特許第6585104号(P6585104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585104
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】誘導電力伝達システム
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20190919BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20190919BHJP
   H02J 50/90 20160101ALI20190919BHJP
   B60L 53/12 20190101ALN20190919BHJP
   B60L 5/00 20060101ALN20190919BHJP
   B60M 7/00 20060101ALN20190919BHJP
【FI】
   H01F38/14
   H02J50/12
   H02J50/90
   !B60L53/12
   !B60L5/00 B
   !B60M7/00 X
【請求項の数】32
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-10860(P2017-10860)
(22)【出願日】2017年1月25日
(62)【分割の表示】特願2015-208300(P2015-208300)の分割
【原出願日】2010年8月6日
(65)【公開番号】特開2017-120916(P2017-120916A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2017年1月25日
(31)【優先権主張番号】16/273,701
(32)【優先日】2009年8月7日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504448092
【氏名又は名称】オークランド ユニサービシズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AUCKLAND UNISERVICES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 正威
(72)【発明者】
【氏名】コビック,グラント アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】キッシン,マイケル,ルガレ
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−508331(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/037821(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0189910(US,A1)
【文献】 特開2009−164293(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/045847(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H01F 38/18
H02J 50/00−50/90
B60L 1/00−13/00
B60L 15/00−15/42
B60L 53/12
B60M 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束を発生しまたは受けるための磁束パッドであって、
磁気透過性のコアと、前記コアに磁気的に関連づけられた平面状の2つの部分的にオーバーラップしているコイルとを備え、それにより前記2つのコイルの間には相互の磁気的結合が実質的になくなるようにされており、
前記磁気透過性のコアは、所定長さの複数の磁気透過性素材を含み、これらの磁気透過性素材は互いに平行しているが離隔して前記コイルの全体にわたって延びる、磁束パッド。
【請求項2】
実質的に100mmを越えるエアギャップの間で電力を伝達するようにされた、請求項1に記載の磁束パッド。
【請求項3】
実質的に100〜300mmのエアギャップの間で電力を伝達するようにされた、請求項1又は2に記載の磁束パッド。
【請求項4】
前記コイルはいずれも前記磁気透過性素材の一方の側の面に備えられ、さらに遮蔽手段が前記磁気透過性素材の他方の側の面に備えられている請求項1〜の何れか1項に記載の磁束パッド。
