特許第6584964号(P6584964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584964
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】ミシンの被縫製物切断装置
(51)【国際特許分類】
   D05B 37/08 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   D05B37/08
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-1824(P2016-1824)
(22)【出願日】2016年1月7日
(65)【公開番号】特開2017-121368(P2017-121368A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2018年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】505290829
【氏名又は名称】株式会社ミドリ安全縫技研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】391009372
【氏名又は名称】ミドリ安全株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】麻生 英夫
(72)【発明者】
【氏名】西 修宏
【審査官】 姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−065796(JP,A)
【文献】 特開平06−246086(JP,A)
【文献】 特開昭54−121862(JP,A)
【文献】 米国特許第03980031(US,A)
【文献】 特開2009−247777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 37/08
D05B 37/00
D05B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンのベッド部上の被縫製物を切断する回転刃を有するミシンの被縫製物切断装置であって、
ミシン本体に固定して取り付けられる固定枠と、
固定枠に連結手段を介して取り付けられた可動枠とからなり、
前記可動枠は、これの一方側に設けられた伝達軸と、これの他方側に設けられた回転軸と、伝達軸の回転を回転軸に伝達する伝達手段と、回転軸に固定された前記回転刃とを有し、
前記固定枠には、駆動手段によって駆動する駆動軸と、駆動軸の動力を前記伝達軸に伝達する動力伝達部が設けられており、
前記連結手段は、回転刃の面がベッド部の長手方向側に向く回転刃の切断位置から、回転刃の面がベッド部の長手方向と略直交する方向側に傾斜する回転刃の交換位置に移動できるように、固定枠に可動枠を回動可能に連結していることを特徴とするミシンの被縫製物切断装置。
【請求項2】
前記連結手段は、ベッド部と略平行方向で回動するように固定枠に回動可能に取り付けられた連結体であって、
当該連結体には、前記可動枠の一方側が回動可能に取り付けられ、可動枠の他方側の回転刃が上下方向に移動できるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のミシンの被縫製物切断装置。
【請求項3】
前記動力伝達部は、第1の連結軸と、第1の連結軸に屈曲自在に連結された第2の連結軸とからなり、第1の連結軸が駆動軸に連結され、第2の連結軸が伝達軸に連結され、屈曲部が連結手段の回動中心と略一致するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のミシンの被縫製物切断装置。
【請求項4】
前記連結手段には、回転刃を駆動する駆動手段をオン・オフするスイッチ手段が設けられており、
スイッチ手段は、回転刃が切断位置にあるとオンとなり、回転刃が非切断位置にあるとオフとなることを特徴とする請求項1、2又は3記載のミシンの被縫製物切断装置。
【請求項5】
前記連結手段は、回転刃を切断位置で位置決めする第1の位置決め手段と、回転刃を交換位置で位置決めする第2の位置決め手段と、回転刃を駆動する駆動手段をオン・オフするスイッチ手段と有し、
前記スイッチ手段は、第1の位置決め手段に設けられ、第1の位置決め手段が回転刃を位置決めするとオンとなり、第1の位置決め手段が回転刃を位置決めしていないとオフとなるように構成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のミシンの被縫製物切断装置。
【請求項6】
前記連結手段は、回転刃の切断位置から回転刃の交換位置に移動でき、さらに回転刃の交換位置から回転刃の待機位置に移動できるように、固定枠に可動枠を回動可能に連結していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のミシンの被縫製物切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ミシンに取り付けられ、布、皮革等の被縫製物を切断することができる被縫製物切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミシンの被縫製物切断装置は、ミシン本体に固定して取り付けられる固定枠と、固定枠に可動可能に取り付けられた可動枠とを有する。可動枠には、回転刃をネジにより取り付けた回転軸が回動可能に設けられている。固定枠には、動力伝達部を介して前記回転軸を駆動する駆動手段と、回転刃を被縫製物の非切断位置から被縫製物の切断位置に移動させるように可動枠を作動させる作動手段が設けられている。回転刃と協働して被縫製物を切断する固定刃は、可動枠に設けられているものや(例えば特許文献1)、ミシン本体を固定するベッド部側に設けられた針板に形成されているものが存在する(例えば特許文献2)。回転刃は、略中心に取付孔が形成されており、この取付孔を回転軸に嵌め込み、回転軸の端部にネジを螺着して、回転軸に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−37650号公報
