特許第6585002号(P6585002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本システム企画株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6585002-水中設置型水流発電システム 図000002
  • 特許6585002-水中設置型水流発電システム 図000003
  • 特許6585002-水中設置型水流発電システム 図000004
  • 特許6585002-水中設置型水流発電システム 図000005
  • 特許6585002-水中設置型水流発電システム 図000006
  • 特許6585002-水中設置型水流発電システム 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585002
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】水中設置型水流発電システム
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/10 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   F03B13/10
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-105039(P2016-105039)
(22)【出願日】2016年5月26日
(65)【公開番号】特開2017-210922(P2017-210922A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2018年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】598030238
【氏名又は名称】日本システム企画株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080528
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 冨士男
(74)【代理人】
【識別番号】100073601
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 和男
(72)【発明者】
【氏名】熊野 活行
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5905984(JP,B1)
【文献】 特開昭61−116076(JP,A)
【文献】 特表2010−507042(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10134509(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0260148(US,A1)
【文献】 特開2011−132943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海又は河川の水流がある水域の水底に間隔を隔てて設置した複数の錘体と、
両端を前記各錘体に各々連結し前記各錘体の上方の水中に配置する配置位置基準用の水中長尺体と、
一方は水面に浮かせ他方は水面又は水中に位置させて相互に連動するようにした二個の浮体と、
水中に配置する二個一組の滑車を備える滑車体と、
前記滑車体を連結して定位置に支持するとともに、前記二個の浮体のうちの一方の浮体に一端を連結し、二個の滑車のうちの一方の滑車に掛け回し他方の浮体の下部に設けた輪体に折り返し状態で掛け回して、他端側を延長して前記滑車体を固定状態に連結した後、前記水中長尺体に連結した支持用長尺体と、
前記他方の浮体の輪体或いは当該他方の浮体自体に連結した水中設置型の発電機装置ユニットと、
を有するとともに、前記二個の浮体、滑車体、支持用長尺体、発電機装置ユニットを一組として複数組備え、
