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特許6584860送信機用の合成部およびデジタル振幅変調装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584860
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】送信機用の合成部およびデジタル振幅変調装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/48 20060101AFI20190919BHJP
   H03C 1/00 20060101ALI20190919BHJP
   H01F 21/12 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   H03H7/48 A
   H03C1/00 A
   H01F21/12
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-161287(P2015-161287)
(22)【出願日】2015年8月18日
(65)【公開番号】特開2017-41702(P2017-41702A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶彦
【審査官】 竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−216848(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/073252(WO,A1)
【文献】 特開2011−160125(JP,A)
【文献】 特開2010−144202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/00−7/54
H01F 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスの1次側巻線が巻かれ、且つ、前記トランスの2次側巻線が内部を通るとともに、中心軸の軸方向に並べられた複数のトロイダル型コアと、
前記軸方向で前記複数のトロイダル型コアの一方の側に位置した第1支持部材と、
前記複数のトロイダル型コアに対して前記第1支持部材とは反対側に位置し、前記第1支持部材に向けて前記複数のトロイダル型コアを押さえる第2支持部材と、
前記複数のトロイダル型コアの周方向に分かれて配置され、前記複数のトロイダル型コアの径方向の外側から前記複数のトロイダル型コアを支持する複数の第3支持部材と、
を備え、
前記複数の第3支持部材の少なくとも1つは、前記第1支持部材に対して前記径方向に沿って移動可能であり、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とは、前記複数の第3支持部材によって接続され、
前記第1支持部材は、前記径方向に沿って延びた第1穴を有し、
前記複数の第3支持部材の少なくとも1つは、前記第1穴に挿入されており、前記第1穴の内部で前記径方向に沿って移動可能である
送信機用の合成部。
【請求項2】
トランスの1次側巻線が巻かれ、且つ、前記トランスの2次側巻線が内部を通るとともに、中心軸の軸方向に並べられた複数のトロイダル型コアと、
前記軸方向で前記複数のトロイダル型コアの一方の側に位置した第1支持部材と、
前記複数のトロイダル型コアに対して前記第1支持部材とは反対側に位置し、前記第1支持部材に向けて前記複数のトロイダル型コアを押さえる第2支持部材と、
前記複数のトロイダル型コアの周方向に分かれて配置され、前記複数のトロイダル型コアの径方向の外側から前記複数のトロイダル型コアを支持する複数の第3支持部材と、
を備え、
前記複数の第3支持部材の少なくとも1つは、前記第1支持部材に対して前記径方向に沿って移動可能であり、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とは、前記複数の第3支持部材によって接続され、
前記第2支持部材は、前記軸方向に沿って、前記第1支持部材に近付く方向と、前記第1支持部材から遠ざかる方向とに移動可能であるとともに、前記複数のトロイダル型コアを前記第1支持部材に向けて押さえる位置で前記複数の第3支持部材の少なくとも1つに固定されている
送信機用の合成部。
【請求項3】
トランスの1次側巻線が巻かれ、且つ、前記トランスの2次側巻線が内部を通るとともに、中心軸の軸方向に並べられた複数のトロイダル型コアと、
前記軸方向で前記複数のトロイダル型コアの一方の側に位置した第1支持部材と、
前記複数のトロイダル型コアに対して前記第1支持部材とは反対側に位置し、前記第1支持部材に向けて前記複数のトロイダル型コアを押さえる第2支持部材と、
前記複数のトロイダル型コアの周方向に分かれて配置され、前記複数のトロイダル型コアの径方向の外側から前記複数のトロイダル型コアを支持する複数の第3支持部材と、
を備え、
前記複数の第3支持部材の少なくとも1つは、前記第1支持部材に対して前記径方向に沿って移動可能であり、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とは、前記複数の第3支持部材によって接続され、
前記第2支持部材は、前記複数の第3支持部材に着脱可能に取り付けられている
送信機用の合成部。
【請求項4】
トランスの1次側巻線が巻かれ、且つ、前記トランスの2次側巻線が内部を通るとともに、中心軸の軸方向に並べられた複数のトロイダル型コアと、
前記軸方向で前記複数のトロイダル型コアの一方の側に位置した第1支持部材と、
前記複数のトロイダル型コアに対して前記第1支持部材とは反対側に位置し、前記第1支持部材に向けて前記複数のトロイダル型コアを押さえる第2支持部材と、
前記複数のトロイダル型コアの周方向に分かれて配置され、前記複数のトロイダル型コアの径方向の外側から前記複数のトロイダル型コアを支持する複数の第3支持部材と、
を備え、
前記複数の第3支持部材の少なくとも1つは、前記第1支持部材に対して前記径方向に沿って移動可能であり、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とは、前記複数の第3支持部材によって接続され、
前記第2支持部材は、前記径方向に沿って延びた第2穴を有し、
