(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る電子機器10及びHDDユニット12の構成について、
図1乃至
図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態にかかる電子機器10の一部の構成を示す斜視図であり、
図2はHDDユニット12の構成を示す斜視図である。
図3及び
図4はHDDユニット12の一部の第1状態及び第2状態を示す斜視図であり、
図5乃至
図7はHDDトレイ24の斜視図である。
図8及び
図9はHDDユニット12の保守作業の説明図である。なお、
図3において、HDDカバー25を省略して示している。
【0008】
なお、図中矢印X,Y,Zは互いに直交する3方向を示しており、Xは前後方向である第1方向、Yは幅方向である第2方向、Zは上下方向である第3方向にそれぞれ沿っている。なお、本実施形態において上下左右前後等の方向については、
図1のように筐体11の底板を下に向けて配した際の方向の一例を示しているが、各方向は、電子機器10の姿勢に応じて適宜変化するものである。
【0009】
図1及び
図2に示すように、電子機器10は、筐体11と、筐体11内に設けられたHDDユニット12と、を備える。
筐体11は、例えば、矩形状の天板11aと、天板11aの下方に対向配置される底板と、底板の前端縁から上方に立設される前板11cと、底板の両側縁から上方に立設される一対の側板11dと、底板の後端から上方に立設される後板と、を備える。筐体11は、これらの底板11b、天板11a、前板11c、後板、及び一対の側板11dによって囲まれる直方体状の収容空間を形成する。
【0010】
筐体11は、その収容空間内の前端部であって前板11cの裏側に、複数のHDDユニット12を備える。また、筐体11は、各HDDユニット12の背面部に立設されるバックボード14の他、光学ドライブユニット、冷却装置、基板ユニット等の、各種の電子部品を収容する。
【0011】
筐体11の前板11cには、後述するHDDホルダ23のスロット40aに連通するスロット開口11fが複数形成されている。
【0012】
各HDDユニット12は、例えば複数のHDD21と、HDD21をそれぞれ保持する複数のHDDケース22と、複数のHDDケース22を引き出し可能に収容するHDDホルダ23と、を備える。なお、本実施形態においてHDDユニット12は、HDDケース22を上下2段に配設する2段構造のHDDユニット12を例示する。
【0013】
HDD21は、例えば所定の厚さ寸法を有する矩形のブロック状に構成され、データを記憶する磁気ディスクを複数内蔵している。
【0014】
HDDケース22は、たとえば金属材料で構成され、HDD21が載置されるHDDトレイ24と、HDDカバー25と、を備える。
【0015】
HDDトレイ24は、矩形の底フレーム31と、一対の側フレーム32と、前フレーム33と、を備え、上面及び後方が開口している。HDDトレイ24は、HDDホルダ23に、第1方向に沿ってスライド可能に支持される。HDDトレイ24は、HDD21が載置可能に構成されている。
【0016】
底フレーム31は、例えば矩形のプレート状に構成されている。底フレーム31の上面にHDD21が載置される。底フレーム31の前方部位には円形状の孔部31aが形成されている。孔部31aは、操作の際に手指の挿入を可能とする開口である。
【0017】
図6に示すように、底フレーム31の前端部の所定位置であって、HDD21の載置部の前方に隣接する位置には、規制部として、上方に突出する規制突起31bが一体に設けられている。規制突起31bは、底フレーム31の一部がコ字状に切りかかれ、上方に屈曲されて成るリブ状の部材である。規制突起31bは、HDD21の前面に当接することでHDD21の前方への位置ずれを規制する。
【0018】
前フレーム33は、底フレーム31の前端縁に立設され、底フレーム31の前方を塞ぐ板状部材である。前フレーム33の一端には、前フレーム33を閉じた際に前フレーム33を筐体11に締結する締結部材34が設けられる。
【0019】
一対の側フレーム32は、底フレーム31の両側部から上方に延びる壁部材である。側フレーム32は、例えばその上端縁において内方に突出するレール突起32aを備えている。レール突起32aは所定位置に、後部が前部よりも上位置となる段差部32bを有している。すなわち、レール突起32aは段差部32bの一方と他方にそれぞれ設けられ、後部のレール突起32aが前部のレール突起32aよりも上方に位置している。段差部32bは、リンクレール43のうち前方の低位のレール突起43aに当接することにより、リンクレール43との相対位置関係を規制するストッパとなる。
