(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584924
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】橋梁用継手装置
(51)【国際特許分類】
E01C 11/02 20060101AFI20190919BHJP
E01D 19/06 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
E01C11/02 B
E01D19/06
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-220227(P2015-220227)
(22)【出願日】2015年11月10日
(65)【公開番号】特開2017-89219(P2017-89219A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】春日 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】村尾 光則
【審査官】
荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−049802(JP,A)
【文献】
特開2002−256511(JP,A)
【文献】
実開平02−029906(JP,U)
【文献】
実開平03−054805(JP,U)
【文献】
特開2010−037793(JP,A)
【文献】
特開2001−262502(JP,A)
【文献】
米国特許第05171100(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
E01C 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向への移動又は伸縮が可能となる状態で支持された一の橋桁の端部に設けられる橋梁用継手装置において、
該一の橋桁の端面に対向するように配置される他の橋桁や橋脚や橋台や土工部やそれらに連結された部材を“対向部材”とし、前記一の橋桁の端面であって前記対向部材に対向する側の面を“橋桁面”とし、該対向部材の側の面であって前記橋桁面に対向する面を“対向面”とした場合に、
前記一の橋桁の前記軸線方向への移動又は伸びが生じた場合に容易に圧縮されるように構成されると共に前記橋桁面及び前記対向面に略平行となるようにそれらの面の間に互いに離間した状態で複数配置されてなる易圧縮層と、
該易圧縮層を形成する素材よりも圧縮剛性が大きい素材で形成されると共に前記複数の易圧縮層の間に介装される難圧縮層と、
前記一の橋桁の前記軸線方向への移動又は伸縮が生じた場合の前記易圧縮層及び前記難圧縮層の該軸線方向への移動を許容するように該易圧縮層及び該難圧縮層をガイドする圧縮層ガイド手段と、
前記一の橋桁の路面から連続するように前記易圧縮層及び前記難圧縮層の表面に形成されてなるコンクリート又はアスファルトからなる舗装層と、
を備え、
前記易圧縮層は、樹脂製の略板状の部材で構成され、
前記難圧縮層は、複数の略粒状の物体(以下、“粒状体”とする)により構成され、
前記圧縮層ガイド手段は、上面が開口した状態で前記難圧縮層である前記複数の粒状体を前記易圧縮層と共に収容する筐体であり、
該複数の粒状体の上方への移動を規制するように可撓性に富むシート材が該粒状体に接する状態で略水平に配置された、
ことを特徴とする橋梁用継手装置。
【請求項2】
前記圧縮層ガイド手段の下面には、前記粒状体を透過してきた雨水を下方に排出するための排水孔が穿設されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の橋梁用継手装置。
【請求項3】
前記圧縮層ガイド手段は、前記一の橋桁の前記軸線方向への移動又は伸びを阻害しないように前記一の橋桁の側又は前記対向部材の側に片持ち支持されてなる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の橋梁用継手装置。
【請求項4】
前記易圧縮層は、前記一の橋桁の前記軸線方向への移動又は伸びが生じた場合に容易に圧縮されるように発泡性の樹脂により形成されてなる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の橋梁用継手装置。
【請求項5】
前記複数の易圧縮層は、前記一の橋桁の近くに配置されるほど薄く形成され、該一の橋桁の遠くに配置されるほど厚く形成されてなり、各易圧縮層の圧縮寸法がほぼ等しくなるように設定された、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の橋梁用継手装置。
【請求項6】
