特許第6584865号(P6584865)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584865
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】モノグリセリド含有組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C11C 3/02 20060101AFI20190919BHJP
   C07C 69/52 20060101ALI20190919BHJP
   C07C 67/08 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   C11C3/02
   C07C69/52
   C07C67/08
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-163361(P2015-163361)
(22)【出願日】2015年8月21日
(65)【公開番号】特開2016-44310(P2016-44310A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2018年6月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-169462(P2014-169462)
(32)【優先日】2014年8月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 実
(72)【発明者】
【氏名】福原 真平
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−083390(JP,A)
【文献】 特開2003−049192(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/085031(WO,A1)
【文献】 特開2003−252829(JP,A)
【文献】 特開2004−359885(JP,A)
【文献】 特開平01−268663(JP,A)
【文献】 特開2003−012602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 1/00−15/00
C11C 1/00− 5/02
C07C67/08
C07C69/30
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程(1)及び(2):
(1)グリセリンとトール脂肪酸を、グリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]が0.1〜2.0となる範囲でエステル化反応させた後、未反応のグリセリンを回収する工程、
(2)工程(1)で回収したグリセリンを含むグリセリンとトール脂肪酸をエステル化反応させる工程、
を含む、トール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
【請求項2】
エステル化反応を180〜300℃で0.2〜48時間行う請求項1記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
【請求項3】
工程(2)において、工程(1)で回収したグリセリンを3質量%以上含むグリセリンを用いる請求項1又は2記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
【請求項4】
工程(2)において、グリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]が0.1〜2.0となる範囲でエステル化反応を行う請求項1〜3のいずれか1項記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
【請求項5】
工程(2)の後に、未反応のグリセリンを回収し、当該回収したグリセリンを含むグリセリンとトール脂肪酸をエステル化反応させる操作を繰り返す工程を含む請求項1〜4のいずれか1項記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
【請求項6】
トール脂肪酸のヨウ素価が100gI/100g以上である請求項1〜5のいずれか1項記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
【請求項7】
工程(1)において使用するトール脂肪酸中の不ケン化物の含有量が0.3質量%以上である請求項1〜6のいずれか1項記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノグリセリド含有組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染の防止対策として、世界的な軽油の低硫黄化が進んでいる。軽油中の硫黄分の低下はエンジンの潤滑性の低下につながり、燃料ポンプ摩耗等のトラブルの原因となる。
トール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリドは、その水酸基が金属表面に吸着し、アルキル基が油性膜を形成し潤滑性を向上させるため、軽油の油性向上剤として広く使用されている。
