設けられており、後述する支持部材50Aの端部52の配置変更と連動して、支持部材50Aがスムーズに伸縮する構成となっている。
【0020】
支持部材50Aの端部52は、
図6に示すように、概ね円柱状の外形をなし、円形をなす端面52Aが鉛直方向及び車両前後方向に沿って延在する姿勢で配されている。つまり、支持部材50Aは、その軸線周りに回転した複数の姿勢で、デッキサイドトリム20に対して固定可能な構成となっている。一対の支持部材50A,50Bは、可撓性を有する面状部材55を介して互いに接続されており、面状部材55が届く範囲内において、互いに独立して移動したり、その姿勢を変更したりすることが可能となっている。
【0021】
面状部材55は、
図6に示すように、柔軟性を有する紐部材を網目状に組んで構成された平面視長方形のネットからなる。面状部材55は、その長辺側端部55A,55Aがそれぞれ支持部材50A,50B(棒状部51,51)に対して係止されて、一対の支持部材50A,50Bの間に介在する形で配されている。面状部材55の短辺側端部55B,55Bには、一対の支持部材50A,50Bの間に架設された伸縮性を有する紐部材が組み付けられており、面状部材55の保形性が確保されている。面状部材55の幅寸法は、後述する前側固定部40Aと後側固定部26の距離、及び、後側固定部26と下側固定部28Cの距離より長いものとされている。なお、一対の支持部材50A,50Bの配置を変更して、面状部材55の配置構成を変更する態様については、後に説明する。
【0022】
デッキサイドトリム20は、
図3及び
図4に示すように、少なくとも一方の支持部材50Aの端部52を車両前後方向に沿って案内するスライドレール30と、スライドレール30と連通する形でそれぞれ設けられた複数の前側固定部40と1つの後側固定部26と、を備えている。また、デッキサイドトリム20は、少なくとも前側固定部40及び後側固定部26を含み、スライドレール30に連通する形でそれぞれ設けられるとともに、支持部材50Aの端部52をそれぞれ固定可能な複数のレール側固定部27と、レール側固定部27の下方に形成され、支持部材50Bの端部52を固定可能な下側固定部28と、を備えている。
【0023】
スライドレール30、レール側固定部27、及び下側固定部28の各部は、デッキサイドトリム20の内面20Aから凹む形をなし、デッキサイドトリム20と一体的に設けられている。このような構成によれば、これらの各部をデッキサイドトリム20とともに成形することができ、例えば、デッキサイドトリムとは別部品とされるスライドレール等を、デッキサイドトリムの成形工程とは別の取付工程によってデッキサイドトリムに対して取り付ける場合に比べて、部品点数の削減と、工数の低減に寄与することができる。
【0024】
スライドレール30は、
図5及び
図8に示すように、車幅方向外側に凹むとともに、車両前後方向に沿って延びる溝状に設けられている。詳細には、スライドレール30は、内面20Aより奥方(車幅方向外側)に後退する奥面31と、奥面31の上端から内面20Aに向けて立ち上がる上側側面32と、奥面31の下端から立ち上がる下側側面33と、上側側面32と下側側面33との間において内面20Aに開口する開口部35と、を有して構成されている。言い換えれば、スライドレール30は、内面20Aと上側側面32と奥面31とが段差状に構成されるとともに、内面20Aと下側側面33と奥面31とが段差状に構成されている。そして、スライドレール30の幅寸法(上側側面32と下側側面33の間の内径)は、支持部材50Aの端部52がクリアランスを有して嵌る程度の大きさとされている。
【0025】
スライドレール30は、
図5に示すように、レール本体部36と、レール本体部36を車両後方に向かうにつれて下降する形で延長した延長部37とを有している。詳細には、スライドレール30は、レール本体部36が略水平方向に延びる一方、延長部37がレール本体部36の後端に連通するとともに、レール本体部36の後端から緩やかに湾曲して下方に延びる構成とされている。延長部37は、レール本体部36の後端と後側固定部26の間において、支持部材50Aの端部52を案内可能な構成とされている。
【0026】
スライドレール30は、
