(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなトグルリンク機構は、平常時にドアに加わる衝撃などによって不用意に係止状態が解除されるのを防止するためには、トグルリンク機構の安定度を高める必要があり、そのためには、係止状態でのリンクの角度を大きく設定したり、リンクを係止状態に保つばねを強く設定したりする必要がある。ところが、上記のようにしてトグルリンク機構の安定度を高めると、係止状態を解除するためのソレノイドが発生する駆動力を大きくする必要があり、消費電流が増大するという問題点を有していた。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、トグルリンク機構の安定度を高めつつ、ソレノイドの消費電流を小さく抑え得るようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、
防火扉に取り付けられたフックを係止する防火扉の係止装置であって、
上記フックを係止するラッチ部材と、
上記ラッチ部材をフックの係止状態にロックするロック位置と係止状態を解除するアンロック位置とに移動可能なロック部材と、
互いに回動可能に連結された第1および第2のリンクを有し、上記第1および第2のリンクがなす角度に応じて、上記ロック部材を上記ロック位置またはアンロック位置に移動させるリンク組と、
上記第1および第2のリンクがなす角度に応じて、上記リンク組における互いに異なる作用点に、順次、駆動力を作用させることにより、上記第1および第2のリンクがなす角度を変化させて、上記ロック部材をロック位置からアンロック位置に移動させる解除部材と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、トグルリンク機構の安定度を高めつつ、ソレノイドの消費電流を小さく抑えることが容易にできる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明では、便宜上、上下左右、奥、手前、時計回り、および反時計回り方向については、特に断りがなければ、
図1、
図2に示す方向を示す。
【0010】
(防火扉の係止装置の概略構造)
本実施形態の防火扉の係止装置は、
図1に示すように、ラッチ機構部100と、その上方に配置されたソレノイド設置部300とを有している。ラッチ機構部100は、ラッチ板130によって、フック600を係止するようになっている。上記フック600は、取付プレート601にフックピン602が取り付けられて成り、取付プレート601に形成された取付孔603に挿通されるねじによって防火扉に取り付けられる。ソレノイド設置部300には、上記ラッチ板130によるフック600の係止状態を解除するソレノイド230が設けられている。なお、通常は、上記ソレノイド設置部300を覆うカバーが設けられるが、ここでは説明の簡素化のために省略している。
【0011】
(防火扉の係止装置の詳細な構造)
ラッチ機構部100、およびソレノイド設置部300は、より詳しくは、
図2に示すように構成されている。
【0012】
ラッチ機構部100は、ケース110内に、ラッチ板130(ラッチ部材)、ロックレバー140(ロック部材)、ロックレバー基部支持ヨーク150、リンクレバー160、連結リンク170、および解除駆動レバー180(解除部材)等が収容され、カバープレート121により覆われて構成されている。
【0013】
ケース110は、底板111と側壁112とから形成されている。底板111、およびカバープレート121には、フックピン602を案内する案内溝111a・121aが形成されている。底板111には、また、ラッチ板軸113、リンクレバー軸114、解除駆動レバー軸115、およびばね受けピン116が立設されている。底板111には、また、カバープレート121のねじ孔121bに螺合するカバープレート固定ねじ511が挿通される孔111b、および後述するロックレバー基部ピン521をカバープレート121の長孔121cと共に摺動可能に案内する長孔111cが形成されている。
【0014】
ラッチ板130は、フックピン602に当接して係止するフック受け溝132を有し、回転軸孔131に上記ラッチ板軸113が挿通されて回動自在に設けられるとともに、一端部がばね受けピン116に当接するねじりコイルばね135によって時計回りに付勢されている。このラッチ板130は、係合部133がロックレバー140の係合部142と係合することによって、フック600を係止状態に保持するようになっている。
【0015】
