特許第6584915号(P6584915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6584915日射センサーカバー用ポリカーボネート樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584915
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】日射センサーカバー用ポリカーボネート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20190919BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20190919BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20190919BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20190919BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20190919BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20190919BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20190919BHJP
   C08K 5/3475 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   G01J1/02 U
   C08L69/00
   C08K5/524
   C08K5/13
   C08K3/22
   C08K5/07
   C08K5/3492
   C08K5/3475
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-212479(P2015-212479)
(22)【出願日】2015年10月29日
(65)【公開番号】特開2017-82109(P2017-82109A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化ポリカーボネート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀澤 和史
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−214554(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/143732(WO,A1)
【文献】 実開平03−109084(JP,U)
【文献】 特開平05−079907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
G01J 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)100重量部、無機酸化物(B)として酸化セシウムタングステン微粒子0.023〜0.23重量部、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤から選択される1もしくは2種以上の酸化防止剤(C)0.05〜1重量部、及び紫外線吸収剤(D)0〜2重量部を含有することを特徴とする、日射センサーカバー用ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
ポリカーボネート樹脂(A)100重量部、無機酸化物(B)0.1〜1重量部、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤から選択される1もしくは2種以上の酸化防止剤(C)0.05〜1重量部、及び紫外線吸収剤(D)0〜2重量部を含有し、前記無機酸化物(B)が酸化セシウムタングステン微粒子Cs0.33WO(23wt%)および分散剤からなることを特徴とする、日射センサーカバー用ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸化セシウムタングステン微粒子の粒子径が1nm〜800nmである、請求項1または2記載の日射センサーカバー用ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
前記紫外線吸収剤(D)が、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系およびベンゾフェノン系の化合物から選択される1種もしくは2種以上の紫外線吸収剤である、請求項1または2記載の日射センサーカバー用ポリカーボネート樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂本来の特性を損なうことなく、可視光選択透過性に優れると共に熱安定性、さらには耐候性にも優れる日射センサーカバー用ポリカーボネート樹脂組成物に関する。詳しくは、可視光領域の波長を選択的に透過し、紫外領域および赤外領域の波長を遮蔽させる可視光選択透過性に優れた日射センサーカバー用ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、優れた透明性、耐熱性、機械的強度等を有するため電気、機
械、自動車、医療用途等に幅広く使用されている。例えば、光学情報記録媒体、光学レン
ズ、建築物・車輌用グレージング材料などの用途を挙げることができる。
【0003】
また、車内ライトやカーエアコンを自動制御するために太陽光の強さを検出して、その光の強さに対応する信号を出力する日射センサーが知られている。一般的に、日射センサーは、例えば、特許文献1や特許文献2等に記載される通り、カーエアコンなどの自動制御を行うために太陽光を受光して、その光の強さに対応する電圧信号を出力する受光素子を内蔵するものなどがある。ただし、受光素子に太陽光をそのまま入射させると、出力信号がカーエアコン等の自動制御に適した特性になりにくいため、受光素子の前面には、太陽光を減衰させて出力特性を補正するため透明又は半透明の樹脂製カバーが装着されることが多い。
【0004】
