(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の連結具について、
図1〜
図6を参照して説明する。
図1は、本発明の連結具が用いられるエンジン及びエキゾーストマニホールドと遮蔽体を示す模式図である。
図2は、本発明の形態例の連結具で振動体と遮蔽体が連結されている様子を示す模式的な端面図である。
図3は、
図2中の連結具5を作製するための部材を示す斜視図である。
図4は、
図3中のカラー部材を示す端面図である。
図5は、保持部形成前の結合部材120に保持部が形成される様子を示す端面図であり、
図5(A)は、第一保持部が形成される様子を示す図であり、また、
図5(B)は、第二保持部が形成される様子を示す図である。
図6は、
図2中の連結具5を示す端面図である。
【0016】
図1は、エンジン1の排気側には、エンジンからの排気ガスの排出管を1つにまとめるエキゾーストマニホールド3が設置されている。そして、エンジン1及びエキゾーストマニホールド3からは、音及び熱等の物理エネルギーが、外に向けて発せられるので、これらの物理エネルギーを遮蔽するための遮蔽体2が、エンジン1及びエキゾーストマニホールド3に取り付けられる。
【0017】
遮蔽体2は、通常、金属板からなり、固定用ボルト4で、エンジン1又はエキゾーストマニホールド3の所定箇所に取り付けられる。このとき、エンジン1又はエキゾーストマニホールド3から遮蔽体2への振動の伝達を防ぐために、エンジン1又はエキゾーストマニホールド3に、遮蔽体2が固定用ボルト4で取り付けられる部分、すなわち、振動体と遮蔽体との連結部分に、本発明の連結具が設けられる。つまり、本発明の連結具は、振動体と、板状の遮蔽体とを連結するための連結構造体である。
図2に示すように、連結具5には、遮蔽体2が固定され、遮蔽体2が固定されている連結具5が、固定部材である固定用ボルト4により、振動体であるエンジン1又はエキゾーストマニホールド3に取り付けられる。
【0018】
図3に示すように、連結具5は、カラー用第一部材11と、保持部形成前の結合部材120と、平面視渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材13と、略環状且つ平板状の金属メッシュ材又はバネ鋼材からなる第二緩衝部材14と、カラー用第二部材15と、を用いて作製される。
【0019】
図2中、連結具5では、緩衝部材として、平面視で渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材13と、略環状且つ平板状の金属メッシュ材又はバネ鋼材からなる第二緩衝部材14とが、重なり合って、半径方向で、カラー部材20と結合部材12との間に配置されている。
【0020】
第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の半径方向の内側には、カラー部材20の円筒部19が配置されている。つまり、第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の内径側は、カラー部材20の円筒部19を囲んでいる。また、第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の内径側は、軸方向で見たときに、対向する第一フランジ部21と第二フランジ部22とに挟まれている。
【0021】
カラー部材20は、
図4に示すように、カラー用第一部材11と、カラー用第二部材15と、を組み合わせることにより形成されている。カラー用第一部材11は、カラー用第一部材11の円筒部111と、円筒部111の端部から外に向けて張り出す張り出し部21と、からなり、また、カラー用第二部材15は、カラー用第二部材15の円筒部151と、円筒部151の端部から外に向けて張り出す張り出し部22と、からなる。そして、カラー用第一部材11の円筒部111が、カラー用第二部材15の円筒部151の内側に嵌め込まれることにより、カラー部材20となる。このとき、カラー部材20では、カラー用第一部材11の張り出し部21と、カラー用第二部材15の張り出し部22とは、軸方向に対向しており、カラー用第一部材11の張り出し部21がカラー部材20の第一フランジ部21となり、また、カラー用第二部材15の張り出し部22がカラー部材20の第二フランジ部22となる。また、カラー用第一部材11の円筒部111及びカラー用第二部材15の円筒部151が、カラー部材20の円筒部19となり、円筒部19の内側が、固定用ボルトの挿通孔17となる。
【0022】
第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の外径側は、結合部材12の第一保持部124で、結合部材12に保持されている。結合部材12の第一保持部124は、保持部形成前の結合部材120に、保持部を形成する加工を施すことにより形成される。
図5(A)に示すように、保持部形成前の結合部材120の第一保持部124の形成側の内側に、第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14を配置させた後、第一保持部形成側の円筒状の折り曲げ端部121の全体を内側に折り曲げる加工を行い、結合部材基部123と折り曲げ端部121とで、第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の外径側を挟み込ませる。このことにより、結合部材12の第一保持部124が形成され、第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の外径側が、結合部材12に保持される。第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の外径側は、振動時に、結合部材12の第一保持部124から外れてしまわないように、第一保持部124に保持されている。
【0023】
遮蔽体2は、結合部材12の第二保持部125で、結合部材12に保持されている。結合部材12の第二保持部125は、保持部形成前の結合部材120に、保持部を形成する加工を施すことにより形成される。
図5(B)に示すように、保持部形成前の結合部材120の第二保持部125の形成側の外側に、遮蔽体2を配置させた後、第二保持部形成側の円筒状の折り曲げ端部122全体を外側に折り曲げる加工を行い、結合部材基部123と折り曲げ端部122とで、遮蔽体2の内径側を挟み込ませる。このことにより、結合部材12の第二保持部125が形成され、遮蔽体2が、結合部材12の第二保持部125に保持される。
【0024】
連結具5では、カラー部材から緩衝部材に伝達される振動は、第一緩衝部材13と第二緩衝部材14とが、変形することにより振動を吸収する。このことにより、連結具5では、カラー部材からの振動が緩衝され、遮蔽体2の防振がなされる。つまり、連結具5では、第一緩衝部材13と第二緩衝部材14との共同により、遮蔽体2の防振がなされる。
【0025】
このようにして、連結具5では、カラー部材20から緩衝部材へ伝達された振動が緩衝される。そして、連結具5では、比較的小さい力を受けた時には十分な防振特性を発揮するが、大きな力を受けたときには、変形量が大きくなるために永久変形し易い第一緩衝部材13と共に、受ける力が大きくなるにつれ変形量が小さくなり、永久変形し難い平板状の第二緩衝部材14を、緩衝部材として用いることにより、使用し続けることによる、線材からなる第一緩衝部材13の永久変形を、遅らせることができる。そのため、緩衝部材が、線材からなる第一緩衝部材13と、略環状且つ平板状である第二緩衝部材14と、からなる連結具5では、線材からなる第一緩衝部材13の寿命が長くなる。また、連結具5では、緩衝部材が、平面視で渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材13と、略環状且つ平板状であり、厚み方向に湾曲可能である第二緩衝部材14と、からなることにより、比較的小さな力が加わったときは第一緩衝部材13が第二緩衝部材14の振動吸収力を補い、十分な防振特性を発揮すると共に、大きな力が加わると第二緩衝部材14が変形し難くなり、第一緩衝部材13の振動吸収力を補うこととなる。
【0026】
本発明の第一の形態の連結具は、振動源となる振動体と、該振動体に取り付けられる板状の遮蔽体との連結部分に設けられる連結具であって、
平面視で渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材と、
略環状且つ平板状であり、厚み方向に湾曲可能である第二緩衝部材と、
該振動体に該連結具を取り付けるための固定部材の挿通孔を有し、該第一緩衝部材及び該第二緩衝部材に囲まれる円筒部と、該円筒部から半径方向に張り出し、該第一緩衝部材の内径側に対向する第一フランジ部と、該第二緩衝部材の内径側に対向する第二フランジ部と、からなるカラー部材と、