【請求項5】
前記遮蔽手段はアルミニウムでできた遮蔽プレートを備える請求項に記載の磁束パッド。
【請求項6】
誘電体であるカバーを前記コイルの前記磁気透過性素材とは反対の側に備えている請求項1〜の何れか1項に記載の磁束パッド。
【請求項7】
前記コイルが互いに位相が異なる電流を電源から受けるように構成されている、請求項1〜の何れか1項に記載の磁束パッド。
【請求項8】
前記の互いに位相が異なる電流により、時間的変化とともに空間的変化をともなう磁界を生成する、請求項記載の磁束パッド。
【請求項9】
前記の互いに位相が異なる電流により生成された磁界が時間的に変化する磁界を生成するとともに、空間的に交互に磁極の間を移動する請求項記載の磁束パッド。
【請求項10】
前記コイルが相対的に位相および/または強度が変化する電流を電源から受け取ることにより、所望の磁界のパターンが生成されるように構成されている、請求項1に記載の磁束パッド。
【請求項11】
前記相対的な位相および/または強度の変化がセンサーの出力に応答して生成される、請求項10に記載の磁束パッド。
【請求項12】
各コイルの寸法は前記磁気透過性素材よりも大きい、請求項1〜11の何れか1項に記載の磁束パッド。
【請求項13】
前記コイルはいずれも前記磁気透過性素材の上方にある、請求項1〜12の何れか1項に記載の磁束パッド。
【請求項14】
誘導電力伝達(IPT)システムのための電源装置であって、
前記電源装置は、請求項1乃至13の何れか1項に記載の磁束を生成する磁束パッドと、電源とを含み、
前記パッドは、磁気透過性のコアと、前記コアに磁気的に関連づけられた平面状の2つのオーバーラップしているコイルとを備え、それより前記2つのコイルの間には相互の磁気的結合が実質的になくなるようにされており、
前記電源は、一方のコイルを流れる電流と、該電流とは異なる位相を有する他方のコイルを流れる電流とを供給するように構成されている、前記電源装置。
【請求項15】
前記電源は、前記コイルを独立に駆動するように構成されている、請求項14に記載の電源装置。
【請求項16】
前記電源は、時間的に変化するとともに前記パッド上の空間的位置も変化する磁界を生成するように位相を調整するように構成された、請求項14又は15に記載の電源装置。
【請求項17】
前記電源は、さらに、一方のコイルを流れる電流の強度を、他方のコイルを流れる電流の強度に対して変化させるように動作する、請求項14乃至16の何れか1項に記載の電源装置。
【請求項18】
実質的に100mmを越えるエアギャップの間で電力を伝達するようにされた、請求項14乃至17の何れか1項に記載の電源装置。
【請求項19】
実質的に100〜300mmのエアギャップの間で電力を伝達するようにされた、請求項14乃至18の何れか1項に記載の電源装置。
【請求項20】
さらに検出調整手段を含み、前記検出調整手段は前記パッドの近傍のどこで磁界を必要とするかまたは必要としないかを検出し、センシング手段の出力に対する応答として前記コイルを流れる電流の相対的な位相および/または振幅を調整する、請求項14乃至19の何れか1項に記載の電源装置。
【請求項21】
前記電源は、各コイルにインバータを含む請求項14乃至20の何れか1項に記載の電源装置。
【請求項22】
前記電源は、2つのインバータを備え、これらのインバータは、一方のコイルに流れる電流と90度位相が異なる他方のコイルに流れる電流を生成するように互いに同期される、請求項14乃至21の何れか1項に記載の電源装置。
【請求項23】
前記磁束パッドは、スライドして時間変化する磁界を生成する、請求項14乃至22の何れか1項に記載の電源装置。
【請求項24】
前記電源は、互いに180度位相が異なるように前記コイルを動作させるように構成された、請求項14乃至20の何れか1項に記載の電源装置。
【請求項25】
前記電源は前記コイルを両方とも励磁させるための一つのインバータを含む請求項24に記載の電源装置。
【請求項26】
互いにオーバーラップしているが、最小の相互の磁気的結合しか有しない平面状の2つのコイルを用意すること、
互いに平行しているが離隔して前記コイルの全体にわたって延びる所定長さの複数の磁気透過性素材を含んでなるコアを用意すること、
および、
一方のコイルを流れる電流と異なる位相および/または強度を有する他方のコイルを流れる電流を供給すること、
を含む、ワイヤレス電力伝送を容易にするための磁束の生成方法。
【請求項27】