【0020】
一対の側フレーム32はHDDホルダ23の一対のリンクレール43にそれぞれスライド可能に係合する。すなわち、側フレーム32が、リンクレール43の内面の第2のガイドスリット43cに配されることにより、HDDトレイ24の後端部が、HDDホルダ23の前端部にスライド可能に係合する。
【0021】
側フレーム32の内面には、ばねプレート35が設けられている。ばねプレート35は、例えば細長い板状であって、その両端部に、付勢部となる板ばね部35aを備える。板ばね部35aは、ばねプレート35の端部がHDDホルダ23のスロット40aの内方に向けて突出するように屈曲され、弾性変形可能に構成される。板ばね部35aは、側フレーム32の内面よりも内方に位置し、底フレーム31上に載置されるHDD21の側面に当接して弾性的に付勢することにより、GND接地と、HDD21の第2方向の位置決め機能を果たす。
【0022】
一対の側フレーム32の前端部には、HDDカバー25を回動可能に支持する軸体36を回動可能に支持する軸孔32cがそれぞれ形成されている。軸孔32cには軸体36が挿入される。軸体36は例えばEリングなどの支持部材32fによって側フレーム32の前端部に支持されている。
【0023】
図6及び
図7に示すように、一対の側フレーム32の後端部には、その一部が幅方向内方に屈曲形成されてなる、規制部としての規制壁32dが設けられている。規制壁32dはHDD21の載置部の後方に隣接する位置に配され、幅方向端部において、例えば挿入方向と直交する平面を形成し、HDD21の後端部に当接することでHDD21の後方への移動を規制する。
【0024】
HDDカバー25は、例えば金属製のプレート部材であって、前フレーム33の上端において側フレーム32間に、軸体36を中心に回動可能に設けられている。HDDカバー25は、HDD21上に配されHDD21を抑える閉状態と、HDDトレイ24上を開放する開状態と、で切替え可能に構成されている。HDDカバー25は、幅方向両端部において、回動軸からの距離が大きく構成された突出部25aを備え、中央部は回動軸からの距離が小さく構成されている。
【0025】
HDDカバー25は、突出部25aの先端部に押さえ片25bを有する。押さえ片25bは、HDDカバー25が閉状態に向かう回動方向における先方、すなわちHDD21に向けて、斜めに屈曲されて構成されている。押さえ片25bは閉状態において、挿入方向の奥方及び下方に向けて斜めに延び、HDD21の上面に押しつけられる。
【0026】
HDDカバー25は、突出部25aに、それぞれ第1の板ばね部25c及び第2の板ばね部25dを備える。
【0027】
第1の板ばね部25cは、HDDカバー25の突出部25aの所定の領域がU字状に切りかかれたばね片が上方に曲折加工されて構成される。第1の板ばね部25cは、例えばスライド方向後方が基端であり、スライド方向前方が自由端となる片持ちの構造であって、先端部が上方に位置するように斜めに傾斜している。第1の板ばね部25cの先端部には、上方に突出するばね凸部25eが形成されている。
【0028】
第2の板ばね部25dは、HDDカバー25の突出部25aの基端部分の所定の領域がU字状に切りかかれたばね片が下方に曲折加工されて構成される。第2の板ばね部25dは例えば幅方向中央側が基端であり、幅方向外方が自由端となる片持ちの構造であって、先端が下方に位置するように斜めに傾斜している。第2の板ばね部25dの先端部には、下方に突出されるばね凸部25eが形成されている。
【0029】
HDDカバー25は、
図2に示す閉位置と、
図1に示す開位置とで、回動可能に構成されている。HDDカバー25の厚さ方向において、第1の板ばね部25cのばね凸部25eの先端位置と第2の板ばね部25dのばね凸部25eの先端位置とによって規定される寸法は、HDD21の上面とスロット40aの天井面との間の高さ寸法よりも僅かに大きく構成されている。すなわち、閉状態においてスロット40aの天井面とHDD21の上面との間に配されたHDDカバー25によって、HDD21の上面が第2の板ばね部25dと押さえ片25bによって相対的に下方に押圧される寸法に構成されている。
【0030】
HDDホルダ23は、外郭を構成するハウジング41と、HDDトレイ24が載置される2つの支持フレーム42と、支持フレーム42にHDDトレイ24をスライド可能に支持するリンクレール43と、を備える。