図5に示すように、その後端(延長部37の延長先端37A)が後側固定部26側に開放する一方、その前端が閉塞された構成とされている。具体的には、スライドレール30は、その前端に、奥面31から立ち上がるとともに、後述する前側固定部40Aの傾斜面41と対向状をなして前側固定部40A内に繋がる前側側面34を有して構成されている。前側側面34は、支持部材50Aの端部52をスライドレール30と前側固定部40Aとの間で案内可能な構成とされている。このような構成により、後部開口12から離れて位置する前側固定部40Aにおいても、支持部材50Aの端部52を前側固定部40Aに引き込み易く、また、引き抜き易いものとされている。
【0027】
スライドレール30は、
図5及び
図8に示すように、奥面31から突出するとともに、当該スライドレール30の延設方向に沿って延びるレール側突条部38(レール側ビード部)を有している。レール側突条部38は、その車幅方向内側の面が断面視円弧状をなし、支持部材50Aの端面52Aに当接する当接面が線状に構成されている。このような構成により、仮に支持部材50Aの端面52Aに当接する当接面が面状をなす場合に比べて、スライドレール30と端部52との当接面積を小さくして、両者の間の摩擦抵抗を低減することができる。
【0028】
このようなスライドレール30は、一対のデッキサイドトリム20,20の双方に設けられている。そして、一対のスライドレール30,30は、開口部35,35から支持部材50Aの両側の端部52,52がそれぞれ嵌合する構成とされている。また、スライドレール30は、荷室11の上部、つまり、車両10の後部開口12の後側に立つ平均的な背丈の使用者の肩の位置よりやや低い位置に設定されており、使用者が嵌合した支持部材50Aを前後に移動する際に、端部52を上側側面32に摺接し易い構成となっている。そして、スライドレール30には、下側側面33を一部切り欠く形で各前側固定部40にそれぞれ繋がる分岐口33Aが形成されている。
【0029】
前側固定部40は、
図5及び
図7に示すように、レール本体部36の下方にレール本体部36と連通する形で設けられるとともに、支持部材50Aの端部52を固定可能な構成とされている。前側固定部40は、スライドレール30(レール本体部36)の延設方向に沿って並列して、複数(本実施形態では4つ)が配設されている。複数の前側固定部40は、スライドレール30の前端から後端に亘って、均等な間隔で配置されている。これらを互いに区別するときは、車両前方から前側固定部40A,40B,40C,40Dと呼ぶ。車幅方向両側に配された一対の前側固定部40A,40Aと、前側固定部40B,40Bと、前側固定部40C,40Cと、前側固定部40D,40Dとは、支持部材50Aをそれぞれ固定可能な構成とされている。つまり、デッキサイドトリム20は、4対の前側固定部40,40のうちいずれか1対を適宜選択して、支持部材50Aを固定することが可能な構成とされている。
【0030】
前側固定部40は、
図5に示すように、スライドレール30に繋がるとともに、車両前後方向に対して傾斜する傾斜面41と、傾斜面41の下端に連なるとともに、支持部材50Aの端部52が載置される載置面42と、傾斜面41と対向する位置に配設されるとともに、載置面42に載置された支持部材50Aの端部52が上方に抜けることを規制する抜け止め部47と、を有している。また、前側固定部40は、スライドレール30との境界部48が、スライドレール30の奥面31から突出するとともに、スライドレール30に沿って延びる形をなしている。
【0031】
傾斜面41は、
図5及び
図7に示すように、その上端が分岐口33Aの車両後端位置において下側側面33に連なるとともに、車両前方に向かうにつれて下降傾斜する形で延設されている。このような構成によれば、後述する嵌合部45の位置に対して、傾斜面41がスライドレール30に対して繋がる位置(分岐口33Aの位置)を車両後方とすることができ、後部開口12から離れた位置にある前側固定部40に対しても、後部開口12側から支持部材50Aを固定し易い構成を実現することができる。傾斜面41の傾斜角は、車両前後方向、つまり、スライドレール30(下側側面33)の延設方向に対して45°程度とされている。
【0032】
載置面42は、
図5及び
図8に示すように、水平方向に沿って延在する面とされ、傾斜面41の下端から車両前方に向けて延設されている。載置面42の延設寸法は、支持部材50Aの端部52の外径と略同じとされる。前側固定部40には、載置面42の前端から車両上方に立ち上がる立壁面43が形成されるとともに、載置面42の車幅方向外側から車両上方に立ち上がる固定部側奥面44が形成されており、載置面42の上方には、端部52が嵌合する嵌合部45が構成されている。固定部側奥面44は、スライドレール30の奥面31と同一平面上に形成されている。また、載置面42には、傾斜面41側の端部に、突部46が設けられている。
