特許第6585007号(P6585007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6585007正極、ナトリウムイオン電気化学電池、可逆ナトリウム電池、ナトリウム注入物の作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585007
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】正極、ナトリウムイオン電気化学電池、可逆ナトリウム電池、ナトリウム注入物の作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20190919BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20190919BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20190919BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20190919BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20190919BHJP
   C01B 25/45 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   H01M4/58
   H01M4/62 Z
   H01M10/054
   H01M10/0568
   H01M10/0569
   C01B25/45 M
【請求項の数】31
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-115185(P2016-115185)
(22)【出願日】2016年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-17010(P2017-17010A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2017年11月1日
(31)【優先権主張番号】14/735,894
(32)【優先日】2015年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(73)【特許権者】
【識別番号】504412015
【氏名又は名称】ザ リサーチ ファウンデーション フォー ザ ステイト ユニバーシティ オブ ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ルイガン
(72)【発明者】
【氏名】水野 史教
(72)【発明者】
【氏名】リン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】エム・スタンレー・ウィッティンガム
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ルイボー
(72)【発明者】
【氏名】チェン・ヅゥーフア
【審査官】 磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0106222(US,A1)
【文献】 特表2004−533706(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/083313(WO,A1)
【文献】 特開昭57−118008(JP,A)
【文献】 特表2009−534288(JP,A)
【文献】 CHEN et al.,Electrochemical Behavior of Nanostructured ε-VOPO4 over Two Redox Plateaus,Journal of the Electrochemical Society,2013年 8月16日,160, 10,A1777-A1780
【文献】 SONG et al.,ε-VOPO4: Electrochemical Synthesis and Enhanced Cathode Behavior,Journal of the Electrochemical Society,2005年 3月 7日,152, 4,A721-A728
【文献】 AZMI et al.,Vanadyl phosphates of VOPO4 as a cathode of Li-ion rechargeable batteries,Journal of Power Sources,2003年,119-121,273-277
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/58
H01M 4/62
H01M 10/054
H01M 10/0568
H01M 10/0569
C01B 25/45
CAplus/REGISTRY(STN)
Science Direct