前記複数の第3支持部材の少なくとも1つは、前記第2穴に挿入されており、前記第2穴の内部で前記径方向に沿って移動可能である
送信機用の合成部。
【請求項5】
前記複数の第3支持部材の少なくとも1つの外周面には、ねじが形成され、
前記複数の第3支持部材の少なくとも1つには、前記ねじに螺合して前記複数のトロイダル型コアに向かう力を前記第1支持部材に加える第1固定部材が取り付けられている
請求項から請求項のいずれか一項に記載の送信機用の合成部。
【請求項6】
前記複数の第3支持部材の少なくとも1つには、前記ねじに螺合して前記複数のトロイダル型コアに向かう力を前記第2支持部材に加える第2固定部材が取り付けられており、
前記第1固定部材および前記第2固定部材は、前記第1固定部材および前記第2固定部材が取り付けられた前記第3支持部材の前記径方向の位置を、前記第1支持部材および前記第2支持部材から受ける反力によって固定している
請求項に記載の送信機用の合成部。
【請求項7】
請求項から請求項のいずれか一項に記載の送信機用の合成部と、
前記合成部の前記トランスが接続される複数の増幅器と、
を備えるデジタル振幅変調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、送信機用の合成部およびデジタル振幅変調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば中波放送用の送信機には、デジタル振幅変調装置が利用されている。デジタル振幅変調装置は、並列に配置された複数の電力増幅器の出力を合成する合成部を有する。デジタル振幅変調装置は、前記合成部で複数の電力増幅器の出力を合成することでAM波(振幅変調波:Amplitude Modulation Wave)を生成し、放送サービスエリアへ送出する。
ところで、上記のような合成部は、トロイダル型コアに巻かれた1次側巻線と、前記トロイダル型コアの内部を通る2次側巻線とを含むトランスを有する。合成部は、前記トランスの巻数比を変えることで、電力増幅器の出力電力を変化させる。このため、合成部は、トランスの巻線数を容易に変更できることが望ましい。しかしながら、従来の合成部では、トランスの巻線数を変更することが難しい場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−216848号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】中波ディジタル変調送信機とその運用、放送技術、1991年4月号(PP.348、図8など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、トランスの巻線数を容易に変更することができる送信機用の合成部およびデジタル振幅変調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の送信機用の合成部は、複数のトロイダル型コアと、第1支持部材と、第2支
持部材と、第3支持部材とを持つ。前記複数のトロイダル型コアは、トランスの1次側巻
線が巻かれ、且つ、前記トランスの2次側巻線が内部を通るとともに、中心軸の軸方向に
並べられている。前記第1支持部材は、前記軸方向で前記複数のトロイダル型コアの一方
の側に位置する。前記第2支持部材は、前記複数のトロイダル型コアに対して前記第1支
持部材とは反対側に位置し、前記第1支持部材に向けて前記複数のトロイダル型コアを押
さえる。前記複数の第3支持部材は、前記複数のトロイダル型コアの周方向に分かれて配
置され、前記複数のトロイダル型コアの径方向の外側から前記複数のトロイダル型コアを
支持する。前記複数の第3支持部材の少なくとも1つは、前記第1支持部材に対して前記
径方向に沿って移動可能である。前記第1支持部材と前記第2支持部材とは、前記複数の第3支持部材によって接続される。前記第1支持部材は、前記径方向に沿って延びた第1穴を有する。前記複数の第3支持部材の少なくとも1つは、前記第1穴に挿入されており、前記第1穴の内部で前記径方向に沿って移動可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態のデジタル振幅変調装置の構成を示すブロック図。
図2】第1の実施形態の合成部の構成を示すブロック図。
図3】第1の実施形態の合成部を示す平面図。
図4図3中に示された合成部のF4−F4線に沿う断面図。
図5】第1の実施形態の合成部を示す図。
図6】第1の実施形態の第1変形例の合成部を示す図。
図7】第1の実施形態の第2変形例の合成部を示す図。
図8】第1の実施形態の第3変形例の合成部を示す図。
図9】第2の実施形態の合成部を示す平面図。
図10図9中に示された合成部のF10−F10線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の送信機用の合成部およびデジタル振幅変調装置を、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0009】
(第1の実施形態)
図1から図5を参照して、第1の実施形態の送信機用の合成部15およびデジタル振幅変調装置1を説明する。
まず、デジタル振幅変調装置1について説明する。本実施形態のデジタル振幅変調装置1は、例えば、中波放送の送信装置に用いられる。
【0010】
図1は、デジタル振幅変調装置1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、デジタル振幅変調装置1は、キャリア信号入力端11、音声信号入力端12、制御部(制御回路)13、電力増幅部14、合成部15、フィルタ部16、および信号出力端17を有する。
【0011】
キャリア信号入力端11には、伝送信号としてのキャリア信号が入力される。キャリア信号入力端11に入力されたキャリア信号は、制御部13を介して、電力増幅部(PA:Power Amplifier)14に供給される。
電力増幅部14は、例えばn(nは任意の自然数)台の電力増幅器141〜14nを有する。電力増幅器141〜14nは、並列に配置される。電力増幅部14に供給されたキャリア信号は、上記複数の電力増幅器141〜14nに分配されて供給される。各電力増幅器141〜14nは、制御部13の制御に応じて、オン=駆動状態、またはオフ=停止状態となる。各電力増幅器141〜14nは、オン状態で、増幅されたキャリア信号を出力する。
【0012】
合成部15は、電力増幅器141〜14nで増幅されたキャリア信号を合成する。すなわち、合成部15は、複数の電力増幅器141〜14nの台数を変更しながら、キャリア信号を予め設定される所望のレベルに増幅する。フィルタ部16は、合成部15で合成された合成信号を濾波することで、合成信号に含まれる不要な成分を抑圧する。合成部15で合成されたキャリア信号は、フィルタ部16で濾波された後、振幅変調されたRF帯の放送波(AM波)として、図示しない測定部を介して出力信号端17から出力される。出力信号端17の先には図示しない送信アンテナが接続される。また、信号出力端17と前記送信アンテナとの間には、整合回路やフィルタ、リジェクタ、トラップ回路などが挿入される。
【0013】
一方、音声信号入力端12には、音声信号(被変調信号)が入力される。音声信号入力端12に入力された音声信号は、制御部13に入力される。制御部13は、入力された音声信号の電圧振幅に応じて、オン/オフの制御信号や、キャリア信号の位相差に基づき、各々の電力増幅器141〜14nのオン/オフ状態を制御する。
【0014】
次に、合成部15について説明する。
図2は、合成部15の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、合成部15は、電力増幅器の数に対応するn個のトランス201〜20nを備える。なお以下では、複数のトランス201〜20nにおいて、特に区別する必要がない場合は、単に「トランス200」と言う。各トランス200は、1次側巻線21と、2次側巻線22とを有する。なお図中では、電力増幅器141,142,143,14n、およびトランス201,202,203,20nを代表して示す。
【0015】
トランス201〜20nの1次側巻線21は、電力増幅器141〜14nのそれぞれの出力端に接続される。トランス201〜20nの2次側巻線22は、互いに直列に接続され、1つの2次側巻線22が形成される。2次側巻線22の一端は、直接接地し、もしくは、コイル、コンデンサ、抵抗、またはそれらの組み合わせを介して接地される。一方で、2次側巻線22の他端は、合成出力端を形成する。この合成出力端は、フィルタ部16に電気的に接続される。
【0016】
以上のような構成により、合成部15では、電力増幅器141〜14nのいずれかで電力増幅されたキャリア信号が1次側巻線21に加えられると、そのキャリア信号は2次側巻線22に出力されて合成される。この合成出力は、フィルタ部16へ出力される。
【0017】
図3は、本実施形態の合成部15の具体的構成の一例を示す平面図である。
図3に示すように、合成部15は、第1合成ユニット(図3中の下側の合成部)15aと、第2合成ユニット(図3中の上側の合成部)15bとを有する。第1合成ユニット15aの構成と、第2合成ユニット15bの構成は、互いに略同じである。そこで以下では、第1合成ユニット15aの構成を中心に詳しく説明する。
【0018】
第1合成ユニット15aは、複数のトロイダル型コア31と、これら複数のトロイダル型コア31を支持する支持機構32とを備える。
【0019】
複数のトロイダル型コア31は、図3に示すように、トロイダル型コア31の中心軸Cの軸方向に沿って一列に並べられている。各トロイダル型コア31は、例えばMn−Zn系のフェライトコアである。
【0020】
図4は、図3中に示された合成部15のF4−F4線に沿う断面図である。
図4に示すように、トロイダル型コア31の中央部には、貫通穴31hが設けられている。貫通穴31hは、トロイダル型コア31の中心軸Cの軸方向に沿ってトロイダル型コア31を貫通している。これにより、トロイダル型コア31は、リング状に形成されている。なお本願でいう「リング状」とは、中央部に貫通穴が設けられた形状を幅広く意味する。
【0021】
各トロイダル型コア31には、トランス200の1次側巻線21が巻かれている。詳しく述べると、1つのトロイダル型コア31に対応して、1つの1次側巻線21が設けられる。1次側巻線21は、自身が対応するトロイダル型コア31に複数回に亘り巻き付けられる。なお、トロイダル型コア31に対する1次側巻線21の巻き数は、複数のトロイダル型コア31でそれぞれ異なる場合がある。このため、1次側巻線21を含むトロイダル型コア31の外形は、各トロイダル型コア31によって異なる場合がある。
【0022】
一方、図3に示すように、2次側巻線22は、複数のトロイダル型コア31の内部(すなわち貫通穴31h)を連続して通っている。これにより本実施形態では、直列加算型の合成部15が形成されている。例えば、2次側巻線22は、複数のトロイダル型コア31の内部と外部とを複数回に亘り通っている。本実施形態では、2次側巻線22は、第1合成ユニット15aのトロイダル型コア31の内部と、第2合成ユニット15bのトロイダル型コア31の内部とを交互に通っている。これにより、第1合成ユニット15aおよび第2合成ユニット15bによって、1つの直列加算型の合成部15が形成されている。
【0023】
ここで、+Z方向、−Z方向、R方向、およびθ方向について定義する。+Z方向および−Z方向は、トロイダル型コア31の中心軸Cの軸方向(すなわち貫通穴31hの貫通方向)に沿う方向である。−Z方向は、+Z方向とは反対方向である。R方向は、トロイダル型コア31の径方向であり、中心軸Cから離れる方向である。R方向は、+Z方向に交差する(例えば略直交する)方向である。θ方向(図4参照)は、トロイダル型コア31の周方向であり、中心軸Cの周りを回転する方向である。θ方向は、+Z方向およびR方向に交差する(例えば略直交する)方向である。
【0024】
図3に示すように、本実施形態では、複数のトロイダル型コア31は、−Z方向に詰めて配置される。なお本願で言う「詰めて配置」とは、複数のトロイダル型コア31の間(厳密に言うとトロイダル型コア31に巻かれた1次側巻線21同士の間)に実質的な隙間が存在しないことを意味し、各トロイダル型コア31の位置がその隣に位置するトロイダル型コア31によって規定されることを意味する。例えば、各トロイダル型コア31の1次側巻線21は、その隣に位置するトロイダル型コア31の1次側巻線21と接する。なお、各トロイダル型コア31の1次側巻線21同士の間には、1次側巻線21同士を電気的に隔離する絶縁性のシートが挟まれてもよい。
【0025】