【特許文献2】特開2012−65796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したミシンの被縫製物切断装置は、回転刃を交換する場合には、回転軸のネジを外し、回転刃を回転軸の軸方向にスライドさせて、回転軸から回転刃を取り外す。新しい回転刃は、取付孔を回転軸に嵌め込み、回転軸の端部にネジを螺着して、回転軸に取り付ける。このようにして、ミシンの被縫製物切断装置は、回転刃の交換を行うことができる。このミシンの被縫製物切断装置の回転刃は、ミシン針の近傍に配置されており、ミシン針の縫製により形成される縫い目に平行に被縫製物の切断を行う一方、このミシン針、布押さえ、上送り等の存在により、回転軸から取り外して行う交換が困難であるという問題点があった。従って、回転刃の交換は、ミシン本体からミシン針、布押さえ、上送り等を取り外すか、被縫製物切断装置そのものを取り外して行わなければならず、不便であり、誰でもが簡単に行うことができないという問題点があった。また、ミシンの被縫製物切断装置は、縫製と同時に切断でき、さらに非縫製時にも切断でき、逆に、縫製時に切断しない状態にすることができる。この縫製時に切断しない場合には、ミシン針の落下地点に回転刃が近接しているため、この回転刃の存在が邪魔になり、縫製作業がやり難くなるという問題点があった。
【0005】
本願発明は、上記問題点に鑑み案出したものであって、回転刃をミシン針から離れた位置に移動させることができ、回転刃の交換スペースを確保でき、誰でも簡単に回転刃の交換を行うことができるミシンの被縫製物切断装置を提供することを第1の目的とする。また、本願発明は、上記目的に加え、切断位置では回転刃が回転可能となり、切断位置以外では回転刃が回転不能となり、安全性を高めたミシンの被縫製物切断装置を提供することを第2の目的とする。さらに、本願発明は、上記目的に加え、被縫製物の切断作業を伴わないミシン針による縫製作業時に、回転刃をミシン針から離れた位置に移動させて、縫製作業を容易にするミシンの被縫製物切断装置を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1記載のミシンの被縫製物切断装置は、上記第1の目的を達成するため、ミシンのベッド部上の被縫製物を切断する回転刃を有するミシンの被縫製物切断装置であって、ミシン本体に固定して取り付けられる固定枠と、固定枠に連結手段を介して取り付けられた可動枠とからなり、前記可動枠は、これの一方側に設けられた伝達軸と、これの他方側に設けられた回転軸と、伝達軸の回転を回転軸に伝達する伝達手段と、回転軸に固定された前記回転刃とを有し、前記固定枠には、駆動手段によって駆動する駆動軸と、駆動軸の動力を前記伝達軸に伝達する動力伝達部が設けられており、前記連結手段は、回転刃の面がベッド部の長手方向側に向く回転刃の切断位置から、回転刃の面がベッド部の長手方向と略直交する方向側に傾斜する回転刃の交換位置に移動できるように、固定枠に可動枠を回動可能に連結していることを特徴とする。
【0007】
本願請求項2記載のミシンの被縫製物切断装置は、上記第1の目的を達成するため、前記連結手段は、ベッド部と略平行方向で回動するように固定枠に回動可能に取り付けられた連結体であって、当該連結体には、前記可動枠の一方側が回動可能に取り付けられ、可動枠の他方側の回転刃が上下方向に移動できるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本願請求項3記載のミシンの被縫製物切断装置は、上記第1の目的を達成するため、前記動力伝達部は、第1の連結軸と、第1の連結軸に屈曲自在に連結された第2の連結軸とからなり、第1の連結軸が駆動軸に連結され、第2の連結軸が伝達軸に連結され、屈曲部が連結手段の回動中心と略一致するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本願請求項4記載のミシンの被縫製物切断装置は、上記第2の目的を達成するため、前記連結手段には、回転刃を駆動する駆動手段をオン・オフするスイッチ手段が設けられており、スイッチ手段は、回転刃が切断位置にあるとオンとなり、回転刃が非切断位置にあるとオフとなることを特徴とする。
【0010】
本願請求項5記載のミシンの被縫製物切断装置は、上記第2の目的を達成するため、前記連結手段は、回転刃を切断位置で位置決めする第1の位置決め手段と、回転刃を交換位置で位置決めする第2の位置決め手段と、回転刃を駆動する駆動手段をオン・オフするスイッチ手段と有し、前記スイッチ手段は、第1の位置決め手段に設けられ、第1の位置決め手段が回転刃を位置決めするとオンとなり、第1の位置決め手段が回転刃を位置決めしていないとオフとなるように構成されている。
【0011】