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ε−VOPOを活性成分として含むナトリウムイオン電気化学電池用の正極であって、
前記正極は、ナトリウムイオンの注入および放出に対応することができる、正極。
【請求項2】
前記正極は、NaFePO、NaVPOF、Na(PO、NaFePOF、Na(PO、分子式NaCoO(式中、xは、0.4〜1の数値である)を有する化合物、斜方晶Na0.44MnO、分子式NaFeOを有する層状ナトリウム酸化鉄、分子式NaCrOを有するナトリウム酸化クロム、層状NaNi0.5Mn0.5、NaV15ナノロッド、分子式NaTiSを有する層状硫化物、ペロブスカイト型遷移金属フッ化物、およびNa超イオン導電体(NASICON)化合物からなる群から選択された補助材料をさらに含む、請求項1に記載の正極。
【請求項3】
導電性添加物をさらに含む、請求項1に記載の正極。
【請求項4】
前記正極は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびポリイミドからなる群から選択されたバインダをさらに含む、請求項1に記載の正極。
【請求項5】
ε−VOPOを活性成分として含む正極であって、
前記正極は、ナトリウムイオンの注入および放出に対応することができ、
前記正極は、分子式Na(ε−VOPO)(式中、xは、0.1〜1.0の数値である)を有するナトリウム注入物をさらに含み、
Naは、ε−VOPOに可逆的に注入およびそこから放出することができる、極。
【請求項6】
前記正極は、NaFePO、NaVPOF、Na(PO、NaFePOF、Na(PO、分子式NaCoO(式中、xは、0.4〜1の数値である)を有する化合物、斜方晶Na0.44MnO、分子式NaFeOを有する層状ナトリウム酸化鉄、分子式NaCrOを有するナトリウム酸化クロム、層状NaNi0.5Mn0.5、NaV15ナノロッド、分子式NaTiSを有する層状硫化物、ペロブスカイト型遷移金属フッ化物およびNa超イオン導電体(NASICON)化合物からなる群から選択された補助材料をさらに含む、請求項5に記載の正極。
【請求項7】
導電性添加物をさらに含む、請求項5に記載の正極。
【請求項8】
前記正極は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびポリイミドからなる群から選択されたバインダをさらに含む、請求項5に記載の正極。
【請求項9】
正極を備えるナトリウムイオン電気化学電池であって、
前記正極は、ε−VOPOを活性成分として含む、ナトリウムイオン電気化学電池。
【請求項10】
前記正極は、NaFePO、NaVPOF、Na(PO、NaFePOF、Na(PO、分子式NaCoO(式中、xは、0.4〜1の数値である)を有する化合物、斜方晶Na0.44MnO、分子式NaFeOを有する層状ナトリウム酸化鉄、分子式NaCrOを有するナトリウム酸化クロム、層状NaNi0.5Mn0.5、NaV15ナノロッド、分子式NaTiSを有する層状硫化物、ペロブスカイト型遷移金属フッ化物およびNa超イオン導電体(NASICON)化合物からなる群から選択された補助材料をさらに含む、請求項9に記載のナトリウムイオン電気化学電池。
【請求項11】
前記正極は、導電性添加物をさらに含む、請求項9に記載のナトリウムイオン電気化学電池。
【請求項12】
前記正極は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびポリイミドからなる群から選択されたバインダをさらに含む、請求項9に記載のナトリウムイオン電気化学電池。
【請求項13】
前記正極は、分子式Na(ε−VOPO)(式中、xは、0.1〜1.0の数値である)を有するナトリウム注入物をさらに含み、
Naは、ε−VOPOに可逆的に注入およびそこから放出することができる、請求項9に記載のナトリウムイオン電気化学電池。
【請求項14】
前記正極は、NaFePO、NaVPOF、Na(PO、NaFePOF、Na(PO、分子式NaCoO(式中、xは、0.4〜1の数値である)を有する化合物、斜方晶Na0.44MnO、分子式NaFeOを有する層状ナトリウム酸化鉄、分子式NaCrOを有するナトリウム酸化クロム、層状NaNi0.5Mn0.5、NaV15ナノロッド、分子式NaTiSを有する層状硫化物、ペロブスカイト型遷移金属フッ化物およびNa超イオン導電体(NASICON)化合物からなる群から選択された補助材料をさらに含む、請求項13に記載のナトリウムイオン電気化学電池。
【請求項15】
前記正極は、導電性添加物をさらに含む、請求項13に記載のナトリウムイオン電気化学電池。
【請求項16】
前記正極は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびポリイミドからなる群から選択されたバインダをさらに含む、請求項13に記載のナトリウムイオン電気化学電池。
【請求項17】
可逆ナトリウム電池であって、
負極と、
