特許第6584890号(P6584890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584890
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】逆転防止機構付きアンカーボルト
(51)【国際特許分類】
   F16B 13/06 20060101AFI20190919BHJP
   F16B 39/02 20060101ALI20190919BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20190919BHJP
   E02D 27/00 20060101ALI20190919BHJP
   F16B 39/20 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   F16B13/06 B
   F16B39/02 Q
   E04B1/41 503G
   E02D27/00 A
   F16B39/20 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-183893(P2015-183893)
(22)【出願日】2015年9月17日
(65)【公開番号】特開2017-57940(P2017-57940A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】592145268
【氏名又は名称】JR東日本コンサルタンツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】397000160
【氏名又は名称】株式会社豊和
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】安藤 有希
(72)【発明者】
【氏名】柳井 徹
【審査官】 鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3086141(JP,U)
【文献】 実公昭40−013692(JP,Y1)
【文献】 特開2015−087003(JP,A)
【文献】 特開2011−052767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 13/00− 13/14,
23/00− 43/02
F16F 9/00− 9/58
E02D 27/00
E04B 1/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面(1)に設けた取付孔(2)の開口に差し込んで当該取付孔(2)に固定する逆転防止機構付きアンカーボルトであって、
外周面に雄ねじ(3)を形成しているロッド(4)と、そのロッド(4)の雄ねじ(3)が螺着する雌ねじ(6)を形成しているテーパー部材(7)と、そのテーパー部材(7)に外嵌する当接部(12)と、前記当接部(12)をつないでいる弾性変形可能な架橋部(13)と、前記ロッド(4)の逆転を抑える逆転防止機構とを有しており、
前記テーパー部材(7)の外周面には、当該テーパー部材(7)の中心軸に近づくように傾斜している平面形状の傾斜面(10)を形成しており、前記当接部(12)は、前記傾斜面(10)に面接触する内面(11)を有し、
前記取付孔(2)の開口に差し込んだ前記テーパー部材(7)を前記取付孔(2)の開口側に移動させることで、前記当接部(12)が、前記テーパー部材(7)の傾斜面(10)によって前記取付孔(2)の内周面(2a)側に押されて当該取付孔(2)の内周面(2a)に押し付けられて、前記アンカーボルトが前記取付孔(2)に固定されるようになっており、
前記逆転防止機構は、コイルバネ(17)からなり、
そのコイルバネ(17)のバネ本体(17a)は、前記ロッド(4)の雄ねじ(3)のねじ溝(3a)に嵌合しており、
前記コイルバネ(17)の一端部(17b)は、前記テーパー部材(7)に係止されており、
前記コイルバネ(17)の他端部(17c)は、前記バネ本体(17a)から前記ロッド(4)の径方向へ延びており、