【0003】
トール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリドの主な製法として、グリセリンと脂肪酸とのエステル化反応、あるいはグリセリンと油脂とのエステル交換反応が挙げられ、グリセリン脂肪酸エステルとグリセリンとを無触媒下で反応系内の酸価を1mgKOH/g以上に保持してエステル交換反応させる方法(特許文献1)、グリセリンと脂肪酸を特定の金属を含む触媒を用いて反応させる方法(特許文献2)等により、モノグリセリドの収率を上げる方法が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−49192号公報
【特許文献2】特開2004−359884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、モノグリセリドを油性向上剤として軽油に使用する場合、実用上、潤滑性能のみならず低温耐性が求められる。例えば、モノグリセリドの特に寒冷地での冬期間の使用を考慮した条件についても耐性が求められる。
したがって、本発明は、低温での結晶化がより抑制されたトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物を製造する方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を行ったところ、トール脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応によるモノグリセリドの製造において、エステル化反応に使用されずに残存した未反応のグリセリンを回収し、これを再度エステル化反応の原料として使用することで、トール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリドの低温析出温度が低下することを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の工程(1)及び(2):
(1)グリセリンとトール脂肪酸を、グリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]が0.1〜2.0となる範囲でエステル化反応させた後、未反応のグリセリンを回収する工程、
(2)工程(1)で回収したグリセリンを含むグリセリンとトール脂肪酸をエステル化反応させる工程、
を含む、トール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、曇点が低く、低温耐性に優れたトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物(以下、モノグリセリド含有組成物と略す)の製造方法は、次の工程(1)及び(2)を含むものである。
(1)グリセリンとトール脂肪酸を、グリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]が0.1〜2.0となる範囲でエステル化反応させた後、未反応のグリセリンを回収する工程、
(2)工程(1)で回収したグリセリンを含むグリセリンとトール脂肪酸をエステル化反応させる工程。
【0010】
工程(1)は、グリセリンとトール脂肪酸を、グリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]が0.1〜2.0となる範囲でエステル化反応させた後、未反応のグリセリンを回収する工程である。
本発明において使用するトール脂肪酸は、好ましくは松材を原料としてクラフトパルプを製造する際に副生する粗トール油から得られる脂肪酸である。尚、トール脂肪酸はトール油脂肪酸と称されることもあるが、本明細書ではトール脂肪酸と記載する。
【0011】
トール脂肪酸の脂肪酸組成は、松の生育地等により相違するものの、一般的にはオレイン酸、リノール酸を主成分とし、好ましくは若干のパルミチン酸、ステアリン酸、ロジン酸、不ケン化物を含む。
本発明において使用するトール脂肪酸は、モノグリセリド含有組成物の低温での析出抑制の点から、パルミチン酸とステアリン酸を合計した飽和脂肪酸が10質量%以下、更に6質量%以下、更に4質量%以下であり、不ケン化物が0.3質量%以上、更に0.6質量%以上、更に1質量%以上のものが好ましい。
トール脂肪酸におけるパルミチン酸とステアリン酸との合計量は、入手容易性の観点から、0.1質量%以上、更に0.5質量%以上、更に1質量%以上が好ましい。
また、トール脂肪酸における不ケン化物の量は、入手容易性の観点から、4質量%以下、更に3質量%以下、更に2.5質量%以下が好ましい。
また、トール脂肪酸は、潤滑性の観点から、オレイン酸とリノール酸の合計が50質量%以上、更に60質量%以上、更に70質量%以上のものが好ましく、入手容易性の観点から、98質量%以下、更に95質量%以下のものが好ましい。
リノール酸に対するオレイン酸の比率は、1.6以下、更に1.3以下、更に1以下のものが好ましい。
また、トール脂肪酸は、5,9,12−オクタデカトリエン酸を1質量%以上、更に2質量%以上、更に4質量%以上含むものが好ましい。
【0012】