ロックレバー140とロックレバー基部支持ヨーク150とは、基部ピン孔141・151に挿通されるロックレバー基部ピン521によって相対的に回動自在に設けられると共に、上記ロックレバー基部ピン521が底板111およびカバープレート121の案内溝111a・121aに案内されて、手前−奥方向に移動可能になっている。ロックレバー基部支持ヨーク150は、ケース110の側壁112に形成された座繰り孔111d、およびロックレバー基部支持ヨーク150の調整ねじ挿通孔152、および圧縮コイルばね154を通してカラー付ナット155に螺合される解除力調整ねじ153によって、上記ロックレバー基部ピン521の移動に要する力、すなわちフック600の係止状態を手動で解除する力を調節できるようになっている。
【0016】
ロックレバー140の基部ピン孔141と反対側の端部には、先端部ピン孔143が形成され、リンクレバー160、および連結リンク170(第1および第2のリンク、リンク組)が連結されている。より詳しくは、リンクレバー160は、一端側のピン孔161が、ケース110に立設されたリンクレバー軸114(固定軸)に回動自在に設けられている。リンクレバー160の他端側と、ロックレバー140の先端部側とは、これらを上下から挟む1対の連結リンク170と、これらに形成された先端部ピン孔143、ピン孔171・172・162、およびリンクピン522・523(ロック部材連結軸、リンク連結軸)によって連結されて、リンク機構が構成されている。また、リンクレバー160は、ねじりコイルばね163によって反時計回りに付勢されている。上記リンク機構によって、
図4(b)に示すようにリンクレバー160と連結リンク170とがほぼ直線状に並んで配置されているときに、ラッチ板130とロックレバー140の係合部133・142が係合してフックピン602の係止状態が保たれる一方、
図3(b)に示すようにリンクレバー160と連結リンク170とがくの字状に配置されているときに上記係止状態が解除されるようになっている。
【0017】
上記リンクレバー160と連結リンク170の配置状態の遷移は、ケース110に立設された解除駆動レバー軸115が回転軸孔181に挿通されて回動自在に設けられた解除駆動レバー180によって行われるようになっている。より詳しくは、解除駆動レバー180の被駆動立ち上がり部182が、後に詳述するようにソレノイド230により駆動されて反時計回りに付勢されると、まず、解除駆動レバー180の駆動U字溝183がリンクピン523を
図4(b)における左方に移動させるように駆動し、その後、解除駆動レバー180の駆動垂下部184がロックレバー140の先端部または連結リンク170のロックレバー140側端部を奥方(同図における上方)に移動させるように、駆動するようになっている。
【0018】
カバープレート121上には、解除力セットスライドプレート190が、ガイド長孔191を通してカバープレート121に螺合される段付ガイドねじ531により左右方向に摺動可能に設けられている。この解除力セットスライドプレート190は、ばね受け切片192と、カバープレート121に設けられたばね受けピン121fとの間に掛け渡された引張コイルばね541によって右方向に付勢され、カバープレート121のセットピン挿通窓121dを介して上方に延びるラッチ板130のセットピン134がセットピン受け孔195の内周に当接して左方向に移動するようになっている。また、ばね受け切片192には、後述する解除スライドプレート210のばね受け切片213との間に引張コイルばね542が掛け渡され、解除スライドプレート210を左方に付勢するようになっている。
【0019】
カバープレート121上には、また、マイクロスイッチ561(検出部)が取り付けられ、解除力セットスライドプレート190のマイクロスイッチ駆動切片194によってスイッチレバー561aが押圧されるようになっている。
【0020】
解除力セットスライドプレート190の上方には、プランジャ231を有するソレノイド230が設けられている。ソレノイド230の取付方法は特に限定されず、例えばケース110の奥側の側壁112をソレノイド設置部300にまで立ち上げて、これに取り付けてもよいし、カバープレート121上に、スペーサ等を介して、解除力セットスライドプレート190が配置される隙間を空けて取り付けるなどしてもよい。上記ソレノイド230の手前側の側方には、解除スライドプレート210が、スライドプレート部211に形成されたガイド長孔212を通してソレノイド230の側面に螺合される段付ガイドねじ551により、左右方向に摺動可能に設けられている。解除スライドプレート210の一端部には、ソレノイド当接部214が設けられ、上記引張コイルばね542の付勢力によってソレノイド230のプランジャ231に押しつけられるようになっている。解除スライドプレート210の下方側には、解除駆動部215が形成され、ソレノイド230が作動したときに、カバープレート121の解除駆動レバー挿通窓121e、および解除力セットスライドプレート190の解除レバー逃げ部196を介して上方に延びる解除駆動レバー180の被駆動立ち上がり部182を左方に駆動し得るようになっている。