前記易圧縮層は、前記一の橋桁からの圧縮力が働かなくなった場合に元の形に復元される性質である形状保持性を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の橋梁用継手装置。
【請求項7】
前記難圧縮層は、略等しい厚さで複数配置されてなる、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の橋梁用継手装置。
【請求項8】
前記舗装層は、該舗装層以外の部分の舗装材よりも低弾性の舗装材により形成された、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の橋梁用継手装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸線方向への移動又は伸縮が可能となる状態で支持された一の橋桁の端部に設けられる橋梁用継手装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁においては、地震や温度変化に伴う橋桁の移動や伸縮を阻害しないようにするために遊間(隙間)が設けられている。そして、この遊間が車両や歩行者の障害とならないように路面の連続性を確保するため、種々の構造の橋梁用継手装置が提案され使用されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
図2は、橋梁用継手装置の従来構成の一例を示す断面図であり、符号102は橋桁を示し、符号103は橋台を示し、符号109は土工部を示している。また、符号Cは、該橋桁102と橋台103との間に形成された遊間を示し、符号101は、該遊間Cにおいて路面102aと路面109aとの継ぎ目部に配置された鋼製のフィンガージョイントを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−288707号公報
【特許文献2】特開2007−009619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記フィンガージョイント101は鋼製であってアスファルトに比べて摩耗しにくいので、該フィンガージョイント101の前後のアスファルト路面102a,109aとの間に段差が生じてしまう傾向にあり、車両走行時の騒音や振動の原因になってしまっている。
【0006】
本発明は、上述の問題を解消することのできる橋梁用継手装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、
図1(a)(b)に例示するものであって、軸線方向(x)への移動又は伸縮が可能となる状態で支持された一の橋桁(2)の端部に設けられる橋梁用継手装置(1)において、
該一の橋桁(2)の端面(2b)に対向するように配置される他の橋桁(不図示)や橋脚(不図示)や橋台や土工部(9)やそれらに連結された部材を“対向部材”とし、前記一の橋桁(2)の端面(2b)であって前記対向部材(9)に対向する側の面(2b)を“橋桁面”とし、該対向部材(9)の側の面(9b)であって前記橋桁面(2b)に対向する面(9b)を“対向面”とした場合に、
前記一の橋桁(2)の前記軸線方向(x)への移動又は伸びが生じた場合に容易に圧縮されるように構成されると共に前記橋桁面(2b)及び前記対向面(9b)に略平行となるようにそれらの面(2b,9b)の間に互いに離間した状態で複数配置されてなる易圧縮層(4,…)と、
該易圧縮層(4,…)を形成する素材よりも圧縮剛性が大きい素材で形成されると共に前記複数の易圧縮層(4,…)の間に介装される難圧縮層(5,…)と、
前記一の橋桁(2)の前記軸線方向(x)への移動又は伸縮が生じた場合の前記易圧縮層(4,…)及び前記難圧縮層(5,…)の該軸線方向(x)への移動を許容するように該易圧縮層(4,…)及び該難圧縮層(5,…)をガイドする圧縮層ガイド手段(6)と、
前記一の橋桁(2)の路面(2a)から連続するように前記易圧縮層(4,…)及び前記難圧縮層(5,…)の表面に形成されてなるコンクリート又はアスファルトからなる舗装層(7)と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の観点は、前記易圧縮層(4,…)は、樹脂製の略板状の部材で構成され、
前記難圧縮層(5,…)は、複数の略粒状の物体(以下、“粒状体”とする)により構成され、
前記圧縮層ガイド手段(6)は、上面が開口した状態で前記難圧縮層(5,…)である前記複数の粒状体を前記易圧縮層(4,…)と共に収容する筐体であり、
