【実施例】
【0021】
図1は本発明のシールドコネクタの一実施形態を示す側面図、
図2は本発明のシールドシェルの一実施形態を示す斜視図、
図3はシールドシェルの側面図、
図4はシールド部材とシールド部材取付部とが結束部材にて固定された状態を示す概略図である。
なお、図中の矢印は、上下、左右、前後の各方向を示している(矢印の各方向は一例であるものとする)。
【0022】
図1において、引用符号1は、本発明に係るシールドコネクタの一実施形態を示している。シールドコネクタ1は、特に限定するものではないが、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載されるインバータやモータ等の電気機器の筐体2に取り付けられることによって、電気機器と電気的に接続されている。
【0023】
筐体2は、特許請求の範囲における「取付対象部」に相当するものであり、導電性を有する金属にて形成されている。筐体2は、例えば、インバータユニットやモータユニットのケースであり、インバータユニットやモータユニットには、接地回路が設けられている。筐体2は、接地回路であるグランドに接続されたシールドケースとなっている。
【0024】
図1に図示するように、シールドコネクタ1は、シールドシェル3と、図示しないハウジングと、図示しない端子付き導電路と、シールド部材4と、結束部材5とを備えている。以下、シールドコネクタ1の各構成について説明する。
【0025】
まず、シールドシェル3について説明する。
図2に図示するシールドシェル3は、導電性を有する金属材料からなり、この軸方向に直交するように切断したときの断面が楕円形となるような筒状に形成されている。シールドシェル3は、ハウジング収容部6と、シールド部材取付部7とを備えている。
【0026】
図2に図示するように、ハウジング収容部6は、この軸方向に直交するように切断したときの断面が楕円形となるような筒状に形成され、この内部が、図示しないハウジングを収容することができるように形成されている。ハウジング収容部6は、この外面8にシェル固定部9が形成されている。
図1−
図3に図示するように、シェル固定部9は、ハウジング収容部6の外面8における筐体2に面接触する側の端部(
図2においては、前後方向における後端)から突出するように形成されている。シェル固定部9には、ボルト挿通孔10が形成されている。ボルト挿通孔10は、図示しないボルトを挿通することができるように形成されている。
【0027】
図1−
図3に図示するように、シールド部材取付部7は、ハウジング収容部6の前端に連続して形成されている。シールド部材取付部7は、この軸方向に直交するように切断したときの断面が楕円形となるような筒状に形成されている。シールド部材取付部7は、この外面11にシールド部材固定手段12が形成されている。
【0028】
なお、本実施例においては、シールド部材取付部7は、上記形状に形成されているが、これに限定されるものではない。この他、シールド部材取付部7は、この軸方向に直交するように切断したときの断面が長円形となるような筒状に形成されていてもよいものとする。
【0029】
図1及び
図3に図示するように、シールド部材固定手段12は、本実施例において、複数(本実施例においては二個)形成されている。シールド部材固定手段12は、シールド部材取付部7の外面11における長辺部13,14に対向するように配置形成されている。シールド部材固定手段12は、
図2に図示するように、シールド部材取付部7の軸方向に直交する方向(
図2においては、左右方向)に広がるように形成されている。
【0030】
なお、シールド部材固定手段12の配置形成される個数は、本実施例に限定されるものではない。その他、例えば、
図2及び
図3に図示するような本実施例の構成に加え、シールド部材固定手段12を、シールド部材取付部7の外面11における短辺部15,16に対向するように配置形成される構成であってもよいものとする。
【0031】
また、シールド部材固定手段12は、上記のように複数形成される構成に限定されるものではない。その他、特に図示しないが、シールド部材取付部7の外面11の全周にわたって形成される構成であってもよいものとする。
【0032】
図1−
図3に図示するように、シールド部材固定手段12は、締結位置決め部17と、傾斜部18とを備えている。
【0033】
図1−
図3に図示するように、締結位置決め部17は、シールド部材固定手段12におけるシールド部材取付部7の基端部19側に配置形成されている。ここで、基端部19は、シールド部材取付部7におけるハウジング収容部6の前端と連続する側の端部(
図1−
図3においては、前後方向における後端)に相当するものである。また、開放端部20は、シールド部材取付部7におけるハウジング収容部6の前端と連続する側の端部とは反対側の端部(
図1−
図3においては、前後方向における前端)に相当するものである。
【0034】
図1−