さらに、前記コイルを独立に駆動することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
さらに、一方のコイルを流れる電流の強度を、他方のコイルを流れる電流の強度に対して変化させることを含む、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
実質的に100mmを越えるエアギャップの間で電力を伝達することを含む、請求項26乃至28の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
実質的に100〜300mmのエアギャップの間で電力を伝達することを含む、請求項26乃至29の何れか1項に記載の方法。
【請求項31】
時間的に変化するとともに前記コイル上の空間的位置も変化する磁界を生成するように、前記位相および/または強度を調整することを含む、請求項26乃至30の何れか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記コイルの近傍のどこで磁界を必要とするかまたは必要としないかを検出すること、および、センシング手段の出力に対する応答として前記コイルを流れる電流の相対的な位相および/または振幅を調整することを含む、請求項26乃至31の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(誘導電力伝達装置)
本発明は、磁束を発生しまたは受ける装置に関するものである。本発明は、これに限らないが、特に、誘導電力伝達(IPT)を用いて電力伝達を行うパッドなどのように、外形が低く実質的に平面状であるデバイスに利用される。
【背景技術】
【0002】
IPTシステムと、誘導電力伝達のための1次側または2次側の巻き線からなる一つ以上の巻き線を含むパッドの使用は、国際公開公報WO2008/14033で紹介されている。その内容は、ここに参照によって組み込まれる。
【0003】
一つの利用形態としてのIPT電力伝達パッドは、電気自動車等電気車両への充電である。この利用形態はこのセクションにおいて本発明のひとつの利用形態の背景を提供するために論じられる。しかしながら、電気車両への充電はひとつの例であり、本発明は、誘導電力伝達全体への利用形態に及ぶものである。電気車両への充電は、たとえば、車両が静止状態であっても道路を移動中であっても行うことができる。IPT電力伝達パッドは、電力の「ピックアップ」(すなわち、IPTシステムの2次側の巻き線)として使われるとともに、電力が供給される「充電パッド」(すなわち、1次側の巻き線)として、たとえばガレージの床や道路などに固定されて使われることもある。
【0004】
IPT道路システムの目的は、ワイヤレスで車両との物理的な接触をせずに静止または移動している車両に電力を伝達するものである。このシステムの送電部は、コイル(たとえば、前述のようなパッドなど)に電力を供給する電源やたくさんの同様のコイルを有するトラックから構成されており、このようなシステムは、通常10kHzから150kHz程度の適切な周波数で動作するように同調されている。レシーバーが車両の下面側に置かれ、車両が上方または近傍(電力を結合して送れるよう十分近く)に来た時に電力を受けられるよう1次側のトランスミッターに結合される。ピックアップレシーバーもまた、通常、コンバータに接続されたコイル(上記のパッドなど)と車載された適切な電力のレギュレータから構成される。便宜上、電力が誘導的に受けられる道路の箇所をここでは、「トラック」と呼ぶ。
【0005】
トラックは道路の走行帯(レーン)中央に沿って置かれた複数のパッドにより形成される。このことにより、車両がトラックの直近を道路に沿って移動する際に、電力を車両へ実質的に連続して供給することができる。
【0006】
近年、このようなシステムは、持続的にワイヤレスで、電力を個人の輸送機関に提供することができる可能性があるため、注目を集めている。このようなシステムが有用であるためには、合理的な大きさのエアギャップ(たとえば、100−300mm)を越えて十分な電力を伝達できるだけではなく、トラックとピックアップの距離が変動しても許容し、車両をトラックに誘導する誘導装置に頼らないようにしなくてはならない。道路システムにおいては、移動中の車両に対してこのような距離変動はラテラル方向(垂直方向及び移動方向の両者に対し直角となる方向)には十分起こりうることである。充電中の静止状態の車両に対しては、適切な長手方向の変位に対し受容できるレベルの電力を伝達する能力は、駐車を簡単にできるようにするため、特別な関心事である。