(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584829
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 51/02 20060101AFI20190919BHJP
F16K 3/18 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
F16K51/02 B
F16K3/18 D
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-119735(P2015-119735)
(22)【出願日】2015年6月12日
(65)【公開番号】特開2016-17634(P2016-17634A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2018年5月1日
(31)【優先権主張番号】A535/2014
(32)【優先日】2014年7月4日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】593030945
【氏名又は名称】バット ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ブレハ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ネセンゾーン
【審査官】
加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0183391(US,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第02749798(EP,A1)
【文献】
特表2012−504212(JP,A)
【文献】
特開平10−227365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 51/02
F16K 3/00−3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブシート(2)により囲まれている開口部(3)と、閉位置において前記バルブシート(2)に押し付けられることで前記開口部(3)が閉塞され、中間位置において前記バルブシート(2)から離間して前記開口部(3)を覆い、完全開位置において前記開口部(3)を全部または部分的に開放する閉塞要素(4)と、
前記閉塞要素(4)を完全開位置および中間位置の間で第1軌道にしたがって移動させる少なくとも1つの第1駆動装置(5)と、
前記閉塞要素(4)を中間位置および閉位置の間で前記第1軌道に対して相互に角度をなして配置されている第2軌道にしたがって移動させる少なくとも1つの第2駆動装置(7)と、
前記閉塞要素(4)を閉位置に拘束する拘束機構(9)と、を備えているバルブ(1)であって、
前記拘束機構(9)は、傾斜面(11)を有する少なくとも1つの拘束要素(10)を備え、前記拘束要素(10)は、前記閉塞要素(4)が閉位置に拘束される拘束位置と、前記閉塞要素(4)が閉位置から中間位置に変位可能な解放位置との間で、第3軌道(12)にしたがって前記閉塞要素(4)に対して相対的に変位可能であることを特徴とするバルブ。
【請求項2】
請求項1記載のバルブにおいて、
前記第3軌道(12)が前記傾斜面(11)に対して鋭角をなして配置されていることを特徴とするバルブ。
【請求項3】
請求項1または2記載のバルブにおいて、
前記拘束要素(10)が、前記傾斜面(11)を介して前記閉塞要素(4)に対して間接的に力を作用させることを特徴とするバルブ。
【請求項4】
請求項3記載のバルブにおいて、
前記閉塞要素(4)がバルブロッド(14)を介してヨーク(15)に対して連結され、前記拘束要素(10)が、前記傾斜面(11)を介して前記ヨーク(15)に対して直接的に力を作用させることを特徴とするバルブ。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1つに記載のバルブにおいて、
前記拘束要素(10)、バルブロッド(14)を介して前記閉塞要素(4)に連結されているヨーク(15)、前記閉塞要素(4)および前記閉塞要素(4)に対して連結されている前記バルブ(1)の一部のうち少なくとも1つが楔形状に形成されていることにより、前記傾斜面(11)が形成されていることを特徴とするバルブ。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1つに記載のバルブにおいて、