【0033】
突部46は、
図3および
図5に示すように、載置面42から突出する形をなす。具体的には、突部46は、載置面42と傾斜面41とが鈍角をなして接続する角部付近に設けられ、固定部側奥面44から車幅方向内側に向けて延設されている。突部46は、突条部(ビード部)とも言える。突部46は、その載置面42側の面が、載置面42に載置された支持部材50Aの端部52の外周面に当接して、支持部材50Aの端部52が傾斜面41側に移動することを規制する第2の抜け止め部として機能する。
【0034】
抜け止め部47は、
図5及び
図8に示すように、載置面42の上方において、これと対向状をなす。言い換えれば、抜け止め部47は、平面視J字状に区画された嵌合部45において、その天井面を構成している。抜け止め部47は、立壁面43の上端から載置面42に載置された支持部材50Aの端部52の中心軸上方位置まで延設されている。なお、抜け止め部47は、載置面42に載置された支持部材50Aの端部52の少なくとも一部を上方から覆う形とされていれば、一定の抜け止め性能を発揮することができ、抜け止め部47の延びる位置は端部52の中心軸上方位置までに限られない。しかしながら、抜け止め部47が少なくとも中心軸上方位置まで延びる構成とすれば、支持部材50Aの端部52が車両上方に移動した際に、抜け止め部47が端部52の前面(車両前方に向かうにつれて下降する面)ではなく、上面に当接するものとすることができ、端部52が上方に抜けることを好適に抑制することができる。
【0035】
抜け止め部47は、
図5に示すように、傾斜面41との間に支持部材50Aの端部52を挿通可能な隙間を有する形で配設されている。前側固定部40(嵌合部45)とスライドレール30との間を移動する支持部材50Aの端部52の移動経路において、抜け止め部47と傾斜面41との間の部分は、その幅が狭い幅狭部(ボトルネック部)とされている。前側固定部40B,40C,40Dにおいては、抜け止め部47の後端から車両上方に向けて延設されるとともに、分岐口33Aの車両前端位置において下側側面33に連なる鉛直面49が形成されている。このような構成により、前側固定部40B,40C,40Dは、支持部材50Aの端部52をスライドレール30側から引き込み易い一方、引き込まれた端部52が不測にスライドレール30側に抜け難くなっている。
【0036】
境界部48は、
図5に示すように、その上端がスライドレール30の下側側面33に、その下端が抜け止め部47にそれぞれ連なるとともに、分岐口33Aの車両後端から前端に亘って延設されている。境界部48は、
図7に示すように、スライドレール30側を向くとともに、下方に向かうにつれて車幅方向内側に向けて傾斜するスライドレール側傾斜面48Aと、前側固定部40側を向くとともに、車両上方に向かうにつれて車幅方向内側に向けて傾斜する固定部側傾斜面48Bとを有している。そして、境界部48は、スライドレール側傾斜面48Aと固定部側傾斜面48Bとが同じ傾斜角を有して、車幅方向内側に突出する形で構成されている。スライドレール側傾斜面48A(固定部側傾斜面48B)は、その傾斜角に応じて、スライドレール30から前側固定部40へ(前側固定部からスライドレール30へ)支持部材50Aの端部52を移動する際に必要な荷重を適宜設定可能な構成とされている。
【0037】
後側固定部26は、
図5に示すように、前側固定部40より下方に位置して、延長部37の延長先端37Aに連通する形で設けられるとともに、支持部材50Aの端部52を固定可能な構成とされている。具体的には、後側固定部26は、概ね支持部材50Aの端部52の外形に倣うようにして車幅方向外側に凹む形をなし、その内面にスライドレール30(延長部37)の下側側面33及び上側側面32がストレート状に繋がる構成とされている。さらに、後側固定部26は、スライドレール30との境界部(後側固定部側境界部26A)が、奥面31から突出するとともに、延長部37の延長先端37Aを塞ぐようにして延びる形をなしている。後側固定部側境界部26Aの突出形状は、境界部48と同様とされており、その説明を省略する。
【0038】
ところで、デッキサイドトリム20の後端部22は、