ピックアップパッドの電力伝達のプロフィール(分布図)は滑らかなプロフィールであることが理想である。ラテラル方向の距離に対しできる限り広い範囲で本質的に一定であって(かつ不足なく)、両端部では滑らかな低下があることが好ましい。このような電力伝達プロフィールであれば、道路システムの電子制御レギュレータ(1次側および2次側)への要求を緩和し、動作時に1次側とレシーバーパッドとの結合に無視しえない変動が生じるシステムに対して、全体的に同等の結合をするように動作性能を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開公報WO2008/14033
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、誘導的に電力を伝達するために磁束を発生しおよび/または受ける装置を提供することであり、また、少なくとも公衆または産業に有用な選択肢を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明のサマリー)
本発明の一態様において、磁束を発生しまたは受けるための磁束パッドであって、磁気透過性のコアとこのコアに磁気的に関連づけられた実質的に平面状でオーバーラップ(重なり合い)のある2つのコイルとを備え、これにより、前記コイルは相互の磁気的結合を実質的に有しない磁束パッド、を広く提供することである。
【0010】
これらのコイルはいずれも実質的に完全に磁気的に非結合であることが好ましい。
【0011】
これらのコイルはいずれも部分的にオーバーラップがあることが好ましい。
【0012】
これらのコイルはいずれも実質的に同一平面内にあることが好ましい。
【0013】
これらのコイルはいずれも磁気透過性コアの片側の面に備えられ、さらに遮蔽手段が他方の片側の面に備えられていることが好ましい。
【0014】
この遮蔽手段はアルミニウムなどの適切な材料でできた遮蔽プレートを備えることが好ましい。
【0015】
誘電体であるカバーが磁気透過性コアの反対側であってコイルの側に備えられていることが好ましい。
【0016】
互いに位相が異なる電源からの電流を受けるように構成され、時間的変化とともに空間的変化をともなう磁界を生成することが好ましい。
【0017】
コイルを流れる異なる位相の電流により生成された磁界が時間的に変化する磁界を生成するとともに、空間的に交互に磁極の間を移動することが好ましい。
【0018】
本発明の他の実施態様として、IPTシステムのための電源装置であって、この電源装置は、磁束を生成する磁束パッドと電源とを含み、パッドは、磁気透過性のコアとコアに磁気的に関連づけられ実質的に平面状でオーバーラップのある2つのコイルとを備え、前記電源は、一方のコイルを流れる電流と異なる位相を有する他方のコイルを流れる電流とを供給する前記電源装置、を提供する。
【0019】
時間的に変化するとともにパッド上の空間的位置によっても変化する磁界を生成するように位相を調整するように構成されていることが好ましい。
【0020】
さらに検出調整手段を含み、この検出調整手段はパッドの近傍において必要とするかまたは必要としない磁界がどこにあるか検出し、センシング手段の出力に対する応答としてコイルを流れる電流の相対的な位相および/または振幅を調整することが好ましい。
【0021】
電源装置は、各コイルにインバータを含むことが好ましい。
【0022】
電源装置は、2つのインバータを備え、これらのインバータは互いに同期をとって、一方のコイルに流れる電流と90度位相が異なる電流が他方のコイルに流れるように生成することが好ましい。
【0023】
磁束パッドは、スライドして時間変化する磁界を生成することが好ましい。
【0024】
電源装置は、別な構成として、互いに180度位相が異なるようにコイルを動作させてもよい。この実施態様では、一つのインバータを用いてもよい。
【0025】
本発明の他の態様として、コイル同士に相互の磁気的結合がない複数のコイルを有するIPT磁気パッドを供給する方法であって、コイル同士にオーバーラップを持たせるステップと、コイル同士のオーバーラップを変化させてコイル同士の相互の磁気的結合が実質的になくなるようにオーバーラップの位置を決定するステップとを含む前記方法、を広く提供する。
【0026】
一方のコイルを励磁して他方のコイルに誘導される開回路電圧がいつ最小になるかを検出することにより、相互の磁気的結合が存在しないことを検出することが好ましい。
