特許第6585120号(P6585120)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6585120透明材料の内部でレーザーフィラメンテーションを実行するシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585120
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】透明材料の内部でレーザーフィラメンテーションを実行するシステム
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/53 20140101AFI20190919BHJP
   B23K 26/55 20140101ALI20190919BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20190919BHJP
   C03B 33/09 20060101ALI20190919BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20190919BHJP
【FI】
   B23K26/53
   B23K26/55
   H01L21/78 B
   C03B33/09
   B23K26/064 Z
【請求項の数】19
【全頁数】65
(21)【出願番号】特願2017-108510(P2017-108510)
(22)【出願日】2017年5月31日
(62)【分割の表示】特願2014-156274(P2014-156274)の分割
【原出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2017-213603(P2017-213603A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2017年5月31日
(31)【優先権主張番号】61/861,880
(32)【優先日】2013年8月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514324830
【氏名又は名称】ロフィン−シナール テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100111372
【弁理士】
【氏名又は名称】津野 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100186495
【弁理士】
【氏名又は名称】平林 岳治
(72)【発明者】
【氏名】エス. アッバス ホッセイニ
【審査官】 岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/108503(WO,A1)
【文献】 特表2011−517299(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/108054(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/065450(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
H01L 21/301
C03B 33/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料をレーザーで加工するシステムであって、
超高速レーザーパルスのバーストを有するレーザービームを提供するレーザー源と、前記レーザービームの長手方向軸に沿って分散状態で前記レーザービームを集束する1または複数の光学成分と、前記材料内に密接に配置されたフィラメント誘起により改質するアレイを形成するために集束された前記レーザービームを横方向に移動する手段とを含み、
前記材料が、前記レーザービームに対して透明であり、
前記1または複数の光学成分が、集束された前記レーザービーム内に収差を誘起するように構成され、
前記レーザービームが、前記材料内に連続的なフィラメントを形成するために前記材料内に十分なエネルギー密度を有し、
前記フィラメントに沿って堆積したレーザーエネルギーが、前記材料の内部を改質させ、
前記材料の改質させた内部が、前記連続的なフィラメントによって定められる形状を有し、
前記各バースト内の超高速レーザーパルスが、すべての材料改質力学の緩和のための時間尺度よりも短い相対遅延を有している、材料をレーザーで加工するシステム。
【請求項2】
前記1または複数の光学成分が、前記レーザービーム内で球面収差を誘起する請求項1記載の材料をレーザーで加工するシステム。
【請求項3】
前記1または複数の光学成分が、視野補正走査レンズおよび補正窓である請求項1記載の材料をレーザーで加工するシステム。
【請求項4】
前記1または複数の光学成分が、テレセントリックレンズおよび非球面プレートである請求項1記載の材料をレーザーで加工するシステム。
【請求項5】
改質された前記材料が、圧縮される請求項1記載の材料をレーザーで加工するシステム。
【請求項6】
前記材料の改質された内部が、空洞である請求項1記載の材料をレーザーで加工するシステム。
【請求項7】
前記材料の改質された内部が、欠陥、色中心、応力、微細流路、微細空孔、および微細亀裂の1つである請求項1記載の材料をレーザーで加工するシステム。
【請求項8】
前記材料の改質された内部が、前記材料の上面および底面にレーザーアブレーションの損傷を与えることなく形成される請求項1記載の材料をレーザーで加工するシステム。
【請求項9】
前記超高速レーザーパルスが、100ピコ秒未満のパルス幅を有する請求項1記載の材料をレーザーで加工するシステム。
【請求項10】
前記超高速レーザーパルスが、25ピコ秒未満のパルス幅を有する請求項1記載の材料をレーザーで加工するシステム。
【請求項11】
集束された前記レーザービームが、前記材料の下方に配置されたウエストを有する請求項1記載の材料をレーザーで加工するシステム。
【請求項12】
集束された前記レーザービームが、前記材料の上方に配置されたウエストを有する請求項1記載の材料をレーザーで加工するシステム。
【請求項13】
前記アレイに沿って前記材料をクリーブする手段をさらに含む請求項1記載の材料をレーザーで加工するシステム。
【請求項14】
前記材料をクリーブする手段が、追加のレーザー加工、加熱、冷却、および機械的圧力の1つによって、前記材料を分離する請求項13記載の材料をレーザーで加工するシステム。
【請求項15】
材料をレーザーで加工するシステムであって、
超高速レーザーパルスのバーストを有するレーザービームを提供するレーザー源と、前記レーザービームの長手方向軸に沿って分散状態で前記レーザービームを集束する1または複数の光学成分と、前記材料内に密接に配置されたフィラメント誘起により改質するアレイを形成するために集束された前記レーザービームを横方向に移動する手段とを含み、
前記材料が、前記レーザービームに対して透明であり、
前記1または複数の光学成分が、集束された前記レーザービーム内に収差を誘起するように構成され、
前記レーザービームが、前記材料内に連続的なフィラメントを形成するために前記材料内に十分なエネルギー密度を有し、
前記フィラメントに沿って堆積したレーザーエネルギーが、前記材料の内部を改質させ、
前記材料の改質させた内部が、前記連続的なフィラメントによって定められる形状を有し、
前記アレイに沿って前記材料をクリーブする手段をさらに含み、
前記クリーブされた材料のエッジ粗さが、前記改質の重複の程度または分離間隔を選択することによって制御される、材料をレーザーで加工するシステム。
【請求項16】
材料をレーザーで加工するシステムであって、
超高速レーザーパルスのバーストを有するレーザービームを提供するレーザー源と、前記レーザービームの長手方向軸に沿って分散状態で前記レーザービームを集束する1または複数の光学成分と、前記材料内に密接に配置されたフィラメント誘起により改質するアレイを形成するために集束された前記レーザービームを横方向に移動する手段とを含み、
前記材料が、前記レーザービームに対して透明であり、
前記1または複数の光学成分が、集束された前記レーザービーム内に収差を誘起するように構成され、
前記レーザービームが、前記材料内に連続的なフィラメントを形成するために前記材料内に十分なエネルギー密度を有し、
前記フィラメントに沿って堆積したレーザーエネルギーが、前記材料の内部を改質させ、
前記材料の改質させた内部が、前記連続的なフィラメントによって定められる形状を有し、
前記アレイに沿って前記材料をクリーブする手段をさらに含み、
前記クリーブされた表面のRMS粗さが、10μm未満である、材料をレーザーで加工するシステム。
【請求項17】
前記連続的なフィラメントが、1mmを超える長さを有する請求項1記載の材料をレーザーで加工するシステム。
【請求項18】
集束された前記レーザービームが、前記連続的なフィラメントの長さに沿って、均等なエネルギー分散を有する請求項1記載の材料をレーザーで加工するシステム。
【請求項19】
前記連続的なフィラメントのアレイを光学的に監視するために配置され、構成された1または複数の撮像装置と、
前記連続的なフィラメントの形成中に発せられる光学的放射を検出する1または複数の撮像装置と、をさらに含み、
フィラメントの深さ、サイズ、位置、および忠実度のうちの1つまたは複数に応じて、後続する連続的なフィラメントの形成を能動的に制御する請求項1記載の材料をレーザーで加工するシステム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2013年8月2日に出願された米国仮特許出願第61861880号の優先権および利益を主張する。
2013年8月2日に出願された米国仮特許出願第61861880号の全体を本明細書で引用して援用する。
【0002】
本発明は、透明材料内でのレーザーフィラメンテーションの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
本開示は、材料のレーザー処理のためのシステムおよび方法に関する。
より詳細には、本開示は、前記材料に作成された不活性または活性の電子装置または電気装置を含むウエハ、基板、およびプレートのシンギュレーション(singulation)および/またはクリービング(cleaving)のためのシステムおよび方法に関する。
【0004】
現在の製造では、ウエハまたはガラスパネルのシンギュレーション、ダイシング、スクライビング(scribing)、クリービング、切削、およびファセット処理は重要な加工ステップであり、典型的にはダイヤモンドまたは従来型のアブレーションまたはブレイクダウン(ステルス)レーザースクライビングおよび切削に依存する。加工速度は、LED、LED装置(照明装置など)、および被照射装置(LEDディスプレイなど)等で最大30cm/秒である。
【0005】
ダイヤモンド切削工程では、ダイヤモンド切削を実行した後、機械的なローラが応力を適用して、試料を割裂させる亀裂を伝搬させる。
この工程では、製品の寿命、効率、品質、および信頼性の点で大きな欠点である低品質なエッジ、微小亀裂、広いカーフ幅、および大量のデブリが生じる一方、追加のクリーニング手順および研磨手順が必要になる。
ダイヤモンドスクライバを動かすための脱イオン水のコストは、サブスクライバを所有するコストを上回り、また水が汚れて精製が必要となり、それが生産コストをさらに上昇させるため、最終的には好都合な手法ではない。
【0006】
レーザーアブレーション加工は、ダイヤモンド切削に関連する制限のいくつかを克服するシンギュレーション、ダイシング、スクライビング、クリービング、切削、およびファセット処理のために開発された。
残念ながら、既知のレーザー加工方法は、特に透明材料において欠点を有する。たとえば、加工速度が遅い、亀裂が生じる、アブレーションデブリにより汚れが生じる、カーフ幅が抑制される等の欠点である。
さらに、レーザー相互作用時の熱輸送(thermal transport)により、付随的な熱損傷(すなわち、熱影響部(heat affected zone))が広い領域に生じる可能性がある。
【0007】
レーザーアブレーション工程は、媒体により強力に吸収される波長を有するレーザー(たとえば、深UVエキシマレーザーまたは遠赤外線COレーザー)を選択することによって改善できる。
しかし、この物理的なアブレーション工程に固有の積極的な相互作用により、上記欠点を克服することはできない。
このことは、特定のLED用途でUV加工が失敗することにより十分に説明される。これにより、業界は、利用する回避技術に応じて、従来のスクライビングおよび破壊の後に、エッチングによりアブレーションスクライビングまたはダイヤモンドスクライビングツールで残った損傷部を除去することに注目するようになった。
【0008】
代替で、レーザーパルスの持続時間を減らすことにより、透明媒体の表面でのレーザーアブレーションを改善することもできる。
これは、加工媒体の内部で透明であるレーザーにとって特に有利である。
透明材料の上または内部に集束させた場合、レーザー強度が高いと、非線形吸収効果が誘起されて動的な不透明度が生じる。この不透明度を制御して、フォーカルボリューム(focal volume)により画定される少量の材料に適したレーザーエネルギーを正確に沈積させることができる。
パルスの持続時間が短いと、パルスの持続時間が長い場合に比べて、さらなる利点がある。たとえば、レーザーパルスの短い時間尺度における熱拡散やその他の熱輸送効果の成分が小さいことにより、プラズマが作成されなくなってプラズマ反射がなくなり、付帯的損害が減少する。
【0009】
したがって、フェムト秒およびピコ秒のレーザーアブレーションは、不透明材料と透明材料の両方で大きな利点をもたらす。
しかし、通常、数十〜数百フェムト秒程度の短いパルスで透明材料を加工した場合でも、表面が粗くなったり、スループットが低速化したり、レーザーにより形成されたカーフ、穴、または溝の周辺で極小亀裂が生じたりする。これは、アルミナ(Al)、ガラス、ドープ誘電体、光学結晶等の脆弱な材料にとって特に問題である。
さらに、アブレーションデブリにより、近くの試料ならびに周囲の装置および表面が汚れる。
最近、ファイバレーザーアプローチを利用する多重パスフェムト秒切削(multi−pass femtosecond cutting)が日本で議論されている。
このアプローチには、複数のパスを作成する必要があり、よって加工のスループットが低下するという問題がある。
【0010】
レーザー加工はダイヤモンド切削に関連する制限の多くを克服してきたが、上述したように、新たな材料組成により、ウエハやパネルをレーザーでスクライビングすることができなくなった。
さらに、ウエハ上の装置およびダイスのサイズがますます小さく、ますます近接するようになっており、それによってダイヤモンドスクライビングおよび伝統的なレーザーベースのスクライビングの利用が制限されている。
たとえば、それらの伝統的な方法にとって、30μmは実行可能なスクライビング幅だが、15μmは難しい。
さらに、ダイヤモンドスクライビングでは機械的な力を使用して基板をスクライビングするため、薄い試料をスクライビングするのはきわめて難しい。
ウエハベースの装置の製作で新奇および複雑な積層材料がますます使用されているため、以前に適用されていたレーザースクライビング手法は、積層の不透明さに起因して単純に使用できなくなる。
【発明の概要】
【0011】
透明材料に連続的なレーザーフィラメントを形成するシステムおよび方法について説明する。
超高速レーザーパルスのバーストを、ビームウエストが加工対象の材料の外部に形成されるように集束する。このとき、主焦点が材料の内部に形成されないようにしつつ、材料内で光学破壊を生じさせることなく連続的なフィラメントの形成をサポートするために十分なエネルギー密度が材料の内部の拡張された領域内に形成されるようにする。
この方法で形成されたフィラメントは、最大10mmを超える長さで改質領域の長さに1:1で対応し(フィラメントは改質の主体であり、したがって改質領域はフィラメントの長さを1:1で追跡する)、断面が長軸に沿って先細りしない形状を備え得る。
一部の実施形態では、無補正または収差のある光学集束要素を利用して、外部ビームウエストを生成しつつ、入射ビームを材料の内部で分散集束させる。
クリービング/シンギュレーションおよび/またはマーキングのために透明基板の内部でのフィラメントアレイの形成を促進するさまざまなシステムが説明される。
フィラメントの光学監視を利用して、工程の能動制御を促進するフィードバックを提供できる。
【0012】
よって、第1の態様では、透明材料をレーザー加工する方法であって、
レーザーパルスのバーストを含むレーザービームを提供するステップと、
前記レーザービームを透明材料に対して外的に集束させて、外部プラズマチャネルの形成を回避しつつ透明材料の外部の場所にビームウエストを形成するステップと
を含み、レーザーパルスが、光学破壊を生じさせることなく、透明材料内に連続的なレーザーフィラメントを形成するだけの十分なエネルギー密度が透明材料の内部で維持されるように集束される方法を提供する。
【0013】
別の態様では、透明材料を加工する方法であって、
それぞれが複数のパルスを含む複数のバーストを有するレーザービームを提供するステップと、
レーザービームの最初のウエストを透明材料の外部で生成するステップと、
透明材料の内部に分散した弱集束のレーザービームを生成するステップと、
空間的に拡張され、かつ空間的に同質なフィラメントを透明材料の内部に作成するステップと
を含む方法が提供される。
【0014】
別の態様では、内部または表面に金属層が形成された透明材料を、フィラメント形成レーザービームで加工する方法であって、
透明材料の内部に連続的なレーザーフィラメントを形成する前に、
金属層をアブレーションするのに十分な出力を維持しつつフィラメント形成レーザービームの出力を透明材料の内部でのフィラメント形成のしきい値よりも低く下げることにより、レーザーパルスのバーストを含む低出力レーザービームを提供するステップと、金属層がレーザービームにより局所的にアブレーションされて金属層の内部に1または複数のアブレーションマークが作成されるように、金属層に低出力レーザービームを1または複数の位置で照射するステップとを含む方法が提供される。
【0015】
別の態様では、約1mmを超える長さの連続的なレーザーフィラメントが内部に形成された透明材料が提供される。
【0016】
別の態様では、クリービング後またはシンギュレーション後の破壊強度が約50MPaを超える透明基板が提供される。
【0017】
別の態様では、透明材料をレーザー加工するシステムであって、
レーザーパルスのバーストを含むレーザービームを提供するように構成されたレーザー源と、
レーザービームを透明材料に対して外的に集束して、外部プラズマチャネルおよび内部プラズマセンターの形成を回避しつつ透明材料の外部の位置にビームウエストを形成するように構成された1または複数の集束要素であって、レーザービームおよび1または複数の集束要素が光学破壊を生じさせることなく透明材料の内部に連続的なレーザーフィラメントを形成するための十分なエネルギー密度を透明材料の内部で生成するように構成された集束要素と、
