特許第6584914号(P6584914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6584914ガス料金体系の構築方法およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584914
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】ガス料金体系の構築方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20190919BHJP
   G06Q 30/02 20120101ALI20190919BHJP
【FI】
   G06Q50/06
   G06Q30/02 490
【請求項の数】18
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-209264(P2015-209264)
(22)【出願日】2015年10月23日
(65)【公開番号】特開2017-83965(P2017-83965A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222657
【氏名又は名称】東洋計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】土田 泰秀
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 修
(72)【発明者】
【氏名】小澤 明也
【審査官】 岸 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−085309(JP,A)
【文献】 特開2011−022642(JP,A)
【文献】 特開2014−71600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス会社の顧客である各ガス消費者に提示しているガス料金の現行料金体系と、各ガス消費者の所定期間のガス使用量およびガス使用料金とに関する情報に基づき作成された第1データベースをコンピュータに内蔵あるいは外付けの記憶部に記憶保持し、
前記コンピュータは、標準料金算出要求が入力されると、表示装置の表示画面上に、x軸にガス使用量、y軸にガス料金を取ったxy座標面を表示すると共に、前記第1データベースの記憶情報に基づき、当該xy座標面上に、各ガス消費者を表す点をプロットし、
前記xy座標面上にプロットした各ガス消費者を表す点の数が、予め設定されている所定の割合で上下に分かれるように標準料金ラインを生成し、生成した前記標準料金ラインを前記xy座標面上に表示し、
標準料金設定要求が入力されると、前記標準料金ラインを、ガス使用料についての標準料金体系として、前記記憶部に設定するガス料金体系の構築方法。
【請求項2】
前記コンピュータは、収益算出要求が入力されると、前記標準料金体系を用いて前記ガス会社の各ガス消費者のガス使用料金の総収益を算出し、当該総収益を、前記現行料金体系による前記ガス使用料金の総収益と共に、前記表示画面上に表示し、
ライン変更要求が入力されると、前記表示画面上において、前記標準料金ライン上に位置する1つ、あるいは複数のポイントをx軸方向あるいはy軸方向、または双方の方向に移動させて前記標準料金ラインを変更し、
変更後の前記標準料金ラインを用いて前記ガス使用料金の総収益を算出して表示し、
ライン更新要求が入力されると、前記記憶部に設定されている前記標準料金体系を、変更後の標準料金ラインによって規定される標準料金体系に更新する
請求項1に記載のガス料金体系の構築方法。
【請求項3】
前記標準料金ラインは、前記所定期間におけるガス使用量が、0から第1ポイントまでの第1区間を規定する第1ライン、第1ポイントから第2ポイントまでの第2区間を規定する第2ライン、および、第2ポイント以上の第3区間を規定する第3ラインを含み、
前記第1、第2ポイントを移動すると、前記第1〜第3ラインの向き、長さが変わり、これらのラインによって規定される前記標準料金ラインが変更される
請求項2に記載のガス料金体系の構築方法。
【請求項4】
前記コンピュータは、前記表示画面上に表示した操作ボタン、あるいは、当該表示画面上における操作者による前記第1、第2ポイントのドラッグ操作による前記ライン更新要求に応じて、前記第1ポイントおよび前記第2ポイントを移動させて前記標準料金ラインを変更する
請求項3に記載のガス料金体系の構築方法。
【請求項5】
前記記憶部には第2データベースが保持されており、
前記第2データベースには、
ガス使用量のうち、コンロによって消費される厨房帯使用量であると推定されるガス使用量の単価を標準単価とし、給湯器具によって消費される給湯帯使用量であると推定されるガス使用量の単価を給湯割引単価とし、暖房器具によって消費される暖房帯使用量であると推定されるガス使用量の単価を暖房割引単価とし、予め定めた指定時間帯に消費される指定時間帯使用量であると推定されるガス使用量の単価を指定時間帯割引単価とすると、給湯割引単価を用いる給湯割引料金メニュー、暖房割引単価を用いる暖房割引料金メニュー、指定時間割引単価を用いる指定時間割引料金メニューのうちの1つ、2つ、あるいは全てを採用した特別料金体系が含まれており、
前記標準料金算出要求が入力されると、
前記割引単価のうちの最低単価によるガス使用料金を表す最低料金ラインを、前記標準
料金ラインと共に前記表示画面上に表示する請求項2に記載のガス料金体系の構築方法。
【請求項6】
前記記憶部には第3データベースが保持されており、
前記第3データベースには、
過去における複数のガス消費者によるガス使用状況に基づき、各ガス消費者を、所定の期間におけるガス使用量に応じて複数の使用量区間に分け、
各使用量区間における各ガス消費者のガス使用量の分計値である、前記厨房帯使用量、給湯帯使用量、暖房帯使用量、指定時間帯使用量の使用割合と、各使用量区間における各ガス消費者が選択した前記特別料金体系に含まれる前記の各メニューの選択割合とが格納されており、
前記コンピュータは、前記収益算出要求が入力されると、前記標準料金体系に基づく前記総収益を表示すると共に、前記第1データベースの格納情報に基づき、前記ガス会社から提供された前記ガス消費者毎に、前記複数の使用量区間に分け、前記使用割合および前記選択割合に基づき、前記標準料金体系に前記特別料金体系を採用した場合における前記ガス会社が得られるガス使用料金の総収益を推定して表示させる
請求項5に記載のガス料金体系の構築方法。
【請求項7】
前記コンピュータは、
前記現行料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益と前記標準料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益との差に関する収益指標、および、
前記現行料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益と前記標準料金体系に前記特別料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益との差に関する収益指標
を表示させる請求項6に記載のガス料金体系の構築方法。
【請求項8】
前記第3データベースには、所定期間毎の用途別使用量平均データが格納されており、
前記用途別使用量平均データには、コンロを備えたガス消費者であるコンロ世帯、コンロおよび給湯器を備えたガス消費者であるコンロ給湯世帯、および、コンロ、給湯器および暖房器を備えたガス消費者であるコンロ給湯暖房世帯のそれぞれの所定期間毎のガス使用量平均値と、コンロ給湯世帯における前記厨房帯使用量および前記給湯帯使用量の割合と、コンロ給湯暖房世帯における前記厨房帯使用量、前記給湯帯使用量および前記暖房帯使用量の割合とが含まれており、
前記コンピュータは、ガス拡販目標値要求が入力されると、
前記ガス会社において、前記標準料金体系に前記特別料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益と、今後のガス増販量と、今後の前記コンロ給湯世帯の新規獲得数または前記コンロ給湯暖房世帯の新規獲得数との間の対応関係を、前記第1、第2および第3データベースの内容に基づき算出して表示する
請求項7に記載のガス料金体系の構築方法。
【請求項9】
前記コンピュータは、料金メニュー表示要求が入力されると、
前記表示画面上に、グラフ、標準料金一覧表、および、特別料金メニュー一覧表を表示し、
