特許第6585163号(P6585163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許65851631つ以上の1,1−二置換アルケン化合物を含むエマルションポリマー、エマルション方法、及びそのポリマー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585163
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】1つ以上の1,1−二置換アルケン化合物を含むエマルションポリマー、エマルション方法、及びそのポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/30 20060101AFI20190919BHJP
   C08F 297/04 20060101ALI20190919BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   C08F2/30 Z
   C08F297/04
   C08L53/00
【請求項の数】20
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2017-513065(P2017-513065)
(86)(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公表番号】特表2017-526791(P2017-526791A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】US2015047445
(87)【国際公開番号】WO2016040012
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2017年5月8日
(31)【優先権主張番号】62/047,283
(32)【優先日】2014年9月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/047,328
(32)【優先日】2014年9月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/182,076
(32)【優先日】2015年6月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/186,479
(32)【優先日】2015年6月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/789,178
(32)【優先日】2015年7月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/810,741
(32)【優先日】2015年7月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513099186
【氏名又は名称】シラス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンソン,ピーター・アール
(72)【発明者】
【氏名】ホルツァー,アレクサンダー・アール
(72)【発明者】
【氏名】パルスル,アニルッダ・エス
(72)【発明者】
【氏名】サリバン,ジェフリー・エム
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−504530(JP,A)
【文献】 特表平11−500435(JP,A)
【文献】 特表2015−512460(JP,A)
【文献】 特表2002−501953(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0286433(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60、6/00−283/00、
283/02−289/00、291/00−297/08、
301/00
C07B 31/00−63/04
C07C 1/00−409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)25重量%以上のキャリア液、界面活性剤、及び1つ以上のモノマーを含む混合物を撹拌して、前記キャリア液中の前記1つ以上のモノマーのミセルを形成する工程と、前記1つ以上のモノマーは、1つ以上の1,1−二置換アルケンを含み;
ii)活性剤を前記ミセル中の前記モノマーの少なくとも1つと反応させて、前記1つ以上のモノマーのアニオン重合を開始させる工程と;
iii)前記1つ以上のモノマーを700g/モル以上の数平均分子量にアニオン重合する工程とを有し、
前記1,1−二置換アルケンモノマーは、第2の炭素原子に二重結合して、かつ、2つのカルボニル基にさらに結合した中心炭素原子を含み、および前記活性剤としてイオン性の金属アミド、水酸化物、シアン化物、ホスフィン、アルコキシド、アミン及び有機金属化合物、または金属ベンゾエートを含み、および得られるポリマーが1.7以下の多分散性指標を有する、プロセス。
【請求項2】
前記キャリア液の濃度が、98重量%以下である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記アニオン重合が、10重量%以上のポリマーの濃度を有するエマルションをもたらす、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記アニオン重合の終わりでの前記エマルション中の前記モノマー及びポリマーの総重量に対する前記界面活性剤の重量比が、0.5以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記1つ以上の1,1−二置換アルケンの濃度が、前記1つ以上のモノマーの総重量に基づいて、30重量%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
前記エマルションが、酸含有化合物を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
前記プロセスが、前記1つ以上のモノマーをアニオン重合する前記工程後に、1つ以上の第2のモノマーを前記エマルションに添加する工程と、前記1つ以上の第2のモノマーは、組成物中の前記1つ以上のモノマーとは異なるかまたは異なるモノマーを含み;前記1つ以上の第2のモノマーをアニオン重合する工程とを含む、請求項1〜6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
前記1,1−二置換アルケンが、直接結合を介してまたは酸素原子を介してカルボニル基の一方に結合した第1のヒドロカルビル基と、直接結合を介してまたは酸素原子を介して他方のカルボニル基に結合した第2のヒドロカルビル基とを有する化合物を含む、請求項1〜7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
前記重合温度が40℃以下である、請求項1〜8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
前記キャリア液が水を含み、前記水が、前記キャリア液及び前記1つ以上のモノマーの総重量に基づいて、40重量%以上の濃度で存在する、請求項1〜9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
前記1つ以上のモノマーが、第1の1,1−二置換アルケン及び第2の1,1−二置換アルケンを含む2つの1,1−二置換アルケン、を含む、請求項1〜10のいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
得られたポリマーが、第1のガラス転移温度を有する第1のブロックと第2のガラス転移温度を有する第2のブロックとを含むブロック共重合体であり、前記第1及び第2のガラス転移温度が20℃以上異なる、請求項1〜11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
得られたポリマーが、1.5以下の多分散性指標を有し、及び/または、前記1つ以上のモノマー対前記活性剤のモル比が20,000:1以下であり、及び/または、前記1つ以上のモノマー対前記活性剤のモル比が50:1以上である、請求項1〜12のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
前記キャリア液の分圧が、400トール以下であり、及び/または、前記エマルションが、4および8の間のpHを有する、請求項1〜13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
前記プロセスが、以下の工程、
i)前記エマルションのpHを0.5以上減少させて、前記重合反応を停止させるように、十分な量の酸を前記エマルションに添加する工程と、
ii)前記ポリマーから一部または全ての前記キャリア液を除去する工程と、
iii)前記ポリマーから一部または全ての前記界面活性剤を除去し、キャリア液および/または界面活性剤のいくつかまたは全てを除去する工程の少なくとも一つが重合反応の完了後に生じる工程と、
iv)得られたポリマーをエマルション、固体ポリマーまたは液体ポリマーとして単離すること、
v)前記得られた単離ポリマーを1つ以上の充填剤、及び/または、1つ以上の添加剤と配合して、高分子組成物を形成し、または前記ポリマーを含む当該得られた単離高分子組成物を保管すること、
の1つまたは任意の組み合わせを含む、請求項1〜14のいずれかに記載のプロセス。
【請求項16】
前記1,1−二置換アルケン化合物が、直接結合を介して第1のヒドロカルビル基に結合した第1のカルボニル基と、直接結合を介して第2のヒドロカルビル基に結合した第2のカルボニル基とを含む、請求項1〜15のいずれかに記載のプロセス。
【請求項17】
前記1,1−二置換アルケン化合物が、ケト基が形成されるように、直接結合を介して第1のヒドロカルビル基に結合した第1のカルボニル基と、エステル基が形成されるように、酸素原子を介して第2のヒドロカルビル基に結合した第2のカルボニル基とを含む、請求項1〜15のいずれかに記載のプロセス。
【請求項18】
前記1,1−二置換アルケン化合物が、エステル基が形成されるように、酸素原子を介して第1のヒドロカルビル基に結合した第1のカルボニル基と、エステル基が形成されるように、酸素原子を介して第2のヒドロカルビル基に結合した第2のカルボニル基とを含む、請求項1〜15のいずれかに記載のプロセス。
【請求項19】
前記1つ以上の1,1−二置換アルケン化合物が、メチレンマロン酸メチルプロピル、メチレンマロン酸ジヘキシル、メチレンマロン酸ジイソプロピル、メチレンマロン酸ブチルメチル、メチレンマロン酸エトキシエチルエチル、メチレンマロン酸メトキシエチルメチル、メチレンマロン酸ヘキシルメチル、メチレンマロン酸ジペンチル、メチレンマロン酸エチルペンチル、メチレンマロン酸メチルペンチル、メチレンマロン酸エチルエチルメトキシル、メチレンマロン酸エトキシエチルメチル、メチレンマロン酸ブチルエチル、メチレンマロン酸ジブチル、メチレンマロン酸ジエチル(DEMM)、メチレンマロン酸ジエトキシエチル、メチレンマロン酸ジメチル、メチレンマロン酸ジ−N−プロピル、メチレンマロン酸エチルヘキシル、及びメチレンマロン酸ジメトキシエチルからなる群から選択される1つ以上のモノマーを含む、請求項1〜18のいずれかに記載のプロセス。
【請求項20】
エマルションを形成するための攪拌装置を有する反応器を含む、1つ以上のモノマーを重合し、および反応組成物を有するためのシステムであって、前記組成物は、
i)少なくとも30重量%の水、
ii)1つ以上の1,1−二置換アルケンを含む少なくとも10重量%の1つ以上のモノマー、
iv)1つ以上の界面活性剤、及び
v)イオン性の金属アミド、水酸化物、シアン化物、ホスフィン、アルコキシド、アミン及び有機金属化合物、及び金属ベンゾエートを含む1,1−二置換アルケンのアニオン重合を開始させるための活性剤(複数可)、
から実質的になり、
前記攪拌装置が、かくはん装置(stirring device)または超音波処理装置を含み、
前記1,1−二置換アルケンが、第2の炭素原子に二重結合して、かつ、2つのカルボニル基にさらに結合した中心炭素原子を含み、および
得られるポリマーが1.7以下の多分散性指標を有し、および
前記1つ以上の1,1−二置換アルケン化合物が、メチレンマロン酸メチルプロピル、メチレンマロン酸ジヘキシル、メチレンマロン酸ジイソプロピル、メチレンマロン酸ブチルメチル、メチレンマロン酸エトキシエチルエチル、メチレンマロン酸メトキシエチルメチル、メチレンマロン酸ヘキシルエチル、メチレンマロン酸ジペンチル、メチレンマロン酸エチルペンチル、メチレンマロン酸メチルペンチル、メチレンマロン酸エチルエチルメトキシル、メチレンマロン酸エトキシエチルメチル、メチレンマロン酸ブチルエチル、メチレンマロン酸ジブチル、メチレンマロン酸ジエチル(DEMM)、メチレンマロン酸ジエトキシエチル、メチレンマロン酸ジメチル、ジ−N−プロピルメチレンマロン酸、メチレンマロン酸エチルヘキシル、及びメチレンマロン酸ジメトキシエチルからなる群から選択される1つ以上のモノマーを含む、前記システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2015年7月1日に出願された米国特許出願第14/789,178号、2015年7月28日に出願された同第14/810,741号、2015年6月30日に出願された米国仮特許出願第62/186,479号、2015年6月19日に出願された同第62/182,076号、2014年9月8日に出願された同第62/047,283号、及び2014年9月8日に出願された同第62/047,328号の優先権を主張し、それらの内容全体を参照によって本願明細書に援用する。
【0002】
分野
本明細書の教示は、直接結合を介してまたは酸素原子を介してカルボニル基に結合したヒドロカルビル基を有する1つ以上の1,1−二置換アルケン化合物を含むエマルションポリマー、エマルションポリマーを調製するための方法、エマルションポリマーを含む組成物、及びエマルションポリマーの使用に関する。エマルションポリマーは、単一モノマーから本質的になる(例えば、約99重量%以上)かまたは完全になるホモポリマーであってもよく、または2つ以上のモノマーを含む共重合体(例えば、ランダム共重合体、または複数のポリマーブロックを有するブロック共重合体)であってもよい。エマルション重合は、1つ以上の反応性1,1−二置換アルケンモノマーのアニオン重合によって調製されるのが好ましい。
【背景技術】
【0003】
1,1−二置換アルケン化合物の重合は、典型的には、バルク状態で行われ、例えば、接着される2枚の基板間にモノマーを配置する場合、インサイチュで頻繁に行われる。得られた重合プロセスは、制御することが難しく、可変の性能または機械的特性をもたらし得る。例えば、重合プロセスは、(例えば、重合反応中の)約15℃以上、約30℃以上、またはさらに約45℃以上の温度の増加など、重合プロセス中の温度の1つ以上のスパイクによって特徴付けられてもよい。そのような温度増加は、短時間(例えば、10分未満、3分未満、またはさらに1分未満)で生じてもよい。典型的には、得られたポリマーは、以下の一般的に高レベルの分枝、高多分散性指標、高濃度の非ポリマー反応生成物、一般的に高粘度、または一般的に高分子量の1つ以上によって特徴付けられてもよい。例えば、バルクで重合する場合、得られたポリマーは、プロセス及び/または取り扱いをさらに難しくさせる高粘度を有し得る。
【0004】