レーザービームと透明材料との間の相対的な位置を変更する手段と、
レーザービームと透明材料との間の相対的な位置を変更する前記手段に動作可能に連結され、透明材料の内部に連続的なレーザーフィラメントのアレイを形成するようにレーザービームと透明材料との間の相対的な位置を制御するように構成された制御加工装置と
を含むシステムが提供される。
【0018】
本開示の機能的な態様および有利な態様のさらなる理解は、以下の詳細な説明および図面を参照することにより実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示の実施形態について、添付の図面を参照しながら、あくまでも例として以下に説明する。
【0020】
図1(a)】フィラメントの形成のための光学構成を示す図であって、材料の内部でのビームウエストの形成を含む、既知の方法を使用したフィラメントの形成を示す図である。
図1(b)】フィラメント形成のための光学構成を示す図であって、材料の内部でのビームウエストの形成を含む、既知の方法を使用したフィラメントの形成を示す図である。
図1(c)】所望のフィラメント領域に渡されるエネルギーの量を調整するために、ビームエネルギーを対象材料の上方および/または下方の焦点に「ダンプする」(それによって「光学リザーバ(optical reservoir)」を形成する)ように集束させることによって長い同質なフィラメントを形成する実施形態を示す図である。
図1(d)】所望のフィラメント領域に渡されるエネルギーの量を調整するために、ビームエネルギーを対象材料の上方および/または下方の焦点に「ダンプする」(それによって「光学リザーバ(optical reservoir)」を形成する)ように集束させることによって長い同質なフィラメントを形成する実施形態を示す図である。
図1(e)】所望のフィラメント領域に渡されるエネルギーの量を調整するために、ビームエネルギーを対象材料の上方および/または下方の焦点に「ダンプする」(それによって「光学リザーバ(optical reservoir)」を形成する)ように集束させることによって長い同質なフィラメントを形成する実施形態を示す図である。
図1(f)】本明細書で開示される方法により形成されたフィラメントの例示的な画像であり、同質かつ連続的な形状を有する空間的に拡張されたフィラメントの形成を示している。ここで、材料内のフィラメントの深さおよび位置は、ビーム焦点の相対位置によって決まる(各フィラメントは、25ミクロンの垂直オフセットに対応する)。
図1(g)】ステルスダイシング方法とフィラメンテーション加工方法との違いを示すガラス試料の顕微鏡画像である。
図2(a)】数ミリメートルから数十ミリメートルの規模の長いフィラメント領域を示す図である。
図2(b)】ビームが中間層を損傷させずに通過できることを示す図である。
図3】スキャナを利用した例示的なレンズ構成を示す図である。従来型の走査レンズ(たとえば、テレセントリック等)が利用されると共に、非球面プレートがスキャナの前または後に配置される。この実施形態により、湾曲したパスの加工における協調動作および一貫した速度が実現する。
図4】非球面レンズを配置せずに特殊なスキャンレンズ(テレセントリックまたは非テレセントリック)を利用した、図3に示す実施形態に類似する例示的な実施形態を示す図である。
図5(a)】例示的なバーストパルス縦列の特徴を示す図である。一部の実施形態では、サブパルスとバーストパケットとの間の間隔を制御し、それによってバーストパルス縦列のパルスの数を制御できる。
図5(b)】例示的なバーストパルス縦列の特徴を示す図である。一部の実施形態では、サブパルスとバーストパケットとの間の間隔を制御し、それによってバーストパルス縦列のパルスの数を制御できる。
図5(c)】例示的なバーストパルス縦列の特徴を示す図である。一部の実施形態では、サブパルスとバーストパケットとの間の間隔を制御し、それによってバーストパルス縦列のパルスの数を制御できる。
図5(d)】例示的なバーストパルス縦列の特徴を示す図である。一部の実施形態では、サブパルスとバーストパケットとの間の間隔を制御し、それによってバーストパルス縦列のパルスの数を制御できる。
図5(e)】例示的なバーストパルス縦列の特徴を示す図である。一部の実施形態では、サブパルスとバーストパケットとの間の間隔を制御し、それによってバーストパルス縦列のパルスの数を制御できる。
図6】本明細書で開示される方法で、対象材料上のパスをトレースして所望の形状を生成することにより形成される湾曲したエッジおよび形状を有する部品を作成できることを示す図である。システム構成要素の適切な選択により、フィラメントの位置および向きの任意制御を実現できる。
図7(a)】本明細書で開示される方法を実行する例示的な装置の概略配置を示す図である。このシステムは、ステージと、スキャナと、レンズアレイと、サーボ制御のXYZ位置決め装置とを含む。
図7(b)】例示的な制御加工システムのブロック図である。
図8(a)】例示的な実施形態における被加工部品に対する軸の関係を示す図であり、幅広い基板形状を加工するために装置が非テレセントリックレンズを使用してどのように制御され得るかを示している。
図8(b)】例示的な実施形態における被加工部品に対する軸の関係を示す図であり、幅広い基板形状を加工するために装置がテレセントリックレンズを使用してどのように制御され得るかを示している。
図8(c)】加工対象の材料を支持するステージが回転して角度のついたフィラメントを作成する例示的な実施形態を示す図である。
図9】本明細書で開示される方法を使用して部品を作成する例示的なシステムを示す図である。そのような実施形態は、実質的に透明な媒体を高いエッジ品質および速度でシンギュレーションするために利用され得る。
図10(a)】角度のついたフィラメントクリーブ面を作成するために、本明細書に記載された装置を非直交(すなわち、対象面に対して90°未満または90°超)で位置決めするθステージを使用した例示的な実施形態を示す。このような実施形態により、エッジが表面に対して垂直ではない部品(面取り部品等)を製造できる。たとえば、θステージを使用すると、円形のパスをトレースして、エッジに角度がついた切欠きを有する部品を製造できる。
図10(b)】角度のついたフィラメントクリーブ面を作成するために、本明細書に記載された装置を非直交(すなわち、対象面に対して90°未満または90°超)で位置決めするθステージを使用した例示的な実施形態を示す。このような実施形態により、エッジが表面に対して垂直ではない部品(面取り部品等)を製造できる。たとえば、θステージを使用すると、円形のパスをトレースして、エッジに角度がついた切欠きを有する部品を製造できる。
図10(c)】角度のついたフィラメントクリーブ面を作成するために、本明細書に記載された装置を非直交(すなわち、対象面に対して90°未満または90°超)で位置決めするθステージを使用した例示的な実施形態を示す。このような実施形態により、エッジが表面に対して垂直ではない部品(面取り部品等)を製造できる。たとえば、θステージを使用すると、円形のパスをトレースして、エッジに角度がついた切欠きを有する部品を製造できる。
図10(d)】異なる角度の複数のフィラメント形成ビームでの加工による面取りエッジの形成を示す図である。
図10(e)】異なる角度の複数のフィラメント形成ビームでの加工による面取りエッジの形成を示す図である。
図10(f)】複数の切削を使用して面取りエッジを得るソーダ石灰ガラスの加工を示す図である。
図10(g)】複数の切削を使用して面取りエッジを得るソーダ石灰ガラスの加工を示す図である。
図10(h)】複数の切削を使用して面取りエッジを得るソーダ石灰ガラスの加工を示す図である。
図10(i)】複数の切削を使用して面取りエッジを得るソーダ石灰ガラスの加工を示す図である。
図10(j)】面取りファセットのエッジを異なる拡大レベルで示す図である。
図10(k)】面取りファセットのエッジを異なる拡大レベルで示す図である。
図10(l)】面取りファセットのエッジを異なる拡大レベルで示す図である。
図10(m)】3つの切削により、中間の垂直エッジと2つの面取りエッジとを含むエッジを得る部品加工を示す図である。
図10(n)】3つの切削により、中間の垂直エッジと2つの面取りエッジとを含むエッジを得る部品加工を示す図である。
図10(o)】3つの切削により、中間の垂直エッジと2つの面取りエッジとを含むエッジを得る部品加工を示す図である。
図11(a)】本明細書で開示される方法によりウエハを加工するための回転加工ツールの例を示す概略図である。
図11(b)】マルチ基板、マルチビーム、およびマルチレーザーヘッド機能を提供する、図11(a)に示す加工ステージの例示的な実装を示す図である。
図11(c)】単一のレーザーシステムを使用して4つのウエハでレーザーフィラメント加工を実行するシステムの例示的な実装を示す図である。
図11(d)】単一のレーザーシステムを使用して4つのウエハでレーザーフィラメント加工を実行するシステムの例示的な実装を示す図である。
図11(e)】単一のレーザーシステムを使用して4つのウエハでレーザーフィラメント加工を実行するシステムの例示的な実装を示す図である。
図11(f)】単一のレーザーシステムを使用して4つのウエハでレーザーフィラメント加工を実行するシステムの例示的な実装を示す図である。
図12】切り欠き内に複雑なエッジおよび形状を有し、角が任意に変更可能な半径で湾曲している、マザーシートから加工された材料の例示的な実装を示す図である。
図13(a)】フィラメント間隔の選択および制御による可変の切削エッジ粗さを示す例示的な実施形態の図である。
図13(b)】フィラメント間隔の選択および制御による可変の切削エッジ粗さを示す例示的な実施形態の図である。
図14(a)】シンギュレートされる材料の加工時破壊強度を判断するためのASTMC158に記載された破壊強度テスト手順を示す図であり、例示的な破壊強度測定構成を示す。
図14(b)】シンギュレートされる材料の加工時破壊強度を判断するためのASTMC158に記載された破壊強度テスト手順を示す図であり、さらなる例示的な破壊強度測定構成を示す。
図14(c)】シンギュレートされる材料の加工時破壊強度を判断するためのASTMC158に記載された破壊強度テスト手順を示す図であり、強度特性を判断するための例示的なワイブルプロットを示す。
図15(a)】zのサーボイングと、同じくサーボイングされる適用光学機器を通じた「ビームのステアリング」とによる、湾曲した対象物からの複雑なスプライン部品の形成を示す例示的な実施形態を示す図であって、ビームおよび/または部品は、きわめて広いプロセスウィンドウ(process window)と、複雑な鏡面湾曲を持つ部品を作成する能力を作り出すために、回転、傾斜、またはその他の方法で操作され得る。
図15(b)】zのサーボイングと、同じくサーボイングされる適用光学機器を通じた「ビームのステアリング」とによる、湾曲した対象物からの複雑なスプライン部品の形成を示す例示的な実施形態を示す図であって、ビームおよび/または部品は、きわめて広いプロセスウィンドウ(process window)と、複雑な鏡面湾曲を持つ部品を作成する能力を作り出すために、回転、傾斜、またはその他の方法で操作され得る。
図15(c)】zのサーボイングと、同じくサーボイングされる適用光学機器を通じた「ビームのステアリング」とによる、湾曲した対象物からの複雑なスプライン部品の形成を示す例示的な実施形態を示す図であって、ビームおよび/または部品は、きわめて広いプロセスウィンドウ(process window)と、複雑な鏡面湾曲を持つ部品を作成する能力を作り出すために、回転、傾斜、またはその他の方法で操作され得る。
図15(d)】実施形態の例示的な実装を示し、フィラメント形成により湾曲エッジを形成するように加工されたガラス部品を表している。
図16(a)】単一のパスにより多層基板を切削または加工し、垂直および/または被垂直の角度で切削できる例示的な実施形態を示す図である。
図16(b)】厚さ2.1mmの3層合わせガラス基板の加工を示す図である。
図16(c)】フィラメント加工された2つの空隙と中間粘着層とを含む複数層装置のクリービング後の電子顕微鏡画像である。
図16(d)】上面をV字溝で加工し、底面をフィラメント形成で加工した、積層液晶ディスプレイ基板の顕微鏡画像である。
図17(a)】工程制御のために撮像装置を使用し、撮像装置からの出力を処理してフィードバックを提供する複数の例示的な実施形態の図である。撮像装置からの出力は、工程制御コンピューティング装置に提供される。
図17(b)】工程制御のために撮像装置を使用し、撮像装置からの出力を処理してフィードバックを提供する複数の例示的な実施形態の図である。撮像装置からの出力は、工程制御コンピューティング装置に提供される。
図17(c)】工程制御のために撮像装置を使用し、撮像装置からの出力を処理してフィードバックを提供する複数の例示的な実施形態の図である。撮像装置からの出力は、工程制御コンピューティング装置に提供される。
図17(d)】工程制御のために撮像装置を使用し、撮像装置からの出力を処理してフィードバックを提供する複数の例示的な実施形態の図である。撮像装置からの出力は、工程制御コンピューティング装置に提供される。
図18(a)】一連の装置が形成された半導体基板を、基板の後部を加工してアブレーションマークを作成し、次にアブレーションマークを基準参照点として使用して基板の上方からフィラメント加工を行うことにより加工する方法を示す図である。
図18(b)】一連の装置が形成された半導体基板を、基板の後部を加工してアブレーションマークを作成し、次にアブレーションマークを基準参照点として使用して基板の上方からフィラメント加工を行うことにより加工する方法を示す図である。
図18(c)】一連の装置が形成された半導体基板を、基板の後部を加工してアブレーションマークを作成し、次にアブレーションマークを基準参照点として使用して基板の上方からフィラメント加工を行うことにより加工する方法を示す図である。
図18(d)】当該方法により加工されたLEDウエハの俯瞰画像である。この方法では、バーストレーザーパルスを利用して、金属層(低出力マーキング)、DBR層、PSS層、サファイアおよびGaN層を含むすべての層を加工している。
図18(e)】ダイシングテープがそのままの状態の加工後の基板を示す図である。
図18(f)】ダイシングテープがそのままの状態の加工後の基板を示す図である。
図18(g)】ダイシングテープを除去した後の加工後の基板を示す図である。
図18(h)】ダイシングテープを除去した後の加工後の基板を示す図である。
図19】フィラメント加工およびシンギュレーション後のガラス基板のファセットエッジの顕微鏡写真である。
図20】例示的な基板のシンギュレーション後の直交方向の表面粗さの測定値を示す図である。
図21】測定された値が約200nm RMSに抑えられている、シンギュレーション後のサファイア試料の表面粗さの測定値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示のさまざまな実施形態および態様について、以下に詳細に説明する。
以下の説明および図面は、本開示を例示するものであり、本開示を限定するものとは理解されない。
本開示のさまざまな実施形態を詳しく理解できるよう、多数の具体的な詳細について説明する。
ただし、場合によっては、本開示の実施形態を簡潔に説明するために、既知または従来の詳細事項については説明しない。
【0022】
本明細書で使用される「含む」および「含んでいる」という用語は、包括的および開放的と解釈されるものであり、排他的なものではない。
具体的には、明細書および特許請求の範囲で使用された場合、「含む」および「含んでいる」という用語、ならびにこれらの用語の変形は、特定の特徴、ステップ、または構成要素が含まれていることを意味する。
これらの用語は、他の特徴、ステップ、または構成要素を除外するものとは解釈されない。
【0023】
本明細書で使用される「例示的な」という用語は、「例、事例、または実例としての役割を果たす」という意味であり、本明細書で開示される他の構成よりも好適または有利だと解釈されるべきものではない。
【0024】
本明細書で使用される「約」という用語は、特性、パラメータ、寸法など、上限値および下限値の間に存在し得る変量を網羅することを意味している。
1つの非限定的な例では、「約」という用語は、プラスまたはマイナス10パーセント以内を意味する。
【0025】
別途定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、当業者に共通して理解されるものと同一の意味を持つものとして意図される。
コンテキスト等により別途指示しない限り、本明細書で使用される以下の用語は、以下の意味を持つものとして意図される。
【0026】
本明細書で使用される「フィラメント改質領域」(filament modified zone)という用語は、基板内のフィラメント領域であって、光ビームパスにより画定される圧縮領域により特徴付けられる領域を示す。
【0027】
本明細書で使用される「バースト」、「バーストモード」、または「バーストパルス」という用語は、レーザーの繰り返し周期よりも実質的に小さい相対時間間隔を有するレーザーパルス群を示す。
バースト内のパルス間の時間間隔は一定または可変であり得ること、およびバースト内のパルスの増幅は、たとえば対象材料の内部に最適化または事前に決定されたフィラメント改質領域を作成することを目的に、可変であり得ることを理解されたい。
一部の実施形態では、パルスのバーストは、そのバーストを形成するパルスの強度またはエネルギーを変えて形成され得る。
【0028】
本明細書で使用される「透明」という用語は、入射ビームの少なくとも一部が線形吸収形態で伝達されるような吸収スペクトルおよび厚さを有する材料を示す。
たとえば、透明材料は、入射ビームの帯域幅内の線形吸収スペクトルと、材料を通じて伝送される光の割合が10%超、25%超、50%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超、98%超、または99%超になるような厚さとを備え得る。
【0029】
本明細書で使用される「幾何学的焦点」(geometric focus)という表現は、光学集束レンズによって生成される計算または概算上の焦点を示す。この計算は、加工対象の材料内の非線形効果を包含または考慮せずに(たとえば、単純なレンズ方程式に基づいて決定されるビームウエスト位置により)行われる。
この表現は、レンズの配置に基づく光焦点の予想位置と、加工される材料の内部で非線形ビーム再集束によって作り出され、結果的に最大約10mmの疑似レイリー長を提供する光狭窄事象とを区別するために使用される。
【0030】
本開示の実施形態は、レーザーフィラメンテーションにより材料を加工する装置、システム、および方法を提供する。
レーザーフィラメンテーションの既知の方法と異なり、本開示の一部の実施形態は、入射ビームを長手方向のビーム軸に沿って分散して集束する光学構成を利用する。