該第一緩衝部材及び該第二緩衝部材の外径側を保持する第一保持部と、該遮蔽体を保持する第二保持部と、該第一保持部と該第二保持部とを繋ぐ結合部材基部と、からなる結合部材と、
からなること、
を特徴とする連結具である。
【0027】
本発明の第一の形態の連結具は、振動源となる振動体と、振動体に取り付けられる板状の遮蔽体との連結部分に設けられる連結具である。つまり、振動体と遮蔽体とを連結するための連結構造体である。振動源となる振動体は、エンジン、トランスミッション、エンジンに付設されるエキゾーストマニホールド、ターボチャージャー、熱交換部品、回転電機等である。また、振動体に取り付けられる遮蔽体は、振動源又はその近傍の部品から発せられる熱、音等の物理エネルギーが、エンジン回りの他の部品や車外へ伝達するのを遮蔽する部品である。遮蔽体は、通常、対向する二枚の金属板を備え、断熱又は遮音のニーズに合わせ、金属板を2枚にしたり、制振材や吸音材を施工したりする。そして、遮蔽体が保持されている本発明の連結具の固定部材の挿通孔に、固定用ボルト等の固定部材が挿通され、固定部材で、遮蔽体が保持されている本発明の連結具が、振動体に固定されることにより、振動体に遮蔽体が取り付けられる。
【0028】
本発明の第一の形態の連結具は、平面視渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材と、略環状且つ平板状であり、厚み方向に湾曲可能な第二緩衝部材と、カラー部材と、結合部材と、からなる。
【0029】
第一緩衝部材は、平面視で渦巻き状の線材からなる。第一緩衝部材の巻き形状は、軸方向に見たときに、全体がほぼ同じ位置で巻かれている形状であってもよいし、あるいは、渦巻きが外に向かうに従って巻かれる位置が徐々に変化する、所謂、螺旋渦巻き状であってもよい。第一緩衝部材の渦巻きの方向は、右巻きであっても、左巻きであってもよい。第一緩衝部材の渦巻きは、内径側から外径側まで、一定の変化率で曲率半径が変化していてもよいし、あるいは、内径側から外径側までで、曲率半径の変化率が異なる部分があってもよい。第一緩衝部材中の半径方向で隣り合う線材同士の間隔は、全て一定であってもよいし、あるいは、第一緩衝部材中の半径方向で隣り合う線材同士の間隔に、異なる部分があってもよい。
【0030】
第一緩衝部材の線材の材質としては、硬鋼線、ステンレス鋼線、ピアノ線、バネ鋼材等が挙げられ、耐熱性、防振性、腐食性が高くなる点で、ステンレス鋼線が好ましい。第一緩衝部材の線材の断面形状としては、円形、楕円形、矩形等が挙げられる。第一緩衝部材の線材の太さは、特に制限されないが、好ましくは0.8〜1.2mmである。
【0031】
第一緩衝部材の作製方法は、特に制限されず、例えば、一本の長い線材を所定の渦巻き形状に成形する方法や、
図7(A)に示す点線の位置で、金属板30を打ち抜き、
図7(B)に示すように、渦巻き状の金属板の打ち抜き体である第一緩衝部材13bに成形する方法等が挙げられる。
図7に示すように、金属板を打ち抜いて渦巻き形状の第一緩衝部材に成形する方法では、第一緩衝部材の全ての渦巻き部分が、軸方向に同一位置で巻かれるようにし易くできる点、及び線材を渦巻き状に成形する場合に比べ、渦巻き形状への成形が容易な点で、好ましい。
【0032】
第二緩衝部材は、略環状且つ平板状の形状である。また、第二緩衝部材は、厚み方向に湾曲可能である。第二緩衝部材の材料及び厚みは、厚み方向に湾曲可能であれば、特に制限されない。第二緩衝部材の材料としては、例えば、金属メッシュ材、バネ鋼材等の金属板材、モールド加工やフェルト加工等を施した無機繊維材等が挙げられ、バネ鋼材からなる金属板材が好ましい。また、第二緩衝部材の厚みは、好ましくは0.1〜2.0である。第二緩衝部材としては、
図11に示す形態例のように、金属板材、好ましくはバネ鋼材からなる金属板材が、略環状の輪郭、且つ、略円弧状の長穴部141が形成されている形状に打ち抜き加工された第二緩衝部材14aが好ましい。
【0033】
本発明の第一の形態の連結具では、第一緩衝部材と第二緩衝部材は、半径方向で、カラー部材と結合部材との間に配置されている。
【0034】
本発明の第一の形態の連結具では、振動体側に第一緩衝部材が配置されていても、振動体側に第二緩衝部材が配置されていてもよい。そして、第一緩衝部材は線材からなるので、熱の影響を受け易いため、振動体側に第二緩衝部材が配置されていることが、第一緩衝部材が熱の影響を受け難い点で、好ましい。
【0035】
本発明の第一の形態の連結具では、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の半径方向の内側には、カラー部材の円筒部が配置されており、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の内径側は、カラー部材の円筒部を囲んでいる。また、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の内径側は、軸方向で見たときに、対向する第一フランジ部と第二フランジ部で挟まれている。つまり、第一フランジ部は、軸方向で、第一緩衝部材の内径側と対向し、且つ、第二フランジ部は、軸方向で、第二緩衝部材の内径側と対向する。
【0036】
カラー部材は、円筒部と、円筒部の両側に、半径方向の外に向けて張り出す第一フランジ部及び第二フランジ部と、を有する。また、カラー部材は、半径方向の中心部、すなわち、円筒部の内側に、固定部材の挿通孔を有する。カラー部材では、カラー部材の第一フランジ部と、カラー部材の第二フランジ部とは、軸方向に対向している。そして、軸方向に対向する第一フランジ部と第二フランジ部とで、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の内径側が挟まれている。
【0037】
図2に示す形態例のカラー部材では、円筒部は、軸方向に見たときに、第一フランジ部側から第二フランジ部側までが、同じ外径の円筒部である。円筒部の他の形態としては、
図8に示す形態例のカラー部材のように、軸方向に見たときに、第一フランジ部21c側の円筒部19c1の外径が小さく、第二フランジ部22c側の円筒部19c2の外径が大きい円筒部19cが挙げられる。
図8に示す形態例では、第一フランジ部21cと、第一フランジ部側の外径が小さい方の円筒部19c1の外径側と、第二フランジ部側の外径が大きい方の円筒部19c2の第一フランジ部21cに対向する面と、で、第一緩衝部材13の最内径側の線材131cの保持部が形成され、この保持部に、第一緩衝部材13の最内径側の線材131cが保持されている。例えば、第一緩衝部材13の最内径側の線材131cが、第一フランジ部21cと、第二フランジ部側の外径が大きい方の円筒部19c2の第一フランジ部21cに対向する面により、強く挟み込まれている。
【0038】
結合部材は、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の外径側を保持する第一保持部と、遮蔽体を保持する第二保持部と、第一保持部と第二保持部を繋ぐ結合部材基部と、からなる。
【0039】
第一緩衝部材及び第二緩衝部材の外径側は、結合部材の第一保持部で、結合部材に保持されている。そして、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の外径側は、振動時に、結合部材の第一保持部から外れてしまわないように、結合部材の第一保持部に保持されている。
【0040】
遮蔽体は、結合部材の第二保持部で、結合部材に保持されている。
【0041】
図2に示す形態例では、結合部材は、第一保持部形成側の円筒状の折り曲げ端部全体が内側に折り曲げられる加工が施されることにより、第一保持部が形成され、第二保持部形成側の円筒状の折り曲げ端部全体が外側に折り曲げられる加工が施されることにより、第二保持部が形成されており、また、略環状且つ平板状の結合部材基部が、第一保持部と第二保持部に連続している。結合部材の他の形態としては、
図9に示す形態例のように、略環状且つ平板状の結合部材基部123dと、結合部材基部123dの外径側に形成され、結合部材基部123dの一方の面126d側に折り曲げられる折り曲げ部25と、結合部材基部123dの内径側に形成され、結合部材基部123dの他方の面127d側に折り曲げられる折り曲げ部26と、からなる保持部形成前の結合部材120cの折り曲げ部25及び26を折り曲げて形成される結合部材が挙げられる。