前記グラフには、x軸にガス使用量、y軸にガス料金を取ったxy座標面上に、前記標準料金ラインと、前記給湯割引単価によるガス使用量に対するガス料金を表す給湯割引料金ライン、前記暖房割引単価によるガス使用量に対するガス料金を表す暖房割引料金ライン、および、前記指定時間割引単価によるガス使用量に対するガス料金を表す指定時間割引料金ラインを表示し、
前記標準料金一覧表には、基本料金および標準単価を表示し、
前記特別料金メニュー一覧表には、前記給湯割引単価、前記暖房割引単価、前記指定時間割引単価を表示し、
特別料金設定要求が入力されると、
前記標準料金体系および選択された特別料金メニューに基づき、前記ガス消費者のガス使用料金の算出に用いるガス料金体系を決定し、前記記憶部に記憶保持する
請求項6に記載のガス料金体系の構築方法。
【請求項10】
ガス会社の顧客である各ガス消費者に提示しているガス料金の現行料金体系と、各ガス消費者の所定期間のガス使用量およびガス使用料金とに関する情報に基づき、第1データベースを作成してコンピュータに内蔵あるいは外付けの記憶部に記憶保持するステップと、
前記コンピュータは、標準料金算出要求が入力されると、表示装置の表示画面上に、x軸にガス使用量、y軸にガス料金を取ったxy座標面を表示すると共に、前記第1データベースの記憶情報に基づき、当該xy座標面上に、各ガス消費者を表す点をプロットするステップと、
前記xy座標面上にプロットした各ガス消費者を表す点の数が、予め設定されている所定の割合で上下に分かれるように標準料金ラインを生成し、生成した前記標準料金ラインを前記xy座標面上に表示するステップと、
標準料金設定要求が入力されると、前記標準料金ラインを、ガス使用料についての標準料金体系として、前記記憶部に設定するステップとを、
コンピュータに実行させることを特徴とするガス料金体系構築用コンピュータプログラム。
【請求項11】
収益算出要求が入力されると、前記標準料金体系を用いて前記ガス会社の各ガス消費者のガス使用料金の総収益を算出し、当該総収益を、前記現行料金体系による前記ガス使用料金の総収益と共に、前記表示画面上に表示するステップと、
ライン変更要求が入力されると、前記表示画面上において、前記標準料金ライン上に位置する1つ、あるいは複数のポイントをx軸方向あるいはy軸方向、または双方の方向に移動させて前記標準料金ラインを変更するステップと、
変更後の前記標準料金ラインを用いて前記ガス使用料金の総収益を算出して表示するステップと、
ライン更新要求が入力されると、前記記憶部に設定されている前記標準料金体系を、変更後の標準料金ラインによって規定される標準料金体系に更新するステップとを、
コンピュータに実行させる請求項10に記載のガス料金体系構築用コンピュータプログラム。
【請求項12】
前記標準料金ラインは、前記所定期間におけるガス使用量が、0から第1ポイントまでの第1区間を規定する第1ライン、第1ポイントから第2ポイントまでの第2区間を規定する第2ライン、および、第2ポイント以上の第3区間を規定する第3ラインを含み、
前記第1、第2ポイントを移動させる操作入力があると、前記第1〜第3ラインの向き、長さが変わり、これらのラインによって規定される前記標準料金ラインを変更するステップをコンピュータに実行させる請求項11に記載のガス料金体系構築用コンピュータプログラム。
【請求項13】
前記表示画面上に表示した操作ボタン、あるいは、当該表示画面上における操作者による前記第1、第2ポイントのドラッグ操作による前記ライン更新要求に応じて、前記第1ポイントおよび前記第2ポイントを移動させて前記標準料金ラインを変更するステップをコンピュータに実行させる請求項12に記載のガス料金体系構築用コンピュータプログラム。
【請求項14】
前記記憶部には第2データベースが保持されており、
前記第2データベースには、
ガス使用量のうち、コンロによって消費される厨房帯使用量であると推定されるガス使
用量の単価を標準単価とし、給湯器具によって消費される給湯帯使用量であると推定されるガス使用量の単価を給湯割引単価とし、暖房器具によって消費される暖房帯使用量であると推定されるガス使用量の単価を暖房割引単価とし、予め定めた指定時間帯に消費される指定時間帯使用量であると推定されるガス使用量の単価を指定時間帯割引単価とすると、給湯割引単価を用いる給湯割引料金メニュー、暖房割引単価を用いる暖房割引料金メニュー、指定時間割引単価を用いる指定時間割引料金メニューのうちの1つ、2つ、あるいは全てを採用した特別料金体系が含まれており、
前記標準料金算出要求が入力されると、前記割引単価のうちの最低単価によるガス使用料金を表す最低料金ラインを、前記標準料金ラインと共に前記表示画面上に表示するステップをコンピュータに実行させる請求項11に記載のガス料金体系構築用コンピュータプログラム。
【請求項15】
前記記憶部には第3データベースが保持されており、
前記第3データベースには、
過去における複数のガス消費者によるガス使用状況に基づき、各ガス消費者を、所定の期間におけるガス使用量に応じて複数の使用量区間に分け、
各使用量区間における各ガス消費者のガス使用量の分計値である、前記厨房帯使用量、給湯帯使用量、暖房帯使用量、指定時間帯使用量の使用割合と、各使用量区間における各ガス消費者が選択した前記特別料金体系に含まれる前記の各メニューの選択割合とが格納されており、
前記収益算出要求が入力されると、前記標準料金体系に基づく前記総収益を表示すると共に、前記第1データベースの格納情報に基づき、前記ガス会社から提供された前記ガス消費者毎に、前記複数の使用量区間に分け、前記使用割合および前記選択割合に基づき、前記標準料金体系に前記特別料金体系を採用した場合における前記ガス会社が得られるガス使用料金の総収益を推定して表示させるステップをコンピュータに実行させる請求項14に記載のガス料金体系構築用コンピュータプログラム。
【請求項16】
前記コンピュータは、
前記現行料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益と前記標準料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益との差に関する収益指標、および、
前記現行料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益と前記標準料金体系に前記特別料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益との差に関する収益指標
を表示させるステップをコンピュータに実行させる請求項15に記載のガス料金体系構築用コンピュータプログラム。
【請求項17】
前記第3データベースには、所定期間毎の用途別使用量平均データが格納されており、
前記用途別使用量平均データには、コンロを備えたガス消費者であるコンロ世帯、コンロおよび給湯器を備えたガス消費者であるコンロ給湯世帯、および、コンロ、給湯器および暖房器を備えたガス消費者であるコンロ給湯暖房世帯のそれぞれの所定期間毎のガス使用量平均値と、コンロ給湯世帯における前記厨房帯使用量および前記給湯帯使用量の割合と、コンロ給湯暖房世帯における前記厨房帯使用量、前記給湯帯使用量および前記暖房帯使用量の割合とが含まれており、
ガス拡販目標値要求が入力されると、前記ガス会社において、前記標準料金体系に前記特別料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益と、今後のガス増販量と、今後の前記コンロ給湯世帯の新規獲得数または前記コンロ給湯暖房世帯の新規獲得数との間の対応関係を、前記第1、第2および第3データベースの内容に基づき算出して表示するステップをコンピュータに実行させる請求項16に記載のガス料金体系構築用コンピュータプログラム。
【請求項18】
料金メニュー表示要求が入力されると、前記表示画面上に、グラフ、標準料金一覧表、
および、特別料金メニュー一覧表を表示するステップと、
前記グラフには、x軸にガス使用量、y軸にガス料金を取ったxy座標面上に、前記標準料金ラインと、前記給湯割引単価によるガス使用量に対するガス料金を表す給湯割引料金ライン、前記暖房割引単価によるガス使用量に対するガス料金を表す暖房割引料金ライン、および、前記指定時間割引単価によるガス使用量に対するガス料金を表す指定時間割引料金ラインを表示するステップと、
前記標準料金一覧表には、基本料金および標準単価を表示するステップと、
前記特別料金メニュー一覧表には、給湯割引単価、前記暖房割引単価、前記指定時間割引単価を表示するステップと、
特別料金設定要求が入力されると、