正極と、
ナトリウムイオンを含有する電解質とを含み、
前記正極は、集電体と、分子式ε−VOPO(I)を有する活性材料とを含む、可逆ナトリウム電池。
【請求項18】
前記正極は、NaFePO、NaVPOF、Na(PO、NaFePOF、Na(PO、分子式NaCoO(式中、xは、0.4〜1の数値である)を有する化合物、斜方晶Na0.44MnO、分子式NaFeOを有する層状ナトリウム酸化鉄、分子式NaCrOを有するナトリウム酸化クロム、層状NaNi0.5Mn0.5、NaV15ナノロッド、分子式NaTiSを有する層状硫化物、ペロブスカイト型遷移金属フッ化物およびNa超イオン導電体(NASICON)化合物からなる群から選択された補助材料をさらに含む、請求項17に記載の可逆ナトリウム電池。
【請求項19】
前記正極は、導電性添加物をさらに含む、請求項17に記載の可逆ナトリウム電池。
【請求項20】
前記正極は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびポリイミドからなる群から選択されたバインダをさらに含む、請求項17に記載の可逆ナトリウム電池。
【請求項21】
前記正極は、分子式Na(ε−VOPO)(式中、xは、0.1〜1.0の数値である)を有するナトリウム注入物をさらに含み、
Naは、ε−VOPOに可逆的に注入およびそこから放出することができる、請求項17に記載の可逆ナトリウム電池。
【請求項22】
前記正極は、NaFePO、NaVPOF、Na(PO、NaFePOF、Na(PO、分子式NaCoO(式中、xは、0.4〜1の数値である)を有する化合物、斜方晶Na0.44MnO、分子式NaFeOを有する層状ナトリウム酸化鉄、分子式NaCrOを有するナトリウム酸化クロム、層状NaNi0.5Mn0.5、NaV15ナノロッド、分子式NaTiSを有する層状硫化物、ペロブスカイト型遷移金属フッ化物およびNa超イオン導電体(NASICON)化合物からなる群から選択された補助材料をさらに含む、請求項21に記載の可逆ナトリウム電池。
【請求項23】
前記正極は、導電性添加物をさらに含む、請求項21に記載の可逆ナトリウム電池。
【請求項24】
前記正極は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびポリイミドからなる群から選択されたバインダをさらに含む、請求項21に記載の可逆ナトリウム電池。
【請求項25】
前記電解質は、NaSO、NaNO、NaClO、NaPO、NaCO、NaOH、NaPF、NaN(CFSO、NaN(SOF)、およびNaCFSOからなる群から選択された塩を含む、請求項17に記載の可逆ナトリウム電池。
【請求項26】
前記電解質は、有機ニトリル溶媒および/または有機カーボネート溶媒を含む、請求項17に記載の可逆ナトリウム電池。
【請求項27】
前記電解質は、アセトニトリル、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、およびプロピレンカーボネートのうち少なくとも1つを含む、請求項26に記載の可逆ナトリウム電池。
【請求項28】
前記電解質は、NaSO、NaNO、NaClO、NaPO、NaCO、NaOH、NaPF、NaN(CFSO、NaN(SOF)、およびNaCFSOからなる群から選択された塩を含む、請求項21に記載の可逆ナトリウム電池。
【請求項29】
前記電解質は、カーボネート溶媒を含む、請求項21に記載の可逆ナトリウム電池。
【請求項30】
前記電解質は、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、およびプロピレンカーボネートのうち少なくとも1つを含む、請求項21に記載の可逆ナトリウム電池。
【請求項31】
分子式Na(ε−VOPO)(式中、xは、0.1〜1.0の数値である)を有するナトリウム注入物を作製する方法であって、
少なくとも1つのナトリウムイオンをε−VOPOに電気化学的に注入することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発
本発明は、契約番号DE−SC0001294における米国エネルギー省からの政府支援によって行われた。政府は、本発明において一定の権利を所有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明は、充電可能なナトリウムイオン電池に関する。特に、本発明は、ナトリウムイオン電池に使用される高エネルギー密度の正極活性材料に関する。
【0003】
エネルギーの変換および貯蔵は、輸送設備、商業設備および居住設備において、ますます重要になってきた。特に、大規模な再生可能エネルギーの実現および次世代の電気自動車によって、安価で効率的なエネルギー貯蔵システムの開発が必要とされる。
【0004】