本発明の他の態様は、以降の記載から明らかになる。
【0027】
本発明のひとつ以上の実施態様が、添付された図を参照して以下に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、それぞれ、磁束パッドの側面図と平面図である。
図2図2は、それぞれ、積分コイルを含む図1の磁束パッドの側面図と平面図である。
図3図3は、それぞれ、別の形式の磁束パッドの側面図と平面図である。
図4図4は、前図のパッドの一つのコイルに結合している開回路電圧の一連のグラフである。他方のコイルが励磁された時のコイル同士のオーバーラップの関数として表わされている。
図5図5は、それぞれ、垂直空間が150mmと250mmのオフセットに対する非補償電力のグラフを示す。
図6図6は、3種類の異なる磁束パッド構造(図3のもの)に対する非補償電力のグラフを示す。レシーバーパッドはx方向またはy方向にオフセットを有し、垂直方向は200mm隔たっている。
図7図7は、それぞれ図3図1のパッド構造の磁界のプロットを示している。1次側の共振電流の一サイクル全体におけるいくつかの時点のものである。
図8図8は、図3のパッド構造の磁界のプロットを示している。コアのフェライトの数は増加している(上から下の方向に示す)。
図9図9は、図3に示すパッド構造の電力伝達プロフィールの一例のグラフを示す。図2の例に示すレシーバーパッドを有している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(ひとつまたはそれ以上の好ましい実施態様の記述)
図1を参照すると、磁束パッド構造が示されている。便宜上、ここではこの基本構成を「DDPパッド」という。関連する図において基本的に「DDP」として参照される。
【0030】
図1に示されるDDPパッドは実質的に同一平面内にあるコイル2およびコイル3を基本的に備えており、これらのコイルは磁気的に関連づけられてコア4の最上部に位置している。図からわかるように、コア4はフェライトストリップまたはフェライトバー5などの単一長の複数の磁気透過性素材からなり、各フェライトストリップまたはフェライトバーは互いに平行に間隔をあけて配置されている。パッド構造はコアが載置されているスペーサー6とスペーサーの下側にあるプレート7を含んでいる。いくつかの実施態様においては、カバー8が平面状のコイル2とコイル3のもう一方の表面に設けられる。詰め物(パディング)9をパッドの周辺部のあたりに備えてもよい。示されるように、コイル2とコイル3はそれぞれ磁極領域10、11を画している。図1に示すDDPパッド構造は、IPT電力伝達の利用形態、たとえば車両の充電など、に適しており、良好な特性を示すものである。コイル2とコイル3は位相が異なるように結線され、単一のインバータが固定位置で時間変化する磁界を生成し、この磁界は、良好な結合がされる電気車両の電力伝達に適した距離におかれたレシーバー(たとえば、実質的に同一の磁気的設計がされたもの)に結合している。
【0031】
次に図2では、図1のDDP構造が示されているが、さらに積分コイル(クオドラチャーコイル)12が含まれている(ここでは、DDPQパッドという。)。適切なインバータによって励磁された時の図1のDDPパッドのような磁束生成器において、図2に示す構造がラテラル方向へ移動した際の電力伝達プロファイルを積分コイルによって改善するものである。積分コイルによりレシーバーパッドが捕捉した磁界の「垂直」成分から電力を抽出することができる。一方、他のコイル2とコイル3は捕捉した磁束の「水平」成分から電力を抽出することを容易にする。したがって、図2の構造は磁束のレシーバーとして適するものである。
【0032】
次に図3では、バイポーラパッドまたはBPPパッドとして本明細書で参照される他の構造が示されている。BPPパッドは上記のように図1および図2で論じたDDPパッドと同様な構造をしている。BPPパッドは、電気車両の充電及び給電について適切な距離にある2次側のレシーバーに良好な磁気的結合をすることができる。
【0033】
BPPパッドは、下から上に、アルミニウムプレート7、誘電体であるスペーサー6、4列に並ぶフェライトバー5(ここでは、「フェライト」という。)を備える平面状のコア4、実質的に同一平面にあるがオーバーラップがあり理想的には長方形の形状でラテラル方向に拡がっている2つの平面状のコイル2,3(実際には、これらはリッツ線を巻きやすくするために楕円形状となる。)および誘電体であるカバー8から構成される。コア4は遮蔽体として働き、理想的にはすべての磁束がコア4からパッドの最上部に向けて放たれる。プレート7は、単に、a)ある環境下でコア4の下に存在する場合がある小規模の漏洩磁界または擬似的な磁界を除去し、b)構造上の強度を加える、というものである。