前記標準料金体系および選択された特別料金メニューに基づき、前記ガス消費者のガス使用料金の算出に用いるガス料金体系を決定し、前記記憶部に記憶保持するステップと、をコンピュータに実行させる請求項15に記載のガス料金体系構築用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス料金体系、特にLPガスの料金体系の構築方法および当該構築方法をコンピュータに実行させるためのガス料金体系構築用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
LPガスの料金体系は多様であり、各ガス会社が独自に作成した従量料金制を基本とする標準料金メニュー、割引料金メニューに基づき、顧客であるガス消費者毎にガス使用料金の課金を行うための料金体系を設定している。LPガスの料金体系においては、ガス消費者のガス使用量の多寡、使用ガス器具の種類、ガスの使用時間帯等に応じて、各種の割引単価を採用しており、場合によっては、ガス会社1社だけで数十種類以上もの料金体系を採用している。
【0003】
ここで、本発明者等は、特許文献1、2、3において、ガス使用量の分計方法、分計された各ガス使用量に基づくガス料金体系などを提案している。ガス使用量の分計方法においては、分計カウンタを用いて、各ガス消費者のガス使用量を、給湯帯(大流量)使用量、暖房帯(長時間)使用量、指定時間帯使用量、それ以外の厨房帯(コンロ)使用量に分計している。また、ガス使用料金の単価を、厨房帯使用料金の単価を標準単価とし、それ以外の給湯帯単価、暖房帯単価、指定時間帯単価を、所定の割引率で割り引いた割引単価とした料金体系を採用している。このような料金体系を採用すれば、例えば、ガス給湯器具の拡販のためにガス会社が給湯帯単価を他の単価よりも割引率を多くするなどのガス器具の販売促進のためにも有利になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4177618号公報
【特許文献2】特許第4759303号公報
【特許文献3】特許第5084163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、ガスの料金体系は多様であり、ガス会社にとっても、ガス消費者にとっても分かり難いのが現状である。
【0006】
例えば、ガス会社にとっては、具体的にどのような料金体系を採用すれば、ガス消費者が割高感を覚えることなく収益を上げることができるのかを知ることが困難である。特に、ガス会社にとっては、現行料金体系に比べて有利なガス料金体系を再構築することができれば極めて有利である。
【0007】
一方、ガス消費者にとっては、各ガス会社が提供しているガス料金体系がインターネット上等に公開されれば、各ガス会社間の料金比較ができるので便利である。しかし、ガス料金体系は、各ガス会社において標準料金体系はあるものの、ガス会社、ガス消費者毎に個別に各種の割引料金を設定しており、採用している料金体系を表すライン(ガス使用量に対するガス使用料金額)は場合によってはガス会社1社だけでも数十本以上になる場合がある。これでは、ガス料金体系を公開しても、ガス消費者は、どのような料金体系が自分にとって最も割引率の高い有利なものであるのかを知ることが困難である。
【0008】
ここで、ガス料金体系を簡素化して公開(公示)すれば、ガス会社、ガス消費者の双方
にとって分かり易くなる。しかしながら、このような状況下ではガス会社間において過剰な価格競争が発生することが予想され、望ましくない。また、単にガス料金体系を簡素化すると、ガス会社はガス消費者のそれぞれに適した多様なガス料金体系を採用できず、ガス消費者の側においてもガス料金体系の選択肢が狭まり、ガス料金体系が硬直化し、汎用性、多様性に欠けるものとなってしまうので望ましくない。
【0009】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、ガス会社が膨大なガス料金体系、特にLPガスの料金体系の中から適切なガス料金体系を簡単な操作により設定あるいは再構築できるガス料金体系の構築方法、および、当該構築方法をコンピュータに実行させるためのガス料金体系構築用コンピュータプログラムを提供することにある。
【0010】
また、本発明の課題は、上記に加えて、ガス消費者に分かり易い形態でガス料金体系を表示でき、ガス消費者が自分に適したガス料金体系を簡単に選択あるいは設定可能なガス料金体系の構築方法、および、当該構築方法をコンピュータに実行させるためのガス料金体系構築用コンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明のガス料金体系の構築方法は、
ガス会社の顧客である各ガス消費者に提示しているガス料金の現行料金体系に関する情報と、各ガス消費者の所定期間のガス使用量およびガス使用料金に関する情報とに基づき作成された第1データベースをコンピュータに内蔵あるいは外付けの記憶部に記憶保持し、
前記コンピュータは、標準料金算出要求が入力されると、表示装置の表示画面上に、x軸にガス使用量、y軸にガス料金を取ったxy座標面を表示すると共に、前記第1データベースの記憶情報に基づき、当該xy座標面上に、各ガス消費者を表す点をプロットし、
前記xy座標面上にプロットした各ガス消費者を表す点の数が、予め設定されている所定の割合で上下に分かれるように標準料金ラインを生成し、生成した前記標準料金ラインを前記xy座標面上に表示し、
標準料金設定要求が入力されると、前記標準料金ラインを、ガス使用料についての標準料金体系として、前記記憶部に設定することを特徴としている。
【0012】
本発明の方法では、ガス会社の顧客について過去のガス料金が所定の割合で上下に位置するように、標準料金ラインを設定している。例えば、各種の割引料金の適用を考慮して、上下に1:2の割合となるように標準料金ラインを引くことができる。この割合を適切な値に設定することにより、標準料金に対する割引料金の適用を行い、各顧客のガス使用状況に対応した適切なガス料金設定を行うことができる。また、ガス会社は、現行料金体系に比べて収益が大幅に減少するなどの不都合も回避できる。このように、割合を適切に設定することにより、現行料金体系による実績に基づき、簡単に適切な標準料金ラインの初期設定を行うことができるので便利である。
【0013】
ここで、初期設定した標準料金ラインが適切であるか否かを容易に判断できるようにするために、前記コンピュータは、収益算出要求が入力されると、前記標準料金体系を用いて前記ガス会社の各ガス消費者のガス使用料金の総収益を算出し、当該総収益を、前記現行料金体系による前記ガス使用料金の総収益と共に、前記表示画面上に表示させるようにすればよい。総収益を比較することにより、ガス会社の担当者等は、初期設定した標準料金ラインが過去の実績と比較して適切であるか否かを確認できる。
【0014】
初期設定した標準料金ラインを変更できるようにするために、コンピュータは、ライン変更要求が入力されると、前記表示画面上において、前記標準料金ライン上に位置する1つ、あるいは複数のポイントをx軸方向あるいはy軸方向、または双方の方向に移動させ
て前記標準料金ラインを変更できるようにすればよい。
【0015】
この場合においても、前記コンピュータは、変更後の前記標準料金ラインを用いて前記ガス使用料金の総収益を算出して表示させ、ガス会社の担当者等に表示内容を確認させる。変更後の標準料金ラインが適切である場合には、ライン更新要求を入力させるようにする。前記コンピュータは、ライン更新要求が入力されると、前記記憶部に設定されている前記標準料金体系を、変更後の標準料金ラインによって規定される標準料金体系に更新すればよい。
【0016】
標準料金ラインは、例えば、ガス使用量が増加するに伴って、料金単価が安くなるような折れ線によって規定することができる。この場合の前記標準料金ラインは、前記所定期間におけるガス使用量が、0から第1ポイントまでの第1区間を規定する第1ライン、第1ポイントから第2ポイントまでの第2区間を規定する第2ライン、および、第2ポイント以上の第3区間を規定する第3ラインを含み、前記第1、第2ポイントを移動させると前記標準料金ラインが変更されるように構成できる。
【0017】
また、標準料金ラインの変更(更新)を簡単に行うことができるように、操作を画面上において行えるようにすることが望ましい。そのために、前記コンピュータは、前記表示画面上に表示した操作ボタン、あるいは、当該表示画面上における操作者による前記第1、第2ポイントのドラッグ操作による前記ライン更新要求に応じて、前記第1ポイントおよび前記第2ポイントを移動させて前記標準料金ラインを変更するように構成される。