【0021】
ソレノイド230は、種々のタイプのものを用いることができ、通電によって発生する磁界によってプランジャが引き込まれるタイプのものも適用可能であるが、例えばキープソレノイドと呼ばれるタイプのソレノイドが好適に用いられる。この種のソレノイドは、プランジャと一体的に移動する吸着部が、プランジャが突出した位置にあるときにマグネットに密着した状態となり、コイルへの通電により上記マグネットと逆の磁界を発生させて、別途設けられるばねの付勢力により、プランジャが押し込まれるようになっている。具体的なソレノイド230の諸元としては、例えば、評定規格でDC18〜32V、定格で24V、コイルの抵抗が700Ω、消費電流が34mAのものなどが用いられる。
【0022】
(防火扉の係止装置の動作−解除状態から係止状態)
防火扉の係止装置が解除状態のときには、
図3(a)(b)に示すように、ラッチ板130はねじりコイルばね135の付勢力によって時計回りに回動した位置にある。このとき、リンクレバー160と連結リンク170とは、互いになす角度が小さくなった、くの字型になっている。また、解除力セットスライドプレート190は、引張コイルばね541の付勢力によって、右方位置に位置している。
【0023】
上記のような状態で、同図に矢印Aで示すようにフック600のフックピン602が案内溝111a・121aに向けて進入してくると、ラッチ板130は、フック受け溝132の一方側がフックピン602によって押しつけられ、反時計回りに回動する。フックピン602が十分に進入すると、
図4(a)(b)に示すように、ロックレバー140の係合部142がラッチ板130の係合部133に係合し、ラッチ板130の時計回り(解除方向)の回動が規制されてフック600が係止される係止状態となる。
【0024】
このとき、ロックレバー140の先端部(先端部ピン孔143側)は、手前側(
図4(b)における下方側)に移動し、リンクレバー160と連結リンク170とは、ほぼ直線状に並んで配置される状態になる。
【0025】
また、解除力セットスライドプレート190は、ラッチ板130のセットピン134の回転移動に伴って、セットピン受け孔195の内周縁が押され、引張コイルばね541の付勢力に抗して左方に移動する。そこで、解除力セットスライドプレート190と解除スライドプレート210のばね受け切片193・213に掛け渡された引張コイルばね542の付勢力が増大し、この増大した付勢力によって解除スライドプレート210のソレノイド当接部214がソレノイド230のプランジャ231に押しつけられる。
【0026】
また、このとき、解除力セットスライドプレート190のマイクロスイッチ駆動切片194によって、マイクロスイッチ561のスイッチレバー561aが押圧される。
【0027】
(防火扉の係止装置の動作−係止状態から解除状態)
次に、ソレノイド230が通電されて作動すると、プランジャ231が引き込まれ、解除スライドプレート210が左方に移動する。より詳しくは、解除スライドプレート210は、引張コイルばね542によって左方に付勢されているので、ソレノイド230への通電により、プランジャ231を突出位置に保持するマグネットの磁界が打ち消されることによって、解除スライドプレート210が左方に移動する。具体的には、例えば無通電時のマグネットの磁界によるプランジャ231の突出位置への吸着力が1.7kgf、引張コイルばね542のセット時(6mm伸張状態)の付勢力が1kgfとすると、ソレノイド230は、差し引き700gfの付勢力で解除スライドプレート210を係止していることになる。そして、例えば24Vの電圧がソレノイド230に通電されてマグネットの吸着力が完全に相殺されたとすると、解除スライドプレート210は引張コイルばね542の1kgの付勢力で左方に移動させられる。ここで、例えば通電電圧が14Vのときにマグネットの残留磁気による吸着力が400gf、18Vのときにはさらにそれよりも小さいとすると、これらの電圧でも余裕を持ってプランジャーを解放できることになる。なお、この種のソレノイド230では、マグネットに密着している吸着部が通電によって一旦マグネットから離れると、吸着力が急激に低下するので引張コイルばね542の付勢力が支配的となる。
【0028】
解除スライドプレート210が左方に移動すると、解除スライドプレート210の解除駆動部215は解除駆動レバー180の被駆動立ち上がり部182を左方に移動させる。被駆動立ち上がり部182が左方に移動するのに伴って、解除駆動レバー180の駆動U字溝183はリンクピン523を作用点として左方に押しつける。このとき、前記のようにリンクレバー160と連結リンク170とはほぼ直線状に並んで配置されているので、小さな力でリンクピン523を左方、リンクピン522を奥方向に移動させることができる。やがて、リンクレバー160と連結リンク170とのなす角度がある程度小さくなると、今度は解除駆動レバー180の駆動垂下部184がロックレバー140の先端部または連結リンク170のロックレバー140側端部を作用点として、奥方(