前記相互に連動するようにした二個の浮体のうちの水面に浮かせて位置させる一方の浮体を、前記支持用長尺体に固定状態に取り付け、かつ、前記各発電機装置ユニットの水面からの深さ位置を事前に各種態様に予め自在に設定しておき、この発電機装置ユニットの構築対象領域において、当該各発電機装置ユニットを順次水中に投下して沈降させるだけで、簡易、迅速に各発電機装置ユニットを設定できるように構成したことを特徴とする水中設置型水流発電システム。
【請求項2】
海又は河川の水流がある水域の水底に間隔を隔てて設置した複数の錘体と、
両端を前記各錘体に各々連結し前記各錘体の上方の水中に配置する配置位置基準用の水中長尺体と、
一方は水面に浮かせ他方は水面又は水中に位置させて相互に連動するようにした二個の浮体と、
水中に配置する二個一組の滑車を備える滑車体と、
前記滑車体を連結し定位置に支持するとともに、前記二個の浮体のうちの一方の浮体に一端を連結し、二個の滑車のうちの一方の滑車に掛け回して他方の浮体の下部に設けた輪体に折り返し状態で掛け回して、他端側を延長して前記滑車体を固定状態に連結した後、前記水中長尺体に連結した支持用長尺体と、
発電装置本体及び発電装置本体の後方部に設けた可変翼型回転羽根車と前記可変翼型回転羽根車の回転力を利用して発電出力を得る発電機とを備える発電装置と、前記可変翼型回転羽根車に内蔵され、前記発電装置本体の全体重量のうち中間部より後部の重量と同等の浮力を生む中空状タンクと、前記発電装置本体の上方水流域に浮上配置され、前記発電装置本体の斜め板開口部が常に水流の方向に対面する一定方向に向くように引っ張り具を介して張力を前記発電装置本体に付与する浮力体であって、浮力の力が発電装置本体の斜め板開口部の先端部から発電装置本体のほぼ中間部より前方部の範囲にのみかかるように結合させる浮力体と、を具備し、前記他方の浮体の輪体或いは当該他方の浮体自体に連結した水中設置型の発電機装置ユニットと、
を有するとともに、前記二個の浮体、滑車体、支持用長尺体、発電機装置ユニットを一組として複数組備え、
前記相互に連動するようにした二個の浮体のうちの水面に浮かせて位置させる一方の浮体を、前記支持用長尺体に固定状態に取り付け、かつ、前記各発電機装置ユニットの水面からの深さ位置を事前に各種態様に予め自在に設定しておき、この発電機装置ユニットの構築対象領域において、当該各発電機装置ユニットを順次水中に投下して沈降させるだけで、簡易、迅速に各発電機装置ユニットを設定できるように構成したことを特徴とする水中設置型水流発電システム。
【請求項3】
前記複数の発電機装置ユニットは、水面からの深さ位置を夫々相違させた状態で水中に所定の間隔をもって列設させた状態のものであることを特徴とする請求項1又は2記載の水中設置型水流発電システム。
【請求項4】
前記複数の発電機装置ユニットは、水面からの深さ位置を同一とさせた状態で水中に所定の間隔をもって列設させた状態のものであることを特徴とする請求項1又は2記載の水中設置型水流発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中設置型水流発電システムに関し、詳しくは、設置される多数の各発電機装置ユニット相互の水流の影響による衝突、或いは繋留するためのロープ等の絡み合いのような故障等のトラブル要因をなくすことができ、特に簡略安価な設置構成の基に自然エネルギーである海流又は水流を利用して効率よく、かつ、安定して発電出力を得ることができる水中設置型水流発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、太陽エネルギーをエネルギー源とする自然エネルギーを利用した発電システムの普及が望まれている。
【0003】
その中でも、現在利用が進んでいるのは地球上に注がれる太陽エネルギーの30%に当る陸地に注がれる太陽エネルギーを利用した太陽光、或いは風力、バイオマス、水力発電などであり、また、海に注がれる70%の太陽エネルギーは主として海流エネルギーなどに転換されるがその殆どは未利用の状態である。
【0004】
このような状況から、近年注目を浴びるようになってきた水流(海流、潮流)を利用した発電装置の開発は、そのほとんどが風力発電装置の原理を応用したものであり風力と同様にプロペラを回転させる方式になっている。
【0005】
しかしながら、この方法では、エネルギー方向を90度変換させて回転運動をするために、エネルギーロスが大きいという欠点がある。