前記第3軌道(12)が前記第1軌道(6)に対して平行に配置されていることを特徴とするバルブ。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか1つに記載のバルブにおいて、
前記拘束機構(9)が、前記拘束要素(10)を前記第3軌道(12)にしたがって駆動するため、前記第1駆動装置(5)および前記第2駆動装置(7)とは別個の少なくとも1つの第3駆動装置(16)を備えていることを特徴とするバルブ。
【請求項8】
請求項7記載のバルブにおいて、
前記第3駆動装置(16)が、前記拘束要素(10)に対して拘束位置に向かう方向に付勢する第1拘束駆動ユニット(17)を備えていることを特徴とするバルブ。
【請求項9】
請求項8記載のバルブにおいて、
前記第1拘束駆動ユニット(17)が少なくとも1つの弾性付勢要素(18)を備えていることを特徴とするバルブ。
【請求項10】
請求項8または9記載のバルブにおいて、
前記第3駆動装置(16)が前記拘束要素(10)を解放装置に駆動するため、ON/OFFが切り替え可能な第2拘束駆動ユニット(19)を備えていることを特徴とするバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ、特に真空バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
第1軌道および第2軌道が相互に傾斜して配置されているバルブが当該技術分野において知られている。このバルブは、真空技術に用いられ、いわゆるLバルブまたはJバルブとして知られている。閉塞要素の多少なりともL字形状またはJ字形状の完全開位置から閉位置への動作または閉位置から開位置への動作は、バルブシートおよび閉塞要素のうち一方または両方に設けられているシール部材の耐久性の観点から採用され、シール部材に対する剪断運動が軽減または防止される。
【0003】
特に真空技術分野において、第1駆動装置および第2駆動装置として気圧式または電動式の駆動装置が用いられる。閉塞要素がバルブシートに押し付けられている閉位置において、第1駆動装置および第2駆動装置によって短時間のみ保持されるだけである。空気供給または電流供給が遮断された後、当該駆動装置の押圧力が長時間にわたり弱まる。
【0004】
閉塞要素が該当する位置にある場合、閉塞要素を閉位置に拘束するための拘束機構としてのインターロックボルトが、第1駆動装置のピストンの開口部に固定されるバルブが知られている(特許文献1参照)。当該拘束機構の解決手段には、その製造に際して非常にわずかな誤差しか許容されないという問題がある。バルブの運転中に温度に由来する変形が生じた場合、ピストンの開口部にインターロックボルトが入り込めなくなって拘束機構が機能しなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許公開公報 EP1087159A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、より大きな誤差が許容されながらも、拘束機構の高い動作確実性が確保されうるバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、バルブシートにより囲まれている開口部と、閉位置において前記バルブシートに押し付けられることで前記開口部が閉塞され、中間位置において前記バルブシートから離間して前記開口部を覆い、完全開位置において前記開口部を全部または部分的に開放する閉塞要素と、前記閉塞要素を完全開位置および中間位置の間で第1軌道にしたがって移動させる少なくとも1つの第1駆動装置と、前記閉塞要素を中間位置および閉位置の間で前記第1軌道に対して相互に角度をなして配置されている第2軌道にしたがって移動させる少なくとも1つの第2駆動装置と、前記閉塞要素を閉位置に拘束する拘束機構と、を備えているバルブに関する。
【0008】
前記課題を解決するための本発明のバルブは、前記拘束機構が、傾斜面に当接する、代替的または付加的に傾斜面を有する少なくとも1つの拘束要素を備え、前記拘束要素は、前記閉塞要素が閉位置に拘束される拘束位置と、前記閉塞要素が閉位置から中間位置に変位可能な解放位置との間で、第3軌道にしたがって前記閉塞要素に対して相対的に変位可能であることを特徴とする。