【0018】
ここで、標準料金体系に対する割引料金メニューとしては、用途別(ガス器具別)の割引料金メニューを採用することができる。例えば、コンロ使用のガス料金は値引き率が零の標準単価とし、ガス給湯器使用のガス料金、ガス暖房器使用のガス料金、特定の時間帯(指定時間帯)において使用されるガス料金などを標準単価に対して所定の値引き率で値引いた割引単価とした割引料金メニューを採用することができる。
【0019】
この場合には、前記記憶部に第2データベースが保持される。第2データベースには、ガス使用量のうち、コンロによって消費される厨房帯使用量であると推定されるガス使用量の単価を標準単価とし、給湯器具によって消費される給湯帯使用量であると推定されるガス使用量の単価を給湯割引単価とし、暖房器具によって消費される暖房帯使用量であると推定されるガス使用量の単価を暖房割引単価とし、予め定めた指定時間帯に消費される指定時間帯使用量であると推定されるガス使用量の単価を指定時間帯割引単価とすると、給湯割引単価を用いる給湯割引料金メニュー、暖房割引単価を用いる暖房割引料金メニュー、指定時間割引単価を用いる指定時間割引料金メニューのうちの1つ、2つ、あるいは全てを採用した特別料金体系が含まれる。
【0020】
また、この場合には、コンピュータは、前記標準料金算出要求が入力されると、前記割引単価のうち、少なくとも、最低単価によるガス使用料金を表す最低料金ラインを、前記標準料金ラインと共に前記表示画面上に表示することが望ましい。
【0021】
このようにすれば、表示画面上には、標準料金ラインと最低料金ラインの2本の料金ラインが表示される。また、必要に応じて、他の割引単価による料金ラインを表示することもできる。いずれに場合においても、ガス料金体系が、2本あるいは数本の料金ラインに集約された形態で表示されるので、ガス料金体系を視覚により分かり易い状態で表示できる。例えば、値引き可能な範囲は、標準料金ラインと最低料金ラインの間であることが分かり、割引料金メニューを採用した場合に、標準料金に対して、ガス使用量に応じてどの程度の割引が得られるのかを視覚により定性的に認識できるので便利である。さらに、LPガス情報センター価格を表すライン、都市ガス価格(熱量換算)を表すラインを重ねて
表示すれば、標準料金体系(標準料金ライン)の適否、割引料金メニューの適否を、各ラインを比較することにより目視により簡単に認識できるので便利である。
【0022】
ここで、上記のような用途別の割引料金メニューを採用する場合には、ガス会社の顧客のそれぞれのガス使用量における用途別の使用量が分かっていないと、どの程度の割引単価にすればよいのかが不明である。
【0023】
本発明者等は、先に引用した特許文献1〜3において、ガス使用量の分計機能を備えたカウンタを提案している。このような分計カウンタを用いることにより、ガス使用量を分計して、用途別のガス使用量を算出可能である。しかしながら、分計カウンタ機能が備わっていない顧客については、所定期間毎のガス使用量の積算値が分かるのみである。
【0024】
そこで、本発明においては、分計カウンタ機能が備わっている顧客における過去のガス使用状況、すなわち、ガス使用量およびその用途別の使用量についてのデータを用いて、用途別のガス使用量が不明な顧客について、用途別のガス使用量を推定し、これに基づき、用途別の割引料金メニューを採用した場合のガス会社の総収益を推定して、割引料金メニューの適否を判断できるようにしている。
【0025】
すなわち、本発明では、前記記憶部に第3データベースが保持されている。第3データベースには、過去における複数のガス消費者によるガス使用状況に基づき、各ガス消費者を、所定の期間におけるガス使用量に応じて複数の使用量区間に分け、各使用量区間における各ガス消費者のガス使用量の分計値である、前記厨房帯使用量、給湯帯使用量、暖房帯使用量、指定時間帯使用量の使用割合と、各使用量区間における各ガス消費者が選択した前記特別料金体系に含まれる前記の各メニューの選択割合とが格納されている。前記コンピュータは、前記収益算出要求が入力されると、前記標準料金体系に基づく前記総収益を表示すると共に、前記第1データベースの格納情報に基づき、前記ガス会社から提供された前記ガス消費者毎に、前記複数の使用量区間に分け、前記使用割合および前記選択割合に基づき、前記標準料金体系に前記特別料金体系を採用した場合における前記ガス会社が得られるガス使用料金の総収益を推定して表示させるように構成されている。
【0026】
この場合には、更に、前記コンピュータは、前記現行料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益と前記標準料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益との差に関する収益指標、および、前記現行料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益と前記標準料金体系に前記特別料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益との差に関する収益指標を表示させるようにすることが望ましい。
【0027】
このように、本発明の方法では、割引料金メニューを採用した場合における収益を推定できるので、現行料金体系の場合の収益と比較することにより、ガス会社にとって最も適切な割引料金メニューを客観的に選択することができる。
【0028】
この場合において、さらに、前記第3データベースには、所定期間毎の用途別使用量平均データが格納されており、前記用途別使用量平均データには、コンロを備えたガス消費者であるコンロ世帯、コンロおよび給湯器を備えたガス消費者であるコンロ給湯世帯、および、コンロ、給湯器および暖房器を備えたガス消費者であるコンロ給湯暖房世帯のそれぞれの所定期間毎のガス使用量平均値と、コンロ給湯世帯における前記厨房帯使用量および前記給湯帯使用量の割合と、コンロ給湯暖房世帯における前記厨房帯使用量、前記給湯帯使用量および前記暖房帯使用量の割合とが含まれており、前記コンピュータは、ガス拡販目標値要求が入力されると、前記ガス会社において、前記標準料金体系に前記特別料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益と、今後のガス増販量と、今後の前記コンロ給湯世帯の新規獲得数または前記コンロ給湯暖房世帯の新規獲得数との間の対応関係を、
前記第1、第2および第3データベースの内容に基づき算出して表示するようになっていることが望ましい。
【0029】
このようにすれば、ガス拡販目標値(ガス増販量、給湯世帯等の目標獲得数)を客観的に知ることができるので極めて便利である。
【0030】
一方、本発明によるガス料金体系の構築方法を採用すれば、顧客にとっても分かり易い形態でガス料金体系を提示することができ、顧客に適した割引料金メニューを簡単に選択することが可能になる。
【0031】
すなわち、本発明の方法においては、前記コンピュータは、料金メニュー表示要求が入力されると、前記表示画面上に、グラフ、標準料金一覧表、および、特別料金メニュー一覧表を表示し、前記グラフには、x軸にガス使用量、y軸にガス料金を取ったxy平面上に、前記標準料金ラインと、前記給湯割引単価によるガス使用量に対するガス料金を表す給湯割引料金ライン、前記暖房割引単価によるガス使用量に対するガス料金を表す暖房割引料金ライン、および、前記指定時間割引単価によるガス使用量に対するガス料金を表す指定時間割引料金ラインを表示し、前記標準料金一覧表には、基本料金および標準単価を表示し、前記特別料金メニュー一覧表には、前記給湯割引単価、前記暖房割引単価、前記指定時間割引単価を表示する。また、特別料金メニュー選択要求が入力されると、前記標準料金体系および選択された特別料金メニューに基づき、前記ガス消費者のガス使用料金の算出に用いるガス料金体系を決定し、前記記憶部に記憶保持するように構成されている。
【0032】
多数本のラインによって各種のガス料金体系が表示されている場合とは異なり、値引きのない標準料金体系を表す標準料金ラインを上限として、その下側に、最低価格ライン(最も値引き率の大きな割引単価のライン)が表示され、標準料金ラインと最低価格ラインの間には、1本、2本程度の割引料金ラインが表示される。したがって、顧客は、割引料金ラインのいずれかを選択した場合に、どの程度のガス料金になるのかを感覚的に知ることができ、多数種類の料金体系から顧客に適したものを選択する場合に比べて、ガス料金体系の全体を分かりやすく表示することができる。また、上限を表す標準料金ラインによって上限価格が明確化されているので、顧客にとっては安心して適切な料金体系を選択できる。