該複数の粒状体の上方への移動を規制するように可撓性に富むシート材(8)が該粒状体に接する状態で略水平に配置されたことを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の観点は、 前記圧縮層ガイド手段(6)の下面には、前記粒状体を透過してきた雨水を下方に排出するための排水孔(6a)が穿設されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の観点は、前記圧縮層ガイド手段(6)は、前記一の橋桁(2)の前記軸線方向(x)への移動又は伸びを阻害しないように前記一の橋桁(2)の側又は前記対向部材(9)の側に片持ち支持されてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の第5の観点は、前記易圧縮層(4,…)は、前記一の橋桁(2)の前記軸線方向(x)への移動又は伸びが生じた場合に容易に圧縮されるように発泡性の樹脂により形成されてなることを特徴とする。
【0012】
本発明の第6の観点は、前記複数の易圧縮層(4,…)は、前記一の橋桁(2)の近くに配置されるほど薄く形成され、該一の橋桁(2)の遠くに配置されるほど厚く形成されてなり、各易圧縮層(4,…)の圧縮寸法がほぼ等しくなるように設定されたことを特徴とする。
【0013】
本発明の第7の観点は、前記易圧縮層(4,…)は、前記一の橋桁(2)からの圧縮力が働かなくなった場合に元の形に復元される性質である形状保持性を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の第8の観点は、前記難圧縮層(5,…)は、略等しい厚さで複数配置されてなることを特徴とする。
【0015】
本発明の第9の観点は、前記舗装層(7)は、該舗装層(7)以外の部分の舗装材よりも低弾性の舗装材により形成されたことを特徴とする。
【0016】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
上記した第1及び5の観点によれば、フィンガージョイントのような鋼製の部材を路面に配置していないため、車両走行時の騒音や振動を低減することができる。また、本発明によれば、前記一の橋桁が地震や温度変化等の影響によって移動又は伸縮(特に、前記軸線方向への伸長)をして該一の橋桁から前記橋梁用継手装置に前記軸線方向の圧縮力が作用した場合、前記難圧縮層は前記易圧縮層に比べて圧縮剛性が大きいので、前記難圧縮を配置した区間(難圧縮区間)にある前記舗装層の部分は、前記易圧縮層を配置した区間(易圧縮区間)にある前記舗装層の部分に比べてあまり圧縮の影響を受けないこととなる。したがって、この部分の舗装層においては、
・ 前記一の橋桁からの圧縮力を受けて盛り上がる部分(前記易圧縮区間)と、
・ 前記一の橋桁からの圧縮力の影響が少なくて前記易圧縮区間に比べて盛り上がりが少ない部分(前記難圧縮区間)と、
が交互に形成されることとなり、前記盛り上がる部分(前記易圧縮区間)が前記易圧縮層の個数の分だけ分散して配置されることとなる。したがって、そのような易圧縮区間が1箇所だけ配置されるような場合に比べて、前記舗装層の凹凸による高低差が少なくなり路面の平坦性が確保されて、車両の走行や歩行者の歩行への影響を少なくできる。
【0018】
上記した第2の観点によれば、前記粒状体の上方への盛り上がりを前記シート材によって規制でき、前記舗装層の路面の凹凸を低減して、車両の走行や歩行者の歩行への影響を少なくできる。
【0019】
上記した第3の観点によれば、前記粒状体を透過してきた雨水を下方に排出できる。
【0020】
上記した第4の観点によれば、前記一の橋桁の前記軸線方向への移動又は伸びが前記圧縮層ガイド手段により阻害されることを回避できる。
【0021】
上記した第6の観点によれば、前記舗装層における各易圧縮区間の盛り上がり量がほぼ等しくなって、車両の走行や歩行者の歩行への影響をさらに少なくできる。
【0022】
上記した第7の観点によれば、前記一の橋桁の前記軸線方向への移動又は伸びが解消されて前記易圧縮層に圧縮力が作用しなくなった時には該易圧縮層が元の形に復元されて前記路面の平坦性を確保することができる。
【0023】
上記した第8の観点によれば、前記一の橋桁からの圧縮力を受けて盛り上がる部分(前記易圧縮区間)が略均一な距離で均等に分散して配置されることとなり、そのような易圧縮区間が均等に分散して配置されない場合に比べて、路面の平坦性が確保されて、車両の走行や歩行者の歩行への影響を少なくできる。
【0024】
上記した第9の観点によれば、前記舗装層に低弾性の舗装材を使用しているため、前記易圧縮区間の盛り上がりを低減でき、車両の走行や歩行者の歩行への影響をさらに少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1(a)は、本発明に係る橋梁用継手装置の構成の一例を示す縦断面図であり、同図(b)は、そのB−B断面図である。
【
図2】
