特許第6584906号(P6584906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584906
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】超音波診断装置及び医用画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20190919BHJP
   A61B 8/08 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   A61B8/06
   A61B8/08
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-203757(P2015-203757)
(22)【出願日】2015年10月15日
(65)【公開番号】特開2017-74246(P2017-74246A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】穐山 充男
【審査官】 後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−181058(JP,A)
【文献】 特開2006−197969(JP,A)
【文献】 特開昭59−044248(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0312534(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0088424(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0039725(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00−8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送信するための送信信号を超音波プローブに送信し、前記超音波に基づく受信信号を受信する送受信部と、
前記受信信号に基づいて、複数時相に亘る経時変化が画像化された超音波画像を生成して表示部に表示させる超音波画像生成部と、
前記超音波画像上に計測範囲を設定する計測範囲設定部と、
前記計測範囲を、数値設定された拍動数に応じた数に実質的に等間隔で分割するためのマーカを生成して前記超音波画像上に表示させる計測範囲分割部と、
を有する超音波診断装置。
【請求項2】
前記計測範囲分割部は、前記マーカを、前記超音波画像上に時相を示すラインとして表示させる請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記計測範囲分割部は、前記ラインの一部ドプラスペクトラム画像の波形の付近に位置する場合、前記一部を非表示又は半透明とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記計測範囲分割部は、前記拍動数をn(n:2以上の整数)とする場合、前記拍動数に応じた数を、n−1とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記超音波画像生成部は、前記超音波画像としてドプラスペクトラム画像を生成する請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記超音波画像生成部は、前記超音波画像としてMモード画像を生成する請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記拍動数及び前記計測範囲に基づいて、心拍数を計測する計測部をさらに有する請求項1乃至6のうち一項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記計測範囲に基づいて、前記超音波画像としてのドプラスペクトラム画像上の前記計測範囲内の最大流速をトレースすることで最大流速を計測する計測部をさらに有する請求項1乃至6のうち一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記計測範囲に基づいて、前記超音波画像としてのドプラスペクトラム画像上の前記計測範囲内の流速の変化により流速レンジを計測する計測部をさらに有する請求項1乃至6のうち一項に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記計測範囲分割部は、前記超音波画像としてのドプラスペクトラム画像のドプラ波形と前記マーカとが交差する位置の流速が閾値を超える場合に、その旨を報知する請求項1乃至9のうち一項に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