前記コイルバネ(17)は、前記ロッド(4)が正転するときには前記バネ本体(17a)が径方向に広がって、前記テーパー部材(7)が前記取付孔(2)の開口側に移動することを許容する一方で、前記ロッド(4)が逆転するときには前記バネ本体(17a)が径方向に縮まって、前記ロッド(4)の逆転を抑え
前記架橋部(13)は、前記ロッド(4)の先端側に配置している本体部位(13a)と、前記本体部位(13a)の縁から延びて前記当接部(12)の先端部につないでいる接続部位(13b)と、を有しており、
前記接続部位(13b)は、前記本体部位(13a)の縁から前記架橋部(13)の外方へ斜め方向に延びたのち、長さ方向の中間で前記架橋部(13)の内方へ屈曲して、前記接続部位(13b)の自由端部に前記当接部(12)の先端部をつないでおり、前記アンカーボルトを前記取付孔(2)に差し込んだ際には、前記接続部位(13b)の中間部や前記当接部(12)が前記取付孔(2)の内周面(2a)に押し付けられることを特徴とする逆転防止機構付きアンカーボルト。
【請求項2】
前記ロッド(4)の先端部(4a)が、前記テーパー部材(7)の先端面(7a)から突出していて、そのロッド(4)の先端部(4a)の雄ねじ(3)のねじ溝(3a)に前記コイルバネ(17)のバネ本体(17a)が嵌合しており、
前記コイルバネ(17)の一端部(17b)は、折れ曲がって前記テーパー部材(7)の先端面(7a)に形成している係止孔(18)に差し込まれて係止されており、
前記コイルバネ(17)の他端部(17c)は、前記バネ本体(17a)から前記テーパー部材(7)の先端面(7a)に沿って前記ロッド(4)の径方向へ延びていることを特徴とする請求項記載の逆転防止機構付きアンカーボルト。
【請求項3】
前記コイルバネ(17)の他端部(17c)は、平面視で前記テーパー部材(7)の先端面(7a)よりも外方へは突出していないことを特徴とする請求項1又は2記載の逆転防止機構付きアンカーボルト。
【請求項4】
前記本体部位(13a)は、薄平板状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の逆転防止機構付きアンカーボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩壁の表面やコンクリート製の天井などの壁面に設けた取付孔の開口に差し込んで当該取付孔に固定する逆転防止機構付きアンカーボルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンカーボルトとしては、例えば特許文献1で示すように構成したものが提案されている。そのアンカーボルトには、設備機器や配管などを取り付け可能なロッドと、そのロッドの雄ねじに螺着する雌ねじを貫通状に形成しているテーパー部材とを有している。
【0003】
そのテーパー部材の外周には軸方向に対して斜めに延びる傾斜面を形成しており、またテーパー部材には拡開部材を外嵌している。その拡開部材には、テーパー部材の傾斜面に面接触可能な傾斜面状の内面を形成している当接部を有している。
【0004】
そして、ロッドに螺着したテーパー部材に拡開部材(当接部)を外嵌した状態で、当該アンカーボルトを前記取付孔の奥まで差し込んだのち、例えばロッドを引っ張って取付孔の開口側に移動させることで、拡開部材の当接部がテーパー部材の傾斜面に押されて取付孔の内周面に押し付けられる。
【0005】
その結果、当接部の外周面と取付孔の内周面との間の摩擦などによってアンカーボルトが取付孔に固定される。なお、その際には拡開部材(当接部)は、前記取付孔の内周面に引っかかるなどによってテーパー部材に連れ立って取付孔の開口側に移動することが抑えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−87003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記アンカーボルトにあっては、例えば、前記ロッドに取り付けた設備機器などが振動すると、その振動に伴ってロッドが回転する場合がある。その場合、ロッドの回転方向によっては、ねじ作用でテーパー部材が取付孔の奥側に移動し、当接部の内面に対するテーパー部材の傾斜面の押す力が低下してロッドが振動し易くなる。
【0008】