本発明において使用するトール脂肪酸は、モノグリセリド含有組成物の低温での析出抑制の点から、ヨウ素価が100gI/100g以上、更に120gI/100g以上、更に140gI/100g以上のものが好ましい。
ヨウ素価は、脂肪酸中に存在する不飽和二重結合の総数の指標であり、日本油化学会編「基準油脂分析試験法」中の「ヨウ素価(ウィス−シクロヘキサン法)(2.3.4.1−1996)」に従って測定できる。
【0013】
本発明において使用するグリセリンは、エステル化の反応性の点から、純度95質量%以上のものが好ましい。
【0014】
本発明において、グリセリンとトール脂肪酸とをエステル化する方法は、従来公知の化学法、酵素法が挙げられ、いずれの方法も使用できる。工業的な効率的生産性の点からは、化学法が好ましい。
【0015】
工程(1)において、エステル化反応を行う際のグリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]は0.1〜2.0であるが、反応生成物の生産性向上の点から、0.2以上、更に0.3以上、更に0.4以上、更に0.5以上とするのが好ましく、また、モノグリセリド純度向上の点から、1.8以下、更に1.5以下、更に1以下とするのが好ましい。また、グリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]は0.1〜2.0、更に0.2〜1.8、更に0.3〜1.5、更に0.4〜1が好ましく、0.5〜1がより好ましい。
グリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]は、下式で表される。
FA/GLY=(脂肪酸のモル数+モノグリセリドのモル数+ジグリセリドのモル数×2+トリグリセリドのモル数×3)/(グリセリンのモル数+モノグリセリドのモル数+ジグリセリドのモル数+トリグリセリドのモル数)
【0016】
工程(1)において、エステル化反応を化学法で行う場合、エステル化反応の温度は、反応速度を向上する点、モノグリセリド含有組成物の低温での析出抑制の点から、180〜300℃、更に200〜280℃、更に220〜260℃が好ましい。
また、反応時間は、工業的な生産性の点、モノグリセリド含有組成物の低温での析出抑制の点から、0.2〜48時間、更に0.5〜24時間、更に1〜12時間が好ましい。
【0017】
エステル化反応は、効率的にモノグリセリドを得る点から、反応生成水を反応系外に除去しながら行われることが好ましい。例えば、減圧;ゼオライト、モレキュラーシーブス等の吸収剤の利用;反応槽中への乾燥した不活性ガスの通気等の方法により、系外に除去されるのが好ましい。
【0018】
また、エステル化反応を化学法で行う場合、触媒を添加しても、無触媒としてもよい。無触媒で反応することが、モノグリセリド含有組成物の触媒除去が不要で、コストを削減できることから好ましい。触媒を添加する場合、反応時間の短縮、触媒除去の負担を軽減の点から、鉄、コバルト、マンガン等の金属を含む触媒が好ましい。
触媒の使用量は、0.01〜1000ppm、更に0.1〜100ppmが好ましい。
【0019】
エステル化反応を行った後の反応物中には、モノグリセリドの他、未反応物として脂肪酸及びグリセリン、副生成物としてトリグリセリド、ジグリセリドが存在する。また、グリセリンの脱水縮合物と脂肪酸とのモノエステルが含まれ得る。本発明の態様においては、エステル化反応後の反応物から、未反応のグリセリンを回収して、再利用する。
グリセリンを回収する方法としては、例えば、遠心分離によりグリセリン層を回収する方法、減圧蒸留によりグリセリンを回収する方法、水蒸気蒸留によりグリセリンを回収する方法、分層によりグリセリン層を回収する方法、水洗により回収する方法、吸着剤等を用いて回収する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらを組み合わせても良い。なかでも、簡便な点から、減圧蒸留によりグリセリンを回収するのが好ましい。回収されたグリセリンには、グリセリンのみならず未反応のグリセリン同士が反応したグリセリン縮合物やトール油脂肪酸由来の不ケン化物等不純物も含まれる。
【0020】
グリセリンを回収する減圧蒸留の条件は、圧力は0.1〜10kPaであることが好ましく、更に0.1〜5kPaであることが、設備コストや運転コストを小さくする点、生産能力を上げる点、温度を最適に選定できる点、熱劣化を抑制する点から好ましい。
温度は、副反応を抑制する点、熱劣化を抑制の点から、140〜260℃、更に150〜250℃、更に160〜240℃であるのが好ましい。時間は、副反応を抑制する点、熱劣化を抑制の点から、1〜600分、更に5〜300分、更に10〜180分であるのが好ましい。
【0021】
減圧蒸留装置は、バッチ単蒸留装置、バッチ精留装置、連続精留装置、フラッシュ蒸発装置、薄膜式蒸発装置等が挙げられる。バッチ式減圧蒸留は、エステル化反応から減圧蒸留まで一連のプロセスをひとつの槽で行えることから好ましい。反応生成物を減圧下で加熱して、発生したグリセリン蒸気を冷却トラップするとふたたび液体のグリセリンの状態に戻る。前記方法は、モノグリセリド含有組成物とグリセリンの蒸気圧の差を利用した分離方法である。また、蒸留での熱劣化を抑制できる点からは、薄膜式蒸発装置を用いることができる。薄膜式蒸発装置とは、蒸留原料を薄膜状にして加熱し、留分を蒸発させる形式の蒸発装置である。薄膜式蒸発装置としては、薄膜を形成する方法によって、遠心式薄膜蒸留装置、流下膜式蒸留装置、ワイプトフィルム蒸発装置(Wiped film distillation)等が挙げられる。この中でも、局部的な過熱を防ぎ反応油の熱劣化等をさける点からは、ワイプトフィルム蒸発装置を用いることが好ましい。ワイプトフィルム蒸発装置とは、筒状の蒸発面の内側に蒸留原料を薄膜状に流し、ワイパーで薄膜攪拌を行い、外部から加熱し、留分を蒸発させる装置である。