本願請求項6記載のミシンの被縫製物切断装置は、上記第3の目的を達成するため、前記連結手段は、回転刃の切断位置から回転刃の交換位置に移動でき、さらに回転刃の交換位置から回転刃の待機位置に移動できるように、固定枠に可動枠を回動可能に連結していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、ミシンのベッド部上の被縫製物を切断する回転刃を有する。ミシンの被縫製物切断装置は、ミシン本体に固定して取り付けられる固定枠と、固定枠に連結手段を介して取り付けられた可動枠とからなる。前記可動枠は、これの一方側に設けられた伝達軸と、これの他方側に設けられた回転軸と、伝達軸の回転を回転軸に伝達する伝達手段と、回転軸に固定された前記回転刃とを有する。前記固定枠には、駆動手段によって駆動する駆動軸と、駆動軸の動力を前記伝達軸に伝達する動力伝達部が設けられている。前記連結手段は、回転刃の面がベッド部の長手方向側に向く回転刃の切断位置から、回転刃の面がベッド部の長手方向と略直交する方向側に傾斜する回転刃の交換位置に移動できるように、固定枠に可動枠を回動可能に連結している。
【0013】
本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、駆動手段を作動すると、固定枠側の駆動軸が駆動し、駆動軸の動力が動力伝達部を介して、可動枠側の伝達軸に伝達され、伝達軸が回転する。伝達軸が回転すると伝達手段によって回転軸が回転し、回転軸に固定された回転刃も回転する。回転刃は、可動枠に設けられた固定刃又はミシンのベッド部側に形成された固定刃と協働してベッド部上の被縫製物を切断する。駆動手段を停止すると、伝達軸、回転軸及び回転刃の回転が止まる。回転刃は、ミシン針の近傍に位置しており、ミシン針の縫製方向と略直交する方向側(ベッド部の長手方向側)に回転刃の面が向いている。切断位置にある回転刃は、回転刃の面がミシン針側に向いており、回転軸から抜き出して取り外そうとしても、回転刃の面がミシン針、布押え、上送り等に接触し、回転軸から外すことができない。
【0014】
本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、連結手段により、固定枠に対して可動枠を回動すると、回転刃が切断位置から交換位置に移動し、回転刃の面がベッド部の長手方向と略直交する方向側に傾斜して向くことになる。交換位置にある回転刃は、ミシン針から離れ、回転刃の面が作業者側に向いており、回転刃の面に接触する可能性のあったミシン針、布押え、上送り等が存在しないので、どこにも接触することなく、回転軸から簡単に抜き出して取り外すことができる。このように、本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、回転刃を切断位置から交換位置に移動させることができ、回転刃の交換スペースを確保でき、誰でも簡単に回転刃の交換を行うことができるという効果がある。
【0015】
本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、前記連結手段がベッド部と略平行方向で回動するように固定枠に回動可能に取り付けられた連結体である。当該連結体には、前記可動枠の一方側が回動可能に取り付けられ、可動枠の他方側の回転刃が上下方向に移動できるように構成されている。
【0016】
本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、回転刃の切断位置において、回転刃の面がベッド部の長手方向側(ミシン針側)に向いているので、回転軸から回転刃を抜き出して取り外そうとしても、回転刃の面がミシン針に接触し、回転軸から外すことが難しい。本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、連結体に対して可動枠を回動させ、可動枠の他方側の回転刃を上方に移動させてミシン針から回転刃を離間させる。次に、固定枠に対して連結体を回動させると、回転刃がミシン針から水平方向で離れ、且つ、回転刃の面がベッド部の長手方向と略直交する方向側に傾斜して向くことになる。このように、ミシン針から離れ、回転刃の面が作業者側に向いており、回転刃の面に接触するミシン針、布押え、上送り等のミシンの部位が存在しないので、どこにも接触することなく、回転刃を回転軸から簡単に抜き出して取り外すことができる。このように、本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、回転刃を無理なく安全に切断位置から交換位置に移動させることができるという効果がある。
【0017】
本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、前記動力伝達部が、第1の連結軸と第1の連結軸に屈曲自在に連結された第2の連結軸とからなる。第1の連結軸は駆動軸に連結され、第2の連結軸は伝達軸に連結される。第1の連結軸と第2の連結軸の屈曲部は、連結手段の回動中心に略一致するように構成されている。本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、連結手段の回動中心と動力伝達部の屈曲部が略一致しているので、連結手段を回動すると、動力伝達部が無理なくスムーズに屈曲し、動力伝達部に加わる負担が少なく、壊れ難いという効果がある。
【0018】
本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、前記連結手段に、回転刃を駆動する駆動手段をオン・オフするスイッチ手段が設けられている。スイッチ手段は、回転刃が切断位置にあるとオンとなり、回転刃が非切断位置にあるとオフとなる。このように、本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、切断位置ではスイッチ手段がオンとなって回転刃が回転するが、非切断位置では回転刃は回転しないので、安心して回転刃を交換することができるという効果がある。
【0019】