リチウムイオン電池技術は、1991年に初めて商用上利用されてから、携帯電子機器の市場を支配している。リチウムイオン電池の作製および組成に関連する技術は、研究および改善されてきたため、現行のリチウムイオン電池は、最大200Wh/Lのエネルギー密度を有すると報告される程度に発達してきた。しかしながら、最先端のリチウムイオン電池技術であっても、将来の商用電気自動車(EV)の要求を満たすことができる動力源として使用できるとは考えられない。たとえば、現行の伝統的な内燃機関車に相当する伝動機構を有するEVが300マイル距離を続行する場合、約500Wh/Lのエネルギ密度を有するEV電池パックが必要となる。このエネルギ密度がリチウムイオン活性材料の理論限界に近いため、より高いエネルギ密度の電池システムを提供することができる技術が検討されている。また、大規模な設備におけるリチウムイオン電池の使用は、リチウムのますます高くなるコストおよび潜在的な供給リスクに直面する。従って、供給源が制限されない低コスト、高容量および安全な代替物は、この分野において特に重要である。
【0005】
ナトリウムは、リチウムと同様の層間浸入(intercalation)化学性質を有し、コストがリチウムよりも低く、含量もより豊富であるため、近年には多くの関心を集めている。ナトリウム系電池、すなわちナトリウムイオン電池の構想は、リチウムイオン電池と同様であり、正極と負極との間にイオン(Na)を可逆的に輸送することによって、エネルギーを運ぶことである。しかしながら、ナトリウムイオン電池の反応メカニズムは、リチウムイオン電池の反応メカニズムとは著しく異なる。実際に、ナトリウムイオン電池内の特定材料の実際の性能は、リチウムイオン電池内の同様の材料の性能とは異なる場合がある。
【0006】
比較すると、ナトリウムは、リチウムよりも低い還元電位(標準水素電極(SHE)に対する−3.04Vに比べて、−2.71Vである)および低い盛込容量(3829mAh/gに比べて、1165mAh/gである)を有する(Johnsonら、Adv. Funct. Mater. 2013, 23, 947-958)。ナトリウム陽イオンの半径(1.06Å)がリチウム陽イオンの半径(0.76Å)よりも約40%大きいため、使用可能な層間浸入ホスト材料は、より大きなサイズのナトリウム陽イオンに適合するチャネルおよび格子間位置を占有するだろう。
【0007】
たとえば、リチウムイオン電池の商用負極活性材料としてのグラファイトは、Na0.0625より高い濃度のNaの注入を対応することができず、且つ、その注入が電気化学的に不可逆的である。その結果、グラファイトは、ナトリウムイオン電池の負極として不適切である。したがって、リチウムとナトリウムとの間の根本的な違いは、リチウムイオン電池のために開発された知識および技術をナトリウムイオン電池にそのまま採用することが不可能であると考えられる。実用的なナトリウム電気化学電池システムに使用できる適切なナトリウムイオン電池の電極材料および電解質材料を開発する必要がある。今日までは、ナトリウムイオン電池開発の大きな進歩を阻む障害の1つは、有望な正極候補の同定および開発である。
【0008】
エネルギーの生成および貯蔵システムに対する継続的な研究において、本発明の発明者らは、ナトリウム電池に使用される正極活性材料として、広い範囲の材料の適合性を検討した。リン酸塩系材料は、高い安定性および低いコストを有するため、優れた正極候補として考えられた。しかしながら、殆どのリン酸塩正極は、低い導電性を示すため、一般的な充電/放電過程において、正極の全容量を達成できない。導電性の課題を克服するために、導電性材料の塗布技術および正極材料のナノサイズ化技術を利用した。
【0009】
高容量の正極を得るための別の手法は、複数の電子を転送可能、従って複数のナトリウムを転送可能な遷移金属を使用することである。周知のように、バナジウムは、2つの電子を転送することができ、すなわち、酸化状態を5から3に変えることができる。したがって、本発明の発明者らは、バナジウムリン酸塩(VOPO)が、バナジウムおよびバナジウムリン酸塩の長所を兼ねて備える材料であるため、理論上ナトリウム電池用正極活性材料として、高容量および優れた安定性を示す可能性があると考えている。
【0010】
バナジウムリン酸塩は、正極材料として開示されている。
たとえば、US6872492(Barkerら)は、一般式A(XYを有する正極材料に基づくナトリウムイオン電池を記載している。実施例4bは、VOPOxHOの合成を記載しており、実施例4cおよび4dは、NaVOPOの合成を記載している。NaVOPOからなる正極およびリチウム金属からなる負極を備える電池の充放電が記載されている。作製されたナトリウムイオン電池は、炭素複合負極、および正極活性材料としてのNaVOPOFを含む。
【0011】
US2013/0034780(Muldoonら)は、マグネシウム電池を記載し、適切な正極活性材料として、VOPOを列挙している。
【0012】
US2004/0048157(Neudeckerら)は、リチウム化バナジウム酸化膜を負極として、LiVOPOを1つの可能な正極材料として含むリチウム固体薄膜電池を記載している。
【0013】