【0009】
少なくとも1つの傾斜面を有する解決手段により、拘束機構の製造および動作に際して大きな誤差が許容されながらも、システムの動作確実性が確保される。傾斜面により、製造時および動作時における温度由来の形状変化が生じても、拘束機構の動作確実性が損なわれることはない。
【0010】
本発明の第1実施形態群において、傾斜面が拘束要素それ自体に配置または形成されていてもよい。閉塞要素に直接的または間接的に連結されている傾斜面に対して拘束要素が当接してもよい。拘束要素と、当該拘束要素が直接的に相互作用するバルブの構成要素とのそれぞれに傾斜面が設けられ、当該2つの傾斜面同士が相互に当接してもよい。
【0011】
第3軌道が傾斜面に対して鋭角をなして配置されていてもよい。拘束要素の解放位置において、閉塞要素は閉位置および中間位置の間で第2軌道にしたがって変位可能であるのみならず、完全開位置および中間位置の間で第1軌道にしたがって変位可能である。
【0012】
基本的に、拘束要素はその少なくとも1つの傾斜面によりまたは傾斜面を通じて閉塞要素に直接的に力を作用させる。拘束要素はその少なくとも1つの傾斜面によりまたは傾斜面を通じて閉塞要素に間接的に力を作用させてもよい。閉塞要素が少なくとも1つのバルブロッドを介してヨークに連結され、拘束要素画素の傾斜面によりまたは傾斜面を通じてヨークに直接的に力を作用させることで、間接的な力作用が実現される。傾斜面の形成のため、拘束要素、ヨーク、閉塞要素および閉塞要素に対して連結されているバルブの構成要素のうち少なくとも1つが楔形状に形成される。第3軌道、すなわち拘束要素が拘束位置および解放位置の間で変位する軌道は、第1軌道、すなわち閉塞要素が完全開位置および中間位置の間で変位する軌道に対して平行である。
【0013】
中間位置は、閉塞要素がバルブシートから離間して開口部が閉塞されていないものの、開口部を覆うような位置である。完全開位置は、閉塞要素は開口部を閉塞せずに全部または部分的に開放しており、流体および処理前または処理後のワークピースが開口部を通じて搬入または搬出可能である。
【0014】
拘束機構は、第3軌道にしたがって拘束要素を駆動するため、第1駆動装置および第2駆動装置とは別に少なくとも1つの第3駆動装置を備えている。第3駆動装置は、拘束要素を第3軌道にしたがって駆動可能な少なくとも1つの固有の駆動装置であってもよい。
【0015】
バルブの相応する運転または制御によらずにバルブの開動作および開状態維持の指令信号が与えられた場合、第3駆動装置は、拘束機構または拘束要素を拘束位置に自動的に動かすまたは保持する。この観点から、第3駆動装置は、傾斜面を有する拘束要素を拘束位置に向かって定常的に付勢する第1拘束駆動ユニットを備えている。第1拘束駆動ユニットは、純粋な機械的な駆動ユニットである。第1拘束駆動ユニットは、少なくとも1つの付勢要素、好ましくはばね要素であり、あるいは、少なくとも1つの付勢要素、好ましくはばね要素を備えている。バルブを開放するため、第3駆動装置は、拘束要素を解放位置に駆動するための、ON/OFFが切り替え可能な第2拘束駆動ユニットを備えていることが好ましい。第2拘束駆動ユニットは、ON状態において第1拘束駆動ユニットに対抗して力を作用させる。第2拘束駆動ユニットのON/OFFの切り替えは、バルブの適当な運転または制御に際して実現される。
【0016】
閉塞要素はバルブプレートであり、特に平坦状に形成されている閉塞要素である。閉塞要素により閉塞される開口部は40〜1000[cm
2]、好ましくは60〜500[cm
2]の横断面積を有する。本発明のバルブは閉塞装置として構成されていてもよい。
【0017】
バルブシートおよび閉塞要素のうち少なくとも一方またはそれぞれにはシール部材が設けられている。第1軌道および第2軌道のうち一方または両方は、相互に傾斜して延在している。各軌道は直線状であってもよいが直線状である必要はない。第1軌道は直線状に延在している。傾斜とは、第1軌道および第2軌道が一定角度をなすことまたは平行ではないことを意味する。第1軌道および第2軌道は相互に略直角をなしている。第1軌道および第2軌道が運動経路として構成されていてもよい。第1軌道および第2軌道は閉塞要素の軌道を定義する。当該軌道は、閉塞要素に対して固定された点から閉塞要素の運動を観察することにより確認することができる。第3軌道は、傾斜面を有する拘束要素の運動を定義する。各軌道は2つの反対向きの、相互に重なっているまたは同軸に配置されている方向を有する。