図2は、橋梁用継手装置の従来構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、
図1に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
本発明に係る橋梁用継手装置は、
図1(a)に符号1で例示するものであって、軸線方向xへの移動又は伸縮が可能となる状態で支持された一の橋桁2の端部付近の継ぎ目部に設けられるものであって、該一の橋桁2の軸線方向xへの移動又は伸縮(特に、伸び)を阻害しないようにし、かつ、該一の橋桁2の路面2aに連続する路面7aを実現することによって該一の橋桁2が移動又は伸縮した場合においても車両の走行や歩行者の歩行を阻害しないようにするためのものである。
【0028】
なお、
図1(a)に例示する橋梁用継手装置1は、橋桁(前記一の橋桁)2と土工部9との間の継ぎ目部に設けられているが、もちろんこれに限られるものではない。例えば、土工部9に何らかの部材(不図示)を連結しておいて該部材と橋桁(前記一の橋桁)2との間の継ぎ目部に配置しても良く、該橋桁(前記一の橋桁)2に何らかの部材(不図示)を連結しておいて該部材と土工部9との間の継ぎ目部に配置しても良く、橋桁どうしの間(つまり、前記一の橋桁2に隣接する他の橋桁(不図示)と該一の橋桁2との間)の継ぎ目部に配置しても良く、該他の橋桁に何らかの部材を連結しておいて該部材と橋桁(前記一の橋桁)2との間の継ぎ目部に配置しても良い。
【0029】
ここで、本明細書においては、該一の橋桁(橋桁を構成する必須の部材だけでなく、該必須の部材に連結された何らかの部材をも含む概念である。したがって、橋桁を構成する部材に何らかの介装部材を配置した上で、本発明に係る橋梁用継手装置を該介装部材に連結するように配置したとしても、本発明の範囲に含まれる)2の端面2bに対向するように配置される他の橋桁や橋脚や橋台や土工部やそれらに連結された何らかの部材(前記一の橋桁2が移動又は伸長しても移動しない部材)9を“対向部材”と総称し、前記一の橋桁2の端面2bであって前記対向部材9に対向する側の面2bを“橋桁面”とし、該対向部材9の側の面9bであって前記橋桁面2bに対向する面9bを“対向面”とする。
【0030】
本発明に係る橋梁用継手装置1は、圧縮剛性(つまり、圧縮力を受けた場合における変形のし易さの程度)が異なる少なくとも2種類の層4,…,5,…を備えている。ここで、この2種類の層4,…,5,…の内、前記一の橋桁2の前記軸線方向xへの移動又は伸びが生じた場合に容易に圧縮されるように構成される方の層4,…を“易圧縮層”と称することとし、該易圧縮層4,…を形成する素材よりも圧縮剛性が大きい素材で形成される層5,…を“難圧縮層”と称することとする。そして、該易圧縮層4,…は、前記橋桁面2bと前記対向面9bとの間の継ぎ目部に配置されており、これらの橋桁面2b及び対向面9bと略平行となるように、しかも、互いに離間するように複数配置されている。一方の難圧縮層5,…は、該複数の易圧縮層4,…の間に介装されている。つまり、本発明においては、該難圧縮層5,…を配置した区間(以下、“難圧縮区間”とする)A
5と該易圧縮層4,…を配置した区間(以下、“易圧縮区間”とする)A
4とが交互にサンドイッチ状に配置されることとなる。さらに、本発明に係る橋梁用継手装置1は、
・ 前記一の橋桁2の前記軸線方向xへの移動又は伸縮が生じた場合の前記易圧縮層4,…及び前記難圧縮層5,…の該軸線方向xへの移動を許容するように該易圧縮層4,…及び該難圧縮層5,…をガイドする圧縮層ガイド手段6と、
・ 前記一の橋桁2の路面2aから連続するように前記易圧縮層4,…及び前記難圧縮層5,…の表面に形成されてなるコンクリート又はアスファルトからなる舗装層7と、
を備えている。ここで、舗装層7は、該舗装層7以外の部分の舗装材(例えば、一の橋桁の路面2aに敷設される舗装材や、土工部9の路面9aに敷設される舗装材)よりも低弾性の舗装材(例えば、低弾性アスファルト)により形成すると良い。
【0031】
本発明によれば、フィンガージョイントのような鋼製の部材を路面に配置していないため、車両走行時の騒音や振動を低減することができる。
【0032】
また、本発明によれば、前記一の橋桁2が地震や温度変化等の影響によって移動又は伸縮(特に、前記軸線方向xへの伸長)をして該一の橋桁2から前記橋梁用継手装置1に前記軸線方向xの圧縮力が作用した場合、前記難圧縮層5,…は前記易圧縮層4,…に比べて圧縮剛性が大きいので、前記難圧縮区間A
5にある前記舗装層7の部分は、前記易圧縮区間A
4にある前記舗装層7の部分に比べてあまり圧縮の影響を受けないこととなる。したがって、この部分の舗装層7においては、
・ 前記一の橋桁2からの圧縮力を受けて盛り上がる部分(前記易圧縮区間A
4)と、
・ 前記一の橋桁2からの圧縮力の影響が少なくて前記易圧縮区間A