本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、連結手段に、回転刃を切断位置で位置決めする第1の位置決め手段と、回転刃を交換位置で位置決めする第2の位置決め手段と、回転刃を駆動する駆動手段をオン・オフするスイッチ手段とを有する。前記スイッチ手段は、第1の位置決め手段に設けられ、第1の位置決め手段が回転刃を位置決めするとオンとなり、第1の位置決め手段が回転刃を位置決めしていないとオフとなるように構成されている。
【0020】
本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、回転刃を切断位置で第1の位置決め手段により位置決めするとスイッチ手段がオンとなり、駆動手段を作動すると、回転刃が回転して、被縫製物を切断する。駆動手段を停止すると、回転刃の回転が止まる。第1の位置決め手段の位置決めを解除すると、スイッチ手段がオフとなり、駆動手段を作動させようとしても、回転刃は回転しない。
【0021】
本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、回転刃を交換位置で第2の位置決め手段により位置決めしてもスイッチ手段はオフ状態であり、回転刃が回転不能になっているので、回転刃を安全に交換することができる。また回転刃は、位置決めされているので、安定しており、交換作業を簡単且つ容易に行うことができる。このように、本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、回転刃を切断位置と交換位置で位置決めすることができ、交換位置で位置決めされた時に回転刃が回転不能になるので、安全性が高いという効果がある。
【0022】
本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、前記連結手段が、回転刃の切断位置から回転刃の交換位置に移動でき、さらに回転刃の交換位置から回転刃の待機位置に移動できるように、固定枠に可動枠を回動可能に連結している。本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置は、回転刃の切断位置において被縫製物の切断作業を行うことができ、回転刃の交換位置において回転刃を簡単且つ容易に交換でき、回転刃の待機位置において回転刃の存在が邪魔にならずに縫製作業を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置の一つの実施の形態を示す全体正面図である。
図2図1のミシンの被縫製物切断装置を上から視た平面図である。
図3図1のミシンの被縫製物切断装置を側面から視た側面図である。
図4図3のミシンの被縫製物切断装置を裏側から視た側面図である。
図5】ミシンの一部を省略した図3の側面図である。
図6図3のミシンの被縫製物切断装置の動きを説明する側面図である。
図7図6のミシンの被縫製物切断装置を裏側から視た側面図である。
図8図2のミシンの被縫製物切断装置の動きを説明する平面図である。
図9図2のミシンの被縫製物切断装置の動きを説明する平面図である。
図10図9のミシンの被縫製物切断装置の動きを説明する平面図である。
図11図9のミシンの被縫製物切断装置を後から視た背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願発明に係るミシンの被縫製物切断装置の全体構成について説明する。ミシンの被縫製物切断装置21は、図1乃至3に示すように、ミシン1のベッド部2上の被縫製物を切断する回転刃61を有する。ミシンの被縫製物切断装置21は、ミシン本体10に固定して取り付けられる固定枠22と、固定枠22に連結手段41を介して取り付けられた可動枠51とからなる。前記可動枠51は、これの一方側に設けられた伝達軸55と、これの他方側に設けられた回転軸56と、伝達軸55の回転を回転軸56に伝達する伝達手段57と、回転軸56に固定された前記回転刃61とを有する。
【0025】
前記固定枠22には、駆動手段31によって駆動する駆動軸32と、駆動軸32の動力を前記伝達軸55に伝達する動力伝達部80が設けられている。前記連結手段41は、回転刃61の面がベッド部2の長手方向側に向く回転刃61の切断位置(図2参照)から、回転刃61の面がベッド部2の長手方向と略直交する方向側に傾斜する回転刃61の交換位置(図8参照)に移動できるように、固定枠22に可動枠51を回動可能に連結している。
【0026】
ミシンの被縫製物切断装置21は、駆動手段31を作動すると、固定枠22側の駆動軸32が駆動し、駆動軸32の動力が動力伝達部80を介して、可動枠51側の伝達軸55に伝達され、伝達軸55が回転する。伝達軸55が回転すると伝達手段57によって回転軸56が回転し、回転軸56に固定された回転刃61も回転する。回転刃61は、可動枠51に設けられた固定刃64又はミシン1のベッド部2側に形成された固定刃と協働してベッド部2上の被縫製物を切断する。駆動手段31を停止すると、伝達軸55、回転軸56及び回転刃61の回転が止まる。回転刃61は、ミシン針19の近傍に位置しており、ミシン針19の縫製方向と略直交する方向側(ベッド部2の長手方向側)に回転刃61の面が向いている。切断位置にある回転刃61は、回転刃61の面がミシン針19側に向いており、回転軸56から抜き出して取り外そうとしても、回転刃61の面がミシン針19、布押え16、上送り18等に接触し、回転軸56から外すことができない。
【0027】