【0006】
水流を利用した発電方法としては、大きく分けて、(1)海底(又は海中)に風車様のプロペラ機を設置し、発電するシステム、(2)海底(又は海中)に設置したアンカーにより係留した発電装置を海中に浮遊させ、海流によって発電するシステムの二つに分けられる。
【0007】
これら水流(海流)を利用した発電システムを考える上で最も重要になるのが流体力学に基づいた以下の公式である。
【0008】
発電量=1/2×(海水比重)×(流速)×(羽根の面積)×(発電効率)
【0009】
この公式において重要な点は、発電量は流速の3乗に比例するということである。
【0010】
この発電公式に基づくと、海底にプロペラ機を設置する方法の場合十分な流速を得ることが困難であり、発電量は激減する。
【0011】
特許文献1は、上記従来の事情に鑑みて本願出願人が先に出願した水中設置型水流発電システムであって、海又は河川の水流がある水域の水底に固定設置する錘体と、前記水域における前記錘体の上方の水流域に配置され、繋留具を介して前記錘体により繋留される発電装置本体と、この発電装置本体の前方部に設けた水流流入用の斜め板間口部と、発電装置本体の後方部に設けた可変翼型回転羽根車と、前記可変翼型回転羽根車の回転力を利用して発電出力を得る発電機とを備える発電装置と、前記可変翼型回転羽根車に内蔵され、前記発電装置本体の全体重量のうち中間部より後部の重量と同等の浮力を生む中空状タンクと、前記発電装置本体の上方水流域に浮上配置され、前記発電装置本体の斜め板開口部が常に水流の方向に対面する一定方向に向くように引っ張り具を介して張力を前記発電装置本体に付与する浮力体であって、浮力の力が発電装置本体の斜め板開口部の先端部から発電装置本体のほぼ中間部より前方部の範囲にのみかかるように結合させる浮力体と、を有し、自然エネルギーである海流又は水流を利用して効率よく発電出力を得ることができ、かつ、簡略安価な設置構成の基に低価格な発電電力の安定した供給を実現する水中設置型水流発電システムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第5905984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記特許文献1の技術を踏まえ、これを発展し、例えば水流又は海流を効率よく利用するために、水深の如何にかかわらないが、例えば水深30mから40mの位置に複数の発電機装置ユニットを設置する場合においても、設置される多数の各発電機装置ユニット相互の水流の影響による衝突、或いは繋留するためのロープ等の絡み合いのような故障等のトラブル要因をなくすことができ、自然エネルギーである海流又は水流を利用して効率よく、かつ、安定して発電出力を得ることができ、簡略安価な設置構成の基に低価格な発電電力の安定した供給を実現する水中設置型水流発電システムを実現し提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の水中設置型水流発電システムは、海又は河川の水流がある水域の水底に間隔を隔てて設置した複数の錘体と、両端を前記各錘体に各々連結し前記各錘体の上方の水中に配置する配置位置基準用の水中長尺体と、一方は水面に浮かせ他方は水面又は水中に位置させて相互に連動するようにした二個の浮体と、水中に配置する二個一組の滑車を備える滑車体と、前記滑車体を連結し定位置に支持するとともに、前記二個の浮体のうちの一方の浮体に一端を連結し、二個の滑車のうちの一方の滑車に掛け回し他方の浮体の下部に設けた輪体に折り返し状態で掛け回し他端側を延長して前記水中長尺体に連結した支持用長尺体と、当該支持用長尺体の動き(上昇動・下降動)を阻害しないような状態で前記他方の浮体の輪体或いは当該他方の浮体自体に連結した水中設置型の発電機装置ユニットと、を有するとともに、前記二個の浮体、滑車体、支持用長尺体、発電機装置ユニットを一組として複数組備え、各発電機装置ユニットの水面からの深さ位置を事前に各種態様に予め自在に設定しておき、この発電機装置ユニットの構築対象領域において、当該各発電機装置ユニットを順次水中に投下して沈降させるだけで、簡易、迅速に前記各発電機装置ユニットを設定可能としたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1乃至4記載の発明によれば、各発電機装置ユニットの水面からの深さ位置を事前に各種態様に予め自在に設定しておき、この発電機装置ユニットの構築対象領域において、当該各発電機装置ユニットを順次水中に投下して沈降させるだけで、簡易、迅速に前記各発電機装置ユニットを設定できるとともに、設置される多数の各発電機装置ユニット相互の水流の影響による衝突、或いは繋留するための支持用長尺体同士の絡み合いのような故障等のトラブル要因をなくすことができ、自然エネルギーである海流又は水流を利用して効率よく、かつ、安定して発電出力を得ることができ、簡略安価な設置構成の基に低価格な発電電力の安定した供給を実現することが可能であり、支持用長尺体を引き上げることにより設置される多数の各発電機装置ユニットの水面からの深さを異ならせたり或いは同一としたり、また、多数の各発電機装置ユニットのうちの特定の発電機装置ユニットを浅くしたり深くしたり等の事前調整をすることができる水中設置型水流発電システムを実現し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本発明の実施例に係る水中設置型水流発電システムの全体構成を示す概略図であり、具備する複数の各発電機装置ユニットの水中における高さを夫々異にする状態例の概略図である。
図2図2は本発明の実施例に係る水中設置型水流発電システムの全体構成を示す概略図であり、具備する複数の各発電機装置ユニットの水中における高さを夫々同じにする状態例の概略図である。
図3図3は本実施例に係る水中設置型水流発電システムを構成する発電機装置ユニットの概略斜視図である。
図4図4は本発明の変形例に係る水中設置型水流発電システムの全体構成を示す概略図であり、具備する複数の各発電機装置ユニットが順次水中に投下された初期状態を示す概略図である。
図5図5は本発明の変形例に係る水中設置型水流発電システムの全体構成を示す概略図であり、図4の状態における各発電機装置ユニットの水中の深さ位置を調整するために支持用長尺体の一端を引き上げて発電機装置ユニットを水中に沈降させる工程を示す概略説明図である。
図6図6は本発明の変形例に係る水中設置型水流発電システムの全体構成を示す概略図であり、図5の状態における各発電機装置ユニットの水深位置の調整が完了した状態を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、設置される多数の各発電機装置ユニット相互の水流の影響による衝突、或いは繋留するためのロープ等の絡み合いのような故障等のトラブル要因をなくすことができ、自然エネルギーである海流又は水流を利用して効率よく、かつ、安定して発電出力を得ることができ、簡略安価な設置構成の基に低価格な発電電力の安定した供給を実現する水中設置型水流発電システムを実現し提供するという目的を、海又は河川の水流がある水域の水底に間隔を隔てて設置した複数の錘体と、両端を前記各錘体に各々連結し前記各錘体の上方の水中に配置する配置位置基準用の水中長尺体と、一方は水面に浮かせ他方は水面又は水中に位置させて相互に連動するようにした二個の浮体と、水中に配置する二個一組の滑車を備える滑車体と、前記滑車体を連結し定位置に支持するとともに、前記二個の浮体のうちの一方の浮体に一端を連結し、二個の滑車のうちの一方の滑車に掛け回し他方の浮体の下部に設けた輪体に折り返し状態で掛け回し他端側を延長して前記水中長尺体に連結した支持用長尺体と、発電装置本体及び発電装置本体の後方部に設けた可変翼型回転羽根車と前記可変翼型回転羽根車の回転力を利用して発電出力を得る発電機とを備える発電装置と、前記可変翼型回転羽根車に内蔵され、前記発電装置本体の全体重量のうち中間部より後部の重量と同等の浮力を生む中空状タンクと、前記発電装置本体の上方水流域に浮上配置され、前記発電装置本体の斜め板開口部が常に水流の方向に対面する一定方向に向くように引っ張り具を介して張力を前記発電装置本体に付与する浮力体であって、浮力の力が発電装置本体の斜め板開口部の先端部から発電装置本体のほぼ中間部より前方部の範囲にのみかかるように結合させる浮力体と、を具備し、当該支持用長尺体の動き(上昇動・下降動)を阻害しないような状態で前記他方の浮体の輪体或いは当該他方の浮体自体に連結した水中設置型の発電機装置ユニットと、を有するとともに、前記二個の浮体、滑車体、支持用長尺体、発電機装置ユニットを一組として複数組備え、各発電機装置ユニットの水面からの深さ位置を事前に各種態様に予め自在に設定しておき、この発電機装置ユニットの構築対象領域において、当該各発電機装置ユニットを順次水中に投下して沈降させるだけで、簡易、迅速に前記各発電機装置ユニットを設定可能とした構成により実現した。