US2013/0260228(Sanoら)は、分子式Li(M)(POを有する化合物を正極材料として含むリチウム二次電池を記載している。LiVOPOは、好ましい実施形態に記載されている。
【0014】
US2013/0115521(Doeら)は、薄い保護膜で被覆された集電体を有するマグネシウム二次電池を記載している。VOPOは、正極活性材料として列挙されている。
【0015】
US2012/0302697(Wangら)は、炭素材料または他の黒鉛材料を正極活性材料として含むマグネシウム電池を記載している。VOPOは、他の正極活性材料のリストに含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】US6872492
【特許文献2】US2013/0034780
【特許文献3】US2004/0048157
【特許文献4】US2013/0260228
【特許文献5】US2013/0115521
【特許文献6】US2012/0302697
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、これらの文献のいずれも、ε−VOPOを充電可能なナトリウム電池の高容量正極活性材料として開示または示唆していない。
【0018】
本発明の目的は、ナトリウム電池に使用される安全で効率的かつ高容量の正極活性材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の概要
上記の目的および他の目的は、本発明の実施形態によって達成される。本発明の第1実施形態は、ε−VOPOを活性成分として含む正極を備え、正極は、ナトリウムイオンの注入および放出に対応することができる。本実施形態の一局面において、ε−VOPOは、電気化学サイクルの際に、分子式Na(ε−VOPO)(式中、xは、0.1〜1.0の数値である)を有する材料の区域を形成することができる。
【0020】
別の実施形態において、本発明は、ε−VOPOを活性成分として含む正極を備えるナトリウムイオン電気化学電池を提供する。
【0021】
さらなる実施形態において、本発明は、負極と、正極と、ナトリウムイオンを含有する電解質とを含む可逆ナトリウム電池を提供する。この正極は、集電体と、分子式ε−VOPO(I)を有する活性材料とを含む。
【0022】
上記の記載は、一般的な説明として提供されており、以下の特許請求の範囲を限定するものではない。記載された実施形態およびさらなる利点は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明を参照することによって容易に理解されるであろう。
【0023】
添付の図面に関連して、以下の詳細な説明を参照することによって、本開示および付随する多くの利点をより完全にかつ容易に理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るナトリウムイオン電池を示す概略図である。
図2】ナトリウム化反応前および後のε−VOPOのXRDパターンを示す図である。
図3】実施例1で作製したε−VOPOを含む正極を備えるナトリウム電池におけるNaの注入および放出の最初の3つのサイクルを示す図である。
図4】サイクリング時にナトリウム電池の容量が10回のサイクルに亘って60mAh/gに維持されている様子を示す図である。
図5】ε−VOPO4の構造を示す図である。
図6】US6872492の記載に従って、実施例3で作製したε−VOPOを含む正極を備えるナトリウム電池におけるNaの注入および放出を示す図である。
図7】US6872492の記載に従って、実施例2で作製したε−VOPOを含む正極を備えるナトリウム電池におけるNaの注入および放出を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
特に明記しない限り、記載されたすべての範囲は、本明細書の全体において、すべての数値およびその部分範囲を含む。特に明記しない限り、不定冠詞「a」または「an」は、明細書の全体において、「1つ以上」の意味を有する。数値限界または数値範囲を言及する場合、数値限界または数値範囲は、その端点を含む。また、明記しない限り、数値限界または数値範囲は、その中のすべての数値および部分範囲を含む。
【0026】
本発明の発明者らは、エネルギーの生成と貯蔵システムに対し継続的な研究を行い、ナトリウム電池を含む各種電池に使用される正極活性材料として、広い範囲の材料の適合性を検討した。リン酸塩系材料は、高い安定性および低いコストを有するため、優れた正極候補として考えられる。しかしながら、殆どのリン酸塩正極は、低い導電性を示すため、一般的な充電/放電過程において、正極の全容量を達成できない。本発明の発明者らは、バナジウムが2つの電子を転送することができ、すなわち、酸化状態を5から3に変えることができることを認識した。したがって、本発明の発明者らは、バナジウムリン酸塩(VOPO)を目標の正極活性材料として研究した。実施例により示されたように、初期の研究ではバナジウムリン酸塩がマグネシウム電池の正極材料として好適ではないと示されたが、ナトリウム電池の正極活性材料としての有用性が発見された。