ミシンの被縫製物切断装置21は、連結手段41により、固定枠22に対して可動枠51を回動すると、回転刃61が切断位置から交換位置に移動し、図8に示すように、回転刃61の面がベッド部2の長手方向と略直交する方向側に傾斜して向くことになる。交換位置にある回転刃61は、ミシン針19から離れ、回転刃61の面が作業者側に向いており、回転刃61の面に接触する可能性のあったミシン針19、布押え16、上送り18等が存在しないので、どこにも接触することなく、回転軸56から簡単に抜き出して取り外すことができる。このように、ミシンの被縫製物切断装置21は、回転刃61を切断位置から交換位置に移動させることができ、回転刃61の交換スペースを確保でき、誰でも簡単に回転刃61の交換を行うことができる。
【0028】
ミシンの被縫製物切断装置21は、前記連結手段41がベッド部2と略平行方向で回動するように固定枠22に回動可能に取り付けられた連結体である。当該連結体41には、前記可動枠51の一方側が回動可能に取り付けられ、可動枠51の他方側の回転刃61が上下方向に移動できるように構成されている。
【0029】
ミシンの被縫製物切断装置21は、回転刃61の切断位置において、回転刃61の面がベッド部2の長手方向側(ミシン針19側)に向いているので、回転軸56から回転刃61を抜き出して取り外そうとしても、回転刃61の面がミシン針19に接触し、回転軸56から外すことが難しい。ミシンの被縫製物切断装置21は、図6,7に示すように、連結体41に対して可動枠51を回動させ、可動枠51の他方側の回転刃61を上方に移動させてミシン針19から回転刃61を離間させる。次に、図8に示すように、固定枠22に対して連結体41を回動させると、回転刃61がミシン針19から水平方向で離れ、且つ、回転刃61の面がベッド部2の長手方向と略直交する方向側に傾斜して向くことになる。
【0030】
このように、ミシン針19から離れ、回転刃61の面が作業者側に向いており、回転刃61の面に接触するミシン針19、布押え16、上送り18等のミシン1の部位が存在しないので、どこにも接触することなく、回転刃61を回転軸56から簡単に抜き出して取り外すことができる。このように、ミシンの被縫製物切断装置21は、回転刃61を無理なく安全に切断位置から交換位置に移動させることができる。
【0031】
ミシンの被縫製物切断装置21は、図1,10に示すように、前記動力伝達部80が、第1の連結軸81と第1の連結軸81に屈曲自在に連結された第2の連結軸86とからなる。第1の連結軸81は駆動軸32に連結され、第2の連結軸86は伝達軸55に連結される。第1の連結軸81と第2の連結軸86の屈曲部84は、連結手段41の回動中心46に略一致するように構成されている。ミシンの被縫製物切断装置21は、連結手段41の回動中心46と動力伝達部80の屈曲部84が略一致しているので、連結手段41を回動すると、動力伝達部80が無理なくスムーズに屈曲し、動力伝達部80に加わる負担が少なく、壊れ難い。
【0032】
ミシンの被縫製物切断装置21は、図1に示すように、前記連結手段41に、回転刃61を駆動する駆動手段31をオン・オフするスイッチ手段75が設けられている。スイッチ手段75は、回転刃61が切断位置にあるとオンとなり、回転刃61が非切断位置にあるとオフとなる。このように、ミシンの被縫製物切断装置21は、切断位置ではスイッチ手段75がオンとなって回転刃61が回転するが、非切断位置では回転刃61は回転しないので、安心して回転刃61を交換することができる。
【0033】
ミシンの被縫製物切断装置21は、図3,4に示すように、連結手段41に、回転刃61を切断位置で位置決めする第1の位置決め手段71と、回転刃61を交換位置で位置決めする第2の位置決め手段72と、回転刃61を駆動する駆動手段31をオン・オフするスイッチ手段75とを有する。前記スイッチ手段75は、第1の位置決め手段71に設けられ、第1の位置決め手段71が回転刃61を位置決めするとオンとなり、第1の位置決め手段71が回転刃61を位置決めしていないとオフとなるように構成されている。
【0034】
ミシンの被縫製物切断装置21は、回転刃61を切断位置で第1の位置決め手段71により位置決めするとスイッチ手段75がオンとなり、駆動手段31を作動すると、回転刃61が回転して、被縫製物を切断する。駆動手段31を停止すると、回転刃61の回転が止まる。第1の位置決め手段71の位置決めを解除すると、スイッチ手段75がオフとなり、駆動手段31を作動させようとしても、回転刃61は回転しない。ミシンの被縫製物切断装置21は、連結手段41により、固定枠22に対して可動枠51を回動すると、回転刃61が切断位置から交換位置に移動する。
【0035】
ミシンの被縫製物切断装置21は、図6に示すように、回転刃61を交換位置で第2の位置決め手段72により位置決めしてもスイッチ手段75はオフ状態であり、回転刃61が回転不能になっているので、回転刃61を安全に交換することができる。また回転刃61は、位置決めされているので、安定しており、交換作業が簡単且つ容易に行うことができる。このように、ミシンの被縫製物切断装置21は、回転刃61を切断位置と交換位置で位置決めすることができ、交換位置で位置決めされた時に回転刃61が回転不能になるので、安全性が高い。
【0036】
ミシンの被縫製物切断装置21は、前記連結手段41が、回転刃61の切断位置(図2参照)から回転刃61の交換位置(図8参照)に移動でき、さらに回転刃61の交換位置から回転刃61の待機位置(図9参照)に移動できるように、固定枠22に可動枠51を回動可能に連結している。ミシンの被縫製物切断装置21は、回転刃61の切断位置において被縫製物の切断作業を行うことができ、回転刃61の交換位置において回転刃61を簡単且つ容易に交換でき、回転刃61の待機位置において回転刃61の存在が邪魔にならずに縫製作業を行うことができる。
【0037】
