特許第6585114号(P6585114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6585114-端子挿入装置及び端子挿入方法 図000002
  • 特許6585114-端子挿入装置及び端子挿入方法 図000003
  • 特許6585114-端子挿入装置及び端子挿入方法 図000004
  • 特許6585114-端子挿入装置及び端子挿入方法 図000005
  • 特許6585114-端子挿入装置及び端子挿入方法 図000006
  • 特許6585114-端子挿入装置及び端子挿入方法 図000007
  • 特許6585114-端子挿入装置及び端子挿入方法 図000008
  • 特許6585114-端子挿入装置及び端子挿入方法 図000009
  • 特許6585114-端子挿入装置及び端子挿入方法 図000010
  • 特許6585114-端子挿入装置及び端子挿入方法 図000011
  • 特許6585114-端子挿入装置及び端子挿入方法 図000012
  • 特許6585114-端子挿入装置及び端子挿入方法 図000013
  • 特許6585114-端子挿入装置及び端子挿入方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585114
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】端子挿入装置及び端子挿入方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/20 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   H01R43/20 A
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-64558(P2017-64558)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-170090(P2018-170090A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2018年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】間渕 実良
(72)【発明者】
【氏名】築地 信人
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 朋宏
【審査官】 杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3024499(JP,B2)
【文献】 特許第5619587(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端部に圧着接続されたコネクタ端子を、少なくともその一部の収容部分についてコネクタハウジングにおける筒状の端子収容室に挿入する端子挿入装置であって、
前記コネクタ端子は、前記収容部分と、当該収容部分よりも後端側に位置して前記電線の露出芯線に圧着される芯線圧着部と、当該芯線圧着部よりも更に後端側に位置して前記露出芯線に隣接する被覆部分に圧着される被覆圧着部と、を有し、
前記コネクタハウジングは、前記端子収容室に連通して前記コネクタ端子における端子先端の前記端子収容室への進入を案内する四角溝状の案内レールを有し、
前記電線及び前記コネクタ端子における前記被覆圧着部のうち少なくとも一方の部位を保持する端子側保持部と、
前記端子側保持部に前記少なくとも一方の部位が保持されたときの前記コネクタ端子の長手方向と前記端子収容室の軸方向とが互いに一致するように前記コネクタハウジングを保持するとともに、前記長手方向に沿って、前記コネクタ端子が前記端子収容室に収容されるまで前記コネクタハウジングをスライド移動させるハウジング移動部と、
前記コネクタハウジングのスライド移動に応じて前記収容部分が前記案内レールへと進入可能となるように、前記芯線圧着部を保持することで前記収容部分の軸回りの姿勢決めを行ないつつ、当該収容部分が少なくとも前記案内レールに進入するまで前記ハウジング移動部が前記コネクタハウジングをスライド移動させると、前記芯線圧着部を解放しつつ更なるスライド移動を妨げない位置まで退避する圧着保持部と、
を備えたことを特徴とする端子挿入装置。
【請求項2】
前記コネクタ端子は、前記収容部分が四角筒状に形成された雌型端子であり、
前記端子収容室は、前記軸回りに前記コネクタ端子を回転不能に収容するものであり、
前記端子側保持部から見て前記ハウジング移動部とは反対側の保持位置で前記電線を保持する電線保持部を更に備え、
前記端子側保持部は、前記コネクタ端子における前記端子先端が前記端子収容室に進入するまで前記ハウジング移動部が前記コネクタハウジングをスライド移動させると、前記少なくとも一方の部位を解放しつつ更なるスライド移動を妨げない位置まで退避するものであって、
前記ハウジング移動部は、前記端子先端が前記端子収容室に進入するまで前記コネクタハウジングをスライド移動させ、前記端子側保持部の退避後に、前記電線保持部によって前記電線が保持された状態で、前記収容部分の収容が完了するまで更にスライド移動させるものであることを特徴とする請求項1に記載の端子挿入装置。
【請求項3】
電線の端部に圧着接続されたコネクタ端子を、少なくともその一部の収容部分についてコネクタハウジングにおける筒状の端子収容室に挿入する端子挿入方法であって、
前記コネクタ端子は、前記収容部分と、当該収容部分よりも後端側に位置して前記電線の露出芯線に圧着される芯線圧着部と、当該芯線圧着部よりも更に後端側に位置して前記露出芯線に隣接する被覆部分に圧着される被覆圧着部と、を有し、
前記コネクタハウジングは、前記端子収容室に連通して前記コネクタ端子における端子先端の前記端子収容室への進入を案内する四角溝状の案内レールを有し、
前記電線及び前記コネクタ端子における前記被覆圧着部のうち少なくとも一方の部位を保持する端子側保持工程と、
前記端子側保持工程で前記少なくとも一方の部位が保持されたときの前記コネクタ端子の長手方向と前記端子収容室の軸方向とが互いに一致するように前記コネクタハウジングを保持するとともに、前記長手方向に沿って、前記コネクタ端子が前記端子収容室に収容されるまで前記コネクタハウジングをスライド移動させるハウジング移動工程と、
前記コネクタハウジングのスライド移動に応じて前記収容部分が前記案内レールへと進入可能となるように、前記芯線圧着部を保持することで前記収容部分の軸回りの姿勢決めを行ないつつ、当該収容部分が少なくとも前記案内レールに進入するまで前記ハウジング移動部が前記コネクタハウジングをスライド移動させると、前記芯線圧着部を解放しつつ更なるスライド移動を妨げない位置まで退避する工程と、