【0022】
工程(2)は、工程(1)で回収したグリセリンを含むグリセリンとトール脂肪酸をエステル化反応させる工程である。すなわち、工程(2)では、回収グリセリン、必要に応じて新たに追加するグリセリン、及びトール脂肪酸を含むエステル化反応原料を用いて、モノグリセリドを製造する。
【0023】
工程(2)で使用するグリセリンは、その一部に回収グリセリンを用いてもよいし、全部を回収グリセリンとしてもよい。回収されたグリセリンに含まれるジグリセリン等のグリセリン縮合物やトール脂肪酸由来の不ケン化物等の不純物は分離することなく、そのまま工程(2)で用いることが、モノグリセリド含有組成物の低温での析出抑制の点から好ましい。例えば、回収グリセリン中、ジグリセリンは0.01〜1質量%、更に0.015〜0.7質量%、更に0.02〜0.4質量%含むのが好ましい。
【0024】
工程(2)で使用するグリセリンの一部に回収グリセリンを用いる場合、回収グリセリンは、モノグリセリド含有組成物の低温での析出抑制の点から、グリセリン全量中、3質量%以上、更に5質量%以上、更に10質量%以上が好ましく、また、工業的生産性の点から、工程(1)で回収したグリセリンをタンク等に貯蔵しておき、全量を回収グリセリンに置き換えてもよい。また、回収グリセリンは、グリセリン全量中に3〜100質量%、更に5〜100質量%、更に10〜100質量%、更に15〜100質量%、更に18〜100質量%が好ましい。
【0025】
工程(2)において、グリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]は、反応生成物のモノグリセリド純度向上の点から、0.1〜2.0、更に0.2〜1.8、更に0.3〜1.5、更に0.4〜1、更に0.5〜1とするのが好ましい。また、後述するように、工程(2)の後、回収グリセリンを再度エステル化反応の原料として使用する場合は、グリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]は、0.1〜2.0、更に0.2〜1.8、更に0.3〜1.5、更に0.4〜1、更に0.5〜1とするのが好ましい。
【0026】
工程(2)におけるエステル化反応の温度や時間等は、特に制限されないが、工程(1)と同じであることが好ましい。
【0027】
本発明においては、ディーゼル燃料へのモノグリセリド含有組成物の溶解性の点から、工程(2)の後に、未反応のグリセリンを回収し、当該回収したグリセリンを含むグリセリンとトール脂肪酸をエステル化反応させる操作を繰り返す工程を行うことが好ましい。
回収グリセリンを、エステル化反応原料のグリセリンの一部又は全部として再使用するリサイクル回数は、1回以上、更に2回以上、更に3回以上であるのが好ましい。
【0028】
かくして得られるモノグリセリド含有組成物は、曇点が低く、低温耐性に優れる。本発明のモノグリセリド含有組成物の曇点は、−60℃〜10℃、更に−50℃〜0℃、好ましくは−40℃〜−10℃である。
本明細書においてモノグリセリド含有組成物の曇点は、透明な油相が濁り始める温度であり、後記実施例記載の方法により測定することができる。
【0029】
本発明の方法により得られるモノグリセリド含有組成物の曇点は、工程(1)で得られるエステル化反応後の反応物の曇点に対して、0.3℃以上、更に0.5℃以上、更に1℃以上低下することが好ましい。この曇点低下幅は、〔モノグリセリド含有組成物の曇点(℃)〕−〔工程(1)で得られるエステル化反応後の反応物の曇点(℃)〕で求めることができる。
【0030】
本発明の方法により得られるモノグリセリド含有組成物は、燃料添加物として使用されるエンジン潤滑性の点から、モノグリセリドの純度が10質量%以上、更に20質量%以上、30質量%以上であるのが好ましい。
モノグリセリドの純度は、モノグリセリド/(モノグリセリド+ジグリセリド+トリグリセリド)×100(質量%)で求めることができる。
【0031】
また、本発明の方法により得られるモノグリセリド含有組成物の酸価(AV)は、エンジン腐食抑制の点から、2mgKOH/g以下、更に1mgKOH/g以下、更に0.5mgKOH/g以下であるのが好ましい。
【0032】
本発明の方法により得られるモノグリセリド含有組成物は、燃料添加物として使用されるエンジン潤滑性の点から、本発明の方法により副生するグリセリンの脱水縮合物と脂肪酸とのモノエステル、例えば、ジグリセリンモノエステルを0.01〜1.5質量%、更に0.025〜1.3質量%、更に0.05〜1.1質量%含むのが好ましい。
【0033】
本発明の方法により得られるモノグリセリド含有組成物は、一般のモノグリセリド含有組成物と同様に使用できる。なかでも、油性向上剤、例えば、ディーゼル燃料等の燃料や潤滑油基油等の燃料油添加剤として好適である。
【0034】