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例に係る水中設置型水流発電システムについて各図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
本実施例に係る水中設置型水流発電システム1は、図1に示すように、海又は河川の水流がある水域の水底Gに間隔を隔てて設置した複数(例えば2個の例えば5t)の重量を有する錘体2と、両端を前記各錘体2に各々連結し前記各錘体2の上方の水中に配置する配置位置基準用の例えばロープ、ワイヤー等からなる水中長尺体3と、一方は水面Sに浮かせ他方は水面又は水中に位置させて相互に連動するようにした第1、第2の浮体6A、6Bと、水中に配置し後述する支持用長尺体8に連結されて定位置に支持される二個一組の滑車4を並列配置に備える滑車体5と、前記第1、第2の浮体6A、6Bのうちの第1の浮体6Aに一端を連結し、他端を前記二個の滑車4のうちの一方の滑車4に掛け回し、次に第2の浮体6Bの下部に設けた輪体7に折り返し状態で掛け回し、更にその他端側を延長して前記滑車体5を固定状態に連結した後、前記水中長尺体3に連結した支持用長尺体8と、当該支持用長尺体8の動き(上昇動・下降動)を阻害しないような状態で前記第2の浮体6Bの輪体7或いは当該第2の浮体6B自体に、ロープ或いはワイヤー等からなる繋留具9及び止め輪9aを介して結合した後述する水中設置型の発電機装置ユニット10と、を有し、これらを例えば4組構成として、各発電機装置ユニット10の水面Sからの深さ位置を自在に設定できる態様で列設配置している。
【0020】
図1は本発明の実施例に係る水中設置型水流発電システム1の全体構成を示す概略図であり、具備する複数の各発電機装置ユニット10の水中における高さを夫々異にする状態例の概略図である。
【0021】
図2は本発明の実施例に係る水中設置型水流発電システム1の全体構成を示す概略図であり、具備する複数の各発電機装置ユニット10の水中における高さを夫々同じにする状態例の概略図である。
【0022】
なお、水中設置型水流発電システム1においては、各発電機装置ユニット10の水面Sからの深さ位置を事前に各種態様に自在に設定できる。
【0023】
前記錘体2、水中長尺体3、滑車体5、第1、第2の浮体6A、6B、支持用長尺体8をもって発電機装置ユニット10用の支持構造体を構成するものである。
【0024】
ここで、本実施例に係る水中設置型水流発電システム1における各部の設置寸法について例示して概説する。
【0025】
例えば、前記水中長尺体3の水平部分の水面Sからの深さH1は数十m(例えば70m)、前記2個の錘体2を設置する水底Gと前記水中長尺体3の水平部分との寸法H2は例えば数十m〜数千m、前記発電機装置ユニット10の水面Sからの深さH3は例えば20m〜35m、前記滑車体5と支持用長尺体8との連結部分と、前記水中長尺体3の水平部分との寸法H4はH1の1/3程度、前記2個の錘体2の間隔W1は例えば130m〜180m、前記各支持用長尺体8と前記水中長尺体3の水平部分との連結部分の間隔W2は例えば30m〜40m等の例を挙げることができる。
【0026】
次に、前記水中設置型の発電機装置ユニット10について図3を参照して説明する。
【0027】
前記水中設置型の発電機装置ユニット10は、前記支持用長尺体8の動き(上昇動・下降動)を阻害しないような状態で前記第2の浮体6Bの輪体7或いは当該第2の浮体6B自体に、ロープ又はワイヤー等の繋留具9及び止め輪9aを介して連結、繋留される水中浮上型の発電機装置本体11と、ロープ又はワイヤー等の引っ張り具12により前記発電機装置本体11に連結される浮力体13と、を有している。