次に、複数のトロイダル型コア31を支持する支持機構32について説明する。
支持機構32は、第1押え板41、第2押え板42、および複数の支持棒43を有する。例えば、第1押え板41、第2押え板42、および複数の支持棒43は、絶縁性(電気絶縁性)を有する材料で形成される。
【0026】
第1押え板41は、「第1部材」、「第1支持板」、「第1支持部材」のそれぞれ一例である。図3に示すように、第1押え板41は、トロイダル型コア31の軸方向において、複数のトロイダル型コア31の一方の側(−Z方向側)に位置する。言い換えると、第1押え板41は、−Z方向において、複数のトロイダル型コア31と並ぶ。第1押え板41は、+Z方向で複数のトロイダル型コア31に面する。第1押え板41は、R方向と略平行な面を有した矩形状の板材である。第1押え板41は、R方向においてトロイダル型コア31よりも大きな外形を有する。第1押え板41は、複数のトロイダル型コア31のなかで端に位置するトロイダル型コア31に+Z方向から接する。なお、本願で言う「トロイダル型コア31に接する」とは、トロイダル型コア31に巻かれた1次側巻線21に接する場合も含む。
【0027】
第1押え板41は、+Z方向において複数のトロイダル型コア31を支持する。なお本願で言う「支持する」とは、1つの部材に接することで、その部材に接する他の部材を間接的に支持することも含む。本実施形態では、第1押え板41は、複数のトロイダル型コア31のなかで端に位置する1つのトロイダル型コア31を支持することで、そのトロイダル型コア31に対して詰めて配置された複数のトロイダル型コア31を支持する。
また、第1押え板41には、+Z方向に沿って2次側巻線22が通る貫通穴41hが設けられている(図5参照)。
【0028】
第2押え板42は、「第2部材」、「第2支持板」、「第2支持部材」のそれぞれ一例である。第2押え板42は、図3に示すように、複数のトロイダル型コア31に対して、第1押え板41とは反対側に位置する。すなわち、第2押え板42は、−Z方向で複数のトロイダル型コア31に面する。第2押え板42は、例えば第1押え板41と略同じ外形を有する。第2押え板42は、複数のトロイダル型コア31のなかで端に位置するトロイダル型コア31に−Z方向から接する。第2押え板42は、複数のトロイダル型コア31を第1押え板41に向けて押さえる。これにより、第2押え板42は、−Z方向において複数のトロイダル型コア31を支持する。言い換えると、複数のトロイダル型コア31は、第1押え板41と第2押え板42との間に挟まれて保持される。これにより、複数のトロイダル型コア31のZ方向および−Z方向の位置が固定される。
また、第2押え板42には、+Z方向に沿って2次側巻線22が通る貫通穴42hが設けられている(図5参照)。
【0029】
複数の支持棒43の各々は、「第3部材」、「第3支持部材」のそれぞれ一例である。複数の支持棒43の各々は、図3に示すように、+Z方向に延びて第1押え板41と第2押え板42とを接続する。詳しく述べると、各支持棒43は、第1押え板41を貫通して、第1押え板41よりも−Z方向側に延びている。また、各支持棒43は、第2押え板42を貫通して、第2押え板42よりも+Z方向に延びている。なお、各支持棒43と第1押え板41および第2押え板42との接続構造については、詳しく後述する。
【0030】
図4に示すように、本実施形態では、複数の支持棒43として、3本の支持棒43が設けられている。なお、支持棒43の数は、上記に限定されない、支持棒43は、例えば4本以上でもよい。複数の支持棒43は、トロイダル型コア31の外周側に配置される。複数の支持棒43は、θ方向においてトロイダル型コア31の周りに分かれて配置される。複数の支持棒43は、θ方向において例えば等間隔に分かれて配置される。なお、支持棒43の間の間隔は、等間隔でなくてもよい。
【0031】
複数の支持棒43は、トロイダル型コア31のR方向の外側から複数のトロイダル型コア31を支持する。詳しく述べると、各支持棒43は、R方向の外側から複数のトロイダル型コア31の外周面31aを支持する。複数の支持棒43は、互いに異なる複数の方向からトロイダル型コア31を支持する。これにより、複数のトロイダル型コア31のR方向の位置が固定される。すなわち、複数のトロイダル型コア31は、複数の支持棒43によって挟み込まれる形で固定される。なお、本願で言う「トロイダル型コア31の外周面31aを支持する」とは、トロイダル型コア31に巻かれた1次側巻線21に接することでトロイダル型コア31の外周面31aを支持する場合も含む。
【0032】
なお、各支持棒43は、全てのトロイダル型コア31の外周面31aを直接に支持する必要は無く、少なくとも1つのトロイダル型コア31の外周面31aを支持すればよい。すなわち、トロイダル型コア31は、1次側巻線21の巻き数によって外径が異なる。このため、各支持棒43は、例えば1次側巻線21の巻き数が最も多いトロイダル型コア31の外周面31aを支持する。この場合、残りのトロイダル型コア31は、支持棒43によって支持されるトロイダル型コア31との間に生じる摩擦力によって支持される。また、例えば合成部15が横向きに配置される場合、トロイダル型コア31は、下方に位置する支持棒43の上に乗っているだけでもよい。すなわち、トロイダル型コア31は、上方に位置する支持棒43に接していなくてもよい。
【0033】
図4に示すように、支持棒43の断面(R方向に沿う断面)は、例えば円形状である。なお、支持棒43の断面形状は、上記例に限定されない。支持棒43の断面は、多角形やその他の形状でもよい。
【0034】
本実施形態では、各支持棒43は、第1押え板41および第2押え板42に対して、R方向に沿って、トロイダル型コア31に近付く方向と、トロイダル型コア31から離れる方向とに移動可能に設けられる。そこで以下に、上記移動を可能にする支持棒43の可動機構について説明する。
【0035】
図5は、第1押え板41の断面および第2押え板42の断面を示す。
図5に示すように、第1押え板41は、支持棒43に対応する位置に複数の第1穴41aを有する。第1穴41aは、+Z方向に第1押え板41を貫通した貫通穴である。また、第1穴41aは、R方向に沿って延びた長穴である。各支持棒43は、第1穴41aに挿入されている。各支持棒43は、第1穴41aの内部でR方向に沿って移動可能である(図5中の矢印A参照)。各支持棒43は、例えば、R方向に延びた第1穴41aの内周面に案内されて、R方向に沿って移動可能である。