複数時相に亘る経時変化が画像化された超音波画像を取得し、前記超音波画像を表示部に表示させる超音波画像取得部と、
前記超音波画像上に計測範囲を設定する計測範囲設定部と、
前記計測範囲を、数値設定された拍動数に応じた数に実質的に等間隔で分割するためのマーカを生成して前記超音波画像上に表示させる計測範囲分割部と、
を有する医用画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置及び医用画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医用分野では、超音波プローブの複数の振動子(圧電振動子)を用いて発生させた超音波を利用して、被検体内部を画像化する超音波診断装置が使用されている。超音波診断装置は、超音波診断装置に接続された超音波プローブから被検体内に超音波を送信させ、反射波に基づく受信信号を生成し、画像処理によって所望の超音波画像を得る。
【0003】
超音波画像としては、例えば、所定時相における断面情報であるBモード画像や、複数時相に亘る経時変化が画像化されたMモード画像及びドプラスペクトラム画像などが挙げられる。Bモード画像上に設定されたサンプルボリューム(SV)の位置において、複数時相に亘って得られた複数の流速(流速推移)を示すドプラスペクトラム画像が得られる。
【0004】
ドプラスペクトラム画像を用いて心拍数などが計測される場合、ドプラスペクトラム画像上に、計測範囲を決定する2時相(開始時相及び終了時相)が設定される。当該2時相は、心臓シーケンスにおける拡張末期のポイントに設定される。2時相の時間間隔とその間の拍動数とから心拍数が算出される。この結果は、84回/分の心拍数として、数値的に示される。
【0005】
例えば、3個の拍動数を含む2時相が設定され、2時相の間隔、つまり、計測範囲が2.5秒だった場合は、心拍数は、(3[beat]/2.5[sec.])×60[sec.]=72[bpm]となる。なお、拍動数は、計測範囲とは関係なく数値設定されるもので、予めデフォルト設定されているか、操作者による指定によりデフォルト値が変更されて設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−524467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、操作者が、拍動数や計測範囲の誤設定を直感的に視認することができ、検査時間を短縮させることができる超音波診断装置及び医用画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係る超音波診断装置は、超音波を送信するための送信信号を超音波プローブに送信し、前記超音波に基づく受信信号を受信する送受信部と、前記受信信号に基づいて、複数時相に亘る経時変化が画像化された超音波画像を生成して表示部に表示させる超音波画像生成部と、前記超音波画像上に計測範囲を設定する計測範囲設定部と、前記計測範囲を、数値設定された拍動数に応じた数に実質的に等間隔で分割するためのマーカを生成して前記超音波画像上に表示させる計測範囲分割部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す概略図。
図2】本実施形態に係る超音波診断装置の機能を示すブロック図。
図3】計測範囲の分割例を説明するための図。
図4】計測範囲の分割例を説明するための図。
図5】計測範囲の分割例を説明するための図。
図6】計測範囲の分割例を説明するための図。
図7】計測範囲の分割例を説明するための図。
図8】本実施形態に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャート。
図9】本実施形態に係る医用画像処理装置の構成を示す概略図。
図10】本実施形態に係る医用画像処理装置の機能を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る超音波診断装置及び医用画像処理装置について、添付図面を参照して説明する。
【0011】
(超音波診断装置)
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す概略図である。
【0012】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置10を示す。超音波診断装置10は、超音波プローブ11及び装置本体12を備える。なお、装置本体12を超音波診断装置と称する場合もあり、その場合、超音波診断装置は、超音波診断装置の外部に設けられる超音波プローブと接続される。
【0013】