その結果、前記設備機器などがさらに大きく振動し、その振動によって騒音や設備機器などのがたつきなどを招いてしまうといった問題がある。
【0009】
本発明は、かかる不都合を解決することを目的として提供されたものであり、取付孔に対するアンカーボルトの固定状態を確実に維持することができる逆転防止機構付きアンカーボルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる不都合を解決するために、壁面1に設けた取付孔2の開口に差し込んで取付孔2に固定する逆転防止機構付きアンカーボルトであって、外周面に雄ねじ3を形成しているロッド4と、ロッド4の雄ねじ3が螺着する雌ねじ6を形成しているテーパー部材7と、テーパー部材7に外嵌する当接部12と、ロッド4の逆転を抑える逆転防止機構とを有しており、テーパー部材7の外周面には、テーパー部材7の中心軸に近づくように傾斜している傾斜面10を形成しており、取付孔2の開口に差し込んだテーパー部材7を取付孔2の開口側に移動させることで、当接部12が、テーパー部材7の傾斜面10によって取付孔2の内周面2a側に押されて取付孔2の内周面2aに押し付けられて、アンカーボルトが取付孔2に固定されるようになっており、逆転防止機構は、ロッド4が正転してねじ作用でテーパー部材7が取付孔2の開口側に移動することを許容する一方で、ロッド4の逆転を抑えることを特徴とする。
【0011】
ここでの壁面1には、岩壁やトンネルなどの土木構造物や建築物の天井および側壁などの壁面が含まれる。ここでの逆転防止機構としては、ロッド4の雄ねじ3にコイルバネなどのバネを嵌合させて、そのコイルバネなどでロッド4の逆転を抑えるものや、ロッド4の雄ねじ3に楔状のワッシャを嵌めて、そのワッシャでロッド4の逆転を抑えるものなどが該当する。
【0012】
具体的には、前記逆転防止機構は、コイルバネ17からなり、コイルバネ17のバネ本体17aは、ロッド4の雄ねじ3のねじ溝3aに嵌合しており、コイルバネ17の一端部17bは、テーパー部材7に係止されており、コイルバネ17の他端部17cは、バネ本体17aからロッド4の径方向へ延びており、そのコイルバネ17は、ロッド4が正転するときにはバネ本体17aが径方向に広がって、テーパー部材7が取付孔2の開口側に移動することを許容する一方で、ロッド4が逆転するときにはバネ本体17aが径方向に縮まって、ロッド4の逆転を抑える。
【0013】
ここでのコイルバネ17の一端部17bには、テーパー部材7の先端面7aなどに設けた孔や溝や切欠きなどに係止される場合や、テーパー部材7の先端面7aに設けた突起などに押し当たって係止される場合などが該当する。コイルバネ17は、テーパー部材7よりも先端側に突出しているロッド4の箇所に配置する場合と、テーパー部材7よりも基端側のロッド4の箇所に配置する場合とが含まれる。ここでは、コイルバネ17の他端部17cが、ロッド4の中心軸側からテーパー部材7の先端面7aの縁へ真っ直ぐ延びている場合や、ロッド4の中心軸に対して斜めに延びている場合や、湾曲しながら延びている場合などが含まれる。
【0014】
詳しくは、ロッド4の先端部4aが、テーパー部材7の先端面7aから突出していて、ロッド4の先端部4aの雄ねじ3のねじ溝3aにコイルバネ17のバネ本体17aが嵌合しており、コイルバネ17の一端部17bは、折れ曲がってテーパー部材7の先端面7aに形成している係止孔18に差し込まれて係止されており、コイルバネ17の他端部17cは、バネ本体17aからテーパー部材7の先端面7aに沿ってロッド4の径方向へ延びている。
【0015】
より詳しくは、コイルバネ17の他端部17cは、平面視でテーパー部材7の先端面7aよりも外方へは突出していない。
【発明の効果】
【0016】
本発明の逆転防止機構付きアンカーボルトでは、逆転防止機構が、ロッド4が正転してねじ作用でテーパー部材7が取付孔2の開口側に移動することを許容する一方で、ロッド4の逆転を抑えるので、例えばロッド4に取り付けた設備機器などの振動に伴ってロッド4が逆転しようとしても、前記逆転防止機構によって前記逆転が抑えられる。
【0017】