図9中の保持部形成前の結合部材120cでは、結合部材基部の一方の面126dに、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の外径側が配置され、折り曲げ部25が内側に向けて折り曲げられて、結合部材基部の一方の面126dと折り曲げ部25とで、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の外径側を挟み込み、保持することにより、連結部材の第一保持部が形成される。また、保持部形成前の結合部材120cでは、結合部材基部の他方の面127dに、遮蔽体が配置され、折り曲げ部26が外側に向けて折り曲げられて、結合部材基部の他方の面127dと折り曲げ部26とで、遮蔽体を挟み込み、保持することにより、連結部材の第二保持部が形成される。
図9中の保持部形成前の結合部材120cの折り曲げ部を折り曲げて形成される結合部材では、折り曲げ部25又は26が形成されている部分に、保持部が形成され、その部分で、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の外径側と遮蔽体の内径側が保持される。そして、本発明の第一の形態の連結具では、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の外径側と遮蔽体が結合部材に保持されるのであれば、第一保持部及び第二保持部は、結合部材の周方向の全体に亘って形成されていてもよく、あるいは、結合部材の周方向の一部に形成されていてもよく、言い換えると、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の外径側が全周に亘って第一保持部に保持されていてもよく、遮蔽体の内径側が全周に亘って第二保持部に保持されていてもよく、あるいは、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の外径側の全周のうちの一部が第一保持部に保持されていてもよく、遮蔽体の内径側の全周のうちの一部が第二保持部に保持されていてもよい。なお、
図9中、(A)は、保持部形成前の結合部材120dの斜視図であり、(B)は、保持部形成前の結合部材120dを下から見た図であり、(C)は、保持部形成前の結合部材120dを上から見た図である。
【0042】
本発明の第一の形態の連結具において、結合部材における第一保持部と第二保持部の形成位置であるが、
図2に示す形態例では、結合部材の第二保持部が、結合部材の第一保持部に対し、軸方向で、振動体から離れる位置に形成されているが、すなわち、軸方向に、振動体→第一保持部→結合部材基部→第二保持部の順になっているが、本発明では、これに制限されない。他の形態としては、例えば、結合部材の第二保持部が、結合部材の第一保持部に対し、軸方向で、振動体に近づく位置に形成されていてもよい、すなわち、軸方向に、振動体→第二保持部→結合部材基部→第一保持部の順になっていてもよい。また、他の形態としては、結合部材の第二保持部が、結合部材の第一保持部に対し、半径方向で、外側に形成されていてもよい、すなわち、半径方向で、結合部材基部の内側に第一保持部が形成され、結合部材基部の外側に第二保持部が形成されていてもよい。
【0043】
本発明の第一の形態の連結具では、振動体からカラー部材に伝達された振動は、カラー部材から緩衝部材に伝達されると、第一緩衝部材及び第二緩衝部材が変形することにより、第一緩衝部材及び第二緩衝部材により緩衝されて、遮蔽体の防振がなされる。つまり、本発明の第一の形態の連結具では、第一緩衝部材と第二緩衝部材との共同により、遮蔽体の防振がなされる。
【0044】
本発明の第一の形態の連結具では、カラー部材から緩衝部材へ伝達された振動が、第一緩衝部材と第二緩衝部材とが、変形することにより緩衝される。そして、本発明の第一の形態の連結具では、比較的小さな力を受けた時には、十分な防振特性を発揮するが、大きな力を受けたときには、大きく変形するために永久変形し易い第一緩衝部材と共に、受ける力が大きくなるにつれ変形量が小さくなり、永久変形し難い平板状の第二緩衝部材を、緩衝部材として用いることにより、使用し続けることによる、線材からなる第一緩衝部材の永久変形を、遅らせることができる。そのため、緩衝部材が、線材からなる第一緩衝部材と、略環状且つ平板状である第二緩衝部材と、からなる本発明の第一の形態の連結具では、線材からなる第一緩衝部材の寿命が長くなる。また、本発明の第一の形態の連結具では、緩衝部材が、平面視で渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材と、略環状且つ平板状であり、厚み方向に湾曲可能である第二緩衝部材と、からなることにより、比較的小さな力が加わったときには、第一緩衝部材が第二緩衝部材の振動吸収力を補い、十分な防振特性を発揮すると共に、大きな力が加わると第二緩衝部材が変形し難くなり、第一緩衝部材の振動吸収力を補うこととなる。
【0045】
本発明の第一の形態の連結具では、第一緩衝部材の内径側及び第二緩衝部材の内径側が、カラー部材の第一フランジ部と第二フランジ部との間から外に外れないように、第一緩衝部材の内径と、第二緩衝部材の内径と、カラー部材の円筒部の外径と、第一フランジ部及び第二フランジ部の半径方向の張り出し長さが調節されている。
【0046】
このようにして、本発明の第一の形態の連結具では、カラー部材から緩衝部材へ伝達される振動が緩衝される。
【0047】
本発明の第二の形態の連結具は、振動源となる振動体と、該振動体に取り付けられる板状の遮蔽体との連結部分に設けられる連結具であって、
平面視で渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材と、
略環状且つ平板状であり、厚み方向に湾曲可能である第二緩衝部材と、
平面視で渦巻き状の線材からなり、該第一緩衝部材側とは反対側に配置される第三緩衝部材と、
該振動体に該連結具を取り付けるための固定部材の挿通孔を有し、該第一緩衝部材、該第二緩衝部材及び該第三緩衝部材に囲まれる円筒部と、該円筒部から半径方向に張り出し、該第一緩衝部材の内径側に対向する第一フランジ部と、該第三緩衝部材の内径側に対向する第二フランジ部と、からなるカラー部材と、
該第一緩衝部材、該第二緩衝部材及び該第三緩衝部材の外径側を保持する第一保持部と、該遮蔽体を保持する第二保持部と、該第一保持部と該第二保持部とを繋ぐ結合部材基部と、からなる結合部材と、
からなること、
を特徴とする連結具である。
【0048】
本発明の第二の形態の連結具は、本発明の第一の形態の連結具とは、第二緩衝部材を基準として第一緩衝部材とは反対側に第三緩衝部材を更に有する点が異なるが、他については、本発明の第二の形態の連結具は、本発明の第一の形態の連結具と同様である。そこで、以下では、本発明の第二の形態の連結具については、本発明の第一の形態の連結具と異なる点について説明し、同様な点についは、説明を省略する。
【0049】
本発明の第二の形態の連結具は、平面視渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材と、略環状且つ平板状であり、厚み方向に湾曲可能な第二緩衝部材と、平面視渦巻き状の線材からなる第三緩衝部材と、カラー部材と、結合部材と、からなる。例えば、
図10に示すように、連結具36は、平面視渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材13と、略環状且つ平板状であり、厚み方向に湾曲可能な第二緩衝部材14と、平面視渦巻き状の線材からなる第三緩衝部材35と、カラー部材20と、結合部材12と、からなる。連結具36では、振動体側から、第三緩衝部材35→第二緩衝部材14→第一緩衝部材13の順で配置されている。
【0050】
本発明の第二の形態の連結具に係る第一緩衝部材及び第二緩衝部材は、本発明の第一の形態の連結具に係る第一緩衝部材及び第二緩衝部材と同様である。
【0051】
第三緩衝部材は、第二緩衝部材を基準に第一緩衝部材側とは反対側に配置されること以外は、第一緩衝部材と同様である。
【0052】
本発明の第二の形態の連結具では、第一緩衝部材と第二緩衝部材と第三緩衝部材は、この順に配置されて、半径方向で、カラー部材と結合部材との間に配置されている。
【0053】
本発明の第二の形態の連結具では、第一緩衝部材と第三緩衝部材とで、材質、線径、断面形状、巻き数、周長等を変えることにより、主として吸収する振動の周波数帯を変えて、分布の多い周波数帯を効率的に防振するような設計を行うことが可能となる。
【0054】
本発明の第二の形態の連結具では、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材の半径方向の内側には、カラー部材の円筒部が配置されており、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材の内径側は、カラー部材の円筒部を囲んでいる。また、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材の内径側は、軸方向で見たときに、対向する第一フランジ部と第二フランジ部で挟まれている。つまり、第一フランジ部は、軸方向で、第一緩衝部材の内径側と対向し、また、第二フランジ部は、軸方向で、第三緩衝部材の内径側と対向する。