超音波プローブ11は、被検体(例えば、患者)に対して超音波の送受波を行う。超音波プローブ11は、被検体の表面に対してその前面を接触させ超音波の送受波を行うものであり、1次元又は2次元に配列された複数個(M個)の微小な振動子(圧電素子)をその先端部に有している。この振動子は電気音響変換素子であり、送信時には電気パルスを超音波パルス(送信超音波)に変換し、又、受信時には超音波反射波(受信超音波)を電気信号(受信信号)に変換する機能を有している。
【0014】
超音波プローブ11は小型、軽量に構成されており、ケーブルを介して装置本体12に接続される。超音波プローブ11にはセクタ走査対応、リニア走査対応、コンベックス走査対応などがあり、診断部位に応じて任意に選択される。
【0015】
装置本体12は、処理部(例えば、処理回路)31、記憶部(例えば、記憶回路)32、入力部(例えば、入力回路)33、表示部(例えば、ディスプレイ)34、基準信号発生部(例えば、基準信号発生回路)35、送受信部(例えば、送受信回路)36、エコーデータ処理部(例えば、エコーデータ処理回路)37、及び画像生成部(例えば、画像生成回路)38を備える。なお、基準信号発生部35、送受信部36、エコーデータ処理部37、及び画像生成部38を構成する一部又は全部のデジタル回路の機能は、所定のメモリに保存されたプログラムをプロセッサに実行させるソフトウェアによって実現される場合もある。ここでは、基準信号発生部35、送受信部36、エコーデータ処理部37、及び画像生成部38の機能が、デジタル回路によって実現されるものとして説明する。
【0016】
処理回路31は、記憶回路32に格納されている各種制御プログラムを読み出して各種演算を行うと共に、各部32乃至38における処理動作を統括的に制御する。
【0017】
処理回路31は、専用又は汎用のCPU(central processing unit)又はMPU(micro processor unit)の他、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、及び、プログラマブル論理デバイスなどを意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:simple programmable logic device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:complex programmable logic device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)などが挙げられる。処理回路31は記憶回路32に記憶された、又は、処理回路31内に直接組み込まれたプログラムを読み出し実行することで図2に示す機能311〜314を実現する。
【0018】
また、処理回路31は、単一の回路によって構成されてもよいし、複数の独立した回路を組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、プログラムを記憶する記憶回路32は処理回路31ごとに個別に設けられてもよいし、単一の記憶回路32が複数の回路の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
【0019】
記憶回路32は、RAM(random access memory)、フラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスクなどによって構成される。記憶回路32は、USB(universal serial bus)メモリ及びDVD(digital video disk)などの可搬型メディアによって構成されてもよい。記憶回路32は、処理回路31において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(operating system)なども含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータや、超音波画像を記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ34への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力回路33によって行うことができるGUI(graphical user interface)を含めることもできる。
【0020】
入力回路33は、操作者によって操作が可能なポインティングデバイス(マウスなど)やキーボードなどの入力デバイスからの信号を入力する回路であり、ここでは、入力デバイス自体も入力回路33に含まれるものとする。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路33はその操作に応じた入力信号を生成して処理回路31に出力する。なお、装置本体12は、入力デバイスがディスプレイ34と一体に構成されたタッチパネルを備えてもよい。