を備えたことを特徴とする端子挿入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の端部に圧着接続されたコネクタ端子を、コネクタハウジングにおける筒状の端子収容室に挿入する端子挿入装置及び端子挿入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電線の先端にコネクタが取り付けられたコネクタ付電線を作製するために、電線の先端に設けられたコネクタ端子をコネクタハウジングの端子収容室に挿入する端子挿入装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された端子挿入機では、コネクタ端子を保持してコネクタハウジングに近づけ、端子収容室に挿入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−160472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電線の外側がシールド部材によって覆われたシールドケーブルの先端にコネクタが取り付けられることがある。このようなシールドケーブルに対して、特許文献1のような端子挿入装置を用いると、コネクタハウジングの近傍における端子挿入時のコネクタ端子の自由な取り回しのために、シールド部材を除去して露出させる電線の余長が長くなる場合がある。このような余長が長くなるとシールド効果が低減する恐れがある。
【0005】
他方、仮に電線の余長を抑制できた場合、上記のようなシールド効果の低減を抑制することができる反面、挿入後に、電線に対して人手で引張確認することで不完全挿入の有無を確かめることが、手掛かりとなる電線長が短いために困難となりがちである。このため、シールド効果の観点から電線の余長を抑制しつつも、端子挿入の確度を高めて不完全挿入の発生を抑えることが求められる。
【0006】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、電線の余長を抑制しつつ、その端部に圧着接続されたコネクタ端子をコネクタハウジングの端子収容室に不完全挿入の発生を抑えて挿入することができる端子挿入装置及び端子挿入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の端子挿入装置は、電線の端部に圧着接続されたコネクタ端子を、少なくともその一部の収容部分についてコネクタハウジングにおける筒状の端子収容室に挿入する端子挿入装置であって、前記コネクタ端子は、前記収容部分と、当該収容部分よりも後端側に位置して前記電線の露出芯線に圧着される芯線圧着部と、当該芯線圧着部よりも更に後端側に位置して前記露出芯線に隣接する被覆部分に圧着される被覆圧着部と、を有し、前記コネクタハウジングは、前記端子収容室に連通して前記コネクタ端子における端子先端の前記端子収容室への進入を案内する四角溝状の案内レールを有し、前記電線及び前記コネクタ端子における前記被覆圧着部のうち少なくとも一方の部位を保持する端子側保持部と、前記端子側保持部に前記少なくとも一方の部位が保持されたときの前記コネクタ端子の長手方向と前記端子収容室の軸方向とが互いに一致するように前記コネクタハウジングを保持するとともに、前記長手方向に沿って、前記コネクタ端子が前記端子収容室に収容されるまで前記コネクタハウジングをスライド移動させるハウジング移動部と、前記コネクタハウジングのスライド移動に応じて前記収容部分が前記案内レールへと進入可能となるように、前記芯線圧着部を保持することで前記収容部分の軸回りの姿勢決めを行ないつつ、当該収容部分が少なくとも前記案内レールに進入するまで前記ハウジング移動部が前記コネクタハウジングをスライド移動させると、前記芯線圧着部を解放しつつ更なるスライド移動を妨げない位置まで退避する圧着保持部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の端子挿入装置によれば、コネクタ端子の端子収容室への収容は、ハウジング移動部によるコネクタハウジングのスライド移動で行われる。つまり、収容の際にコネクタ端子を動かす必要がなく、コネクタハウジングの近傍における端子挿入時のコネクタ端子の自由な取り回しのための電線の余長も略不要となる。電線の余長が略不要となる為、シールドケーブルにおいてシールドを除去して露出させた内部電線を上記の電線として用いる場合では、露出させる内部電線を短くできるので、シールド効果の低減を抑制することができる。つまり、本発明の端子挿入装置は、このようにシールド効果の低減を抑制させる場合に特に有効である。また、本発明の端子挿入装置によれば、コネクタハウジングを移動させることで、コネクタ端子が小さく寸法公差が厳しい場合でも振動にてコネクタ端子にブレが生じないため、コネクタハウジングの端子収容室の入り口への衝突を抑制することができる。
【0009】
また、本発明の端子挿入装置によれば、端子側保持部とハウジング移動部とが設けられており、端子側保持部による保持位置と、ハウジング移動部によるスライド移動の移動先の位置と、を個別に高精度に管理することができる。そして、このような高精度での管理によりコネクタ端子をコネクタハウジングの端子収容室に不完全挿入の発生を抑えて挿入することができる。
【0010】
このように、本発明の端子挿入装置によれば、電線の余長を抑制しつつ、その端部に圧着接続されたコネクタ端子をコネクタハウジングの端子収容室に不完全挿入の発生を抑えて挿入することができる。
【0011】
ここで、本発明の端子挿入装置において、前記コネクタ端子は、前記収容部分が四角筒状に形成された雌型端子であり、前記端子収容室は、前記軸回りに前記コネクタ端子を回転不能に収容するものであり、前記端子側保持部から見て前記ハウジング移動部とは反対側の保持位置で前記電線を保持する電線保持部を更に備え、前記端子側保持部は、前記コネクタ端子における前記端子先端が前記端子収容室に進入するまで前記ハウジング移動部が前記コネクタハウジングをスライド移動させると、前記少なくとも一方の部位を解放しつつ更なるスライド移動を妨げない位置まで退避するものであって、前記ハウジング移動部は、前記端子先端が前記端子収容室に進入するまで前記コネクタハウジングをスライド移動させ、前記端子側保持部の退避後に、前記電線保持部によって前記電線が保持された状態で、前記収容部分の収容が完了するまで更にスライド移動させるものであることが好適である。
【0012】
この好適な端子挿入装置では、コネクタ端子の収容部分を端子収容室に完全に収容するに当たって、コネクタハウジングのスライド移動の邪魔にならないように、端子側保持部が退避する。このとき、この好適な端子挿入装置によれば、端子先端が端子収容室に進入することで端子収容室の軸回りにコネクタ端子の進入姿勢が安定するまで上記の少なくとも一方の部位が端子側保持部によって保持され、その後に端子側保持部の退避が行われる。その後は、電線保持部によって電線が保持された状態で、端子側保持部に妨げられることなくコネクタハウジングの更なるスライド移動が行われる。これにより、コネクタハウジングのスライド移動を、コネクタ端子の進入姿勢が安定した状態でスムーズに行って収容を完了させることができる。