【0033】
ガス会社にとっては、上限価格が具体的に表示されるのみであり、割引料金メニューとの組み合わせによって各種の料金体系を採用でき、そのような料金体系における具体的な金額が表示されているわけではないので、ガス会社間において値引き競争等の望ましくない状況の発生も回避できる。よって、インターネット等への公開が進んでいないLPガス料金価格の公開、公示が促進されることが期待できる。
【0034】
次に、本発明は、上記のガス料金体系構築方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
ガス会社の顧客である各ガス消費者に提示しているガス料金の現行料金体系と、各ガス消費者の所定期間のガス使用量およびガス使用料金とに関する情報に基づき、第1データベースを作成してコンピュータに内蔵あるいは外付けの記憶部に記憶保持するステップと、
前記コンピュータは、標準料金算出要求が入力されると、表示装置の表示画面上に、x軸にガス使用量、y軸にガス料金を取ったxy座標面を表示すると共に、前記第1データベースの記憶情報に基づき、当該xy座標面上に、各ガス消費者を表す点をプロットするステップと、
前記xy座標面上にプロットした各ガス消費者を表す点の数が、予め設定されている所
定の割合で上下に分かれるように標準料金ラインを生成し、生成した前記標準料金ラインを前記xy座標面上に表示するステップと、
標準料金設定要求が入力されると、前記標準料金ラインを、ガス使用料についての標準料金体系として、前記記憶部に設定するステップとを、
コンピュータに実行させることを特徴としている。
【0035】
本発明において、収益算出要求が入力されると、前記標準料金体系を用いて前記ガス会社の各ガス消費者のガス使用料金の総収益を算出し、当該総収益を、前記現行料金体系による前記ガス使用料金の総収益と共に、前記表示画面上に表示するステップと、
ライン変更要求が入力されると、前記表示画面上において、前記標準料金ライン上に位置する1つ、あるいは複数のポイントをx軸方向あるいはy軸方向、または双方の方向に移動させて前記標準料金ラインを変更するステップと、
変更後の前記標準料金ラインを用いて前記ガス使用料金の総収益を算出して表示するステップと、
ライン更新要求が入力されると、前記記憶部に設定されている前記標準料金体系を、変更後の標準料金ラインによって規定される標準料金体系に更新するステップとを、
コンピュータに実行させることを特徴としている。
【0036】
本発明において、前記標準料金ラインは、前記所定期間におけるガス使用量が、0から第1ポイントまでの第1区間を規定する第1ライン、第1ポイントから第2ポイントまでの第2区間を規定する第2ライン、および、第2ポイント以上の第3区間を規定する第3ラインを含み、
前記第1、第2ポイントを移動させる操作入力があると、前記第1〜第3ラインの向き、長さが変わり、これらのラインによって規定される前記標準料金ラインを変更するステップをコンピュータに実行させることを特徴としている。
【0037】
本発明のガス料金体系構築用コンピュータプログラムは、前記表示画面上に表示した操作ボタン、あるいは、当該表示画面上における操作者による前記第1、第2ポイントのドラッグ操作による前記ライン更新要求に応じて、前記第1ポイントおよび前記第2ポイントを移動させて前記標準料金ラインを変更するステップをコンピュータに実行させることを特徴としている。
【0038】
本発明のガス料金体系構築用コンピュータプログラムは、
前記記憶部には第2データベースが保持され、当該第2データベースに、ガス使用量のうち、コンロによって消費される厨房帯使用量であると推定されるガス使用量の単価を標準単価とし、給湯器具によって消費される給湯帯使用量であると推定されるガス使用量の単価を給湯割引単価とし、暖房器具によって消費される暖房帯使用量であると推定されるガス使用量の単価を暖房割引単価とし、予め定めた指定時間帯に消費される指定時間帯使用量であると推定されるガス使用量の単価を指定時間帯割引単価とすると、給湯割引単価を用いる給湯割引料金メニュー、暖房割引単価を用いる暖房割引料金メニュー、指定時間割引単価を用いる指定時間割引料金メニューのうちの1つ、2つ、あるいは全てを採用した特別料金体系が含まれている場合において、
前記標準料金算出要求が入力されると、前記割引単価のうちの最低単価によるガス使用料金を表す最低料金ラインを、前記標準料金ラインと共に前記表示画面上に表示するステップをコンピュータに実行させることを特徴としている。
【0039】
本発明のガス料金体系構築用コンピュータプログラムは、
前記記憶部には第3データベースが保持され、当該第3データベースに、
過去における複数のガス消費者によるガス使用状況に基づき、各ガス消費者を、所定の期間におけるガス使用量に応じて複数の使用量区間に分け、
各使用量区間における各ガス消費者のガス使用量の分計値である、前記厨房帯使用量、給湯帯使用量、暖房帯使用量、指定時間帯使用量の使用割合と、各使用量区間における各ガス消費者が選択した前記特別料金体系に含まれる前記の各メニューの選択割合とが格納されている場合に、
前記収益算出要求が入力されると、前記標準料金体系に基づく前記総収益を表示すると共に、前記第1データベースの格納情報に基づき、前記ガス会社から提供された前記ガス消費者毎に、前記複数の使用量区間に分け、前記使用割合および前記選択割合に基づき、前記標準料金体系に前記特別料金体系を採用した場合における前記ガス会社が得られるガス使用料金の総収益を推定して表示させるステップをコンピュータに実行させることを特徴としている。
【0040】
本発明のガス料金構築用コンピュータプログラムは、前記現行料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益と前記標準料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益との差に関する収益指標、および、前記現行料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益と前記標準料金体系に前記特別料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益との差に関する収益指標を表示させるステップをコンピュータに実行させることを特徴としている。
【0041】
本発明のガス料金体系構築用コンピュータプログラムは、
前記第3データベースに所定期間毎の用途別使用量平均データが格納されており、
前記用途別使用量平均データには、コンロを備えたガス消費者であるコンロ世帯、コンロおよび給湯器を備えたガス消費者であるコンロ給湯世帯、および、コンロ、給湯器および暖房器を備えたガス消費者であるコンロ給湯暖房世帯のそれぞれの所定期間毎のガス使用量平均値と、コンロ給湯世帯における前記厨房帯使用量および前記給湯帯使用量の割合と、コンロ給湯暖房世帯における前記厨房帯使用量、前記給湯帯使用量および前記暖房帯使用量の割合とが含まれている場合に、
ガス拡販目標値要求が入力されると、前記ガス会社において、前記標準料金体系に前記特別料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益と、今後のガス増販量と、今後の前記コンロ給湯世帯の新規獲得数または前記コンロ給湯暖房世帯の新規獲得数との間の対応関係を、前記第1、第2および第3データベースの内容に基づき算出して表示するステップをコンピュータに実行させることを特徴としている。
【0042】
本発明のガス料金体系構築用コンピュータプログラムは、
料金メニュー表示要求が入力されると、前記表示画面上に、グラフ、標準料金一覧表、および、特別料金メニュー一覧表を表示するステップと、
前記グラフには、x軸にガス使用量、y軸にガス料金を取ったxy座標面上に、前記標準料金ラインと、前記給湯割引単価によるガス使用量に対するガス料金を表す給湯割引料金ライン、前記暖房割引単価によるガス使用量に対するガス料金を表す暖房割引料金ライン、および、前記指定時間割引単価によるガス使用量に対するガス料金を表す指定時間割引料金ラインを表示するステップと、
前記標準料金一覧表には、基本料金および標準単価を表示するステップと、
前記特別料金メニュー一覧表には、給湯割引単価、前記暖房割引単価、前記指定時間割引単価を表示するステップと、
特別料金メニュー選択要求が入力されると、
