【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例に係る水中設置型水流発電システムについて各図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
本実施例に係る水中設置型水流発電システム1は、
図1に示すように、海又は河川の水流がある水域の水底Gに間隔を隔てて設置した複数(例えば2個の例えば5t)の重量を有する錘体2と、両端を前記各錘体2に各々連結し前記各錘体2の上方の水中に配置する配置位置基準用の例えばロープ、ワイヤー等からなる水中長尺体3と、一方は水面Sに浮かせ他方は水面又は水中に位置させて相互に連動するようにした第1、第2の浮体6A、6Bと、水中に配置し後述する支持用長尺体8に連結されて定位置に支持される二個一組の滑車4を並列配置に備える滑車体5と、前記第1、第2の浮体6A、6Bのうちの第1の浮体6Aに一端を連結し、他端を前記二個の滑車4のうちの一方の滑車4に掛け回し、次に第2の浮体6Bの下部に設けた輪体7に折り返し状態で掛け回し、更にその他端側を延長して前記滑車体5を固定状態に連結した後、前記水中長尺体3に連結した支持用長尺体8と、当該支持用長尺体8の動き(上昇動・下降動)を阻害しないような状態で前記第2の浮体6Bの輪体7或いは当該第2の浮体6B自体に、ロープ或いはワイヤー等からなる繋留具9及び止め輪9aを介して結合した後述する水中設置型の発電機装置ユニット10と、を有し、これらを例えば4組構成として、各発電機装置ユニット10の水面Sからの深さ位置を自在に設定できる態様で列設配置している。
【0020】
図1は本発明の実施例に係る水中設置型水流発電システム1の全体構成を示す概略図であり、具備する複数の各発電機装置ユニット10の水中における高さを夫々異にする状態例の概略図である。
【0021】
図2は本発明の実施例に係る水中設置型水流発電システム1の全体構成を示す概略図であり、具備する複数の各発電機装置ユニット10の水中における高さを夫々同じにする状態例の概略図である。
【0022】
なお、水中設置型水流発電システム1においては、各発電機装置ユニット10の水面Sからの深さ位置を事前に各種態様に自在に設定できる。
【0023】
前記錘体2、水中長尺体3、滑車体5、第1、第2の浮体6A、6B、支持用長尺体8をもって発電機装置ユニット10用の支持構造体を構成するものである。
【0024】
ここで、本実施例に係る水中設置型水流発電システム1における各部の設置寸法について例示して概説する。
【0025】
例えば、前記水中長尺体3の水平部分の水面Sからの深さH1は数十m(例えば70m)、前記2個の錘体2を設置する水底Gと前記水中長尺体3の水平部分との寸法H2は例えば数十m〜数千m、前記発電機装置ユニット10の水面Sからの深さH3は例えば20m〜35m、前記滑車体5と支持用長尺体8との連結部分と、前記水中長尺体3の水平部分との寸法H4はH1の1/3程度、前記2個の錘体2の間隔W1は例えば130m〜180m、前記各支持用長尺体8と前記水中長尺体3の水平部分との連結部分の間隔W2は例えば30m〜40m等の例を挙げることができる。
【0026】
次に、前記水中設置型の発電機装置ユニット10について
図3を参照して説明する。
【0027】
前記水中設置型の発電機装置ユニット10は、前記支持用長尺体8の動き(上昇動・下降動)を阻害しないような状態で前記第2の浮体6Bの輪体7或いは当該第2の浮体6B自体に、ロープ又はワイヤー等の繋留具9及び止め輪9aを介して連結、繋留される水中浮上型の発電機装置本体11と、ロープ又はワイヤー等の引っ張り具12により前記発電機装置本体11に連結される浮力体13と、を有している。
【0028】
前記繋留具9、引っ張り具12は、各々例えば100t程度の引っ張り強度に耐え得る仕様のものを使用する。
【0029】
前記発電機装置本体11は、
図3に示すように、直方体筒形状の筐体14を具備している。
【0030】
この筐体14に対して、その前方部(水流に対面する側)に設けた水流が流入する並列配置の一対の斜め板間口部15と、この斜め板間口部15の後流側に設けた水流により回転する回転ドラム式の一対の可変翼型回転羽根車16と、前記発電機装置本体11の後部側に取り付けられ前記一対の可変翼型回転羽根車16の回転力を利用して発電出力を得る一対の発電機17とを水流の流入方向と直交する方向に2列の並列構造で配置し、一対の可変翼型回転羽根車16の後部側から後方に水流を排流するように構成している。
【0031】
前記斜め板間口部15は、前記筐体14と、発電機装置本体11の前方部から前記可変翼型回転羽根車16側に至るほど下降する傾斜配置とした斜め板18とにより形成している。
【0032】
更に、前記可変翼型回転羽根車16内には、水中における発電機装置本体11の全体重量のうち中間部より後部の重量と同等の浮力を生む中空状タンク19を内蔵している。
【0033】
すなわち、本実施例に係る水中設置型水流発電システム1における発電機装置本体11は、前記斜め板間口部15を2個、中空状タンク19を含む可変翼型回転羽根車16を2個、発電機17を2個備えた例えば2連構造としている。