上述した実施形態に関し、本発明は、更に以下の製造方法を開示する。
【0035】
<1>次の工程(1)及び(2):
(1)グリセリンとトール脂肪酸を、グリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]が0.1〜2.0となる範囲でエステル化反応させた後、未反応のグリセリンを回収する工程、
(2)工程(1)で回収したグリセリンを含むグリセリンとトール脂肪酸をエステル化反応させる工程、
を含む、トール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
【0036】
<2>トール脂肪酸中、パルミチン酸とステアリン酸を合計した飽和脂肪酸の含有量が好ましくは10質量%以下、更に好ましくは6質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である<1>に記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<3>トール脂肪酸中、パルミチン酸とステアリン酸を合計した飽和脂肪酸の含有量が好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上である<1>又は<2>に記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<4>トール脂肪酸中、オレイン酸とリノール酸の合計含有量が好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である<1>〜<3>のいずれか1に記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<5>トール脂肪酸中、オレイン酸とリノール酸の合計含有量が好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下である<1>〜<4>のいずれか1に記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<6>トール脂肪酸中、リノール酸に対するオレイン酸の比率が好ましくは1.6以下、更に好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.0以下である、<1>〜<5>のいずれかに記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<7>トール脂肪酸中、不ケン化物の含有量が好ましくは0.3質量%以上、更に0.6質量%以上、更に1質量%以上である、<1>〜<6>のいずれかに記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<8>トール脂肪酸中、不ケン化物の含有量が好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下である、<1>〜<7>のいずれかに記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<9>トール脂肪酸中、5,9,12−オクタデカトリエン酸の含有量が好ましくは1質量%以上、更に2質量%以上、更に4質量%以上である、<1>〜<8>のいずれかに記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<10>トール脂肪酸のヨウ素価が、好ましくは100gI/100g以上、更に好ましくは120gI/100g以上、更に好ましくは140gI/100g以上である<1>〜<9>のいずれかに記載のモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<11>工程(1)において、エステル化反応を行う際のグリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]が、好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上、更に好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.5以下、更に好ましくは1以下である<1>〜<10>のいずれかに記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<12>工程(1)において、エステル化反応を行う際のグリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]が、好ましくは0.2〜1.8、更に好ましくは0.3〜1.5、更に好ましくは0.4〜1、更に好ましくは0.5〜1である<1>〜<10>のいずれかに記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<13>エステル化反応の温度が、好ましくは180〜300℃、更に好ましくは200〜280℃、更に好ましくは220〜260℃である<1>〜<12>のいずれかに記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<14>エステル化反応の反応時間が、好ましくは0.2〜48時間、更に好ましくは0.5〜24時間、更に好ましくは1〜12時間である