【0021】
また、操作者が入力回路33の終了ボタンやFREEZEボタンを操作すると、超音波の送受信は終了し、超音波診断装置10は一時停止状態となる。また、入力回路33は、操作者によって設定された送信条件を、処理回路31に出力する。送信条件とは、例えば超音波プロ−ブ11を介して被検体に送信される超音波の中心周波数などである。中心周波数は、走査方式(リニア、コンベックス、及びセクタなど)、被検体の診断対象部位、超音波診断のモード(Bモード、ドプラモード、及びカラードプラモードなど)、被検体表面から診断対象部位までの距離などによってそれぞれ異なる。
【0022】
ディスプレイ34は、液晶ディスプレイやOLED(organic light emitting diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成され、処理回路31の制御に従って画像生成回路38によって生成された超音波画像データを表示する。
【0023】
基準信号発生回路35は、処理回路31からの制御信号に従って、送受信回路36に対して、例えば、超音波パルスの中心周波数とほぼ等しい周波数の連続波又は矩形波を発生する。
【0024】
送受信回路36は、処理回路31からの制御信号に従って、超音波プローブ11に対して送受信を行わせる。送受信回路36は、超音波プローブ11から送信超音波を放射させるための駆動信号を生成する送信回路361と、超音波プローブ11からの受信信号に対して整相加算を行う受信回路362を備える。
【0025】
送信回路361は、図示しない、レートパルス発生器、送信遅延回路、及びパルサを備える。レートパルス発生器は、送信超音波の繰り返し周期を決定するレートパルスを、基準信号発生回路35から供給される連続波又は矩形波を分周することによって生成し、このレートパルスを送信遅延回路に供給する。送信遅延回路は、送信に使用される振動子と同数(Mチャンネル)の独立な遅延回路から構成されており、送信において細いビーム幅を得るために所定の深さに送信超音波を収束するための遅延時間と所定の方向に送信超音波を放射するための遅延時間をレートパルスに与え、レートパルスをパルサに供給する。パルサは、Mチャンネルの独立な駆動回路を有し、超音波プローブ11に内蔵された振動子を駆動するための駆動パルスをレートパルスに基づいて生成する。
【0026】
送受信回路36の受信回路362は、図示しないプリアンプ、A/D(analog to digital)変換回路、受信遅延回路、及び加算回路を備える。プリアンプは、Mチャンネルから構成され、振動子によって電気的な受信信号に変換された微小信号を増幅して十分なS/Nを確保する。プリアンプにおいて所定の大きさに増幅されたMチャンネルの受信信号は、A/D変換回路にてデジタル信号に変換され、受信遅延回路に送られる。受信遅延回路は、所定の深さからの超音波反射波を集束するための集束用遅延時間と、所定方向に対して受信指向性を設定するための偏向用遅延時間をA/D変換回路から出力されるMチャンネルの受信信号の各々に与える。加算回路は、受信遅延回路からの受信信号を整相加算(所定の方向から得られた受信信号の位相を合わせて加算)する。
【0027】
エコーデータ処理回路37は、処理回路31からの制御信号に従って、受信回路362から入力されたエコーデータに対して、超音波画像を生成するための処理を行う。例えば、エコーデータ処理回路37は、対数圧縮処理及び包絡線検波処理などのBモード処理や、直交検波処理及びフィルタ処理などのドプラ(Doppler)処理などを行う。
【0028】
画像生成回路38は、処理回路31からの制御信号に従って、エコーデータ処理回路37から入力されたデータを、スキャンコンバータ(scan converter)によって走査変換して超音波画像データを生成する。そして、画像生成回路38は、超音波画像データに基づく超音波画像をディスプレイ34に表示させる。超音波画像は、例えば、所定時相(フレーム)における断面情報であるBモード画像や、複数時相に亘る経時変化が画像化されたMモード画像及びドプラスペクトラム画像である。
【0029】
続いて、本実施形態に係る超音波診断装置10の機能について説明する。
【0030】
図2は、本実施形態に係る超音波診断装置10の機能を示すブロック図である。
【0031】
処理回路31がプログラムを実行することによって、超音波診断装置10は、超音波画像生成機能311、計測範囲設定機能312、計測範囲分割機能313、及び計測機能314として機能する。なお、機能311〜314がソフトウェア的に機能する場合を例に挙げて説明するが、それら機能311〜314の一部又は全部は、超音波診断装置10にハードウェア的にそれぞれ設けられるものであってもよい。