【0027】
これまでに、7つの異なるVOPO構造体または構造相は、報告されている。報告されたすべての構造体は、頂点を共有するPO四面体とVO八面体とを含む。バナジウムの酸素多面体は、不規則であるため、しばしば非常に短い頂端バナジル結合(V=O)および非常に遠い第六酸素原子(V・・・O)を有するVO四角錐であると考えられる。これらの7つの構造相は、次のように、具体的には、
αI:層状構造を有し、交互に逆平行のV=O結合が層の内側に指向する構造相、
αII:層状構造を有し、逆平行のV=O結合が層の外側に指向する構造相、
γ:αIとαIIとの間の中間にあり、平行のV=O結合の半分が層の内側に指向し、半分が層の外側に指向する構造相、
δ:逆平行のV=O結合の半分が層の内側に、半分が層の外側に指向し、バナジル鎖が単位セルの異なる方向を指向する構造相、
ω:バナジル鎖が正方晶セルの[1 0 0]方向および[0 1 0]方向に無秩序に指向する構造相、
β:すべてのバナジル鎖が平行および傾斜になり、ジグザグO=V・・・O=V鎖を形成する構造相、
ε:β構造相の歪曲形であり、β構造相と異なるO=V・・・O=V傾斜角を有する構造相として識別することができる。
【0028】
ε−VOPOの構造は、図5に示されている。驚くべきことに、本発明の発明者らは、ε−VOPOがナトリウムイオンの注入および放出に対応することができ、第1注入サイクルの後に、構造を著しく劣化しないことを発見した。実施例1に示すように、第1放電プロファイルは、次のサイクルの放電プロファイルとは非常に異なる。いずれかの理論に束縛されるものではなく、本発明の発明者らは、ε−VOPOが最初のNa注入のときに構造の再配列を行う可能性があると考えている。この不可逆的な構造変化が発生すると、大きな不可逆的な容量の変化を引き起こすことができる。初期の放電容量が約130mAh/gから約58mAh/gに減少したため、注入されたNaイオンの半分は、充電後、構造体の内部に閉込められている可能性がある。
【0029】
本発明の発明者らは、分子式Na(ε−VOPO)(式中、xは、0.1〜1.0の数値である)によって表すことができるナトリウムイオン注入物がε−VOPO内部に形成されていると確信している。この分子式を有する材料をε−VOPOマトリックス内部に閉込むことは、第1サイクルの後に図3に示された性能を説明することができる。電気化学充電の時に、上記分子式を有するナトリウム注入物は、ナトリウムイオンを形成し、ε−VOPO結晶構造体の内部に進入する。その結果、活性正極には、ε−VOPO区域およびNa(ε−VOPO)区域が形成される。
【0030】
一方、充電容量が実施例1に用いられたNa−TFSI電解質の比較的な低い電圧安定性によって制限され得るため、実施例1で観察された容量の少なくとも一部の低下は、充電臨界電圧により引起された可能性もある。他の電池システムと同様に、正極活性材料としてのε−VOPOによって提供される全容量を開発および達成するために、ε−VOPOと相性が良い高安定性電解質および適切な負極構造体の確認は、必要である。
【0031】
第1実施形態において、本発明は、ε−VOPOを活性成分として含む正極を提供する。この正極は、ナトリウムイオンの注入および放出に対応することができる。
【0032】
別の実施形態において、本発明は、正極を備えるナトリウムイオン電気化学電池を提供する。この正極は、ε−VOPOを活性成分として含む。
【0033】
さらなる実施形態において、本発明は、負極と、正極と、ナトリウムイオンを含有する電解質とを含む可逆ナトリウム電池を提供する。この正極は、集電体と、分子式ε−VOPO(I)を有する活性材料とを含む。
【0034】
任意の適切な負極構造体および組成物を本発明の可逆性ナトリウムイオン電池に使用することができる。負極構造体および組成物は、本発明の構成要素ではない。確認されたナトリウム電池の負極構造体を形成する負極材料の例は、以下の表1に示される。
【0035】
表1のエネルギー密度は、3.4Vの正極電圧を用いて計算される。
【0036】
【表1】
【0037】
*a Komaba et al., “Electrochemical Na Insertion and Solid Electrolyte Interphase for Hard-Carbon Electrodes and Application to Na-Ion Batteries,” Adv. Func. Mater. 21, 3859, 2011.
*b Zhu et al., “Tin Anode for Sodium-Ion Batteries Using Natural Wood Fiber as a Mechanical Buffer and Electrolyte Reservoir,” Nano Lett., 13, 3093, 2013.