さらに、ミシンの被縫製物切断装置について詳細に説明する。一般的なミシンの全体構成について、図1,3に基づいて説明する。ミシン1は、ベッド部2のテーブル2a上にミシン本体10が載置され、ベッド部2の下部にミシン駆動用ペダルが取付けられている。また、ミシン本体10のミシンヘッド11の下部には、針棒12が垂直且つ昇降可能に取付けられている。この針棒12の下端部には、ミシン針19が取り付けられている。また針棒12の側部には垂直に押え棒15が配置され、この押え棒15の先端部に布押え16が取付けられている。
【0038】
また押え棒15の側部には上送り棒17が取付けられ、この上送り棒17に上送り18が固着されている。針棒12と上送り棒17は、ミシンヘッド11に昇降及び揺動可能にそれぞれ配置されている。また、押え棒15は、ミシンヘッド11に上下運動可能に配置されている。針棒12の直下のベッド部2のテーブル2aの位置には、被縫製物の移動面に沿う針板が配置されている。さらに、針板の下側であって、ベッド部2の内部に下送りと回転釜が取付けられている。当該ミシン1は、針棒12に取り付けられるミシン針19と前記回転釜により、布、皮革等の被縫製物に本縫いを行う。
【0039】
図1に示すように、ミシン本体10の正面側(作業者の作業位置とは反対側)の位置には、切断装置21が取り付けられている。この切断装置21は、ミシン針19と回転釜とによる縫製動作に連動又は独立して、布、皮革等の被縫製物を切断するようになっている。切断装置21は、ミシン本体10の正面にネジ等により固定して取り付けられる固定枠22と、固定枠22に連結手段41を介して取り付けられた可動枠51とからなる。なお、本実施の形態では、ミシン本体10の正面側に設けられたアクチュエータ35にも固定枠22がネジ等により固定して取り付けられている。
【0040】
図1,2に示すように、固定枠22は、ミシン本体10の正面側にネジ等によって固定される取付板23と、取付板23にネジ等によって固定される固定板25と、固定板25にネジ等によって固定される基板27と、基板27に一体に設けられたモータ取付板28とを有する。取付板23は、ネジ24,24によりミシン本体10の長手方向と略直角の方向に略垂直に固定される。固定板25は、前部に連結片26が一体で固定され、当該連結片26が取付板23の下部面に接合されネジ止めされて、略水平に固定されている。
【0041】
基板27は、固定板25の下面に接合されネジ止めされて、固定板25に略水平に固定されている。基板27の下面には、基板27と略直角の方向にモータ取付板28が一体的に設けられている。モータ取付板28には、駆動モータ31がネジ等により固定されている。駆動モータ31の駆動軸32は、モータ取付板28から略水平状態で前方に突出している。駆動軸32は、ミシン本体10の長手方向と略平行であり、ミシン針19側の前方(図1の右方)に突出している。
【0042】
基板27には、連結手段41が設けられている。連結手段41は、中心軸46によって基板27に水平方向に回動可能に取り付けられた回動板42と、回動板42の後方に設けられた後部ブロック43と、回動板42の前方に設けられた前部ブロック45と、傾斜取付板48を有する。後部ブロック43には、位置決めボルト44が設けられている。位置決めボルト44は、図9に示すように、前記基板27に形成された第1の位置決めネジ穴29又は第2の位置決めネジ穴30に螺合する。第1の位置決めネジ穴29及び第2の位置決めネジ穴30は、前記中心軸46を中心とした円周上に配置されている。
【0043】
図1に示すように、前部ブロック45は、前面47が傾斜している。前部ブロック45の前面47は、下縁から上縁に向かって、前部ブロック45の厚みが薄くなるように傾斜しており、下端縁が前方に突出し、上端縁が後方に引っ込んでいる。この前部ブロック45の前面47には、前記傾斜取付板48が接合してネジによって固定されている。傾斜取付板48は、前部ブロック45の前面47と同様に、下部が前方に突出し、上部が後方に引っ込んだ傾斜状態となっている。
【0044】
図2に示すように、可動枠51には、巻掛け伝動手段が設けられている。可動枠51は、前側板52と、後側板53と、前側板52と後側板53を連結固定する固定軸によって形成されている。可動枠51は、下部に回転軸56が回動可能に取り付けられ、上部に伝達軸55が回動可能に取り付けられている。上部の伝達軸55と下部の回転軸56には、ベルト57が巻き掛けられ、伝達軸55の回転がベルト57を介して回転軸56に伝達される。
【0045】
このように、伝達軸55と回転軸56とベルト57によって巻掛け伝動手段を構成しているが、伝達軸55及び回転軸56にプーリを固着し、この一対のプーリにベルトを巻き掛けた巻掛け伝動手段であっても構わないのは勿論である。なお、伝達軸55の回転を回転軸56に伝達する伝達手段は、巻掛け伝動手段に限定されるものではなく、歯車群等の種々の技術手段を採用しても構わないのは勿論である。図1に示すように、回転軸56は、前側板52から突出し、この回転軸56の突出部に回転刃61が固定して取り付けられている。図3に示すように、前側板52には、この回転刃61の上部を覆うカバー体62がネジ等に取り付けられている。カバー体62には、回転刃61と協働してベッド部2上の被縫製物を切断する固定刃64が取り付けられている。
【0046】