【0018】
閉塞要素はバルブロッドに対して固定されている。閉塞要素はバルブロッドに対して固定され、第1駆動装置は上方に延在するヨークを介してバルブロッドにより保持されている。本発明のバルブは、第1軌道にしたがった駆動用の単一の第1駆動装置を有するだけではなくてもよく、第2軌道にしたがった駆動用の単一の第2駆動装置を有するだけではなくてもよく、かつ、第3軌道にしたがった拘束要素の駆動用の第3駆動装置を有するだけではなくてもよい。閉塞要素および拘束要素のうち一方または両方を該当軌道にしたがって駆動するための、複数の駆動装置が設けられていてもよい。第1駆動装置は、中間経路によって多数の動力伝達要素(好ましくは各駆動装置に固有の動力伝達要素が設けられている。)を通じて、バルブロッドに(好ましくは固定的に)連結されているヨークに対して連結されることにより、バルブロッドに対して閉塞要素が連結されている。
【0019】
第1駆動装置、第2駆動装置および第2拘束駆動ユニットのうち少なくとも1つとしてさまざまな形態が採用される。油圧駆動式、気圧駆動式、電動式、電磁駆動式またはそのほか当該技術分野において公知の駆動装置、特に直動式の駆動装置が採用される。真空技術において、気圧式または電動式の駆動装置が用いられる。第1駆動装置、第2駆動装置および第2拘束駆動ユニットのうち少なくとも1つ、好ましくはそれぞれがピストンシリンダ装置を備え、好ましくはそれぞれの駆動装置の少なくとも1つの駆動要素がシリンダを構成し、少なくとも1つの他の駆動要素が当該シリンダに変位可能に案内されるピストンを構成する。第1駆動装置および第2駆動装置のうち一方または両方が、双方向作動式のピストンシリンダ装置であり、閉塞要素が一方向およびその反対方向に各軌道にしたがって駆動される。軌道の一方向にのみ作動するピストンシリンダ装置が採用されてもよい。他方向への移動は、ばね、電動式または他の適当な駆動装置など、第1駆動装置および第2駆動装置のうち一方または両方により実現される。ピストン装置およびシリンダ装置によれば、ハウジングに固定された駆動要素がピストンおよびシリンダを構成する。
【0020】
本発明のバルブは、電子部品またはその均等物が処理または製造されるプロセスチャンバを閉塞するためなど、真空技術において採用される。真空技術においては、0.001[mbar]または0.1[Pa]以下の圧力での動作状態が実現される。真空バルブは、当該圧力範囲および相当する差圧環境下で使用されるバルブである。真空バルブは、負圧のプロセス状態が実現される真空領域を有している。このようなバルブまたは真空バルブによれば、第1駆動装置および第2駆動装置のうち少なくとも1つ、第1駆動装置、第2駆動装置および第3駆動装置のうち少なくとも1つ、または第3駆動装置が真空領域の外側に設けられている。真空領域をその外側領域から隔離して遮断するため、たとえばバルブロッドのためのべロウズ案内部材、ディスク案内部材およびこれらの均等物が知られている。
【0021】
第1駆動装置、第2駆動装置および拘束機構のうち少なくとも1つが簡単に構成される他の態様において、各駆動装置または複数の拘束機構の対称的な配置が採用される。当該対称性の基準となる対称面が、バルブロッドおよび閉塞要素のうち少なくとも一方の対称軸線を通じて存在する。
【0022】
本発明のさらなる利点および詳細は、添付図面を用いて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態としてのバルブの斜視図。
【
図2】ハウジングの内部を見ることができるようにハウジングが部分的に省略されたバルブの正面図。
【
図7】閉塞要素が中間位置にある状態におけるバルブに関する説明図。
【
図12】閉塞要素が閉位置にあり、かつ、拘束機構の拘束要素が解放位置にある状態におけるバルブに関する説明図。
【
図17】閉塞要素が閉位置にあり、かつ、拘束機構の拘束要素が拘束位置にある状態におけるバルブに関する説明図。
【
図22】傾斜面および第3軌道の間の相対的な間隔に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態としてのバルブ1は、いわゆる真空バルブであり、処理対象であるワークピースがプロセスチャンバに搬入または搬出される開口部を圧力保持するようにまたは気密に閉塞するために真空技術において用いられる。