図4に示すように、上方に向かうにつれてやや車両前方に向かう形とされている。このため、後側固定部26が、前側固定部40より下方の位置に設定されることで、仮に上下方向について後側固定部26が前側固定部40と同じ位置とされる場合に比べて、後側固定部26をより車両後方の位置に設定することが可能となっている。また、デッキサイドトリム20の後端部22には、上部にトノカバー係止部23Bが設けられており、後側固定部26は、トノカバー係止部23Bの下方に位置して配設されている。
【0039】
レール側固定部27は、以上説明したように、4つの前側固定部40A〜40Dと、1つの後側固定部26とを含んで構成されている。一方、下側固定部28は、ホイールハウス部21の後方においてデッキサイドトリム20の下端部に設けられている。
【0040】
下側固定部28は、
図4に示すように、複数(本実施形態では3つ)が配設されている。下側固定部28は、上下2段に配置され、下段に配されるものが車両前後方向に2つ並んで配置される構成となっている。これらを互いに区別するときは、上段に位置するものを下側固定部28Aと呼ぶとともに、下段に位置するものを車両前方から下側固定部28B,28Cと呼ぶ。下側固定部28Aは、平面視円形状をなし、単独で、支持部材50Bの端部52の外形に倣うようにして車幅方向外側に凹む形で設けられている。一方、下側固定部28B,28Cは、それぞれ支持部材50Bの端部52の外形に倣うようにして車幅方向外側に凹む形とされるとともに、その間が当該凹み形状より浅い溝状の下側スライドレールで接続されている。
【0041】
一対の支持部材50A,50Bは、支持部材50Aが複数のレール側固定部27のうち一のレール側固定部27に固定されるとともに、支持部材50Bが複数のレール側固定部27のうち他のレール側固定部27に固定される横型配置と、支持部材50Aが複数のレール側固定部27のうち一のレール側固定部27に固定されるとともに、支持部材50Bが下側固定部28に固定される縦型配置と、に変更可能な構成とされている。
【0042】
一対の支持部材50A,50Bの配置を変更して、荷室11のレイアウトを変更する態様について説明する。まず、一例として、支持部材50Aを前側固定部40Bに固定する手順、及び、支持部材50Aを前側固定部40Bからスライドレール30へ移動して、その固定を解除する手順ついて説明する。支持部材50Aの端部52を前側固定部40B以外のレール側固定部27に固定する態様は、端部52を前側固定部40Bに固定する態様と同様とされており、その説明を省略する。
【0043】
支持部材50Aを前側固定部40Bに固定する場合には、まず、支持部材50Aの端部52がスライドレール30に嵌合した状態とする。そして、支持部材50Aをスライドレール30内において、前側固定部40Bに向けてスライドする。スライドレール30における前側固定部40Bに連通する分岐口33Aの位置で、支持部材50Aの移動方向を車両前方かつ下方に方向転換して、端部52を傾斜面41に沿って前側固定部40B内に引き込む。前側固定部40Bには、境界部48が設けられており、端部52を引き込む過程で、漸次高くなるスライドレール側傾斜面48Aの高さに応じて支持部材50Aの長さ寸法が短くなることで、端部52が境界部48を乗り越える。さらに、端部52を傾斜面41に沿って移動させていくと、漸次低くなる固定部側傾斜面48Bの高さに応じて支持部材50Aの長さ寸法が長くなり、最終的には端部52が載置面42上に至り、これに載置された状態となる。この状態で、支持部材50Aには、両側の端部52,52が両側の固定部側奥面44,44に対して突っ張るようなテンションが掛かっている。また、支持部材50Aは、車両後方かつ上方(傾斜面41の延設方向)を除く、車両前後方向、車両上下方向及び車幅方向に位置決めされた状態となっている。以上により、支持部材50Aの前側固定部40Bへの固定が完了する。
【0044】
支持部材50Aを前側固定部40Bからスライドレール30へ移動して、その固定を解除する場合には、支持部材50Aを車両後方かつ上方に移動して、傾斜面41に沿ってスライドレール30側に引き抜く。上述の引き込み時と同様に、端部52を引き抜く過程で、漸次高くなる固定部側傾斜面48Bの高さに応じて支持部材50Aの長さ寸法が短くなることで、端部52が境界部48を乗り越える。さらに、端部52を傾斜面41に沿って移動させていくと、漸次低くなるスライドレール側傾斜面48Aの高さに応じて支持部材50Aの長さ寸法が長くなり、最終的には端部52が分岐口33Aを挿通して、スライドレール30内に至り、端部52の前側固定部40Bへの固定が解除される。
【0045】