【0013】
また、上述したように、本発明の端子挿入装置では、前記コネクタ端子は、前記収容部分と、当該収容部分よりも後端側に位置して前記電線の露出芯線に圧着される芯線圧着部と、当該芯線圧着部よりも更に後端側に位置して前記露出芯線に隣接する被覆部分に圧着される被覆圧着部と、を有し、前記コネクタハウジングは、前記端子収容室に連通して前記端子先端の前記端子収容室への進入を案内する四角溝状の案内レールを有し、前記端子側保持部は、前記少なくとも一方の部位として、前記電線及び前記被覆圧着部のうち少なくとも一方の部位を保持するものであって、前記コネクタハウジングのスライド移動に応じて前記収容部分が前記案内レールへと進入可能となるように、前記芯線圧着部を保持することで前記収容部分の軸回りの姿勢決めを行ないつつ、当該収容部分が少なくとも前記案内レールに進入するまで前記ハウジング移動部が前記コネクタハウジングをスライド移動させると、前記芯線圧着部を解放しつつ更なるスライド移動を妨げない位置まで退避する圧着保持部を端子挿入装置が備えている
【0014】
この構成では、端子先端の端子収容室への進入がコネクタハウジングの案内レールによってスムーズに行われるが、その案内レールへの収容部分の進入も、芯線圧着部の保持により収容部分が軸回りに姿勢決めされた状態で行われる。このように、この構成によれば、案内レールへの収容部分の進入から端子先端の端子収容室への進入まで、一連のコネクタハウジングのスライド移動を、コネクタ端子の進入姿勢が更に安定した状態で一層スムーズに行うことができる。
【0015】
また、この好適な端子挿入装置において、前記ハウジング移動部は、前記案内レールを前記収容部分へと向けて前記コネクタハウジングを保持し、前記収容部分が前記案内レールに進入するまで前記コネクタハウジングをスライド移動させ、前記圧着保持部の退避後に、前記端子先端が前記案内レールに案内されて前記端子収容室に進入するまで前記コネクタハウジングをスライド移動させるものであってもよい。
【0016】
また、本発明の端子挿入装置において、前記電線が、多線ケーブルの端部で露出された複数本の内部電線それぞれであって、当該複数本の内部電線それぞれの端部に前記コネクタ端子が圧着接続され、前記コネクタハウジングには、前記複数本の内部電線の本数以上となる複数の前記端子収容室が互いに平行に配列されて設けられており、前記端子側保持部は、前記複数本の内部電線の前記コネクタ端子それぞれの前記端子先端を前記端子収容室へと向けつつ、前記複数本の内部電線の前記コネクタ端子を、前記端子収容室の配列方向に互いに平行に揃えるものであることが好適である。
【0017】
この好適な端子挿入装置によれば、多線ケーブルにおいて、何もしなければ互いに異なる方向を向きがちな複数本の内部電線のコネクタ端子が、端子側保持部によって互いに平行に揃えられる。これにより、これら複数本の内部電線のコネクタ端子の端子先端を、コネクタハウジングの端子収容室に、同時かつスムーズに挿入することができる。
【0018】
そして、この好適な端子挿入装置において、前記複数本の内部電線が、2線ケーブルにおける一対の内部電線であり、前記端子側保持部が、前記端子収容室の配列面と平行に延在する棚面に、前記端子収容室の前記軸方向と平行に延在する立板が立設され、当該立板の延在方向に進退自在な立部材、及び、前記立板を前記配列方向に挟んで互いに接離自在に一対が設けられ、各々に、前記立板への接近時に前記棚面と対向する対向面が設けられた一対のアーム部材、を備え、前記一対の内部電線及び前記コネクタ端子のうち少なくとも一方の部位の相互間に進入させた前記立板と、当該立板に接近させた前記一対のアーム部材それぞれと、で当該部位を挟持するとともに、当該部位を前記棚面と前記対向面とでも挟持するものであることが更に好適である。
【0019】
この更に好適な端子挿入装置によれば、2線ケーブルにおける一対の内部電線及びコネクタ端子のうちの少なくとも一方の部位を、立板と一対のアーム部材とによる挟持と、棚面と対向面とによる挟持と、で高い精度で互いに平行に揃えて保持することができる。これにより、その後のコネクタハウジングのスライド移動によるコネクタ端子の端子先端の、端子収容室への挿入を一層スムーズに行うことができる。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の端子挿入方法は、電線の端部に圧着接続されたコネクタ端子を、少なくともその一部の収容部分についてコネクタハウジングにおける筒状の端子収容室に挿入する端子挿入方法であって、前記コネクタ端子は、前記収容部分と、当該収容部分よりも後端側に位置して前記電線の露出芯線に圧着される芯線圧着部と、当該芯線圧着部よりも更に後端側に位置して前記露出芯線に隣接する被覆部分に圧着される被覆圧着部と、を有し、前記コネクタハウジングは、前記端子収容室に連通して前記コネクタ端子における端子先端の前記端子収容室への進入を案内する四角溝状の案内レールを有し、前記電線及び前記コネクタ端子における前記被覆圧着部のうち少なくとも一方の部位を保持する端子側保持工程と、前記端子側保持工程で前記少なくとも一方の部位が保持されたときの前記コネクタ端子の長手方向と前記端子収容室の軸方向とが互いに一致するように前記コネクタハウジングを保持するとともに、前記長手方向に沿って、前記コネクタ端子が前記端子収容室に収容されるまで前記コネクタハウジングをスライド移動させるハウジング移動工程と、前記コネクタハウジングのスライド移動に応じて前記収容部分が前記案内レールへと進入可能となるように、前記芯線圧着部を保持することで前記収容部分の軸回りの姿勢決めを行ないつつ、当該収容部分が少なくとも前記案内レールに進入するまで前記ハウジング移動部が前記コネクタハウジングをスライド移動させると、前記芯線圧着部を解放しつつ更なるスライド移動を妨げない位置まで退避する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明の端子挿入方法によれば、上述した本発明の端子挿入装置と同様、端子挿入時のコネクタ端子の自由な取り回しのための電線の余長も略不要となる。電線の余長が略不要となる為、上述した本発明の端子挿入装置と同様、シールドケーブルの内部電線を上記の電線として用いる場合に、露出させる内部電線を短くしてシールド効果の低減を抑制することができる。つまり、本発明の端子挿入方法も、このようにシールド効果の低減を抑制させる場合に特に有効である。また、本発明の端子挿入方法でも、コネクタハウジングを移動させることでコネクタ端子にブレが生じないため、コネクタハウジングの端子収容室の入り口への衝突を抑制することができる。
【0022】