【0032】
超音波画像生成機能311は、基準信号発生回路35を介して超音波プローブ11の動作を制御してスキャンを実行させ、画像生成回路38によって超音波画像を生成させる機能である。超音波画像生成機能311は、超音波画像として、少なくとも、複数時相に亘る経時変化が画像化された超音波画像(例えば、Mモード画像又はドプラスペクトラム画像)を生成する。超音波画像生成機能311は、超音波画像をディスプレイ34に表示させる。
【0033】
Bモード画像は、アレイ方向(アジマス方向)に複数のラスタ(走査線)に超音波ビームを送受信することによって得られる反射強度(振幅)を輝度値に変換した振幅分布画像である。また、複数時相に亘って複数のBモード画像を生成することもできる。
【0034】
ドプラスペクトラム画像は、複数時相に亘って得られた複数の流速(流速推移)を示す画像である。例えば、ドプラスペクトラム画像は、Bモード画像上に設定されたサンプルボリューム(SV)の位置における流速推移を示す。
【0035】
Mモード画像は、アレイ方向に1個のラスタに超音波ビームを複数時相に亘って送受信し、複数時相に亘って得られた複数の振幅(振幅推移)を示す画像である。例えば、Mモード画像は、Bモード画像上に設定されたラスタの位置における振幅推移を示す。
【0036】
以下、超音波画像生成機能311が、複数時相に亘る経時変化が画像化された超音波画像として、ドプラスペクトラム画像を生成する場合を説明する。
【0037】
計測範囲設定機能312は、超音波画像生成機能311によって生成されたドプラスペクトラム画像に基づいて、心拍数などの計測対象である計測範囲(計測期間)を設定する機能である。計測範囲設定機能312は、心臓シーケンスにおける拡張末期の2時相を設定することで、当該2時相に挟まれる計測範囲を設定する。拡張末期は、ECG信号(心電図信号)のR波に基づいて決定される。
【0038】
計測範囲分割機能313は、計測範囲設定機能312によって設定された計測範囲を、数値設定された拍動数(beat)に応じた数に実質的に等間隔で分割するためのマーカを生成して前記超音波画像上に表示させる機能である。数値設定された拍動数に応じた数とは、数値設定された拍動数がn(n:2以上の整数)の場合、n−1であることが好適である。しかしながら、その場合に限定されるものではない。
【0039】
図3図7は、計測範囲の分割例を説明するための図である。
【0040】
図3図5、及び図7は、ドプラ波形を示すドプラスペクトラム画像の概略を示す。まず、ドプラモードにて複数拍動を含む時間帯のドプラスペクトラム画像を生成してフリーズされる。心拍数などの計測モードが起動されると、操作者によって、ドプラスペクトラム画像上に、R波に基づく2時相(開始時相及び終了時相)を示す計測範囲マーカMS,MEが表示され、必要に応じて計測範囲マーカMS,MEが手動で左右にスライド操作されることで、2時相が指定される。図6は、Mモード画像の概略を示す。まず、Mモードにて複数拍動を含む時間帯のMモード画像を生成してフリーズされる。心拍数などの計測モードが起動されると、操作者によって、Mモード画像上に、R波に基づく2時相を示す計測範囲マーカMS,MEが表示され、必要に応じて計測範囲マーカMS,MEが手動で左右にスライド操作されることで、2時相が指定される。
【0041】
ここで、拍動数の数値が、計測範囲マーカMS,MEが示す計測範囲に関係なく設定される。拍動数の数値は、デフォルト設定されたものか、又は、デフォルト値が変更されて設定されたものである。数値設定された拍動数がnである場合、2時相内をn等分するためのn−1個の分割時相が算出され、分割時相を示すn−1個の分割マーカがドプラスペクトラム画像(又は、Mモード画像)上に位置合せされて表示される。
【0042】
具体的には、図3は、数値設定された拍動数が3(n=3)である場合のドプラスペクトラム画像と、計測範囲マーカMS,MEとを示す。図3に示すように、数値設定された拍動数が3である場合、2時相内を3等分するための2個の分割時相が算出され、分割時相を示す2個の分割マーカM1,M2がドプラスペクトラム画像上に位置合せされて表示される。図3では、マーカMS,ME,M1,M2を、ドプラスペクトラム画像上に時相を示すライン(実線及び破線)として表示される。マーカMS,ME,M1,M2の全部又は一部は、ドプラスペクトラム画像上に時相を示すポインタとして表示されてもよい。このような表示により、操作者は、計測範囲とは関係なく数値設定された拍動数を、ドプラスペクトラム画像上で直感的に視認することができる。
【0043】
また、図3に示す例では、数値設定された拍動数「3」と、2時相内の拍動数「3」とが一致するので、拍動に乱れがなければ、分割マーカM1,M2は、計測範囲マーカMS,ME内の2個の拡張末期にほぼ一致する。