図4(b)における上方)に移動させるように駆動する。すなわち、リンクレバー160と連結リンク170とが屈曲した状態で、その屈曲を助長する力が作用するので、やはり、小さな力で、リンクピン523を左方、リンクピン522を奥方向に移動させることができる。これにより、ラッチ板130とロックレバー140との係合部133・142の係合が解除され、フック600の係止状態が解除され、防火扉が閉塞され得る状態になる。
【0029】
また、このとき、解除力セットスライドプレート190のマイクロスイッチ駆動切片194によるマイクロスイッチ561のスイッチレバー561aの押圧が解除される。
【0030】
(防火扉の係止装置の動作−係止状態から手動解除)
前記、および
図4(a)(b)に示したように、ロックレバー140の係合部142がラッチ板130の係合部133に係合し、ラッチ板130の時計回り(解除方向)の回動が規制されてフック600が係止される係止状態で、人手によって、防火扉がフック600のフックピン602を引抜く方向に強く引かれると、次のようにして係止状態が解除される。すなわち、フックピン602を引抜く方向の力がラッチ板130に作用すると、ラッチ板130は時計回りに回動しようとし、ラッチ板130とロックレバー140の係合部133・142のかみ合いによって、ロックレバー140の基部を奥方向に押す力が作用する。この力が所定以上になると、圧縮コイルばね154によるロックレバー基部支持ヨーク150を手前方向に付勢する付勢力に抗して、ロックレバー基部ピン521が奥方向に移動する。そこで、ラッチ板130とロックレバー140の係合部133・142の係合が解除され、ラッチ板130が時計回りに回って、フック600のフックピン602の係止状態が解除され、防火扉を閉じることができるようになる。
【0031】
上記のように、リンクレバー160と連結リンク170とのなす角度に応じて多段階に係止解除のための力が作用することによって、ソレノイド230への通電電流を小さく抑えても確実に解除動作させることが容易にできる。
【0032】
また、マイクロスイッチ561が、カバープレート121によりラッチ板130等と隔たって設けられているので、案内溝111a・121a部分の開口部から進入するほこりやラッチ板130付近の油分などによる汚染を少なく抑えることが容易にでき、マイクロスイッチ561の動作不良を容易に抑制することができる。特に、ソレノイド230が、カバープレート121に形成されたセットピン挿通窓121dや解除駆動レバー挿通窓121eを覆うように配置される場合には、マイクロスイッチ561の動作不良を抑制する効果を一層高めることができる。
【0033】
(その他の事項)
上記の例では、解除駆動レバー180に、リンクピン523を移動させる駆動U字溝183が形成されている例を示したが、必ずしもU字溝に限らず、リンクレバー160と連結リンク170とのなす角度が大きいときにリンクピン523を左方に押すことができ、その後、解除駆動レバー180の駆動垂下部184がリンクピン522を押す際のリンクピン523の移動を妨げない形状であればよい。
【0034】
また、解除駆動レバー180の駆動垂下部184によってリンクピン522を駆動するのに限らず、駆動U字溝183と同様のU字溝等を解除駆動レバー180に形成して駆動するなどしてもよい。
【0035】
また、ラッチ板130とロックレバー140の係合部133・142を係合させるようにするための付勢力は、上記のようにリンクレバー160を反時計回りに回動させるよう付勢するねじりコイルばね163に限らず、解除駆動レバー180を時計回りに回動させるよう付勢するばねを設けるようにしてもよいし、ロックレバー140を時計回りに回動させるよう付勢するばねを設けるようにしてもよく、さらにこれらの2つ以上を組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0036】
また、解除駆動レバー180は1つの部材で構成するのに限らず、それぞれの作用点ごとに駆動力を作用させる部材に分けるようにしてもよい。
【0037】
また、各部材の当接部の少なくとも一部は、摩擦接触に変えて、ローラを介して転がり接触するようにしてもよい。
【0038】
また、上記のような構成に加えて、ソレノイド230に一旦通電されて解除状態になった後、そのままでは防火扉を開いてフック600が押しつけられても係止状態にならないようにする、いわゆる再ロック防止機構が組み合わされてもよい。また、そのような機構が設けられる場合には、再ロック防止状態であるかどうかを検出するためのマイクロスイッチ等がマイクロスイッチ561に重ねて設けられるなどしてもよい。