【0028】
前記繋留具9、引っ張り具12は、各々例えば100t程度の引っ張り強度に耐え得る仕様のものを使用する。
【0029】
前記発電機装置本体11は、図3に示すように、直方体筒形状の筐体14を具備している。
【0030】
この筐体14に対して、その前方部(水流に対面する側)に設けた水流が流入する並列配置の一対の斜め板間口部15と、この斜め板間口部15の後流側に設けた水流により回転する回転ドラム式の一対の可変翼型回転羽根車16と、前記発電機装置本体11の後部側に取り付けられ前記一対の可変翼型回転羽根車16の回転力を利用して発電出力を得る一対の発電機17とを水流の流入方向と直交する方向に2列の並列構造で配置し、一対の可変翼型回転羽根車16の後部側から後方に水流を排流するように構成している。
【0031】
前記斜め板間口部15は、前記筐体14と、発電機装置本体11の前方部から前記可変翼型回転羽根車16側に至るほど下降する傾斜配置とした斜め板18とにより形成している。
【0032】
更に、前記可変翼型回転羽根車16内には、水中における発電機装置本体11の全体重量のうち中間部より後部の重量と同等の浮力を生む中空状タンク19を内蔵している。
【0033】
すなわち、本実施例に係る水中設置型水流発電システム1における発電機装置本体11は、前記斜め板間口部15を2個、中空状タンク19を含む可変翼型回転羽根車16を2個、発電機17を2個備えた例えば2連構造としている。
【0034】
次に、前記発電機装置本体11と浮力体13との引っ張り具12による連結構造について説明する。
【0035】
この連結構造は、以下のように構成している。
【0036】
本実施例においては、前記浮力体13と発電機装置本体11とを、前記引っ張り具12により前記浮力体13による張力の作用が発電機装置本体11の前方部を形成する斜め板開口部15の先端部から発電機装置本体11のほぼ中間部(海流の流れ方向のほぼ中間位置)より前方部の範囲にのみかかるように連結している。
【0037】
具体的には、前記浮力体13の前方部(海流に対面する側)の下部両隅部と、発電機装置本体11の斜め板間口部15の上部両隅部とを2本の引っ張り具12により連結し、前記浮力体13の後方部の下部両隅部と、発電機装置本体11の後部側両側部とを2本の引っ張り具12により連結する例を挙げることができる。
【0038】
更に詳述すると、前記浮力体13と発電機装置本体11とは、浮力体13の前方部(水流に対面する側)の下部両隅部と、発電機装置本体11の斜め板間口部12の上部両隅部とを2本の引っ張り具12により連結し、前記浮力体13の後方部の下部両隅部と、発電機装置本体11のほぼ中央部、或いは当該中央部より前方部(海流に対面する側)の範囲位置の両側部とを他の2本の引っ張り具12により連結する構造としている。
【0039】
これにより、前記中空状タンク19による前記発電機装置本体11の中間部より後部側の浮力バランスと、前記浮力体13による引っ張り具12を介しての発電機装置本体11の前方部への張力付与との相互作用で、前記発電機装置本体11の斜め板開口部15が常に海流の方向に対面する一定方向に向くように位置制御される構成としている。
【0040】
前記可変翼型回転羽根車16の具体的構成は省略するが、その基本的構成は、本願の出願人が所有する特許第5389082号により開示した水車羽根型発電装置における可変翼型回転羽根車の構成を採用するものである。
【0041】
次に、上述した本実施例に係る水中設置型水流発電システム1の構築について説明する。
【0042】
まず、水中において図1或いは図2等の状態になるように、各発電機装置ユニット10の水面Sからの深さ位置を事前に予め自在に設定されてセット状態になっている各発電機装置ユニット10、すなわち、水中において図1或いは図2の状態になるように固定されることが必要な各部分を固定し(すなわち、前記相互に連動するようにした第1の浮体6A、第2の浮体6Bのうちの水面に浮かせて位置させる第1の浮体6Aを、前記支持用長尺体8に固定状態に取り付け)つつ、所要数の錐体2、所要長さの水中長尺体3、滑車体5、第1の浮体6A、第2の浮体6B、支持用長尺体8、前記繋留具9、引っ張り具12及び浮力体13を含む各発電機装置ユニット10を、後記図5に示すような曳航船22により曳航される運搬用船21に載せて、海又は河川の水流がある構築対象領域としての水域に搬送する。