【0044】
図4は、数値設定された拍動数が2(n=2)である場合のドプラスペクトラム画像と、計測範囲マーカMS,MEとを示す。図4に示すように、数値設定された拍動数が2である場合、2時相内を2等分するための1個の分割時相が算出され、分割時相を示す1個の分割マーカM1がドプラスペクトラム画像上に位置合せされて表示される。このような表示により、操作者は、計測範囲とは関係なく数値設定された拍動数を、ドプラスペクトラム画像上で直感的に視認することができる。
【0045】
また、図4に示す例では、数値設定された拍動数「2」と、2時相内の拍動数「3」とが一致しないので、分割マーカM1は、計測範囲マーカMS,ME内の2個の拡張末期に一致しない。
【0046】
よって、図3及び図4を比較すると、操作者は、計測範囲とは関係なく数値設定された拍動数と、ドプラスペクトラム画像上で設定された2時相内の拍動数との不一致を直感的に視認できる。
【0047】
図5は、数値設定された拍動数が3(n=3)である場合のドプラスペクトラム画像と、計測範囲マーカMS,MEとを示す。図5に示すように、数値設定された拍動数が3である場合、2時相内を3等分するための2個の分割時相が算出され、分割時相を示す2個の分割マーカM1,M2がドプラスペクトラム画像上に位置合せされて表示される。このような表示により、操作者は、計測範囲とは関係なく数値設定された拍動数を、ドプラスペクトラム画像上で直感的に視認することができる。
【0048】
また、図5に示す例では、数値設定された拍動数「3」と、2時相内の拍動数「3」とが一致するが、Gに示すように拍動に乱れ(不整脈)があるので、分割マーカM1,M2は、計測範囲マーカMS,ME内の2個の拡張末期に一致しない。
【0049】
よって、図3及び図5を比較すると、操作者は、計測範囲マーカMS,ME内の拍動の乱れ(不整脈)を直感的に視認できる。
【0050】
なお、計測範囲内で不整脈が自動認識された場合、その旨を操作者に報知してもよい。計測範囲を用いて心拍数を計測する場合に不整脈が含まれる波形は計測の対象外にしたいからである。例えば、ドプラ波形をトレースしたトレースラインと分割マーカM1,M2とが交差する位置の流速が閾値を超える場合に、不整脈ありと判断される。不整脈ありと判断されたら、不整脈が起きている拍動を自動でループ再生させる。
【0051】
図6は、数値設定された拍動数が3(n=3)である場合のMモード画像と、計測範囲マーカMS,MEとを示す。図3に示すように、数値設定された拍動数が3である場合、2時相内を3等分するための2個の分割時相が算出され、分割時相を示す2個の分割マーカM1,M2がMモード画像上に位置合せされて表示される。このような表示により、操作者は、計測範囲とは関係なく数値設定された拍動数を、Mモード画像上で直感的に視認することができる。
【0052】
また、図6に示す例では、数値設定された拍動数「3」と、2時相内の拍動数「3」とが一致するので、拍動に乱れがなければ、分割マーカM1,M2は、計測範囲マーカMS,ME内の2個の拡張末期にほぼ一致する。
【0053】
よって、図6によると、操作者は、計測範囲とは関係なく数値設定された拍動数と、Mモード画像上で設定された2時相内の拍動数との不一致を直感的に視認できる。
【0054】
図7は、図3の表示の変形例を示す。図7に示すように、計測範囲マーカMS,MEと、分割マーカM1,M2とを示すピクセルのうち、周囲にドプラ波形を示すピクセルが存在するピクセルについては、ドプラ波形を示す輝度値とする。つまり、マーカMS,ME,M1,M2の一部がドプラスペクトラムの付近に位置する場合、当該一部が非表示(又は半透明)とされる。
【0055】
よって、操作者は、計測範囲マーカMS,MEと、分割マーカM1,M2との表示に邪魔されずに、優先してドプラスペクトラム画像を視認できる。
【0056】
図2の説明に戻って、計測機能314は、計測範囲設定機能312によって設定された計測範囲内で計測を行う機能である。計測機能314は、計測範囲設定機能312によって設定された計測範囲内の拍動数に基づいて心拍数(BPM:beats per minute)[bpm]を計測する。計測された心拍数の数値は、ディスプレイ34に表示される。
【0057】
また、計測機能314は、計測範囲設定機能312によって設定された計測範囲内の最大流速をトレースすることでドプラスペクトラム画像の最大流速を計測してもよいし、計測範囲設定機能312によって設定された計測範囲内の流速の変化によりドプラスペクトラム画像の流速レンジを計測してもよい。
【0058】
続いて、図1及び図8を用いて超音波診断装置10の動作について説明する。
【0059】
図8は、本実施形態に係る超音波診断装置10の動作を示すフローチャートである。