前記標準料金体系および選択された特別料金メニューに基づき、前記ガス消費者のガス使用料金の算出に用いるガス料金体系を決定し、前記記憶部に記憶保持するステップと
をコンピュータに実行させることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明を適用したガス料金体系の再構築システムを示す概略ブロック図である。
図2】標準料金ラインを示す説明図である。
図3】用途別月別使用量平均データの例を示す説明図である。
図4】標準料金と特別料金を示す説明図である。
図5】ガス料金の設定手順を示す概略フローチャートである。
図6A】標準料金ラインの表示画面の構成を示す説明図である。
図6B】標準料金ラインの表示画面の一例を示す説明図である。
図7】収益試算結果の表示画面例を示す説明図である。
図8】ガス供給システムの一例を示す概略ブロック図である。
図9】分計用のカウンタを示す概略構成図である。
図10】分計内容を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したLPガス料金体系の構築システムの実施の形態を説明する。
【0045】
(LPガス料金構築システム)
図1は、本実施の形態に係るLPガス料金構築システムを示す概略ブロック図である。LPガス料金構築システム1(以下、単に「構築システム1」と呼ぶ。)は、管理コンピュータ2と、ここに接続された入力装置3、表示装置4、外付けの記憶装置5などを備えている。また、ウエブコンピュータ6等を介してLPガス料金体系その他のLPガス情報を、インターネット上のウエブサイトに公開可能である。
【0046】
管理コンピュータ2は、インストールされているLPガス料金構築用プログラムを実行することにより、第1データベース作成部11、第2データベース作成部12、第3データベース作成部13、標準料金体系データベース作成部14、標準料金体系作成部15、収益算出部16、特別料金体系設定部17等として機能する。
【0047】
管理コンピュータ2には、入力装置3を介して、各ガス会社の識別情報、各ガス会社の顧客である各ガス消費者の識別情報、各ガス消費者に提示しているガス料金の現行料金体系、各ガス消費者の月毎のガス使用量およびガス使用料金に関する情報が入力される。管理コンピュータ2の第1データベース作成部11は、これらの入力情報に基づき、第1データベース21を作成して記憶部5に格納する。
【0048】
また、記憶部5には、標準料金体系作成部15によってガス会社毎に作成される標準料金体系を格納する標準料金体系データベース24が含まれている。標準料金体系は、例えば、従量料金制を基本とし、ガス使用量が増加すると段階的に料金単価が安くなる折れ線グラフによって規定される。図1に一例を示すように、標準料金体系では、基本料金が1700円/mであり、従量料金単価が、ガス使用量が0〜10mまでは標準単価である520円/mであり、20mまでは480円/mの割引単価であり、20m以上は430円/mの更に値引きした割引単価である。
【0049】
さらに、記憶部5には、第2データベース作成部12によって作成される第2データベース22が格納される。第2データベース22には、次の項目を含む特別料金体系(割引料金メニュー)のマスターデータベース22aと、ガス会社毎に作成された特別料金体系のデータベース22bとが含まれている。以下においては説明を簡単にするために、各ガス会社が採用する特別料金体系は同一であるものとする。
各ガス消費者のガス使用量のうち、ガスコンロによって消費される厨房帯使用量であると推定されるガス使用量の単価である標準単価
ガス給湯器によって消費される給湯帯使用量であると推定されるガス使用量の単価である給湯割引単価(給湯帯単価)を用いる給湯割引料金メニュー
ガス暖房器によって消費される暖房帯使用量であると推定されるガス使用量の単価である暖房割引単価(暖房帯単価)を用いる暖房割引料金メニュー
予め定めた指定時間帯に消費される指定時間帯使用量であると推定されるガス使用量の単価を表す指定時間帯割引単価(時間帯単価)を用いる指定時間割引料金メニュー
【0050】
図1に一例を示すように、マスターデータベース22aに格納されている特別料金体系では、ガス使用量を用途別に分計する分計用のカウンタ使用料が100円、給湯帯割引単価(大流量割引単価)が標準単価の約20%引きの420円/mであり、暖房帯割引単価(長時間割引単価)が約30%引きの370円/mであり、指定時間帯割引単価が給湯帯割引単価と同じく約20%引きの420円/mである。
【0051】
一方、記憶部5の第3データベース23には、過去における多数のガス消費者によるガス使用状況(特に、用途別分計情報)から得られるデータが格納されている。かかるデータは、分計用のカウンタが設置されているガス消費者の過去のガス使用状況から得ることができるものである。具体的には、第3データベース23には次の項目が含まれている。
過去における複数のガス消費者によるガス使用状況に基づき、各ガス消費者を、所定の期間におけるガス使用量に応じて複数の使用量区間に分類した情報
各使用量区間における各ガス消費者のガス使用量の分計値である、厨房帯使用量、給湯帯使用量、暖房帯使用量、指定時間帯使用量の使用割合
各使用量区間における各ガス消費者による、特別料金体系に含まれる前記の給湯帯割引、暖房帯割引、および、指定時間割引の各メニューの選択割合
【0052】
例えば、図2に模式的に示すように、ガス消費者を表す点がガス使用量に応じて複数の使用量区間a1、a2、a3・・・に区分される。また、各使用量区間に含まれるガス消費者のガス使用量の用途別使用量の割合の平均b1(厨房帯使用量の割合)、b2(給湯帯使用量の割合)、b3(暖房帯使用量の割合)、b4(指定時間帯使用量の割合)と、各使用量区間に含まれるガス消費者による給湯帯割引、暖房割引、指定時間割引の選択割合の平均c1(給湯帯割引の選択割合)、c2(暖房割引の選択割合)、c3(指定時間帯割引の選択割合)が記憶保持される。また、例えば、図3に示すように、ガス消費者による用途別月別使用料平均データが記憶保持される。
【0053】
或るガス会社のガス料金体系が、図1に示す標準料金体系および特別料金体系である場合には、例えば、図4に示すように、料金メニューが表示装置4の表示画面4a上に表示される。すなわち、管理コンピュータ2に対して、入力装置3等を介して、料金メニュー表示要求指令が入力されると、表示画面4a上に、グラフ41、標準料金一覧表42、および、特別料金メニュー一覧表43を表示する。
【0054】
グラフ41には、x軸にガス使用量、y軸にガス料金を取ったxy平面上に、標準料金ライン44と、給湯割引単価(大流量単価)によるガス使用量に対するガス料金を表す給湯割引料金ライン45、暖房割引単価(長時間帯単価)によるガス使用量に対するガス料金を表す暖房割引料金ライン46、および、指定時間割引単価(時間帯単価)によるガス使用量に対するガス料金を表す指定時間割引料金ライン47を表示する。本例では、給湯割引料金ライン45と指定時間割引料金ライン47が同一のラインになる。また、図4においては表示を省略してあるが、標準料金一覧表42には、図1に示す基本料金および標準単価が表示され、特別料金メニュー一覧表43には、図1に示す給湯割引単価、暖房割引単価、指定時間割引単価が表示される。
【0055】
(新料金体系の設定手順)
次に、管理コンピュータ2を用いて、第1データベース21に登録されている一つのガス会社が、現行ガス料金体系を、図4に示すような新たなガス料金体系(標準料金体系と
特別料金体系)に変更する場合の手順を説明する。
【0056】
図5は新料金設定手順を示す概略フローチャートである。まず、管理コンピュータ2の料金構築用プログラムを立ち上げて、表示画面4aを料金設定画面にする(図5のステップST1)。この状態で、管理コンピュータ2に対して、表示画面4a上から、あるいは入力装置3を介して、対象となるガス会社を特定する識別情報を含む標準料金算出要求指令を入力する。これにより、管理コンピュータ2の標準料金体系作成部15は標準料金ラインを生成して表示画面4a上に表示する(図5のステップST2)。
【0057】
図6Aは、生成された標準料金ラインの表示画面の構成を示すための説明図である。図6Aに示すように、表示装置4の表示画面4a上に、x軸にガス使用量、y軸にガス料金を取ったxy平面61を表示し、第1データベース21に登録されている当該ガス会社の記憶情報に基づき、xy平面61上に、当該ガス会社の各ガス消費者に対応する点62をプロットする。
【0058】