*c Qian et al., “High capacity of Na-storage and superior cyclability of nanocomposite Sb/C anode for Na-ion batteries,” Chem. Commun. 48, 7070, 2012.
*d Senguttuvan et al., “Low-Potential Sodium Insertion in a NASICON-Type Structure through the Ti(III)/Ti(II) Redox Couple,” J. Am. Chem. Soc. 135, 3897, 2013; Sun et al., “Direct atomic-scale confirmation of three-phase storage mechanism in Li4Ti5O12Anodes for room temperature sodium-ion batteries,” Nature Communications, 4, 1870, 2013.
図1は、本発明の一実施形態に係るナトリウムイオン電池の模式図を示している。負極(1)と正極(2)とは、ナトリウム電解質によって隔離されている。
【0038】
本発明の発明者らは、研究室内に行われた研究によって、ホウ素ドープしたグラフェンからなるシートを充電可能なナトリウムイオン電池の優れた負極材料として確認した。この発明は、Lingらによって2013年11月26日に出願した米国出願第14/090143号に開示されている。
【0039】
上記材料のいずれかを含む負極には、他の導電性材料およびバインダを混入することができる。導電性材料の例としては、カーボンブラックおよび気相成長炭素繊維が挙げられる。バインダの例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アルギン酸ナトリウム、およびナトリウムカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0040】
正極は、ε−VOPOに加えて、ナトリウムイオンの注入および放出に適した任意の正極材料をさらに含んでもよい。適当な補助材料は、NaFePO、NaVPOF、Na(PO、NaFePOF、Na(POなとのリン酸塩系材料、分子式NaCoO(式中、xは、0.4〜1の数値である)を有する酸化物、分子式NaTiSを有する層状硫化物、NaFeFなどのペロブスカイト型遷移金属フッ化物、およびNa超イオン導電体(NASICON)化合物からなる群から選択された補助材料をさらに含んでもよい。
【0041】
正極活性材料は、当業者によって認識されたナトリウムイオン電池に適切な導電性添加物および適切なバインダと混合することができる。たとえば、適当なバインダは、PVDF、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびポリイミドを含むことができる。適切な導電性添加物は、たとえば、アセチレンブラックなどの炭素質材料を含むことができる。
【0042】
正極活性材料は、シート状、リボン状、粒子状または他の物理形状に形成されてもよい。正極活性材料を含む電極は、集電体によって支持されてもよい。集電体は、金属材料または他の導電性材料を含んでもよい。集電体は、カーボン、カーボン紙、カーボン布、金属メッシュまたは箔、もしくは貴金属メッシュまたは箔から形成されてもよい。
【0043】
適切な電解質は、NaSO、NaNO、NaClO、NaPO、NaCOおよびNaOHなどのNa系水性電解質、およびNaPF、NaClOなどのナトリウム塩を含む。適切な溶媒は、電池の電位窓内に安定で、電池の他の成分に対して不活性である任意の溶媒であってもよい。適切な溶媒の例としては、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートおよびプロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、およびアセトニトリルなどの有機ニトリルが挙げられる。また、電解質は、ゲルポリマ電解質などの非水性ポリマ電解質、ナトリウムβ−アルミナ固体電解質(BASE)セラミックおよびNASICON化合物などの固体セラミック電解質であってもよい。一実施形態において、サイクルを改善するために、電解質は、たとえば、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などの添加物を含んでもよい。
【0044】
電池は、正極と負極との間の電気隔離を維持するのに役立つセパレータを含んでもよい。セパレータは、電極間の物理接触および/または短絡の危険性を低減するように構成された繊維、粒子、ウェブ、多孔質シート、または他の材料を含むことができる。セパレータは、単一の要素であってもよく、粒子または繊維などの複数の不連続スペーサ要素を含んでもよい。いくつかの例において、電解質層は、電解液を注入したセパレータを含むことができる。いくつかのポリマ電解質の例において、セパレータを省略してもよい。