そして、このような日射センサー用樹脂製カバーとしては、上記したポリカーボネート樹脂組成物が使用されることがあるが、近年の日射センサー用樹脂カバーに求められる特性としては、可視光領域の波長(380nm〜780nm、特に、550nmをピークとする波長帯)を選択的に透過し、かつ紫外線および赤外領域の波長をほぼ遮蔽させる可視光選択透過性(可視光選択透過フィルターとしての特性)がある。しかも、その他、この樹脂製カバーには、日射センサーが設置される車両が屋外の過酷な環境下に晒されることを考慮し、熱安定性や耐候性にも優れることが望まれている。
【0005】
従来、上記のような可視光選択透過性に優れ、かつ熱安定性、さらには耐候性にも優れるポリカーボネート樹脂組成物は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−201459号公報
【特許文献2】特開平11−160147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリカーボネート樹脂本来の特性を損なうことなく、可視光選択透過性に優れると共に熱安定性、さらには耐候性にも優れる日射センサーカバー用ポリカーボネート樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる課題に鑑み鋭意研究を行った結果、無機酸化物を含有するポリカーボネート樹脂に、特定の酸化防止剤、および必要に応じて紫外線吸収剤を特定量まで配合することにより、ポリカーボネート樹脂が有する種々の優れた性能を損なうことなく、可視光選択透過性に優れると共に熱安定性、さらには耐候性にも優れるポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部、無機酸化物(B)として酸化セシウムタングステン微粒子0.023〜0.23重量部、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤から選択される1もしくは2種以上の酸化防止剤(C)0.05〜1重量部、及び紫外線吸収剤(D)0〜2重量部を含有することを特徴とする、日射センサーカバー用ポリカーボネート樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の日射センサーカバー用ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂が有する種々の優れた性能を損なうことなく、可視光領域の波長(380nm〜780nm、特に、550nmをピークとする波長帯)を選択的に吸収する可視光選択透過性に優れると共に熱安定性、さらには耐候性にも優れるため、例えば、日射センサーに伝わる可視光領域の波長を選択的に透過し、紫外線領域および赤外領域の波長を遮蔽させるカバー用樹脂組成物として好適に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、発明者らは当業者が本発明を充分に理解するために以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0014】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0015】
これらは単独または2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0016】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−〔4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル〕−プロパンなどが挙げられる。
【0017】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量には特に制限はないが、成形加工性、強度の面より通常10000〜100000、より好ましくは15000〜30000、さらに好ましくは17000〜26000の範囲である。また、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0018】
本発明にて使用される無機酸化物(B)の粒子径は1nm〜800nmであることが好ましく、1nm 〜 600nm がより好ましく、1nm〜300nmがさらに好ましい。粒子径が1nmより小さいと凝集効果が大きくなるため分散性不良が生じやすくなり、800nmより大きいと日射センサーカバーの曇り度が高くなる等不良が生じることがある。この無機酸化物としては、タングステン系無機酸化物、ランタン系無機酸化物、スズ系無機酸化物、アンチモン系無機酸化物等が挙げられる。この中でも可視光選択透過性と曇り度の観点よりタングステン系無機酸化物が好ましく、その中でも複合タングステン酸化物微粒子が特に好ましい。市販品としては、YMDS874(住友金属工業社製、平均粒子径5nm、酸化セシウムタングステン微粒子Cs0.33WO(23wt%)および分散剤)などが挙げられる。
【0019】
複合タングステン酸化物微粒子は出発原料であるタングステン化合物を、不活性ガス雰
囲気もしくは還元性ガス雰囲気中で熱処理して得ることができる。当該熱処理を経て得ら
れた複合タングステン酸化物微粒子は、十分な可視光選択透過性を有している。
【0020】
また、複合タングステン酸化微粒子は、分散剤で被覆されていることが好ましい。分散
剤としてはポリカーボネート、ポリサルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアリレート、
ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、ポリビニルブチラー
ル、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、シリコーン系樹脂やこれらの誘導体等が挙げ
られ、これらで被覆されることにより樹脂へ添加したときの分散性が向上し、更に機械物
性の低下を防ぐ効果がある。なお、分散剤による被覆方法としては複合タングステン酸化
微粒子と分散剤をトルエン等の溶媒に溶解、攪拌し分散液を調製した後、真空乾燥等の処
理で溶媒を除去することにより複合タングステン酸化微粒子を被覆する方法等が挙げられ
る。
【0021】
また、無機酸化物(B)をポリカーボネート樹脂に添加する方法としては、複合タングステン酸化物微粒子もしくは被覆された複合タングステン酸化物微粒子を直接添加する方法や、1〜100倍のポリカーボネート樹脂で希釈した後に添加する方法が挙げられる。
【0022】