また、本発明の端子挿入方法によれば、コネクタ端子の保持位置と、コネクタハウジングのスライド移動の移動先の位置と、を個別に高精度に管理することができる。そして、このような高精度での管理によりコネクタ端子をコネクタハウジングの端子収容室に不完全挿入の発生を抑えて挿入することができる。
【0023】
このように、本発明の端子挿入方法によれば、電線の余長を抑制しつつ、その端部に圧着接続されたコネクタ端子をコネクタハウジングの端子収容室に不完全挿入の発生を抑えて挿入することができる。
【0024】
尚、ここでは、本発明の端子挿入方法について、その基本形態のみを記述したが、この本発明の端子挿入方法にも、本発明の端子挿入装置に対する種々の好適な形態が適用可能であることはいうまでもない。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、電線の余長を抑制しつつ、その端部に圧着接続されたコネクタ端子をコネクタハウジングの端子収容室に不完全挿入の発生を抑えて挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態にかかる端子挿入装置を示す図である。
図2図1に示されているケーブル保持部を示す拡大図である。
図3図1に示されている端子側保持部によるコネクタ端子の保持動作の第1段階を示す模式図である。
図4図1に示されている端子側保持部によるコネクタ端子の保持動作の第2段階を示す模式図である。
図5図3及び図4に示されているコネクタ端子の保持動作を更に簡略化して示す模式図である。
図6図1に示されている圧着保持部によるコネクタ端子の芯線圧着部に対する保持動作を示す模式図である。
図7図1に示されているハウジング移動部によるコネクタハウジングの移動の第1段階を示す図である。
図8図7に示されているコネクタハウジングの移動を示す模式図である。
図9図1に示されているハウジング移動部によるコネクタハウジングの移動の第2段階を示す図である。
図10図9に示されているコネクタハウジングの移動を示す模式図である。
図11図1に示されているハウジング移動部によるコネクタハウジングの移動の第3段階を示す図である。
図12図11に示されているコネクタハウジングの移動を示す模式図である。
図13図7図12に示されているコネクタ端子のコネクタハウジングへの一連の取付け作業を簡略化して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の端子挿入装置及び端子挿入方法の一実施形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態にかかる端子挿入装置を示す図である。
【0029】
本実施形態の端子挿入装置1は、ツイストシールドケーブル2の内部電線21の端部に圧着接続されたコネクタ端子22を、コネクタハウジング3における端子収容室31に挿入するものである。また、本実施形態の端子挿入方法は、この端子挿入装置1を用いてコネクタ端子22を端子収容室31に挿入する方法である。
【0030】
ツイストシールドケーブル2は、多線ケーブルのうちの2線ケーブルの一例であり、撚り合わされた一対の内部電線21の周りをシールド編層23と最外被覆24で覆ったものである。このツイストシールドケーブル2の端部において、シールド編層23及び最外被覆24が除去されて一対の内部電線21が露出されている。更に、各内部電線21において被覆部分211が除去されて露出芯線212が形成された端部にコネクタ端子22が圧着接続されている。
【0031】
コネクタ端子22は、四角筒状の雌型端子であり、四角筒状の嵌合部221と、嵌合部221よりも後端側に位置する芯線圧着部222と、芯線圧着部222よりも更に後端側に位置する被覆圧着部223と、を有している。嵌合部221は、相手側端子と嵌合する部位であり、本実施形態では、この嵌合部221が、後述の端子収容室31への収容部分となっている。芯線圧着部222は、内部電線21の端部における露出芯線212に圧着される部位であり、被覆圧着部223は、露出芯線212に隣接する被覆部分211に圧着される円筒状の部位である。
【0032】
コネクタハウジング3は、概ね直方体形状の樹脂製の部材である。このコネクタハウジング3には、内部電線21と同数となる2つの端子収容室31が互いに平行に配列されて設けられている。各端子収容室31は、コネクタ端子22における四角筒状の嵌合部221を端子収容室31の軸311の回りに回転不能に収容するもので、嵌合部221よりも若干大きめの四角筒状に形成されている。また、このコネクタハウジング3には、各端子収容室31に連通して、各コネクタ端子22における端子先端22aの端子収容室31への進入を案内する四角溝状の案内レール32が設けられている。
【0033】
端子挿入装置1は、まず、内部電線21の端部にコネクタ端子22が圧着接続されたツイストシールドケーブル2を保持するケーブル保持部11を備えている。
【0034】
図2は、図1に示されているケーブル保持部を示す拡大図である。
【0035】
ケーブル保持部11は、ツイストシールドケーブル2において内部電線21が露出した端部から離れた位置の最外被覆24を保持する。このケーブル保持部11は、最外被覆24を保持することで、その内部の内部電線21を保持する電線保持部の役割を果たす。ケーブル保持部11は、ケーブルベース111と、ケーブル押圧部112と、押圧レバー113と、を備えている。ケーブルベース111の上面にはツイストシールドケーブル2が嵌め込まれるケーブル溝111aが形成されている。ケーブル溝111aにツイストシールドケーブル2が嵌め込まれた状態で押圧レバー113が矢印D11方向に押し下げられると、ケーブル押圧部112が矢印D12方向に降下してケーブルベース111との間にツイストシールドケーブル2を挟み込んで挟持する。
【0036】
本実施形態では、ケーブル保持部11は端子挿入装置1のフレーム1aに対して着脱自在に取り付けられる。ツイストシールドケーブル2は、端部において内部電線21が露出される前に、端子挿入装置1のフレーム1aから取り外されたケーブル保持部11に保持される。この状態で、ケーブル保持部11は、ツイストシールドケーブル2の端部処理装置に取り付けられる。この端部処理装置において、最外被覆24やシールド編層23の除去や、内部電線21の端部における被覆部分211の除去による露出芯線212の形成やコネクタ端子22の圧着接続が行われる。その後、ツイストシールドケーブル2を保持したままケーブル保持部11が、図1に示されている端子挿入装置1のフレーム1aに取り付けられる。
【0037】
端子挿入装置1は、このようなケーブル保持部11が保持するツイストシールドケーブル2における一対の内部電線21のコネクタ端子22を保持する端子側保持部12を備えている。ここで、後で詳述するが、本実施形態では、端子側保持部12は、コネクタ端子22における被覆圧着部223とここから延出した内部電線21を保持する。また、端子挿入装置1には、コネクタ端子22における芯線圧着部222を保持する圧着保持部13も設けられている。この圧着保持部13についても端子側保持部12と共に後で詳述する。