図1に示すように、可動枠51は、前記傾斜取付板48に回動可能に取り付けられている。後側板53の上部は、延設されて連結板58が形成されている。図3に示すように、連結板58は、傾斜取付板48に連結ネジ63を介して回動可能に連結され、傾斜取付板48に摺接する。傾斜取付板48には、連結ネジ63を案内する円弧状の案内溝49が形成されている。案内溝49は、伝達軸55を中心とした円弧状に形成されている。連結板58には、ブロック片65がネジ67等により取り付けられている。ブロック片65には、位置決めボルト66が設けられている。位置決めボルト66は、図5に示すように、前記傾斜取付板48に形成された第1の位置決めネジ穴71又は第2の位置決めネジ穴72に螺合する。第1の位置決めネジ穴71及び第2の位置決めネジ穴72は、前記伝達軸55を中心とした円周上に配置されている。
【0047】
図1に示すように、可動枠51は、位置決めボルト66を第1の位置決めネジ穴71にねじ込んで位置決めされると、回転刃61がベッド部2上に載置された被縫製物を切断することが可能な位置に配置される。可動枠51は、位置決めボルト66を第2の位置決めネジ穴72にねじ込んで位置決めされると、図6,7に示すように、回転刃61が上方に移動して被縫製物から離れる。図1に示すように、傾斜取付板48には、位置決めボルト66を第1の位置決めネジ穴71にねじ込むと、位置決めボルト66の先端に押圧されてオンとなるスイッチ75が設けられている。
【0048】
図1,10に示すように、可動枠51の伝達軸55と駆動モータ31の駆動軸32は、ユニバーサルジョイント80で連結されている。ユニバーサルジョイント80は、第1の連結軸81と第1の連結軸81に屈曲自在に連結された第2の連結軸86とからなる。第1の連結軸81は、一方に前記駆動モータ31の駆動軸32を取り付ける軸本体部82と、軸本体部82の他方に形成された略コ字状の軸受け部83と、軸受け部83内に第1の支軸84によって回動可能に取り付けられた駒体85とからなる。
【0049】
第2の連結軸86は、一方に前記伝達軸55を取り付ける軸本体部87と、軸本体部87の他方に形成された略コ字状の軸受け部88からなり、前記軸受け部88内に前記駒体85が第2の支軸89によって回動可能に連結されている。このユニバーサルジョイント80の屈曲部、即ち第1の支軸84の位置と、連結手段41の回転中心、即ち中心軸46の位置は略一致している。
【0050】
なお、本実施の形態では、回転刃61との協働によって被縫製物を切断する固定刃64がカバー体62に設けられているが、固定刃がミシン1のベッド部2上に設けた針板に形成されていても良い。係る場合、回転刃61と固定刃によって構成される切断点は、作業者側から見て上送り18の作業者側で、ミシン針19の針落ち点より一定距離となる位置に配置できるように構成される。このようにして被縫製物切断装置21はミシン本体10に取り付けられている。図示しないが、ミシン1には、電源スイッチと、ミシン駆動用ペダルと、ミシン駆動用モータコントローラが設けられている。
【0051】
以上の構成において以下のように使用することができる。ミシン本体10に取り付けた被縫製物切断装置21は、回転刃61を切断位置、交換位置、待機位置に移動させることができる。回転刃61の切断位置は、図1乃至3に示すように、位置決めボルト44が基板27に形成された第1の位置決めネジ穴29に螺合され、位置決めボルト66が傾斜取付板48に形成された第1の位置決めネジ穴71に螺合された位置である。又、連結ネジ63が案内溝49の上端部の位置で螺着されている位置である。
【0052】
回転刃61の交換位置は、図6乃至8に示すように、可動枠51が伝達軸55を中心として回動し、位置決めボルト44が基板27に形成された第2の位置決めネジ穴30に螺合され、位置決めボルト66が傾斜取付板48に形成された第2の位置決めネジ穴72に螺合された位置である。又、連結ネジ63が案内溝49の下端部の位置で螺着されている位置である。回転刃61の待機位置は、図9乃至11に示すように、位置決めボルト44が基板27から離れて螺合されず、回動板42が自由状態であり、位置決めボルト66が傾斜取付板48に形成された第2の位置決めネジ穴72に螺合された位置である。
【0053】
前記した回転刃61の切断位置では、図2に示すように、回動板42がベッド部2の長手方向と略平行になっている。図1に示すように、可動枠51は、傾斜取付板48に接合しているので、ミシン針19側に向かって傾斜し、回転刃61が斜めに傾いた状態となっている。このように、回転刃61は、この切断位置で位置決めボルト44,66によって位置決めされる。
【0054】
傾斜取付板48には、第1の位置決めネジ穴71の位置にスイッチ75が設けられている。スイッチ75は、位置決めボルト66を第1の位置決めネジ穴71にねじ込むと、位置決めボルト66の先端により押圧されてオン状態となっている。回転刃61は、ミシン針19の近傍に位置しており、ミシン針19の縫製方向と略直交する方向側(ベッド部の長手方向側)に回転刃61の面が向いている。切断位置にある回転刃61は、回転刃61の面がミシン針19側に向いており、回転軸56から抜き出して取り外そうとしても、回転刃61の面がミシン針19、布押さえ16及び上送り18に接触し、回転軸56から外すことができない。
【0055】
回転刃61が切断位置で位置決めされている状態で、ミシン駆動用ペダルを操作すると、ミシン駆動用モータコントローラによって、ミシン1が駆動され、図示しない被縫製物に縫製作業を開始する。スイッチ75がオンとなっているので、これと同時にミシン駆動用モータコントローラから、電力が駆動モータ31に流れ、駆動モータ31が回転駆動される。駆動モータ31の駆動軸32の回転が、ユニバーサルジョイント80、伝達軸55、ベルト57、回転軸56に伝達され、回転軸56に固定された回転刃61が回転する。これによって、ミシン1の駆動と同時に回転刃61が回転運動し、固定刃64と協働して切断点において被縫製物を縫製と同時に切断することになる。
【0056】