標準料金体系作成部15は、xy平面61上にプロットした各ガス消費者を表す点62の数が、予め設定されている所定の割合でラインの上下に分かれるように標準料金ライン63(公示料金価格のライン)を生成する。例えば、ラインの上下に1:2の比率となるように標準料金ライン63を生成する。生成した標準料金ライン63は、太線で示すように表示される。なお、記憶部5に、予め、LPガス情報センター機構が提供する平均の料金ライン64(石油情報センター価格のライン)、都市ガス価格のライン(熱量換算)65等の参考料金ライン情報を記憶保持しておき、表示画面4a上に、これらも併せて表示できるようにしてもよい。
【0059】
また、本例では、標準料金ライン63と共に、ガス料金の最低料金ライン66(料金メニュー適用最低価格のライン)も併せて表示される。最低料金ライン66は、第2データベース22に保持されている情報に基づき生成されて表示される。本例の最低料金ライン66は、割引単価が最も安い暖房帯割引単価(本例では370円/m)によるラインである。このように、表示画面4a上には、ガス料金の上限価格を示す標準料金ライン63と下限価格を示す最低料金ライン66とが、参考価格ライン(64、65)と共に表示される。
【0060】
例えば、標準料金ライン63は折れ線によって規定される。具体的には、標準料金ライン63は、所定期間、例えば月毎のガス使用量が、0の基準ポイントd0から10mの第1ポイントd1までの第1区間を規定する第1ライン63a、第1ポイントd1から20mの第2ポイントd2までの第2区間を規定する第2ライン63b、および、第2ポイントd2から30mの第3ポイントd3までの第3区間を規定する第3ライン63c、および、それ以上の第4区間を規定する第4ライン63dを含んでいる。基準ポイントd0のガス料金は標準料金体系における基本料金(例えば、1700円、図1参照)に対応する点である。
【0061】
ここで、表示された標準料金ライン63を変更(更新)する場合(図5のステップST3)には、ライン変更要求指令(ライン更新要求指令)を表示画面4a上から、あるいは入力装置3を介して入力する。例えば、図6Aにおいて、基準ポイントd0をy軸方向に移動し、第1、第2ポイントd1、d2をx軸方向、y軸方向、あるいは双方の方向に移動することにより(標準ライン変更要求の入力により)、標準料金ライン63を変更できるようになっている。基準ポイントd0を上下に移動することにより、標準料金体系の基本料金を調整できる。第1ポイントd1を上下に移動することにより、例えば、ガス料金の標準単価を調整でき、左右に移動することにより、標準単価の適用範囲(ガス使用量区間)を増減できる。同様に、第2ポイントd2を上下に移動することにより、10〜20
m3までの使用量区間における単価を調整でき、左右に移動することにより、当該単価が適用される使用量区間を増減できる。
【0062】
勿論、上下左右に移動可能なポイントを多数設け、標準料金ラインを多様な形状となるように変更できるようにしてもよいことは勿論である。図6Aに示す例は、説明を簡単にするために、少ないポイント数の場合を示してある。
【0063】
また、各ポイントを移動させて標準料金ライン63を変更する操作は、例えば、図6Aにおいて吹き出し表示で示すように、表示画面4a上に表示した上下左右の操作ボタン67、あるいは、当該表示画面4a上に表示されている各ポイントを操作者が指等によって上下左右にドラッグする操作によって行うようにすることができる。
【0064】
なお、本例では、各ポイントの移動操作において、最低料金ライン66が下限とされ、これ以上の低価格設定はできないように制限される。
【0065】
ここで、表示画面4a上において、第2データベース22に登録されている特別料金体系を変更できるようにすることも可能である。例えば、図6Aに示すように、表示画面4a上において、グラフの右側の表示領域に、特別料金体系を設定(更新)するための適用料金プランの一覧表68を表示する。一覧表68には、第2データベース22に格納されている特別料金体系を表示する。本例では、割引無しの標準単価(一般)が「100」で表され、指定時間帯割引単価(時間)が「20%off」、給湯帯割引単価(大流量)が同じく「20%off」、暖房帯割引単価(長時間)が「30%off」と表示される。特別料金体系は、例えば、入力装置3を介して入力される特別料金設定要求指令によって、設定あるいは変更する。
【0066】
このような操作を経て、標準料金ライン63を決定した後に、標準料金設定要求指令を入力すると、決定した標準料金ライン63が標準料金体系データベース24にガス会社に対応付けした形態で格納される(図5のステップST5)。例えば、図1に示す標準料金(基本料金1700円、10mまでの単価が520円、20mまでの単価が480円、20m以上の単価が430円)が設定される。また、図1に示す特別料金体系が設定される。
【0067】
図6Bには、具体的な標準料金ラインの表示画面の一例を示す説明図である。この図において、図6Aにおける対応する部分には同一の符号を付してある。実際の表示画面においては、第1データベース21に登録されている当該ガス会社の記憶情報に基づき、xy平面61上にプロットされる当該ガス会社の各ガス消費者に対応する点(図6Aにおける点62)は表示されない。この代わりに、例えば、プロット数比率表69が画面の右側に表示される。
【0068】
また、図6Bに示す例では、標準料金ライン63を表す設定表63Aが画面の下側に表示される。ここには、標準料金ライン63の設定ポイントを表すマーカー、例えば、マーカー1〜5が表示され、各マーカーを表す使用量とガス料金とが表示され、マーカー間の単価が表示される。各マーカーを指定して移動させることで、その使用量と金額の設定が変更され、標準料金ライン63が変更される。
【0069】
次に、標準料金ライン63を仮設定した後には、これらによる総収益と現行料金体系による収益とを比較することにより、設定した料金体系の妥当性を確認できる(図5のステップST4)。また、妥当ではない場合、例えば収益が大幅に悪化する場合には、料金体系の再設定(更新)、収益表示を繰り返すことによって、適切な料金体系を再構築できる。
【0070】
図7は収益試算画面の一例を示す説明図である。この図を参照して説明すると、標準料金ライン63、特別料金体系を仮設定した後に、入力装置3を介して、管理コンピュータ2に収益算出要求指令を入力すると、管理コンピュータ2は、仮設定された標準料金体系を用いて対象のガス会社の各ガス消費者のガス使用料金の総収益を算出し、表示画面4aを収益試算画面70に切り替えて、当該総収益を「公示料金表による売上(A2)」として、現行料金体系によるガス使用料金の総収益である「現行料金表による売上(A1)」と共に表示する。
【0071】
また、標準料金体系に基づく総収益を表示すると共に、第1データベース21および第3データベース23の格納情報に基づき、ガス会社から提供されたガス消費者毎に、仮設定された標準料金体系に特別料金体系を採用した場合におけるガス会社が得られるガス使用料金の総収益を推定して、「新料金メニュー導入時の売上(A3)」として表示する。
【0072】
さらに、現行料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益と標準料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益との差に関する収益指標「現行料金と公示料金との差額(A1)−(A2)」、および、現行料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益と標準料金体系に特別料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益との差に関する収益指標「現行料金と新料金メニューとの差額(A1)−(A3)」も表示する。
【0073】
これらの表示内容に基づき、ガス会社の担当者は、新たに設定したガス料金体系の妥当性を客観的に知ることができる。また、これらの表示内容に基づき、標準料金ラインの再設定、特別料金体系の再設定を繰り返すことで、ガス会社にとって最も好ましいガス料金体系を現行料金体系に代えて再構築できる。
【0074】
なお、収益試算画面上に、ガス拡販目標値を表示させることも可能である。例えば、第3データベース23には、図3に示すような用途別月別使用量平均データが格納されている。用途別使用量平均データには、コンロを備えたガス消費者であるコンロ世帯、コンロおよび給湯器を備えたガス消費者であるコンロ給湯世帯、および、コンロ、給湯器および暖房器を備えたガス消費者であるコンロ給湯暖房世帯のそれぞれの月毎のガス使用量平均値と、コンロ給湯世帯における厨房帯使用量および給湯帯使用量の割合と、コンロ給湯暖房世帯における厨房帯使用量、給湯帯使用量および暖房帯使用量の割合とが含まれている。