【0031】
HDDホルダ23は、ハウジング41と2段の支持フレーム42とによって、上下及び両側部を囲む断面矩形状の筒状に構成されている。HDDホルダ23は、ハウジング41と2段の支持フレーム42とによって、その前後にそれぞれ開口するスロット40aを高さ方向2段備える。
【0032】
ハウジング41は、上壁部41aと一対の側壁部41bとを一体に備える。ハウジング41は、上壁部41aの側縁から側方に延出し、締結部材の締結孔を有する固定片41cを前後左右の4か所に備える。またハウジング41は側壁部の前端縁から側方に延びる固定フランジ片41dと、側壁部の下縁から側方に延出する一対の側フランジ片41eと、を一体に備える。ハウジング41は、その後端部に、底板が固定されるボード固定部41fを一体に備える。
【0033】
支持フレーム42は、たとえば金属材料で構成され、矩形の底プレート42aと、底プレートの両側縁から上方に立設される一対の側壁42bと、を一体に備える。
【0034】
一対の側壁42bは、所定の高さ寸法を有する板状に構成される。側壁42bはその上端縁において内方に突出するレール突起42cを一体に有している。このレール突起42cによって、側壁42bの内壁にリンクレール43が配される凹みであるガイドスリット42dが形成される。
【0035】
レール突起42cは所定位置に、後部が前部よりも上位置となる段差部42gを有している。すなわち、レール突起42cは段差部42gの一方と他方にそれぞれ設けられ、後部のレール突起42cが前部のレール突起42cよりも上方に位置している。
【0036】
一対の側壁42bの所定位置には、付勢部を構成する板ばね部42eが設けられている。板ばね部42eは、一対の側壁42bの所定の領域がU字状に切りかかれたばね片を有して構成される。板ばね部42eは、スライド方向前方が基端であり、スライド方向後方が自由端となる片持ちの構造であり、その先端部には、内方に突出されるばね凸部42fが形成されている。
【0037】
リンクレール43は、第1方向に延びるフレーム状部材であって、その上端及び下端においてスロット40a内方に突出するレール突起43aを備え、例えば断面視コ字状に構成されている。リンクレール43は、レール突起43aによって、その内壁に、第1方向沿って延びる凹みである、第2のガイドスリット43cを形成する。
【0038】
リンクレール43は後端側の領域が支持フレーム42の第1のガイドスリット42dに配されることにより、支持フレーム42にスライド可能に係合する。また、リンクレール43は、その内壁に構成される第2のガイドスリット43cにHDDトレイ24の側部が配されることによりHDDトレイ24の移動方向を第1方向に案内する。
【0039】
レール突起43aは所定位置に、後部が前部よりも上位置となる段差部43bを有している。すなわち、レール突起43aは段差部43bの一方と他方にそれぞれ設けられ、後部のレール突起43aが前部のレール突起43aよりも上方に位置している。段差部43bは、側壁42bのうち前部の低位のレール突起42cに当接することにより、リンクレール43と支持フレーム42との第1方向の相対位置関係を規制するストッパとなる。
【0040】
すなわち、HDDケース22、支持フレーム42、及びリンクレール43によって2段階に伸縮可能なガイドレール機構が構成される。HDDケース22はHDDホルダ23に所定の第1方向に沿って往復移動可能に支持される。
【0041】
リンクレール43の所定位置には、付勢部を構成する板ばね部43eが設けられている。板ばね部43eは、リンクレール43の所定の領域がU字状に切りかかれたばね片を有して構成される。板ばね部43eは、スライド方向前方が基端であり、スライド方向後方が自由端となる片持ちの構造であり、その先端部には、内方に突出されるばね凸部43fが形成されている。
【0042】
バックボード14は電子部品が搭載される基板であり、HDDユニット12の背面部に立設される。バックボード14は、例えばHDD21の背面に対向配置される主面に、HDD21と接続されるコネクタを搭載している。HDDホルダ23のスロット40aにHDD21が挿入され、収納されると、HDD21の後端の端子が、HDDホルダ23のスロット40aの後ろ側の開口に配され、バックボード14のコネクタに電気的及び機械的に接続される。HDD21の後端がバックボード14に接続されることで、HDD21の後方が支持される。
【0043】