4に比べて盛り上がりが少ない部分(前記難圧縮区間A
5)と、
が交互に形成されることとなり、前記盛り上がる部分(前記易圧縮区間)A
4が前記易圧縮層4,…の個数の分だけ分散して配置されることとなる。したがって、そのような易圧縮区間A
4が1箇所だけ配置されるような場合に比べて、前記舗装層7の凹凸による高低差が少なくなり路面の平坦性が確保されて、車両の走行や歩行者の歩行への影響を少なくできる。
【0033】
さらに、前記舗装層7に低弾性の舗装材を使用した場合には、前記易圧縮区間A
4の盛り上がりを低減でき、車両の走行や歩行者の歩行への影響をさらに少なくできる。
【0034】
ここで、前記易圧縮層4,…を形成する材料としては、前記難圧縮層5,…に比べて圧縮剛性が小さい材料であれば何を用いても良い。また、前記難圧縮層5,…を形成する材料としては、前記易圧縮層4,…に比べて圧縮剛性が大きい材料であれば何を用いても良い。また、これらの圧縮層4,…及び5,…は略板状の部材で形成しても良いが、次述の難圧縮層5,…のように粒状で形成しても良い。
【0035】
例えば、前記易圧縮層4,…は、樹脂製の略板状の部材(つまり、前記難圧縮層5,…よりも硬くなく柔らかくて、前記一の橋桁2の移動や伸びの変位を吸収してくれるような樹脂で形成された略板状の部材)で構成すると良く、前記難圧縮層5,…は、複数の略粒状の物体(例えば、砂や土であり、以下、“粒状体”とする)により構成すると良い。その場合、前記圧縮層ガイド手段6は、前記複数の粒状体がこぼれ落ちないように(前記易圧縮層4,…と共に)収容する筐体(ケース状)にしておくと良く、上面は開口した状態にしておくと良い。また、該複数の粒状体の上方へ押し上げられるのを規制するように可撓性に富むシート材8が該粒状体に接する状態で略水平に配置されていると良い。このシート材8としては、可撓性の富むものであれば良く、繊維や化繊の布(例えば、ジオテキスタイルなど)やメッシュ状のもの(例えば、金網など)を挙げることができる。このようなシート材8を使用した場合には、前記粒状体の上方への盛り上がりを規制でき、前記舗装層7の路面7aの凹凸を低減して、車両の走行や歩行者の歩行への影響を少なくできる。なお、該シート材8は、前記難圧縮層5,…の上面に配置したり、上面から少し下の方に埋設したりすると良い。さらに、前記圧縮層ガイド手段6の下面には排水孔6aを穿設しておいて、前記粒状体を透過してきた雨水を下方に排出できるようにすると良い。その場合、前記圧縮層ガイド手段6の下面には、雨水が支承部Dの方に流れないように堰き止める堰部6bを設けておいて、雨水に濡れて該支承部Dが劣化しないようにすると良い。一方、前記圧縮層ガイド手段6は、前記一の橋桁2の前記軸線方向xへの移動又は伸びを阻害しないように前記一の橋桁2の側又は前記対向部材9の側に片持ち支持されてなるようにすると良い。
【0036】
また一方、前記易圧縮層4,…は、前記一の橋桁2の前記軸線方向xへの移動又は伸びが生じた場合に容易に圧縮されるように発泡性の樹脂により形成されてなるようにすると良く、具体的には、ビーズ法発泡スチロール (expanded polystyrene、EPS)で形成すると良い。また、前記複数の易圧縮層4,…は、各易圧縮層4,…の圧縮寸法がほぼ等しくなるように(例えば、各易圧縮層4,…が1cmずつ圧縮されるように)、(前記軸線方向xの厚みが)前記一の橋桁2の近くに配置されるほど薄く形成され、該一の橋桁2の遠くに配置されるほど厚く形成されてなるようにすると良い。そのようにした場合には、前記舗装層7における各易圧縮区間A
4の盛り上がり量がほぼ等しくなって、車両の走行や歩行者の歩行への影響をさらに少なくできる。さらに、前記易圧縮層4,…は、前記一の橋桁2からの圧縮力が働かなくなった場合に元の形に復元される性質である形状保持性を有するようにすると良い。そのようにした場合には、前記一の橋桁2の前記軸線方向xへの移動又は伸びが解消されて前記易圧縮層4,…に圧縮力が作用しなくなった時には該易圧縮層4,…が元の形に復元されて前記路面7aの平坦性を確保することができる。
【0037】
一方、前記難圧縮層5,…は略等しい厚さ(前記軸線方向xの厚さ)で複数配置すると良い。そのようにした場合には、前記一の橋桁2からの圧縮力を受けて盛り上がる部分(前記易圧縮区間A
4,…)が略均一な距離で均等に分散して配置されることとなり、そのような易圧縮区間A
4,…が均等に分散して配置されない場合に比べて、路面7aの平坦性が確保されて、車両の走行や歩行者の歩行への影響を少なくできる。
【符号の説明】
【0038】
1 橋梁用継手装置
2 一の橋桁
2a 一の橋桁の路面
2b 橋桁面
3 橋台
4,… 易圧縮層
5,… 難圧縮層
6 圧縮層ガイド手段
6a 排水孔
7 舗装層
8 シート材
9 土工部(対向部材)
9b 対向面
x 軸線方向