【0036】
同様に、第2押え板42は、支持棒43に対応する位置に複数の第2穴42aを有する。第2穴42aは、−Z方向に第2押え板42を貫通した貫通穴である。また、第2穴42aは、R方向に沿って延びた長穴である。各支持棒43は、第2穴42aに挿入されている。各支持棒43は、第2穴42aの内部でR方向に沿って移動可能である(図5中の矢印B参照)。各支持棒43は、例えば、R方向に延びた第2穴42aの内周面に案内されて、R方向に沿って移動可能である。
【0037】
また、図5に示すように、第2押え板42は、複数の支持棒43に沿って、第1押え板41に近付く方向と、第1押え板41から離れる方向とに移動可能である(図5中の矢印C参照)。すなわち、第2押え板42は、第2穴42aに支持棒43が通されることで、支持棒43に沿って移動可能である。また、本実施形態では、第2押え板42は、複数の支持棒43に対して着脱可能に取り付けられている。すなわち、第2押え板42は、第1押え板41から離れる方向に移動されることで、支持棒43の−Z方向の端部から取り外し可能であるとともに、第1押え板41に近付く方向に移動されることで、支持棒43の−Z方向の端部から支持棒43に取り付け可能である。そして、第2押え板42は、複数のトロイダル型コア31を第1押え板41に向けて押さえる位置で、複数の支持棒43に固定されている。すなわち、第2押え板42は、該第2押え板42と、複数のトロイダル型コア31と、第1押え板41との間に隙間が無くまで第1押え板41の近くまで移動された状態で、支持棒43に固定されている。
【0038】
次に、第1押え板41および第2押え板42の固定構造について説明する。
図5に示すように、各支持棒43の外周面には、ねじ(ねじ山)45が形成されている。例えば、ねじ45は、各支持棒43の全長に亘って設けられている。なお、ねじ45は、後述する第1固定部材51および第2固定部材52が係合する各支持棒43の両端部のみに設けられてもよい。
【0039】
本実施形態の支持機構32は、支持棒43のねじ45に螺合して第1押え板41を固定する第1固定部材51と、支持棒43のねじ45に螺合して第2押え板42を固定する第2固定部材52とを有する。
【0040】
図5に示すように、第1固定部材51は、例えばナットである。第1固定部材51は、第1押え板41に対して、複数のトロイダル型コア31とは反対側に位置する。第1固定部材51は、支持棒43のねじ45に螺合して、第1押え板41に接している。第1固定部材51が支持棒43に取りつけられると、第1押え板41は、支持棒43から−Z方向に外れなくなる。第1固定部材51は、第1押え板41に対して+Z方向に向けて締められている。これにより、第1固定部材51は、複数のトロイダル型コア31に向かう力を第1押え板41に加える。これにより、第1固定部材51は、支持棒43と第1押え板41とを固定する。
【0041】
同様に、第2固定部材52は、例えばナットである。第2固定部材52は、第2押え板42に対して、複数のトロイダル型コア31とは反対側に位置する。第2固定部材52は、支持棒43のねじ45に螺合して、第2押え板42に接している。第2固定部材52が支持棒43に取り付けられると、第2押え板42は、支持棒43から+Z方向に外れなくなる。第2固定部材52は、第2押え板42に対して−Z方向に向けて締められている。これにより、第2固定部材52は、複数のトロイダル型コア31に向かう力を第2押え板42に加える。これにより、第2固定部材52は、支持棒43と第2押え板42とを固定する。
【0042】
以上の構成によれば、第1固定部材51は、第1押え板41から反力を受ける。第2固定部材52は、第2押え板42から反力を受ける。第1固定部材51および第2固定部材52が第1押え板41および第2押え板42から反力を受けると、第1固定部材51と第1押え板41との間の摩擦力、および第2固定部材52と第2押え板42との間の摩擦力が大きくなる。その結果、支持棒43がR方向に沿って移動しなくなる。すなわち、第1固定部材51および第2固定部材52は、第1押え板41および第2押え板42から受ける反力によって、支持棒43のR方向の位置を固定する。
【0043】
次に、本実施形態の合成部15の組み立て方法の一例について説明する。
まず、第1押え板41の第1穴41aに各支持棒43が挿入される。また、支持棒43には、第1固定部材51が取り付けられる。これにより、第1押え板41の位置が定まる。
【0044】
一方で、トロイダル型コア31は、1次側巻線21が巻かれた状態で準備されている。第1押え板41と支持棒43とが接続された後、複数のトロイダル型コア31が複数の支持棒43の間に収容される。すなわち、第1押え板41に対して複数のトロイダル型コア31が詰めて並べられる。例えば、合成部15は、+Z方向を上方に向けた姿勢で組み立てられる。この場合、第1押え板41が合成部15の下部に位置する。複数のトロイダル型コア31は、第1押え板41の上に積層されることで、複数の支持棒43の間に収容される。このとき、複数の支持棒43は、R方向においてトロイダル型コア31の外径よりも外側の位置に逃がされている。このため、トロイダル型コア31は、複数の支持棒43の間にスムーズに収容される。
【0045】
第1押え板41に対して複数のトロイダル型コア31が詰めて並べられた後に、第2押え板42が支持棒43に取り付けられる。具体的には、第2押え板42の第2穴42aに支持棒43が通されることで、第2押え板42が支持棒43に取り付けられる。このとき、第2押え板42は、支持棒43に沿って移動可能である。例えば、第2押え板42は、上下方向に積層された複数のトロイダル型コア31の上に載せられる。これにより、第2押え板42は、複数のトロイダル型コア31に対して詰めて並べられる。
【0046】
例えば、支持棒43に第2押え板42が取り付けられた後、複数の支持棒43がR方向の内側に向けて移動される。各支持棒43は、それぞれ少なくとも1つのトロイダル型コア31に接する位置まで移動される。各支持棒43がR方向の内側に移動することで、各トロイダル型コア31は、複数の支持棒43の間に挟まれて位置が固定される。なお、支持棒43の移動は、支持棒43に第2押え板42が取り付けられる前に行われてもよい。
【0047】