本明細書中で使用される場合、バルク重合は、1つ以上のモノマーを含む重合可能な組成物の重合のことを指し、1つ以上のモノマーの濃度は、室温で液体である重合可能な組成物中の化合物の総重量に基づいて、約80重量%以上、好ましくは約90重量%以上(例えば、約100重量%)である。
【0005】
アニオン重合プロセスを用いた1,1−二置換アルケン化合物の重合は、1,1−二置換アルケン化合物のバルク重合に有用であり、周囲条件(開始条件)でまたは周囲条件(開始条件)近くで動作することができるプロセスが開示されている。そのようなアニオンバルク重合は、広範囲の開始剤を用いて開始させてもよく、さらには、特定の基板と接触させて、またはUV光によって開始させてもよい。しかしながら、上述のように、バルク重合は、ポリマー分子の構造を制御する能力、及び/または、得られたポリマー組成物または生成物を容易に取り扱うことができる能力を制限し得る。バルク重合におけるこれらの困難は、多量のポリマーを製造する場合(熱輸送の問題が生じ得る)、特に、高粘度ポリマーの流れによってせん断発熱が生成され得る場合には特に顕著であり得る。
【0006】
また、1,1−二置換アルケン化合物のバルク重合は、1つ以上のコモノマーを含むことによってポリマーの構造を制御しようとする場合に課題をもたらす。例えば、高粘度の中間体ポリマーは、(例えば、第1のモノマー系に続いて第2のモノマー系を反応容器に逐次付加することによって)ブロック共重合体を調製するのに困難をもたらし得る。他の問題は、ランダム共重合体の構造を制御しようとする場合に発生し得る。ここで、異なるモノマーの反応速度は異なるため、モノマーは、ポリマー分子の長さに沿って均一に分散しない。例えば、バルク重合によって調製された1つ以上の1,1−二置換アルケン化合物を含む共重合体は、典型的には、一般的にブロック連鎖分布を有し、及び/または、広い分布のモノマー組成物を有するポリマー分子をもたらすことが考えられる。本明細書中で使用される場合、一般的にブロック連鎖分布のモノマーを有する共重合体は、約0.7以下、約0.6以下または約0.5以下、または約0.4以下のブロック状化指数を有するものとして特徴付けられてもよい。
【0007】
エマルション重合プロセスは、ポリマー構造をより良く制御するために、フリーラジカル重合プロセスで採用されているが(例えば、米国特許第7,241,834 B2号を参照されたい)、そのようなプロセスは、一般的に、アニオン重合で採用されていない。エマルション重合系では、重合は、典型的には、キャリア液(一般的に水)にわたって分散している小ミセル中で生じる。乳化剤は、典型的には、ミセル中のモノマー/ポリマーをキャリア液から分離する。しかしながら、アニオン重合では、アニオン重合を介して重合することが可能な多くのモノマーは、水と反応する。例えば、1,1−二置換アルケン化合物と水の間のマイケル付加反応は、二重結合を破壊する公知の反応であり、モノマーが、二重結合を通じてアニオン重合を用いる際、もはや重合可能ではない。したがって、水を用いることを回避するかまたは反応中の水の存在を減らすことが一般的に好ましい。同様に、1,1−二置換アルケン化合物と種々の界面活性剤の間のマイケル付加反応の可能性がある。これらの理由のため、1,1−二置換アルケン化合物のエマルション重合は、典型的には、回避されており、エマルション重合において不適切であると想定されている。
【0008】
エマルション重合系をフリーラジカル重合方法で採用する場合、亜周囲温度(例えば、10℃未満、0℃未満、または−20℃未満)は、典型的には、反応を制御するために必要とされる。したがって、エマルション重合系では、−5℃を下回る低凝固点を有するキャリア液(水とグリコールの混合物など)を使用することが必要な場合がある。
【0009】
1,1−二置換アルケン化合物の重合のさらなる困難は、成長ポリマーのアニオン基が酸と反応することによって反応を停止させる可能性から生じる。したがって、アニオン重合を用いて1,1−二置換アルケン化合物を重合することにおいて酸の使用を避けるであろう。
【0010】
アニオン重合エマルションプロセスでの以前の試みは、一般的に、以下の欠点、(1)システムが低ポリマー濃度(例えば、エマルション系の総重量に基づいて、約2重量%以下)を有するという要件、(2)(滴下法でさえも)粒子凝集の流行をもたらしている、(3)分子量分散を制御するための再現性を欠いている、(4)望ましくない反応物副生成物を有する、または(5)低反応温度を採用する、の1つ以上を有している。
【0011】
1つ以上の1,1−二置換アルケンモノマーを含有するポリマーの以下の特性の1つ以上の制御を改善させる重合方法、システム、及び得られたポリマー組成物または生成物が求められている。以下の特性とは、重量平均分子量、数平均分子量、多分散性指標、(例えば、ポリマー融解温度を少なくとも約20℃上回る1つ以上の温度で)ポリマーのゼロせん断粘度、室温でのポリマー系(例えば、バルクポリマー、またはポリマーエマルション)の粘度、共有結合した少なくとも2つの異なるポリマーブロック(例えば、各々は、1つ以上の1,1−二置換アルケン化合物を含有する)を有するランダム共重合体中のモノマーの連鎖分布である。(例えば、約20リットル以上の反応器に)規模を拡大することができ、または1時間当たり約10kg以上のポリマーのスループットを有する重合プロセスも必要とされている。エマルションをもたらすプロセスも必要とされている。そのようなエマルションは、塗装、被膜、仕上げ、研磨、及び接着などの用途で有用であり得る。例えば、制御されたサイズのエマルション粒子を有するエマルションをもたらすプロセス及びポリマー系を必要とする場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第7,241,834号明細書
【発明の概要】
【0013】
本開示の一態様は、約25重量%以上のキャリア液、界面活性剤(例えば、乳化剤)、及び1つ以上のモノマーを含む混合物を撹拌して、キャリア液中の1つ以上のモノマーのミセルを形成する工程と、1つ以上のモノマーは、1つ以上の1,1−二置換アルケンを含み、活性剤をミセル中のモノマーの少なくとも1つと反応させて、1つ以上のモノマーのアニオン重合を開始させる工程と、1つ以上のモノマーを約700g/モル以上の数平均分子量にアニオン重合する工程とを含む、プロセスに関する。
【0014】
本開示の別の態様は、1つ以上の1,1−二置換アルケンモノマーを含むポリマーに関する。ポリマーは、本明細書の教示による反応などのエマルション重合反応を用いて調製してもよい。
【0015】
本開示の別の態様は、1つ以上の1,1−二置換アルケンモノマーと1つ以上の添加剤とを含む、高分子組成物に関する。
【0016】
本開示の別の態様は、エマルションを形成するための攪拌装置を有する反応器と、約30重量%以上の水と、1つ以上の1,1−二置換アルケンを含む約10重量%以上の1つ以上のモノマーと、1つ以上の界面活性剤とを含む、1つ以上のモノマーを重合するためのシステムに関する。好ましくは、攪拌装置は、かくはん装置または超音波処理装置を含む。システムは、1,1−二置換アルケンのアニオン重合を開始させるための活性剤(複数可)を含むのが好ましい。
【0017】
本開示の別の態様は、1,1−二置換アルケン化合物である第1の主モノマーを含む第1のポリマーブロックを有するブロック共重合体に関し、第1の主モノマーは、第1のポリマーブロックの総重量に基づいて、約50重量%以上の濃度で存在し、第1のポリマーブロックは、第1の主モノマーとは異なる第2の主モノマーを含む第2のポリマーブロックに共有結合しており、第2の主モノマーは、第2のポリマーブロックの総重量に基づいて、約50重量%以上の濃度で存在する。
【0018】
本開示の別の態様は、約4〜約50の数平均重合度を有する低分子量ポリマーに関し、低分子量ポリマーは、低分子量ポリマーの総重量に基づいて、約60重量%以上の1つ以上の1,1−二置換アルケン化合物を含む。好ましくは、低分子量ポリマーは、低分子量ポリマーの総重量に基づいて、約90重量%以上で存在する主モノマーを含み、主モノマーは、1つ以上の1,1−二置換アルケン化合物の1つである。
【0019】
本明細書の教示による方法は、制御を改善された分子量、制御を改善された分子量分散、または両方を有する1つ以上の1,1−二置換アルケンモノマーを含むポリマーを生成するために採用してもよい。例えば、エマルション重合方法は、1,1−二置換アルケンモノマーを含む低分子量ポリマーを制御可能に生成するために採用してもよい。本明細書の教示による方法は、1,1−二置換アルケンを含む高分子量ポリマーを制御可能に生成するために採用してもよい。本明細書の教示による方法は、制御を改善されたモノマー連鎖分布を有する2つ以上の1,1−二置換アルケンモノマーを含むランダム共重合体を生成するために採用してもよい。本明細書の教示による方法は、2つの異なるポリマーブロックを含むブロック共重合体を生成するために採用してもよく、ブロック共重合体は、1つ以上の1,1−二置換アルケンモノマーを含む。本明細書の教示による方法は、一般的に高ポリマー濃度(例えば、約10重量%以上)を有する、及び/または、低粘度を有するエマルションを生成するために採用してもよい。本明細書の教示による方法は、約10kg/時間以上のスループット速度で、及び/または、約20リットル以上の(例えば、エマルションの)容量を有する反応器システム中で、アニオン重合を用いてポリマーを生成するために採用してもよい。例えば、本明細書の教示による方法は、試験規模または製造規模の生成する場合であっても(例えば、プロセスが一般的に、重合中の温度スパイクがないように)重合中の温度をより良く制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】アニオン重合を用いて、本明細書の教示による1,1−二置換アルケンモノマーを含むポリマーを重合するためのエマルション系の特徴を示す図である。
図2】アニオン重合を用いて、1,1−二置換アルケンモノマーを含むポリマーを重合するためのプロセスの特徴を示す図である。
図3A図3A及び3Bは、エマルション重合を介してモノマーをポリマーに変換することを示す代表的なNMRスペクトログラムを示す。図3Aは、重合反応の初期段階に採取したものであり、6.45ppmでのピークは、未反応モノマーの存在を同定する。
図3B図3A及び3Bは、エマルション重合を介してモノマーをポリマーに変換することを示す代表的なNMRスペクトログラムを示す。図3Bは、重合反応の終期段階に採取したものであり、6.45ppmで検出可能なピークはない。
図4】本明細書の教示によるポリマーの分子量分散の特徴付けに採用した代表的なGPCクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
驚くべきことに、酸の存在下で水または水分とマイケル付加反応することが可能な1,1−二置換アルケンを含むモノマーが、エマルション重合プロセスを用いてアニオン重合し得ることが分かった。さらに、驚くべきことに、1,1−二置換アルケンを含むポリマーを(例えば、本明細書の教示によるアニオンエマルション重合プロセスなどのアニオン重合プロセスを用いて)重合して、ポリマーを制御可能に生成(例えば、制御された分子量及び/または構造を有するポリマーを生成)し得ることが分かった。エマルション重合プロセスでは、連続した搬送流体相と分散相とを含む2つ以上の非相溶性相が形成され、モノマー(複数可)、及び/または、モノマー(複数可)の重合からの反応生成物を含む。エマルションは、分散相の安定性を改善することが可能な界面活性剤(即ち、乳化剤)を含むのが好ましい。本明細書の教示による方法を使用して、ホモポリマーまたは共重合体を調製してもよい。例えば、ポリマーは、ランダム共重合体またはブロック共重合体であってもよい。
【0022】
図1は、本明細書の教示によるエマルション系で用いられてもよい特徴を示す。エマルション系10は、連続液相12と分散相14とを含む。分散相は、ミセルの形態であってもよい。分散相14は、界面活性剤16を含み、これは、界面活性剤層16として提示してもよい。分散相14は、モノマー及び/またはポリマー26を含む内部を有する。重合反応前に、分散相は、モノマー26を含んでもよく、任意のポリマー26を実質的に含まないことが理解されるであろう。重合反応の開始後、分散相は、モノマー及びポリマー26の両方を含んでもよい。分散相が最終的にポリマー26を含み、モノマーを実質的または完全に含まないように、モノマーは完全に変換されてもよい。界面活性剤層16は、内面22及び外面20を有してもよい。内面22は、モノマー及び/またはポリマー26と接触してもよい。外面20は、連続液相12と接触してもよい。連続液相12は、キャリア液28を含むかまたはキャリア液28から実質的になってもよい(例えば、連続液相の総容量に基づいて、約90容量%以上または約98容量%以上)。キャリア液28は、好ましくは水、より好ましくは脱イオン水を含む。モノマー26及び/またはポリマー26は、1つ以上の1,1−二置換アルケン化合物を含むのが好ましい。
【0023】
モノマーは、酸の存在下で水または水分とマイケル付加反応することが可能な1つ以上のモノマーを含む。モノマーは、典型的には、1つ以上の1,1−二置換アルケン化合物(例えば、1つ以上の1,1−二置換エチレン化合物)を含む。1,1−二置換アルケンは、主モノマー(即ち、ポリマーブロックまたは全ポリマーの50重量%以上で存在するモノマー)であるのが好ましい。1,1−二置換アルケンモノマーは、化合物(例えば、モノマー)であり、中心炭素原子は、別の炭素原子に二重結合して、エチレン基を形成する。中心炭素原子は、2つのカルボニル基にさらに結合する。各カルボニル基は、直接結合を介して、または酸素原子を介してヒドロカルビル基に結合する。ヒドロカルビル基が直接結合を介してカルボニル基に結合する場合、ケト基が形成される。ヒドロカルビル基が酸素原子を介してカルボニル基に結合する場合、エステル基が形成される。1,1−二置換アルケンは、好ましくは、以下の式Iに示すような構造を有し、X及びXは、酸素原子または直接結合であり、R及びRは、それぞれ同一または異なっていてもよいヒドロカルビル基である。X及びXの両方は、式IIAに示すような酸素原子であってもよく、X及びXの一方は、酸素原子であってもよく、他方は、式IIBに示すような直接結合であってもよく、またはX及びXの両方は、式IICに示すような直接結合であってもよい。本明細書中で使用される1,1−二置換アルケン化合物は、全てエステル基(式IIAに示すような)、全てケト基(式IIBに示すような)、またはそれらの混合物(式IICに示すような)を有してもよい。全てのエステル基を有する化合物は、種々のそのような化合物を合成する柔軟性ゆえ好適である。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【0024】