【0045】
以上の説明は、当業者による本発明の創作および実施を可能にするために提示され、特定の応用およびその要件に基づいて提供される。好適な実施形態に対するさまざまな修正は、当業者にとって明らかである。本明細書に定義された一般的な原理は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、他の実施形態および応用に適用することができる。したがって、本発明は、記載の実施形態に限定されるものではなく、本明細書に開示された原理および特徴と一致するような最も広い範囲を与えられるものである。したがって、本発明の範囲内の特定の実施形態は、広義上、本発明のすべての利点を表示されない場合がある。
【0046】
実施例
【実施例1】
【0047】
ε−VOPO
この材料の合成は、あらゆる文献に記載されている(J. Electrochem. Soc. 160 (2013) A1777)。簡潔に言うと、ε−VOPOは、水熱法によって180℃で作製された前駆体HVOPOから合成された。酸素の下で、この前駆体を500℃に加熱することによって、ε−VOPOを得た。
【0048】
ε−VOPO電極は、70重量%の作製した材料、20重量%のケッチェンブラック、および10重量%のPTFEから作られた。混合物に5mlのエタノールを加えてから、乳鉢および乳棒を用いて研磨した。30分間研磨後、混合物は、柔軟になり、プレスローラを用いて厚さ120μmのシートにプレスした。このε−VOPOのPTFEシートを真空下に120℃で一晩乾燥した。このシートから、直径13mmのε−VOPO複合ペレット(面積1.33cm)を切り出した。各電極の装填量は、約10.6mgであった。
【0049】
ステンレス鋼箔上にプレスされたナトリウム金属は、対電極および参照電極として使用され、アセトニトリルに溶解した1MのNaTFSIは、電解質として使用された。これらの試料の電気化学特性は、2032型コイン電池において、Celgar 2400セパレータ(Hoechst Celanese社)を用いて評価された。
【0050】
Na電池のサイクリングは、Bio-Logic社からのポテンシオスタット/ガルバノスタットVMP電池試験システムを用いて、25μAの定電流および1.7〜4.0Vの電圧範囲で行った。試験中、すべての電池を定温(25±0.5℃)でオーブンに保持した。
【0051】
すべてのXRD特徴付けは、CuのKα1.54Å放射線を用いて、リガク社のSmartlab回折計で行った。XRDスキャン中に、電極ペレットは、Be窓を備え、空気を含まない試料保持器に保護された。
【0052】
図3は、得られたナトリウム電池におけるε−VOPOのNaの注入および放出の最初の3つのサイクルを示している。第1放電プロファイルは、次のサイクルの放電プロファイルとは非常に異なった。それは、Na注入のときに構造の再配列に起因するものであると解釈できる。この構造変化は、大きな不可逆的な容量の変化を引起した。初期の放電容量が約130mAh/gから約58mAh/gに減少したため、注入されたNaイオンの半分は、充電後、構造体の内部に閉込められている可能性がある。一方、充電容量がNa−TFSI電解質の比較的な低い電圧安定性によって制限され得るため、観察された容量の低下は、充電臨界電圧により引起された可能性もある。高電圧安定性の電解質を使用して、可逆容量を高めることができる。第2回の放電から、正極は、同様の放電プロファイルおよび充電プロファイルを示した。サイクリング時に容量の定常維持は、観察された。図4に示すように、容量は、10回のサイクルに亘って60mAh/gに安定している。
【実施例2】
【0053】
α−VOPO(米国特許第6872492号の実施例4(b)に従ったもの)
Barkerらの実施例4(b)に従って、α−VOPOを作製した。得られた粉末を用いて、実施例1に説明した電極の製造および電気化学評価のときのε−VOPOを置換した。得られた充放電曲線は、図7に示される。特に図3に比べて、α−VOPO4は、ε−VOPOに示された充放電サイクルを示すことができないことを確認することができる。また、図6に示すように、電極の容量は、図3および4に示された本発明に係る正極の容量よりも著しく低かった。
【実施例3】
【0054】
NaVOPO(米国特許第6872492号の実施例4(c)に従ったもの)
Barkerらの実施例4(c)に従って、NaVOPOを作製した。得られた粉末を用いて、実施例1に説明した電極の製造および電気化学評価のときのε−VOPOを置換した。得られた充放電曲線は、図6に示される。特に図3に比べて、NaVOPOは、ε−VOPOに示された充放電サイクルを示すことができないことを認識することができる。また、電極の容量は、35mAh/g未満であり、本発明に係る正極の約55mAh/gの容量よりもはるかに低かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7