【0043】
なお、上述したセット状態になっている各発電機装置ユニット10は、曳航船22を必要とすることなく、運搬用船21に直接載せて構築対象領域としての水域に搬送するようにしても良いことは勿論である。
【0044】
本発明に係る水中設置型水流発電システム1においては、各発電機装置ユニット10の水面Sからの深さ位置を事前に各種態様に予め自在に設定しておくことがきることは前述した通りである。
【0045】
そして、構築対象領域において、曳航船22からいずれか一方の錐体2を先に水中に投下した後、各発電機装置ユニット10の水面Sからの深さ位置を事前に予め自在に設定されてセット状態になっている各発電機装置ユニット10を、順次水中に投下して行き、各発電機装置ユニット10を図1或いは図2等の状態に沈降させるだけで良い。なお、通常の場合、他方の錐体2は、最後に水中に投下される。
【0046】
このような水中設置型水流発電システムによれば、構築対象領域における水域の水底Gから水面にわたって発電機装置ユニット10用の支持構造体を簡易、迅速に構築することができるとともに、設置される多数の各発電機装置ユニット相互の水流の影響による衝突、或いは繋留するための支持用長尺体同士の絡み合いのような故障等のトラブル要因をなくすことができ、自然エネルギーである海流又は水流を利用して効率よく、かつ、安定して発電出力を得ることができ、簡略安価な設置構成の基に低価格な発電電力の安定した供給を実現することが可能であり、更に、支持用長尺体を引き上げることにより設置される多数の各発電機装置ユニットの水面からの深さを異ならせたり或いは同一としたり、複数のうちの特定の発電機装置ユニットを浅くしたり深くしたり等々の事前調整を簡単にすることもできる。
【0047】
次に、図1図2とは異なる変形例について図4乃至図6を参照して説明する。
【0048】
図4乃至図6は、一台の発電機装置ユニット10を前記水域の所定の深さ位置に配置する工程を夫々示すものである。
【0049】
図4は、各発電機装置ユニット10が水中に投下された場合、同図の状態になるように、予めセット状態にした各発電機装置ユニット10が、構築対象領域において順次水中に投下された初期状態を示す概略図である。
【0050】
この場合、図1図2の実施例と異なる点は、図5に示すように、曳航船22に予め設置している巻上機23により前記第1の浮体6A側の支持用長尺体8を第1の浮体6Aとともに任意量引き上げることができるように各発電機装置ユニット10が予めセット状態にされている点である。なお、巻上機23は、運搬用船21、曳航船22のいずれに設置しても良い。
【0051】
図5は、図4の状態における各発電機装置ユニット10の水中の深さ位置を調整するために支持用長尺体8の一端を引き上げて発電機装置ユニット10を水中に沈降させる工程を示す概略説明図である。
【0052】
これによって、各発電機装置ユニット10の水中の深さ位置をいつでも自在に調整でき、また、支持用長尺体8の一端から巻き戻すことにより発電機装置ユニット10の設置後のメンテナンス等を簡易に行うことができる。
【0053】
図6は、図5の状態における各発電機装置ユニットの水深位置の調整が完了し水中設置型水流発電システム1の施工完了状態を示す概略説明図である。
【0054】
なお、本発明に係る水中設置型水流発電システム1の施工は、構築対象領域の現場において、次のような手順、工程によっても設置可能である。
【0055】
すなわち、まず、前記水中長尺体3の両端を各々連結した状態で2個の錘体2、2を水中に投下し海底に設置して前記各錘体2、2の上方の水中に配置位置基準用の水中長尺体3の途中部分を配置し、次に、二個一組の滑車4を備える滑車体5を前記支持用長尺体8に連結して定位置に配置した後、前記滑車体5の上方の水面に第1の浮体6A、第2の浮体6Bを並べて浮かべる。
【0056】
そして、前記支持用長尺体8の一端を前記第1の浮体6Aに連結し、前記滑車体5の一方の滑車4に掛け回し、更に、第2の浮体6Bの下部に設けた輪体7に折り返し状態で掛け回す。