この分散集束方法により、フィラメント領域の全長にわたり実際の均一な改質および圧縮を行うための十分なレーザー強度を維持しつつ、今日まで既知の方法を使用して可能だった距離をはるかに超える距離にわたりフィラメントを形成できる。
そのようなフィラメント(およびフィラメンテーション工程)は、加工される材料内での光の自己伝搬ビームを含む。このとき、熱工程により圧縮を行いつつ、他の既知のアブレーションやその他の加工方法で見られる光学破壊が回避されるようにバランスがとられる。
たとえば、以下にさらに説明するように、本明細書で開示される分散集束方法は、1ミリメートルを大幅に超える(10mmに届く)フィラメントの形成をサポートし、かつエネルギー密度を材料の光学破壊しきい値よりも低く維持する。
【0031】
レーザーフィラメンテーション
透明材料内で集束する超高速レーザーパルスを使用して、その透明材料内にレーザーフィラメントを形成できることが知られている。
たとえば、特許協力条約出願第PCT/CA2011/050427号の「レーザーフィラメンテーションによる材料加工の方法」で教示されているように、フィラメントは、対物レンズにより持続時間の短いレーザーパルスのバースト縦列を透明基板内で集束することにより形成できる。
レーザーパルスのバーストは、レーザーフィラメントボリュームにより画定される形状を有する内部微細構造変化を生成する。
パルスレーザーの露光中に試料をレーザービームに対して移動することで、フィラメントトラックの連続するトレースを、試料内でレーザーにより追従される曲線または直線のパスによって画定されるように、ガラスボリュームに永久的に刻み込むことができる。
【0032】
PCT出願第PCT/CA2011/050427号に記載されているように、フィラメント(「プラズマチャネル」とも呼ばれる)は、高密度かつ短持続時間のレーザーパルスの弱い集束により生成されると考えられている。このとき、プラズマの形成に起因する非線形のカー効果により、パルスは自己集束し得る。この光照射野の高時空的な局所化は、長く狭いチャネルにレーザーエネルギーを堆積させ得る一方、白色光の生成や、この局所化された放射を囲む動的リンク放射構造の形成など、他の複雑な非線形伝搬効果とも関連し得る。
PCT出願第PCT/CA2011/050427号では、焦点(たとえば、最初のビームウエスト)が材料の内部に位置するようにレーザービームを集束させることで、レーザーフィラメントを数百ミクロン規模の長さにわたり形成し得ることを教示している。
【0033】
既知のフィラメント形成方法に比べて、本開示では、空間的に拡張され、空間的に同質なフィラメントを透明材料に形成するための方法を提供する。
一実施形態によると、超高速レーザーパルスのバーストは、外部ビームウエストが対象材料の外部にプラズマチャネルを形成することなく対象材料の外部に形成され、入射ビームの弱い分散集束が対象材料内で発生し、それによって材料内で高密度の電場が作成され、レーザーの入射パスに沿って圧縮領域が作成されるように、集束される。
この圧縮領域は、伝搬軸の中心から均一および放射状に延長する材料の狭いカーテン内で相変化(エッチ速度実験により確認される)を引き起こす。
【0034】
以下にさらに説明するように、フィラメントの長さおよび位置は、たとえば、集束装置の配置、1または複数の集束要素の開口数、レーザーパルスのエネルギー、波長、持続時間および繰り返し率、各フィラメントトラックの形成に適用されるレーザーパルスおよびバーストの数、ならびに透明材料の光学的および熱物理的な特性により容易に制御される。
これらの露光条件(出力、繰り返し率、移動速度、および相互作用領域を延長するために波面がどの程度分散/収差されたか)を集合的に操作して、十分な長さと強度とを有するフィラメントを作成し、被加工材料の厚さの全体またはほぼ全体に延長させることができる。
【0035】
よって、本明細書で開示される実施形態では、レーザーパルスの短持続時間のバースト(好ましくはパルス持続時間が約100ps未満)を利用して、透明媒体内にフィラメントを生成する。
この方法は、フェムト秒レーザー加工で典型的に適用および使用される密な光学集束条件で容易に生成され得る光学破壊等を通じたプラズマ生成を回避する(たとえば、Yoshinoらの「Micromachining with a High repetition Rate Femtosecond Fiber Laser」(2008年、Journal of Laser Micro/Nanoengineering Vol. 3、No.3ページ157〜162により開示されている)。
【0036】
本明細書で開示される弱い分散型集束の実施形態では、非線形のカー効果により、従来の被写界深度を超えて延長されたレーザー相互作用フォーカルボリュームが作成され、一般的にビームを小さい自己集束ビームウエストから発散させる光学屈折を克服する。
この分散または延長した集束を通じて形成される、いわゆるフィラメント領域で、材料は、材料におけるビーム伝搬の軸を中心として実質的に対称的であり実質的に円筒形である領域で、光音響圧縮により誘起される相移転を起こす。
【0037】
この変化は、各材料の特定の特性的しきい値を超えるエネルギー密度を必要とする。これは、理想的には、非同質の複雑な積層体に存在する最大しきい値により選択される。
この変化は、基板の上面に対して垂直または非垂直の入射角で発生し得り、入射ビームに含まれる出力のみによって限定される距離にわたり存在し得る。
【0038】
さらに、光学破壊は加工中に材料で発生しないと考えられる。なぜなら、光学破壊は本開示の長く同質なフィラメント改質領域ではなく、離散した損傷中枢を作成するものだからである。
フィラメントに沿って堆積したレーザーエネルギーにより、欠陥、色中心、応力、微細流路、微細空孔、および/または微細亀裂のかたちをとり得る内部材料改質が発生するが、実験結果によると、改質は外観上は実質的に均等かつ対称的であり、内面の物理特性が実質的に同質である。
これは、フィラメントの長さに沿ってエネルギーがきわめて均等に分散した非常に高い強度の電場を提供することにより実現されると考えられる。
【0039】
レーザービームの分散集束による長いフィラメントの形成
PCT出願第PCT/CA2011/050427号で開示されている方法および装置と異なり、本開示は、材料の外部にプラズマチャネルを形成せずに外部ウエストが形成され、ビームエネルギーが材料内の領域で分散集束されるように入射ビームが材料に方向付けられる光学集束構成を使用した、透明材料でのフィラメントの制御下での形成のための方法、装置、およびシステムを提供する。
内部ビームウエストを形成しない分散集束構成は、以下にさらに説明するように、レーザーフィラメントの形成を、より制御が容易な形状および機械特性で、長距離にわたり維持する状態を提供すると考えられる。
【0040】
図1(a)を参照すると、PCT/CA2011/050427で開示されている集束構成が図示されている。この構成では、集束レンズ100を利用して、フィラメント120を形成するために、超高速レーザーパルスのバーストを材料110の内部で集束させている。
集束レンズ100は、材料110に対して、レンズ100の焦点が材料110の内部に位置するように配置されている。
入射ビーム130は、集束レンズ100によって集束されて収束ビーム140を形成する。収束ビーム140は、材料110の内部で集束され、集束構成を維持してフィラメント120を形成し、その後拡張および集束解除される。
上述したように、フィラメント120を形成する間の材料110の内部における光学出力の制限は、自己位相変調を通じた自己集束により実現される。
ビーム140は、フィラメント形成領域を超えると、光学ビーム出力の損失により拡張する。これは、自己位相変調が、自己集束をサポートし、対象材料における加熱とそれに続く指数変化に起因する集束解除に対抗するのに不十分となるからである。
図1(b)に示すように、この方法では、長さが数百ミクロン規模のフィラメント120を材料110の内部に形成できる。
【0041】
図1(c)は、超高速レーザーパルスのバーストの分散集束を通じた、透明材料での空間延長されたフィラメント生成の例示的な実施形態を示す。
入射ビーム130が集束レンズ100によって集束されて材料110の内部で明確に画定された初期ウエストを形成する図1(a)の構成と異なり、図1(c)の構成では、分散集束要素150を使用して、入射ビーム160を収束ビーム165が初期外部ウエスト175に集束され且つ材料115の内部で弱く集束されるように集束する。
初期ウエストを外部に形成することで、材料の内部での過剰な収束と光学破壊とが防止され、光学破壊等の有害な効果が回避される。
分散集束構成により、集束されたビームは、公知の方法のように外部集束によって狭い外部プラズマチャネルを生成するのではなく、光学出力が幅広い場所にわたって延長するように材料115に向けて方向付けられ、それにより、材料内の狭い明確な位置にウエストを形成するのではなく、入射レーザーを材料115の内部に分散させる。
そのような分散集束構成では、制御された形状特性と、ミリメートル規模の長さとを有するフィラメント170を作成できる。
分散集束要素150は、分散焦点(均等に分散された焦点でなくてもよい)を生成するように形成(たとえば、研磨または鋳造)された1または複数のレンズを含み得る。このとき、ウエストは材料の表面の上方または手前に位置し、外部プラズマチャネルなしで材料の表面にきわめて弱く集束したスポットを提供する。
一実施形態では、ウエストは、材料の外面から少なくとも約10μm離れて位置する。
別の実施形態では、ウエストは、材料の外面から少なくとも約20μm離れて位置する。
さらに実施形態では、ウエストは、材料の外面から少なくとも約50μm離れて位置する。
よって、本実施形態は、レンズの焦点属性を変えることにより、材料の内部に主ビームウエストを形成する必要性を回避し、外部ウエストを対象材料の上方、下方、または対象材料の層の間の間隙に形成するなどの幅広い加工オプションを提供する。
【0042】
理論による限定は意図しないが、本開示の分散焦点構成は、追加の焦点領域からの光学ビーム出力の空間的補充に起因して、より長いフィラメントを生成すると考えられる。
狭いフィラメント形成領域内の光学出力が、非線形工程を通じて形成される複雑な(非線形)指数変化との相互作用を通じて、ビーム伝搬時に消耗するにつれ、ビームの長さにわたる分散集束により追加の光学出力が提供される。これにより、ビームはフィラメントの形成中に自己集束の態様でより遠くまで伝搬でき、その後集束解除される。
上述したように、一部の実施形態では、このアプローチによって、プラズマを実際に形成することなく、所望の自己集束および圧縮が生成される。
【0043】
図1(c)を参照すると、収束ビーム165の少なくとも一部が材料115の前、たとえば位置175で集束されるように集束要素150が配置された例示的な実施形態が示されている。
詳細には、図示された例示的な実施形態では、分散集束レンズ150に直面する高開口数の光線が、材料115の前で集束する。
入射光学出力の一部を材料115の前で集束させることにより、材料の内部ですぐに形成される強度プロファイルが、高すぎることも低すぎることもなくなり、それによって長さ全体にわたり実質的に均一な断面を有するフィラメントが形成される。
【0044】
上述したように、ビームウエストを材料の下方ではなく、材料の上方または前で形成する利点は、材料の光学破壊しきい値を超えるのを回避するためである。
また、これにより、工程のセットアップおよび試料形態に関する選択肢を利用者により多く与えて、プロセスウィンドウを大きくすることができる。
【0045】
図1(d)は、収束ビーム180の一部が材料115の後ろの位置185で集束してフィラメント190を形成するように分散集束要素150が配置された代替の例示的な実施形態を示している。
【0046】
図1(e)を参照すると、収束ビーム200の一部が材料115の前(たとえば、位置205)で集束し、収束ビーム200の別の部分が材料115の後ろ(たとえば、位置210)で集束してフィラメント220を形成するように分散集束要素150が配置された別の例示的な実施形態が示されている。
この構成では、ビームエネルギーをより長い範囲に分散させつつ、レーザーにより形成された電場誘起熱効果から音響圧縮を作り出すための十分なエネルギーを、対象物を通過するパスに沿って維持することができる。
この実施形態は、フィラメントの形成をより詳細に制御し、フィラメントをより深く形成できるようにするために採用され得る。
図に示すように、そのような実施形態は、材料を貫通するフィラメント、厚さ数ミリメートルから数十ミリメートルの透明基板を通過するフィラメントの形成で有益であり得る。
【0047】
本明細書で説明する方法で利用される分散集束構成の利点は、次のように理解され得る。
入射ビームを材料の内部のウエストに集束させた場合、フィラメントの進行は、既知の方法と同じように、短い距離で停止する。
しかし、入射出力を材料の外部で集束させ、光学リザーバを形成し、熱誘起により材料の指数(詳細には複素率)が変化するときに材料を最終レンズとして機能させると、実質的に同質な断面形状を有するフィラメントを形成し、図1(f)に示すように、長さ数ミリメートルにわたり空間的に延長させることができる。図1(f)は、ソーダ石灰ガラスでの1mmを超える長さの同質なフィラメントの形成を示している。
図1(f)はさらに、ビーム焦点の軸位置を変えることによるフィラメントの相対的な垂直位置の制御を示している(各フィラメントは、25ミクロンのオフセットに対応する)。
そのような加工では、10μmを超えるチッピングが実質的に存在しない高品質なエッジを作成できる。
【0048】
図1(g)は、ステルスダイシング法で加工およびクリービングしたガラス基板の顕微鏡画像である。
ステルスダイシングラインに直行する方向で、フィラメントアレイも形成されている(表示されている試料は、まだフィラメントアレイラインに沿ってクリービングされていない)。
図に示すように、ステルスダイシングライン20は、光学破壊の明らかな兆候を示している。これにより、トップエッジはきわめて滑らかになるが、面は全体的にきわめて粗くなる。
ステルスダイシングラインに沿った切断により得られるファセットエッジの粗さは、垂直方向では53ミクロン、水平方向では85ミクロンであることが確認された。
これに対し、フィラメント10は、基板を貫通して延長し、より滑らかなファセットを持つ亀裂を促進する、連続的な材料改質を示している。
以下に説明するように、フィラメントアレイラインに沿った試料の劈開は、ガラス材料の場合で、1〜10ミクロンの表面粗さ値を生じさせる可能性がある。
【0049】
以下にさらに詳しく説明するように、本明細書で開示される方法により形成されるフィラメントは、従来報告されていたフィラメントよりはるかに長く形成できる。
さらに、この方法を利用して、連続的であり、径方向に対称であり、形状が一定であるフィラメントを生成できる。
透明材料内で長いフィラメントを形成するための主要な考慮事項は、以下に説明するように、必要なフルエンスを供給しつつ、材料の光学破壊しきい値を回避することである。
フィラメントの長さは、材料に供給される総エネルギーと、材料の線形吸収とに関連することがわかっている。
【0050】
たとえば、実験的な研究により、約50Wの平均出力、1064mmの波長、約50ピコ秒未満のパルス幅、約15パルスのバーストプロファイル、振幅が減少、増加、および/または一定のパルスプロファイル、ならびに訳10μmのスポットサイズで、ホウケイ酸ガラスに長さ6mmのフィラメントを形成できることがわかった。
【0051】
フィラメントの開始位置および終了位置は、レンズグループまたは集束装置の幾何学的特徴により予測される幾何学的焦点、すなわちビームウエストの位置を選択することによって制御できる。
以下で説明するが、出力とサイズとのバランスをとることで、材料の内部にビームウエストが形成されるのを回避することができる。
【0052】
図2(a)および図2(b)は、ビームウエスト焦点の位置を制御することにより実現できる柔軟性を示している。
図2(a)は、数ミリメートルから数十ミリメートル規模の長いフィラメント領域280を示している(ノンスケール。発明者は最大10mmのフィラメントの生成に成功している)。
ビームが層を破損させずに、それらの層を通過できることが図示されている。
また、臨界直径範囲260(たとえば、材料、集束条件、およびレーザー出力によって変わる可能性がある)も示されている。臨界直径範囲260は、それよりも大きい場合はフィラメントが形成されず、それよりも小さい場合は光学破壊が発生する、レーザースポット直径の範囲であると定義される。
例示的な一実施形態では、ソーダ石灰ガラスの臨界直径範囲は約8μmであることが確認された。
臨界比も注目される。臨界比は、材料上の入射レーザースポットの直径とフィラメントの直径との比率と等価である。
たとえば、例示的な一範囲では、臨界比は約0.01〜1000の範囲で変化し得り、別の例示的な範囲では、臨界比は約0.01〜10の範囲で変化し得り、さらに別の例示的な範囲では、臨界比は約10〜50の範囲で変化し得り、さらに別の例示的な範囲では、臨界比は約50〜500の範囲で変化し得り、さらに別の例示的な範囲では、臨界比は約1〜1000の範囲で変化し得る。
【0053】
図2(b)に示すように、最終レンズ275によって集束される入射ビーム270は、フィラメント領域の所望の対象位置の上方で、1または複数の実質的に透明な層272を通過できる。このとき、焦点またはフィラメントを形成せず、外部ウエスト290が最終層276よりも後ろに形成される。
その後、対象のスタックを通過する入射パスの当該位置に至るまで達成されない臨界フルエンスにより、フィラメント280が所望の層(274、276)の内部で形成される。
【0054】
入射ビームのフルエンスを制御するために、材料の表面におけるビーム直径の内部に含まれる出力を、ビーム直径のサイズを変更することによって変える(実際にはプログラミングする)ことができる。
詳細には、発明者は、材料と、臨界フルエンスと、フィラメント形成効率との間の相関関係を発見した。
【0055】
例示的な一実施形態では、第1入射フルエンス(第1入射面でのフルエンス)と、各サブパルスに含まれるエネルギーとを制御することにより、フィラメントの特性を制御できる。
レーザーが入射する面を複数含む実施形態(以下で詳しく説明)では、各面が独自のフルエンスを持ち、各フルエンスが吸収および散乱に起因して第1入射フルエンスに依存することが理解される。
【0056】
約100μmの入射スポットサイズで、直径2.5μm、長さ数ミリメートルのフィラメントができることが確認された。
フィラメントの一部の特性は、パルスエネルギーとスポットサイズとの比率を変更することにより制御できる。
材料によって、長いフィラメント形成に対する特性は異なる。
【0057】
フィラメントが連続的で実質的に均等なチャネルを形成するには、エネルギー強度が、堆積後にバーストパルス度数率で更新されるバーストパルス誘起強度が材料を径方向に圧縮するために必須な強度の衝撃波を形成できるようになされていなければならない。
この相変化が発生すると(または、一部の材料では、単純に密度が変化すると)、直後に、ある程度のプログラミング可能な遅延の後に、または後続の切断ステップの適用を通じて、フィラメント領域が劈開面として機能する。