本明細書中で使用される1つ以上は、記載した構成要素の少なくとも1つまたは2つ以上が開示されたように使用され得ることを意味する。官能性に対して使用される基準は、理論的な官能性を意味し、これは、一般的に、使用した成分の化学量論から算出することができる。一般的に、実際の官能性は、原料の不完全性、反応物質の不完全な変換、及び副生成物の形成により異なる。この文脈における耐久性は、いったん硬化した組成物がその設計された機能を実行するのに十分に強いままであることを意味し、硬化した組成物が接着剤である実施形態では、接着剤は、硬化した組成物を含有する構造の寿命または寿命のほとんどにわたって基板を一緒に保持する。この耐久性の指標として、硬化可能な組成物(例えば、接着剤)は、加速老化中に優れた結果を示すのが好ましい。構成要素の残留物含有量は、遊離形態で存在する構成要素、またはポリマーなどの別の物質と反応した構成要素の量を指す。典型的には、構成要素の残留物含有量は、構成要素または組成物を調製するのに利用した成分から算出することができる。あるいは、公知の分析技術を利用して決定することができる。ヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄及びリンを意味し、より好ましいヘテロ原子としては、窒素及び酸素が挙げられる。本明細書中で使用されるヒドロカルビルは、1つ以上のヘテロ原子を随意に含有してもよい1つ以上の炭素原子主鎖及び水素原子を含有する基を指す。ヒドロカルビル基がヘテロ原子を含有する場合、ヘテロ原子は、当業者に周知の1つ以上の官能基を形成してもよい。ヒドロカルビル基は、脂環式、脂肪族、芳香族、またはそのようなセグメントの任意の組み合わせを含有してもよい。脂肪族セグメントは、直鎖または分枝状であってもよい。脂肪族及び脂環式セグメントは、1つ以上の二重及び/または、三重結合を含んでもよい。ヒドロカルビル基に含まれるものは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカリール及びアラルキル基である。脂環式基は、環状部分及び非環状部分の両方を含有してもよい。ヒドロカルビレンは、ヒドロカルビル基、または、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アルカリレン及びアラルキレンなどの2つ以上の価数を有する記載のサブセットのいずれかを意味する。ヒドロカルビル基の一方または両方は、1つ以上の炭素原子及び1つ以上の水素原子からなってもよい。本明細書中で使用される場合、重量%または重量部は、特に指定されない限り、エマルション組成物の重量を指すかまたは該重量に基づくものである。
【0025】
他に規定されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。以下の参照文献は、本開示において使用される多数の用語についての一般的な定義を、当業者に提供する:Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(2nd ed.1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker ed.,1988);The Glossary of Genetics、5th Ed.,R.Rieger et al.(eds.)、Springer Verlag(1991);及び Hale & Marham、The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書中で使用される場合、特に指定されない限り、以下の用語は、これらの文献で定義された意味となる。
【0026】
1,1−二置換アルケン化合物は、それに二重結合が付着した炭素を有し、カルボニル基の2つの炭素原子にさらに結合する化合物を意味する。好ましいクラスの1,1−二置換アルケン化合物は、核となる式を有する化合物を指すメチレンマロン酸である。
【化5】
用語「単官能性」は、唯一の核となる式を有する1,1−二置換アルケン化合物またはメチレンマロン酸を指す。用語「二官能性」は、2つの核となる式の各々における1つの酸素原子間のヒドロカルビル連結を介して結合した2つの核となる式を有する1,1−二置換アルケン化合物またはメチレンマロン酸を指す。用語「多官能性」は、2つの隣接した核となる式の各々における1つの酸素原子間のヒドロカルビル連結を介して鎖を形成する2つ以上の核となる式を有する1,1−二置換アルケン化合物またはメチレンマロン酸を指す。用語「潜在酸を形成する不純物(複数可)」は、1,1−二置換アルケン化合物またはメチレンマロン酸と一緒に存在する場合には、時間と共に酸に変換される任意の不純物を指す。これらの不純物から形成された酸は、1,1−二置換アルケン化合物の過剰な安定化をもたらすことで、化合物の全体の質及び反応性を減少させることがある。用語「ケタール」は、ケタール官能性を有する分子;即ち、2つの−OR基に結合する炭素を含有する分子を指す。ここで、Oは酸素であり、Rは任意のアルキル基を表す。用語「揮発性」及び「不揮発性」は、揮発性の場合には常温及び標準圧で容易に蒸発することができ;または、不揮発性の場合には常温及び標準圧で容易に蒸発することができない化合物を指す。本明細書中で使用される場合、用語「安定化」(例えば、「安定化」1,1−二置換アルケン化合物または同を含むモノマー組成物の文脈では)は、活性剤で活性化する前に、時間と共に実質的に重合しない、実質的に硬くならない、ゲルを実質的に形成しない、実質的に厚くならない、またはあるいは時間と共に粘度を実質的に増加させない、及び/または、時間と共に硬化速度の最小限の損失を実質的に示す(即ち、硬化速度が維持される)化合物(またはモノマー組成物)の傾向性を指す。本明細書中で使用される場合、用語「保管寿命」(例えば、改善された「保管寿命」を有する1,1−二置換アルケン化合物の文脈と同様に)は、所与の期間;例えば、1ヵ月、6ヵ月、またはさらに1年以上にわたって安定化される1,1−二置換アルケン化合物を指す。
【0027】
ヒドロカルビル基(例えば、R及びR)の各々は、直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖アルキルアルケニル、直鎖または分枝鎖アルキニル、シクロアルキル、アルキル置換シクロアルキル、アリール、アラルキル、またはアルカリールを含む。ヒドロカルビル基は、ヒドロカルビル基の主鎖中に1つ以上のヘテロ原子を随意に含んでもよい。ヒドロカルビル基は、モノマーまたはモノマーから調製されたポリマーの究極機能に負の影響を及ぼさない置換基で置換されてもよい。好ましい置換基としては、アルキル、ハロ、アルコキシ、アルキルチオ、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、アジド、カルボキシ、アシロキシ、及びスルホニル基が挙げられる。より好ましい置換基としては、アルキル、ハロ、アルコキシ、アルキルチオ、及びヒドロキシル基が挙げられる。最も好ましい置換基としては、ハロ、アルキル、及びアルコキシ基が挙げられる。
【0028】
本明細書中で使用される場合、アルカリールは、アリール基が結合したアルキル基を意味する。本明細書中で使用される場合、アラルキルは、アルキル基が結合したアリール基を意味し、ジフェニルメチル基またはジフェニルプロピル基などのアルキレン架橋アリール基を含む。本明細書中で使用される場合、アリール基は、1つ以上の芳香族環を含んでもよい。シクロアルキル基は、1つ以上の環を含有する基、架橋環を随意に含む基を含む。本明細書中で使用される場合、アルキル置換シクロアルキルは、シクロアルキル環に結合する1つ以上のアルキル基を有するシクロアルキル基を意味する。
【0029】
好ましいヒドロカルビル基としては、1〜30炭素原子、より好ましくは1〜20炭素原子、最も好ましくは1〜12炭素原子が挙げられる。主鎖中にヘテロ原子を有する好ましいヒドロカルビル基は、1つ以上のアルキルエーテル基または1つ以上のアルキレンオキシ基を有するアルキルエーテルである。好ましいアルキルエーテル基は、エトキシ、プロポキシ、及びブトキシである。そのような化合物は、好ましくは約1〜約100アルキレンオキシ基、より好ましくは約1〜約40アルキレンオキシ基、より好ましくは約1〜約12アルキレンオキシ基、最も好ましくは約1〜約6アルキレンオキシ基を含有する。
【0030】
1つ以上のヒドロカルビル基(例えば、R、R、または両方)は、C1−15直鎖または分枝鎖アルキル、C1−15直鎖または分枝鎖アルケニル、C5−18シクロアルキル、C6−24アルキル置換シクロアルキル、C4−18アリール、C4−20アラルキル、またはC4−20アラルキルを含むのが好ましい。より好ましくは、ヒドロカルビル基は、C1−8直鎖または分枝鎖アルキル、C5−12シクロアルキル、C6−12アルキル置換シクロアルキル、C4−18アリール、C4−20アラルキル、またはC4−20アラルキルを含む。
【0031】
好ましいアルキル基としては、メチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第三級ブチル、ヘキシル、エチルペンチル、及びヘキシル基が挙げられる。より好ましいアルキル基としては、メチル及びエチルが挙げられる。好ましいシクロアルキル基としては、シクロヘキシル及びフェンキルが挙げられる。好ましいアルキル置換基としては、メンチル及びイソボルニルが挙げられる。
【0032】
カルボニル基に付着した最も好ましいヒドロカルビル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第三級、ペンチル、ヘキシル、オクチル、フェンキル、メンチル、及びイソボルニルが挙げられる。
【0033】
特に好ましいモノマーとしては、メチレンマロン酸メチルプロピル、メチレンマロン酸ジヘキシル、メチレンマロン酸ジイソプロピル、メチレンマロン酸ブチルメチル、メチレンマロン酸エトキシエチルエチル、メチレンマロン酸メトキシエチルメチル、メチレンマロン酸ヘキシルエチル、メチレンマロン酸ジペンチル、メチレンマロン酸エチルペンチル、メチレンマロン酸メチルペンチル、メチレンマロン酸エチルエチルメトキシル、メチレンマロン酸エトキシエチルメチル、メチレンマロン酸ブチルエチル、メチレンマロン酸ジブチル、メチレンマロン酸ジエチル(DEMM)、メチレンマロン酸ジエトキシエチル、メチレンマロン酸ジメチル、ジ−N−プロピルメチレンマロン酸、メチレンマロン酸エチルヘキシル、メチレンマロン酸メチルフェンキル、メチレンマロン酸エチルフェンキル、メチレンマロン酸2フェニルプロピルエチル、メチレンマロン酸3フェニルプロピルエチル、及びメチレンマロン酸ジメトキシエチルが挙げられる。
【0034】
1,1−二置換アルケンのいくつかまたは全ては、2つ以上の中心核単位、したがって、2つ以上のアルケン基を有する多官能性であってもよい。例示の多官能性1,1−二置換アルケンを式で示す:
【化6】
式中、R、R及びXは、上記で定義した通りであり、Nは、1以上の整数であり;Rは、ヒドロカルビル基であり、及び1,1−二置換アルケンは、n+1アルケンを有する。好ましくは、nは、1〜約7であり、より好ましくは1〜約3、さらにより好ましくは1である。例示の実施形態では、Rは、出現毎に別々に、直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖アルケニル、直鎖または分枝鎖アルキニル、シクロアルキル、アルキル置換シクロアルキル、アリール、アラルキル、またはアルカリールであり、ヒドロカルビル基は、ヒドロカルビル基の主鎖中の1つ以上のヘテロ原子を含有してもよく、化合物または化合物から調製されたポリマーの究極機能に負の影響を及ぼさない置換基で置換されてもよい。例示の置換基は、Rに対して有用なものとして開示されたものである。特定の実施形態では、Rは、出現毎に別々に、C1−15直鎖または分枝鎖アルキル、C2−15直鎖または分枝鎖アルケニル、C5−18シクロアルキル、C6−24アルキル置換シクロアルキル、C4−18アリール、C4−20アラルキル、またはC4−20アラルキル基である。特定の実施形態では、Rは、出現毎に別々に、C1−8直鎖または分枝鎖アルキル、C5−12シクロアルキル、C6−12アルキル置換シクロアルキル、C4−18アリール、C4−20アラルキル、またはC4−20アルカリール基である。
【0035】
1つ以上のモノマーが、直接結合(例えば、炭素−炭素結合)または酸素原子を介してカルボニル基の各々に結合したヒドロカルビル基を有する1,1−二置換アルケン化合物である共モノマー、例えば、上述の1つ以上の特徴を有するモノマーを含んでもよいことが、本明細書の教示に従って理解されるであろう。含まれるとすれば、共モノマーは、1,1−二置換アルケン化合物ではないモノマーで随意的にあってもよい。アニオン重合が可能な任意の共モノマーを採用してもよい。例えば、共モノマーは、1,1−二置換アルケン化合物と共にランダム共重合体を形成することができ、1,1−二置換アルケン化合物と共にブロック共重合体を形成することができ、または両方を形成することができてもよい。
【0036】
1,1−二置換アルケン化合物は、重合できるように十分に高い純度をもたらす方法を用いて調製するのが好ましい。1,1−二置換アルケン化合物の純度は、70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらにより好ましくは95モル%以上、最も好ましくは99モル%以上の1,1−二置換アルケン化合物が重合プロセス中にポリマーに変換されるように十分に高くてもよい。1,1−二置換アルケン化合物の純度は、1,1−二置換アルケン化合物の総モルに基づいて、好ましくは約85モル%以上、より好ましくは約90モル%以上、さらにより好ましくは約93モル%以上、さらにより好ましくは約95モル%以上、さらにより好ましくは約97モル%以上、最も好ましくは約97モル%以上である。1,1−二置換アルケン化合物が不純物を含む場合、好ましくは約40モル%以上、より好ましくは約50モル%以上の不純物分子は、類似の1,1−二置換アルカン化合物である。ジオキサン基を有する任意の不純物の濃度は、1,1−二置換アルケン化合物の総重量に基づいて、好ましくは約2モル%以下、より好ましくは約1モル%以下、さらにより好ましくは約0.2モル%以下、最も好ましくは約0.05モル%以下である。(例えば、アルケンに水をマイケル付加反応することで)類似のヒドロキシアルキル基で置換されたアルケン基を有する任意の不純物の総濃度は、1,1−二置換アルケン化合物中の総モルに基づいて、好ましくは約3モル%以下、より好ましくは約1モル%以下、さらにより好ましくは約0.1モル%以下、最も好ましくは約0.01モル%以下である。好ましい1,1−二置換アルケン化合物は、反応生成物または中間反応生成物(例えば、反応生成物、またはホルムアルデヒド及びマロン酸エステルの供給源の中間反応生成物)を蒸留する1つ以上の(例えば、2つ以上の)工程を含むプロセスによって調製される。
【0037】
重合プロセスは、連続相(例えば、キャリア液を含む連続相)を通じて分散したモノマー(例えば、1,1−二置換アルケン化合物)を含むミセルまたは分散相を有するエマルションを形成するための1つ以上の界面活性剤を含むのが好ましい。界面活性剤は、乳化剤、消泡剤、または湿潤剤であってもよい。界面活性剤は、モノマー及びキャリア液を含むシステムを混合あるいは撹拌することによって安定したエマルションが形成されるように、十分な量で存在するのが好ましい。本明細書の教示による界面活性剤は、エマルションの安定性を改善するための(即ち、キャリア液相中の分散相の安定性を改善するための)1つ以上の界面活性剤を含む。界面活性剤及び/または界面活性剤の量は、モノマーミセルの全てが界面活性剤の層によって覆われるように選択するのが好ましい。
【0038】
界面活性剤は、疎水性である第1の端部と、親水性である反対側の第2の端部とを含んでもよい。界面活性剤は、約0.1デバイを超える双極子モーメント(絶対値で)を有する界面活性剤の1つのセグメント(例えば、一端)を含んでもよい。
【0039】
界面活性剤は、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。界面活性剤は、重合プロセス中にアニオン界面活性剤を含まないことが好ましい。
【0040】