【0060】
処理回路31は、基準信号発生回路35などを制御してスキャンを実行させ、複数時相に亘る経時変化が画像化された超音波画像の生成モード、例えば、ドプラモードにてドプラスペクトラム画像を生成し、ドプラスペクトラム画像をディスプレイ34に表示する(ステップST1)。ステップST1によって生成される超音波画像は、Mモードにて生成されるMモード画像であってもよい。
【0061】
処理回路31は、心拍数などの計測モードに移行するとドプラモードをフリーズし(ステップST2)、操作者により、心拍数などの計測対象である計測範囲(計測期間)の指定を受け付ける(ステップST3)。
【0062】
処理回路31は、数値設定された拍動数が1より大きい(n>1)か否かを判断する(ステップST4)。ステップST4において、処理回路31は、数値設定された拍動数として、デフォルト設定されたものか、又は、ステップST10のNOによってデフォルト値が変更されて設定されたものを用いる。
【0063】
ステップST4の判断にてYES、すなわち、数値設定された拍動数が1より大きいと判断される場合、処理回路31は、ステップST3によって指定された計測範囲内をn等分するためのn−1個の分割時相を算出し、分割時相を示すn−1個の分割マーカの位置(時相)を算出する(ステップST5)。
【0064】
処理回路31は、分割マーカ及び計測範囲マーカを示すピクセルのうち、周囲(例えば、10ピクセル以内)にドプラ波形を示すピクセルが存在するピクセルか否かを判断する(ステップST6)。ステップST6の判断にてYES、すなわち、分割マーカ及び計測範囲マーカを示すピクセルのうち、周囲にドプラ波形を示すピクセルが存在するピクセルであると判断される場合、処理回路31は、当該ピクセルをドプラ波形の輝度値で表示する(ステップST7)。
【0065】
一方、ステップST6の判断にてNO、すなわち、分割マーカ及び計測範囲マーカを示すピクセルのうち、周囲にドプラ波形を示すピクセルが存在するピクセルでないと判断される場合、処理回路31は、当該ピクセルを分割マーカ及び計測範囲マーカの輝度値で表示する(ステップST8)。
【0066】
処理回路31は、分割マーカ及び計測範囲マーカを示す全てのピクセルについてステップST6の判断を行ったか否かを判断する(ステップST9)。ステップST9の判断にてYES、すなわち、分割マーカ及び計測範囲マーカを示す全てのピクセルについてステップST6の判断を行ったと判断される場合、処理回路31は、数値設定された心拍数と、ステップST3によって指定された計測範囲とを確定するか否かを判断する(ステップST10)。
【0067】
ステップST10の判断にてYES、すなわち、数値設定された心拍数と、ステップST3によって指定された計測範囲とを確定すると判断される場合、処理回路31は、ステップST10によって確定された拍動数及び計測範囲に基づいて、心拍数を計測する(ステップST11)。
【0068】
一方、ステップST10の判断にてNO、すなわち、数値設定された心拍数と、ステップST3によって指定された計測範囲とを確定せず、心拍数又は計測範囲を変更すると判断される場合、処理回路31は、変更された心拍数又は計測範囲について、ステップST4の判断を行う。
【0069】
例えば、ステップST10の判断にてNO、すなわち、操作者の操作によって計測範囲マーカME(図3に図示)が左方向にスライドされると、分割マーカM1,M2(図3に図示)は、計測範囲内の3等分の間隔を維持しながら左方向にスライドされる(ステップST5)。
【0070】
また、ステップST4の判断にてNO、すなわち、数値設定された拍動数が1以下と判断される場合、処理回路31は、数値設定された心拍数と、ステップST3によって指定された計測範囲とを確定するか否かを判断する(ステップST10)。
【0071】
さらに、ステップST9の判断にてNO、すなわち、分割マーカ及び計測範囲マーカを示す全てのピクセルについてステップST6の判断を行っていないと判断される場合、処理回路31は、分割マーカ及び計測範囲マーカを示す次のピクセルについて、ステップST6の判断に戻る。
【0072】
このように、分割マーカ及び計測範囲マーカを示す全てのピクセルが、ドプラ波形又はマーカの輝度値で示された、図7に示す形態でマーカMS,ME,M1,M2が表示される。また、図8において、分割マーカ及び計測範囲マーカを示す全てのピクセルがマーカの輝度値で表示されると、図3及び図4に示す形態でマーカMS,ME,M1,M2が表示される。
【0073】
超音波診断装置10によると、数値設定された拍動数に対応するマーカを超音波画像上に表示することで、操作者は、拍動数や計測範囲の誤設定を直感的に視認することができる。
【0074】
(医用画像処理装置)