特定の材料に対して適切なエネルギーは、さまざまなビームエネルギーでフィラメントを作成し、フィラメントの深さを観察または測定し、適切な長さのフィラメントを作成するビームエネルギーを選択することにより、経験的に判断することができる。
非限定的な一実施形態では、入射ビームのエネルギー(バーストのすべてのパルスのエネルギー)は、約10μJから約2000μJの間であり得る。
【0058】
さまざまな性質および特性を有するフィラメントを得るために、レーザービームの幅広いパラメータを変化させ得ることが理解される。
さらに、特定の属性群を備えたフィラメントを形成するために適切なビームパラメータは、材料によって異なる。
本開示では、いくつかの厳選された材料でフィラメントを形成するために利用できるビームパラメータの例示的な範囲をいくつか示す。
これらの例示的な範囲は、限定を意図したものではない。例示的な材料または他の材料で他の特性を備えたフィラメントを形成するには、他の範囲が適切であり得ることが理解される。
【0059】
バースト繰り返し率と、入射ビームに対する材料の移動速度とにより、隣接するフィラメント間の間隔が確定されることが理解される。
非限定的な一例では、この範囲は、約1kHzから約2MHzまでの範囲であり得る。
【0060】
図1(c)乃至図1(e)に示すように、入射ビームは、フォーカルボリュームが試料内の広い領域に分散するように集束される。
分散フォーカルボリュームは、同様または等価の開口数を備えた非分散集束要素から得られるレイリー範囲よりも十分に長くなり得る。
たとえば、分散集束における焦域は、分散集束なしで取得される対応するレイリー範囲よりも20%、30%、50%、100%、200%、500%、1000%、またはそれ以上大きくなり得る。
【0061】
分散フォーカルボリュームは、分散集束条件の下でビームにより形成されるフィラメントが同様または等価の開口数を備えた非分散集束要素により形成されるフィラメントよりも大幅に長くなるだけの十分な長さであり得る。
たとえば、分散集束の下で形成されるフィラメントは、分散集束なしで形成される対応するフィラメントよりも20%、30%、50%、100%、200%、500%、1000%、またはそれ以上大きくなり得る。
【0062】
分散焦点装置は、たとえば2つ以上の光学成分を含む光学縦列のように、1または複数の光学成分/要素を含み得ることが理解される。
一実施形態では、分散焦点装置は、ある横寸法で光学ビームを非分散態様で集束し、他の横寸法で光学ビームを分散態様で集束するように構成される。
【0063】
たとえば、適切なビーム集束、焦点距離またはビーム膨張率の操作により、レーザーフィラメントを終端させ、透明プレートの底面でのレーザー加工または損傷が回避されるような高い発散角でレーザービームをガラスの底面から出すことができる。
また、複数シートの積層の中央のシートに、そのシートの上下のシートに損傷を与えず、かつそのシートの上面および下面に損傷を与えるように、フィラメントを作成することもできる。これについては以下で詳しく説明する。
【0064】
一部の実施形態では、各光学要素で開口の充填を最適化する負レンズと正レンズとの組み合わせにより、光学縦列内での高い出力効率を維持し、レーザー強度を維持して上述したように対象材料を径方向に圧縮することにより、長いフィラメント長を作成できる。
【0065】
例示的な分散集束要素:収差要素
一部の実施形態では、分散焦点装置は、集束された光ビームに収差を誘起し、集束された光ビームが材料の内部でウエストを形成することなく長手方向のフォーカルボリュームにわたり分散態様で集束されるように構成された、1または複数の光学成分を含み得る。
【0066】
1または複数の光学成分は、球面収差を含み得る。
一部の実施形態では、分散焦点装置は、1または複数の収差光学成分と、1または複数の実質的に非収差の光学成分とを含み得る。
一部の実施形態では、収差は、分散焦点装置によって1つの次元で誘起される。
他の実施形態では、収差は、分散焦点装置によって2つの次元で励起される。
【0067】
長いフィラメントは、収差光学装置(1または複数の収差光学要素)を使用して、対象物自体による歪みや入射軸に沿って作成される電場加熱によるビームウエストが材料の内部に形成されないように、長い連続する疑似焦点を実現することにより作成できる。
直径1μmを超える大きなスポットを作成し、少なくとも1つの外部ウエスト(「リザーバ領域」)を対象物の前および/または後ろで作成することにより(図1(c)乃至図1(e)を参照)、エネルギーを対象の材料または層の外部の焦点に「ダンピング」して、プラズマチャネルが作成されずアブレーションが実行されない空中でビームウエストを形成することができる。
【0068】
本実施形態は、材料の外部でエネルギーが不均等に分散したビームパスを提供する一方、全長にわたりビームウエストを含まないフィラメントを作成する均等なビームパスを対象材料の内部に形成する。
【0069】
1または複数の収差要素を使用することで、材料内でのビームウエスト事象を回避しつつ、均一なフィラメントを作成し、余分なエネルギーを1つまたは複数の外部ウエスト領域に「ダンプ」して、外部プラズマチャネルの形成を回避し、フィラメントの形成と長い均一な改質とを促進し、光学破壊を回避する態様で、エネルギーを分散させることができる。
言い換えると、1または複数の収差要素の強力な収束を外部ビームダンプとして利用し、残りの光線を利用して材料の内部に強力なバーストパルスフィラメントを作成できる。
【0070】
光学集束構成要素、装置、またはシステムの収差は、波(または、使用する光の波長に対する波の分数)で測定し得る。
たとえば、収差は、理想的なレンズにより画定される同一の空間点(またはボリューム)に到達しない波の比率と、同一の空間点に到達する波の比率に応じて指定し得る。
一部の非限定の例示的な実施形態では、光学集束装置の収差は、約0.1%の収差よりも大きく、約80%の収差よりも小さい。
【0071】
第1入射面におけるエネルギー密度が、フィラメントを形成するために必要なエネルギー密度より大きく、かつ対象材料の光学破壊しきい値よりも低く維持されることを条件として、収差の性質を変えることができる。
具体的な一例では、光学要素は、少なくとも対象の材料または層の厚さに対応する距離だけ分離した2つの主焦点が形成されるように形成できる(たとえば、図1(e)を参照)。
【0072】
収差光学構成を提供するための1つの例示的な方法は、少なくとも2つの要素の光学配置を採用することである。ここで、一方の光学成分は垂直視野補正走査レンズであり、もう一方の光学成分は、上述したように集束された光を提供するように設計された補正窓(corrective window)である。
図3は、そのような例示的なレンズ構成を示している。この構成は、ビームの中継および視準のためのレンズL1およびレンズL2と、走査機構300と、第1集束レンズ305とを含む。
最終集束レンズ305は、テレセントリックレンズでよい。
ビームの一部が材料315の前で最初のウエストを形成するように収差集束ビームを生成するために、最終レンズ305の下に球面プレート310が提供される(ただし、操作機構300の前に設けられていてもよい)。
構成要素間の距離は、対象基板の厚さと、フィラメント領域の所望の長さとに基づいて判断し得る。
一部の例示的な実施形態では、利用する集束レンズのレンズ焦点距離の比率を制御することにより、フィラメントの属性を制御または指定できる。
たとえば、一部の例示的な実施形態では、L1/L2の焦点距離の比率は、−300〜+300であり得る。
【0073】
図4は、球面プレートを用いずに特殊な走査レンズ320(テレセントリックまたは非テレセントリック)を利用した代替の例示的な実施形態を示している。
特殊な走査レンズ320は、上述したような収差集束ビームを励起するように構成される。
【0074】
バーストパルスの特性
バーストパルスを分散集束構成で使用することにより、同質の特性(たとえば、材料の厚さに及ぶフィラメントの場合に、実質的な長さにわたり直径が実質的に同一であり、材料の入口面と出口面とで直径が同じであるフィラメント)を備えた長いフィラメント(たとえば、対象材料の厚さ全体の15%超の長さを有するフィラメント。例として、ガラス用途の場合、長さは10μm超であり、最大で10mmを超える)の形成が支援されることが、本発明の発明者により確認された。
パルスのバーストの分散集束は、フィラメントアレイに沿った切断の後の滑らかな表面の形成も支援する。
たとえば、本明細書で開示されるビームおよび集束条件を利用して、切断面の表面粗さ(RMS)が約10μm未満、場合によっては200nm以下の分割試料が提供された。
そのようなフィラメントは、脆弱な材料に形成できる。
【0075】
図5(a)乃至図5(e)は、バーストパルス350の一時的な性質と、レーザー源がパルスのタイミングおよびシーケンスに対して提供できる制御の程度とを示す複数の実施形態を示している。
図5(a)および図5(b)は、バースト繰り返し率360および内部パルス一時間隔375のオプションの制御を示している。
たとえば、パルス間のタイミングは、EOスイッチのタイミングを操作して、メインの発振器信号のさまざまな倍数を作成し、可変パルスタイミングを生成することによって制御できる。
図5(b)は、パルスを伝搬できる変動の程度と、レーザーヘッド370の内部で生成されるパルスの概略を示す例示的な図である。
一部の実施形態では、たとえば光学縦列に沿ってパルスを変調できることが理解される。それには、光学スイッチまたは電気光学スイッチを含めて、利用者が選択可能なパルス(および/またはパルスエンベロープ)プロファイル(上昇、下降、または等価)を作成し、パルス(およびパルスエンベロープ)のエネルギーの増幅を変更し、パルスの総数が利用者選択可能である小さなバーストパルス間での分割の度合いを決定する。
【0076】
図5(c)に示すように、利用者/操作者は、パルスプロファイル380を変更して、そのレーザーおよび関連光学装置を備えたシステムにより生成される部品の所望の材料属性に基づき工程を制御できる。
【0077】
図5(d)は、バースト内の統合出力に基づいて材料に伝達される純エネルギーを制御する機能を示している。
図5(e)は、特定のバースト390のパルス数を制御する機能を示している。
例示的な一実施形態では、レーザーパルスのバーストは、レーザーパルスが分割された2〜20のサブパルスを含むパルス縦列により材料表面に伝達される。
この分割は、複数の既知のアプローチのいずれかに基づいて、レーザーヘッド内で実行できる。
【0078】
図5(a)乃至図5(e)の任意の1または複数のパルスパラメータを利用して、非加工材料の内部でのフィラメントの形成を制御できることが理解される。
【0079】
材料
本明細書で開示されるフィラメンテーション方法は、入射ビームに対して透明である幅広い材料の加工に利用され得る。これらの材料には、ガラス、水晶、一部のセラミック、ポリマー、液体封入装置、複数層の材料または装置、および複合材料の組立体が含まれる。
本明細書で開示される方法に応じて加工される基板には、ガラス、半導体、透明導電体、バンドギャップの大きいガラス、水晶、結晶水晶、ダイヤモンド、サファイア、希土類元素製剤(rare earth formulations)、金属酸化物ディスプレイ用金属酸化物、およびコーティング有りまたはコーティング無しの研磨状態または非研磨状態のアモルファス酸化物が含まれ得る。
【0080】
さらに、入射レーザービームのスペクトル範囲は、可視スペクトルに限定されず、真空紫外、紫外、可視、近赤外、または赤外スペクトルにも存在することが理解される。
たとえば、シリコンは1500nmの光に対しては透明だが、可視光に対しては不透明である。
したがって、この1500nmの波長で直接(エルビウム添加による)もしくは水晶または他の非線形媒体での非線形混合(光学パラメトリック増幅による)により生成された短パルスレーザー光により、シリコン内でレーザーフィラメントを形成できる。
Si、SiC、GaAs、GaN、ならびにその他の化合物導体半導体および複合化合物半導体(たとえば、II−VIおよび同様のバンドギャップ)などの幅広い脆弱材料に加えて、ITO、IPS、IGZOなどのディスプレイ関連化合物について、1200〜3000nmの範囲の光で適切な性能を期待することができる。
【0081】
パルスのエネルギーと出力
フィラメントを形成し、自己集束を維持するために、パルスエネルギーは、非線形領域内に位置し、それによってバースト生成のフィラメント形成が可能になるように選択される。
非限定的な一実施形態によると、ソーダ石灰ガラスを加工する場合、自己集束が発生する状態に到達するために必要な電場強度を実現するには、約10μJから2mJの間のパルスエネルギーが適していることがわかった。
一部の例示的な実施形態では、レーザーの平均出力は、約3Wから150W(またはそれ以上)の間に収まり得る。ただし、フィラメント形成に必要な平均出力は、パルスエネルギー、バーストごとのパルス数、繰り返し率等に依存することが理解される。
【0082】
例示的な一実施形態では、パルス繰り返し率は、パルスピック発振器により定義されるパルス繰り返し周波数で10kHzから8MHzまでの範囲であり得る。
これらは、その後エネルギーがより少ないバーストに下位選択され、1fs以上、最大1ミリ秒のサブパルス間隔で材料に伝達される。
一部の例示的な実施形態では、レーザーのビーム品質Mは約5未満である。
たとえば、複数の焦点を軸に沿って作成するように光学成分が構成された実施形態では、約1のMを採用でき、それよりもMが緩い実施形態は、下流の光学機器によるビーム本来の形状の補完の程度まで許容され得る。
フィラメントが材料の厚さ全体にわたり形成される一部の例示的な実施形態では、十分な光度をビームパスに沿って提供するために、事前に選択されたしきい値(たとえば、少なくとも約50%)を超える送信機出力によりレーザービームを材料(非同質または非類似の材料の間の間隙を含む)に通過させる必要がある。
【0083】
視準、焦点距離、開放口
一部の実施形態では、システムの光学縦列が、集束前にビームを視準するための1または複数の光学成分を含む。これは、分散集束要素とレーザー源との間の可変パス長に対応するためである。
一部の例示的な実施形態では、視準成分の開口数は、約0.1〜0.88NAであり、有効焦点距離が約4.5〜2.0mである。
一部の例示的な実施形態では、開放口の直径は約2〜10mmであり得る。
【0084】
再生増幅器の使用
一実施形態では、再生増幅器を利用して柔軟な装置を提供する。これは、再生増幅器は、フィラメント形成のためのバースト縦列特性を変更するように容易に再構成できるからである。
たとえば、第1のレーザー露光の後の不完全に分離された材料の場合、再生増幅器は、シンギュレーションのための後続の露光ステップ用に(温度勾配をもたらす熱または冷気の別のソースに基づいて)再構成できる。
そのようなレーザーシステムは、可変または一定のパルスタイミングと、部品の速度が加工を通じて不変であるようにビームのタイミングおよび速度と協調した自動集束(auto focus)とにより、特定の用途に適合された完全長または部分長のフィラメントを作成できる。結果として、隣接するフィラメント領域の間隔が一定に保たれる。
これにより、レーザー加工で現在可能な最小限の切断面粗さ、すなわち従来のレーザー切削加工で得られる10〜100μmではなく切削直後で1〜3μmの切断面粗さでシンギュレーションを実行できる。
自動集束は、部品を事前に走査し、原位置でのヘッド高さを(たとえば、光学的に)検知するか、または機械視覚システムを使用して位置を判断することにより実現できる。
【0085】
再生増幅器の設計により、パルスの退出前に実行されるラウンドトリップの数の点で、正確なタイミング制御が可能になる。
パルス間またはバースト間のタイミングをステージ速度で操作して、特定の用途に応じたきわめて詳細に調整されたファセットエッジ(粗さ等)を提供できる。
詳細には、このレーザーシステムは、複雑な形状のガラス部品または複雑なスプラインが存在するマザーガラス板に特に適している。
例示的な一実施形態では、Rofin MPSプラットフォームを簡単に改造して上述した実施形態を含めることができる。
【0086】
フィラメント形成機構
したがってフィラメントを形成するための本方法は、これまで不可能だった透明材料用の新しい材料加工方法をサポートする。
固形物でのフィラメント形成についての調査はこれまでに行われてきたが、本開示は、バーストモードのタイミングと分散集束とを利用して、きわめて長いフィラメントの生成を初めて具体化するものである。
【0087】
ステルスダイシングやAccuscribeシステムで使用されるような既知のレーザー加工方法は、Yoshinoら(「Micromachining with a High repetition Rate Femtosecond Fiber Laser」(2008)、Journal of Laser MicrosurasshuNanoengineering Vol.3、No.3、157〜162ページ)のように、改質によって駆動され、主として光学破壊により左右される工程であり、材料除去の主要なモードが小規模な爆発によるアブレーションであって、長手方向の長さが制限される。
光学破壊は、透明媒体の内部で密に集束されたレーザービームの結果であり、そのようなレーザービームは、シンギュレーションされる材料により作成される幾何学的焦点の周囲に局所的かつ高密度なプラズマを形成する。
このプラズマ生成機構は、電子の初期多光子励起に基づいており、その後、逆制動放射、衝突イオン化、および電子雪崩のプロセスが続く。
コロンビウム爆発(Columbic explosion)により、局所化された空洞と、文献で説明されるその他の改質とが作り出される。
そのような工程およびシステムは、上述した屈折率および空洞形成工程を強調し(US6154593;SPIE Proceedings 6881−46)、材料加工のためのほとんどの短パルスレーザー用途の基盤を形成する。
この光学破壊領域で、透明材料のシンギュレーション、ダイシング、スクライビング、クリービング、切削、およびファセット処理(facet treatment)には、加工速度が遅い、亀裂が生じる、部品の強度が低い、アブレーションデブリによる汚れが生じる、カーフ幅(kerf width)が大きい等の欠点がある。これらすべてにより、部品がコンピュータ、タブレット、電話等の携帯電子機器に組み込まれるまでに、さらなる加工が必要となる。
【0088】
これに対し、本明細書で開示されるレーザーフィラメンテーション工程およびシステムは、透明材料の内部レーザー加工のための既知の方法の欠点を克服するとともに、アブレーションまたは表面破壊を(必要に応じて)回避し、カーフ幅を大幅に減少し、亀裂の生成を回避し、スクライビング用途の加工時間を高速化できる。
さらに、再生増幅器と高速な電気光学スイッチとを備えた繰り返し率の高いレーザーにより、熱の堆積や材料のその他の一時的反応を、フォーカルボリュームによる熱拡散よりもはるかに速い時間尺度(典型的には10マイクロ秒未満)で最小限に抑えて、レーザービームフィラメントの形成を強化できる。