採用してもよい界面活性剤としては、アルキルポリサッカリド、アルキルアミンエトキシレート、アミンオキシド、ひまし油エトキシレート、セト−オレイル(ceto‐oleyl)、セト−ステアリール(ceto‐stearyl)、デシルアルコールエトキシレート、ジノニルフェノールエトキシレート、ドデシルフェノールエトキシレート、末端保護されたエトキシレート、エトキシ化アルカノールアミド、エチレングリコールエステル、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪アルコールアルコキシレート、ラウリル、モノ−分枝、ノニルフェノールエトキシレート、オクチルフェノールエトキシレート、ランダム共重合体アルコキシレート、ソルビタンエステルエトキシレート、ステアリン酸エトキシレート、合成、トールオイル脂肪酸エトキシレート(tall oil fatty acid)、獣脂アミンエトキシレート(tallow amine ethoxylates)、アルキルエーテルホスフェート、アルキルフェノールエーテルホスフェート、アルキルフェノールエーテルスルフェート、アルキルナフタレンスルホネート、濃縮ナフタレンスルホネート、芳香族炭化水素スルホン酸、脂肪アルコールスルフェート、アルキルエーテルカルボキシル酸及び塩、アルキルエーテルスルフェート、モノ−アルキルスルホスクシナマート、ジアルキルスルホスクシナート、アルキルホスフェート、アルキルベンゼンスルホン酸及び塩、アルファオレフィンスルホナート、濃縮ナフタレンスルホネート、ポリカルボキシレート、アルキルジメチルアミン、アルキルアミドプロピルアミン、四級化アミンエトキシレート、第四級アンモニウム化合物、及びそれらの混合物または組み合わせが挙げられる。
【0041】
採用してもよい両性界面活性剤の非限定例としては、アミンオキシド界面活性剤、スルタイン界面活性剤、ベタイン界面活性剤、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。好ましいスルタイン及びベタイン界面活性剤としては、ヒドロキシスルタイン及びヒドロキシブタインが挙げられる。限定されないが、採用してもよい例示の両性界面活性剤としては、コカミンオキシド、ココアミドプロピルアミンオキシド(cocoamidopropylamine oxide)、セタミンオキシド(cetamine oxide)、デシルアミンオキシド(decylamine oxide)、ラウラミンオキシド、ミリスチルアミンオキシド(myristylamine oxide)、セチルアミンオキシド、ステラミンオキシド(steramine oxide)、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン(cocamidopropyl hydroxysultaine)、カプリル/カプラミドプロピルベタイン(capryl/Capramidopropylbetaine)、コカミドプロピルベタイン、セチルベタイン、コカミドプロピルベタイン(cocamidopropyl betaine)、ラウリルアミドプロピルベタイン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0042】
カチオン界面活性剤の非限定例としては、第四級アンモニウムクロリド界面活性剤、第四級アンモニウムメチルスルフェート界面活性剤、エステル第四級界面活性剤、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。限定されないが、採用してもよい例示のカチオン界面活性剤としては、塩化セトリモニウム、ステアルアルコニウムクロリド(stearalkonium chloride)、オレアルコニウムクロリド、ステアルアミドプロパルコニウムクロリド(stearamidopropalkonium chloride)、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、アルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロリド、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、メチルビス(水素化獣脂アミドエチル)−2−ヒドロキシエチルアンモニウムメチルスルフェート、メチルビス(獣脂アミドエチル)−2−ヒドロキシエチルアンモニウムメチルスルフェート、メチルビス(獣脂アミドエチル)−2−獣脂イミダゾリニウムメチルスルフェート、ジアルキルアンモニウムメトサルフェート、ジアルキルエステルアンモニウムメトサルフェート、ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルアンモニウムメトサルフェート、ジアルキルアンモニウムメトサルフェート、ジアルキルエステルアンモニウムメトサルフェート、メチルビス[エチル(タローエート)]−2−ヒドロキシエチルアンモニウムメチルスルフェート、メチルビス[エチル(タローエート)]−2−ヒドロキシエチルアンモニウムメチルスルフェート、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0043】
非イオン性界面活性剤の非限定例としては、アルコキシレート界面活性剤、アミド界面活性剤、エステル界面活性剤、エトキシレート界面活性剤、ラクテート界面活性剤、トリグリセリド界面活性剤、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。限定されないが、例示の採用いてよい非イオン性界面活性剤としては、ポリアルコキシ化脂肪族塩基、ポリアルコキシ化アミド、アルキルフェノールアルコキシレート、アルキルフェノールブロック共重合体、アルキルフェノールエトキシレート、ポリアルキレンオキシドブロック共重合体、グリセリルココエート、アルコールアルコキシレート、ブチルベースブロック共重合体、ポリアルキレンオキシドブロック共重合体、N,N−ジメチルデカンアミド(N,N−ジメチルカプラミド)、N,N−ジメチルオクタンアミド(N,N−ジメチルカプリルアミド)、脂肪アルカノールアミド、オレイルジエタノールアミド、ラウリルジエタノールアミド、ココジエタノールアミド、脂肪ジエタノールアミド、ポリエチレングリコールコカミド、ポリエチレングリコールラウラミド、ラウリルモノエタノールアミド、ミリスチルモノエタノールアミド、ココモノイソプロパノールアミド、アルキルエーテルホスフェート、ホスフェートエステル、グリセリルモノステアレート、グリセロールモノオレエート、ポリグリセリルデカオレエート、ポリグリセロールエステル、ポリグリセロールポリリシノレート、中和アルコールホスフェート、カプリントリグリセリド、カプリルトリグリセリド、トリデシルアルコールホスフェートエステル、ノニルフェノールエトキシレートホスフェートエステル、トリメチロプロパントリカプリレートトリカプレートポリオールエステル、メチルカプリレート/カプレート、メチルラウレート、メチルミリステート、メチルパルミテート、メチルオレエート、アルコールホスフェート、トリメチロールプロパントリカプリレート/カプレートポリオールエステル、ペンタエリスリトールトリカプリレート/カプレートポリオールエステル、ペンタエリスリチルテトラカプリレート/テトラカプレート、ノニルフェノールホスフェートエステル、アルキルポリエトキシエタノールのホスフェートエステル、キャノーラ油メチルエステル、大豆油メチルエステル、ペンタエリスリトールテトラカプリレート/カプレート、トリメチロールプロパントリカプリレート/カプレート、アミン中和ホスフェートエステル、脂肪アルキルエトキシレート、アルコールエトキシレート、脂肪酸エトキシレート、獣脂アミンエトキシレート、オクチルフェノールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、ひまし油エトキシレート、ポリアルコキシ化脂肪族塩基、ポリアルコキシ化アミド、オクチルフェノールエトキシレート、トリスチリルフェノールエトキシレート、エトキシ化ポリアリールフェノールスルフェートのアンモニウム塩、トリスチリルフェノールエトキシレートホスフェートエステル、トリスチリルフェノールエトキシレートホスフェートエステルのカリウム塩、エトキシ化ココアミン、ソルビタールトリオレエートエトキシレート、ソルビタールモノオレエートエトキシレート、ラウリルラクチルラクテート、カプリントリグリセリド、カプリルトリグリセリド、水素化植物油、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0044】
好ましい界面活性剤(例えば、乳化剤)の一例は、エトキシ化ジオールなどのエトキシレートである。例えば、界面活性剤は、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールエトキシレートを含んでもよい。界面活性剤は、ポリ(アルケングリコール)を含んでもよい。好ましい界面活性剤の別の例は、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)共重合体である。好ましい界面活性剤の別の例は、アルコール、エトキシ化アルコール、または両方を含む界面活性剤である。例えば、界面活性剤は、CARBOWET(登録商標)138非イオン性界面活性剤(アルキルアルコール、ポリエチレングリコール、エトキシ化C9−C11アルコールを含む)を含んでもよい。好ましい界面活性剤の別の例は、ソルビタン、ソルビトール、またはポリオキシアルケンを含む界面活性剤である。例えば、界面活性剤は、ソルビタンモノパルミテート(非イオン性界面活性剤)を含んでもよい。好ましい界面活性剤の他の例としては、分枝ポリオキシエチレン(12)ノニルフェニルエーテル(IGEPAL(登録商標)CO−720)及びポリ(エチレングリコール)ソルビトールヘキサオレエート(PEGSH)が挙げられる。
【0045】
界面活性剤の量(例えば、乳化剤の量)は、モノマー及びそれに続くポリマー粒子を実質的に被包化する層を形成するのに十分であるのが好ましい。界面活性剤の量は、分散相が約10mm以下、約1mm以下、約300μm以下、または約100μm以下の直径を有するように十分であるのが好ましい。界面活性剤の量は、分散相が約0.01μm以上、約0.1μm以上、約1μm以上、約10μm以上、または約50μm以上の直径を有するように十分であるのが好ましい。界面活性剤の濃度は、エマルションの総重量に基づいて、約0.001重量%以上、好ましくは約0.01重量%以上、より好ましくは約0.1重量%以上、及び最も好ましくは約0.5重量%以上であってもよい。界面活性剤の濃度は、エマルションの総重量に基づいて、約15重量%以下、好ましくは約10重量%以下、及びより好ましくは約6重量%以下、及び最も好ましくは約3重量%以下であってもよい。(例えば、重合プロセスの終了時の)界面活性剤のエマルション中のモノマー及びポリマーの総重量に対する重量比は、好ましくは約0.0001以上、より好ましくは約0.002以上、さらにより好ましくは約0.005以上、及び最も好ましくは約0.01以上である。(例えば、重合プロセスの終了時の)界面活性剤のエマルション中のモノマー及びポリマーの総重量に対する重量比は、好ましくは約5以下(すなわち、約5:1以下)、より好ましくは約1以下、さらにより好ましくは約0.5以下、及び最も好ましくは約0.1以下である。
【0046】
界面活性剤は、重合プロセス前に添加するのが好ましい。しかしながら、1つ以上の界面活性剤は、重合プロセス後に(例えば、エマルション重合プロセス後に)添加してもよいことが理解されるであろう。例えば、界面活性剤は、エマルションを安定化する(例えば、約1週間以上、約1ヵ月間以上、または約3ヵ月間以上の長期間安定性)ために重合プロセス後に添加してもよい。
【0047】
キャリア液は、1つ以上のモノマーの溶媒ではない任意の液体であってもよい。キャリア液は、水、グリコール、アルコール、ケトン、アルカン、非プロトン性化合物、エステル、エーテル、アセトン、酢酸塩、ヒドロフラン、フェニル、または1つ以上のアリール基を含む化合物、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。より好ましいキャリア液としては、水、グリコール、アルコール、ケトン、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。さらにより好ましいキャリア液としては、水、エチレングリコール、メタノール、エチレングリコールのモノアルキルエーテル、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。好ましいキャリア液としては、単一化合物が挙げられ、または、例えば、キャリア液が単一相になるように混和性である化合物の混合物が挙げられる。キャリア液は、約10℃以下、及び好ましくは約0℃以下の凝固点を有してもよい。
【0048】
キャリア液は、水を含む、から本質的になる、またはから完全になるのが好ましい。例えば、キャリア液は、脱イオン水から完全になってもよい。水質は、重要な役割を果たし得る。例えば、外来イオンの存在は、開始プロセス、界面活性剤(複数可)の効果、及びそれに続くpH制御と相互作用し得る。水中の外来イオン(すなわち、H3O+及びOH−以外のイオン)の濃度は、ISO 3696に従って測定した際に、水がクラス3以上、クラス2以上、またはクラス1以上の要件を満たすように十分に低いのが好ましい。水の伝導度は、好ましくは約10mS/m以下、より好ましくは約1mS/m以下、さらにより好ましくは約100μS/m以下、及び最も好ましくは約10μS/m以下である。水の伝導度は、約0以上、約0.1μS/m以上、または約1μS/m以上であってもよい。
【0049】
エマルション重合は、1,1−二置換アルケン含有化合物のアニオン重合を開始することができる活性剤を用いて開始してもよい。活性剤は、求核試薬である化合物または求核試薬を形成する化合物であってもよい。採用してもよい活性剤(すなわち、開始剤)の例としては、イオン性の金属アミド、水酸化物、シアン化物、ホスフィン、アルコキシド、アミン及び有機金属化合物(アルキルリチウム化合物など)、及び金属ベンゾエートが挙げられる。重合活性剤は、参照によって本明細書中に組み込まれる、2015年3月12日に公開された米国特許出願公開US2015/0073110A1に記載の1つ以上の特徴(例えば、活性化剤及び/または重合活性剤の1つまたは任意の組み合わせを含む、活性化剤をある濃度または濃度範囲で含む、またはプロセス工程を含む)を有してもよい(例えば、段落[0024]〜[0050]を参照)。例として、活性剤は、安息香酸ナトリウムなどの1つ以上の金属ベンゾエートを含む、から本質的になる、またはから完全になってもよい。活性剤を使用することの代わりとして、放射源、好ましくはUV光を用いて重合を活性化してもよい。ポリマーの分子量は、モノマー対活性剤のモル比を調整することによって調整してもよい。モノマー対活性剤のモル比は、約25以上、約50以上、約100以上、約500以上、または約1,000以上であるのが好ましい。モノマー対活性剤のモル比は、約100,000以下、約50,000以下、約10,000以下、または約2,000以下であるのが好ましい。
【0050】
特定の実施形態によれば、適切な重合活性剤は、選択された重合可能な組成物と接触した際に実質的に重合を開始することができる任意の作用物質から一般的に選択することができる。特定の実施形態では、周囲条件下で、熱または放射からの外部エネルギーを必要とせずに重合を誘発することができる重合開始剤を選択することが有利であり得る。重合可能な組成物が1つ以上の1,1−二置換アルケン化合物を含む実施形態では、アニオン重合を開始することができるほとんどの求核開始剤を含む広範囲の重合開始剤が適切であり得る。例えば、適切な開始剤としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、ハロゲン化物(ハロゲン含有塩)、金属酸化物、及びそのような塩または酸化物を含有する混合物が挙げられる。そのような塩のアニオンの例としては、ハロゲン、酢酸塩、安息香酸塩、硫黄、炭酸塩、ケイ酸塩などに基づくアニオンが挙げられる。そのような塩を含有する混合物は、天然発生または合成であってもよい。1,1−二置換アルケン化合物の適切な重合開始剤の具体的な例としては、ケイ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、及び炭酸カルシウムなどのイオン性化合物が挙げられ得る。そのような重合可能な組成物のさらなる適切な重合開始剤は、参照によって本明細書中に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0073110号にも記載されている。