次に、支持棒43に第2固定部材52が取り付けられる。そして、第1固定部材51および第2固定部材52の少なくとも一方が締める方向に回転されることで、第1押え板41と第2押え板42とが固定される。また、第1固定部材51および第2固定部材52の少なくとも一方が締める方向に回転されることで、各支持棒43のR方向の位置が固定される。2次側巻線22は、例えば複数のトロイダル型コア31の位置が固定された後に、複数のトロイダル型コア31の内部に連続して通される。これにより、合成部15が形成される。
【0048】
なお、合成部15の組み立て方法は、上記例に限られない。例えば、支持棒43に対して第1押え板41および第2押え板42が先に取り付けられ、その後に、トロイダル型コア31が複数の支持棒43の間に挿入されてもよい。この場合、トロイダル型コア31の挿入時には、支持棒43は、R方向においてトロイダル型コア31の外径よりも外側の位置に逃がされている。そして、複数の支持棒43の間にトロイダル型コア31が挿入された後、支持棒43がR方向の内側に移動されることで、トロイダル型コア31が固定される。
【0049】
次に、合成部15を収容する筐体60に対する合成部15の取付構造を説明する。
図3に示すように、デジタル振幅変調装置1は、合成部15を収容する筐体60を有する。合成部15は、筐体60の内面に固定される。詳しく述べると、合成部15は、一対の第1取付部材61A,61Bと、一対の第2取付部材62A,62Bとによって筐体60に取り付けられる。
【0050】
一方の第1取付部材61Aの一端部は、R方向において、トロイダル型コア31の中心軸Cから見て複数の支持棒43の外側で、第1合成ユニット15aの第1押え板41に固定される。第1取付部材61Aの他端部は、筐体60の内面に固定される。同様に、他方の第1取付部材61Bの一端部は、R方向において、トロイダル型コア31の中心軸Cから見て複数の支持棒43の外側で、第1合成ユニット15aの第2押え板42に固定される。第1取付部材61Bの他端部は、筐体60の内面に固定される。例えば、第1取付部材61A,61Bは、筐体60、第1押え板41、および第2押え板42に対して、ねじのような締結部材によって固定される。
【0051】
また、一方の第2取付部材62Aの一端部は、R方向において、トロイダル型コア31の中心軸Cから見て複数の支持棒43の外側で、第2合成ユニット15bの第1押え板41に固定される。第2取付部材62Aの他端部は、筐体60の内面に固定される。同様に、他方の第2取付部材62Bの一端部は、R方向において、トロイダル型コア31の中心軸Cから見て複数の支持棒43の外側で、第2合成ユニット15bの第2押え板42に固定される。第2取付部材62Bの他端部は、筐体60の内面に固定される。例えば、第2取付部材62A,62Bは、筐体60、第1押え板41、および第2押え板42に対して、ねじのような締結部材によって固定される。
これにより、第1合成ユニット15aおよび第2合成ユニット15bが筐体60に固定される。
【0052】
このような構成によれば、トランス200の巻線数を容易に変更することができ、作業性の向上を図ることができる合成部15を提供することができる。すなわち、トランス200の巻数比は、所望する2次側電圧に応じて変更される場合がある。なお、トランス200の巻数比の変更は、例えばトロイダル型コア31に巻かれる1次側巻線21の巻き数が変更されることで行われる。また、所望の2次側電圧を得るために、トロイダル型コア31の数が変更されることもある。
【0053】
ここで、1つの比較例として、複数のトロイダル型コアを互いに離して支持するとともに、各トロイダル型コアが取り付けられる溝が設けられた支持部材について考える。ここで、例えば1次側巻線の巻き数が変更されると、1次側巻線を含むトロイダル型コアの厚みが変化し、トロイダル型コアが上記支持部材の溝に嵌らなくなる場合がある。すなわち、上記のような支持部材において1次側巻線の巻き数を変更しようとすると、1次側巻線の巻き数に応じて溝の形状の変更が必要になる場合がある。また、上記のような支持部材によって支持可能なトロイダル型コアの数は、予め設けられた溝の数によって制約を受ける。
【0054】
また、別の比較例として、トロイダル型コアを保持する支持板を設け、この支持板が取り付けられる溝が支持部材に設けられた支持機構について考える。このような支持機構によれば、1次側巻線の巻き数の変更が一定量以下であれば、巻き数の変更をスムーズに行うことができる。ただし、1次側巻線の巻き数の変更が一定量以上である場合、すなわち、1次側巻線を含むトロイダル型コアの厚みが所定のよりも大きくなる場合、予め設けられた溝では対応することが難しい場合がある。また、上記のような支持機構によって支持可能なトロイダル型コアの数は、予め設けられた溝の数によって制約を受ける。
【0055】
一方で、本実施形態の合成部15は、複数のトロイダル型コア31と、第1押え板41と、第2押え板42と、複数の支持棒43とを備える。複数のトロイダル型コア31は、トランス200の1次側巻線21が巻かれ、且つ、トランス200の2次側巻線が内部を通る。複数のトロイダル型コア31は、トロイダル型コア31の軸方向に並べられている。第1押え板41は、前記軸方向で複数のトロイダル型コア31の一方の側に位置する。第2押え板42は、複数のトロイダル型コア31に対して第1押え板41とは反対側に位置し、第1押え板41に向けて複数のトロイダル型コア31を押さえる。複数の支持棒43は、θ方向に分かれて配置され、R方向の外側から複数のトロイダル型コア31を支持する。複数の支持棒43の少なくとも1つは、第1押え板41に対してR方向に沿って移動可能である。
【0056】
このような構成によれば、複数のトロイダル型コア31は、第1押え板41、第2押え板42、および複数の支持棒43によって支持され、位置が固定される。すなわち、上記構成によれば、トロイダル型コア31が取り付けられる溝、またはトロイダル型コア31を保持する支持板が取り付けられる溝を支持機構に設ける必要が無くなる。上記のような溝を設ける必要が無くなると、1次側巻線21の巻き数が大きく増減した場合でも、第1押え板41、第2押え板42、および複数の支持棒43の形状などを変更することなく、各トロイダル型コア31を支持することができる。すなわち、本実施形態の支持機構32によれば、1次側巻線21の巻き数の変更の自由度が大きいとともに、その変更に容易に対応することができる。
【0057】