【0034】
次に、前記発電機装置本体11と浮力体13との引っ張り具12による連結構造について説明する。
【0035】
この連結構造は、以下のように構成している。
【0036】
本実施例においては、前記浮力体13と発電機装置本体11とを、前記引っ張り具12により前記浮力体13による張力の作用が発電機装置本体11の前方部を形成する斜め板開口部15の先端部から発電機装置本体11のほぼ中間部(海流の流れ方向のほぼ中間位置)より前方部の範囲にのみかかるように連結している。
【0037】
具体的には、前記浮力体13の前方部(海流に対面する側)の下部両隅部と、発電機装置本体11の斜め板間口部15の上部両隅部とを2本の引っ張り具12により連結し、前記浮力体13の後方部の下部両隅部と、発電機装置本体11の後部側両側部とを2本の引っ張り具12により連結する例を挙げることができる。
【0038】
更に詳述すると、前記浮力体13と発電機装置本体11とは、浮力体13の前方部(水流に対面する側)の下部両隅部と、発電機装置本体11の斜め板間口部12の上部両隅部とを2本の引っ張り具12により連結し、前記浮力体13の後方部の下部両隅部と、発電機装置本体11のほぼ中央部、或いは当該中央部より前方部(海流に対面する側)の範囲位置の両側部とを他の2本の引っ張り具12により連結する構造としている。
【0039】
これにより、前記中空状タンク19による前記発電機装置本体11の中間部より後部側の浮力バランスと、前記浮力体13による引っ張り具12を介しての発電機装置本体11の前方部への張力付与との相互作用で、前記発電機装置本体11の斜め板開口部15が常に海流の方向に対面する一定方向に向くように位置制御される構成としている。
【0040】
前記可変翼型回転羽根車16の具体的構成は省略するが、その基本的構成は、本願の出願人が所有する特許第5389082号により開示した水車羽根型発電装置における可変翼型回転羽根車の構成を採用するものである。
【0041】
次に、上述した本実施例に係る水中設置型水流発電システム1の構築について説明する。
【0042】
まず、水中において
図1或いは
図2等の状態になるように、各発電機装置ユニット10の水面Sからの深さ位置を事前に予め自在に設定されてセット状態になっている各発電機装置ユニット10、すなわち、水中において
図1或いは
図2の状態になるように固定されることが必要な各部分を固定し
(すなわち、前記相互に連動するようにした第1の浮体6A、第2の浮体6Bのうちの水面に浮かせて位置させる第1の浮体6Aを、前記支持用長尺体8に固定状態に取り付け)つつ、所要数の錐体2、所要長さの水中長尺体3、滑車体5、第1の浮体6A、第2の浮体6B、支持用長尺体8、前記繋留具9、引っ張り具12及び浮力体13を含む各発電機装置ユニット10を、後記
図5に示すような曳航船22により曳航される運搬用船21に載せて、海又は河川の水流がある構築対象領域としての水域に搬送する。
【0043】
なお、上述したセット状態になっている各発電機装置ユニット10は、曳航船22を必要とすることなく、運搬用船21に直接載せて構築対象領域としての水域に搬送するようにしても良いことは勿論である。
【0044】
本発明に係る水中設置型水流発電システム1においては、各発電機装置ユニット10の水面Sからの深さ位置を事前に各種態様に予め自在に設定しておくことがきることは前述した通りである。
【0045】
そして、構築対象領域において、曳航船22からいずれか一方の錐体2を先に水中に投下した後、各発電機装置ユニット10の水面Sからの深さ位置を事前に予め自在に設定されてセット状態になっている各発電機装置ユニット10を、順次水中に投下して行き、各発電機装置ユニット10を
図1或いは
図2等の状態に沈降させるだけで良い。なお、通常の場合、他方の錐体2は、最後に水中に投下される。
【0046】
このような水中設置型水流発電システムによれば、構築対象領域における水域の水底Gから水面にわたって発電機装置ユニット10用の支持構造体を簡易、迅速に構築することができるとともに、設置される多数の各発電機装置ユニット相互の水流の影響による衝突、或いは繋留するための支持用長尺体同士の絡み合いのような故障等のトラブル要因をなくすことができ、自然エネルギーである海流又は水流を利用して効率よく、かつ、安定して発電出力を得ることができ、簡略安価な設置構成の基に低価格な発電電力の安定した供給を実現することが可能であり、更に、支持用長尺体を引き上げることにより設置される多数の各発電機装置ユニットの水面からの深さを異ならせたり或いは同一としたり、複数のうちの特定の発電機装置ユニットを浅くしたり深くしたり等々の事前調整を簡単にすることもできる。
【0047】
次に、
図1、
図2とは異なる変形例について
図4乃至
図6を参照して説明する。
【0048】
図4乃至
図6は、一台の発電機装置ユニット10を前記水域の所定の深さ位置に配置する工程を夫々示すものである。
【0049】