【0057】
更に、前記支持用長尺体8の他端側を前記水中長尺体3に連結するとともに、前記発電機装置ユニット10を、前記支持用長尺体8の動き(上昇動・下降動)を阻害しないような状態で前記第2の浮体6Bの輪体7或いは当該第2の浮体6B自体に、ロープ或いはワイヤー等からなる繋留具9及び止め輪9aを介して結合する。これにより、前記各要素の配置は前記図4に示すような形態となる。
【0058】
次に、前記図5に示すように、前記曳航船22に予め設置している巻上機23により前記第1の浮体6A側の支持用長尺体8を第1の浮体6Aとともに任意量引き上げた後、図6に示すように前記第1の浮体6Aを支持用長尺体8の水面位置の端部に付け直し、水面に浮かべる。
【0059】
これにより、前記支持用長尺体8の引き上げ量に対応する深さまで前記発電機装置ユニット10及び第2の浮体6Bを沈降(例えば支持用長尺体8の引き上げ量が約10mであれば、発電機装置ユニット10及び第2の浮体6Bの沈降量は約5mとなる)させて、前記各発電機装置ユニット10の夫々の深さ位置を自在に任意に設定することができる。
【0060】
このような本実施例の水中設置型水流発電システム1によれば、例えば、水深30mから40mの水中に複数(例えば4台)の各発電機装置ユニット10を設置する場合においても、設置される多数の各発電機装置ユニット10の水面Sからの深さH3を異ならせ、かつ、各発電機装置ユニット10間の間隔W2を例えば30m〜40m等のように離隔したことによって、設置される多数の各発電機装置ユニット10相互の水流の影響による衝突或いは繋留するための支持用長尺体8同士の絡み合いのような故障等のトラブル要因をなくすことができ、自然エネルギーである海流又は水流を利用して効率よく、かつ、安定して発電出力を得ることができ、簡略安価な設置構成の基に低価格な発電電力の安定した供給を実現することが可能となる。
【0061】
また、本発明の水中設置型水流発電システム1によれば、曳航船22により曳航される運搬用船21に各構成要素を載せて所定の水域に搬送し、各構成要素を水中に投下するという簡略安価な方法によって、上述した効果を奏する水中設置型水流発電システム1を構築できる。
【0062】
なお、本実施例及び変形例における発電機装置ユニット10の水中での設置個数は、あくまで一例であり、これらの例に限定されるものではなく、所望する発電出力の規模に応じて各種の変形実施が可能であることはもちろんである。
【0063】
本実施例、変形例の水中設置型水流発電システム1について更に付言すると、以下のような諸点を挙げることができる。
【0064】
上述した水中設置型水流発電システム1と、自然エネルギーを利用する他方式と比較すると、例えば海水は空気の質量の約1000倍であることから、同じ設置面積の場合風力発電方式に比べて発電量が大きく、また、風力発電方式に比べると設置可能場所ははるかに広いというメリットもある。
【0065】
また、太陽光発電方式、風力発電方式等に比べると、常に海流エネルギーが得られので、24時間365日休みなく発電が可能という点で常に安定した発電出力を得ることができる発電システムを実現可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る水中設置型水流発電システムは、海流がある海域に設置する場合の他、常に安定した水流がある大河川の水域に設置して大きな発電量を得るようにしたり、また、中小河川に設置し狭範囲の需要家に電力供給を行うようにしたり等の用途に広範に応用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 水中設置型水流発電システム
2 錘体
3 水中長尺体
4 滑車
5 滑車体
6A 第1の浮体
6B 第2の浮体
7 輪体
8 支持用長尺体
9 繋留具
9a 止め輪
10 発電機装置ユニット
11 発電機装置本体
12 引っ張り具
13 浮力体
14 筐体
15 斜め板開口部
16 可変翼型回転羽根車
17 発電機
18 斜め板
19 中空状タンク
21 運搬用船
22 曳航船
23 巻上機
G 水底
S 水面
図1
図2
図3
図4
図5
図6