【0055】
本発明の第二の形態の連結具に係るカラー部材及び結合部材は、本発明の第一の形態の連結具に係るカラー部材とは、緩衝部材が、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材であること以外は、本発明の第一の形態の連結具に係るカラー部材及び結合部材と同様である。
【0056】
本発明の第二の形態の連結具では、振動体からカラー部材に伝達された振動は、カラー部材から緩衝部材に伝達されると、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材が、変形することにより緩衝されて、遮蔽体の防振がなされる。
【0057】
本発明の第二の形態の連結具では、第一緩衝部材の内径側、第二緩衝部材の内径側及び第三緩衝部材の内径側が、カラー部材の第一フランジ部と第二フランジ部との間から外に外れないように、第一緩衝部材の内径と、第二緩衝部材の内径と、第三緩衝部材の内径と、カラー部材の円筒部の外径と、第一フランジ部及び第二フランジ部の半径方向の張り出し長さが調節されている。
【0058】
このようにして、本発明の第二の形態の連結具では、カラー部材から緩衝部材へ伝達された振動が、第一緩衝部材と第二緩衝部材と第三緩衝部材が、変形することにより、緩衝される。そして、本発明の第二の形態の連結具では、比較的小さな力を受けた時には十分な防振特性を発揮するが、大きな力を受けたときには、大きく変形するために永久変形し易い第一緩衝部材及び第三緩衝部材と共に、力が大きくなるにつれ変形量が小さくなり、永久変形し難い平板状の第二緩衝部材を、緩衝部材として用いることにより、使用し続けることによる、線材からなる第一緩衝部材及び第三緩衝部材の永久変形を、遅らせることができる。そのため、緩衝部材が、線材からなる第一緩衝部材及び第三緩衝部材と、略環状且つ平板状である第二緩衝部材と、からなる本発明の第二の形態の連結具では、線材からなる第一緩衝部材及び第三緩衝部材の寿命が長くなる。また、本発明の第二の形態の連結具では、緩衝部材が、平面視で渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材及び第三緩衝部材と、略環状且つ平板状であり、厚み方向に湾曲可能である第二緩衝部材と、からなることにより、比較的小さな力が加わったときには、第一緩衝部材及び第三緩衝部材が第二緩衝部材の振動吸収力を補い、十分な防振特性を発揮すると共に、大きな力が加わると第二緩衝部材が変形し難くなり、第一緩衝部材及び第三緩衝部材の振動吸収力を補うこととなる。
【0059】
また、本発明の第一の形態の連結具では、第一緩衝部材の巻き形状が、平面視で渦巻き状であり且つ軸方向に見たときに、全体がほぼ同じ位置で巻かれている形状であり、第一緩衝部材が第二緩衝部材と重なっていることにより、渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材が、使用中に、渦巻き状の線材の途中部分が、軸方向に飛び出すことで、途中部分がカラー部材、結合部材をのり越えた状態で保持されることが防がれる点で、好ましい。また、本発明の第二の形態の連結具では、第一緩衝部材の巻き形状が、平面視で渦巻き状であり且つ軸方向に見たときに、全体がほぼ同じ位置で巻かれている形状であり、第三緩衝部材の巻き形状が、平面視で渦巻き状であり且つ軸方向に見たときに、全体がほぼ同じ位置で巻かれている形状であり、第一緩衝部材が第二緩衝部材と重なっており、且つ、第三緩衝部材が第二緩衝部材と重なっていることにより、渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材及び第三緩衝部材が、使用中に、渦巻き状の線材の途中部分が、軸方向に飛び出すことで、途中部分がカラー部材、結合部材をのり越えた状態で保持されることが防がれる点で、好ましい。
【0060】
本発明の第一の形態の連結具のうち、第一緩衝部材の巻き形状が、平面視で渦巻き状であり且つ軸方向に見たときに、全体がほぼ同じ位置で巻かれている形状であり、第一緩衝部材が第二緩衝部材と重なっており、第二緩衝部材と円筒部との間には、第二緩衝部材が半径方向に移動するための隙間が形成されており、第二緩衝部材の半径方向の移動が可能となるように、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の内径側が、第一フランジ部と第二フランジ部とで挟まれている形態(以下、本発明の第三の形態の連結具とも記載する。)が、カラー部材からの振動で、第二緩衝部材の内径側が、カラー部材の円筒部に繰り返し強く衝突して生じる「カタカタ音」の発生が防止される点で、好ましい。また、本発明の第二の形態の連結具のうち、第一緩衝部材の巻き形状が、平面視で渦巻き状であり且つ軸方向に見たときに、全体がほぼ同じ位置で巻かれている形状であり、第一緩衝部材が第二緩衝部材と重なっており、第三緩衝部材の巻き形状が、平面視で渦巻き状であり且つ軸方向に見たときに、全体がほぼ同じ位置で巻かれている形状であり、第三緩衝部材が第二緩衝部材と重なっており、第二緩衝部材と円筒部との間には、第二緩衝部材が半径方向に移動するための隙間が形成されており、第二緩衝部材の半径方向の移動が可能となるように、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材の内径側が、第一フランジ部と第二フランジ部とで挟まれている形態(以下、本発明の第四の形態の連結具とも記載する。)が、カラー部材からの振動で、第二緩衝部材の内径側が、カラー部材の円筒部に繰り返し強く衝突して生じる「カタカタ音」の発生が防止される点で、好ましい。
【0061】
本発明の第三の形態の連結具について、
図12〜
図17を参照して説明する。
図12は、本発明の第三の形態の連結具の形態例で振動体と遮蔽体が連結されている様子を示す模式的な端面図である。
図13は、
図12中の連結具5を作製するための部材を示す斜視図である。
図14は、
図13中のカラー部材を示す端面図である。
図15は、保持部形成前の結合部材120に保持部が形成される様子を示す端面図であり、
図15(A)は、第一保持部が形成される様子を示す図であり、また、
図15(B)は、第二保持部が形成される様子を示す図である。
図16は、
図12中の連結具5を示す端面図である。
図17は、
図12中の緩衝部材が、振動により半径方向に移動する様子を示す図である。
【0062】
本発明の第三の形態の連結具が用いられるエンジン及びエキゾーストマニホールドと遮蔽体は、
図1に示すものと同様である。
図1に示すように、エンジン1の排気側には、エンジンからの排気ガスの排出管を1つにまとめるエキゾーストマニホールド3が設置されている。そして、エンジン1及びエキゾーストマニホールド3からは、音及び熱等の物理エネルギーが、外に向けて発せられるので、これらの物理エネルギーを遮蔽するための遮蔽体2が、エンジン1及びエキゾーストマニホールド3に取り付けられる。
【0063】
遮蔽体2は、通常、金属板からなり、固定用ボルト4で、エンジン1又はエキゾーストマニホールド3の所定箇所に取り付けられる。このとき、エンジン1又はエキゾーストマニホールド3から遮蔽体2への振動の伝達を防ぐために、エンジン1又はエキゾーストマニホールド3に、遮蔽体2が固定用ボルト4で取り付けられる部分、すなわち、振動体と遮蔽体との連結部分に、本発明の第三の形態の連結具が設けられる。つまり、本発明の第三の形態の連結具は、振動体と、板状の遮蔽体とを連結するための連結構造体である。
図12に示すように、連結具5には、遮蔽体2が固定され、遮蔽体2が固定されている連結具5が、固定部材である固定用ボルト4により、振動体であるエンジン1又はエキゾーストマニホールド3に取り付けられる。
【0064】
図13に示すように、連結具5は、カラー用第一部材11と、保持部形成前の結合部材120と、平面視渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材13と、略環状且つ平板状の金属メッシュ材又はバネ鋼材からなる第二緩衝部材14と、カラー用第二部材15と、を用いて作製される。
【0065】
図12中、連結具5では、緩衝部材として、平面視で渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材13と、略環状且つ平板状の金属メッシュ材又はバネ鋼材からなる第二緩衝部材14とが、重なり合って、半径方向で、カラー部材20と結合部材12との間に配置されている。
【0066】
第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の半径方向の内側には、カラー部材20の円筒部19が配置されている。つまり、第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の内径側は、カラー部材20の円筒部19を囲んでいる。また、第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の内径側は、軸方向で見たときに、対向する第一フランジ部21と第二フランジ部22とに挟まれている。
【0067】
カラー部材20は、
図14に示すように、カラー用第一部材11と、カラー用第二部材15と、を組み合わせることにより形成されている。カラー用第一部材11は、カラー用第一部材11の円筒部111と、円筒部111の端部から外に向けて張り出す張り出し部21と、からなり、また、カラー用第二部材15は、カラー用第二部材15の円筒部151と、円筒部151の端部から外に向けて張り出す張り出し部22と、からなる。そして、カラー用第一部材11の円筒部111が、カラー用第二部材15の円筒部151の内側に嵌め込まれることにより、カラー部材20となる。このとき、カラー部材20では、カラー用第一部材11の張り出し部21と、カラー用第二部材15の張り出し部22とは、軸方向に対向しており、カラー用第一部材11の張り出し部21がカラー部材20の第一フランジ部21となり、また、カラー用第二部材15の張り出し部22がカラー部材20の第二フランジ部22となる。また、カラー用第一部材11の円筒部111及びカラー用第二部材15の円筒部151が、カラー部材20の円筒部19となり、円筒部19の内側が、固定用ボルトの挿通孔17となる。
【0068】
第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の外径側は、結合部材12の第一保持部124で、結合部材12に保持されている。結合部材12の第一保持部124は、保持部形成前の結合部材120に、保持部を形成する加工を施すことにより形成される。
図15(A)に示すように、保持部形成前の結合部材120の第一保持部124の形成側の内側に、第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14を配置させた後、第一保持部形成側の円筒状の折り曲げ端部121の全体を内側に折り曲げる加工を行い、結合部材基部123と折り曲げ端部121とで、第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の外径側を挟み込ませる。このことにより、結合部材12の第一保持部124が形成され、第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の外径側が、結合部材12に保持される。第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の外径側は、振動時に、結合部材12の第一保持部124から外れてしまわないように、第一保持部124に保持されている。
【0069】
遮蔽体2は、結合部材12の第二保持部125で、結合部材12に保持されている。結合部材12の第二保持部125は、保持部形成前の結合部材120に、保持部を形成する加工を施すことにより形成される。
図15(B)に示すように、保持部形成前の結合部材120の第二保持部125の形成側の外側に、遮蔽体2を配置させた後、第二保持部形成側の円筒状の折り曲げ端部122全体を外側に折り曲げる加工を行い、結合部材基部123と折り曲げ端部122とで、遮蔽体2の内径側を挟み込ませる。このことにより、結合部材12の第二保持部125が形成され、遮蔽体2が、結合部材12の第二保持部125に保持される。
【0070】
図16に示すように、連結具5には、半径方向に見たときに、カラー部材20の円筒部19と、第二緩衝部材14の内径側との間に、隙間16が形成されている。この隙間16は、第二緩衝部材14の半径方向23の移動を可能とする隙間である。
【0071】
連結具5では、カラー部材から緩衝部材に伝達される振動は、半径方向23の振動成分と、軸方向24の振動成分とからなる。軸方向24の振動成分については、第一緩衝部材13と第二緩衝部材14とが共に、軸方向に湾曲することにより、軸方向の振動成分を吸収する。また、半径方向23の振動成分は、
図17に示すように、第一緩衝部材13が、線材の間隔が狭くなったり、広くなったりする弾性変形を繰り返すことにより、第一緩衝部材13が半径方向の振動成分を吸収する。このようなことにより、連結具5では、カラー部材からの振動が緩衝され、遮蔽体2の防振がなされる。このとき、第二緩衝部材14の外径側は、第一緩衝部材13の外径側と共に、結合部材12の第一保持部124に保持されており、且つ、第二緩衝部材14の内径側は、第二緩衝部材の半径方向の移動が可能に、第一フランジ部21と第二フランジ部22との間に挟まれているので、カラー部材からの振動により、第一緩衝部材13が、線材の間隔が狭くなったり、広くなったりする弾性変形を繰り返すと、第二緩衝部材14は、カラー部材20の円筒部19に内径側が近づいたり、離れたりする、半径方向の移動を繰り返す。そして、このような第二緩衝部材14の半径方向の繰り返し移動は、カラー部材20の円筒部19と第二緩衝部材14の内径側との間の半径方向の隙間16が存在していることにより可能となる。
【0072】
連結具5では、第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の内径側は、上述した半径方向の振動成分により、第二緩衝部材14の内径側が、カラー部材20の円筒部19に近づいたり、離れたりする、半径方向の移動が可能な程度に、カラー部材20の第一フランジ部21と第二フランジ部22とに挟まれている。なお、カラー部材20の第一フランジ部21と第二フランジ部22とが、第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の内径側を挟み込む力が強過ぎると、第一緩衝部材13の半径方向の弾性変形も、第二緩衝部材14の半径方向の移動も、できなくなる。また、第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の内径側と、第一フランジ部21及び第二フランジ部22との間には、上述した第一緩衝部材13の半径方向の弾性変形及び第二緩衝部材14の半径方向の移動が可能な程度に、隙間が空いていてもよいが、隙間が大き過ぎると、第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の内径側が、第一フランジ部21及び第二フランジ部22との間から外れてしまう。
【0073】
また、連結具5では、第二緩衝部材14の半径方向の移動を繰り返したときに、第二緩衝部材14の内径側が、カラー部材20の第一フランジ部21と第二フランジ部22との間から外に外れないように、半径方向の隙間16の大きさが調節されている。言い換えると、連結具5では、第二緩衝部材14の内径側が、カラー部材20の第一フランジ部21と第二フランジ部22との間から外に外れないように、第二緩衝部材14の内径と、カラー部材20の円筒部19の外径と、第一フランジ部21及び第二フランジ部22の張り出し長さが調節されている。
【0074】
このようにして、連結具5では、カラー部材20から緩衝部材へ伝達された振動が緩衝される。そして、
図16及び
図17に示すように、第一緩衝部材13の片面側に、平板状の第二緩衝部材14が存在し、振動時には、第二緩衝部材14の片面側に沿って、第一緩衝部材13の線材の途中部分131a、131bが摺動するので、第一緩衝部材13の線材の途中部分131a、131bが、軸方向24に飛び出すことが防止される。
【0075】
また、
図16及び
図17に示すように、平板状の第二緩衝部材14とカラー部材20の円筒部19との間には、隙間16が存在し、且つ、振動時に、カラー部材20の円筒部19に向かって移動する第二緩衝部材14を、渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材13が弾性変形して受け止めることになるので、第二緩衝部材14の内径側が、カラー部材20の円筒部19に強く衝突することが防がれる。このことにより、カラー部材からの振動で、第二緩衝部材14の内径側が、カラー部材20の円筒部19に繰り返し強く衝突して生じる「カタカタ音」の発生が防止される。
【0076】
本発明の第三の形態の連結具は、振動源となる振動体と、該振動体に取り付けられる板状の遮蔽体との連結部分に設けられる連結具であって、