【0038】
そして、端子挿入装置1は、上記のコネクタハウジング3を保持して、コネクタ端子22へとコネクタハウジング3をスライド移動させてコネクタ端子22を端子収容室31に挿入するハウジング移動部14を備えている。
【0039】
上述したケーブル保持部11は、端子側保持部12から見てハウジング移動部14とは反対側の保持位置でツイストシールドケーブル2の最外被覆24を保持する。ケーブル保持部11による保持は、この端子挿入装置1での端子挿入処理が完了するまで維持される。
【0040】
ハウジング移動部14は、まず、端子側保持部12に保持されたコネクタ端子22の長手方向D13と端子収容室31の軸方向D14とが互いに一致するようにコネクタハウジング3を保持する。そして、ハウジング移動部14は、長手方向D13に沿った移動方向D15に、コネクタ端子22が端子収容室31に収容されるまでコネクタハウジング3をスライド移動させてコネクタ端子22の嵌合部221を端子収容室31に挿入する。
【0041】
このハウジング移動部14は、移動レール141と、保持ブロック142と、押えブロック143と、押え用アクチュエータ144と、移動完了確認ブロック145と、移動完了確認用アクチュエータ146と、を備えている。
【0042】
保持ブロック142は、移動レール141に移動方向D15にスライド移動自在に保持されている。この保持ブロック142には、上方が開放されてコネクタハウジング3における端子収容室31側が上方から嵌め込まれる凹みが設けられている。この凹みに嵌め込まれたコネクタハウジング3が、押え用アクチュエータ144で図中下方向に動かされた押えブロック143によって保持される。また、保持ブロック142には、作業者が把持するハンドル142aが設けられている。作業者は、押えブロック143と共にコネクタハウジング3を保持した保持ブロック142を、ハンドル142aを把持して移動方向D15に移動させてコネクタ端子22の嵌合部221の端子収容室31への挿入を行う。
【0043】
ここで、本実施形態では、図1中で左方へと保持ブロック142が動かされてコネクタ端子22の挿入が行われる。このとき、コネクタ端子22の嵌合部221の挿入が完了するまでは、保持ブロック142が移動完了確認ブロック145の上方に位置している。この状態では、移動完了確認用アクチュエータ146が移動完了確認ブロック145を上昇させようとしても移動完了確認ブロック145は上昇できない。嵌合部221の挿入が完了して保持ブロック142が十分に左方へと移動した段階で初めて移動完了確認ブロック145の上昇が可能となっている。本実施形態では、この移動完了確認ブロック145の上昇を以て、コネクタ端子22の嵌合部221の挿入が完了したことの確認が行われる。
【0044】
次に、端子側保持部12について詳細に説明する。この端子側保持部12は、立部材121と、立部材用アクチュエータ122と、一対のアーム部材123と、アーム用アクチュエータ124と、を備えている。端子側保持部12は、立部材121及び一対のアーム部材123の次のような動作によりコネクタ端子22を保持する。
【0045】
図3は、図1に示されている端子側保持部によるコネクタ端子の保持動作の第1段階を示す模式図であり、図4は、図1に示されている端子側保持部によるコネクタ端子の保持動作の第2段階を示す模式図である。また、図5は、図3及び図4に示されているコネクタ端子の保持動作を更に簡略化して示す模式図である。
【0046】
立部材121は、ベース121aと、四角柱状の柱状部121bと、立板121cと、を備えている。ベース121aが、図1に示されている立部材用アクチュエータ122に取付けらており、柱状部121bは、このベース121aに立設されている。柱状部121bの上面が、図1に示されている一対の端子収容室31の配列面P11と平行に延在する棚面121b−1となっている。立板121cは、この棚面121b−1に端子収容室31の軸方向D14と平行に立設されている。また、この立板121cは一対の端子収容室31の配列ピッチに応じた厚みの板であり、上部が先細りのテーパ形状となっている。以上に説明した立部材121が、立部材用アクチュエータ122により、立板121cの延在方向である、この端子挿入装置1における上下方向に進退自在に構成されている。
【0047】
一対のアーム部材123は、立部材121が上昇したときの立板121c及び柱状部121bを端子収容室31の配列方向D16に挟んで互いに接離自在に設けられている。一対のアーム部材123の接離は、図1に示されているアーム用アクチュエータ124による回動によって行われる。各アーム部材123には、立板121c及び柱状部121bの側を向く立面123aと、この立面123aから張り出した、上記の立部材121における棚面121b−1に対する対向面123bと、が設けられている。対向面123bは、アーム部材123の立板121cへの接近時に棚面121b−1と対向する。
【0048】
このように構成された端子側保持部12によるコネクタ端子22の保持動作について、図3図5を参照して説明する。
【0049】
この保持動作では、立部材121が矢印D17方向に上昇して、一対の内部電線21の相互間及び一対のコネクタ端子22の相互間に立板121cが進入する(ステップS11、ステップS12)。より詳細には、立板121cは、コネクタ端子22の被覆圧着部223から内部電線21に掛けての部分の相互間に進入する。このとき、立板121cの上部が先細りのテーパ形状となっているので、これらの相互間へと立板121cが進入し易くなっている。さらに、立部材121の上昇に合わせて、一対のアーム部材123が立部材121に向かって矢印D18方向に閉じる。これにより、各アーム部材123と立板121cとでコネクタ端子22の被覆圧着部223及びその後端から延出する内部電線21が挟持される。このときに、立部材121の棚面121b−1と各アーム部材123の対向面123bとが、間にコネクタ端子22の被覆圧着部223及び内部電線21を挟んで対向する。ただし、ステップS11及びステップS12の段階では、対向面123b及び棚面121b−1と、被覆圧着部223及び内部電線21と、の間には間隙が開いている。
【0050】
ここで、フレーム1aにケーブル保持部11が取り付けられた直後の状態では、多くの場合、図2に示されているように、一対の内部電線21のコネクタ端子22は、互いに異なる方向を向いてV字状に拡がった状態となっていることが多い。上記のステップS11及びステップS12によって、これら一対のコネクタ端子22が内部電線21と共に、互いに端子収容室31の配列方向D16に揃えられて保持される。更に、アーム部材123の立面123aによって押されてくるコネクタ端子22及び内部電線21を受け止める立板123cの、端子収容室31の配列方向D16の位置は、この配列方向D16における端子収容室31の位置と合致する位置となっている。また、立板121cは一対の端子収容室31の配列ピッチに応じた厚みの板であることから、一対のコネクタ端子22が、一対の端子収容室31の配列ピッチでその配列方向D16に並べられる。