図3に図示するように、締結位置決め部17は、シールド部材取付部7の基端部19側の外面11に連続し、この外面11に直交してシールド部材取付部7の内側に延びる壁部として形成されている。締結位置決め部17は、
図1に図示する結束部材5の締結位置を位置決めすることができるように形成されている。
【0035】
図1に図示するように、締結位置決め部17は、この高さが、結束部材5がシールド部材取付部7の基端部19側に移動しようとしても結束部材5の端部が締結位置決め部17に当接することができる高さに形成されている。
【0036】
本実施例において、
図1に図示するように、締結位置決め部17は、この高さが、シールド部材4をシールド部材取付部7に結束部材5の締結により取り付けられたときのシールド部材4及び結束部材5の厚み方向の高さと略同等となるように形成されているが、これに限定されるものではない。その他、締結位置決め部17の高さが、シールド部材4をシールド部材取付部7に結束部材5の締結により取り付けられたときのシールド部材4及び結束部材5の厚み方向の高さよりも高くなるように形成されていてもよいものとする。
【0037】
締結位置決め部17の高さを、上記の通り設定することにより、振動等が加わることにより、仮に結束部材5がシールド部材取付部7の基端部19側に移動しようとしても結束部材5の端部が締結位置決め部17に当接する。このことから、締結位置決め部17は、結束部材5が上記基端部19側に移動しようとしても結束部材5が締結位置に締結された状態を保持する。
【0038】
図1−
図3に図示するように、傾斜部18は、締結位置決め部17に連続し、シールド部材取付部7の軸方向の略中間部まで延びて形成されている。なお、傾斜部18は、シールド部材取付部7の開放端部20まで延びて形成されていてもよいものとする。
【0039】
図1−
図3に図示するように、傾斜部18は、シールド部材取付部7の軸方向に沿って切断したときの断面がシールド部材取付部7の基端部19側からシールド部材取付部7の開放端部20側に行くにしたがって外側に拡がるように傾斜する形状に形成されている。
【0040】
傾斜部18は、上記形状に形成されていることから、
図1−
図3に図示するように、基端部19側からシールド部材取付部7の開放端部20側に行くにしたがって、次第に傾斜部18の外径が大きくなっている。
【0041】
図1−
図3に図示するように、傾斜部18は、外径最小部21と、外径最大部22と、略中間部23とを備えている。外径最小部21は、傾斜部18において、この外径が最も小さくなるように形成されている。外径最大部22は、傾斜部18において、この外径が最も大きくなるように形成されている。略中間部23は、外径最小部21と外径最大部22とを繋ぐように形成されている。
【0042】
図1−
図3に図示するように、傾斜部18は、シールド部材取付部7の軸方向に沿って切断したときの断面が下に凸な曲線状となるような曲面形状に形成されている。なお、傾斜部18の上記断面形状は、上記形状に限定されるものではない。その他、直線状に傾斜するように形成されていてもよいものとする(その他の形状については、後述する変形例参照)。
【0043】
つぎに、ハウジングについて説明する。
ハウジングは、特に図示しないが、絶縁性を有する合成樹脂材料からなり、シールドシェル3のハウジング収容部6に収容することができるように形成されている。ハウジングは、この内部に、図示しない端子付き導電路を収容することができるように形成されている。
【0044】
つぎに、端子付き導電路について説明する。
端子付き導電路は、特に図示しないが、導電路(例えば、電線、ケーブル等)の端末に端子金具が接続されたものである。
【0045】
つぎに、シールド部材4について説明する。
図1に図示するように、シールド部材4は、電磁シールド用の筒状部材(電磁波対策用のシールド部材)であり、端子付き導電路を構成する導電路を、この全長にわたって覆うことができる形状に形成されている。シールド部材4は、本実施例においては、導電性を有する極細の素線を筒状に編んで形成される編組であるものとする。
【0046】
なお、本実施例においては、シールド部材4として、上記の通り、編組を採用しているが、電磁波対策をすることができるものであれば、これに限定されるものではない。この他、例えば、導電性を有する金属箔や、この金属箔を含む部材を採用してもよいものとする。
【0047】
つぎに、結束部材5について説明する。
図1に図示するように、結束部材5は、シールド部材取付部7に被せたシールド部材4を締結するための部材である。結束部材5は、具体的には、タイラップ(トーマスアンドベッツ社登録商標)、インシュロック(ヘラマンタイトン社登録商標)等が挙げられる。なお、結束部材5は、上記の他、加締めリングを採用してもよいものとする。
【0048】
つぎに、シールドコネクタ1の組み立て作業の手順について説明する。
まず、特に図示しないが、端子付き導電路をハウジングに収容する。しかる後、このハウジングを
図2及び
図3に図示するシールドシェル3のハウジング収容部6の内部に収容する。