平面視で渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材と、
略環状且つ平板状であり、厚み方向に湾曲可能であり、該第一緩衝部材と重なる第二緩衝部材と、
該振動体に該連結具を取り付けるための固定部材の挿通孔を有し、該第一緩衝部材及び該第二緩衝部材に囲まれる円筒部と、該円筒部から半径方向に張り出し、該第一緩衝部材の内径側に対向する第一フランジ部と、該第二緩衝部材の内径側に対向する第二フランジ部と、からなるカラー部材と、
該第一緩衝部材及び該第二緩衝部材の外径側を保持する第一保持部と、該遮蔽体を保持する第二保持部と、該第一保持部と該第二保持部とを繋ぐ結合部材基部と、からなる結合部材と、
からなり、
該第二緩衝部材と該円筒部との間には、該第二緩衝部材が半径方向に移動するための隙間が形成されており、該第二緩衝部材の半径方向の移動が可能となるように、該第一緩衝部材及び該第二緩衝部材の内径側が、該第一フランジ部と該第二フランジ部とで挟まれていること、
を特徴とする連結具である。
【0077】
本発明の第三の形態の連結具は、振動源となる振動体と、振動体に取り付けられる板状の遮蔽体との連結部分に設けられる連結具である。つまり、振動体と遮蔽体とを連結するための連結構造体である。振動源となる振動体は、エンジン、トランスミッション、エンジンに付設されるエキゾーストマニホールド、ターボチャージャー、熱交換部品、回転電機等である。また、振動体に取り付けられる遮蔽体は、振動源又はその近傍の部品から発せられる熱、音等の物理エネルギーが、エンジン回りの他の部品や車外へ伝達するのを遮蔽する部品である。遮蔽体は、通常、対向する二枚の金属板を備え、断熱又は遮音のニーズに合わせ、金属板を2枚にしたり、制振材や吸音材を施工したりする。そして、遮蔽体が保持されている本発明の連結具の固定部材の挿通孔に、固定用ボルト等の固定部材が挿通され、固定部材で、遮蔽体が保持されている本発明の連結具が、振動体に固定されることにより、振動体に遮蔽体が取り付けられる。
【0078】
本発明の第三の形態の連結具は、平面視渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材と、略環状且つ平板状であり、厚み方向に湾曲可能な第二緩衝部材と、カラー部材と、結合部材と、からなる。
【0079】
第一緩衝部材は、平面視で渦巻き状の線材からなる。第一緩衝部材の渦巻きは、軸方向に見たときに、全体がほぼ同じ位置で巻かれている。よって、第一緩衝部材の巻き形状は、渦巻きが外に向かうに従って巻かれる位置が徐々に変化する、所謂、螺旋渦巻き状ではない。ただし、第一緩衝部材の全ての渦巻き部分が、軸方向に、完全に同一位置で巻かれている必要はなく、本発明の効果を損なわない範囲で、多少、軸方向にずれている箇所があってもよい。第一緩衝部材の渦巻きの方向は、右巻きであっても、左巻きであってもよい。第一緩衝部材の渦巻きは、内径側から外径側まで、一定の変化率で曲率半径が変化していてもよいし、あるいは、内径側から外径側までで、曲率半径の変化率が異なる部分があってもよい。第一緩衝部材中の半径方向で隣り合う線材同士の間隔は、全て一定であってもよいし、あるいは、第一緩衝部材中の半径方向で隣り合う線材同士の間隔に、異なる部分があってもよい。
【0080】
第一緩衝部材の線材の材質としては、硬鋼線、ステンレス鋼線、ピアノ線、バネ鋼材等が挙げられ、耐熱性、防振性、腐食性が高くなる点で、ステンレス鋼線が好ましい。第一緩衝部材の線材の断面形状としては、円形、楕円形、矩形等が挙げられる。第一緩衝部材の線材の太さは、特に制限されないが、好ましくは0.8〜1.2mmである。
【0081】
第一緩衝部材の作製方法は、特に制限されず、例えば、一本の長い線材を所定の渦巻き形状に成形する方法や、
図7(A)に示す点線の位置で、金属板30を打ち抜き、
図7(B)に示すように、渦巻き状の金属板の打ち抜き体である第一緩衝部材13bに成形する方法等が挙げられる。
図7に示すように、金属板を打ち抜いて渦巻き形状の第一緩衝部材に成形する方法では、第一緩衝部材の全ての渦巻き部分が、軸方向に同一位置で巻かれるようにし易くできる点、及び線材を渦巻き状に成形する場合に比べ、渦巻き形状への成形が容易な点で、好ましい。
【0082】
第二緩衝部材は、略環状且つ平板状の形状である。また、第二緩衝部材は、厚み方向に湾曲可能である。第二緩衝部材の材料及び厚みは、厚み方向に湾曲可能であれば、特に制限されない。第二緩衝部材の材料としては、例えば、金属メッシュ材、バネ鋼材等の金属板材、モールド加工やフェルト加工等を施した無機繊維材等が挙げられ、バネ鋼材からなる金属板材が好ましい。また、第二緩衝部材の厚みは、好ましくは0.1〜2.0である。第二緩衝部材としては、
図11に示す形態例のように、金属板材、好ましくはバネ鋼材からなる金属板材が、略環状の輪郭、且つ、略円弧状の長穴部141が形成されている形状に打ち抜き加工された第二緩衝部材14aが好ましい。
【0083】
本発明の第三の形態の連結具では、第一緩衝部材と第二緩衝部材とは、重なり合って、半径方向で、カラー部材と結合部材との間に配置されている。
【0084】
本発明の第三の形態の連結具では、振動体側に第一緩衝部材が配置されていても、振動体側に第二緩衝部材が配置されていてもよい。そして、第一緩衝部材は線材からなるので、熱の影響を受け易いため、振動体側に第二緩衝部材が配置されていることが、第一緩衝部材が熱の影響を受け難い点で、好ましい。
【0085】
本発明の第三の形態の連結具では、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の半径方向の内側には、カラー部材の円筒部が配置されており、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の内径側は、カラー部材の円筒部を囲んでいる。また、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の内径側は、軸方向で見たときに、対向する第一フランジ部と第二フランジ部で挟まれている。つまり、第一フランジ部は、軸方向で、第一緩衝部材の内径側と対向し、且つ、第二フランジ部は、軸方向で、第二緩衝部材の内径側と対向する。
【0086】
カラー部材は、円筒部と、円筒部の両側に、半径方向の外に向けて張り出す第一フランジ部及び第二フランジ部と、を有する。また、カラー部材は、半径方向の中心部、すなわち、円筒部の内側に、固定部材の挿通孔を有する。カラー部材では、カラー部材の第一フランジ部と、カラー部材の第二フランジ部とは、軸方向に対向している。そして、軸方向に対向する第一フランジ部と第二フランジ部とで、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の内径側が挟まれている。
【0087】
図12に示す形態例のカラー部材では、円筒部は、軸方向に見たときに、第一フランジ部側から第二フランジ部側までが、同じ外径の円筒部である。円筒部の他の形態としては、
図18に示す形態例のカラー部材のように、軸方向に見たときに、第一フランジ部21c側の円筒部19c1の外径が小さく、第二フランジ部22c側の円筒部19c2の外径が大きい円筒部19cが挙げられる。
図18に示す形態例では、第一フランジ部21cと、第一フランジ部側の外径が小さい方の円筒部19c1の外径側と、第二フランジ部側の外径が大きい方の円筒部19c2の第一フランジ部21cに対向する面と、で、第一緩衝部材13の最内径側の線材131cの保持部が形成され、この保持部に、第一緩衝部材13の最内径側の線材131cが保持されている。例えば、第一緩衝部材13の最内径側の線材131cが、第一フランジ部21cと、第二フランジ部側の外径が大きい方の円筒部19c2の第一フランジ部21cに対向する面により、強く挟み込まれている。なお、
図18に示す形態例では、第二緩衝部材14の内径側と第二フランジ部側の外径が大きい方の円筒部19c2との間に、隙間16cが形成されている。また、
図18に示す形態例では、第二緩衝部材14が、半径方向の振動により、半径方向に移動可能なように、第一緩衝部材13及び第二緩衝部材14の内径側は、カラー部材の第一フランジ部21cと第二フランジ部22cとで挟まれている。
【0088】
結合部材は、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の外径側を保持する第一保持部と、遮蔽体を保持する第二保持部と、第一保持部と第二保持部を繋ぐ結合部材基部と、からなる。
【0089】
第一緩衝部材及び第二緩衝部材の外径側は、結合部材の第一保持部で、結合部材に保持されている。そして、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の外径側は、振動時に、結合部材の第一保持部から外れてしまわないように、結合部材の第一保持部に保持されている。