それにより、前記ロッド4の逆転によって、ねじ作用でテーパー部材7が取付孔2の奥側に移動することを抑えることができる。従って、そのテーパー部材7の移動によって当接部12の内面11に対するテーパー部材7の押す力が低下して(テーパー部材7が緩んで)、そのテーパー部材7を介してロッド4が振動し易くなることが抑えられる。その結果、前記設備機器などが大きく振動して、騒音や設備機器などのがたつきなどを招くことを抑えることができる。つまり、取付孔2に対するアンカーボルトの固定状態を確実に維持することができる。
【0018】
一方、前記設備機器などの振動に伴ってロッド4が正転する場合には、その正転に伴って、ねじ作用でテーパー部材7が取付孔2の開口側に移動しようとし、それによって当接部12の内面11に対するテーパー部材7の押す力が強くなり、アンカーボルトが取付孔2の内周面2aによりしっかりと固定され、ロッド4がより振動し難くなる。その結果、取付孔2に対するアンカーボルトの固定状態をより確実に維持することができ、前記設備機器などが振動することがより抑えられて、前記騒音や設備機器などのがたつきなどをより確実に抑えることができる。
【0019】
逆転防止機構がコイルバネ17からなると、部品点数が一個だけで済む分だけ逆転防止機構を低コストで製作することができる。そのコイルバネ17の他端部17cがロッド4の径方向へ延びているので、例えば、そのコイルバネ17の他端部17cを指などで摘んでバネ本体17aが径方向に広がる方向に容易に回すことができる。
【0020】
それにより、例えばロッド4をテーパー部材7から取り外す場合に、前述のようにコイルバネ17の他端部17cを指などで摘んで回すことで、バネ本体17aによるロッド4を締め付ける力が弱まり、ロッド4を容易に逆転させて当該ロッド4をテーパー部材7から取り外すことができる。
【0021】
テーパー部材7の先端面7aから突出するロッド4の先端部4aの雄ねじ3のねじ溝3aにコイルバネ17のバネ本体17aを嵌合すると、ロッド4の先端から当該コイルバネ17のバネ本体17aまでの距離を短くでき、その分だけコイルバネ17のバネ本体17aへのロッド4のねじ込みの量を抑えることができる。それにより、アンカーボルトの組み立ての手間を軽減することができる。
【0022】
コイルバネ17の他端部17cが、平面視でテーパー部材7の先端面7aよりも外方へは突出していないと、そのコイルバネ17の他端部17cが当接部12などに干渉することが防がれて、テーパー部材7の傾斜面10を確実に当接部12の内面11に接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の逆転防止機構付きアンカーボルトの斜視図である。
図2】本発明のアンカーボルトに用いるテーパー部材の斜視図である。
図3】ロッドにテーパー部材およびコイルばねを装着した側面図である。
図4】ロッドにテーパー部材およびコイルばねを装着した平面図である。
図5】本発明のアンカーボルトの要部を示す縦断面図である。
図6】テーパー部材にロッドを組み付ける状態を示す側面図である。
図7】アンカーボルトを取付孔へ差し込む際の状態を示す断面図である。
図8】アンカーボルトにブラケットなどを取り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の逆転防止機構付きアンカーボルトの一実施例を説明する。そのアンカーボルトは、図8に示すように、例えば、コンクリート製の天井の壁面1に上向き設けている取付孔2の開口に差し込んで当該取付孔2に固定し、その固定したのちのアンカーボルトに設備機器や配管などを取り付けるようになっている。なお、前記アンカーボルトは、前記設備機器などの取り付けのみならず、岩盤の固定などにも使用することができる。
【0025】
前記アンカーボルトは、図1および図3に示すように、外周面に雄ねじ3を形成している円柱形状のロッド4と、アンカーボルトを前記取付孔2の円柱面形状の内周面2a(図8参照)に固定するための拡開機構5とを有している。
【0026】
前記拡開機構5は、図2および図3に示すように、軸方向(図3では上下方向)に斜めに延びる五個の平面形状の傾斜面10を外周面に形成しているテーパー部材7と、図1および図7に示すように、そのテーパー部材7に外嵌する拡開部材8とを有している。つまり、テーパー部材7の各傾斜面10は、基端側(図7では下端側)に向かうに従ってテーパー部材7の中心軸に近づくように傾斜しているとともに、テーパー部材7の周方向に等間隔で配置している。そのテーパー部材7には、その中心軸に沿って前記ロッド4の雄ねじ3が螺着する雌ねじ6を貫通状に形成している。