本発明にて使用される無機酸化物(B)の含有量はポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、0.1〜1重量部であり、0.2〜0.8重量部が好ましく、0.3〜0.6重量部がより好ましい。無機酸化物(B)の含有量が0.1重量部より少ないと赤外線の遮蔽能力が十分に発揮できず、更に複合酸化タングステン酸化物微粒子特有の、色味によりポリカーボネート樹脂の変色を視覚的に低減する効果が薄れてしまい、1重量部より多いと可視光透過率が非常に小さくなってしまう。
【0023】
本発明の樹脂組成物においては、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止から選択される1もしくは2種以上の酸化防止剤(C)が使用され、その配合量はポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり、0.05〜1重量部である。配合量が0.05重量部未満では、熱安定性が劣るため好ましくない。また、1重量部を超えると成形加工中の滞留時に熱安定性が不十分となり、黄変するために好ましくない。より好ましくは0.05〜0.8重量部である。
【0024】
本発明にて使用されるリン系酸化防止剤としては、下記一般式1、2および3で表わされる化合物のうち1種またはそれ以上からなるものが挙げられる。
一般式1:
【0025】
【化1】
(一般式1において、R1〜4は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で
置換されてもよいアリール基を示す。)
一般式2:
【0026】
【化2】
(一般式2において、R5、R6は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を、a、bは整数0〜3を示す。)
一般式3:
【0027】
【化3】
(一般式3において、R7は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を、cは0〜3の整数を示す。)
【0028】
一般式1の化合物としてはクラリアントジャパン社製サンドスタブP−EPQが、一般式2の化合物としてはアデカ社製アデカスタブPEP−36が、また、一般式3の化合物としてはチバ・ジャパン社製イルガホス168が商業的に入手可能なものとして挙げられる。
【0029】
また、本発明にて使用されるフェノール系酸化防止剤としては、下記一般式4の化合物が挙げられる。
一般式4:
【0030】
【化4】
(一般式4において、R8は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を示す。)
【0031】
一般式4の化合物としては、旭電化社製アデカスタブAO−50(n-オクタデシル−3(3',5'−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)が商業的に入手可能である。
【0032】
本発明にて使用される紫外線吸収剤(D)としては、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系の化合物である各種紫外線吸収剤が挙げられ、これらを1種で使用もしくは2種以上で併用して使用することができる。なかでも、ベンゾトリアゾール系化合物が好適に使用できる。
【0033】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2−hydroxy−5−methylphenyl)−2H−benzotriazole、2−(3−tert−butyl−2−hydroxy−5−methylphenyl)−5−chloro−2H−benzotriazole、2−(3,5−di−tert−pentyl−2−hydroxyphenyl)−2H−benzotriazole、2−(2H−benzotriazole−2−yl)−4−methyl−6−(3,4,5,6−tetrahydrophthalimidylmethyl)phenol、2−(2−hydroxy−4−octyloxyphenyl)−2H−benzotriazole、2−(2−hydroxy−5−tert−octylphenyl)−2H−benzotriazole、2−[2’−hydroxy−3,5−di(1,1−dimethylbenzyl)phenyl]−2H−benzotriazole、2,2’−Methylenbis[6−(2H−benzotriazol−2−yl)4−(1,1,3,3−tetramethylbutyl)phenol]などが挙げられる。なかでも、熱成形加工時の蒸散性が良好なことから2,2’−Methylenbis[6−(2H−benzotriazol−2−yl)4−(1,1,3,3−tetramethylbutyl)phenol]が好適に使用される。
【0034】
トリアジン系化合物としては、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノールなどが挙げられる。
【0035】
ベンゾフェノン系化合物としては、2、4−dihydroxybenzophenone、2−hydroxy−4−n−octoxybenzophenoneなどが挙げられる。
【0036】
紫外線吸収剤(D)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり、2重量部まである。2重量部を越えると成形加工時にガスが多く発生する等により金型を汚染する等熱安定性に劣り好ましくない。好ましい配合量は1重量部まで、更に好ましくは0.6重量部までである。
【0037】
本発明の各種配合成分(A)、(B)、(C)、及び(D)の配合方法には特に制限はなく、任意の混合機、例えばタンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等によりこれらを混合し、通常の単軸または二軸押出機等で容易に溶融混練することができる。また、これらの配合順序についても特に制限はない。
【0038】
また、混合時、必要に応じて他の公知の添加剤、例えば離型剤、紫外線吸収剤、充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、リン系熱安定剤、染顔料、展着剤(エポキシ大豆油、流動パラフィン等)等を配合することができる。
【0039】
充填剤としては、例えばガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、炭素繊維、タルク粉、クレー粉、マイカ、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミウィスカー、ワラストナイト粉、シリカ粉等が挙げられる。マイカとしては、白雲母、黒雲母、金雲母、人工金雲母などが挙げられ、形状は薄片状をなすものが好適である。