HDDユニット12は、複数の付勢部として、板ばね部25c、25d、35a、42e、43eがGNDの接地点を兼ねる。すなわち、金属材料からなるHDDケースに設けられた導電性の板ばね部25c、25d、35aと、HDDホルダ23及びリンクレール43に設けられた導電性の板ばね部42e、43eによって、HDD21から、HDDケース22及びHDDホルダ23まで電気的に接続されることとなる。
【0044】
以上のように構成されたHDDユニット12の、HDD21の交換作業について、
図1乃至
図9を参照して説明する。
【0045】
図4に示す第1状態において、HDDユニット12は、HDDトレイ24がスロット40a内の奥方であって、スライド方向後方端部に、押し込まれて収納された状態である。このとき、HDDトレイ24上にはHDD21が載置され、HDDカバーは閉位置にある。この第1状態においては、カバーがHDD21上面に被せられ、スロット40aの天井部との間に配されている。このとき、上板バネが天井部を付勢し、下板ばねがHDD21の上面を下方に向けて付勢している。カバーの押さえ片25bはHDD21の上面に押しつけられている。このとき、支持フレーム42とレール部材とで構成されるガイドレール機構は収縮した状態となっている。
【0046】
この第1状態から、締結部材34を外し、HDDトレイ24を引き出し方向に引っ張ると、HDDケース22、支持フレーム42、及びリンクレール43によって構成されるガイドレール機構が伸び、HDDトレイ24が前板11cよりも前方に引き出される第2状態となる。この第2状態において、閉位置にあるHDDカバー25を開位置に向けて回動し開状態として、HDDトレイ24の上方を開放する。そしてHDD21を取り出し、別のHDD21をHDDトレイ24上にセットする。
【0047】
その後、HDDカバー25を閉位置にあるHDDカバー25を閉位置に向けて回動し、HDD上に被せる。次に、HDDトレイ24をスロット40aの奥方に押し込む。すると、再びガイドレール機構が縮み、HDDトレイ24がスロット40a内に収容され、第1の状態となり、締結部材34を締結し、交換作業が完了する。
【0048】
以上の様に構成されたHDDユニット12及び電子機器10は、以下の効果を奏する。すなわち、HDDトレイ24に、HDD21を上から弾性的に押さえるHDDカバー25を備える構成としたことにより、HDD21の上下方向の位置決め及び固定が可能となる。このため、ねじレス化が可能であり、保守作業が容易となるとともに、例えば計算室などの特殊な場所での作業において、ねじなどの細かい部品を管理する必要がなくなるため、作業性や安全性が高い。
【0049】
また、HDDトレイ24、リンクレール43、及び支持フレーム42の側壁部分に、片持ち構造の板ばね部25c、25d、35a、42e、43eを形成したことにより、HDDの幅方向の移動規制とGND接地を両立できる。また、幅方向及上下方向において片持ち構造の板ばね部25c、25d、35a、42e、43eで弾性的に付勢する構成としたため、防振性の高い構成を実現できる。
【0050】
HDDトレイ24はHDD21の前方移動を規制する規制突起31dと、後方の移動を規制する規制壁32dと、を備えることにより、HDD21の前後方向の移動が規制される。
【0051】
また、HDDトレイ24は2段階でスライド可能なガイドレール機構によってHDDホルダ23に支持される構成としたため、HDDトレイ24を筐体11の外方に完全に引き出すことが可能であり、保守作業性が高い。また、電子機器10からHDDトレイ24を大きく引き出しても自重で下に撓むことを抑制できる。
【0052】
なお、本発明は上記実施形に限られるものではない。
【0053】
例えば他の実施形態として
図10に示すHDDトレイ24Aは、付勢部として、ばねプレート35に代えてEMI(Electro Magnetic Interference)ガスケット46を備える。その他の構成は上記第1実施形態にかかるHDDトレイ24Aと同様である。EMIガスケット46は、例えばクッション性のあるスポンジ状の弾性部材と、この弾性部材の表面に巻き付けられる導電性布などの導電被覆材(被覆部)と、を備える。本実施形態においても、EMIガスケット46と、HDD21から、金属製のHDDトレイ24A、及び金属製のHDDホルダ23まで、各付勢部25c、25d、46によって電気的に接続されることで、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0054】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。