本開示の方法により作成されるフォーカルボリュームは、ビームパスの光学成分により操作して、計算上の焦点深度(DOF)を何倍にも延ばすことができる。
【0089】
以下の例に示すように、ピコ秒パルスバーストを使用することにより、本発明は、パルスが分散態様で集束する場合に、レーザーパルスのフルエンスおよび選択した工程条件に応じて、軸方向の距離が約20μmから10mmの範囲に依然として制限されることを実証した。
これにより、実質的に先細りがないビアを材料に穴あけするに有益な、高密度で局所化された音響圧力を形成できる。ここで、材料のほとんどの除去または圧縮は、実質的に非アブレーションである工程により行われる。
【0090】
理論による限定は意図しないが、フィラメントは、弱く集束する高強度の短期的なレーザー光により作成されると考えられる。このレーザー光は、非線形のカー効果により自己集束することができ、それによっていわゆるフィラメントが形成される。
この光照射野の高い時空的局所化により、白色光の生成や、この局所化された放射を囲む動的なリング放射構造の形成などの他の複雑な非線形伝搬効果と関連しながら、レーザーエネルギーを長くて細いチャネルに堆積させることができる。
【0091】
高速なレーザーパルスによる加熱は、ビームパスの中心で屈折率を一時的に下げ、ビームを集束解除させてフィラメントを解体する。
カー効果による自己集束と、屈折率の変化による変調された集束解除とを動的にバランスさせることで、複数の再集束されたレーザー相互作用フィラメントを作成して、安定したフィラメントを形成できる。
【0092】
フィラメント改質の既知の方法と異なり、本明細書で開示される実施形態は、基板内で幅広い深度にわたり延長できる連続的なフィラメントの形成をサポートする。
たとえば、一部の実施形態では、フィラメントは、長手方向軸に沿って実質的に連続するように作成される。
これは、材料に何らかの変化を与えるために不連続で独立した損傷中枢を不十分な放射強度(レーザーのフルエンスまたは出力)で作成する既知のフィラメント加工方法と対照的である。
よって、以下に説明する実施形態は、基板の物質特性が当該事象に晒されない領域と比べて異なるように、加工ビームのパスに沿って光音響圧縮の連続的な領域を形成する方法を含む。
一部の実施形態では、基板内の材料の径方向に均一な圧縮により、連続的なビアが基板の内部に形成される。
【0093】
最も単純なレベルで、フィラメンテーション工程は、主として2つの競合する工程に依存すると考えられる。
1つは、レーザーパルスの空間的強度プロファイルが、非線形の光学カー効果に起因して、集束レンズのように作用することである。
これにより、ビームが自己集束して、ピーク強度が増加する。
この効果は、このスポットサイズから共焦点ビームパラメータ(または焦点深度)を単純に計算することにより予測される距離よりも何倍も長く伝搬できる安定したビーム直径に到達するまで直径が減少するのに伴って増加する回折により限定および相殺される。
もう1つの主要な差別化要因は、この手法により実現される、きわめて小さいフィラメントサイズである。
【0094】
このフィラメント形成の領域は新規である。本明細書に記載された実験で、従来のフィラメント形成方法を使用して得られる長さをはるかに超える長さのフィラメントが確認されたからである。
たとえば、本開示の選択された実施形態によると、実質的に透明な媒体に、長さ10mm以上の放射状圧縮フィラメント(材料が圧縮され、材料の厚さ全体に延長する円筒状の空洞が現れる)を形成できる。
理論による限定は意図しないが、この機構は、材料のビーム伝搬軸を中心とするレーザー光の間隔が狭い連続パルス(バーストパルス現象)による急速な加熱により作成される衝撃波圧縮を含むと考えられる。
フィラメント形成ビームが十分な強度を持つと仮定した場合、他の透明層に入るときに、実質的に低い屈折率(実屈折率および複合屈折率)で空隙および材料のすき間を横切り、フィラメントを形成できる。
白色光の生成とx線の放射とにより、高度に非線形的な工程が進行していることが確認される。
関連する現象について書いているGurovichおよびFel(ArXiv 1106.5980v1)は、媒体内でイオンおよび電子が衝突する中で衝撃波が形成されることを観察した。
【0095】
フィラメント形成工程の光音響的性質についてのさらなるヒントは、Paulら(Proceedings SPIE vol.6107,610709−1(2006))により実施されたディープアブレーション穴あけの研究に存在する。彼らの測定方法は、複数のレーザーパルスを使用した空洞形成により生成される光音響信号を含んでいた。
バーストの分散集束を含む本アプローチは、より強力な光音響信号を生成しつつ、他の技法に共通するプラズマの形成および材料のアブレーションを回避できると考えられる。
さらに、対象材料の最初の表面および最後の表面で軽度に加熱された入口および出口が形成されるが、フィラメントの内部表面には、アブレーション微細加工に関連する障害が実質的に存在しないことが確認された。
【0096】
また、プラズマにより支援されるレーザーアブレーションを使用した個体物質加工に関連する過剰な圧力が、Kudryashovら(Appl.Phys.Lett. 98,254102(2011))によって報告されている。
彼らの文献では、プラズマ温度90eVと、対応する圧力110GPaが報告されている。
このレベルでは、材料の内部に圧縮波を設定するための十分なエネルギーが存在する。
本アプローチでは、バースト間隔をはるかに狭くする。これには、さらに熱いビーム軸中心を短期間で作成できるという利点がある。ここで、熱衝撃波は、熱影響域(HAZ)または溶解が形成されるよりも速く、圧縮により改質された環境を作り出すすべての潜在的な熱効果をしのぐ。
本方法で発生する放射工程の調査は、逆制動放射だけでなく、超音波一過性(ultrasonic transients)が確認されたことも示している。
光学的調整と幾何学的焦点位置の変更とにより、空隙を含む複数の層で対象材料が構成されている場合でも、材料におけるこの光音響改質の程度および「停止―開始」特性を制御できる。
そのようにして作成されたエッジの特徴は、そのようにして露出される材料の物理的および化学的特性の均等な改質に依存しない低速のアブレーション工程により作成されるエッジとは、根本的に異なる。
【0097】
シンギュレーション
一部の実施形態では、上述したフィラメント形成方法および装置は、透明材料のシンギュレーションに利用される。
上述したフィラメンテーション工程中に作成されたレーザー誘起の指数変化を利用して、シンギュレートされる材料の重量を実質的または結果的に失わせることなく部品をシンギュレートするためのフィラメントアレイを生成できる。
【0098】
例示的な一実施形態では、シンギュレーションの方法は、ロード、位置合わせ、マッピング、および分散焦点を有するレーザービームの1または複数のバーストの基板への照射を含み得る。ここで、基板はレーザービームに対して実質的に透明であり、1または複数のパルスは、フィラメントを生成するように選択されたエネルギーおよびパルス持続時間を有する。
【0099】
フィラメントのアレイは、集束されたレーザービームに対して材料基板を移動させて基板を晒し、1または複数の追加位置で追加のフィラメントを生成することにより形成される。
したがって、フィラメントアレイは、基板をクリービングするための内部にスクライブされたパスを画定する。
これらのアレイは、移動線の周囲の1または複数の次元で存在し得り、直線または曲線のプロファイルで形成され得る。例示的な曲線プロファイル395が図6に示されている。
フィラメントは、対象材料のかなりの部分(たとえば、対象材料の約15%以上、通常は50μm超、または場合によっては1mmもしくは10mm超)にわたり延長するように形成され得る。
【0100】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法は、集束されたレーザービームを横方向に移動して、密接に配置されたフィラメント誘起の改質縦列のアレイを形成する。
このフィラメントアレイは、透明媒体の内部に、上面または底面にレーザーアブレーションの損傷を与えることなく(特に所望される場合を除く)、改質の疑似連続カーテンを画定する。
このカーテンは、照射された材料を、ごくわずかな圧力(力)が適用されたときに割れやすいようにし、または内部応力でただちに割れるようにする。
クリービングされたファセットは、アブレーションデブリがなく、極小の亀裂や裂け目が存在せず、レーザーによって自己集束ビームウエストにより画定されるきわめて小さいカーフ幅のみで内部的にマークされた柔軟な曲線または直線のパスを正確に追従し得る。
【0101】
一部の実施形態では、特定の材料および加工条件について、いったんフィラメンテーションアレイが透明基板で形成されると、わずかな機械的圧力のみで、内部レーザーフィラメンテーションカーテンにより正確に定義された表面形状で基板を2つの部品に割ることができる。
一部の材料および特に化学強化ガラスでは、分離事象は自発的であり得り、シンギュレーションに影響を与える追加のステップが不要な場合がある。
【0102】
利用者が選択できる工程条件を選択して、露光と分割との間の時間間隔を0秒(露光後にすぐに分割)から無限秒数(シンギュレーション工程を完了するために何らかの追加ステップが必要)まで変化させることができる。
【0103】
一部の実施形態では、複数のアングルカット、たとえば3つの連続する切削を利用して、シンギュレーション対象の材料の面取りエッジまたはファセットエッジを作成し、製造時間およびコストを大幅に減らすことができる。
例示的な一実施形態では、これはXパス工程として実行され得る。ここで、Xは、角度がついた側面またはエッジの数を表す。
【0104】
一部の実施形態では、基板は、追加のレーザー加工ステップ、物理的な加熱、冷却、機械的手段の1または複数を使用して割られ得る。
上述したフィラメント生成方法によりフィラメントアレイを形成した場合、クリービングステップで適用する力がはるかに少なくて済み、既知のアプローチに比べて優れたエッジ品質が得られることが確認された。
材料の性質によっては、スクライビングおよび分割(シンギュレーション)の工程は、単一のステップで実行され得り、力または熱機械張力に追加的に晒す必要がない。
【0105】
一部の実施形態では、フィラメントアレイは、フィラメントが接触する(たとえば、互いに触れ合う。たとえば、フィラメントがビーム中心または入射軸に対して円形に分散している場合)か、または可変の利用者選択可能な距離により分離し得る。
一部の実施形態では、アレイを形成するフィラメント間の距離は一定である。
他の例では、材料の属性が、削除または切削する形状の外周に沿って可変間隔で形成されるフィラメントアレイに対して良好なシンギュレーションが得られる態様であり得る。
したがって効率的なクリービングのための適切なフィラメント間隔は、一般的には、シンギュレーション対象の部品の物理的/電気的特性など、材料の特性と用途の要件とによって決定される。
パルス幅、バースト内におけるパルス間の分離、バースト繰り返し率、波長、パルスエネルギーなどの可変のビームパラメータに加えて、偏光状態を変更することもできる。それには、偏光回転素子(波長板)を利用し、所望の最終結果による要求に応じて加工時に回転角度を約1度から約80度へ、ランダムから直線、円、またはそれら2つの組み合わせへと変更させる。
この手法と、他の手法とを使用することで、エッジ品質と、シンギュレーション後のエッジ強度とを調節できることが確認されている。
【0106】
上述したように、レーザー源はバーストパルスレーザー、たとえば再生増幅器を備えたパルスレーザーを含み得るが、他のバーストパルスシステムも利用できる。
たとえば、一実施形態では、電気光学スイッチが内部または外部に装着された多重パス増幅器を利用して、コンピュータ制御のステアリング(および光学焦点機構と偏光制御)によりビームを基板へと伝達し、集束されたレーザービームに対して基板を露光のパスに沿って一定の速度で移動することができる。
一部の実施形態では、フィラメントアレイの角の部分を形成するときなど、フィラメントアレイの曲線部分を形成するときの接線速度は一定であり得る。これにより、作成されるフィラメントのアレイは、空間的照度、放射線量、および一時的特性が一定になる。
他の実施形態では、コンピュータ制御を利用して、固定された基板に対してビームを移動することができる。
他の実施形態では、コンピュータ制御を利用して、ビームおよび基板の両方の動きを制御することができる。
【0107】
たとえば、フィラメントアレイを形成するために採用される移動速度は、基板を支持する単純なリニアステージの速度に応じて判断され得り、テレセントリックまたは非テレセントリックな対象目標に基づく走査システムの場合は、所望の加工に応じて、ステージ速度とビーム速度との組み合わせに応じて判断され得る。
【0108】
移動速度は、たとえば、シンギュレートされる材料の特性(物理的、光学的、電気的、科学的、熱的等の特性)に応じて、利用者が選択できるミクロン規模のフィラメント間隔を作り出すように選択され得る。
よって、1または複数の加工パラメータをリアルタイムで変更することで、局所的に制御および調整された特性を持つフィラメントアレイ、すなわちフィラメントの特性が材料の異なる領域で空間的に変化し、それによって材料自体の属性を空間的に改質するフィラメントアレイを形成できる。
このようなレーザー加工の側面は、既知のレーザーシンギュレーションアプローチおよびシステムを使用して実現されていない。
実際、局所的に制御された属性を持つアレイを形成する本方法は、幅広い用途に利用できる。
本フィラメンテーション工程に応じて局所的に制御され得る例示的なプロパティには、電気的性能、光出力、シンギュレーション後の破壊強度などがあるが、これらに限定されない。
【0109】
フィラメントアレイを形成するために利用されるレーザーパルスのビームの属性は、事前に選択されたコンピュータ制御の工程パラメータに応じて変更され得る。これは、基板の内部に十分なビーム強度を提供して、レーザービームを自己集束させるためである。
たとえば、レーザービームは、フィラメントが加工対象の材料内のビーム軸に沿ったすべての点で形成されるように制御され得る。
言い換えると、ビーム特性は、対象材料の性質に応じて、基板の内部で音響圧縮を作り出し、それによって基板をシンギュレートし、またはシンギュレートできるように準備するために、特定の特性エネルギーレベルを超えるように制御され得る。
【0110】
一部の実施形態では、フィラメントアレイは、フィラメントの長手方向軸(通常はレーザービームの入射軸)に対して実質的に対称であるフィラメントにより形成される。
フィラメントの長さは、制御対象の機械パラメータである出力、集束特性、ビーム形状等の加工パラメータを変更することにより(たとえば、約10μmから10mmの範囲で)制御され得る。
そのようなパラメータを変更すると、材料で作り出される光音響改質に関連する特性が変化する可能性がある。
【0111】
チャープパルスと、本開示の方法で利用されるバーストパルスとの間には、生成方法の点だけでなく、それぞれのエネルギー特性の点でも、重要な違いが存在する。バースト加工方法は、加工における柔軟性がはるかに高い。これは、スキャナおよび適切な集束光学装置と組み合わせて所定の照射野にわたりテレセントリックな動作を生み出すときに特に顕著である。
【0112】
一実施形態では、フィラメント形成ビームをリアルタイムで自動集束するためのシステムが提供される。
たとえば、一部の実施形態では、検流器および/または音響光学偏向器を使用してビームを高速に移動し、完全なコンピュータ制御の下でビームを協調的に誘導することができる。
【0113】
図7(a)は、フィラメントアレイを形成するためのレーザー加工システムの例示的な構成を示す。このシステムは、好ましくは100ピコ秒未満のパルス幅で連続するバーストモードパルスを提供し、適切なビーム誘導光学機器を備え、それによって複数軸の回転移動ステージにビームを提供できる超高速レーザー500を含む。このステージは、XY面(シータ、θ)での回転ステージと、3D XZY移動ステージと、ビームまたは部品をX軸(ガンマ、γ)に対して協調制御構造で傾斜させる軸とを含む。
図示された例示的な実施形態では、ビームは、調整光学機器502(たとえば、正レンズもしくは負レンズ、またはさらに調整もしくは操作され得る弱集束スポットを提供できるレンズの組み合わせ)と、ビームサンプリングミラー504と、電力計506と、X−Yスキャナ505と、最終集束レンズ520と、ワーク522を配置するサーボ制御ステージ510とによって操作される。
以下に詳細に説明する制御加工装置550は、本明細書で開示されるレーザーフィラメンテーションおよび/またはシンギュレーション装置の実施形態を制御するために利用される。
フィラメントの位置および深さは、一定の作業距離を維持する自動集束構成を使用して(たとえば、位置検知装置を使用して)、(図1(f)に示すように)制御できる。
【0114】
図7(b)は、制御加工装置550の例示的な実施形態を示す。この制御加工装置550は、1または複数のプロセッサ552(たとえば、CPU/マイクロプロセッサ)と、バス554と、ランダムアクセスメモリ(RAM)および/または読み取り専用メモリ(ROM)を含み得るメモリ556と、1または複数のオプションの内部ストレージ装置558(たとえば、ハードディスクドライブ、コンパクトディスクドライブ、または内部フラッシュメモリ)と、電源560と、1または複数のオプションの通信インターフェイス562と、オプションの外部ストレージ564と、オプションのディスプレイ566と、さまざまなオプションの入力/出力装置および/またはインターフェイス568(たとえば、受信機、送信機、スピーカ、デジタル静止画像カメラまたはデジタルビデオカメラで使用されているような画像センサ、出力ポート、およびキーボード、キーパッド、マウス、位置追跡スタイラス、位置追跡プローブ、フットスイッチ、音声コマンドをキャプチャするためのマイク等のユーザー入力装置)とを含む。
制御加工装置550は、1または複数のレーザーシステム500、レーザー操作/位置決めシステム505、被加工材料の位置決めシステム510、および1または複数の計測装置またはシステム511(たとえば、1または複数の計測センサまたは撮像装置)とやり取りする。
【0115】
図7(b)では各構成要素が1つだけ示されているが、任意の数の各構成要素を制御加工装置550に含めることができる。
たとえば、コンピュータは通常、複数の異なるデータストレージ媒体を含む。
さらに、バス554はすべての構成要素間の単一の接続として図示されているが、バス544は2つ以上の構成要素を結び付ける1または複数の回路、装置、または通信チャネルを示し得ることが理解される。
たとえば、パーソナルコンピュータでは、バス554はしばしばマザーボードを含み、またはマザーボードである。
【0116】
一実施形態では、制御加工装置550は、汎用コンピュータまたは任意の他のハードウェア等価物であり得り、またはそれらを含み得る。
また制御加工装置550は、1または複数の通信チャネルまたはインターフェイスを通じてプロセッサ552に連結された1または複数の物理装置として実装され得る。