【0090】
遮蔽体は、結合部材の第二保持部で、結合部材に保持されている。
【0091】
図12に示す形態例では、結合部材は、第一保持部形成側の円筒状の折り曲げ端部全体が内側に折り曲げられる加工が施されることにより、第一保持部が形成され、第二保持部形成側の円筒状の折り曲げ端部全体が外側に折り曲げられる加工が施されることにより、第二保持部が形成されており、また、略環状且つ平板状の結合部材基部が、第一保持部と第二保持部に連続している。結合部材の他の形態としては、
図9に示す形態例のように、略環状且つ平板状の結合部材基部123dと、結合部材基部123dの外径側に形成され、結合部材基部123dの一方の面126d側に折り曲げられる折り曲げ部25と、結合部材基部123dの内径側に形成され、結合部材基部123dの他方の面127d側に折り曲げられる折り曲げ部26と、からなる保持部形成前の結合部材120cの折り曲げ部25及び26を折り曲げて形成される結合部材が挙げられる。
図9中の保持部形成前の結合部材120cでは、結合部材基部の一方の面126dに、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の外径側が配置され、折り曲げ部25が内側に向けて折り曲げられて、結合部材基部の一方の面126dと折り曲げ部25とで、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の外径側を挟み込み、保持することにより、連結部材の第一保持部が形成される。また、保持部形成前の結合部材120cでは、結合部材基部の他方の面127dに、遮蔽体が配置され、折り曲げ部26が外側に向けて折り曲げられて、結合部材基部の他方の面127dと折り曲げ部26とで、遮蔽体を挟み込み、保持することにより、連結部材の第二保持部が形成される。
図9中の保持部形成前の結合部材120cの折り曲げ部を折り曲げて形成される結合部材では、折り曲げ部25又は26が形成されている部分に、保持部が形成され、その部分で、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の外径側と遮蔽体の内径側が保持される。そして、本発明の第一の形態の連結具では、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の外径側と遮蔽体が結合部材に保持されるのであれば、第一保持部及び第二保持部は、結合部材の周方向の全体に亘って形成されていてもよく、あるいは、結合部材の周方向の一部に形成されていてもよく、言い換えると、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の外径側が全周に亘って第一保持部に保持されていてもよく、遮蔽体の内径側が全周に亘って第二保持部に保持されていてもよく、あるいは、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の外径側の全周のうちの一部が第一保持部に保持されていてもよく、遮蔽体の内径側の全周のうちの一部が第二保持部に保持されていてもよい。なお、
図9中、(A)は、保持部形成前の結合部材120dの斜視図であり、(B)は、保持部形成前の結合部材120dを下から見た図であり、(C)は、保持部形成前の結合部材120dを上から見た図である。
【0092】
本発明の第三の形態の連結具において、結合部材における第一保持部と第二保持部の形成位置であるが、
図12に示す形態例では、結合部材の第二保持部が、結合部材の第一保持部に対し、軸方向で、振動体から離れる位置に形成されているが、すなわち、軸方向に、振動体→第一保持部→結合部材基部→第二保持部の順になっているが、本発明では、これに制限されない。他の形態としては、例えば、結合部材の第二保持部が、結合部材の第一保持部に対し、軸方向で、振動体に近づく位置に形成されていてもよい、すなわち、軸方向に、振動体→第二保持部→結合部材基部→第一保持部の順になっていてもよい。また、他の形態としては、結合部材の第二保持部が、結合部材の第一保持部に対し、半径方向で、外側に形成されていてもよい、すなわち、半径方向で、結合部材基部の内側に第一保持部が形成され、結合部材基部の外側に第二保持部が形成されていてもよい。
【0093】
本発明の第三の形態の連結具には、半径方向に見たときに、カラー部材の円筒部と、第二緩衝部材の内径側との間に、隙間が形成されている。このカラー部材の円筒部と第二緩衝部材の内径側との間の隙間は、半径方向の振動により、第二緩衝部材の半径方向の移動を可能とするための隙間である。
【0094】
本発明の第三の形態の連結具では、振動体からカラー部材に伝達された振動は、カラー部材から緩衝部材に伝達されると、第一緩衝部材及び第二緩衝部材により緩衝されて、遮蔽体の防振がなされる。このカラー部材から緩衝部材に伝達される振動は、半径方向の振動成分と、軸方向の振動成分とに分けられる。そして、軸方向の振動成分については、
図20(A)に示すように、第一緩衝部材と第二緩衝部材とが共に、軸方向に湾曲することにより、第一緩衝部材及び第二緩衝部材が、軸方向の振動成分を吸収する。また、半径方向の振動成分については、半径方向に、第一緩衝部材の線材の間隔が狭くなったり、広くなったりする弾性変形を繰り返すことにより、第一緩衝部材が半径方向の振動成分を吸収する。このようにして、本発明の第三の形態の連結具では、遮蔽体の防振がなされる。このとき、第二緩衝部材の外径側は、第一緩衝部材の外径側と共に、結合部材の第一保持部内に保持されており、且つ、第二緩衝部材の内径側は、第二緩衝部材の半径方向の移動が可能となるように、カラー部材の第一フランジ部と第二フランジ部とで挟まれているので、半径方向に、第一緩衝部材が、第一緩衝部材の線材の間隔が狭くなったり、広くなったりする弾性変形を繰り返すと、第二緩衝部材は、内径側がカラー部材の円筒部に近づいたり、カラー部材の円筒部から離れたりする、半径方向の移動を繰り返す。そして、このような第二緩衝部材の半径方向の繰り返し移動は、カラー部材の円筒部と第二緩衝部材の内径側との間の半径方向の隙間が存在していることにより可能となる。なお、実際の振動は、様々の方向を向く、軸方向の振動成分と半径方向の合力であるため、実際には、第一緩衝部材の線材の半径方向の弾性変形及び第二緩衝部材の半径方向の繰り返し移動と、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の軸方向の湾曲と、が複合的に同時に起こる。また、第二緩衝部材と円筒部との隙間が、第一緩衝部材の最内径部の線材の幅より大きい形態においては、カラー部材から緩衝部材に伝達される振動が小さいときは、
図20(B)に示すように、第二緩衝部材の内径側が、第一緩衝部材の最内径部の線材と第一緩衝部材の最内径部から2番目の線材の間に入り込み、第一緩衝部材の最内径部から2番目の線材が、第一フランジ部の外にはみ出すように、第二緩衝部材が傾くと共に、第一緩衝部材が変形することにより、第一緩衝部材が、軸方向の振動成分を吸収する。また、半径方向の振動成分については、半径方向に、第一緩衝部材の線材の間隔が狭くなったり、広くなったりする弾性変形を繰り返すことにより、第一緩衝部材が半径方向の振動成分を吸収する。つまり、第二緩衝部材と円筒部との隙間が、第一緩衝部材の最内径部の線材の幅より大きい形態においては、カラー部材から緩衝部材に伝達される振動が小さいときは、第二緩衝部材はほとんど変形せず、専ら第一緩衝部材が変形することにより、遮蔽体の防振がなされる。そして、第二緩衝部材と円筒部との隙間が、第一緩衝部材の最内径部の線材の幅より大きい形態においては、カラー部材から緩衝部材に伝達される振動が大きくなると、軸方向の振動成分については、
図20(A)に示すように、第一緩衝部材と第二緩衝部材とが共に、軸方向に湾曲することにより、第一緩衝部材及び第二緩衝部材が、軸方向の振動成分を吸収し、また、半径方向の振動成分については、半径方向に、第一緩衝部材の線材の間隔が狭くなったり、広くなったりする弾性変形を繰り返すことにより、第一緩衝部材が半径方向の振動成分を吸収することで、遮蔽体の防振がなされる。
【0095】