BPPは図3に示されており、表A1はシミュレーションや実験的なプロトタイプから実際の寸法を定めたものである。
【0034】
後述のように、BPPの磁気的な構造は、1次側のコイル2、3のいずれの間にも実質的に相互の磁気的結合がないように設計されている。このため、コイル間に結合電圧が生じるとコイルの電力出力に悪影響を与えるのであるが、互いに結合電圧を誘導することなく、いずれのコイルもどのような振幅または位相においても独立に動作させることができる。
【0035】
ある動作モードにおいては、BPP内のこれら2つのコイルは、別々ではあるが同期させた2つのインバータを用いて、既知の電流強度と位相差をもって動作させることができる。もしこれらのコイルが理想的に完全に磁気的に非結合になると、1次側のインバータの間の電力伝達がされることはなく、2次側のレシーバーへの電力伝達は制限されない。
【0036】
ひとつの実施態様において、2つのインバータが同期されているが同一RMS(平方自乗平均)の強度を有する電流を生成するように作動され、コイル2およびコイル3が90度異なる位相角で作動される。固定位置の利用形態においては、このことは所望の動作周波数で共振するように同調されたLCL構造を有する2つのHブリッジのインバータとされるだろう。各ケースの最後のLは一部がパッドのインダクタンスを用いて構成される。メイン側からの入力電子回路を単純にするために1次側のインバータは共通のDCバスを有することが好ましい。コイル2およびコイル3の電流の間に90度の位相の隔たりを有することにより、DDPのような固定位置で時間的に変化する磁界ではなく、空間的に変化するとともに時間的に変化する磁界が作られる。これは、図7に示されており、その左欄は、DDPパッドを表し、右欄は、BPPパッドを表している。BPPの磁界の空間的な変化は、コイル2およびコイル3の磁極の間で交互にスライドする動きとして現れている。
【0037】
留意すべきことは、たとえば、ICNIRP(国際非電離放射線学会)に適合させるようにするなど、磁気的に結合されたレシーバーの動作中のオフセットによる漏洩磁界を防止するために、トランスミッターの片側から放出される磁界を減少させるというニーズがあるとするならば、コイルを流れる電流の間の相対的な位相および/または強度を変化させることにより、そのような磁界を形成することに用いることができる点である。このような場合は、より大きい磁界強度が必要とされる箇所や磁界強度を減少させるべき箇所をセンシングするセンサーの出力に応じて磁界の向きを決めることができる。また、磁界が必要とされるパッドの箇所により磁界強度が時間的に変化するが空間的に固定である場合も同様である。
【0038】
また別の実施形態では、コイル2およびコイル3は、180度異なる位相で動作させることも可能であり、両者をひとつのインバータで単純に接続するようにすることができる(DDPで作動させる場合)。この単一位相動作モードは、2番目に可能な動作モードであって、固定位置で時間変化のある磁界を生成する電子制御と電力変換を単純なものとする。
【0039】
比較の手段として、スライドして時間変化する磁界を有するBPPの電力伝達プロフィールは、同一の電流と周波数(数値は表A2に定められている。)において単一位相である1次側電源から駆動されるDDP磁気構造の電力伝達プロフィールに対して評価される。
両システムは、同一の高さとオフセット(数値は表A3に定められている。)において同一のDDQPレシーバー(すなわち、磁束レシーバーとして用いられている図2のような積分コイルを含むDDPパッド)に結合しており、同一条件の下に評価されている。
【0040】
与えられたBPPは、スライドして時間変化する磁界、と呼ばれるものを創出する。コイル2およびコイル3がその上方に置かれているベース内に用いられた4つのフェライトストリップ5の好ましい長さを決定することが望ましい。既知のDDPでは、これらのフェライトストリップ5は電力伝達を改善するために用いられ、2次側の電力レシーバーに最もよく結合するように制御された主に片側からの磁界が作られる。他方、用いられるフェライトの数を最小として、重量を最小にするとともにパッドのインダクタンスを制限している。このスライドして変化する磁界では、フェライトストリップは巻かれているコイルの下側に延びているのが好ましいことが示されており、そうでないと磁界はレシーバーの方向である上方に向かうようにできない。