たとえば、制御加工装置550は、特定用途向け集積回路(ASIC)を使用して実装され得る。
代替で、制御加工装置550は、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせとして実装され得る。この場合、ソフトウェアは、メモリから、またはネットワーク接続を介して、プロセッサに読み込まれる。
【0117】
制御加工装置550は、一連の命令を使用してプログラミングされ得る。これらの命令は、プロセッサで実行されたときに、本開示に記載された1または複数の方法をシステムに実行させる。
制御加工装置550が含む構成要素は、図示された構成要素より多い場合と、少ない場合とがあり得る。
【0118】
いくつかの実施形態について、完全に機能するコンピュータおよびコンピュータシステムの文脈で説明してきたが、当業者は、さまざまな実施形態がプログラム製品としてさまざまな形態で分散され得り、また実際の分散に使用される特定の種類の機械またはコンピュータ読み取り可能媒体に関係なく適用可能であることを理解する。
【0119】
コンピュータ読み取り可能媒体は、データ処理システムによって実行されたときにシステムにさまざまな方法を実行させるソフトウェアおよびデータを格納するために使用できる。
実行可能なソフトウェアおよびデータは、ROM、揮発性RAM、不揮発性メモリ、キャッシュ等のさまざまな場所に格納できる。
このソフトウェアおよび/またはデータの各部分は、これらのストレージ装置のいずれかに格納できる。
一般に、機械読み取り可能媒体は、機械(たとえば、コンピュータ、ネットワーク装置、携帯情報端末、製造ツール、および1または複数のプロセッサを備えた任意の装置)によりアクセス可能な形態で情報を提供する(すなわち、格納および/または送信する)任意の機構を含む。
【0120】
コンピュータ読み取り可能媒体の例として、揮発性および不揮発性のメモリ装置、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ装置、フロッピー(登録商標)およびその他のリムーバブルディスク、磁気ディスクストレージ媒体、光学ストレージ媒体(コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)等)等の記録可能および記録不可能なタイプの媒体があるが、これらに限定されない。
搬送波、赤外線信号、デジタル信号等の電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号のためのデジタルおよびアナログの通信リンクに、命令を埋め込むことができる。
【0121】
本開示の一部の側面は、少なくとも部分的に、ソフトウェアで実装できる。
つまり、コンピュータシステムまたは他のデータ処理システムで、ROM,揮発性RAM、不揮発性メモリ、キャッシュ、磁気ディスク、光学ディスク、リモートストレージ装置等のメモリに含まれた命令のシーケンスを実行するマイクロプロセッサ等のプロセッサに応じて、手法を実行できる。
さらに、命令はデータネットワークを介してコンパイル版またはリンク版としてコンピューティング装置にダウンロードできる。
代替で、上述した工程を実行するロジックを、大規模集積回路(LSI)、特定用途向け集積回路(ASIC)、または電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)やフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのファームウェアのような追加のコンピュータおよび/または機械読み取り可能媒体等の個別のハードウェア構成要素に実装することもできる。
【0122】
図8(a)および図8(b)は、(a)非テレセントリックレンズ600および(b)テレセントリックレンズ602を使用して、ステージ605の制御を通じて複数の軸を制御する機能を示す例示的な実施形態を示している。
非テレセントリックレンズ600の場合、非視野補正レンズに存在する自然な歪みにより、角度のついたフィラメントパスを作成できる。
X(ガンマ)軸を中心とした回転を実行して、ワーク610の内部に、垂直入射光を使用して角度のついたフィラメント改質領域(612、614)を提供できる。
【0123】
図8(c)は、加工対象の材料を支持するステージが回転して材料の表面に対して傾斜したフィラメントを生成する、代替の実施形態を示している。
この実施形態は、走査レンズを利用する装置の実施形態と同様の結果を作り出すために、ビーム入射角に対して傾斜した試料を提供するように構成されている。
【0124】
図9は、部品のシンギュレーションに適した例示的なレーザーシステム700のレイアウトを示している。
レーザー705は、たとえば約1uJ〜50mJのエネルギーを含むバーストパルスを最大約2.5MHzの繰り返し率で提供できるレーザーシステムである。
【0125】
花崗岩ライザ702は、業界で一般に使用されているように、機械的な振動を緩衝する反応物質として設計されている。
これは、ステージの上方の光学機器がステージに対してXまたはYの1つの軸に沿って、ステージと協調して移動できるブリッジであり得る。
花崗岩ベース704は、システムの任意またはすべての構成要素を支持する反応物質を提供する。
一部の実施形態では、操作装置740は、安定性の理由により、システムから振動上分離されている。
【0126】
Z軸モニタ710は、光学機器(調整、集束、および必要に応じて走査の光学機器)をステージに対してZ軸方向で移動するために設けられている。
この動きは、頭上の花崗岩ブリッジにおけるXYステージおよびXまたはY動作、ならびに加工する試料材料を保持する花崗岩ベース上のステージのXY動作と協調させることができる。
【0127】
ステージ720は、たとえば、XYおよびシータステージと、傾斜軸のガンマ(「ヨー」)とを含む。
ステージ720の動きは、大きなマザーシートから所望の部品形状を作成するために、たとえば、制御コンピューティングシステムによって調整される。
計測装置730は、たとえば切削後のエッジ品質のマッピング、サイズ設定、および/または確認のために、工程後または工程前(または両方)の測定を提供する。
【0128】
図10(a)乃至図10(d)は、エッジが傾斜した内部形状を作成するための傾斜切り欠きアプローチを示している。このアプローチは、所望の角度付き結果を実現するためのシンギュレーション後の加工を必要としない。
図10(a)乃至図10(c)で、ビームトラックは、シータ軸755を中心とする回転を通じて実現される。レーザービームの入射角は固定され、最終的な部品のエッジ765で望まれる傾斜と等価である。
この非限定の実施形態は、フィラメントアレイによる複雑な切り欠きの作成をサポートする装置として、傾斜のついた切削と、回転ステージの移動とを可能にする。
【0129】
図10(d)は、異なる角度の複数のフィラメント形成ビーム775による面取り部品770の形成の例示的な実施形態を示している。
ビームおよびフィラメントパスを制御して、さまざまな角度の面取りまたは傾斜したエッジを形成できることが理解される。
協調した(平行)形成の場合、光学機器を通じてビームを分割および誘導して、垂直の入射ビームに沿った垂直とは違う角度で対象物に到達し、3面エッジまたは面取りを作成する複数のビームパスを実現できる。
【0130】
面取りは、たとえば工程によって許容される分離の程度に基づいて、2つ以上の面で作成できる。
いくつかの例示的な構成を図10(e)に示す。
【0131】
図10(f)乃至図10(n)は、いくつかの異なる構成で面取りエッジを得るための、複数の切削を使用したソーダ石灰ガラスの加工を示している。
図10(f)および図10(h)では、厚さ1.6mm、走査速度500mm/秒、入射角12度のソーダ石灰ガラスを2つのビームで加工している。ここでは、一方の側面をスクライブし、ガラス基板を反転し、第2の側面を再びスクライブする。
対応するクリービング後の構造を図10(g)および図10(i)にそれぞれ示す。
図10(i)乃至図10(l)は、面取りしたファセットのエッジを複数の拡大レベルで示している。
【0132】
一部の実施形態では、以下に説明するように、1つのレーザー(およびビーム分離光学機器)が両方のスクライビングステップを同時に実行できるようレーザー加工システムを構成できる。
【0133】
図10(m)、図10(n)、および図10(o)は、中間の垂直エッジと、2つの面取りエッジとを有するエッジを得るための、上述した条件と似た条件を使用した3つの切削による部品の加工を示している。
この場合、基板は、一方の側面で入射角12度で加工されている。基板は、反転され、他方の側面で入射角12度で加工され、入射角が垂直加工ステップのためにゼロ度に変更されている。
上述したように、これらの加工ステップは、レーザーが十分な出力を備えていれば、ビームを適切に分離した単一のレーザーを使用して同時に実行できることが理解される。
たとえば、平均出力が約75Wのレーザーは、すべての加工ステップを同時に実行するのに十分である。
【0134】
複数軸で回転および移動を制御する上述した装置、は、さまざまな焦点位置、非垂直の入射角、および可変のレシピ制御位置でビームをワークに与えて、フィラメントアレイの曲線部分を作成する目的で利用できる。また、部品を構成要素にシンギュレートするためや、閉形式の形状を切り出すためにも利用できる。さらに、携帯機器のカバーガラスなどの製品を高いシンギュレーション時破壊強度(たとえば、約30MPa超)で作成するためにも利用できる。これは装置製造業者が現在利用している手法では不可能である。
【0135】
当業者は、これらの軸のすべてがあらゆる用途で必要なわけではないこと、および一部の用途では簡素なシステム構成による恩恵があることを理解する。
さらに、説明した装置は本開示の実施形態の例示的な実装の1つに過ぎないこと、およびかかる実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく、さまざまな基板、用途、および部品提供スキームのために変更、改良、または組み合わせられることが理解される。
【0136】
図11(a)は、本明細書で開示される方法による大量生産で使用するための例示的な回転加工システム構成800の概要を示す。
この例示的なシステムは、部品をさまざまなステーションに移動してロードおよびアンロードのオーバーヘッドを除去する回転ステージに加えて、加工後の計測と、加工前のマッピングとを含む。
【0137】
マッピングサブシステム805は、たとえば、試料の反り、サイズ、部品の無機、シンギュレーションを行う部分の曲がりなどを判断するために提供される。
加工ステーション810は、本明細書で開示される方法に応じてシンギュレーション、テクスチャリング、穴あけ等を実行する。
計量ステーション815は、格納された部品プロファイルに対する部品の測定やエッジの検査などの測定を行う。
ロードおよびアンロードステーション820は、部品を加工ステーションに提供し、または加工ステーションから取り出すように構成される。
線形スライドステーション830は、最小限の部品移動およびコストで迅速な部品交換を行う。
このステージは、(825に示すように)システムの中心軸で回転して、部品をステーション間で移動する。
【0138】
図11(b)は、マルチ基板機能、マルチビーム機能、およびマルチレーザーヘッド機能を提供する加工ステージ810の例示的な実装を示している。
これにより、複数の試料を同時に加工できるように、加工ステージを多重化することができる。
図に示されている例示的な実施形態では、レーザー832および834により放射されたレーザーが分割されてX、Y、Z、θ、γの各ステージに送られ、ハンドラシャトル838により4つの場所に配置可能な部品に対して方向付けられる。
【0139】
図11(c)乃至図11(f)は、4つのウエハを加工するデュアルレーザービームシステムを含む別の例示的な実施形態を示している。
図11(c)では、4つのウエハ(1〜4)が加工のために並べられ、制御可能な間隙1100がウエハ間に設けられている。
図11(d)を参照すると、単一のレーザーシステムから、ビームスプリッタ1105と、ミラー1110と、レンズ1115とを含む可動ビーム配信システムを使用して、横方向(x方向)で離間した2つの入射バーストレーザービームが形成されている。
ビームは、個別のウエハ(すなわち、ウエハ1および3、またはウエハ2および4)にそれぞれ集束される。個別のウエハは、共通の支持部1120によって支持される。
【0140】
図11(e)に示すように、ビーム配信システムは、本開示によるフィラメント加工によりウエハをスクライブするために、ウエハに対してY方向で移動する。
Y方向の特定のラインでのスクライビングが完了すると、ウエハとビーム配信システムとの間のX方向での相対位置が変更され、ウエハが再びY方向でスクライブされる。
この工程が繰り返されて、Y方向のすべての必要なラインでレーザー加工が行われる。
ウエハ加工の速度は、Xステージの速度よりも、Yステージの速度に大きく依存することが理解される。
よって、一部の実施形態では、Xステージを制御するモニタよりも高速なモニタでYステージを制御し得る。
【0141】
図11(e)は、Y方向での2つの例示的なスクライブラインである第1スクライブライン1130とウエハ中間スクライブライン1140とを示している。
また、この図では、スクライビング前にビーム配信システムとウエハとの間の相対速度を増加させる加速領域1150と、スクライビング後にビーム配信システムとウエハとの間の相対速度が低下する減速領域1160とが示されている。
【0142】
レーザービームがウエハ上のスクライブラインに位置していないときは、レーザーパルスをブロックまたは弱めることができる。
2つの例示的なレーザー出力時間依存プロファイルが図11(f)に示されている。一時プロファイル(i)は図11(d)の第1スクライブライン1130に対応し、一時プロファイル(ii)は図11(d)のウエハ中間スクライブラインに対応する。
【0143】
Y方向のすべてのスクライブラインが形成された後、ウエハはビーム配信システムに対して90度回転し、図11(f)に示すように、工程が繰り返されてX方向のすべての必要なラインがスクライブされる。
【0144】
一部の実施形態では、入射レーザーパルスの偏光が、以下に詳しく説明するように、水平、垂直、または円形であり得る。
たとえば、一部の材料では、スクライビング中に水平の偏光を利用すると、スクライビング効率が向上することが確認された。
【0145】
図12は、複雑なエッジ、内部切り欠き842、および丸い角を有する部品840を作成するための透明基板の加工を示している。
図に示されているように、角844は、半径が固定されていても、可変でもよい。
この図はまた、閉形式の形状や内部形状を適用するための任意の曲線フィラメントアレイを形成する機能を示している。
【0146】
別の実施形態では、最終レンズをたとえば50mmの大きな開口にすることができる。これを利用して、約25mm×25mmから最大100mm×100mmまでの視野を生成でき、視野の補正なしで、角度歪みにより垂直ではない入射角を作り出し、シンギュレーションされた製品が傾斜または面取りされた表面を加工直後に有するようにすることができる。
【0147】
一部の実施形態では、作成されるバーストパルスについて、バーストを構成する各サブパルスのエネルギーレベルの上昇または加工に関連して、ある程度のプログラム可能性が存在し得る。
言い換えると、パルスのバーストエンベロープの上昇または下降の波形プロファイルを選択することにより、ある程度の制御が利用者に与えられる。
このパルスエネルギープロファイルの調整により、利用者は熱形成の速度を決定でき、よって材料が音響圧縮される速度を決定できる。
したがって、そのような方法により、バルス間制御により調整されたバーストパルスプロファイルを使用した音響圧縮制御が可能となる。
【0148】
以下に説明するように、本シンギュレーション方法は、従来のアプローチよりも歩留りが高い工程を実現できる。これは、一部の実施形態では、シンギュレーションを単一の工程ステップで、かつ従来のシンギュレートされた部品よりも高い曲げ強度で実現できるからである。
【0149】
空間的に分散した態様で集束されるバーストパルスのエネルギー特性により、装置では、単一層または複数層の材料について、材料の拡張された長さにわたり、実質的に同一の密度の材料圧縮波を提供することができる。これは、各層または表面をトラバースした後に十分なエネルギーがビームに存在することが条件となる。
以下にさらに説明するように、空気、気体、真空、または屈折率(複素および/または実)が実質的に異なる他の材料により形成された間隙が一部またはすべての中間層の間に存在する複数層の材料を含む例示的な実施形態では、複数層フィラメンテーションが発生し得る。これも、十分なエネルギーおよび集束条件が用いられることが条件となる。
上述したように、フィラメントアレイの間隔は、ビームとワークとの間の相対移動速度を変更することにより変えることができる。
【0150】
上述したように、上記で開示されたフィラメンテーション改質方法は、透明材料の高速で損傷の少ないシンギュレーション、ダイシング、スクライビング、クリービング、切削、およびファセット処理を可能にする。
一部の実施形態では、フィラメントベースのシンギュレーションは、平坦または湾曲した材料に対して実行でき、したがってさまざまな製造用途で利用できる。
この方法では、一般的には、超高速レーザーパルスのバーストによりフィラメントを形成できる任意の透明媒体に適用される。
以下に開示される実施形態により提供される装置は、たとえば、湾曲した面の上または周囲で延長する複数の軸での協調したビーム動作を提供する手段を提供し得り、曲げ強度、エッジ粗さ、電気的または光学的効率、製造コスト、およびエッジ形状やテクスチャなどの加工時特性など、最終製品の特性のプログラミング可能な制御のためのオプションの自動集束要素を備える。
【0151】
一部の例示的な実施形態では、ガラス材料(たとえば、アルミノケイ酸塩、ケイ素ナトリウム、ドープ誘電酸化物、および同様の化合物およびストイキオメトリを含む)について、本明細書で開示されるシンギュレーション方法は、液晶ディスプレイ(LCD)、フラットパネルディスプレイ(FPD)、有機ディスプレイ(OLED)、ガラスプレート、多層薄ガラスプレート、自動車用ガラス、ディスプレイカバーガラス、保護窓、安全ガラス、積層構造物、建築用ガラス、エレクトロクロミック、生体素子、光学センサ、平面光波回路、光ファイバ、実験用ガラス製品、工業用ガラス製品、家庭用ガラス製品、ならびにアート作品のダイシングまたはクリービングに利用できる。
【0152】
半導体材料(シリコン、III−V、およびその他の半導体材料、特に薄いウエハ形状の半導体材料)について、本明細書で開示されるシンギュレーション方法は、超小型電子チップ、メモリチップ、センサチップ、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、垂直キャビティ面発光レーザー(VCSEL)、およびその他の光電子工学装置の加工に利用できる。
【0153】