【0051】
エマルション及び/または1つ以上のモノマー(例えば、1,1−二置換アルケン化合物)は、重合条件に暴露する前にモノマーを安定化させるために、または、所望の使用のために最終ポリマーの特性を調整するために他の成分をさらに含有してもよい。
【0052】
重合反応前に、1つ以上の阻害剤を添加して、モノマーの反応を減少または防止してもよい。
【0053】
酸含有化合物は、エマルション重合プロセスで採用してもよい。種々のモノマーでは、反応速度を減少させるため、多分散性を減少させるため、または両方のために、酸含有化合物の使用を採用してもよい。さらなる利点は、安定したモノマー液滴及びポリマー粒子の形成(即ち、合体及び/または凝集の可能性を減少させること)である。酸含有化合物の濃度が高すぎる場合、重合反応は、商業化するには遅すぎる場合がある。酸含有化合物の濃度が低すぎる場合、重合反応は、高多分散性指標を有するポリマーをもたらし得る。酸含有化合物は、他の界面活性剤を使用せずに、キャリア液中にモノマーのエマルションを形成することができる化合物(例えば、乳化剤または他の界面活性剤)であってもよい。しかしながら、酸含有化合物が界面活性剤として機能できる場合、第2の界面活性剤(例えば、酸を形成しない界面活性剤)を採用することが好ましい。酸含有化合物は、1つ以上の酸基を有する有機化合物であってもよい。例えば、酸含有化合物は、硫黄、リン、塩素、または臭素、フッ素または窒素原子を有する1つ以上の酸基を含んでもよい。酸含有化合物は、(例えば、硝酸基または亜硝酸基中に)1つ以上の窒素原子、及び/または(例えば、スルホン酸基中に)1つ以上の硫黄原子を含むのが好ましい。特に好ましい酸含有化合物は、4−ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)である。DBSAは、非相溶性または二相混合物中において、モノマー−水界面(例えば、主に、界面の水側)でプロトンを提供するように配向しているため、反応性モノマーの機能阻害または停止を誘発し、及び/または、ポリマー鎖を成長させることが知られている。他の酸含有界面活性剤は、ポリマーの開始、成長、または停止に同様の影響を及ぼし得ることが理解されるであろう。界面活性剤の総重量に対する酸含有化合物の重量比は、好ましくは約0.6以下、より好ましくは約0.3以下、さらにより好ましくは0.1以下、及び最も好ましくは約0.05以下である。界面活性剤の総重量に対する酸含有化合物の重量比は、好ましくは約0.001以上、より好ましくは約0.005以上、及び最も好ましくは約0.01以上である。(例えば、第1のポリマーブロックを重合するための)重合工程で採用されるモノマーの量に対する酸含有化合物の重量比は、好ましくは約0.00005以上、より好ましくは約0.0002以上、及び最も好ましくは約0.0005以上である。(例えば、第1のポリマーブロックを重合するための)重合工程で採用されるモノマーの量に対する酸含有化合物の重量比は、好ましくは約0.2以下、より好ましくは約0.04以下、及び最も好ましくは約0.005以下である。
【0054】
重合プロセスは、少なくとも界面活性剤及び担体流体を含む混合物にせん断力または超音波処理を印加して、エマルションを形成する工程を含んでもよい。例えば、プロセスは、混合物を撹拌(stirringまたはagitating)してエマルションを生成する工程を含んでもよい。
【0055】
重合プロセスは、(例えば、単一バッチ反応器または一連のバッチ反応器を用いて)バッチプロセスであってもよい。重合プロセスは、反応器の長さに沿ってエマルションを搬送するプロセスなどの連続プロセスであってもよい。バッチプロセスまたは連続プロセスでは、全てのモノマーを単一段階(例えば、重合活性剤の添加前、または重合反応の開始時または開始近く)で添加してもよく、または重合反応中の複数段階で添加してもよい。
【0056】
重合プロセスは、ランダム共重合体またはブロック共重合体などのホモポリマーまたは共重合体の重合に採用してもよい。ホモポリマーまたは共重合体は、本明細書の教示による1つ以上の1,1−二置換アルケン含有化合物を含む。ポリマー中の1,1−二置換アルケン含有化合物の量は、エマルションポリマーの総重量に基づいて、好ましくは約5重量%以上、より好ましくは約30重量%以上、さらにより好ましくは約50重量%以上、さらにより好ましくは約70重量%以上である。例えば、1つ以上のポリマーブロックは、1,1−二置換アルケン含有化合物から本質的または完全になってもよい。
【0057】
モノマーの多段階付加は、異なる組成物によるポリマーブロックを有するブロック共重合体の重合に採用してもよい。例えば、ブロック共重合体は、第1のポリマーブロック(ブロックA)、及び第2のポリマーブロック(ブロックB)を有してもよい。ブロック共重合体は、2以上のブロック、または3以上のブロックを有してもよい。Aブロック及びBブロックは、同じ(しかしながら、異なる濃度で)である少なくとも1つのモノマーを含んでもよく、または異なるモノマーのみを含んでもよい。例えば、Aブロックは、第1のモノマーのホモポリマーであってもよく、Bブロックは、各々が第1のモノマーとは異なる1つ以上の第2のモノマーを含んでもよい。第1のポリマーブロックは、ホモポリマーまたは共重合体(例えば、ランダム共重合体)であってもよい。第2のポリマーブロックは、ホモポリマーまたは共重合体(例えば、ランダム共重合体)であってもよい。第1のポリマーブロック及び第2のポリマーブロックの各々は、本明細書の教示による1つ以上の1,1−二置換アルケンを含有する化合物を含むのが好ましい。好ましくは、第1のポリマーブロック中及び/または、第2のポリマーブロック中の1,1−二置換アルケンを含有する化合物の量は、ポリマーブロックの総重量に基づいて、約30重量%以上、好ましくは約50重量%以上、さらにより好ましくは約70重量%以上であってもよい。例えば、1つ以上のポリマーブロックは、1,1−二置換アルケンを含有する化合物から本質的または完全になってもよい。1つ以上のブロックは、任意の1,1−二置換アルケンを含有する化合物を本質的または完全に含まなくてもよいことが理解されるであろう。例えば、1つ以上のポリマーブロックは、1つ以上のコンジュゲートジエンモノマー及び/または、1つ以上のスチレンモノマーを含んでもよい。
【0058】
重合プロセス中、エマルションは、ミセル構造を作成及び/または維持するために、撹拌(stirredまたはotherwise agitated)するのが好ましい。例えば、モノマー、乳化剤、及びキャリア液を含むエマルションは、10rpm以上、50rpm以上、200rpm以上、または1,000rpm以上の速度で混合してもよい。
【0059】
エマルション重合プロセスは、キャリア液の分圧が一般的に低い反応温度を含むのが好ましい。例えば、キャリア液の分圧は、約400トール以下、約200トール以下、約100トール以下、約55トール以下、または約10トール以下であってもよい。反応温度は、好ましくは約80℃以下、より好ましくは約70℃以下、さらにより好ましくは約60℃以下、さらにより好ましくは約55℃以下、さらにより好ましくは約45℃以下、さらにより好ましくは約40℃以下、及び最も好ましくは約30℃以下である。反応温度は、典型的には、キャリア液が液体状態であるように十分に高い。例えば、反応温度は、約−30℃以上、約−10℃以上、または約10℃以上、または約15℃以上であってもよい。
【0060】
1,1−二置換アルケン化合物を重合する場合、エマルションの初期pHが約7以下、約6.8以下、約6.6以下、または約6.4以下になるように、1つ以上の酸化合物をエマルション、モノマー、または両方に添加することが望ましい場合がある。そのような初期酸性条件は、モノマーの開始を制御あるいは限定するのに有益であり得ると考えられる。例えば、1,1−二置換アルケン化合物は、塩基性条件下で自動的に開始される化合物であってもよく、酸性条件の使用は、そのような自動開始を防止または最小限にし得る。酸性条件は、重合プロセスを通じて維持されるのが好ましい。pHが低すぎる場合、反応速度が低くなり得るかまたは反応が停止し得る。反応中のpHは、好ましくは約5以上、より好ましくは約5.5以上、さらにより好ましくは約5.9以上、及び最も好ましくは約6以上である。重合プロセス後、pHを増加または減少させるようにpHを調整してもよいことが理解されるであろう。重合プロセス後、初期pH(反応中)と後期pHとの差が約0.2以上、より好ましくは約0.3以上、さらにより好ましくは約0.4以上及び最も好ましくは約0.5以上であるように、pHを減少させるのが好ましい。例えば、プロセスは、pHを約4.0〜約6.2の範囲に、約4.5〜約6.0の範囲に、約5.0〜約6.0の範囲に、または約5.3〜約5.9の範囲に減少させる工程を含んでもよい。1,1−二置換アルケン化合物を重合する工程後、及び/または、ポリマーを任意の残基モノマーから分離する工程後、プロセスは、pHを(例えば、約6.5以上に、約6.9以上に、または約7以上に)増加させる工程を含んでもよい。
【0061】
エマルション組成物中のキャリア液の濃度は、エマルションのミセルが凝集しないように十分に高いのが好ましい。キャリア液の濃度は、キャリア液がヒートシンクとして機能し、重合中の温度の任意のスパイクを約30℃以下、より好ましくは約15℃以下、さらにより好ましくは約10℃以下、及び最も好ましくは約5℃以下に最小化するように十分に高くてもよい。キャリア液の濃度は、重合反応の完了であってもエマルションを形成することができるように十分に高くてもよい。例えば、エマルション重合プロセスによって調製されたポリマーのゼロせん断粘度に対するエマルションのゼロせん断粘度(25℃で測定)の比は、約0.2以下、約0.1以下、約0.02以下、または約0.005以下、または約0.001以下であってもよい。粘度比は、0以上であってもよい。キャリア液の濃度は、好ましくは約25重量%以上、さらにより好ましくは約30重量%以上、さらにより好ましくは約35重量%以上、及び最も好ましくは約40重量%以上である。キャリア液の濃度は、重合プロセス経済的であるように十分に低くすべきである。キャリア液の濃度は、好ましくは約98重量%以下、より好ましくは約80重量%以下、さらにより好ましくは約70重量%以下、及び最も好ましくは約65重量%以下である。
【0062】
エマルション重合プロセスは、重合反応の完了前に停止してもよく、または重合反応が完了するまで継続してもよい。重合反応が実質的に完了するように、反応速度は十分に早い、及び/または、反応時間は十分に長いのが好ましい。例えば、モノマー対ポリマーの変換は、約80重量%以上、約90重量%以上、約95重量%以上、約98重量%以上、約99重量%以上であってもよい。モノマーのポリマーへの変換は、約100重量%以下であってもよい。
【0063】
図2を参照すると、エマルション重合プロセス30は、典型的には、多相エマルション系32を開発する工程を含む。例えば、プロセスは、キャリア液、界面活性剤、及びモノマーを組み合わせる工程を含んでもよい。エマルションの成分は、1回添加してもよく、複数回で添加してもよく、またはいくつかの成分を別々に組み合わせてもよいことが理解されるであろう。多相エマルション系32の開発には、典型的には、攪拌を必要とする。攪拌(モノマー及び界面活性剤の相対濃度などの他の因子に沿って)の種類及び強度に応じて、多相エマルション系32中の分散相の粒径を制御することが可能な場合がある。プロセスは、典型的には、重合反応34を開始させる工程を含む。開始工程は、モノマーを含むミセルが確立された後に起こるのが好ましい。したがって、プロセスは、活性剤を(例えば、界面活性剤層を通過させることによって)キャリア液(連続相)からミセルに移動させる工程を含んでもよい。活性剤は、モノマーの添加前に、モノマーの添加と同時に、またはモノマーの第1部分の添加後に、及びモノマーの第2部分の添加前にシステムに添加してもよいことが理解されるであろう。モノマーの活性化後、プロセスは、アニオン重合反応36によってポリマーを成長させる工程を含む。成長工程は、例えば、38を急冷することによって、全てのモノマーが消費されるかまたは成長反応が停止するまで継続してもよく、またはさらなるアニオン重合反応が停止するように条件を変化させる。成長工程は、(例えば、モノマーが、ポリマー分子の反応性末端に接触することが難しい場合)ポリマーをモノマーから相分離することによって停止してもよい。急冷工程前に、モノマーを供給する1つ以上のさらなる工程(初期モノマー供給と同じかまたは異なってもよい)、及び重合反応を成長させる1つ以上のさらなる工程があってもよい。そのような各成長工程により、ポリマー分子量は、(例えば、さらなる活性剤を添加することによって)さらなる鎖活性化の条件が提供されない限り、一般的に増加する。得られたポリマーは、モノマーとさらに反応することができ、こうして「生きた」ポリマーとなり得ることが理解されるであろう。
【0064】
モノマーのポリマーへの変換は、図3A及び図3Bに示すような、1,1−二置換アルケンモノマーを重合する伝播反応の初期及び後期の段階に対応するNMR分光法を用いて測定してもよい。ここでは、モノマーは、メチレンマロン酸ジエチルであり、モノマーの濃度は、モノマーの反応性二重結合に対応する約6.45ppm 40でのピークで監視することができる。ヘキサメチルジシロキサンは、ここでは内部標準(すなわち、内部参照)42として使用し、約0ppmで見られる。他の化合物を内部標準として採用してもよいことが理解されるであろう。図3Aでは、NMRスペクトログラムは、モノマーの開始剤に対するモル比が約100:1で、安息香酸ナトリウムで開始させた試料から採取した第1アリコート上で測定した。第1アリコートは、反応を室温で約30秒間伝播させた後に採取した。第1アリコートを酸で急冷し、伝播反応を停止させた。図3Bは、約5分の伝播反応後に同じ試料から採取した第2アリコートからのNMRスペクトログラムを示す。図3Bで分かるように、モノマーは、約6.45ppm 40での反応性二重結合ピークがないことによって証明されるように、もはや検出可能ではない。
【0065】
本明細書の教示によるポリマーは、約700g/モル以上、より好ましくは約2,000g/モル以上、さらにより好ましくは約10,000g/モル以上、最も好ましくは約20,000g/モル以上の数平均分子量または重量平均分子量を有するのが好ましい。ポリマーの分子量は、ポリマーが容易に処理され得るように十分に低くてもよい。数平均分子量または重量平均分子量は、好ましくは約3,000,000g/モル以下、より好ましくは約1,000,000g/モル以下、さらにより好ましくは約500,000g/モル以下、最も好ましくは約200,000g/モル以下である。
【0066】
得られたポリマーは、約40,000g/モル以下、約30,000g/モル以下、または約20,000g/モル以下の数平均分子量を有する比較的低分子量のポリマーであってもよい。得られたポリマーは、40,000g/モル以上、約60,000g/モル以上、または約100,000g/モル以上の数平均分子量を有する比較的高分子量のポリマーであってもよい。