【0041】
この評価では、フェライトストリップ5は、それぞれ93mmの基準長さの簡単に利用できるスラブを用いて構成された。各ストリップは、便宜上、この基準長さの整数倍が選ばれた。6枚(558mm)、8枚(744mm)、および10枚(930mm)のスラブを一まとめにした構成が研究された。すべての設計において(10枚のスラブのフェライト構成を除く)、BPPパッドの外形寸法はDDPと同一にして、同一条件で比較できるようにした。しかしながら、10枚のフェライト構成ではトランスミッターパッド(もしくはジェネレータパッド)の全長(x方向)を長くせざるを得なくなり、基準長さを越えて200mm増加している(比較対象であるDDP構成を含む他のすべてのパッドと比較して。)。したがって、10枚のフェライト構成はコイル寸法を越えたフェライトに対する延長のインパクトを考慮する評価に唯一含まれている。表A1で示すように、コイル同士のオーバーラップは、1次側コイルの間で生じる相互の磁気的結合を避けるように構成されているが、3つのBPPコイルのどの構成においても、2つのコイルの端部と端部の距離は同一である。
【0042】
BPPの2つの1次側コイル2,3は、互いに任意のオーバーラップをもって置かれると、コイル間に相互の磁気的結合が生じる。しかしながら、オーバーラップをコイル幅に対しある割合になるようにすると、相互の磁気的結合はほぼゼロとなる。この割合をrと表記する。オーバーラップは、各1次側コイル間にまったく相互結合が存在しないようにすることが理想的であるが、フェライトが存在するため簡単ではない。しかし、ひとつのコイルを固定して、これを固定した周波数においてあらかじめ決めた電流を流して励磁することにより、決定することができる(たとえば、適切な3Dシミュレータによったり、適切な実験的構成を用いたりすればよい)。そうすると、2つ目のコイルに誘導された開回路電圧を測定することができる。この2つ目のコイルを動かしてオーバーラップを変化させると、結合電圧が変化する。これを最小化する(理想的にはゼロとする)と、理想的な相対位置が構成できる。図4に示すように、最適なオーバーラップは、コイルの下側のフェライトストリップの長さによって変わるものである。6枚、8枚および10枚のフェライトからなるパッドに対し、オーバーラップの割合rは、それぞれ0.53、0.34および0.25であることがわかった。
【0043】
有限要素法を用いるソフトウェアであるJMAG Studio(商標)バージョン10.0を用いて、すべての磁気的構成についてのシミュレーションを行った。シミュレーションの出力の有効性は、プロトタイプであるBPPを実験室で構成しシミュレーションと比較することにより確認した。BPPは、ベース内に6枚のフェライトスラブからなるフェライトストリップを用いている。このスケールモデルは、表A1のBPPの外形寸法を用いたが、構成を単純にするため、各コイルは10回巻きとした。レシーバーは表A3に示すDDQPコイルとした。図5に示すように、実測値とシミュレーション値を比較し良好な相関があることが示された。
【0044】
ここに与えられた電力プロフィールは非補償VA電力出力全体であり、これはレシーバーの開回路電圧(Voc)および短絡回路電流(Isc)を測定して決定したものである。
非補償VAは、よく知られたパッドの電力性能の評価尺度であり、S=Voc×Iscにより与えられる。DDQPレシーバーは、コイル2、3(これらは直列接続とする)と積分コイル(Qコイル)12の2つのセットのコイルを有する。このケースでは、非補償電力は両方のセットにそれぞれ別々に見出される。ピックアップから供給されて利用できる全非補償電力は、2つのセットのコイルから供給される電力の和として単純に計算される電力全体をさし、この電力全体が、電力伝達プロフィールの基礎となるものである。
【0045】
したがって、各BPPの設計の電力伝達プロフィールは、3Dシミュレーションを用いて、図6に示すように、確実に決定することができる。ここに、BPPは20kHzの23A(平方自乗平均)の電流で励磁され、他方レシーバーはDDQPである。相対的な位置を決めるパラメータは、オフセット距離といい、デカルト座標系でxos(ラテラル(幅)方向)、 yos(長手方向) およびzos(垂直方向)である。誘電体であるカバー8を介して互いの上部が触れた状態の2つのパッドの相対位置は、(0,0,0)である。垂直方向のオフセットzosは、200mmである。