図9は、本実施形態に係る医用画像処理装置の構成を示す概略図である。
【0075】
図9は、本実施形態に係る医用画像処理装置50を示す。医用画像処理装置50は、図示しない医用画像管理装置(画像サーバ)や、ワークステーションや、図示しない読影端末等であり、ネットワークを介して接続された医用画像システム上に設けられる。また、医用画像処理装置50は、オフラインの装置であってもよい。
【0076】
医用画像処理装置50は、処理部(例えば、処理回路)51、記憶部(例えば、記憶回路)52、入力部(例えば、入力回路)53、表示部(例えば、ディスプレイ)54、及び通信部(例えば、IF(interface))55を備える。
【0077】
処理回路51は、図1に示す処理回路31と同等の構成を備える。処理回路51は、記憶回路52に格納されている各種制御プログラムを読み出して各種演算を行うと共に、各部52乃至55における処理動作を統括的に制御する。
【0078】
記憶回路52は、図1に示す記憶回路32と同等の構成を備える。記憶回路52は、処理回路51において用いられる各種処理プログラムや、プログラムの実行に必要なデータや、IF55を介して取得された超音波画像などの医用画像を記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ54への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力回路53によって行うことができるGUIを含めることもできる。
【0079】
入力回路53は、図1に示す入力回路33と同等の構成を備える。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路53はその操作に応じた入力信号を生成して処理回路51に出力する。なお、医用画像処理装置50は、入力デバイスがディスプレイ54と一体に構成されたタッチパネルを備えてもよい。
【0080】
ディスプレイ54は、図1に示すディスプレイ34と同等の構成を備える。ディスプレイ54は、処理回路51の制御に従って生成された画像データを表示する。
【0081】
IF55は、パラレル接続仕様やシリアル接続仕様に合わせたコネクタによって構成される。IF55は、各規格に応じた通信制御を行い、電話回線を通じてネットワークに接続することができる機能を有しており、これにより、医用画像処理装置50をネットワークに接続させる。
【0082】
続いて、本実施形態に係る医用画像処理装置50の機能について説明する。
【0083】
図10は、本実施形態に係る医用画像処理装置50の機能を示すブロック図である。
【0084】
処理回路51がプログラムを実行することによって、医用画像処理装置50は、超音波画像取得機能511、計測範囲設定機能512、計測範囲分割機能513、及び計測機能514として機能する。なお、機能511〜514がソフトウェア的に機能する場合を例に挙げて説明するが、それら機能511〜514の一部又は全部は、医用画像処理装置50にハードウェア的にそれぞれ設けられるものであってもよい。
【0085】
超音波画像取得機能511は、記憶回路52から、超音波画像として、少なくとも、複数時相に亘る経時変化が画像化された超音波画像(例えば、Mモード画像又はドプラスペクトラム画像)を取得する(読み出す)機能である。超音波画像取得機能511は、超音波画像をディスプレイ54に表示させる。
【0086】
計測範囲設定機能512、計測範囲分割機能513、及び計測機能514は、図2に示す計測範囲設定機能312、計測範囲分割機能313、及び計測機能314と同様に機能する。
【0087】
なお、医用画像処理装置50の動作は、図8に示す超音波診断装置10のステップST3〜ST11の動作と同等であるので説明を省略する。
【0088】
医用画像処理装置50によると、数値設定された拍動数に対応するマーカを超音波画像上に表示することで、操作者は、拍動数や計測範囲の誤設定を直感的に視認することができる。
【0089】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の超音波診断装置及び医用画像処理装置によれば、操作者は、拍動数や計測範囲の誤設定を直感的に視認することができ、検査時間を短縮させることができる。
【0090】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
10…超音波診断装置
31,51…処理回路
34,54…ディスプレイ
50…医用画像処理装置
311…超音波画像生成機能
312,512…計測範囲設定機能
313,513…計測範囲分割機能
314,514…計測機能
511…超音波画像取得機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10