図1はプロセスチャンバを省略した状態のバルブまたは真空バルブ1の斜視図である。閉塞要素4は本実施形態ではバルブプレートである。バルブ1の開口部3は隅角部分が丸みを帯びた略矩形状である。開口部3はバルブ1のバルブシート2により囲まれている。バルブシート2はバルブハウジング20の一部である。バルブシート2は基本的に別個の部材により構成されていてもよい。シール部材22が閉塞要素4に設けられている。シール部材22がバルブシート2に設けられてもよく、バルブシート2および閉塞要素4の両方に設けられてもよい。
【0025】
図1において、一対の第1駆動装置5が設けられている。第2駆動装置7は示されていないが、バルブハウジング20の中に隠れている。バネ要素の形態の弾性付勢要素18として構成されている第1拘束駆動ユニット17を有する拘束機構9には一対の第3駆動装置16が設けられている。
図1において第2拘束駆動ユニット19は外側だけ示されている。詳細な構成は続く図面において説明される。
【0026】
図2〜
図6には、
図1とは異なり、閉塞要素4が開口部3の全部を開放する完全開位置にある状態のバルブ1が示されている。
【0027】
図7〜
図11には、閉塞要素4が開口部3を覆う一方で閉塞していない中間位置にある状態のバルブ1が示されている。シール部材22がバルブシート2に対して当接していないことが
図8〜
図11に示されている断面図からよくわかる。
【0028】
図12〜
図16には、閉塞要素4がそのシール部材22をバルブシート2に対して当接させることにより開口部3を閉塞している閉位置にある状態のバルブ1が示されている。
図2〜
図16のそれぞれにおいては拘束機構9の拘束要素10が解放位置にある。
【0029】
図17〜
図21において、閉塞要素4が閉位置にあり、かつ、拘束要素10が拘束位置にあって、閉塞要素4が第1駆動装置5および第2駆動装置7があるにもかかわらず拘束機構9により閉位置に固定保持されている状態のバルブ1が示されている。
【0030】
本実施形態において閉塞要素4、バルブロッド14およびバルブロッド14に対して固定されているヨーク15は一体的に構成され、相互に変位可能である。第1軌道6にしたがった、開位置(
図2〜
図6参照)および中間位置(
図7〜
図11参照)の間の駆動のために第1駆動装置5が設けられている。本実施形態では、シリンダ26を貫通するピストン27を有する、双方向作動式のピストンシリンダユニットにより構成されている2つの第1駆動装置5により構成されている。第1駆動装置5により、中間位置から完全開位置への開行程およびこれとは反対に完全開位置から中間位置への逆行程が実現される。ピストン27はピストンロッド28を介して調整ピン29に連結され、さらにこれを介してヨーク15に連結されている。ピストンロッド28には、調整ピン29が第1軌道6に対して垂直かつ第2軌道8に対して平行な方向に変位可能に挿通されている貫通ガイドが設けられている。調整ピン29はヨーク15に対して固定されている。構成要素28、29および15の当該構成により、ヨーク15、バルブロッド14および閉塞要素4からなるユニットの第2軌道8にしたがった運動から第1駆動装置5から分離され、第2駆動装置7によってヨーク15が調整ピン29とともに第2軌道8にしたがってピストンロッド28に対して相対的に変位可能となる。これにより、第1駆動装置5がハウジング20に対して固定されうる(一方側は
図4および
図9参照。他方側は
図14および
図19参照)。
【0031】
第2駆動装置7も双方向作動式のピストンシリンダユニットにより構成され、シリンダ23の内部で変位可能に構成されているピストン24を備えている。シリンダ23の内部においてピストン24は、閉塞要素4が中間位置および閉位置の間で往復運動する第2軌道8に対して平行に運動する。第2駆動装置7のピストン24の運動を閉塞要素4に伝達するため、一対の第2駆動装置7のそれぞれのピストン24がガイドロッド21に対して固定かつ連結されている。ガイドロッド21には、第1軌道6に対して平行な方向にブレーンベアリング25によりヨーク15が変位可能に設けられている。これにより第2軌道8に対して平行な方向についてシリンダ23の内部におけるピストン24の運動がガイドロッド21、ヨーク15およびバルブロッド14を通じて閉塞要素4に伝達され、閉塞要素4が第2軌道8にしたがって閉位置(
図12〜
図21参照)および中間位置(
図7〜