また、上記構成によれば、支持機構に溝を設ける必要が無くなるので、トロイダル型コア31の数が予め設けられた溝の数によって制約を受けない。複数のトロイダル型コア31は、例えば詰めて配置される。このため、トロイダル型コア31の数の変更の自由度が大きくなる。すなわち、上記構成によれば、トロイダル型コア31の数の増減に対して柔軟に対応することができる。また、上記構成によれば、トロイダル型コア31自体の厚みに関する制約も無くなるので、種々の形状のトロイダル型コア31を採用することも可能になる。
【0058】
また、上記構成によれば、トロイダル型コアや、トロイダル型コアを保持する支持板を、支持機構の溝に1つひとつ挿入するような作業を行う必要が無くなる。このため、上記構成によれば、合成部15の組立性を向上させることができる。
【0059】
また、上記構成によれば、第2押え板42と支持棒43の位置を変化させることで、各トロイダル型コア31の取り付け、および取り外しを個別に行うことができる。すなわち、トランス200の巻数比の変更を行う際に、全てのトロイダル型コア31を外す必要が無く、各々のトロイダル型コア31を単体で取り外すこともできる。このため、例えば1次側巻線21の巻き数の変更が必要なトロイダル型コア31だけを取り外し、1次側巻線21の巻き数の変更を行うことができる。このため、合成部15の分解作業や組立作業を効率的に行うことができ、配線作業性も良好である。
【0060】
さらに、上記構成によれば複数のトロイダル型コア31を互いに詰めて配置することができる。このため、例えば予め所定の距離を空けて溝が設けられた支持部材に比べて、合成部15の小型化を図ることができる。
【0061】
本実施形態では、第1押え板41と第2押え板42とは、複数の支持棒43によって接続されている。このような構成によれば、第1押え板41と第2押え板42とを接続する別部材を設ける必要が無くなるので、支持機構32の構成を単純化することができる。これにより、合成部15の小型化および低コスト化を図ることができる。
【0062】
本実施形態では、第1押え板41は、R方向に沿って延びた第1穴41aを有する。複数の支持棒43の少なくとも1つは、第1穴41aに挿入されており、第1穴41aの内部でR方向に沿って移動可能である。このような構成によれば、互いに接続される第1押え板41と支持棒43において、比較的簡単な構成によって、第1押え板41に対して支持棒43を移動可能に設けることができる。
【0063】
本実施形態では、第2押え板42は、複数の支持棒43に沿って、第1押え板41に近付く方向と、第1押え板41から遠ざかる方向とに移動可能である。第2押え板42は、複数のトロイダル型コア31を第1押え板41に向けて押さえる位置で複数の支持棒43の少なくとも1つに固定されている。
このような構成によれば、1次側巻線21の巻き数が変更され、1次側巻線21を含むトロイダル型コア31の厚みに変化が生じる場合でも、第2押え板42の位置を柔軟に変更することで、トロイダル型コア31の厚みの変化に容易に対応することができる。これにより、トランス200の巻線数の変更にさらに容易に対応することができる。
【0064】
本実施形態では、第2押え板42は、複数の支持棒43に対して着脱可能に取り付けられる。このような構成によれば、支持棒43から第2押え板42を外した状態で、複数のトロイダル型コア31を複数の支持棒43の間の挿入可能である。このため、合成部15の組立作業や分解作業をさらに効率的に行うことができる。
【0065】
本実施形態では、第2押え板42は、R方向に沿って延びた第2穴42aを有する。複数の支持棒43の少なくとも1つは、第2穴42aに挿入されており、第2穴42aの内部でR方向に沿って移動可能である。このような構成によれば、互いに接続される第2押え板42と支持棒43において、比較的簡単な構成によって、第2押え板42に対して支持棒43を移動可能に設けることができる。
【0066】
本実施形態では、複数の支持棒43の少なくとも1つの外周面31aには、ねじ45が形成されている。複数の支持棒43の少なくとも1つには、ねじ45に螺合して、複数のトロイダル型コア31に向かう力を第1押え板41に加える第1固定部材51が取り付けられている。
このような構成によれば、複数のトロイダル型コア31を第1押え板41によってさらに安定して支持することができる。
【0067】
本実施形態では、複数の支持棒43の少なくとも1つには、ねじ45に係合して、複数のトロイダル型コア31に向かう力を第2押え板42に加える第2固定部材52が取り付けられている。第1固定部材51および第2固定部材52は、第1固定部材51および第2固定部材52が取り付けられた支持棒43のR方向の位置を、第1押え板41および第2押え板42から受ける反力によって固定している。
このような構成によれば、複数のトロイダル型コア31を第2押え板42によってさらに安定して支持することができる。また、比較的簡単な構成によって、支持棒43のR方向の位置を固定することができる。これにより、支持棒43の移動に関する作業の作業性をさらに高めることができる。
【0068】
本実施形態のデジタル振幅変調装置1は、上述した合成部15を備えているため、トランス200の巻線数を容易に変更することができ、作業性の向上を図ることができる。
【0069】
次に、第1の実施形態のいくつかの変形例について説明する。なお、以下に説明する以外の構成は、上述した第1の実施形態の構成と同様である。また、以下に示す全ての変形例は、後述する第2の実施形態においても適用可能である。
【0070】
(第1の変形例)
図6は、第1の変形例の合成部15を示す。
図6に示すように、本変形例では、少なくとも1つの第1穴41aは、支持棒43の外径に対応する丸穴である。また、少なくとも1つの第2穴42aは、支持棒43の外径に対応する丸穴である。このため、丸穴である第1穴41aおよび第2穴42aに挿入された支持棒43は、R方向の位置が固定されている。
このような構成によれば、少なくとも1つの支持棒43のR方向の位置が安定して定まるため、合成部15の組立性を向上させることができる場合もある。なお、第1押え板41および第2押え板42に対してR方向の位置が固定された支持棒43の数は、1つに限らず、2つ以上でもよい。
【0071】
(第2の変形例)
図7は、第2の変形例の合成部15を示す。