図4は、各発電機装置ユニット10が水中に投下された場合、同図の状態になるように、予めセット状態にした各発電機装置ユニット10が、構築対象領域において順次水中に投下された初期状態を示す概略図である。
【0050】
この場合、
図1、
図2の実施例と異なる点は、
図5に示すように、曳航船22に予め設置している巻上機23により前記第1の浮体6A側の支持用長尺体8を第1の浮体6Aとともに任意量引き上げることができるように各発電機装置ユニット10が予めセット状態にされている点である。なお、巻上機23は、運搬用船21、曳航船22のいずれに設置しても良い。
【0051】
図5は、
図4の状態における各発電機装置ユニット10の水中の深さ位置を調整するために支持用長尺体8の一端を引き上げて発電機装置ユニット10を水中に沈降させる工程を示す概略説明図である。
【0052】
これによって、各発電機装置ユニット10の水中の深さ位置をいつでも自在に調整でき、また、支持用長尺体8の一端から巻き戻すことにより発電機装置ユニット10の設置後のメンテナンス等を簡易に行うことができる。
【0053】
図6は、
図5の状態における各発電機装置ユニットの水深位置の調整が完了し水中設置型水流発電システム1の施工完了状態を示す概略説明図である。
【0054】
なお、本発明に係る水中設置型水流発電システム1の施工は、構築対象領域の現場において、次のような手順、工程によっても設置可能である。
【0055】
すなわち、まず、前記水中長尺体3の両端を各々連結した状態で2個の錘体2、2を水中に投下し海底に設置して前記各錘体2、2の上方の水中に配置位置基準用の水中長尺体3の途中部分を配置し、次に、二個一組の滑車4を備える滑車体5を前記支持用長尺体8に連結して定位置に配置した後、前記滑車体5の上方の水面に第1の浮体6A、第2の浮体6Bを並べて浮かべる。
【0056】
そして、前記支持用長尺体8の一端を前記第1の浮体6Aに連結し、前記滑車体5の一方の滑車4に掛け回し、更に、第2の浮体6Bの下部に設けた輪体7に折り返し状態で掛け回す。
【0057】
更に、前記支持用長尺体8の他端側を前記水中長尺体3に連結するとともに、前記発電機装置ユニット10を、前記支持用長尺体8の動き(上昇動・下降動)を阻害しないような状態で前記第2の浮体6Bの輪体7或いは当該第2の浮体6B自体に、ロープ或いはワイヤー等からなる繋留具9及び止め輪9aを介して結合する。これにより、前記各要素の配置は前記
図4に示すような形態となる。
【0058】
次に、前記
図5に示すように、前記曳航船22に予め設置している巻上機23により前記第1の浮体6A側の支持用長尺体8を第1の浮体6Aとともに任意量引き上げた後、
図6に示すように前記第1の浮体6Aを支持用長尺体8の水面位置の端部に付け直し、水面に浮かべる。
【0059】
これにより、前記支持用長尺体8の引き上げ量に対応する深さまで前記発電機装置ユニット10及び第2の浮体6Bを沈降(例えば支持用長尺体8の引き上げ量が約10mであれば、発電機装置ユニット10及び第2の浮体6Bの沈降量は約5mとなる)させて、前記各発電機装置ユニット10の夫々の深さ位置を自在に任意に設定することができる。
【0060】
このような本実施例の水中設置型水流発電システム1によれば、例えば、水深30mから40mの水中に複数(例えば4台)の各発電機装置ユニット10を設置する場合においても、設置される多数の各発電機装置ユニット10の水面Sからの深さH3を異ならせ、かつ、各発電機装置ユニット10間の間隔W2を例えば30m〜40m等のように離隔したことによって、設置される多数の各発電機装置ユニット10相互の水流の影響による衝突或いは繋留するための支持用長尺体8同士の絡み合いのような故障等のトラブル要因をなくすことができ、自然エネルギーである海流又は水流を利用して効率よく、かつ、安定して発電出力を得ることができ、簡略安価な設置構成の基に低価格な発電電力の安定した供給を実現することが可能となる。
【0061】
また、本発明の水中設置型水流発電システム1によれば、曳航船22により曳航される運搬用船21に各構成要素を載せて所定の水域に搬送し、各構成要素を水中に投下するという簡略安価な方法によって、上述した効果を奏する水中設置型水流発電システム1を構築できる。
【0062】
なお、本実施例及び変形例における発電機装置ユニット10の水中での設置個数は、あくまで一例であり、これらの例に限定されるものではなく、所望する発電出力の規模に応じて各種の変形実施が可能であることはもちろんである。
【0063】
本実施例、変形例の水中設置型水流発電システム1について更に付言すると、以下のような諸点を挙げることができる。
【0064】
上述した水中設置型水流発電システム1と、自然エネルギーを利用する他方式と比較すると、例えば海水は空気の質量の約1000倍であることから、同じ設置面積の場合風力発電方式に比べて発電量が大きく、また、風力発電方式に比べると設置可能場所ははるかに広いというメリットもある。
【0065】
また、太陽光発電方式、風力発電方式等に比べると、常に海流エネルギーが得られので、24時間365日休みなく発電が可能という点で常に安定した発電出力を得ることができる発電システムを実現可能である。