他の例示的な実施形態では、本明細書で開示されるフィラメント方法は、透明セラメック、ポリマー、透明導電体(すなわち、ITO)、バンドギャップの大きいガラス、および結晶(結晶水晶、ダイヤモンド、サファイア等)のダイシング、切削、穴あけ、またはスクライビングに利用できる。
【0154】
また、本明細書で開示される方法は、少なくとも1つの材料構成要素がレーザー波長に対して透明であってフィラメンテーション加工を促進する複合材料または集合体に拡張され得る。
非限定的な例として、シリカオンシリコン(silica on silicon)、シリコンオンガラス(silicon on glass)、金属皮膜のガラスパネルディスプレイ、プリント基板、超小型電子チップ、エレクトロクロミックディスプレイ、鏡、ガラス、窓、または透明プレート、光学回路、多層FPDまたはLCD、生体素子、微小流体素子、センサ、アクチュエータ、MEM、微小化学物質分析システム(μTAS)、および多層ポリマーパッケージがある。
【0155】
フィラメントがビーム軸に対して径方向で対称であることにより、材料が後続の方法できわめて容易に切断できるようになり、破壊強度が高まる。この後続の方法には、他のレーザー工程、加熱、冷却、ガスジェット、および非接触方式で部品をシンギュレートするその他の手段が含まれるが、これらに限定されない。
【0156】
一実施形態では、別のレーザー露光を利用して、第1の露光により作成されたフィラメントアレイラインをトレースできる。
これは、フィラメント形成用に採用されたレーザーまたは別のより経済的なレーザーで実現できる。
この方法で、厚さまたは材料の特性により自然な自己切断が望ましくないか、または本明細書に記載された手法で実現できないガラス部品に、完全なシンギュレーションを施すことができる。
追加のレーザー露光は、パルスでもCWでもよい。
追加のレーザー露光の出力レベルは、約10W以上でよい。
追加のレーザー露光の波長は、532nm以上でよい。
追加のレーザー露光の相対移動速度は、約500mm/sでよい。
追加のレーザー露光は、静的または動的な(走査)光学機器を使用して行い得る。
【0157】
本明細書で開示された方法により形成された製品および材料は、加工条件、および内部でのフィラメントの形成方法により、特有の電気的特性および発行特性を備え得る。
たとえば、耐障害性(機械的または電気的)があり、プログラムで制御できるごく少量のエッジ粗さを持つ強固な部品(ガラスまたはサファイア)を形成できる。
この故障耐性は、これらの部品の上または内部に設けられたシンギュレーション対象の装置にも及ぶ。
【0158】
図13(a)および図13(b)に示すように、フィラメントの重複の程度(または、フィラメントの分離間隔)は、利用者またはレシピにより選択して、部品のエッジ粗さ(850、852)をミクロン単位で制御できる。
そのようなエッジ粗さの制御は、装置の性能がシンギュレーション条件によって影響または左右される場合に有益である。
よって、本開示の方法およびシステムは、新たな材料形状および/または部品を作り出すことができ、消費者製品、航空宇宙、自動車、建築などの分野で新たな製造選択肢を切り開く。
【0159】
高い破壊強度を備えたシンギュレーション部品のフィラメンテーション
上述した実施形態は、他のレーザー加工方法で実現される破壊強度を上回る強固で損傷のないエッジを有する基板を作成するために利用できる。
そのような基板は、面取り、傾斜したエッジ、または丸いエッジを有するタブレットPC、ハンドヘルド装置、鏡、ガラスプレート、半導体、積層膜、ディスプレイレンズアレイ、等電点電気泳動アレイ、エレクトロクロミックアセンブリ、ディスプレイ(LCEおよびFPD)など、幅広い用途で使用できる。
【0160】
たとえば、上記で開示された方法により加工され、その後シンギュレートされた基板は、50MPaを超える破壊強度を持ち得ることが確認された。
図14(a)乃至図14(c)は、シンギュレートされる材料の加工時の破壊強度を判断するための、ASTMC158で説明された破壊強度テスト手順を示している。
図14(a)および図14(b)は、2つの例示的な破壊強度測定構成を示しており、図13(c)は、特性強度(characteristic strength)を判断するための例示的なワイブルプロットを示している。
図示された例示的なレポート方法は、ワイブルプロットである。ワイブルプロットは、テストした材料の統計的結果を伝え、いつ、どんな条件で材料が破損するかを予測できるように設計されている。
【0161】
一部の実施形態では、本明細書で開示された方法は、100MPaを超える破壊強度をサポートするだけの十分に高いエッジ品質を実現するために利用できる。
たとえば、本明細書で開示される方法によりシンギュレートされる材料のシンギュレート時破壊テストデータでは、化学的に強化されていないガラスで、300MPaという高い破壊強度が確認された。
材料および材料から作成される製品の破壊強度は、加工条件を賢明に選択することにより、改善することができる。
100MPaを超える破壊強度が望ましいが、これほど高い破壊強度は、他の方法では追加の加工を行わなければ実現されていなかったことに注目されたい。
【0162】
複雑なスプライン加工のための装置
一部の実施形態では、上記開示された方法により基板内にフィラメントを形成するシステムは、複雑なスプライン部品を作成するために、回転ステージと、Z位置の制御と組み合わされた自動化されたジンバル搭載の最終目的物(ガンマ軸、γ)とを含み得る。
そのような実施形態は、高い曲げ強度を持った部品を、高い歩留りで、かつ追加の微調整または後工程なしで作成することを支援する。
【0163】
図15(a)および図15(b)は、複雑なスプライン表面900を備える試料の加工を示している。この試料から、任意の形状の部品を、シンギュレートされる部品の所望の特徴(たとえば、強度、伝導性、内部/表面の装置の電気効率、エッチング耐性または有効性など)により決定される部品形状の外周全体にわたる垂直または非垂直のビーム入射により切り出すことができる。
XY面での適切な移動と、一定の対物レンズ間隔のための自動集束との組み合わせによるシータ軸およびガンマ軸での協調動作を利用して、部品の用途とその必須/所望の性能エンベロープとに基づき、利用者が選択可能な(合理的な範囲の)属性を備えた部品を生成できる。
この機能を実現するために、光学機器(図15(a))および/または加工対象部品を移動および/または回転させることができる。
図15(b)および図15(c)は、ステージ905を使用した加工対象部品の移動および/または回転を示している。
図15(d)は、そのような実施形態の例示的な実装を示しており、フィラメント形成によりエッジが丸く加工されたガラス部品を表している。
【0164】
複数層の加工
他の実施形態では、透明な気体またはその他の透明な材料で分離された複数のガラス層または異なる透明材料の複数の層にまたがって多階層のフィラメントを作成できる。
基板は、2つ以上の層を含み得り、集束されたレーザービームのビーム焦点の位置は、それら2つ以上の層の少なくとも1つの内部にフィラメントアレイを生成するように選択される。
【0165】
たとえば、複数層の基板は、液晶ディスプレイ(LCD)、フラットパネルディスプレイ(FPD)、有機ELディスプレイ(OLED)等の複数層フラットパネルディスプレイガラスを含み得る。
基板はまた、自動車用ガラス、チューブ、窓、バイオチップ、光学センサ、平面光波回路、光ファイバ、飲料用ガラス製品、アートグラス、シリコン、111−V半導体、超小型電子チップ、メモリチップ、センサチップ、電気工学レンズ、フラットディスプレイ、強固なカバー材料を必要とするハンドヘルドコンピューティング装置、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、および垂直キャビティ面発光レーザー(VCSEL)からなるグループから選択され得る。
【0166】
代替で、集束されたレーザービームのビーム焦点を、まず2つ以上の層のうちの第1の層の内部でフィラメントアレイを生成するように選択してもよく、この方法はさらに、第2のビーム焦点を2つ以上の層のうちの第2の層の内部で指数変化が起こるように配置するステップと、第2の層に照射するステップと、基板をクリービングするための第2の内部的に(個別の層ではなく、積層に対して内部的に)スクライブされたパスを画定する第2のアレイを作成するように基板を移動するステップとを含む。
基板には、第1の層に照射するときと反対側から照射してもよい。
さらに基板には、同時または後続のステップで、上部および底部から光を当てるか、または複数の入射角から光を当ててもよい。
さらに、第2の層に露光する前に、第2のビーム焦点の位置を、第1の層に露光するときのビーム焦点の位置に対して横方向に移動してもよい。
第2の集束されたレーザービームは、第2の層に露光するために使用され得る。
このビームは、システムによって単一のソースから、または第2のソースから供給できる。
したがって、同時に動作している複数のビームで、複数の基板を並行して加工することができる。
【0167】
図16(a)は、積層した複数の材料935を含む基板(オプションで、屈折率nが大きいかまたは小さい間隙940を含む)を、傾斜した部品、傾斜したビーム925(傾斜とは、非垂直の入射であることを意味する)、またはその両方により、任意の入射角でフィラメント領域930を形成して複雑な積層のシンギュレーションを行うことによりシンギュレートする方法を示している。
さらに、部品およびその構成要素の中間および終端のインターフェイスでのアブレーションに影響する条件を選択できる。
これは、主としてフィラメント形成の開始(通常は最終対物レンズからの設定距離)を、フィラメントの形成が所望される対象層のz位置に一致するように制御することにより調整される。
部品または光学機器の高さzを調整することで、フィラメントを最初に形成する場所の判断についての高度な制御が利用者に与えられる。
【0168】
図16(b)は、そのような実施形態の例示的な実装を示す。この実装では、厚さ2.1mmの3層合わせガラス基板を、速度0.5m/sの単一パスのフィラメント形成により加工した。
図16(c)は、2つの空隙と中間粘着層とを含むフィラメント加工された多層装置のクリービング後の電子顕微鏡画像を示している。
【0169】
一部の実施形態では、固体の透明層のみでフィラメントが形成されるようにレーザー露光を制御することで、単層または多層のプレートの各表面でのアブレーションおよびデブリの生成を回避することができる。
これは、たとえば、厚いガラスや繊細な多層透明プレートを滑らかで亀裂のないファセットができるようにクリービングしなければならない場合に、きわめて有利である。
【0170】
たとえば、図16(d)は、ハイブリッド加工方法を使用した積層液晶ディスプレイ基板のクリービングの例示的な実施形態を示す顕微鏡画像である。この加工方法では、上面をV字状の溝で加工し、底面をフィラメント形成で加工している。
【0171】
監視
一実施形態では、上述した方法を実行するための例示的な装置は、視覚および位置合わせ機能を備えており、利用者が対比のために選択できる可変の波長を、エッジ検索、ウエハマッピング、および加工前と加工後の計測のために利用する。
例示的な一実施形態では、画像の取得および分析のための標準的な機械視覚構成要素があれば、このタスクを実行するのに十分であり、これを位置合わせアルゴリズムと組み合わせることで、必要な制御レベルが提供される。
音声コイルまたは同様の実装が提供され、光学機器または部品をz方向で駆動するために使用され得る。また、リニアモータをXY配置に使用できる。
モータは、エンコーダ信号で0.1〜10μmの精度および正確さで装着され得る。
【0172】
たとえば、LEDウエハの場合、ウエハは平坦ではない。
ローディングステーションでは、ウエハを取り出し、プリマッピングして、試料の湾曲またはダイシングテープ、DAF(ダイアタッチフィルム)、または取り付けにより誘起されるその他の歪みを計算できる。
プリマッピングは、通常、ビームまたは光源でワークを光学走査に走査し、反射した光を調べてワークとカメラとの間の距離を測定することにより行われる。
たとえば、そのような実施形態は、共焦点システムとして実装できる。
共焦点または同様の高速自動集束機構は、LEDウエハのノッチまたはフラットに対する正確なストリート位置およびダイ角エッジ位置を提供するのに十分であり得る。
z位置は、XYおよびシータ位置に応じた所望の焦点位置にウエハの湾曲のオフセットを加えるかまたは減じたものと一致するように選択される。
このプリマッピングされたデータをシステム制御コンピュータに読み込み、リアルタイム自動集束システムをサーボ調整信号によりzで駆動するために使用できる。
そのようなシステムでは、試料を光学ビームに対して高速な直線速度(たとえば、最大1.5m/s)で移動しつつ、部品またはステージの表面に対する幾何学的焦点の位置を約+/−50nmで自動集束制御することができる。
【0173】
例示的な一実施形態では、この機能は、フォースフレーム計測(force frame−metrology)のフレーム構成で実現でき、反力は結合されていない機械構成要素にダンプされて、光学フレームが誘起された振動に妨害されないようにする。
【0174】
一部の実施形態では、視覚システムがフィラメントの特徴および/または寸法を測定して部品ファイルの忠実性を追跡し、測定値が所定の範囲に含まれていない場合にアラート、レポート、またはその他の通知を行うことができる。
上述したように、システムは、フィラメントの形成を断面で追跡する視覚システムを備え得る。
【0175】
一部の実施形態では、高速なフィードバック(たとえば、サンプリングレート1KHz超)を実行できる電子機器を利用して、リアルタイムでのフィラメント形成に関連する1または複数の工程パラメータを測定することができる。
例示的な一実施形態を図17(a)に示す。
任意またはすべての監視構成要素を、フィラメント形成の場所を追跡するように構成する(移動するか、または位置角を変更する)ことができる。
たとえば、図17(a)に示す例示的な実施形態では、2つのカメラ(撮像装置)と1つの検出器とを配置して、フィラメントのサイズ、深さ、および間隔を測定および監視している。
カメラまたは検出器950は、フィラメント形成工程中に発せられる光学的放射を検出するように位置決めされる。このとき、検出された光学的放射に関する信号を計測用に処理できる。
カメラ952は、フィラメント960の形成時に、加工対象の透明材料のエッジを通じて、フィラメント960の深さおよび/またはサイズを監視するように位置決めされる。
検出器954(撮像装置またはカメラでよい)は、フィラメントアレイの幅を測定するように位置決めされる(図17(b)は、このカメラによって取得されたフィラメントアレイ960の例示的な画像を示している)。
【0176】
任意の測定された属性またはパラメータは、工程の品質を確認するために、および/またはフィードバック値を提供して工程を能動的に管理するために、制御加工システム970に提供できる。
たとえば、測定されたプロパティまたはパラメータは、制御システムに格納されている既定の値と比較できる。
制御加工システム970は、フィラメント形成工程を制御するようにプログラムされたプロセッサを備えたコンピュータまたはコンピューティング装置でよい(図7(b)を参照)。
【0177】
例示的な一実施形態では、フィラメントの深さを監視するzサーボにフィードバックを提供するために、1または複数の撮像装置からの出力が処理されて、フィラメントの端点および位置が識別される。
そのような実施形態は、フィラメントが材料の内部で確実に停止することが望ましい場合(たとえば、LEDダイシング)に有益であり得る。
図17(a)に示すように、形状および/または位置の忠実性に関する計測データを提供するために、追加の撮像装置を含めることができる。
【0178】
図17(c)および図17(d)に示すように、赤外光源等の光源970を利用して、1または複数のフィラメントを通過し、検出器/カメラ975により検出される光学サンプリングビームを生成することもできる。
図17(c)は、平面内での監視実施形態の例を示し、図17(d)は、平面外での傾斜した監視実施形態の例を示す。
【0179】
上述した実施形態は、たとえば、DBR(分布ブラッグ反射器)構造またはGaN構造を備えたLEDウエハのシンギュレーションを含む用途に特に有益である。
基板の内部に劈開面を作成できること、およびこの特徴が存在する深さを制御できることには、実質的な利点がある。
GaN層を備えたLEDの場合、基板とGaN密着層との間のインターフェイスにアブレーション工程が存在することにより、GaNが妨害される。
本方法は、この深さを約10μm以下のz位置に制御する方法を実現するだけでなく、フィラメント形成事象後にレーザービームを迅速に発散させることも可能にする。
これは、フィラメント領域の直下にある材料が受ける(光学的、機械的、熱的、および振動的な)影響が、従来のレーザー工程よりも小さいことを意味する。
フィラメントはきわめて短い期間の工程であり、フィラメント終端での発散が大きいため、内部的な影響はより穏やかである。
【0180】
上述したように、レーザーシステムの計測監視機能をさらに強化するため、フィラメントの形成で放射される白色光(非線形工程により生成される)を監視して、基板の変化を示す強度および/またはスペクトルの変化を調べることができる。
一般に、フィラメントのサイズ、位置、パターン忠実度、および深さのいずれか1つまたは複数と、対象材料の化学的および物理的な特性とを監視し、さらにオプションで、システムを制御するための能動的なフィードバック用に利用することができる。
【0181】
一部の実施形態では、視覚システム、位置合わせシステム、および計測システムのいずれか1つを対象基板の上方および/または下方に配置し、サーボ制御のアクチュエータを介して集束光学機器を対象積層構造の対象層に対する所定の位置に移動するために利用することができる。
この対象層は、1または複数の層でよく、少なくとも1つの層がフィラメントの形成をサポートするために十分な透明性を有していれば、入射レーザーの波長に対して透明でも不透明でもよい。
【0182】
アブレーション、およびフィラメント形成を通じた半導体装置の位置合わせ
他の例示的な実施形態では、上記開示された方法および装置は、たとえば、半導体装置の加工時に基板の上または内部に作成される装置の相対的な配置を支援するなど、後続の加工で基板の相対的な配置および位置合わせを支援するために、実質的に透明な基板の上に置かれた第1の入射層(レーザー放射を最初に受ける層)にアブレーションマークを作成するために利用できる。
【0183】
たとえば、LEDウエハの不透明な層は、加工時に位置合わせするのが難しい場合があることがよく知られている。
従来の取り組みでは、赤外線カメラを利用して位置合わせマークまたは基準を探し、それらをレーザー座標系に登録していた。
新たなウエハ形態により、これを実現するのはきわめて難しくなった。金属層が厚くなって赤外線信号がブロックされ、位置合わせが妨げられるからである。
【0184】