図7に示すように、本変形例では、第1合成ユニット15aの第1押え板41と、第2合成ユニット15bの第1押え板41とは、ひとつの第1押え板41によって一体に形成されている。同様に、第1合成ユニット15aの第2押え板42と、第2合成ユニット15bの第2押え板42とは、ひとつの第2押え板42によって一体に形成されている。
このような構成によれば、部品点数が少なくなるため、合成部15の低コスト化や組立性の向上を図ることができる。
【0072】
(第3の変形例)
図8は、第3の変形例の合成部15を示す。なお、ここでは説明の便宜上、片方の合成ユニット(第1合成ユニット15a)のみを示す。
図8に示すように、本変形例では、複数のトロイダル型コア31の間に、絶縁性のスペーサ81が設けられる。すなわち、本変形例では、複数のトロイダル型コア31とスペーサ81とが交互に配置されている。また、複数のトロイダル型コア31と複数のスペーサ81は、−Z方向に詰めて配置されている。スペーサ81は、複数のトロイダル型コア31の1次側巻線21同士を電気的に隔離する。
【0073】
スペーサ81は、例えばトロイダル型コア31と略同じ外径を有する筒状に形成される。すなわち、スペーサ81の中央部には、−Z方向に沿って2次側巻線22が通る貫通穴81hが設けられている。
【0074】
複数の支持棒43は、R方向の外周側から、複数のスペーサ81の外周面81aに接して複数のスペーサ81の外周面81aを支持する。これにより、複数の支持棒43は、複数のスペーサ81のR方向の位置を固定する。
【0075】
このような構成によれば、複数のトロイダル型コア31の1次側巻線21同士の間の絶縁性をさらに確実に確保することができる。また、スペーサ81は、例えば柔軟性(弾性)を有してもよい。スペーサ81が柔軟性を有すると、各トロイダル型コア31の1次側巻21の巻き方などに偏りがある場合でも、巻き方に起因する歪みなどをスペーサ81によって吸収することができる。これにより、複数のトロイダル型コア31を軸方向に沿って並べやすくなる。
【0076】
(第2の実施形態)
次に、図9および図10を参照して、第2の実施形態の送信機用の合成部15およびデジタル振幅変調装置1を説明する。本実施形態は、2次側巻線22の配線経路に関する点で、上記第1の実施形態とは異なる。なお、本実施形態のその他の構成は、上記第1の実施形態と同様である。
【0077】
図9は、本実施形態の合成部15を示す平面図である。
本実施形態は、2次側巻線22が、トランス201〜20nの1次側巻線21にそれぞれ対向するように並列接続されたものである。すなわち、複数の2次側巻線22の各々は、接地された一端から延びて1つのトロイダル型コア31の内部(貫通穴31h)のみを通るとともに、フィルタ部16に電気的に接続されている。これにより、並列加算型の合成部15が形成されている。
また、複数のトロイダル型コア31の間にはスペーサ81が設けられている。これにより、複数のトロイダル型コア31の間に、2次側巻線22が通る隙間が空けられている。
【0078】
図10は、図9中に示されたスペーサ81のF10−F10線に沿う断面図である。
図10に示すように、スペーサ81は、例えばトロイダル型コア31と略同じ外径を有する筒状に形成されている。スペーサ81は、複数の支持棒43の間に収容され、R方向の外側から複数の支持棒43によって支持される。これにより、スペーサ81のR方向の位置が固定される。
また、スペーサ81は、2次側巻線22がR方向に通る切欠き部81bを有する。すなわち、2次側巻線22は、切欠き部81bを通ることで、スペーサ81の内部からスペーサ81の外部に延びている。
【0079】
このような構成によれば、上記第1の実施形態と同様に、トランス200の巻線数を容易に変更することができ、作業性の向上を図ることができる合成部15およびデジタル振幅変調装置1を提供することができる。
【0080】
以上、いくつかの実施形態と変形例について説明した。なお、実施形態および変形例は、上記説明したものに限定されない。例えば、上記いくつかの実施形態とその変形例では、トロイダル型コア31の一例として、Mn−Zn系のフェライトコアを示した。ただし、トロイダル型コア31は、Ni−Zn系のフェライトコアや、純鉄や電磁鋼鈑、アモルファス金属(Fe)やナノ材料などの軟磁性材料で形成されたトロイダル型コアでもよい。
上記いくつかの実施形態とその変形例では、中波放送用の装置を一例として取り上げ、単一の正弦波信号や矩形波信号を合成し、AM波を生成する合成部について説明した。なお上記実施形態は、上記例に限らず、振幅や周波数・位相を変化させて、FM波(周波数変調波:Frequency Modulation Wave)やOFDM波(Orthogonal Frequency Division Multiplexing Wave)などを生成する合成部およびデジタル振幅変調装置にも適用可能である。
また、合成部15は、例えば、鉛直方向に沿う縦置きタイプとして使用されるものでもよく、水平方向に沿う横置きタイプとして使用されるものでもよい。
【0081】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、送信機用の合成部は、複数のトロイダル型コアと、第1押え板と、第2押え板と、複数の支持棒とを持つ。前記第1押え板は、トロイダル型コアの軸方向で前記複数のトロイダル型コアの一方の側に位置する。前記第2押え板は、前記複数のトロイダル型コアに対して前記第1押え板とは反対側に位置し、前記第1押え板に向けて前記複数のトロイダル型コアを押さえる。前記複数の支持棒は、前記複数のトロイダル型コアの周方向に分かれて配置され、前記複数のトロイダル型コアの径方向の外側から前記複数のトロイダル型コアを支持する。前記複数の支持棒の少なくとも1つは、前記第1押え板に対して前記径方向に沿って移動可能である。このような構成によれば、トランスの巻線数を容易に変更することができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0083】
1…デジタル振幅変調装置、15…合成部、20…トランス、21…1次側巻線、22…2次側巻線、31…トロイダル型コア、41…第1押え板(第1支持部材)、41a…第1穴、42…第2押え板(第2支持部材)、42a…第2穴、43…支持棒(第3支持部材)、45…ねじ、51…第1固定部材、52…第2固定部材、C…中心軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10