<1>〜<13>のいずれかに記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<15>グリセリンを回収する方法が、好ましくは遠心分離によりグリセリン層を回収する方法、減圧蒸留によりグリセリンを回収する方法、水蒸気蒸留によりグリセリンを回収する方法、分層によりグリセリン層を回収する方法、水洗により回収する方法、又は吸着剤等を用いて回収する方法であり、更に好ましくは減圧蒸留によりグリセリンを回収する方法である<1>〜<14>のいずれかに記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<16>グリセリンを回収する減圧蒸留の条件が、圧力は好ましくは0.1〜10kPa、更に好ましくは0.1〜5kPaであり、温度は好ましくは140〜260℃、更に好ましくは150〜250℃、更に好ましくは160〜240℃であり、時間は好ましくは1〜600分、更に好ましくは5〜300分、更に好ましくは10〜180分である<15>に記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<17>工程(2)において、回収されたグリセリンに含まれるグリセリン縮合物やトール脂肪酸由来の不ケン化物等の不純物は分離することなくそのまま用いる<1>〜<16>のいずれかに記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<18>工程(2)において、回収されたグリセリンに含まれるジグリセリンの量が0.01〜1質量%、更に0.015〜0.7質量%、更に0.02〜0.4質量%である<1>〜<17>のいずれかに記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<19>工程(2)において、工程(1)で回収したグリセリンを好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、更に好ましくは18質量%以上含み、また、好ましくは100質量%以下含む<1>〜<18>のいずれかに記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<20>工程(2)において、グリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]が好ましくは0.1〜2.0、更に好ましくは0.2〜1.8、更に好ましくは0.3〜1.5、更に好ましくは0.4〜1、更に好ましくは0.5〜1となる範囲でエステル化反応を行う<1>〜<19>のいずれかに記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<21>工程(2)の後に、未反応のグリセリンを回収し、当該回収したグリセリンを含むグリセリンとトール脂肪酸をエステル化反応させる操作を繰り返す工程を含む<1>〜<20>のいずれかに記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
<22>回収グリセリンを、エステル化反応原料のグリセリンの一部又は全部として再使用するリサイクル回数が好ましくは1回以上、更に好ましくは2回以上、更に好ましくは3回以上である<21>に記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の製造方法。
【0037】
<23><1>〜<22>のいずれかに記載の製造方法により得られるトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物。
<24>曇点が好ましくは−60℃〜10℃、更に好ましくは−50℃〜0℃、更に好ましくは−40℃〜−10℃である<23>に記載のモノグリセリド含有組成物。
<25>酸価(AV)が好ましくは2mgKOH/g以下、更に好ましくは1mgKOH/g以下、更に好ましくは0.5mgKOH/g以下である<23>又は<24>に記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物。
<26>ジグリセリンモノエステルを好ましくは0.01〜1.5質量%、より好ましくは0.025〜1.3質量%、更に好ましくは0.05〜1.1質量%含む<23>〜<25>のいずれか1に記載のトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物。
【実施例】
【0038】
〔分析方法〕
(i)モノグリセリド含有組成物のグリセリン、ジグリセリン及びグリセリド組成、並びに回収グリセリン中のジグリセリン
ガラス製サンプル瓶に、油脂サンプル約10mgとトリメチルシリル化剤(「シリル化剤TH」、関東化学製)0.5mLを加え、密栓し、70℃で15分間加熱した。これに水1.0mLとヘキサン1.5mLを加え、振とうした。静置後、上層をガスクロマトグラフィー(GLC)に供して分析した。
<GLC分析条件>
装置:アジレント6890シリーズ(アジレントテクノジー社製)
インテグレーター:ケミステーションB 02.01 SR2(アジレントテクノジー社製)
カラム:DB−1ht(Agilent J&W社製) キャリアガス:1.0mL He/min
インジェクター:Split(1:50)、T=320℃