【0075】
例えば、管理コンピュータ2に、ガス拡販目標値要求指令が入力されると、図7の収益試算画面70上に、「ガス拡販目標値」が表示される。ここには、例えば、ガス会社において、標準料金体系に特別料金体系を採用した場合のガス使用料金の総収益と、今後のガス増販量と、今後のコンロ給湯世帯の新規獲得数またはコンロ給湯暖房世帯の新規獲得数との間の対応関係が表示される。
【0076】
(ガス供給システムの例)
図8は、LPガス料金構築システム1によって構築されたガス料金体系を用いて課金を行うガス供給システムを示す概略ブロック図である。
【0077】
ガス供給システム100は、ガス会社の側に設置される集中監視システム103と、集中監視システム103に公衆回線104を介して接続された多数の消費者側システム105(図7においては1箇所の消費者側システムのみを示す。)とを備え、消費者側システム105にはガスメータ106が設置されている。集中監視システム103を、本発明を適用したLPガス料金体系構築システムとしても機能させることも可能である。
【0078】
集中監視システム103は、会社側コンピュータ112、入力装置113、表示装置114、記憶装置115を備えている。記憶装置115には、上記のように設定されるガス料金体系(標準料金体系と特別料金体系)のデータベースが構築されている。
【0079】
消費者側システム105は、ガスメータ106と、このガスメータ106に接続された外付けのカウンタ107(表示・分計装置)と、このカウンタ107に接続された通信用の伝送装置108(NCU)と、ガスコンロ109a、ガス給湯器109bおよびガス暖房器109cを含む各種のガス器具109から構成されている。
【0080】
ガスメータ106とカウンタ107の間で電文通信が行われる。カウンタ107は、ガスメータ106から定期的に取得されるガス流量および/またはその積算値に基づき、ガス使用量を各種の積算値毎に分計し、必要に応じて積算値を呼び出して、表示可能となっている。例えば、10分間隔でガスメータ106からガス流量の積算値がカウンタ107に供給され、カウンタ107では、10分間隔で供給される積算値の差と時間(10分)に基づきガス流量を算出し、当該ガス流量を各種の積算値毎に分計している。
【0081】
消費者側システム105は、伝送装置108および公衆回線104を介して、集中監視システム103の会社側コンピュータ112との間で通信が可能となっている。従って、集中監視システム103から遠隔操作で、消費者側システム105のガス検針動作、その他の管理・監視動作を行うことができる。
【0082】
(分計機能を備えたカウンタ)
図9はガスメータ106および分計用のカウンタ107の内部構成を示す概略ブロック図である。まず、ガスメータ106は従来から使用されている一般的なものであり、ガス流通部(図示せず)を流れるガス流量を計量する機械式計量部121と、この機械式計量部121に機械的に連結され、計量結果に基づきガス流量の通常の積算値をカウントする機械式カウンタ122と、機械式計量部121の計量結果に基づき、ガス流量の通常の積算値をカウントする電子式のメータ積算値カウンタ123と、マイクロコンピュータから構成される制御部124とを有している。また、カウンタ107との間で通信を行うための通信部125を有している。
【0083】
カウンタ107は、マイクロコンピュータから構成される制御部131と、液晶表示部132と、ガスメータ106から供給されるガス流量および積算値を受信する通信部133と、液晶表示部132の表示切り換えを行うための表示切り換えボタン134を含む入力部135とを備えている。
【0084】
液晶表示部132は、ガスメータ106のメータ積算値カウンタ123のメータ積算値を表示するとともに、分計部140による各種の積算値を表示するためのものである。分計部140は、本例では、制御部131の制御の下に動作する電子式の指定時間積算値カウンタ141と、大流量積算値カウンタ142と、長時間積算値カウンタ143と、通常積算値カウンタ144とを備えており、これらの積算値カウンタ141〜144の積算値が液晶表示部132に表示される。また、液晶表示部132の表示は、表示切り換えボタン134の操作に応じて切り換わるように構成され、例えば、メータ積算値、指定時間積算値、大流量積算値、長時間積算値、通常積算値の順にサイクリックに切り換わるようになっている。
【0085】
長時間積算値をカウントするための長時間積算値カウンタ(暖房帯積算値カウンタ)143は、GHP等の暖房用の特定ガス器具を使用している時のガスの従量単価を別料金とするために、一定流量以上のガス流量で、一定時間以上にわたりガスが使用された場合のガス流量の積算値をカウントするためのものである。
【0086】
大流量積算値をカウントするための大流量積算値カウンタ(給湯帯量積算値カウンタ)142は、ガス給湯器等の特定ガス器具を使用している時のガスの従量単価を別料金とするために、一定流量以上のガス流量の積算値をカウントするためのものである。
【0087】
指定時間積算値をカウントするための指定時間積算値カウンタ141は、夜間、土日祝日、指定の季節のガスの従量単価を別料金とするために、指定時間の積算値をカウントするためのものである。
【0088】
通常積算値カウンタ(厨房帯積算値カウンタ)144、指定時間積算値カウンタ141、給湯帯積算値カウンタ142および暖房帯積算値カウンタ143によってカウントされてないガス流量の積算値を算出するためのものである。
【0089】
本例では、図10に示すように、積算値カウンタ141〜144には、指定時間積算値カウンタ141、大流量(給湯帯)積算値カウンタ142、長時間(暖房帯)積算値カウンタ143、通常(厨房帯)積算値カウンタ144の順で優先順位が付けられている。従って、常に、カウントアップ動作条件に合致した最も優先順位の高い単一の積算値カウンタによってガス流量の積算値のカウントアップが行われ、複数の積算値カウンタによって重複してガス流量の積算値がカウントアップされることがない。
【0090】
この構成のガス供給システム100においては、会社側コンピュータ112は、記憶装置115に予め設定されているガス料金体系に基づき、消費者側システム105のカウンタ107の分計値等から、ガス消費者のガス使用量を定期的、例えば月毎に算出する算出処理、および、課金処理を行う。
【0091】
また、会社側コンピュータ112は、たとえば、インターネット上のウエブサイトにおいてガス料金体系を公開する。ウエブサイトには、ガス消費者等がブラウザ機能付きの携帯用端末その他の通信用端末150を介してアクセス可能である。
【0092】
例えば、会社側コンピュータ112は、通信用端末から料金メニュー表示要求が入力されると、グラフ、標準料金一覧表、および、特別料金メニュー一覧表を表示する。例えば、グラフには、x軸にガス使用量、y軸にガス料金を取ったxy座標面上に、標準料金ラインと、給湯割引単価によるガス使用量に対するガス料金を表す給湯割引料金ライン、暖房割引単価によるガス使用量に対するガス料金を表す暖房割引料金ライン、および、指定時間割引単価によるガス使用量に対するガス料金を表す指定時間割引料金ラインを表示する。また、標準料金一覧表には、基本料金および標準単価を表示し、特別料金メニュー一覧表には、給湯割引単価、暖房割引単価、指定時間割引単価を表示する。
【0093】
通信用端末150の側から特別料金メニュー選択要求が入力されると、標準料金体系および選択された特別料金メニューに基づき、ガス消費者のガス使用料金の算出に用いるガス料金体系を決定して表示する。ガス消費者等は、表示内容から簡単に自身が設定したガス料金体系を確認することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 LPガス料金構築システム
2 管理コンピュータ
3 入力装置
4 表示装置
5 記憶装置
6 ウエブコンピュータ
11 第1データベース作成部
12 第2データベース作成部
13 第3データベース作成部
14 標準料金体系データベース作成部
15 標準料金体系作成部
16 収益算出部
17 特別料金体系設定部
21 第1データベース
22 第2データベース
23 第3データベース
24 標準料金体系データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10