【0046】
注目すべきことは、コイルの下側にあるフェライトを延ばすと、電力の無視しえない増加があることである。フェライトは少なくともコイル2,3全体の下にあるように延ばすべきことは明らかである(8枚のフェライトスラブを有するBPP)。フェライトがベースに加えられるとBPPからの非補償電力が急激に増加する理由は、その磁界が固定位置にないという性質があるからである。BPPパッドの近傍の磁界は、その表面を横切ってスライドする波として最もよく記述することができる。DDPは単一位相であるためパルス状に上下に脈動するが、これとは異なる。このスライドする性質は、図7に明らかに示されているように、BPPとDDPの根本的な違いである。図7は、半サイクルの間、位相ごとに磁束密度を比較している。図7では、BPP8とDDPがDDQPレシーバーに結合している磁界について両者のプロットが示されており、これらのプロットは1次側の共振電流の一サイクル全体におけるいくつかの時点のものである。上から下に、0,30,60,90,120および150度のもの(バイポーラにおいては他方の位相は90度離れて動作する。)を示している。左側の欄のプロットは、8つのフェライトスラブを用いたBPPパッドのものである。右側の欄のプロットは、DDPパッドのものである。単一位相のDDPパッドからの磁界はパルス状に上下し、パッドの中心に非常に強い磁界を有している。他方、BPPは、より一定に近い磁界パターンを有するが、このパターンは位相が進むにつれてスライドする波のようにパッドの表面を移動していく。
【0047】
BPPのスライドする波は、パッドのエッジ部に局所的に大きい磁界を作る。他方、DDPパッドは、パッドの中心に強い磁界を保持する。6枚のバージョンでは、コイル端部の下側にフェライトが存在せず、磁界は誘電体であるフィリング材料6(木材)によって十分詰められていない。したがって、上方には放射されないが、パッドのアルミニウム製のベースプレート7に過電流を誘導する。図8では、3種類の構成は、同一の位相で比較されている。図8は、0度であって垂直方向のオフセットを有するDDQPレシーバーが存在する場合のBPPパッドの磁界のプロットを示しており、それぞれ6枚(上)、8枚(中)、10枚(下)のスラブが、ベース内にフェライトストリップを形成している。磁束密度は定性的には異なるように現れており、特に右側のエッジ付近は磁束密度が8枚構成および10枚構成のものでは高くなっているが、6枚構成のものではそうなっていない。
10枚構成のものでは、磁束はさらに限定されており、トラックパッドの側部の「回り込み」磁界も少ない。繰り返すが「回り込み」磁界は、電力伝達を減少させるファクターである。10枚構成のものでは磁界はピックアップ(すなわち、レシーバーパッド)の方向に押し出されることはないからであり、これは好ましいことである。
【0048】
図9において、各フェライトベースストリップに8枚のフェライトスラブを備えるBPP(BPP8)がDDPと比較されている。BPP8の電力伝達プロフィールはDDPのプロフィールと比較すると、その形状とその最大値において大きな違いがあることがわかる。示されているように、BPP8は、最大電力がDDPの約70%であってDDPと同様の電力プロフィールを有している。しかしながら、示されている電力レベルと達成した結合状態は、たとえば電気車両への電力について実際の利用形態に必要となる距離において適するレベルを実現するものであり、さらにDDP電力プロフィールに見られるようなオフセットのある場合のピーク周辺の電力の変化については、その割合が大きくないことが示されている。この電力の変化の割合が限定されることは、電力ハイウェイへの利用形態において、ラテラル方向への動きに対して電力の厳しい変動がないであろうことが有利な点である。
【0049】
【表A1】

【0050】
【表A2】
【0051】
【表A3】
【0052】
上記の記述では、公知の均等物を有する本発明の特定の完成品または構成要素について言及してきたが、これらの均等物は個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれて含まれる。
【0053】
本発明は、実施例と本発明の可能な実施態様を参照して記載されているが、本発明の範囲と趣旨から離れることのない改変や改善をなおその上に行うことができることが理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9