【0051】
次に、立部材121が矢印D17方向に更に上昇して、立部材121の棚面121b−1と各アーム部材123の対向面123bとによって、コネクタ端子22の被覆圧着部223及び内部電線21が挟持される(ステップS13、ステップS14)。これにより、被覆圧着部223及び内部電線21は端子収容室31の配列面P11と直交する上下方向D19にも揃えられる。このとき、上昇した立部材121の棚面121b−1、及び、これと対向するアーム部材123の対向面123b、それぞれの上下方向D19の位置は、この上下方向D19における端子収容室31の位置と合致する位置となっている。これにより、端子側保持部12に保持されたコネクタ端子22の長手方向D13と端子収容室31の軸方向D14とが互いに一致することとなる。
【0052】
以上に説明したステップS11〜ステップS14までの一連の処理が、本実施形態の端子挿入方法における端子側保持工程に相当する。
【0053】
次に、図1に示されている圧着保持部13について詳細に説明する。端子側保持部12によって上記のように保持されたコネクタ端子22にについて、更に、各芯線圧着部222を上下方向に挟持して保持するものである。
【0054】
上述したように、本実施形態では、コネクタ端子22において端子側保持部12が保持している被覆圧着部223は円筒状に成形されている。このとき、端子側保持部12での上下左右からの被覆圧着部223の挟持により、端子収容室31や案内レール32に対する上下左右の位置合わせが完了している。他方、被覆圧着部223が円筒状であることから、四角筒状の嵌合部221の、軸221aの回りのローリングまでは抑制されていない。このため、四角筒状の端子収容室31や四角溝状の案内レール32への軸221aの回りの進入姿勢が、進入可能な姿勢からずれている可能性がある。ここで、本実施形態では、芯線圧着部222は、上下方向からの挟持により、嵌合部221における軸221aの回りのローリングを抑制可能な形状に成形されている。ここでは特定しないが、このような形状としては、嵌合部221と同様の四角筒形状や、嵌合部221における上下方向を厚み方向とした扁平形状等が挙げられる。圧着保持部13による保持は、この芯線圧着部222を上下方向から挟持することで、嵌合部221の軸221aの回りのローリングを抑制する。これにより、嵌合部221の、軸221aの回りの進入姿勢が、端子収容室31や案内レール32への進入可能な姿勢に姿勢決めされる。
【0055】
この圧着保持部13は、下部材131と、下部材用アクチュエータ132と、上部材133と、上部材用アクチュエータ134と、を備えている。圧着保持部13は、下部材131及び上部材133の次のような動作によりコネクタ端子22の芯線圧着部222を保持する。
【0056】
図6は、図1に示されている圧着保持部によるコネクタ端子の芯線圧着部に対する保持動作を示す模式図である。
【0057】
下部材131は、下部材用アクチュエータ132に固定されるベース131aと、このベース131aにおける端子側保持部12の側の端縁から上方に延出した上向き板131bと、を備えている。
【0058】
上部材133は、上部材用アクチュエータ134に固定されるベース133aと、このベース133aにおける端子側保持部12の側の端縁から下方に延出した下向き板133bと、を備えている。
【0059】
圧着保持部13による芯線圧着部222の保持動作では、下部材用アクチュエータ132によって下部材131が上昇方向D191に動かされ、上部材用アクチュエータ134によって上部材133が下降方向D192に動かされる(ステップS15)。やがて、上向き板131bの上縁が一対のコネクタ端子22の芯線圧着部222の下面に当接し、下向き板133bの下縁が一対のコネクタ端子22の芯線圧着部222の上面に当接する(ステップS16)。これにより、一対のコネクタ端子22の芯線圧着部222が上下方向D19に挟持されて保持される。このように芯線圧着部222を保持することでコネクタ端子22の嵌合部221の軸221aの回りのローリングが抑制されて姿勢決めが行なわれる。
【0060】
図1に示されている端子挿入装置1では、端子側保持部12及び圧着保持部13によってこのように保持された一対のコネクタ端子22に向かって、ハウジング移動部14によるコネクタハウジング3の次のような複数段階の移動が行われる。
【0061】
図7は、図1に示されているハウジング移動部によるコネクタハウジングの移動の第1段階を示す図であり、図8は、図7に示されているコネクタハウジングの移動を示す模式図である。
【0062】
ハウジング移動部14は、まず、コネクタハウジング3の案内レール32を、コネクタ端子22の嵌合部221へと向けて保持した状態からスタートする(ステップS17)。そして、ハウジング移動部14は、嵌合部221が案内レール32に進入するまでコネクタハウジング3をスライド移動させる(ステップS18)。本実施形態では、このスライド移動は、作業者が、ハンドル142aを把持してハウジング移動部14を、コネクタ端子22の挿入方向D151に移動させることで行われる。また、このときの移動は、案内レール32の先端が、圧着保持部13における下部材131の上向き板131b及び上部材133の下向き板133bに当接するまで行われる。このとき、圧着保持部13でのコネクタ端子22の芯線圧着部222の保持により、四角筒状の嵌合部221の軸221aの回りのローリングが抑制されている。これにより、四角溝状の案内レール32への進入がスムーズに行われることとなっている。
【0063】
図9は、図1に示されているハウジング移動部によるコネクタハウジングの移動の第2段階を示す図であり、図10は、図9に示されているコネクタハウジングの移動を示す模式図である。
【0064】
第2段階では、圧着保持部13の、上述した保持位置から、コネクタ端子22の芯線圧着部222を解放しつつコネクタハウジング3の更なるスライド移動を妨げない位置までの退避動作が行われる(ステップS19)。この退避動作では、下部材131が下降方向D193に動かされ、上部材133が上昇方向D194に動かされる。また、このステップS19では、図10に示されているように、端子側保持部12における一対のアーム部材123の退避も行われる。一対のアーム部材123は、立板121cから離隔する矢印D20方向に開かれる。このアーム部材123の退避により一対のコネクタ端子22及び内部電線21に対する端子側保持部12による拘束も解除される。しかしながら、このステップS19の段階ではコネクタ端子22の多くの部分が案内レール32に進入した状態となっているので、今度は案内レール32による拘束を受けることとなり、コネクタ端子22や内部電線21の動きが抑えられる。