【0040】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本発明における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ重量基準である。
【0042】
原料として以下のものを使用した。
1.ポリカーボネート樹脂(A):
ビスフェノールAと塩化カルボニルとから合成されたポリカーボネート樹脂
(商品名カリバー200−20、住化スタイロンポリカーボネート(株)製、「カリバー」はトリンゼオ ユーロップ ゲーエムベーハーの登録商標、粘度平均分子量:19000、(以下、「PC」と略記)
【0043】
2.無機酸化物(B):複合タングステン系無機酸化物
YMDS874(住友金属工業社製、平均粒子径5nm)
酸化セシウムタングステン微粒子、Cs0.33WO(23wt%)および分散剤からなる。(以下、「化合物B」と略記)
【0044】
3.酸化防止剤(C):
3−1.クラリアントジャパン社製ホスタノックスP−EPQ(以下「AO1」と略記)
3−2.旭電化社製 アデカスタブ AO−50(以下「AO2」と略記)
【0045】
4.紫外線吸収剤(D):ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
4−1.ADEKA社製 アデカスタブ LA-31(以下「UVA1」と略記)
4−2.BASF社製 TINUVIN329(以下「UVA2」と略記)
【0046】
前述の各種原料を表1〜3に示す配合比率にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機(神戸製鋼所製KTX37)を用いて、溶融温度280℃にて混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットから、射出成形機(日本製鋼所製J100E−E2P)を用いて各種試験片を加工し、下記方法により各種データを採取した。それぞれの評価結果を表1〜3に示した。
【0047】
(1)可視光選択透過性(可視光領域の波長を選択的に透過し、紫外線領域および赤外領域の波長を遮蔽させる性質の評価):
得られたペレットをそれぞれ120℃×4時間の条件にて乾燥を行った後、射出成形機(日本製鋼所製J100E2P)を用いて、シリンダー設定温度280℃の条件にて平板試験片(縦50mm、横50mm、厚み1mm)を作成後、分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製 UH−4150形分光光度計)により、紫外領域300nm、可視光領域550nm及び近赤外領域900nmにおける透過率を測定し、300nmと900nmにおける透過率は5%以下、550nmにおける透過率は40%以上を良好(○)とし、それを満足出来ない場合には不良(×)とした。
【0048】
(2)熱安定性
得られた各種ペレットをそれぞれ120℃×4時間の条件にて乾燥を行った後、射出成形機(日本製鋼所製J100E2P)を用いて、シリンダー設定温度300℃の条件にて15分間滞留前後の平板試験片(縦50mm、横50mm、厚み1mm)を作成後、スペクトロフォトメーター(村上色彩研究所社製CMS−35SP)により、YIの変化(△YI)を測定した。△YIとは、滞留前後の黄味の程度の差を表し、△YIが小さい程、変色は小さく熱安定性に優れている。△YIの評価の基準としては、△YIの値が5未満であるものを良好(○)、5以上であるものを不良(×)とした。
【0049】
(3)耐候性
得られた各種ペレットを120℃×4時間の条件にて乾燥を行った後に、射出成形機(日本製鋼所製J100E2P)を用いてシリンダー設定温度280℃にて耐候性評価用試験片(縦50mm、横50mm、厚み1mm)を作成した。得られた試験片を、キセノンウェザーメーター(スガ試験機社製スーパーキセノンウェザーメーターSX75)に装着し、放射照度180W/m、湿度50%RH、ブラックパネル温度63℃の設定で、1時間42分照射に引き続き18分降雨のサイクルにて600時間照射試験を行い、スペクトロフォトメーター(村上色彩研究所社製CMS−35SP)により、YIの変化(△YI)を測定した。△YIとは、照射試験前後の黄味の程度の差を表し、△YIが小さい程、変色は小さく耐候性に優れている。△YIの評価の基準としては、△YIの値が10未満であるものを良好(○)、10以上であるものを不良(×)とした。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
表1および表2のとおり、ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の構成要件を全て満足する場合(実施例1〜12)にあっては、全ての評価項目にわたり良好な結果を示した。
【0054】
一方、表3で示したとおり、ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の構成要件を満足しない場合においては、いずれの場合も何らかの欠点を有していた。
比較例1は、化合物Bの配合量が規定量より少ない場合で、可視光選択透過性および耐候性に劣っていた。
比較例2は、化合物Bの配合量が規定量より多い場合で、可視光選択透過性および熱安定性に劣っていた。
比較例3は、AO1の配合量が規定量より少ない場合で、熱安定性に劣っていた。
比較例4は、AO1の配合量が規定量より多い場合で、熱安定性に劣っていた。
比較例5は、UVA1の配合量が規定量より多い場合で、熱安定性に劣っていた。
【0055】
以上のように、本発明における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、詳細な説明を提供した。
【0056】
したがって、詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0057】
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の日射センサーカバー用ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂が有する種々の優れた性能を損なうことなく、可視光選択透過性に優れると共に熱安定性、さらには耐候性にも優れるため、例えば、日射センサーに伝わる可視光領域の波長を選択的に吸収し、紫外領域および赤外領域の波長を遮蔽させるカバー用樹脂組成物として好適に利用可能でき極めて工業的利用価値が高い。