図11参照)の間で駆動されうる。
【0032】
傾斜面11を有する拘束要素10が解放位置にあって拘束機構9が閉塞要素4を解放している限り、第1駆動装置5および第2駆動装置7により、閉塞要素4はさまざまな方式にしたがって完全開位置および閉位置の間で往復運動することができる(
図2〜
図16、特に
図6、
図11および
図16参照)。本発明の拘束機構9、特に傾斜面11を有する拘束要素10によって閉塞要素4が閉位置(
図12〜
図16参照)より閉位置で拘束またはロックされる。本実施形態では一対の拘束機構9が設けられている。拘束機構9の動作原理は、解放位置を示している
図6、
図11および
図16ならびに拘束位置を示している
図21により把握することができる。楔形状に形成されている、傾斜面11を有する拘束要素10は動力伝達ロッド32を介して拘束機構9の第3駆動装置16に対して連結されている。第3駆動装置16により、傾斜面11を有する拘束要素10は、第1軌道6に対して平行に延在する第3軌道12にしたがって駆動される。第3軌道12にしたがった運動に際して、拘束要素10の運動により閉塞要素4および拘束要素10が相対的に変位する。傾斜面11を有する拘束要素10が閉塞要素4に直接的に力を作用させない。ヨーク15がバルブロッド14を介して閉塞要素4に連結されており、拘束要素10がヨーク15に対して直接的に力を作用させて拘束要素10が閉塞要素4に間接的に力を作用させる。拘束要素10が拘束位置においてその傾斜面11をヨーク15に対して押し付けた場合(
図21参照)、閉塞要素4が拘束される。
【0033】
第3駆動装置16は、拘束要素10を拘束位置に向かって付勢する第1拘束駆動ユニット17を備えている。第1拘束駆動ユニット17は純粋な機械式であり、付勢要素18、より具体的にはバネ要素により構成されている。弾性付勢要素18は、エラストマーまたはこれと同等の弾性素材により構成されていてもよい。第2拘束駆動ユニット19により有効に作用していない場合、第1拘束駆動ユニット17は、動力伝達ロッド32を介して拘束要素10を拘束位置に引く。第2拘束駆動ユニット19は、拘束要素10を解放位置に動かすために設けられている。第2拘束駆動ユニット19はON/OFFの切り替え可能に構成されている。第2拘束駆動ユニット19がONに切り替えられた場合、第1拘束駆動ユニット17に対抗するように作動し、拘束要素10を解放位置に動かすまたは維持する。第2拘束駆動ユニット19がOFFに切り替えられた場合、第1拘束駆動ユニット17が拘束要素10を自動的に拘束位置(
図21参照)に動かし、閉塞要素4が閉位置に拘束される。
【0034】
傾斜面11は拘束要素10に設けられている必要はない。ヨーク15、閉塞要素4または閉塞要素4に対して連結されているバルブ1の構成要素に傾斜面11が設けられ、そこに拘束要素10が当接するように構成されてもよい。拘束要素10、およびヨーク15、閉塞要素4に対して連結されているバルブ1の構成要素または閉塞要素4のそれぞれに傾斜面11が設けられ、当該傾斜面11が相互に当接するように構成されてもよい。本発明の思想を損なうことなく、多数の傾斜面11が相互に当接するように設けられ、拘束要素10が閉塞要素4に対して直接的または間接的に力を作用させてもよい。
【0035】
図22に概略的に示されているように、傾斜面11および第3軌道12は鋭角13をなす。
【0036】
この図では、わかりやすいように第1軌道6、第2軌道8および第3軌道12が線分で示されている。
【0037】
比較的大きな許容誤差をもって製造される場合がある拘束機構9が傾斜面11を介して動作確実性を損なうことなく作動することができる。個々の構成部品の温度による形状変化が生じても、本発明における拘束機構9の動作確実性を損なわせずに済む。
【符号の説明】
【0038】
1‥バルブ、2‥バルブシート、3‥開口部、4‥閉塞要素、5‥第1駆動装置、6‥第1軌道、7‥第2駆動装置、8‥第2軌道、9‥拘束機構、10‥拘束要素、11‥傾斜面、12‥第3軌道、13‥鋭角、14‥バルブロッド、15‥ヨーク、16‥第3駆動装置、17‥第1拘束駆動ユニット、18‥弾性付勢要素、19‥第2拘束駆動ユニット、20‥バルブハウジング、21‥ガイドロッド、22‥シール部材、23‥シリンダ、24‥ピストン、25‥ブレーンベアリング、26‥シリンダ、27‥ピストン、28‥ピストンロッド、29‥調整ピン、30‥シリンダ、31‥ピストン、32‥動力伝達ロッド。