【0027】
前記拡開部材8は、図1および図8に示すように、テーパー部材7の各傾斜面10にそれぞれ当接可能な五個の当接部12と、弾性変形可能な架橋部13とを有している。各当接部12の内面11は、テーパー部材7の各傾斜面10に面接触している状態(図8の状態)で、アンカーボルトの基端側(図8では下端側)に向かうに従ってテーパー部材7の中心軸に近づくように傾斜している。
【0028】
前記架橋部13は、図1および図7に示すように、その本体部位13aの縁から五個の接続部位13bがそれぞれ架橋部13の外方へ斜め下方向に延び、長さ方向の中間で架橋部13の内方へ屈曲したのちに当接部12の先端部(図7では上端部)をそれぞれつないでいる。各当接部12の外周面15は、前記取付孔2の内周面2aと同様の円柱面形状に形成していて、各当接部12の外周面15が取付孔2の内周面2aに面接触可能になっている。前記ロッド4と前記テーパー部材7と前記架橋部13とは、ステンレススチールなどで形成してあり、前記各当接部12は、アルミニウム合金などで形成してある。
【0029】
ロッド4の先端部4aは、図3および図5に示すように、テーパー部材7の先端面7aから突出していて、そのロッド4の先端部4aの雄ねじ3のねじ溝3aには、バネ本体17aが弾性的に嵌合するコイルバネ17(逆転防止機構)を配置している。そのコイルバネ17のバネ本体17aのコイル内径は、自由状態(図6の実線図の状態)でロッド4の雄ねじ3の谷径L1以下になっている。
【0030】
それにより、コイルバネ17のバネ本体17aをロッド4の先端部4aの雄ねじ3のねじ溝3aに嵌合させるときには、そのコイルバネ17のバネ本体17aが弾性変形して拡径し、その弾性復元力でバネ本体17aはロッド4の雄ねじ3のねじ溝3aに密着する(図5の状態)。なお、コイルバネ17のバネ本体17aの巻き方向は、ロッド4の雄ねじ3のねじ山の巻き方向と同一方向にしている。
【0031】
コイルバネ17の一端部17b(図3および図5では上端側)は、下向き(図3参照)に折れ曲がってテーパー部材7の先端面7a(図3および図5では上端面)に形成している係止孔18に差し込まれて係止されている。コイルバネ17の他端部17c(図3および図5では下端部)は、図4に示すように、バネ本体17aからテーパー部材7の先端面7aに沿ってロッド4の径方向へ延びている一方で、図4の平面視でテーパー部材7の先端面7aよりも外方へは突出していない。
【0032】
そして、ロッド4を正転(図4では反時計回り方向)させると、コイルバネ17のバネ本体17aには巻き方向とは逆方向の力が加わり、当該バネ本体17aは径方向に広がる(拡径する)ように弾性変形する。それによってバネ本体17aはロッド4の雄ねじ3のねじ溝3aへの密着が抑えられてロッド4は容易に正転でき、その正転によってねじ作用でテーパー部材7が取付孔2の開口側に移動する。つまり、コイルバネ17は、テーパー部材7が取付孔2の開口側に移動することを許容することになる。
【0033】
一方、ロッド4を逆転(図4では時計回り方向)させようとすると、コイルバネ17のバネ本体17aとロッド4の雄ねじ3のねじ溝3aとの摩擦によって前記バネ本体17aに巻き方向の力が加わって、バネ本体17aが径方向に縮まろうとする(縮径しようとする)。それによってバネ本体17aがロッド4の雄ねじ3のねじ溝3aに強く締め付けられてロッド4の逆転が抑えられる。その結果、ロッド4の逆転によってテーパー部材7が取付孔2の奥側に移動することが抑えられる。
【0034】
なお、コイルバネ17の一端部17bは、図4の平面視でバネ本体17aからその周方向に斜めに延びたのちに下向きに折れ曲がっている。それにより、コイルバネ17やテーパー部材7の製造誤差などによって、コイルバネ17の一端部17bの折れ曲がったのちのその下端がテーパー部材7の係止孔18からずれていても、コイルバネ17の一端部17bなどを容易に弾性変形させて、そのコイルバネ17の一端部17bの下端をテーパー部材7の係止孔18に差し込むことができる。
【0035】