【0067】
得られたポリマーは、約1.00以上または約1.05以上の多分散性指標によって特徴付けられてもよい。得られたポリマーは、約10以下、好ましくは約7以下、より好ましくは約4以下、最も好ましくは約2.3以下の多分散性指標によって特徴付けられてもよい。得られたポリマーは、多分散性指標が約1.9以下、約1.7以下、約1.5以下、または約1.3以下になるような狭い分子量分散を有してもよい。
【0068】
驚くべきことに、本明細書の教示による酸含有化合物を採用することによって、重合反応速度を実質的に減少させることなくポリマー(例えば、ブロックポリマーブロック)の多分散性を減少させる可能性がある。例えば、酸含有化合物を使用しないこと以外は同じ方法を用いて調製されたポリマーの多分散性に対する、酸含有化合物で調製されたポリマーの多分散性の比は、約0.9以下、約0.8以下、約0.7以下、または約0.6以下であってもよい。(酸含有化合物を含まない以外は)同一プロセスでモノマーの80%をポリマーに変換する時間に対する、酸含有化合物を含むプロセスでモノマーの80%をポリマーに変換する時間の比は、好ましくは約5以下、より好ましくは約3以下、さらにより好ましくは約2以下、及び最も好ましくは約1.5以下である。
【0069】
ポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(すなわち、GPC)を用いて測定してもよい。図4は、キャリア液として脱イオン水を有するエマルション系中のメチレンマロン酸ジエチルを重合することによって調製されたホモポリマーのGPC曲線を示す。安息香酸ナトリウムは、モノマーのアニオン重合の活性剤として使用される。モノマー対安息香酸ナトリウム活性剤のモル比は、約100:1である。反応は、約100%のモノマーがポリマーに変換されるまで継続させた。得られたホモポリマーのGPC曲線58を図4に示す。このサンプルは、ポリマーの分子量特徴(例えば、重量平均分子量、ピーク分子量、数平均分子量、z平均分子量、及び多分散性指標)を算出するための面積50を定義する単一のピークを有する。GPC曲線58は、分の保持時間の関数として信号強度(濃度と相関する)を示す。較正曲線54を図4にも示す。較正曲線は、公知の分子量の一連のPMMA標準の保持時間を示す。これらの標準に基づいて分子量を測定するための下限56は、約200ダルトンである。図4で特徴付けたメチレンマロン酸ジエチルのポリマーは、約747の数平均分子量、約943の重量平均分子量、及び約1.26の多分散性指標(すなわち、Mw/Mn)を有する。
【0070】
エマルションミセルまたはポリマー粒径及び/または粒径分布(例えば、重合の完了後)は、プロセス考慮に基づいて、生成物制御を考慮することに基づいて、用途要件に基づいて、またはそれらの任意の組み合わせに基づいて制御してもよい。例えば、単一モードの粒径分布、複数モードの粒径分布(例えば、2つのモードの分布)、狭い粒径分布、広い粒径分布、またはそれらの任意の組み合わせを有するエマルション粒子である必要性がある場合がある。いくつかの状況では、一般的に大きなエマルション粒子(即ち、約1μm以上の数平均半径または約2μm以上の数平均直径を有する、好ましくは約2μm以上の数平均半径を有する)を調製することが望ましい場合がある。他の状況では、一般的に小さいエマルション粒子(すなわち、約1μm未満、好ましくは約0.7μm以下の平均半径を有する)を調製することが望ましい場合がある。エマルション粒子は、約10mm以下、約2mm以下、約1mm以下、約300μm以下、約100μm以下、または約50μm以下の数平均直径を有するのが好ましい。エマルション粒子は、約0.01μm以上、約0.02μm以上、約0.05μm以上、約0.10μm以上の数平均直径を有するのが好ましい。
【0071】
粒径の制御は、任意の公知の手段によって達成してもよい。例えば、粒径は、界面活性剤の量及び/または種類、任意の攪拌の種類、攪拌の量、またはそれらの任意の組み合わせによって制御してもよい。例として、撹拌または他の方法による機械的攪拌は、所望の粒径を得るために(例えば、混合速度を変えることによって)変更してもよい。一般的に、粒径は、混合速度の増加と共に減少させてもよい。しかしながら、混合速度が増すにつれて、混合速度のさらなる増加が粒径に影響を及ぼさないプラトー状態に到達し得る。一般的に、超音波処理などの他の攪拌手段を用いて、より小さい粒径(例えば、一般的に小さいエマルション粒径)を得ることが可能な場合がある。超音波処理を用いる場合、周波数は、好ましくは約0.2kHz以上、より好ましくは約1kHz以上、さらにより好ましくは約5kHz以上、及び最も好ましくは約20kHz以上である。典型的には、周波数は、約1000kHz以下、約500kHz以下、約200kHz以下、または約100kHz以下である。
【0072】
重合の完了後に粒径を制御することもできることが理解されるであろう。例えば、異なる数平均粒径及び/または異なる粒径分布を有する2つ以上のエマルションを組み合わせて、所望の得られる数平均粒径及び/または所望の得られる粒径分布を達成してもよい。本明細書中で使用される場合、粒径分布は、任意の公知の方法によって特徴付けられてもよい。例えば、粒径分布は、粒径の標準偏差、粒径分布曲線のモダリティ(すなわち、ピークの数)、または平均粒径対数平均粒径の比によって特徴付けられてもよい。数平均粒径に対する粒径の標準偏差の比は、好ましくは約0.80以下、より好ましくは約0.60以下、さらにより好ましくは約0.45以下、及び最も好ましくは約0.30以下である。
【0073】
本明細書の教示によるエマルションポリマーは、エラストマーとして特徴付けられてもよい。例えば、エマルションポリマーは、融解温度を実質的に含まず、約15℃以上のガラス転移温度を実質的に含まなくてもよい。
【0074】
本明細書の教示によるエマルションポリマーは、約15℃以上、約50℃以上、約80℃以上、約100℃以上、または約120℃以上の融解温度及び/または、ガラス転移温度を有する熱可塑性物質として特徴付けられてもよい。高ガラス転移温度を有するポリマーには、溶融状態でポリマー分子の移動度を減少させる立体障害をもたらすヒドロカルボニル基を有するものが含まれる。熱可塑性物質の融解温度及び/または、ガラス転移温度は、約250℃以下、約200℃以下、または約150℃以下であってもよい。
【0075】
本明細書の教示によるエマルションポリマーは、約15℃以上(例えば、約50℃以上、約80℃以上、または約100℃以上)のガラス転移温度または融解温度を有する少なくとも1つのブロックと、15℃を上回る融解温度を有さず、かつ、15℃未満(例えば、約10℃以下、約0℃以下、または約−20℃以下)のガラス転移温度を有する少なくとも1つの異なるブロックとを含むブロック共重合体として特徴付けられてもよい。一態様では、ブロック共重合体は、得られたブロック共重合体が室温で複数の相を有するように混和性ではないブロックで調製してもよい。したがって、ブロック共重合体は、第1のポリマーブロックに対応する第1のガラス転移温度、及び第2のポリマーブロックに対応する第2のガラス転移温度を有してもよい。ブロックのガラス転移温度は、特定のブロックで使用したモノマー(複数可)に基づいて、及び/または、末端効果(ブロック中のモノマー単位数の効果を含む)に基づいて目的にあったものでよいことが理解されるであろう。説明のために、以下のものから本質的または完全になるポリマーブロック:(1)メチレンマロン酸ジエチルホモポリマーは、約25℃〜約45℃(好ましくは約35℃)のガラス転移温度を有すると期待され、(2)メチレンマロン酸フェンキルメチルは、約125℃〜約155℃(好ましくは約143℃)のガラス転移温度を有すると期待され、(3)メチレンマロン酸メチルメトキシエチルは、約−15℃〜約+10℃(好ましくは約0℃)のガラス転移温度を有すると期待され、(4)メチレンマロン酸ヘキシルエチルは、約−45℃〜約−20℃(好ましくは約−34℃)のガラス転移温度を有すると期待され、(5)メチレンマロン酸ジブチルは、約−55℃〜約−35℃(好ましくは約−44℃)のガラス転移温度を有すると期待される。複数のガラス転移温度、例えば、第1のポリマーブロックに特有の第1のガラス転移温度及び第2のポリマーブロックに特有の第2のガラス転移温度を有するブロック共重合体を調製することが可能であってもよい。いくつかのブロック共重合体では、単一ガラス転移が観察され、それは、単一相が形成されることを示す、2つのポリマーブロックが実質的に同じガラス転移温度(例えば、約20℃以下、約10℃以下の差、または両方)を有することを示す。
【0076】
本明細書の教示によるエマルションポリマーは、ランダム共重合体として特徴付けられてもよく、及び/または、ランダム共重合体であるポリマーブロックを有してもよい。ランダム共重合体は、(例えば、約50モル%以上の濃度で存在する)主モノマーと、ポリマー鎖を介してランダムに分布し、50モル%未満の濃度を有する副モノマーとを含んでもよい。ランダム共重合体の特性は、一般的に、主モノマーから完全になるホモポリマーの特性とは異なるであろう。例えば、副モノマーの量が約0.5モル%から約49.5モル%に増加すると、ランダム共重合体のガラス転移温度は、主モノマーに特有のガラス転移温度から副モノマーに特有のガラス転移温度へとシフトし得る。ランダム共重合体として調製する場合、ポリマーは、典型的に、(例えば、主モノマーのホモポリマーと副モノマーのホモポリマーの混合物が、同じ濃度で、複数のガラス転移温度を示す場合であっても)単一のガラス転移温度を有する。
【0077】
主モノマーのホモポリマーは、半結晶性ポリマーであってもよい。典型的には、ランダム共重合体を調製するのに副モノマーを添加する場合、副モノマーは、主モノマーが結晶化する能力を一部阻害し、低結晶化度、低曲げ弾性率、低融解温度、またはそれらの任意の組み合わせなどの、ホモポリマーとは異なる特性を有するランダム共重合体をもたらす。例えば、副モノマーの選択及び/または、ランダム共重合体中の副モノマーの量は、ランダム共重合体が(即ち、主モノマーのホモポリマーに対して)約5℃以上、約10℃以上、約15℃以上、または約20℃以上まで低下した融解温度を有するように選択してもよい。副モノマーの選択及び/または、ランダム共重合体中の副モノマーの量は、ランダム共重合体が(即ち、主モノマーのホモポリマーに対して)約10%以上、約20%以上、40%以上、または約60%以上まで低下した結晶化度を有するように選択してもよい。
【0078】
得られたポリマーは、少なくとも第1のポリマーブロックと第1のポリマーブロックとは異なる第2のポリマーブロックとを含むブロック共重合体であってもよい。第1のポリマーブロック及び第2のポリマーブロックは、以下の特性:ピーク融解温度、最終融解温度、結晶化度、ガラス転移温度、曲げ弾性率、引張弾性率、破損伸長、気体遮断性、または密着性の1つまたは任意の組み合わせに対して異なってもよい。例えば、第1のポリマーブロック及び第2のポリマーブロックは、約10℃以上、約20℃以上、約30℃以上、または約50℃以上まで異なる融解温度(ピーク融解温度及び/または、最終融解温度)を有してもよい。一方のポリマーブロックは、融解温度を有してもよく、他方のポリマーブロックは、測定可能な融解温度がないように結晶性ポリマーを含まなくてもよいことが理解されるであろう。第1のポリマーブロック及び第2のポリマーブロックは、約10℃以上、約20℃以上、約30℃以上、または約40℃以上まで異なるガラス転移温度を有してもよい。第1のポリマーブロック及び第2のポリマーブロックは、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、または約30%以上まで異なる結晶化度を有してもよい。第1のポリマーブロック及び第2のポリマーブロックは、約1.5以上、約2以上、約4以上、約8以上、または約15以上の比を有する弾性率(例えば、曲げ弾性率、引張弾性率、または両方)を有してもよい。第1のポリマーブロック及び第2のポリマーブロックは、約2以上、約3以上、約4以上、または約6以上の破損伸長比及び/または、引張強度比を有してもよい。
【0079】
ランダム共重合体中のブロック性の程度(即ち、ブロック状化指数、またはBI)は、第2のモノマーに付加された第1のモノマー(例えば、1,1−二置換アルケン化合物である主モノマー)のダイアド分率(f(M1−M2))に、第1のモノマーに付加された第2のモノマーのダイアド分率(f(M2−M1))を加えた濃度の、統計学的ランダム共重合体についてのダイアド分率の理論的濃度(2XM1(1−XM1))、式中、XM1は第1のモノマーのモル分率である)に対する比率によって算出することができる:
BI=(f(M1−M2)+f(M2−M1))/(2XM1(1−XM2))
定義により、真の統計学的ランダム共重合体は、1のBI(1.0)を有する。ブロック状ランダム共重合体は、より低い濃度のM1−M2及びM2−M1ダイアド分率を有することになり、BIが1.0よりも小さくなる。ブロック共重合体は、非常に低い濃度のM1−M2及びM2−M1ダイアド分率を有することになり、BIが1よりもはるかに小さくなり、ゼロに近づく。一方、XM1が0.5以上である交互共重合体は、BI=1+(1/XM1)を有する。ダイアド分率の濃度及びXM1は、Yi−Jun Huangeらによって、「二重金属シアニド錯体触媒によって調製されるプロピレンオキシド及びエチレンオキシドのランダム共重合体」、Chinese Journal of Polymer Science、20:5、2002、453頁〜459頁(これはその全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)に記載される類似のピーク割当及び技術を使用して、13C−NMR分光法を使用して測定することができる。
【0080】
好ましいランダム共重合体は、約0.70以上、より好ましくは約0.75以上、さらにより好ましくは約0.80以上、さらにより好ましくは約0.85以上、さらにより好ましくは約0.90以上、最も好ましくは約0.95以上のBIを有する。好ましいランダム共重合体は、好ましくは約1+(0.8/xM1)未満、より好ましくは約1+(0.5/xM1)、さらにより好ましくは約1+(0.25/xM1)未満、最も好ましくは約1+(0.10/xM1)未満のBIを有し、xM1は、共重合体中の主モノマーのモル分率であり、xM1は、少なくとも0.5である。
【0081】
得られたエマルションポリマーは、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、プロセス安定剤、潤滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、かぶり防止剤、溶媒、可塑剤、充填剤、帯電防止剤、(例えば、充填剤の)カップリング剤、架橋剤、造核剤、ブロッキング防止剤、消泡剤、顔料、着色剤、難燃添加剤、流動助剤、潤滑剤、スリップ剤、及びポリマー化合物の分野で公知の他の加工助剤などの1つ以上の添加剤を含む高分子組成物中に採用してもよい。適切な難燃剤としては、ハロゲンを含有する難燃剤、及びハロゲンを含有しない難燃剤が挙げられ得る。
【0082】