【0065】
圧着保持部13及びアーム部材123の退避後に、ハウジング移動部14は、コネクタハウジング3の挿入方向D151へのスライド移動を再開する(ステップS20)。このときの移動は、案内レール32の先端が、端子側保持部12における立部材121に当接するまで行われる。そして、このステップS20でのコネクタハウジング3のスライド移動により、コネクタ端子22の端子先端22aが案内レール32に案内されて端子収容室31に進入する。
【0066】
図11は、図1に示されているハウジング移動部によるコネクタハウジングの移動の第3段階を示す図であり、図12は、図11に示されているコネクタハウジングの移動を示す模式図である。
【0067】
第3段階では、立部材121が上昇位置にあって一対のコネクタ端子22の相互間に進入していた立板121cが矢印D22方向に下降してコネクタ端子22の相互間から抜ける(ステップS21)。この動きにより、端子側保持部12は、その構成要素の全てが、コネクタハウジング3の更なるスライド移動を妨げない位置まで退避することとなる。
【0068】
そして、端子側保持部12の退避後に、ハウジング移動部14が挿入方向D151に動かされて、コネクタ端子22における収容部分としての嵌合部221の収容が完了するまで更にコネクタハウジング3をスライド移動させる(ステップS22)。このとき、上述したようにケーブル保持部11によるツイストシールドケーブル2の最外被覆24の保持、即ち、内部電線21の保持は維持されている。このため、ステップS22の処理は、このケーブル保持部11によって内部電線21が保持された状態で行われる。
【0069】
ここで、本実施形態では、上述したように、コネクタ端子22の嵌合部221の挿入が完了したことの確認を行うための移動完了確認ブロック145が設けられている。移動完了確認ブロック145は、嵌合部221の挿入が完了するまでハウジング移動部14が挿入方向D151に移動すると上昇が可能となるように設けられている。ステップS22では、ハウジング移動部14の移動終了後、即ち、嵌合部221の挿入の完了後に、移動完了確認ブロック145が上昇方向D23に動かされる。この移動完了確認ブロック145の上昇を以て、コネクタ端子22の嵌合部221の挿入が完了したことの確認が行われる。
【0070】
移動完了確認ブロック145の上昇による挿入完了確認が終わると、その後に、コネクタハウジング3に一対のコネクタ端子22を抜け止めされた状態で安定的に拘束するリテーナ4がコネクタハウジング3に取り付けられる。
【0071】
図13は、図7図12に示されているコネクタ端子のコネクタハウジングへの一連の取付け作業を簡略化して示す模式図である。
【0072】
まず、第1段階としてのステップS17及びステップS18の作業により、コネクタハウジング3の案内レール32の先端が、圧着保持部13に当接するまでハウジング移動部14によってコネクタハウジング3が移動方向D151に動かされる。これにより、コネクタ端子22の嵌合部221が案内レール32に進入する。次に、第2段階としてのステップS19及びステップS20の作業により、圧着保持部13及び端子側保持部12における一対のアーム部材123の退避と、コネクタハウジング3の更なる移動方向D151への移動が行われる。この移動は、案内レール32の先端が端子側保持部12における立部材121に当接するまで行われ、これにより、コネクタ端子22の端子先端22aがコネクタハウジング3の端子収容室31に進入する。そして、第3段階としてのステップS21及びステップS22の作業により、端子側保持部12における立部材121の退避と、コネクタハウジング3の更なる移動方向D151への移動が行われる。この移動は、コネクタ端子22の収容部分としての嵌合部221が端子収容室31に完全に収容されるまで行われる。その後に、コネクタ端子22にリテーナ4が取り付けられる。最後に、コネクタハウジング3がハウジング移動部14から取り外されて、この一連の取付け作業が終了する。
【0073】
以上に説明したステップS17〜ステップS22までの一連の処理が、本実施形態の端子挿入方法におけるハウジング移動工程に相当する。
【0074】
以上に説明した端子挿入装置1及び端子挿入方法によれば、コネクタ端子22の嵌合部221の端子収容室31への収容は、ハウジング移動部14によるコネクタハウジング3のスライド移動で行われる。つまり、収容の際にコネクタ端子22を動かす必要がなく、コネクタハウジング3の近傍における端子挿入時のコネクタ端子22の自由な取り回しのための内部電線21の余長も略不要となる。
【0075】
また、本実施形態の端子挿入装置1及び端子挿入方法によれば、端子側保持部12とハウジング移動部14とが設けられており、端子側保持部12による保持位置と、ハウジング移動部によるスライド移動14の移動先の位置と、を個別に高精度に管理することができる。そして、このような高精度での管理によりコネクタ端子22をコネクタハウジング3の端子収容室31に不完全挿入の発生を抑えて挿入することができる。本実施形態では、コネクタ端子22が完全に端子収容室31に挿入される位置までコネクタハウジング3のスライド移動が完了したことの確認が、移動完了確認ブロック145の上昇確認によって行われている。
【0076】
このように、本実施形態の端子挿入装置1及び端子挿入方法によれば、内部電線21の余長を抑制しつつ、その端部に圧着接続されたコネクタ端子22をコネクタハウジング3の端子収容室31に挿入することができる。その結果、ツイストシールドケーブル2においてシールド編層23と最外被覆24を除去して露出させる内部電線21を短くできるので、シールド効果の低減を抑制することができる。つまり、本実施形態の端子挿入装置1及び端子挿入方法は、このようにシールド効果の低減を抑制させる場合に特に有効である。また、本実施形態の端子挿入装置1及び端子挿入方法によれば、コネクタハウジング3を移動させるので、コネクタ端子22の挿入時に、コネクタ端子22の側に振動等が生じることがほとんどない。このため、コネクタ端子22が小さく寸法公差が厳しい場合でも振動にてコネクタ端子22にブレが生じないため、コネクタハウジング3の端子収容室31の入り口への衝突を抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態の端子挿入装置1及び端子挿入方法では、コネクタ端子22の嵌合部221を端子収容室31に完全に収容するには、端子側保持部12がコネクタ端子22を保持したままではコネクタハウジング3のスライド移動の邪魔になる。嵌合部221の収容を完了するには、端子側保持部12を何れかの時点でスライド移動を妨げない位置まで退避させる必要がある。本実施形態の端子挿入装置1及び端子挿入方法によれば、端子先端22aが端子収容室31に進入することで端子収容室31の軸311の回りにコネクタ端子22の進入姿勢が安定するまでコネクタ端子22が端子側保持部12によって保持される。そして、その後に端子側保持部12の退避が行われる。その後は、ケーブル保持部11によって内部電線21が保持された状態で、端子側保持部12に妨げられることなくコネクタハウジング3の更なるスライド移動が行われる。これにより、コネクタハウジング3のスライド移動を、コネクタ端子22の進入姿勢が安定した状態でスムーズに行って収容を完了させることができる。