回転刃61の交換位置は、連結ネジ63を緩め、位置決めボルト66を傾斜取付板48に形成された第1の位置決めネジ穴71から外し、図6,7に示すように、伝達軸55を中心として可動枠51の下部を上方に回動させて回転刃61を被縫製物から斜め上方に離間させ、次に、連結ネジ63を案内溝49の下端部の位置で螺着し、位置決めボルト66を傾斜取付板48に形成された第2の位置決めネジ穴72に螺合して位置決めした位置である。図8に示すように、位置決めボルト44を基板27に形成された第1の位置決めネジ穴29から外し、回動板42をベッド部2の長手方向に対して傾働させると、回動板42に固定された可動枠51が中心軸46を中心として回動し、回転刃61の面がベッド部2の長手方向に対して傾斜する方向に向くことになる。次に、位置決めボルト44を基板27に形成された第2の位置決めネジ穴30に螺合して位置決めする。このようにして、可動枠51は、固定枠22に固定される。
【0057】
回転刃61の交換位置は、位置決めボルト66が傾斜取付板48に形成された第2の位置決めネジ穴72に螺合し、位置決めボルト44が基板27に形成された第2の位置決めネジ穴30に螺合して位置決めされた位置である、この交換位置にある回転刃61は、ミシン針19、布押さえ16及び上送り18から離れ、回転刃61の面に接触するミシン1の部位が存在しないので、どこにも接触することなく、回転軸56から簡単に抜き出して取り外すことができる。回転刃61は、位置決めボルト66が第1の位置決めネジ穴71にねじ込まれていないので、スイッチ75がオフ状態となっており、駆動モータ31が駆動せず回転しない。従って、回転刃61は、安全に取り外すことができる。回転刃61が交換位置にある場合、ミシン1は、縫製作業を行うことができる。しかし、回転刃61の交換し易い位置は、ベッド部2の直上の位置であるため、縫製作業の邪魔になる。そこで、回転刃61を縫製作業の邪魔にならない待機位置に移動させることもできる。
【0058】
回転刃61の待機位置は、位置決めボルト66を傾斜取付板48に形成された第2の位置決めネジ穴72に螺合させた状態で、位置決めボルト44を基板27に形成された第2の位置決めネジ穴30から外し、回動板42をベッド部2の長手方向に対して大きく傾働させた位置であり、図9,10に示すように、回動板42に固定された可動枠51が中心軸46を中心として回動して、ミシン本体10の長手方向と略平行となる位置である。
【0059】
この待機位置にある回転刃61は、図11に示すように、ミシン針19、布押さえ16及び上送り18から離れ、ベッド部2の上方位置しており、ミシン1の縫製作業の邪魔にはならない。回転刃61は、位置決めボルト66が第1の位置決めネジ穴71にねじ込まれていないので、スイッチ75がオフ状態となっており、駆動モータ31に電流が流れることがなく、駆動せず回転しない。従って、縫製作業は、安全に行うことができる。
【0060】
以上、本願発明を図示の実施の形態によって説明したが、本願発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願発明の技術的思想の範囲内において各種の変更が可能である。例えば上記実施の形態においては、回転刃61の駆動のための伝導手段として、ベルト57を用いているが、ベルト57に代えて歯車列を用いて駆動してもよい。
【0061】
被縫製物切断装置21は、ミシン針19の近傍に回転刃61の切断位置を設定配置できるので、縫い品質を維持したまま、いかなる被縫製物の形状においても、縫製と略同時に又は独立して縫製ラインから均一の幅で任意の位置から被縫製物を切断でき、被縫製物の品質及び生産性を向上させることが可能になる。また被縫製物切断装置21は、ミシン本体10と別体で構成しており、既存のミシンに後から追加することによって、被縫製物切断機能付きミシンを提供でき、ミシン本体10のコストを削減することが可能である。しかし、被縫製物切断装置21は、ミシン本体10に組み込んだ形で一体化した構成にしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本願発明は、ミシンに装着でき、縫製と略同時又は縫製と独立して被縫製物を切断する被縫製物切断装置として広く利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 ミシン
2 ベッド部
2a テーブル
10 ミシン本体
11 ミシンヘッド
12 針棒
15 押え棒
16 布押え
17 上送り棒
18 上送り
19 ミシン針
21 切断装置
22 固定枠
23 取付板
24 ネジ
25 固定板
26 連結片
27 基板
28 モータ取付板
29 第1の位置決めネジ穴
30 第2の位置決めネジ穴
31 駆動モータ(駆動手段)
32 駆動軸
35 アクチュエータ
41 連結手段(連結体)
42 回動板
43 後部ブロック
44 位置決めボルト
45 前部ブロック
46 中心軸
47 前面
48 傾斜取付板
49 案内溝
51 可動枠
52 前側板
53 後側板
55 伝達軸
56 回転軸
57 ベルト(伝達手段)
58 連結板
61 回転刃
62 カバー体
63 連結ネジ
64 固定刃
65 ブロック片
66 位置決めボルト
67 ネジ
71 第1の位置決めネジ穴(第1の位置決め手段)
72 第2の位置決めネジ穴(第2の位置決め手段)
75 スイッチ(スイッチ手段)
80 ユニバーサルジョイント(動力伝達部)
81 第1の連結軸
82 軸本体部
83 軸受け部
84 第1の支軸
85 駒体
86 第2の連結軸
87 軸本体部
88 軸受け部
89 第2の支軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11