高分子組成物は、充填剤粒子(例えば、繊維、粉末、ビーズ、フレーク、顆粒など)などの1つ以上の他の充填剤を含んでもよい、充填剤粒子は、繊維(例えば、10よりも大きい各垂直方向に対する最長方向のアスペクト比を有する)であってもよい。充填剤粒子は、(例えば、10よりも小さい、8よりも小さい、または5よりも小さい垂直方向に対する最長方向のアスペクト比を有する)繊維ではない粒子であってもよい。充填剤は、有機物質及び/または、無機物質から形成されてもよい。有機充填剤の例としては、バイオマスから得られた充填剤、及びポリマーから得られた充填剤が挙げられる。無機充填剤としては、非金属物質、金属物質、及び半導体物質が挙げられる。例えば、充填剤粒子は、ケイ酸アルミナ、水酸化アルミニウム、アルミナ、酸化ケイ素、硫酸バリウム、ベントナイト、窒化ホウ素、炭酸カルシウム(例えば、活性炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、または重質炭酸カルシウム)、水酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、カーボンブラック、粘土、綿フロック、コルク粉、珪藻土、ドロマイト、エボナイト粉、ガラス、グラファイト、ハイドロタルサイト、酸化鉄、金属粒子、カオリン、マイカ、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、リン化物、軽石、パイロフィライト、セリサイト、シリカ、炭化ケイ素、タルク、酸化チタン、ウォラストナイト、ゼオライト、酸化ジルコニウム、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。充填剤粒子は、約0.1重量%以上、約1重量%以上、約5重量%以上、または約10重量%以上の濃度で存在してもよい。充填剤粒子は、約70重量%以下、約50重量%以下、約35重量%以下、または約25重量%以下の濃度で存在してもよい。充填剤粒子は、約1mm以下、約0.3mm以下、約0.1mm、約50μm以下、約10μm以下である一、二、または三次元を有するのが好ましい。充填剤粒子は、約0.1μm以上、約0.3μm以上、または約1μm以上である一、二、または三次元を有するのが好ましい。
【0083】
本明細書の教示による高分子組成物は、所望の使用のために最終ポリマーの特性を調整するための可塑剤を含んでもよい。可塑剤は、重合前、重合中、または重合後に添加してもよい。例えば、特定の実施形態では、適切な可塑剤は、1,1−二置換アルケンモノマーと共に含むことができる。一般的に、適切な可塑剤としては、接着剤系のレオロジー特性を修正するために用いた可塑剤を含むことができ、例えば、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジオクチル、及びフタル酸ジブチルなどの直鎖及び分枝鎖アルキル−フタル酸塩、並びに部分的に水素化されたテルペン、リン酸トリオクチル、エポキシ可塑剤、トルエンスルファミド、クロロパラフィン、アジピン酸エステル、セバシン酸ジメチルなどのセバシン酸、ヒマシ油、キシレン、1−メチル−2−ピロリジオン及びトルエンが挙げられる。Solutia社製(セントルイス、ミズーリ州)のHB−40などの市販の可塑剤が適していることもある。
【0084】
プロセスは、モノマーのポリマーへの変換速度を監視あるいは測定する1つ以上の工程を含んでもよい。残りのモノマーの濃度は、例えば、NMR分光法を用いて決定してもよい。例えば、定量NMR分光法を採用して、エマルション系に残っているアルキレン基(例えば、1−エチレン基)の濃度を測定してもよい。
【0085】
現在の教示のエマルションポリマーは、高分子組成物を調製するための1つ以上のさらなるポリマーと混合してもよい。高分子組成物中のエマルションポリマーの濃度は、高分子組成物中のポリマーの総重量に基づいて、約1重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約20重量%以上、または約50重量%以上であってもよい。ポリマーは、高分子組成物中のエマルションポリマーの総重量に基づいて、約100重量%以下、約95重量%以下、または約90重量%以下、または約60重量%以下の濃度で、高分子組成物中で存在してもよい。
【0086】
プロセスは、エマルションポリマーから一部または全てのキャリア液を除去する1つ以上の工程を含んでもよい。キャリア液を除去するプロセスには、キャリア液からポリマーを分離するために加熱、減圧、または両方を使用してもよい。キャリア液を除去するプロセスは、濾過する工程、及び/または、1つ以上のさらなる液体をエマルションに添加する工程を含んでもよい。
【0087】
プロセスは、アニオン重合反応を停止させる(即ち、急冷する)1つ以上の工程を含んでもよい。例えば、重合は、エマルションをアニオン重合停止剤に接触させることで急冷することができる。いくつかの実施形態では、アニオン重合停止剤は、酸である。いくつかの実施形態では、重合混合物(例えば、エマルション)をわずかに酸性、好ましくは7未満のpH、より好ましくは6未満のpHにするために十分な量の酸を利用するのが望ましい。アニオン重合停止剤の例としては、例えば、メタンスルホン酸、硫酸、及びリン酸などの鉱酸、酢酸及びトリフルオロ酢酸などのカルボン酸が挙げられる。
【0088】
本明細書の教示によるポリマー及びポリマー組成物(例えば、キャリア液のいくつかまたは全てを除去後)は、公知のポリマー処理機器で処理するのに適切な1つ以上のレオロジー特性(例えば、溶融指標、溶融流量、粘度、溶融強度など)を有してもよい。例えば、1,1−二置換アルケン化合物を含むポリマーまたはポリマー組成物は、押出成形、共押出成形、射出成形、インサート成形、共射出成形、カレンダー成形(例えば、2つ以上のロールを用いて)、ブロー成形、圧縮成形、熱成形、ローリング成形、スプレー塗装を用いて処理してもよい。例えば、高分子材料(即ち、ポリマーまたはポリマー組成物)は、スクリュー及びバレルアセンブリを有する処理装置に供給してもよく、高分子材料は、高分子材料が少なくとも一部が液体状態の温度(例えば、任意のガラス転移温度を上回る及び任意の融解温度を上回る)でスクリューに沿って運搬される。
【0089】
本明細書の教示によるポリマーは、1つ以上の以下の基板:アルミニウム、スチール、ガラス、シリコン、またはウッドに接着するのが好ましい。例えば、基板間に配置されたポリマーを有する2つの基板を分離する場合、基板の分離は、ポリマーの凝集破壊をもたらし得、一部のポリマーが基板の表面上に残ったままである。
【0090】
本明細書の教示によるポリマーは、押出成形品、ブロー成形品、射出成形品、熱成形品、または圧縮成形品で採用してもよい。ポリマーは、接着剤として採用してもよい。例えば、ポリマーは、感圧接着剤組成物中で採用してもよい。ポリマーは、保護被膜などの被膜として採用してもよい。ポリマーは、基板の上の下塗層として採用してもよい。
【0091】
溶融温度及びガラス転移温度は、約0.5〜1.0mgのサンプルで示差走査熱量測定を用いて測定する。サンプルを約10℃/分の速度で加熱した後、約20℃/分の速度で冷却する。
【0092】
分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて決定する。GPCサンプルは、トリフルオロ酢酸でまず急冷した後に、ポリマーを乾燥させて、キャリア液(例えば、水)を除去することによって調製される。乾燥させたポリマーをテトラヒドロフラン(THF)中に溶解させる。約25μLの溶解したポリマー溶液を、1mL/分の流量を有するTHF溶離液に注入する。5ミクロンの高架橋ポリスチレン/ジビニルベンゼンマトリックス粒子を有する2つのカラムを採用する。これらのカラムは、200〜2,000,000の直鎖ポリマーの分子量を測定するように設計されている。カラム圧力は約65バールであり、カラム温度は約35℃である。溶出時間は30分である。カラムは、PMMA標準を用いて較正する。したがって、分子量の単位は、標準のPMMA等価分子量に基づいて相対的である。
【0093】
モノマー変換は、定量NMRを用いて算出する。300MHz NMRを採用する。エマルション重合試料の任意の残分重合反応は、トリフルオロ酢酸を添加することで、NMR分析前に急冷する。好ましい溶媒は、極性の非プロトン性溶媒であるためDMSO−d6である。溶媒をエマルションに添加する場合、水性及び非水性相は混和性になる。酢酸を内部標準として添加し、これらのモノマー組成物に適切である。約6.45ppmでの二重結合強度を測定し、未変換モノマーの濃度を決定する。この二重結合は、メチレンマロン酸ジエチル及びメチレンマロン酸ジブチルなどの対称モノマーの一重項であり、メチレンマロン酸ヘキシルエチルなどの非対称モノマーの二重項である。4つのNMRスキャンを、スキャン間を20秒遅延で、各試料上で実行する。
【実施例】
【0094】
実施例1は、約23℃の温度でメチレンマロン酸ジエチルのエマルション重合によって調製されたポリマーである。100ml PYREX(登録商標)ビーカーに、約20.955gの脱イオン水と0.045gの界面活性剤、4−ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)とを充填する。水と界面活性剤を500rpmで約10分間混合する。脱イオン水中の約1mLの1重量%安息香酸ナトリウム溶液を混合物に添加し、混合を約5分間継続する。次いで、約9gのメチレンマロン酸ジエチルを、約1500rpmで混合しながら滴下する。安息香酸ナトリウムは、重合の活性剤として作用する。モノマー対活性剤のモル比は、約500:1である。重合方法は、本来はアニオン性であり、脱イオン水中に分散したモノマーミセルで生じる。水対モノマー/ポリマーの最終比は、約70:30である。エマルションのアリコートを除去し、トリフルオロ酢酸で急冷し、DMSO−d6と混合し、内部標準として酢酸を添加することによって、定量NMRを用いて反応を監視する。定量NMRで確認した際に99.9%以上のモノマーがポリマーに変換された後、約100ppmのトリフルオロ酢酸を添加して、反応を急冷する。ポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて特徴付ける。GPCは、PMMA標準を用いて較正し、ポリマーの分子量分散を測定するために使用される。実施例1は、約15,579の数平均分子量、約21,010の重量平均分子量、及び約1.36の多分散性指標を有する。
【0095】
実施例2及び3は、モノマー対活性剤のモル比が、それぞれ、約1000:1及び約100:1になるように安息香酸ナトリウムの濃度を変える以外は、実施例1と同じ方法を用いて調製する。モノマーのポリマーへの変換は、約99.9%を超える。
【0096】
実施例4〜6は、モノマー対活性剤のモル比が100:1であり、活性剤が、それぞれ、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、ピリジン、及びケイ酸ナトリウムである以外は、実施例1と同じ方法を用いて調製する。モノマーのポリマーへの変換は、約99.9%を超える。
【0097】
実施例1〜6の分子量分散を表1に示す。
【0098】
実施例7は、約23℃の温度でメチレンマロン酸ジエチルのエマルション重合によって調製される。約20.7gの脱イオン水と界面活性剤を100mL PYREX(登録商標)ビーカーに約500rpmで約10分間混合する。界面活性剤は、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールエトキシレート(SURFYNOL(登録商標)485として市販)であり、界面活性剤の量は、約0.3gである。約9gのモノマー、マロン酸ジエチルメチルを、約500rpmで混合しながら迅速に(例えば、約10秒以内に)添加し、水中でモノマーのミセルを形成する。次いで、約0.503mLの1重量%安息香酸ナトリウム溶液を、1500〜2000rpmで混合しながら滴下する。安息香酸ナトリウムは、反応の活性剤であり、モノマー対活性剤の比は、約1000:1である。重合反応を約1時間継続させる。約500ppm(即ち、約0.05重量%)のトリフルオロ酢酸をエマルションに添加することで、重合反応を急冷する。モノマーのポリマーへの変換は、定量NMRで確認した場合に99.9%を超える。
【表1】
【0099】
実施例8は、界面活性剤が0.3gの、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−(ポリエチレングリコール)のトリ−ブロック共重合体である以外は、実施例7の方法に従って調製する。
【0100】
実施例9は、界面活性剤が0.3gのCARBOWET(登録商標)138である以外は、実施例7の方法に従って調製する。この界面活性剤は、アルキルアルコール、ポリエチレングリコール、及びエトキシ化C9−11アルコールを含む。
【0101】
実施例10は、界面活性剤が0.3gのソルビタンモノパルミテートである以外は、実施例7の方法に従って調製する。この界面活性剤は、室温で柔らかな固体である。重合プロセス中の界面活性剤の分散を改善させるために、反応温度を約46℃に上昇させる。
【0102】
実施例11は、界面活性剤が0.3gのIGEPAL(登録商標)CO−720である以外は、実施例7の方法に従って調製する。この界面活性剤は、分枝のポリオキシエチレン(12)ノニルフェニルエーテルを含む。
【0103】
実施例12は、界面活性剤が0.3gのポリ(エチレングリコール)ソルビトールヘキサオレエートである以外は、実施例7の方法に従って調製する。
【0104】
実施例7〜12では、モノマーのポリマーへの変換は、約100%であった。実施例13〜17は、モノマー対活性剤のモル比(安息香酸ナトリウム)が、それぞれ、100:1、200:1、500:1、8000:1、及び16000:1である以外は、実施例7の方法に従って調製する。得られたポリマーの各々は、約100%のモノマーのポリマーへの変換を有する。実施例7及び13〜17の分子量の特徴付けを表2に記載する。

【表2】
【0105】
凍結/凍解安定性は、ポリマー試料の初期粘度を最初に測定することによって評価する。次いで、ポリマー試料を約−24℃の温度で約17時間チャンバーに配置した後、約22℃の室温に約7時間配置した。この24時間サイクルを5回繰り返す。試料の粘度は、室温で約7時間放置した後に測定する。試料は、不安定なエマルション系を示す沈降、ゲル化、または凝固の任意の兆候についても観察される。逆に、沈降、ゲル化、または凝固の兆候が観察されないことは、安定したエマルション系を示す。
【0106】
実施例FTSS−1は、約995の数平均分子量を有し、エマルション重合によって調製されたポリ(メチレンマロン酸ジエチル)(即ち、ポリ(DEMM))のサンプルである。実施例FTSS−1の初期粘度は、約10〜22cPsである。5回の凍結/凍解サイクル後、試料は、約10〜22cPsの粘度をまだ有する。5回のサイクル中、沈降、ゲル化、または凝固の兆候は示さない。
【0107】
実施例FTSS−2は、約2121の数平均分子量を有し、エマルション重合によって調製されたポリ(メチレンマロン酸ジブチル)(即ち、ポリ(DBMM))のサンプルである。実施例FTSS−2の初期粘度は、約13〜24cPsである。5回の凍結/凍解サイクル後、試料は、約13〜24cPsの粘度をまだ有する。5回のサイクル中、沈降、ゲル化、または凝固の兆候は示さない。
【0108】
実施例FTSS−3は、約5018の数平均分子量を有し、エマルション重合によって調製されたポリ(メチレンマロン酸ヘキシルエチル)(即ち、ポリ(HMMM))のサンプルである。実施例FTSS−3の初期粘度は、約15〜25cPsである。5回の凍結/凍解サイクル後、試料は、約15〜25cPsの粘度をまだ有する。5回のサイクル中、沈降、ゲル化、または凝固の兆候は示さない。
【0109】
実施例FTSS−4は、約25,000の数平均分子量を有し、エマルション重合によって調製されたポリ(DEMM)のサンプルである。ポリマーは、凍結/凍解安定性について試験する。5回の凍結/凍解サイクル後、実施例FTSS−4は、沈降、ゲル化及び凝固の兆候を示すが、流れない。
【0110】