各当接部12の外周面15の下部(自由端側)には、図1に示すように、複数本(本実施例では二本)の溝20を当該当接部12の長さ方向に並べて形成しており、その溝20は、各当接部12の外周面15の周方向へ延びている。
【0036】
次いで、本発明の逆転防止機構付きアンカーボルトの作用を説明する。まず、アンカーボルトの組み立ての一例を説明すると、図6に示すように、コイルバネ17の一端部17bをテーパー部材7の先端面7aの係止孔18に差し込んで、コイルバネ17をテーパー部材7に係止する。その状態で、テーパー部材7の雌ねじ6の基端(図6では下端)からロッド4を正転させながらねじ込む。
【0037】
そして、そのままロッド4の先端部4aの雄ねじ3を前記コイルバネ17のバネ本体17aの内側にねじ込んで、ロッド4の先端部4aの雄ねじ3にコイルバネ17のバネ本体17aを嵌合させる(図3の状態)。つまり、テーパー部材7の先端面7aから突出したロッド4の先端部4aの雄ねじ3のねじ溝3aにコイルバネ17のバネ本体17aが嵌合することになる。そのテーパー部材7に、図1および図7に示すように、拡開部材8(当接部12)を外嵌する。それにより、アンカーボルトの組み立てが完了する。
【0038】
そのアンカーボルトを作業者が、拡開機構5を上にした姿勢(図7の姿勢)でロッド4を手で持って前記取付孔2に差し込む。そのアンカーボルトを取付孔2の奥まで差し込んだ際には(図8の状態)、架橋部13の接続部位13bや当接部12が、取付孔2の内周面2aに押し付けられて摩擦などによって架橋部13が取付孔2の内周面2aに仮止めされる。
【0039】
その状態で、例えば、工具を使ってロッド4を取付孔2の開口側に引っ張ると、テーパー部材7が取付孔2の開口側へ移動し、テーパー部材7の各傾斜面10が各当接部12の内面11を押す。それにより、各当接部12が取付孔2の内周面2a側へ移動して取付孔2の内周面2aへ押し付けられ、各当接部12の外周面15と取付孔2の内周面2aとの面どうしの摩擦などによってアンカーボルトが取付孔2に固定(仮固定)される。
【0040】
そのアンカーボルトのロッド4に、例えば設備機器や配管などを固定するためのブラケット22(図8)を装着し、そのブラケット22の下側にナット23(図8)を螺着して、そのナット23をスパナなどの工具で所定のトルク程度に締め込むことで、図8に示すように、当該アンカーボルトがしっかりと取付孔2に固定(本固定)される。
【0041】
その後、例えば前記ロッド4に取り付けた設備機器などが振動して、ロッド4が逆転しようとしても、前述のようにコイルバネ17によって前記逆転が抑えられる。従って、ねじ作用でテーパー部材7が取付孔2の奥側に移動して当接部12の内面11に対するテーパー部材7の押す力が低下する(テーパー部材7が緩む)ことが抑制され、ロッド4が振動し易くなることが抑えられる。その結果、前記設備機器などが大きく振動して、騒音や設備機器などのがたつきなどを招くことを抑えることができる。
【0042】
一方、前記振動に伴ってロッド4が正転する場合には、その正転に伴ってねじ作用でテーパー部材7が取付孔2の開口側に移動しようとし、当接部12の内面11に対するテーパー部材7の押す力が強くなる。それによってアンカーボルトが取付孔2の内周面2aによりしっかりと固定され、ロッド4がより振動し難くなる。
【0043】
なお、前記説明では、ロッド4を取付孔2の開口側に引っ張ってアンカーボルトを取付孔2に固定したが、ロッド4を引っ張らずに前記ナットのねじ作用のみでアンカーボルトを取付孔2の開口側に移動させて固定してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 壁面
2 壁面の取付孔
2a 取付孔の内周面
3 ロッドの雄ねじ
3a ロッドの雄ねじのねじ溝
4 ロッド
4a ロッドの先端部
6 テーパー部材の雌ねじ
7 テーパー部材
7a テーパー部材の先端面
10 テーパー部材の傾斜面
11 当接部の内面
12 当接部
17 コイルバネ(逆転防止機構)
17a コイルバネのバネ本体
17b コイルバネの一端部
17c コイルバネの他端部
18 係止孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8