ディテクター:FID、T=350℃
オーブン温度:80℃から10℃/分で340℃まで昇温、15分間保持
【0039】
(ii)トール脂肪酸及び蒸留大豆脂肪酸の脂肪酸組成
日本油化学会編「基準油脂分析試験法」中の「脂肪酸メチルエステルの調製法(2.4.1.−1996)」に従って脂肪酸メチルエステルを調製し、得られた油脂サンプルを、American Oil Chemists. Society Official Method Ce 1f−96(GLC法)により測定した。
<GLC分析条件>
カラム:CP−SIL88 100m×0.25mm×0.2μm (VARIAN)
キャリアガス:1.0mL He/min
インジェクター:Split(1:200)、T=250℃
ディテクター:FID、T=250℃
オーブン温度:174℃で50分保持後、5℃/分で220℃まで昇温、25分間保持
【0040】
(iii)ヨウ素価(IV)の測定
日本油化学会編「基準油脂分析試験法」中の「ヨウ素価(ウィス−シクロヘキサン法)(2.3.4.1−1996)」に従って測定した。
【0041】
(iv)酸価(AV)の測定
酸価は日本油化学会編「基準油脂分析試験法2003年版」中の「酸価(2.3.1−1996)」に従って測定した。
【0042】
(vi)不ケン化物の測定
不ケン化物は日本油化学会編「基準油脂分析試験法2003年版」中の「不けん化物(3.3.4−1996)」に従って測定した。
【0043】
(v)モノグリセリド含有組成物の曇点の測定
モノグリセリド含有組成物をメンブレンフィルター孔径(1μm)で濾別後、高感度型示差走査熱量計(DSC7020、SII製)を用いて曇点を測定した。分析条件は、30℃から70℃まで10℃/分で昇温し、70℃で5分保持して完全溶解した。その後、トール脂肪酸を用いたモノグリセリド含有組成物は−10℃/分で−5℃まで冷却し、−0.5℃/分で−40℃まで冷却した。他方、大豆脂肪酸を用いたモノグリセリド含有組成物は−10℃/分で10℃まで冷却し、−0.5℃/分で−15℃まで冷却した。
【0044】
〔大豆脂肪酸の調製〕
未脱臭大豆油を、リパーゼを用いた酵素分解法による加水分解反応を行った。10L4ツ口フラスコに未脱臭大豆油を4.2kg、蒸留水を4.2kg投入後、撹拌(半月翼Φ90mm×H25mm:300r/min)しながら40℃に昇温した。リパーゼAY(天野エンザイム製)を42g添加後、10L4ツ口フラスコ内の気相部は窒素に置換し窒素雰囲気下として加水分解反応を開始した。48時間後に、反応液を遠心分離(5,000×g,10分)し、水相を除去後、油相を水洗した。次いで、油相を温度70℃、真空度400Paで30分間、減圧で脱水した。次いで、ワイプトフィルム蒸発装置((株)神鋼環境ソルーション 2−03型、内径5cm、伝熱面積0.03m2)を用いて薄膜蒸留を行った。加熱ヒーター温度設定230℃、圧力1〜2Pa、流量150g/hの条件で操作し、未反応の未脱臭大豆油や部分グリセリドを除去して大豆脂肪酸を得た。
【0045】
トール脂肪酸はSylfat 2LTC(ARIZONA Chemical製)を用いた。トール脂肪酸と蒸留大豆脂肪酸の分析値を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例1
〔初回〕
半月翼(Φ90mm×H25mm)を取り付けた1L4ツ口フラスコに、グリセリン160.4g、トール脂肪酸439.6gを入れ、1L4ツ口フラスコ内の気相部を窒素に置換した。その後、窒素を液上空間部に20mL/分の流量で流しながら400r/minで撹拌しながら、約30分かけて250℃まで昇温した。250℃に達した後、その温度で3時間エステル化反応させた。次いで、約20分かけて70℃まで冷却し、1L4ツ口フラスコと真空ポンプの間に冷却管とグリセリンを回収する200mLナスフラスコを取り付けた。400r/minで撹拌しながら、減圧し130Paに調整した。約20分かけて200℃まで昇温して脱グリセリンを行った。昇温中にグリセリンの留出が始まり真空度が低下したが、グリセリンの留出が終わると130Paで一定となった。脱グリセリンを30分行った後、70℃まで冷却してモノグリセリド含有組成物を得た。また、脱グリセリンによって39.9gのグリセリンを回収した。
【0048】
〔リサイクル1回〕
〔初回〕で回収したグリセリン35.91g、グリセリン124.5g、トール脂肪酸439.6gをエステル化反応原料とし、〔初回〕と同様にしてモノグリセリド含有組成物を得た。また、脱グリセリンによって41.5gのグリセリンを回収した。
【0049】
〔リサイクル2回〕
〔リサイクル1回〕で回収したグリセリン37.4g、新たに追加したグリセリン123g、トール脂肪酸439.6gをエステル化反応原料とし、〔初回〕と同様にしてモノグリセリド含有組成物を得た。また、脱グリセリンによって36.8gのグリセリンを回収した。
【0050】
〔リサイクル3回〕
〔リサイクル2回〕で回収したグリセリン33.1g、新たに追加したグリセリン127.3g、トール脂肪酸439.6gをエステル化反応原料とし、〔初回〕と同様にしてモノグリセリド含有組成物を得た。また、脱グリセリンによって34.4gのグリセリンを回収した。
【0051】
〔リサイクル4回〕