このような態様で、支持部材50Aのレール側固定部27への固定及び固定解除を行うことで、例えば、支持部材50Aを一のレール側固定部27から他のレール側固定部27へ移動する際に、支持部材50Aをスライドレール30又はレール側固定部27から外す必要がない。このため、例えば、支持部材50Aの端部52を押さえて、その長さ寸法を端部52がデッキサイドトリム20の内面20Aより内方位置となる程度に短くしたうえで、支持部材50Aを固定したり、その固定解除を行ったりするという煩雑な作業をする必要がない。また、支持部材50Aを前側固定部40に固定する際には、端部52がスライドレール30や傾斜面41に案内さるから、端部52とレール側固定部27(嵌合部45)との高精度の位置合わせが必要とされない。
【0046】
続いて、一対の支持部材50A,50Bの横型配置及び縦型配置における荷室11のレイアウトについて順次に説明する。
まず、
図1に示すように、一対の支持部材50A,50Bの横型配置において、支持部材50Aを前側固定部40Aに固定するとともに、支持部材50Bを前側固定部40Dに固定する荷室11のレイアウトについて説明する。支持部材50Aと支持部材50Bを、それぞれ上述の手順に沿って前側固定部40Aと前側固定部40Dとに固定する。すると、面状部材55が自重により撓んだ状態(ハンモック状態)となる。この状態では、デッキボード15の上面15Aと、面状部材55の上面とで、荷室11を下部と上部の2つの収容空間に分割することができ、デッドスペースとなりがちな荷室11の上部空間を有効に利用することができる。
【0047】
また、一対の支持部材50A,50Bの横型配置において、支持部材50Bを後側固定部26に固定した荷室11のレイアウトでは、
図4に示すように、後側固定部26がトノカバー係止部23Bの下方に配置されているから、トノカバー14の後端と支持部材50Bとの間に、例えば、使用者の手や小型の荷物が入る程度の隙間が形成される。このため、トノカバー14を張設した状態においても、ハンモック状態の面状部材55の上面に荷物を収容したり、これを取り出したりし易い。
【0048】
一対の支持部材50A,50Bの横型配置においては、支持部材50Aと支持部材50Bがそれぞれ固定される位置を適宜変更することで、その面状部材55の張設態様(車両前後方向についての寸法、撓み具合等)や、荷室11の分割態様を変更することができる。本実施形態では、5つのレール側固定部27が設定されるから、そのうち2つのレール側固定部27を適宜選択することで、多様な荷室11のレイアウトを実現することができる。
【0049】
次に、
図2に示すように、一対の支持部材50A,50Bの縦型配置において、支持部材50Aを後側固定部26に固定するとともに、支持部材50Bを下側固定部28Cに固定する荷室11のレイアウトについて説明する。支持部材50Aを、上述の手順に沿って後側固定部26に固定するとともに、支持部材50Bを下側固定部28Cに固定する。支持部材50Bを下側固定部28Cに固定する前に、支持部材50Bが下側固定部28Bに固定されていた場合には、支持部材50Bを下側スライドレールに沿って移動して、下側固定部28Cに固定する。また、支持部材50Bが下側固定部28Bに固定されていなかった場合には、支持部材50Bのいずれか一方の端部52を一対の下側固定部28C,28Cのいずれか一方に嵌合させ、続いて、支持部材50Bを押さえてその長さ寸法を短くしつつ、他方の端部52を他方の下側固定部28Cに嵌合させて、下側固定部28Cに固定する。すると、面状部材55が支持部材50Aから垂れ下がるとともに、上下方向に沿って延在した状態となる。この状態では、面状部材55で荷室11の後部開口12の下側部分を閉塞することができ、デッキボード15の上面15Aに載置した荷物等が、後部開口12から荷室11外に落ちる事態の発生を抑制することができる。
【0050】
また、一対の支持部材50A,50Bの縦型配置において、支持部材50Bを下側固定部28Bに固定した荷室11のレイアウトでは、面状部材55を仕切りとして用いることで、荷室11を車両前部と車両後部の2つの収容空間に分割することができる。さらに、一対の支持部材50A,50Bの縦型配置では、例えば、デッキボード15の下方空間に大型の収容物(例えば、テンパタイヤより大型のグランドタイヤ)が収容され、下段の下側固定部28B,28Cが使用できないような場合であっても、支持部材50Bを上段の下側固定部28Aに固定することが可能となっている。
【0051】