【0049】
しかる後、シールド部材取付部7にシールド部材4を被せ、このシールド部材取付部7に被せられたシールド部材4の外側を結束部材5で締め付ける。このとき、
図1に図示するように、結束部材5を、シールド部材固定手段12における傾斜部18の外径最小部21に配置する。これにより、シールド部材4とシールド部材取付部7とが結束部材5にて締結され、シールド部材4がシールド部材取付部7に接続・固定される。以上により、シールドコネクタ1の組み立て作業が完了する。
【0050】
つぎに、シールドコネクタ1の筐体2への取り付け作業の手順について説明する。
まず、
図1に図示するシールドコネクタ1の一部を筐体2に形成された図示しない差し込み口に差し込み、シールドシェル3の後端を筐体2に面接触させる。しかる後、シェル固定部9のボルト挿通孔10(
図2参照)に図示しないボルトを挿通し、このボルトを筐体2に形成された図示しないボルト螺合孔に螺合する。これにより、シールドコネクタ1は筐体2に固定される。以上により、シールドコネクタ1の筐体2への取り付け作業が完了する。
【0051】
つぎに、
図4を参照しながら、シールドシェル3を採用するシールドコネクタ1において、シールド部材4がシールド部材取付部7から離脱する方向(以下、「離脱方向」と呼ぶ)に引っ張られときの作用について説明する。
【0052】
図4に図示するように、傾斜部18は、シールド部材取付部7の基端部19側からシールド部材取付部7の開放端部20側に行くにしたがって、外径が大きくなるように形成されていることから、外径最小部21側に結束部材5を締結した状態で、シールド部材4が離脱方向(
図4に図示する矢印Aの指示する方向)に引っ張られても結束部材5が外径最大部22を越えることが無い。これにより、シールド部材4が離脱方向(
図4に図示する矢印Aの指示する方向)に引っ張られてもシールド部材4がシールド部材取付部7に保持された状態が維持される。
【0053】
また、
図4に図示するように、シールド部材4が離脱方向に引っ張られると、結束部材5が傾斜部18の外径最大部22側へ上ろうとすることから、シールド部材4が離脱方向に引っ張られるほど結束部材5によるシールド部材4を締め付ける力が増加する。
【0054】
また、
図4に図示するように、シールド部材固定手段12は、一対の長辺部13,14のそれぞれに設けられることから、例えば、シールド部材固定手段12がシールド部材取付部7の一方の長辺部13(14)にのみ配置されるような場合と比べて、シールド部材4をシールド部材取付部7に保持する力が増加する。したがって、シールド部材4が離脱方向に引っ張られても、シールド部材4がシールド部材取付部7に保持された状態が、より確実に維持される。
【0055】
さらに、
図4に図示するように、傾斜部18は、下に凸な曲線状となるような曲面形状に形成されることから、直線状に形成される傾斜形状と比べて、略中間部23においても外径最大部22との外径の差が大きくなっている。これにより、シールド部材4が離脱方向に引っ張られても、結束部材5が外径最大部22を、より越え難くなるため、シールド部材4がシールド部材取付部7に保持された状態が、より確実に維持される。
【0056】
以上の本実施例に係るシールドシェル3は、
図5に図示する変形例に置き換えてもよいものとする。以下、
図5を参照しながら、変形例について説明する。
図5はシールドシェルの変形例を示す斜視図である。
【0057】
図5に図示するシールドシェル30は、傾斜部31に複数の突起部32が形成されている。突起部32は、
図5に図示するようにディンプル状に形成されている。傾斜部31は、突起部32が形成されることにより、表面に凹凸をつけたような形状に形成される。
【0058】
シールドシェル30によれば、傾斜部31が上記形状に形成されることにより、傾斜部31の表面の摩擦抵抗が大きくなることから、シールド部材4(
図1及び
図4参照)が離脱方向に引っ張られても結束部材5(
図1及び
図4参照)が外径最大部22側に移動し難くなる。このため、シールド部材4が離脱方向に引っ張られてもシールド部材4がシールド部材取付部7に保持された状態が維持される。
【0059】
なお、上記変形例に係るシールドシェル30に替えて、例えば、
図2に図示する傾斜部18に表面処理を施さず「ざらざら」の状態に形成されているシールドシェルを採用してもよいものとする。
【0060】
つぎに、シールドシェル3,30、及び、このシールドシェル3,30を備えるシールドコネクタ1の効果について説明する。
【0061】
以上、
図1−
図5を参照しながら説明してきたように、シールドシェル3,30、及び、このシールドシェル3,30を備えるシールドコネクタ1によれば、シールド部材4を離脱方向に引っ張ったときにシールド部材取付部7から抜けるのを防止することができるという効果を奏する。
【0062】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。