〔リサイクル3回〕で回収したグリセリン30.1g、新たに追加したグリセリン130.3g、トール脂肪酸439.6gをエステル化反応原料とし、〔初回〕と同様にしてモノグリセリド含有組成物を得た。
各段階におけるエステル化反応条件、グリセリンの回収条件、回収グリセリンの分析結果、モノグリセリド含有組成物の分析結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
実施例2
〔初回〕
エステル化反応を1時間とした他は、実施例1と同じ方法で、モノグリセリド含有組成物を得た。また、脱グリセリンによって42.2gのグリセリンを回収した。
【0054】
〔リサイクル1回〕
〔初回〕で回収したグリセリン38.0g、グリセリン122.4g、トール脂肪酸439.6gをエステル化反応原料とし、〔初回〕と同様にしてモノグリセリド含有組成物を得た。また、脱グリセリンによって35.5gのグリセリンを回収した。
【0055】
〔リサイクル2回〕
〔リサイクル1回〕で回収したグリセリン32.0g、新たに追加したグリセリン128.4g、トール脂肪酸439.6gをエステル化反応原料とし、〔初回〕と同様にしてモノグリセリド含有組成物を得た。また、脱グリセリンによって41.2gのグリセリンを回収した。
【0056】
〔リサイクル3回〕
エステル化反応に用いるグリセリンは、回収グリセリンのみとした。〔リサイクル2回〕で回収したグリセリン36.5g、トール脂肪酸100.0gをエステル化反応原料とし、〔初回〕と同様にしてモノグリセリド含有組成物を得た。
各段階におけるエステル化反応条件、グリセリンの回収条件、回収グリセリンの分析結果、モノグリセリド含有組成物の分析結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
比較例1
〔初回〕
エステル化反応の原料脂肪酸を大豆脂肪酸とした他は、実施例1と同じ方法で、モノグリセリド含有組成物を得た。また、脱グリセリンによって37.5gのグリセリンを回収した。
【0059】
〔リサイクル1回〕
〔初回〕で回収したグリセリン33.8g、新たに追加したグリセリン126.6g、大豆脂肪酸439.6gをエステル化反応原料とし、〔初回〕と同様にしてモノグリセリド含有組成物を得た。また、脱グリセリンによって39.9gグリセリンを回収した。
【0060】
〔リサイクル2回〕
〔リサイクル1回〕で回収したグリセリン35.9g、新たに追加したグリセリン124.5g、大豆脂肪酸439.6gをエステル化反応原料とし、〔初回〕と同様にしてモノグリセリド含有組成物を得た。また、脱グリセリンによって43.8gグリセリンを回収した。
【0061】
〔リサイクル3回〕
〔リサイクル2回〕で回収したグリセリン39.4g、新たに追加したグリセリン121.0g、大豆脂肪酸439.6gをエステル化反応原料とし、〔初回〕と同様にしてモノグリセリド含有組成物を得た。また、脱グリセリンによって42.3gグリセリンを回収した。
【0062】
〔リサイクル4回〕
〔リサイクル3回〕で回収したグリセリン38.1g、新たに追加したグリセリン122.3g、大豆脂肪酸439.6gをエステル化反応原料とし、〔初回〕と同様にしてモノグリセリド含有組成物を得た。
各段階におけるエステル化反応条件、グリセリンの回収条件、回収グリセリンの分析結果、モノグリセリド含有組成物の分析結果を表4に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
表2〜3より明らかなように、グリセリンとトール脂肪酸のエステル化反応後、未反応のグリセリンを回収し、これを再度エステル化反応の原料として使用することで、得られるトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の曇点が低下した。また、回収したグリセリンを全量用いてエステル化反応しても、得られるモノグリセリド含有組成物の曇点は低下した。
他方、表4より明らかなように、大豆脂肪酸の場合は、グリセリンのリサイクルにより、むしろ得られるモノグリセリド含有組成物の曇点等は上昇することが確認された。
【0065】
実施例3
〔初回〕
グリセリン237.9g、トール脂肪酸362.1gを入れた他は、実施例1と同じ方法で、モノグリセリド含有組成物を得た。また、脱グリセリンによって146.6gのグリセリンを回収した。
【0066】
〔リサイクル1回〕
〔初回〕で回収したグリセリン131.9g、グリセリン106g、トール脂肪酸362.1gをエステル化反応原料とし、〔初回〕と同様にしてモノグリセリド含有組成物を得た。また、脱グリセリンによって141.0gのグリセリンを回収した。
【0067】
〔リサイクル2回〕
〔リサイクル1回〕で回収したグリセリン126.9g、新たに追加したグリセリン111g、トール脂肪酸362.1をエステル化反応原料とし、〔初回〕と同様にしてモノグリセリド含有組成物を得た。
各段階におけるエステル化反応条件、グリセリンの回収条件、回収グリセリンの分析結果、モノグリセリド含有組成物の分析結果を表5に示す。
【0068】
【表5】
【0069】
表5より明らかなように、グリセリンとトール脂肪酸のエステル化反応後、未反応のグリセリンを回収し、これを再度エステル化反応の原料として使用することで、得られるトール脂肪酸を構成脂肪酸とするモノグリセリド含有組成物の曇点が低下した。