一対の支持部材50A,50Bの縦型配置においては、5つのレール側固定部27のうちいずれか1つと、3つの下側固定部28のうちいずれか1つを適宜選択することで、多様な荷室11のレイアウトを実現することができる。なお、面状部材55の幅寸法によっては、支持部材50Aと支持部材50Bを、例えば、最も離れて配置される前側固定部40Aと下側固定部28Cとにそれぞれ固定することができない構成であってもかまわない。
【0052】
続いて、本実施形態の作用・効果について説明する。
本実施形態によれば、複数の前側固定部40がスライドレール30と連通して形成されているから、スライドレール30を介して支持部材50Aの固定位置を変更して、荷室11のレイアウトを変更することが容易である。そして、前側固定部40が傾斜面41を有するから、支持部材50Aの端部52を前側固定部40とスライドレール30との間で移動し易く、かつ、前側固定部40が抜け止め部47を有するから、車両走行時の振動等により支持部材50Aの端部52が上方に外れる事態を抑制することができる。このため、荷室11のレイアウト変更時における支持部材50Aの移動容易性と、車両走行時等における支持部材50Aの固定の確実性を兼ね備えた車両荷室構造を提供することができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、載置面42に突部46が設けられているから、載置面42に載置された支持部材50Aの端部52が傾斜面41側に不測に移動する事態を抑制することができ、支持部材50Aをより確実に固定することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、前側固定部40には境界部48が設けられているから、スライドレール30内を摺動する支持部材50Aの端部52が意図せずスライドレール30から前側固定部40に移動したり、前側固定部40に固定された支持部材50Aの端部52が不測にスライドレール30側に外れたりする事態を抑制することができる。そのうえで、境界部48がスライドレール側傾斜面48Aと固定部側傾斜面48Bとを有するから、支持部材50Aの端部52をスライドレール30と前側固定部40との間で移動する際には、その移動を容易に行うことができる。
【0055】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0056】
(1)上記実施形態では、スライドレールが延長部を有する構成を例示したが、これに限られない。例えば、スライドレールはレール本体部のみを有して構成されていてもよい。また、上記実施形態では、デッキサイドトリムが後側固定部と、下側固定部を有する構成を例示したが、後側固定部又は/及び下側固定部を有していない構成であっても本願発明を適用可能である。
【0057】
(2)上記実施形態では、前側固定部の傾斜面が車両前方に向かうにつれて下降傾斜する形で延設されるものを例示したが、これに限られない。例えば、前側固定部の傾斜面は、車両後方に向かうにつれて下降傾斜する形で延設されていてもよい。
【0058】
(3)上記実施形態では、載置面が水平方向に沿って延在する構成を例示したが、これに限られない。例えば、載置面は、支持部材の端部の下面の形状に倣う形で湾曲するものであってもよい。
【0059】
(4)上記実施形態では、抜け止め部が載置面と対向状をなし、嵌合部の天井面を構成するものを例示したが、これに限られない。例えば、抜け止め部は、固定部側奥面に浮島状に突設された突起部であってもよい。
【0060】
(5)上記実施形態では、載置面に設けられた突部が車幅方向に沿って延びる構成を例示したが、これに限られない。例えば、突部は、デッキサイドトリムの内面より摩擦係数の高い突起状の別部材を載置面に取り付ける構成であってもよい。
【0061】
(6)上記実施形態では、境界部のスライドレール側傾斜面と、固定部側傾斜面の傾斜角が同様とされる構成を例示したが、スライドレール側傾斜面と固定部側傾斜面の傾斜角はそれぞれ適宜設定可能である。また、上記実施形態では、固定部側奥面とスライドレールの奥面が同一平面上に配されるとともに、境界部のスライドレール側傾斜面と、固定部側傾斜面の車両上下方向における寸法が同じものを例示したが、固定部側奥面をスライドレールの奥面より後退した位置に配するとともに、スライドレール側傾斜面より固定部側傾斜面の寸法が長いものとしてもよい。
【0062】
(7)上記実施形態以外にも、前側固定部の形状、配置および、配設数は適宜設定可能である。