よって、一部の実施形態では、厚い金属層(IRを効果的に確認できない厚さ)の存在により従来型の視覚構成が現実的ではない用途において、上述した実施形態を利用して、シンギュレーション対象の半導体ウエハの隣接するダイス間のストリート等の目的の構造物を見つけ出す手段を提供する。
【0185】
よって、透明基板(レーザーダイ等)の内部または上に位置する金属層を通して位置合わせマークを作成するために、以下の例示的な実施形態を利用できる。
詳細には、本明細書で説明する工程は、レーザー出力を増加し、バースト内のパルス数を増やすことにより、(フィラメントの形成に代えて、またはフィラメントの形成に加えて)金属層を通じてアブレーションを作り出すようになされ得る。
一部の実施形態では、上述したフィラメント加工の方法および条件により、透明基板上の厚さ約50μm未満の金属層で、金属をアブレーションすることができる。
バーストの最初のいくつかのパルスが金属をアブレーションし、その後バーストのパルスがフィラメントを形成することが確認された。
【0186】
一部の実施形態および用途では、金属層を含む材料を、金属層に隣接するフィラメントを形成することなく金属を局所的にアブレーションするように加工することが有益および/または望ましくあり得る。
これは、たとえば、フィラメントの存在により金属層のすぐ近くにある半導体層(たとえば、LEDウエハのGaN層)が損傷される可能性がある用途で好ましくあり得る。
この加工は、金属をきれいにアブレーションするための十分なエネルギーを維持しつつ、フィラメント形成に必要なエネルギー密度を回避することにより実現され得る。
たとえば、1064nmのバースト内に20個のパルスを含む約5Wのレーザー出力が、フィラメントを形成することなく薄い金属層をアブレーションするのに適していることが確認された。
【0187】
上述した実施形態は、透明材料の上または内部の表面の任意の金属層をアブレーションするようになされ得ることが理解される。
たとえば、金属層は、透明材料の外面または透明材料内の内面に存在していてもよい。
さらに、一部の実施形態では、上述した実施形態により、2つ以上の金属層を並行または連続してアブレーションすることができる。
【0188】
図18(a)乃至図18(c)に示す例示的な一実施形態では、一連の装置が形成され、アクティブ装置層の下(すなわち、ウエハの底面)に金属化層を含む半導体ウエハが、そのような方法により加工されている。
基板/ウエハ1000は図18(a)で上面から表示されており、一連の装置が示されている。
図18(b)に示されているように、装置の底面は、少なくとも1つの金属層1020を含む。
位置合わせマークは、低出力のバースト縦列1010を上述したように使用した基板背面からの照射に基づいて、金属層を通じてアブレーションにより作成されている。
これらの位置合わせマークは、参照フレームに対して空間的に登録されている。
位置合わせ/基準マーク1030は、その後、フィラメント形成に適したバースト縦列1040で試料を上方から加工するときに利用される(たとえば、試料は反転され得り、加工はアブレーションマークを基準マークとして利用して実施され得る)。
よって、本方法は、ヒートシンクおよび/または反射体として機能する厚い金属層を含む高度なLED基板により生じる制限を回避するのに有利であり得る。
【0189】
図18(d)は、この方法で加工されたLEDウエハの上方からの画像である。この方法では、バーストレーザーパルスを利用して、金属層(低出力マーキング)、DBR層、PSS層、ならびにサファイアおよびGaN層を含むすべての層を加工している。
【0190】
このアプローチの柔軟性は、利用者がLED装置ウエハの半導体(たとえば、GaN)側および反射体側の両方での金属化を通して、透明材料でフィラメント形成を利用できるという点で明確である。
周囲の装置を損傷したり、半導体層(GaN)をサファイア基板から剥離させたりすることなく、スクライビングを適用できる。
この工程は、装置の設計またはその提示に固有の制限に応じて、両方の側に適用してシンギュレーションを生じさせることができる。
【0191】
本実施形態による加工は、シンギュレーション時に利用する方向に関係なく、ダイシングテープを損傷せずに実行できる。
詳細には、ダイシングテープは、ビームの発散角が非常に大きく、基板を通過した後のビームの出力が低いため、損傷を回避できる。
これを図18(e)および図18(f)に例として示す。これらの図は、加工後の基板を示しており、ダイシングテープがそのまま残っている。
図18(g)および図18(h)は、ダイシングテープを剥がした状態の加工後の基板を示している。
なお、小さな残留テープマークは、たとえば綿棒やその他の適切なクリーニング器具で除去できる。
【0192】
現在考えられている実施形態は、一部の例示的な実装において、従来型の光学カメラを利用して位置合わせを行い、効果な視覚システムの必要性を回避している。
【0193】
他の加工方法と異なり、フィラメントの迅速な消散により、レーザービームがフィラメント形成の終了後に高度に発散する。そのため、このレーザー加工を、たとえば0.01μm以下の高いz精度を有する自動集束機構を備えたLED加工ステーションに適用して、GaN層またはDBR(分散ブラグ反射体)層に影響を与えることなくダイスをシンギュレーションすることができる。
特定の層の加工は、ビーム出力を調整し、適切な光学集束条件を選択して、外部プラズマチャネルを形成することなく材料の前方および/または後方に外部焦点(ビームウエスト)を作成して不要な出力を「ダンピング」することにより選択できることが理解される。
【0194】
このアプローチの柔軟性により、装置のどちらかの側からアクセスできる対象材料または積層内の任意の入射面に位置合わせマークを作成することができる。これにより、現在開発研究所で生まれている、従来の位置合わせおよびシンギュレーションの手法とまったく互換性がない最新のLED積層体でも、完全に位置合わせされたシンギュレーションを実行できる。
【0195】
位置合わせマークは、フィラメント手法および/またはアブレーション手法を使用して作成できる。マークされる表面の近くに存在する材料またはマークが行われる材料に基づいて、アブレーション手法は表面の「上」へのマーキング、フィラメント主要は材料の「内部」のマーキングに使用できる。
たとえば、誘電体上の金属では、両方の種類のマークを視覚システムによる検査および位置特定のために使用できる。
【0196】

以下の例は、当業者が本開示を理解し、実行できるようにするために提示されている。
これらの例は、本明細書で提供される実施形態の範囲を限定するものではなく、これらの実施形態の単なる例示および表現である。
【0197】
例1:レーザーフィラメンテーションによるガラス試料のシンギュレーション
上述した実施形態のいくつかを実証するため、ガラス試料をレーザーシステムで加工した。このレーザーシステムは、高い繰り返し率(400kHz超)で動作する50W psのレーザーを備え、対象物をレーザービームできわめて高速に走査する。また、約500mm/s〜1000mm/sで移動するステージを備え、そこに厚さ0.7mmのGorillaガラスを置いた。
基本的に1064nmで動作し、パルス幅が25ps未満であるレーザーを、1つのバーストに20個のサブパルスを含むバーストモードで動作するように設定した。
【0198】
直線的なカットと曲線形状の両方が高速で実行され、きわめて良好なエッジ品質と高い曲げ強度が得られた。
たとえば、被加工試料のGorillaは、カット時の曲げ強度が110MPa超だった。
図19は、改質領域の形成(いわゆるスクライビングステップ)およびクリービングステップ(シンギュレーション)の後のファセットエッジの顕微鏡写真である。
表示されている粗さは、表面の大部分で10μm RMS未満である。
図20は、例示的な基板のシンギュレーション後の表面粗さの直交する方向での測定値を示している。
【0199】
別の例では、丸い角とファセットエッジとを備える部品を、厚さ0.4mmのサファイアで作成した。粗さはさらに良好であり、図21に示すように、測定値は約200nm RMSに抑えられた。
【0200】
システムのステージ動作は、レーザーと部品との相対動作が同期され、レーザーまたはステージが追いつくのを部品が待機することがないように、レーザーパルスおよびトリガ信号と協調させた。
したがって材料に対するビームの速度は、角の周辺など、湾曲した部分でフィラメントアレイを作成するときも、一定に保たれた。
これは、ビームと材料との相対動作をスプラインファイルのデータに基づいて制御することにより実現された(スプラインファイルは、Adobe Illustratorファイルからコンピュータに読み込んだ)。
速度が一定であることで、フィラメント間の相対間隔が一定に保たれ、フィラメントの形成と、シンギュレーション後のインターフェイス品質とが、すべての場所で一貫したものとなる。
この実施形態は、レーザー加工のあらゆる方法に適用でき、レーザーフィラメンテーションによる加工を含む上述した実施形態に限定されないことが理解される。
【0201】
バースト特性は、テストする材料に基づいて経験的に選択された。
シンギュレーションの結果は、フィラメントの長さが基板の厚さの約10%を超えるときに改善されることが経験的に確認された。
このことは、厚くて柔らかいガラスや、LEDウエハなど繊細な電気装置を含む基板で特に顕著であることが確認された。
ホウケイ酸塩やソーダ石灰などの柔らかいガラスは、チッピングが最小限に抑えられたエッジ粗さなどの一貫した高材料品質の割裂を作り出すために、フィラメントをさらに長くする(たとえば、最大で試料の厚さの75%)ことによる恩恵を得ることができる。
【0202】
これらの結果は、レーザー露光のパルス性質を変えることにより、フィラメントの性質を容易に操作できることを示している。
言い換えると、エネルギー、波長、およびビーム集束条件のパラメータ(すなわち、開口数、試料における焦点位置)に加えて、パルスパラメータを所望のフィラメントプロファイルが得られるように調整できる。
詳細には、パルスバースト内のパルスの数および連続するパルス間の遅延時間を変更して、作成されるフィラメントの形状を制御できる。
上述したように、一実施形態では、フィラメントは各フィラメントを生成するためのパルスのバーストを提供することにより作成される。このとき、各バーストは、すべての材料改質力学の緩和のための時間よりも短い相対遅延により提供される一連のパルスを含む。
【0203】
シングルシートガラスのスクライビング、フラットパネルガラスのスクライビング、シリコンウエハおよび/またはサファイアウエハのスクライビングの各産業用途では、確かな信頼性を備えたレーザーシステムを使用した高速なスクライビングが求められている。
そのような実施形態を実証するため、繰り返し率が高く、ピコ秒単位のパルス持続時間を備えた商用の超高速レーザーシステムを使用して実験を行った。
【0204】
一部の実験的調査では、携帯電話のガラスディスプレイとタブレットのカバーガラスとを、本明細書で開示される方法によりシンギュレートした。
イオン交換前およびイオン交換後のEagle 2000または変厚とGorillaガラスとを、大きなマザーシートおよび小さい電話サイズユニットから、高い柔軟性および速度でシンギュレートした。
ファセットエッジおよび複雑なスプライン形状の導入は、脆弱な材料のシンギュレーションにおける従来技術の大幅な拡張を表している。
再生増幅器ベースのプラットフォームを使用することで、フェムト秒パルス方式とピコ秒パルス方式の両方で、今日までの最高の結果が得られた。
【0205】
一部の実験では、入射ビームの一時的および空間的な特徴に加えて、入射ビームの偏光が変更された。
これらのパラメータの操作により、後続の運用システムの機械設計を駆動するパラメータ空間が生成された。
たとえば、偏光により、サーボ駆動の協調的な偏光子を回転して相当に厚い基板を通じたアングルカットを改善または最適化できるため、工程の柔軟性が実現する。
たとえば、そのようなビームの偏光状態の制御は、内部および外部のラインを含む面取りされたガラス部品を作成するのに便利であり得る。
丸い角および/またはレーザービーム伝送システムの回転(少なくとも移動)を必要とする部品は、そのような方法により加工できる。これは、かかる部品の加工が、部品およびレーザーが相互に相対的に移動するときに変化するビーム入射角を含み、そのことがフィラメント形成効率に影響するからである。
よって、ビームの入射角が加工中に変化するため、材料の表面に対する入射ビームの偏光状態を制御できる。
これは、たとえば、ビームの位置および方向に加えて、またはそれに関連して偏光状態を制御する自動ビーム伝送システム(本明細書で説明)を使用して実現できる。
【0206】
0.3〜3.2mmの幅広い厚さ範囲、さらには0.1〜8mmのより幅広い厚さ範囲で、例示的な部品が生成された。
ガラス部品は、500mm/s以上の移動速度で生成された。
サファイア材料は、移動速度500mm/sで生成された。
改質領域の形成速度は、機械の特徴である高速なステージと、部品が迅速でありながらも円滑かつ一貫した態様で方向を変え、それによって部品ファイルの忠実な再現であるエッジを作り出す機能とに依存する。
エレクトロクロミック窓は、本システムにふさわしい例示的な用途である。
そのような実施形態の一例は、航空宇宙ガラス(aerospace glass)の加工である。
シンギュレートされた部品は、湾曲部および正確なエッジを備え、シンギュレーション直後の組み立てに対応する。
【0207】
本アプローチの柔軟性は、それぞれが異なる部品提示スキームで作成され得る幅広い部品によって強調される。
この柔軟性の一部は、工程のニーズに応じてビームの焦点と空間的分散とをすばやく移動できる、調節可能な光学縦列を使用することに起因する。
エッジ粗さが抑えられ、実質的または事実上損失のないシンギュレーションと、本明細書で実証された柔軟性との組み合わせにより、この技術のディスプレイおよび一般的な脆弱材料のシンギュレーション市場における商用機会が提供される。かかる市場では、高い歩留り、高い強度の部品が求められ、高速での30μm RMS未満のエッジ粗さと、競合する技術よりも低い所有コストとが要求される。
【0208】
例2:ガラス基板内の長さ6mmのフィラメント
例示的な一実施形態では、レーザービームは、パルス持続時間が約500ps未満であるパルスのバーストを含み、このバーストが視準され、対象物の外部のスポットに集束される(たとえば、ウエストが約1μm超100μm未満)。
理論による限定は意図しないが、上述したように、フィラメント形成につながる非線形相互作用により、一連の音響圧縮が材料の内部で発生すると考えられる。
これらの音響圧縮は、ビーム軸に対して実質的に対称であると理解される。
この領域の長手方向の長さは、パルスおよびビームのいくつかのパラメータによって決まる。これらのパラメータには、上述したように、焦点の位置、レーザー出力、パルスエネルギーなどが含まれる。
【0209】
たとえば、パルス幅がそれぞれ約10psであるパルスのバースト縦列を含み、繰り返し率が2MHzである50Wのレーザーを使用した場合、ガラス材料の内部に長さが10mmを超えるフィラメントを作成できる。
そのようなフィラメントは、発散せず、連続的であり、かつ材料の上面から材料の底面まで直径が実質的に一定となるように形成できる。
【0210】
詳細には、そのような構造では、小さく狭い直径(たとえば、約3μm)のチューブが上面から始まり、滑らかな一定した態様で続き(内部のRMS表面粗さは約10μm未満)、出口部の直径も約3μmとなるように対象の層または積層の底部から退出することが確認された(本例の場合)。
そのようなフィラメントは、フィラメント自体の特性と、フィラメントが形成される材料への影響との両方の意味で、制御可能な特性を備える。
フィラメントを制御するパラメータの一例は、ビームがワーク全体に対して移動する(またはワークがビームに対して移動する)速度である。
【0211】
本方法とすべての既知の方法の重要な違いの1つは、これらのフィラメント、すなわちスクライビング/クリービング/ダイシングのためのアレイが作成される速度である。
本例では、6mmのフィラメントを約600mm/sで作成できる。
この形態、速度、およびスクライビング後の材料健全性(material integrity)は、レーザー加工の歴史において前例のないものである。
【0212】
例3:1064nmのパルスレーザーを使用したフィラメント形成
本明細書で開示される方法、装置、およびシステムの例示的な一実施形態では、上述したようにピコ秒パルスのバーストを出力するように構成されたレーザーは、コリメーターとステアリング光学機器とを備えた光学縦列に入る。光学縦列は、オプションで、利用者が選択可能な角度での伝送ができる視野補正領域を含むスキャナを含む。光学機器によるビームは、相互作用域がスクライブ対象の層の深さを超えるように負レンズまたは正レンズを通じて集束できる収差破面を誘起するように設計される。
例示的な一実施形態では、50W 1064nmのレーザーから5MHzで放射されるピコ秒パルスのバーストが、一連のレンズにより集束されて、5μmのスポットが2枚構造または3枚構造のレンズを使用して材料の外部の焦点に作成される。焦点距離の比率Wは、対象基板および目的の最終結果(フルカット、スクライブ、破壊等)に応じて−20〜+20の範囲である(L1fl/L2fl=W)。これは、相互作用領域の長さによって、加工される部品の特徴が決まるからである。
上述したように、一部の実施形態では、最大で約−300〜300のレンズ焦点距離比率を採用し得る。
【0213】
上述した具体的な実施形態は、例として示されたものであり、これらの実施形態がさまざまな変更および代替形式をとる可能性があることを理解する必要がある。
さらに、特許請求の範囲は、開示された特定の形式への限定を意図したものではなく、本開示の精神および範囲に含まれるすべての変更、等価物、および代替物を網羅することを意図したものであることを理解する必要がある。
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図1(e)】
図1(f)】
図1(g)】
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図5(d)】
図5(e)】
図6
図7(a)】
図7(b)】
図8(a)】
図8(b)】
図8(c)】
図9
図10(a)】
図10(b)】
図10(c)】
図10(d)】
図10(e)】
図10(f)】
図10(g)】
図10(h)】
図10(i)】
図10(j)】
図10(k)】
図10(l)】
図10(m)】
図10(n)】
図10(o)】
図11(a)】
図11(b)】
図11(c)】
図11(d)】
図11(e)】
図11(f)】
図12
図13(a)】
図13(b)】
図14(a)】
図14(b)】
図14(c)】
図15(a)】
図15(b)】
図15(c)】
図15(d)】
図16(a)】
図16(b)】
図16(c)】
図16(d)】
図17(a)】
図17(b)】
図17(c)】
図17(d)】
図18(a)】
図18(b)】
図18(c)】
図18(d)】
図18(e)】
図18(f)】
図18(g)】
図18(h)】
図19
図20
図21