実施例FTSS−5、FTSS−6、FTSS−7、FTSS−8、及びFTSS−9は、表3に示すように、25,345〜498,003の数平均分子量を有する、調製されたポリ(DEMM)のサンプルである。約0.05重量%のヒドロキシエチルセルロース安定剤をポリマーサンプルの各々に添加する。5回の凍結/凍解サイクル後、沈降、ゲル化、または凝固の兆候は示さず、最終粘度は、初期粘度から実質的に変化しない。
【表3】
【0111】
実施例E−1、E−2、E−3、E−4、E−5、E−6、E−7、及びE−8は、界面活性剤の異なる混合物を用いてマロン酸ジエチルメチルモノマーを重合することによって調製する。約70:30の脱イオン水対モノマー/ポリマーの重量比を用いて、エマルション重合を約23℃で行う。界面活性剤は、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールエトキシレート(SURFYNOL(登録商標)485として市販)、または4−ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)、または2つの界面活性剤の混合物である。各実施例の界面活性剤及び界面活性剤の量を表4に示す。活性剤は、安息香酸ナトリウムであり、約100:1のモノマー対活性剤の比率で添加する。脱イオン水、界面活性剤、及び活性剤を約1500rpmで混合しながら、モノマーを添加する。モノマーを約5秒以内に全て添加する。モノマーのポリマーへの95%及び99%変換のおおよその時間(定量NMR分光法を用いて測定した)を表4に記載する。反応は4時間継続する。最終変換も表4に記載する。約500ppmのトリフルオロ酢酸をエマルションに添加することで、反応を急冷する。次いで、得られたポリマーの分子量を、GPCを用いて測定する。各ポリマーの重量平均分子量、数平均分子量、及び多分散性指標を表4に示す。DBSAの添加は反応速度を遅らせるが、少量のDBSA(例えば、約1500ppm未満)の添加は、高い重合反応速度と、狭い分子量分散を有するポリマーとをもたらす。
【表4】
【0112】
実施例H−1のホモポリマーは、マロン酸ジエチルメチルを用いて、エマルション重合を介して調製する。界面活性剤、脱イオン水、及びマロン酸ジエチルメチルモノマーを反応容器に添加して、混合物を撹拌し、水中でモノマーのエマルションを形成することによって、エマルションを調製する。重合反応を約23℃で行う。脱イオン水対モノマー/ポリマーの重量比は、約70:30である。界面活性剤は、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールエトキシレート(SURFYNOL(登録商標)485として市販)であり、界面活性剤の量は、エマルションの総重量に基づいて、約2重量%である。安息香酸ナトリウムを反応容器に添加することで、反応を開始させる。メチレンマロン酸ジエチルモノマー対安息香酸ナトリウムのモル比は、約200:1である。反応時間は約10分であり、モノマーのポリマーへの変換は、99.9%を超える。約500ppmのトリフルオロ酢酸をエマルションに添加することで、反応を急冷する。得られたポリマーを単離した後、ジクロロメタンまたはテトラヒドロフランの溶媒に溶解させる。次に、溶液を−25℃でメタノールの容量の約4倍沈殿させる。その後、沈殿物を−25℃でヘキサン及びメタノール(1:1重量比)の混合物でさらに洗浄する。沈殿物を濾過するかまたは液体から分離する。洗浄工程により、本質的に全ての界面活性剤及び他の非反応性材料または不純物を除去した。回収したポリマーは、50,000を超える重量平均分子量、及び約35℃のガラス転移温度を有する。
【0113】
実施例H−2のホモポリマーは、マロン酸ジエチルメチルモノマーをメチレンマロン酸フェンキルメチルモノマーで置換し、開始剤がモノマー対活性剤のモル比が約200:1であるケイ酸ナトリウムである以外は、実施例H−1と同じ手順を用いて調製する。回収したポリマーは、50,000を超える重量平均分子量、及び約143℃のガラス転移温度を有する。
【0114】
実施例H−3のホモポリマーは、マロン酸ジエチルメチルモノマーをメチレンマロン酸メチルメトキシエチルモノマーで置換し、開始剤がモノマー対活性剤のモル比が約200:1であるケイ酸ナトリウムである以外は、実施例H−1と同じ手順を用いて調製する。回収したポリマーは、50,000を超える重量平均分子量、及び約0℃のガラス転移温度を有する。
【0115】
実施例H−4のホモポリマーは、マロン酸ジエチルメチルモノマーをメチレンマロン酸ヘキシルエチルモノマーで置換し、開始剤がモノマー対活性剤のモル比が約200:1であるケイ酸ナトリウムである以外は、実施例H−1と同じ手順を用いて調製する。回収したポリマーは、50,000を超える重量平均分子量、及び約−34℃のガラス転移温度を有する。
【0116】
実施例H−5のホモポリマーは、マロン酸ジエチルメチルモノマーをメチレンマロン酸ジブチルモノマーで置換し、界面活性剤がモノマー対活性剤のモル比が約200:1であるケイ酸ナトリウムである以外は、実施例H−1と同じ手順を用いて調製する。回収したポリマーは、50,000を超える重量平均分子量、及び約−44℃のガラス転移温度を有する。
【0117】
実施例H−6のホモポリマーは、メチレンマロン酸ジエチルモノマー対安息香酸ナトリウム活性剤のモル比が約100:1である以外は、実施例H−1と同じ手順を用いて調製する。実施例35の調製では、溶液を約400rpmの混合速度を用いて撹拌する。混合時間は約1時間である。得られたエマルションは、動的光散乱を用いて測定する。ポリマー粒子は、約1.81の屈折率を有する。数平均粒径は、約7.6μmの標準偏差を有する約28.6μmである。実施例H−7のホモポリマーは、混合速度を約1500rpmに増加させた以外は、実施例H−6と同じ手順を用いて調製する。得られたポリマー粒子は、約1.81の屈折率、約3.31μmの標準偏差を有する約6.44μmの平均粒径を有する。実施例H−8のホモポリマーは、撹拌を約40kHzの周波数で超音波処理を用いて達成した以外は、実施例H−6と同じ手順を用いて調製する。得られたポリマー粒子は、約1.81の屈折率、約0.09μmの標準偏差を有する約0.48μmの平均粒径を有する。H−1〜H−6のホモポリマー結果を表5にまとめる。
【表5】
【0118】
実施例M−1は、2つのホモポリマー、実施例H−1のホモポリマーと実施例H−2のホモポリマーの混合物である。実施例H−1のホモポリマーと実施例H−2のホモポリマーは、2つのホモポリマーの重量比が1:1で、ジクロロメタン溶媒中で一緒に溶解させる。次いで、溶媒の容量の約4倍の容量でメタノール(約−25℃)を添加することで、ポリマー混合物を溶液から沈殿させる。沈殿させたポリマーをメタノールとヘキサンの1:1混合物(重量)(約−25℃)でさらに洗浄する。得られたポリマー混合物は、約45℃と約137℃で2つのガラス転移温度を有する。
【0119】
実施例M−2は、2つのホモポリマー、実施例H−1のホモポリマーと実施例H−3のホモポリマーの混合物である。ポリマー混合物は、実施例H−2のホモポリマーを実施例H−3のホモポリマーで置換する以外は、実施例M−1で上述したのと同じ方法を用いて調製する。得られたポリマー混合物は、約28℃と約12℃で2つのガラス転移温度を有する。
【0120】
実施例M−3は、2つのホモポリマー、実施例H−1のホモポリマーと実施例H−4のホモポリマーの混合物である。ポリマー混合物は、実施例H−2のホモポリマーを実施例H−4のホモポリマーで置換する以外は、実施例M−1で上述したのと同じ方法を用いて調製する。得られたポリマー混合物は、約25℃と約−25℃で2つのガラス転移温度を有する。
【0121】
実施例M−4は、2つのホモポリマー、H−1のホモポリマーとH−3のホモポリマーの混合物である。ポリマー混合物は、実施例H−2のホモポリマーを実施例H−5のホモポリマーで置換する以外は、実施例M−1で上述したのと同じ方法を用いて調製する。得られたポリマー混合物は、約−5℃で単一のガラス転移温度を有する。
【0122】
実施例M−5は、2つのホモポリマー、実施例H−2のホモポリマーと実施例H−3のホモポリマーの混合物である。ポリマー混合物は、実施例H−1のホモポリマーを実施例H−2のホモポリマーで置換し、実施例H−2のホモポリマーを実施例H−3のホモポリマーで置換した以外は、実施例M−1で上述したのと同じ方法を用いて調製する。得られたポリマー混合物は、約131℃と約10℃で2つのガラス転移温度を有する。
【0123】
実施例M−6は、2つのホモポリマー、実施例H−2のホモポリマーと実施例H−4のホモポリマーの混合物である。ポリマー混合物は、実施例H−1のホモポリマーを実施例H−2のホモポリマーで置換し、実施例H−2のホモポリマーを実施例H−4のホモポリマーで置換した以外は、実施例M−1で上述したのと同じ方法を用いて調製する。得られたポリマー混合物は、約132℃と約−14℃で2つのガラス転移温度を有する。
【0124】
実施例M−7は、2つのホモポリマー、実施例H−2のホモポリマーと実施例H−5のホモポリマーの混合物である。ポリマー混合物は、実施例H−1のホモポリマーを実施例H−2のホモポリマーで置換し、H−2のホモポリマーを実施例H−5のホモポリマーで置換した以外は、実施例M−1で上述したのと同じ方法を用いて調製する。得られたポリマー混合物は、約129℃と約−33℃で2つのガラス転移温度を有する。
【0125】
実施例M−8は、2つのホモポリマー、実施例H−3及び実施例H−4のホモポリマーの混合物である。ポリマー混合物は、実施例H−1のホモポリマーを実施例H−3のホモポリマーで置換し、実施例H−2のホモポリマーを実施例H−4のホモポリマーで置換した以外は、実施例M−1で上述したのと同じ方法を用いて調製する。得られたポリマー混合物は、約−7℃と約−25℃で2つのガラス転移温度を有する。
【0126】
実施例M−9は、2つのホモポリマー、実施例H−3及び実施例H−5のホモポリマーの混合物である。ポリマー混合物は、実施例H−1のホモポリマーを実施例H−3のホモポリマーで置換し、実施例H−2のホモポリマーを実施例H−5のホモポリマーで置換した以外は、実施例M−1で上述したのと同じ方法を用いて調製する。得られたポリマー混合物は、約−9℃と約−36℃で2つのガラス転移温度を有する。
【0127】
実施例M−10は、2つのホモポリマー、実施例H−3のホモポリマーと実施例H−5のホモポリマーの混合物である。ポリマー混合物は、実施例H−1のホモポリマーを実施例H−4のホモポリマーで置換し、実施例H−2のホモポリマーを実施例H−5のホモポリマーで置換した以外は、実施例M−1で上述したのと同じ方法を用いて調製する。得られたポリマー混合物は、約−37℃で単一のガラス転移温度を有する。
【0128】
実施例R−1〜R−10は、マロン酸ジエチルメチルのモノマーを表5に記載した1:1重量比のモノマー1及びモノマー2で置換した以外は、実施例H−1のホモポリマーの方法に従って調製したランダム共重合体である。得られたポリマーは、50,000以上の重量平均分子量を有し、モノマーのポリマーへの変換が99.9重量%を超えるランダム共重合体である。ランダム共重合体の各々は、表6に示すように単一のガラス転移温度を有する。
【表6】
【0129】
実施例B−1は、第1のポリマーブロック、第2のポリマーブロック、及び第3のポリマーブロックを順次重合することによって調製されたブロック共重合体である。第1のポリマーブロックは、モノマーの量を実施例H−1で採用したモノマーの約1/3に減少した以外は、実施例H−1のホモポリマーで上述したように調製する。第1のポリマーブロックの調製後、ポリマー(実施例B−1、ステージ1)のサンプルを除去し、約500ppmのトリフルオロ酢酸で急冷し、沈殿させ、上述のように分析のために洗浄する。第2のモノマー(メチレンマロン酸フェンキルメチル)をエマルションに添加することで残りのポリマーをさらに重合させ、第2のモノマーから本質的になる第2のポリマーブロックを形成する。第2のモノマーの量は、実施例H−1で使用した総モノマーの約1/3である。第2のポリマーブロックの調製後、ジブロックポリマー(実施例B−1、ステージ2)のサンプルを除去し、約500ppmのトリフルオロ酢酸で急冷し、沈殿させ、分析のために洗浄する。さらなるの量の第1のモノマーをエマルションに添加することで残りのポリマーをさらに重合させ、第1のモノマーから本質的になる第3のポリマーブロックに重合する。第3のモノマーの量は、実施例H−1で採用したモノマーの約1/3である。得られたトリブロック共重合体(実施例B−1、ステージ3)を、実施例H−1のホモポリマーで上述したように、約500ppmのトリフルオロ酢酸で急冷し、沈殿させ、洗浄する。
【0130】
実施例B−2、B−3、及びB−4は、第2のモノマーのメチレンマロン酸フェンキルメチルを、それぞれ、メチレンマロン酸メチルメトキシエチル、メチレンマロン酸ヘキシルメチル、及びメチレンマロン酸ジブチルで置換する以外は、実施例B−1で上述した方法に従って調製したブロック共重合体である。
【0131】
3つのステージ(単一ブロック、ジブロック、及びトリブロック)の各々の終わりでの実施例B−1、B−2、B−3、及びB−4の特性を表7に記載する。
【表7】
【0132】
感圧接着剤エマルション組成物は、約700rpmで約67.98部の脱イオン水、約0.03部の4−ドデシルベンゼンスルホン酸、及び約2.00部のエトキシ化2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールを混合することによって調製する。脱イオン水中のケイ酸ナトリウム活性剤の10%溶液を約0.42部(モノマー対活性剤のモル比が約200:1で)で添加し、約1,000rpmで混合する。約27.75部のメチレンマロン酸ヘキシルエチルモノマーをバルクで添加し、混合は約1,000rpmで継続する。重合反応が完了した後、エマルションを鋼板に塗布し、水を蒸発で除去する。得られたポリマーは、感圧接着剤であり、ポリマーの結果として代表的な粘着性を有する。架橋剤を添加し、PSA材料を鋼板に付着させる場合、第2の基板に塗布し、除去すると、ポリマーは鋼板から実質的に移動しない。PSA材料は、5回の凍結/凍解サイクル後に良好な安定性を有する。
【0133】
図面からの参照符号
【0134】
10 エマルションシステム
【0135】
12 連続液相
【0136】
14 分散相/エマルションミセル
【0137】
16 界面活性剤/界面活性剤層
【0138】
18 ミセルの内部
【0139】
20 ミセルの外面/界面活性剤層の外面
【0140】
22 界面活性剤層の内面
【0141】
24 ミセルの内部
【0142】
26 モノマー/ポリマー
【0143】
28 キャリア液
【0144】
30 エマルション重合プロセスに含まれる例示の工程
【0145】
32 キャリア液、界面活性剤、及びモノマーを攪拌して組み合わせて、多相系を調製する工程
【0146】
34 活性剤を添加して重合反応を開始させる工程
【0147】
36 アニオン重合反応によってポリマーを成長させる工程
【0148】
37 (例えば、予め添加したモノマーの実質的に全てが消費された後に)1つ以上のモノマーを添加する、及び/または、1つ以上のモノマーを連続して供給する任意工程
【0149】
38 重合反応を急冷する任意工程
【0150】
40 NMRスペクトログラフ上の約6.45ppm(メチレンマロン酸ジエチルの反応性二重結合ピークに対応)
【0151】
42 NMRスペクトログラフ上の約0ppm−内部参照
【0152】
50 GPCピーク及び計算領域
【0153】
52 重量平均分子量(Mw)
【0154】
54 PMMA標準に基づく較正曲線(分子量対保持時間)
【0155】
56 最低分子量較正(200ダルトン)
【0156】
58 GPC曲線
図1
図2
図3A
図3B
図4