【0078】
また、本実施形態の端子挿入装置1及び端子挿入方法では、端子先端22aの端子収容室31への進入がコネクタハウジング3の案内レール32によってスムーズに行われる。このとき、その案内レール32への嵌合部221の進入も、芯線圧着部222の保持により嵌合部221が軸221aの回りに姿勢決めされてローリングが抑制された状態で行われる。このような端子挿入装置1及び端子挿入方法によれば、案内レール32への嵌合部221の進入から端子先端22aの端子収容室31への進入まで、一連のコネクタハウジング3のスライド移動を、コネクタ端子22の進入姿勢が安定した状態でスムーズに行うことができる。
【0079】
また、本実施形態の端子挿入装置1及び端子挿入方法によれば、ツイストシールドケーブル2において、何もしなければ互いに異なる方向を向きがちな一対の内部電線21のコネクタ端子22が、端子側保持部12によって互いに平行に揃えられる。これにより、これら一対の内部電線21のコネクタ端子22の端子先端22aを、コネクタハウジング3の端子収容室31に、同時かつスムーズに挿入することができる。
【0080】
そして、本実施形態の端子挿入装置1及び端子挿入方法によれば、一対の内部電線21のコネクタ端子22を、立板121cと一対のアーム部材123とによる挟持と、棚面121b−1と対向面123bとによる挟持と、で高い精度で互いに平行に揃えて保持することができる。これにより、その後のコネクタハウジング3のスライド移動によるコネクタ端子22の端子先端22aの、端子収容室31への挿入をスムーズに行うことができる。
【0081】
尚、以上に説明した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の端子挿入装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0082】
例えば、上述した実施形態では、本発明にいう電線の一例として、このツイストシールドケーブル2の一対の内部電線21が例示されている。しかしながら、本発明にいう電線は、これに限るものではない。本発明にいう電線は、端部にコネクタ端子が圧着接続されたものであれば、本数や撚りやシールドの有無等といった具体的な態様を問うものではない。
【0083】
また、上述した実施形態では、本発明にいうコネクタハウジングの一例として、コネクタ端子22の嵌合部221が収容される端子収容室31が一対設けられたコネクタハウジング3が例示されている。しかしながら、本発明にいうコネクタハウジングはこれに限るものではない。本発明にいうコネクタハウジングは、例えば嵌合部を含むコネクタ端子の全体や一部が収容される端子収容室が設けられたもの等であってもよく、また、その端子収容室の数についても、挿入対象のコネクタ端子の数以上であれば任意に設定し得る。
【0084】
また、上述した実施形態では、本発明にいう端子挿入装置や端子挿入方法の一例として、コネクタ端子22の芯線圧着部222を保持する圧着保持部13を備えた端子挿入装置1や、このような端子挿入装置1で行われる端子挿入方法が例示されている。しかしながら、本発明にいう端子挿入装置や端子挿入方法はこれに限るものではなく、コネクタ端子の保持構造として圧着保持部は備えず端子圧着部のみを備えた装置や、そのような装置で行われる方法等であってもよい。ただし、圧着保持部を備えることでコネクタ端子のローリングを抑制してコネクタ端子の挿入を一層スムーズに行えることは上述した通りである。
【0085】
また、上述した実施形態では、本発明にいう端子挿入装置や端子挿入方法の一例として、ハウジング移動部14の移動等といった作業工程の一部が作業者のハンドル操作等によって行われる端子挿入装置1が例示されている。しかしながら、本発明にいう端子挿入装置や端子挿入方法はこれに限るものではなく、全作業工程が自動で行われる装置や、そのような装置で行われる方法等であってもよい。
【0086】
また、上述した実施形態では、本発明にいうハウジング移動部やハウジング移動工程の一例として、まず第1段階での移動でコネクタ端子22の嵌合部221をコネクタハウジング3の案内レール32へと進入させるハウジング移動部14やハウジング移動工程が例示されている。この段階では、案内レール32が圧着保持部13に当接した状態で、コネクタ端子22の端子先端22aは未だ端子収容室31の手前に位置している。端子先端22aの端子収容室31への進入は、この後の第2段階でのコネクタハウジング3の移動により達成される。しかしながら、本発明にいうハウジング移動部やハウジング移動工程はこれに限るものではない。本発明にいうハウジング移動部やハウジング移動工程は、例えば上述した第1段階での移動により、コネクタ端子の端子先端を端子収容室へと一気に進入させるもの等であってもよい。
【0087】
また、上述した実施形態では、本発明にいう端子側保持部や端子側保持工程の一例として、内部電線21とコネクタ端子22の両方を保持する端子側保持部12や端子側保持工程が例示されている。しかしながら、本発明にいう端子側保持部や端子側保持工程は、これに限るものではなく、例えば電線のみを保持するものであってもよく、あるいはコネクタ端子のみを保持するもの等であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 端子挿入装置
2 ツイストシールドケーブル
3 コネクタハウジング
4 リテーナ
11 ケーブル保持部
12 端子側保持部
13 圧着保持部
14 ハウジング移動部
21 内部電線
22 コネクタ端子
31 端子収容室
32 案内レール
121 立部材
121a ベース
121b 柱状部
121b−1 棚面
121c 立板
122 立部材用アクチュエータ
123 アーム部材
123a 立面
123b 対向面
124 アーム用アクチュエータ
131 下部材
132 下部材用アクチュエータ
133 上部材
134 上部材用アクチュエータ
141 移動レール
142 保持ブロック
143 押えブロック
144 押え用アクチュエータ
145 移動完了確認ブロック
146 移動完了確認用アクチュエータ
211 被覆部分
212 露出芯線
221 嵌合部(収容部分)
222 芯線圧着部
223 被覆圧着部
311 軸
D13 長手方向
D14 軸方向
D15 移動方向
D16 配列方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13