本発明の第三の形態の連結具では、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の内径側は、上述した半径方向の振動により、第二緩衝部材の内径側が、カラー部材の円筒部に近づいたり、カラー部材の円筒部から離れたりする、第二緩衝部材の半径方向の繰り返し移動が可能となるように、カラー部材の第一フランジ部と第二フランジ部とで挟まれている。ここで、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の内径側が、強い力をもって、カラー部材の第一フランジ部と第二フランジ部とで挟まれていると、第一緩衝部材の線材の半径方向の弾性変形又は第二緩衝部材の半径方向の繰り返し移動ができなくなる。一方、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の内径側と、カラー部材の第一フランジ部と第二フランジ部との間に、大き過ぎる隙間があると、振動が加わったときに、第二緩衝部材の内径側が、第一フランジ部及び第二フランジ部との間から外れてしまう。そのため、本発明の第三の形態の連結具では、第一緩衝部材の線材の半径方向の弾性変形及び第二緩衝部材の半径方向の繰り返し移動が可能の程度の小さい隙間をもって、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の内径側が、カラー部材の第一フランジ部と第二フランジ部とで挟まれているか、あるいは、第一緩衝部材の線材の半径方向の弾性変形及び第二緩衝部材の半径方向の繰り返し移動が可能となる程度に、第一緩衝部材及び第二緩衝部材の内径側が、カラー部材の第一フランジ部及び第二フランジ部に接触して、カラー部材の第一フランジ部と第二フランジ部とで挟まれている。
【0096】
本発明の第三の形態の連結具では、第一緩衝部材の内径とカラー部材の円筒部の外径との差が、第二緩衝部材の内径側とカラー部材の円筒部との間の隙間の大きさ以上になると、半径方向の振動が伝達されたときに、第一緩衝部材が半径方向に弾性変形する前に、第二緩衝部材の半径方向の移動により、第二緩衝部材の内径側がカラー部材の円筒部に衝突するので、本発明の作用及び効果が得られない。そのため、本発明の第三の形態の連結具では、第一緩衝部材の最内径部は、カラー部材の円筒部に接触しているか、あるいは、第一緩衝部材の内径とカラー部材の円筒部の外径との差が、第二緩衝部材の内径側とカラー部材の円筒部との間の隙間より小さい範囲且つ本発明の作用及び効果を奏する範囲で、第一緩衝部材の最内径部と、カラー部材の円筒部との間に隙間が存在する。
【0097】
本発明の第三の形態の連結具では、第二緩衝部材の内径側が、カラー部材の第一フランジ部と第二フランジ部との間から外に外れないように、第二緩衝部材の内径側とカラー部材の円筒部との間の隙間の大きさが調節されている。言い換えると、本発明の第三の形態の連結具では、第二緩衝部材の内径側が、カラー部材の第一フランジ部と第二フランジ部との間から外に外れないように、第二緩衝部材の内径と、カラー部材の円筒部の外径と、第一フランジ部及び第二フランジ部の半径方向の張り出し長さが調節されている。
【0098】
このようにして、本発明の第三の形態の連結具では、カラー部材から緩衝部材へ伝達される振動が緩衝される。そして、第一緩衝部材の片面側に、平板状の第二緩衝部材が存在し、振動時には、第二緩衝部材の片面側に沿って、第一緩衝部材の線材の途中部分が摺動するので、第一緩衝部材の線材の途中部分が、軸方向に飛び出すことが防止される。
【0099】
また、本発明の第三の形態の連結具では、平板状の第二緩衝部材とカラー部材の円筒部との間には、隙間が存在し、且つ、振動によりカラー部材の円筒部に向かう第二緩衝部材の移動を、渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材が弾性変形することにより受け止めるので、第二緩衝部材の内径側が、カラー部材の円筒部に強く衝突することが防がれる。このことにより、カラー部材からの振動で、第二緩衝部材の内径側が、カラー部材の円筒部に繰り返し強く衝突して生じる「カタカタ音」の発生が防止される。
【0100】
本発明の第四の形態の連結具は、振動源となる振動体と、該振動体に取り付けられる板状の遮蔽体との連結部分に設けられる連結具であって、
平面視で渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材と、
略環状且つ平板状であり、厚み方向に湾曲可能であり、該第一緩衝部材と重なる第二緩衝部材と、
平面視で渦巻き状の線材からなり、該第一緩衝部材側とは反対側で第二緩衝部材と重なる第三緩衝部材と、
該振動体に該連結具を取り付けるための固定部材の挿通孔を有し、該第一緩衝部材、該第二緩衝部材及び該第三緩衝部材に囲まれる円筒部と、該円筒部から半径方向に張り出し、該第一緩衝部材の内径側に対向する第一フランジ部と、該第三緩衝部材の内径側に対向する第二フランジ部と、からなるカラー部材と、
該第一緩衝部材、該第二緩衝部材及び該第三緩衝部材の外径側を保持する第一保持部と、該遮蔽体を保持する第二保持部と、該第一保持部と該第二保持部とを繋ぐ結合部材基部と、からなる結合部材と、
からなり、
該第二緩衝部材と該円筒部との間には、該第二緩衝部材が半径方向に移動するための隙間が形成されており、該第二緩衝部材の半径方向の移動が可能となるように、該第一緩衝部材、該第二緩衝部材及び該第三緩衝部材の内径側が、該第一フランジ部と該第二フランジ部とで挟まれていること、
を特徴とする連結具である。
【0101】
本発明の第四の形態の連結具は、本発明の第一の形態の連結具とは、第二緩衝部材に重なる第三緩衝部材を更に有する点が異なるが、他については、本発明の第四の形態の連結具は、本発明の第三の形態の連結具と同様である。そこで、以下では、本発明の第四の形態の連結具については、本発明の第三の形態の連結具と異なる点について説明し、同様な点についは、説明を省略する。
【0102】
本発明の第四の形態の連結具は、平面視渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材と、略環状且つ平板状であり、厚み方向に湾曲可能な第二緩衝部材と、平面視渦巻き状の線材からなる第三緩衝部材と、カラー部材と、結合部材と、からなる。例えば、
図19に示すように、連結具36は、平面視渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材13と、略環状且つ平板状であり、厚み方向に湾曲可能な第二緩衝部材14と、平面視渦巻き状の線材からなる第三緩衝部材35と、カラー部材20と、結合部材12と、からなる。連結具36では、振動体側から、第三緩衝部材35→第二緩衝部材14→第一緩衝部材13の順で重なっている。
【0103】
本発明の第四の形態の連結具に係る第一緩衝部材及び第二緩衝部材は、本発明の第三の形態の連結具に係る第一緩衝部材及び第二緩衝部材と同様である。
【0104】
第三緩衝部材は、第一緩衝部材側とは反対側で第二緩衝部材と重なること以外は、第一緩衝部材と同様である。
【0105】
本発明の第四の形態の連結具では、第一緩衝部材と第二緩衝部材と第三緩衝部材は、この順に重なり合って、半径方向で、カラー部材と結合部材との間に配置されている。
【0106】
本発明の第四の形態の連結具では、第一緩衝部材と第三緩衝部材とで、材質、線径、断面形状、巻き数、周長等を変えることにより、主として吸収する振動の周波数帯を変えて、分布の多い周波数帯を効率的に防振するような設計を行うことが可能となる。
【0107】
本発明の第四の形態の連結具では、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材の半径方向の内側には、カラー部材の円筒部が配置されており、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材の内径側は、カラー部材の円筒部を囲んでいる。また、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材の内径側は、軸方向で見たときに、対向する第一フランジ部と第二フランジ部で挟まれている。つまり、第一フランジ部は、軸方向で、第一緩衝部材の内径側と対向し、また、第二フランジ部は、軸方向で、第三緩衝部材の内径側と対向する。
【0108】
本発明の第四の形態の連結具に係るカラー部材及び結合部材は、本発明の第三の形態の連結具に係るカラー部材とは、緩衝部材が、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材であること以外は、本発明の第三の形態の連結具に係るカラー部材及び結合部材と同様である。
【0109】
本発明の第四の形態の連結具には、半径方向に見たときに、カラー部材の円筒部と、第二緩衝部材の内径側との間に、隙間が形成されている。このカラー部材の円筒部と第二緩衝部材の内径側との間の隙間は、半径方向の振動による、第二緩衝部材の半径方向の移動を可能とするための隙間である。
【0110】
本発明の第四の形態の連結具では、振動体からカラー部材に伝達された振動は、カラー部材から緩衝部材に伝達されると、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材により緩衝されて、遮蔽体の防振がなされる。軸方向の振動成分については、第一緩衝部材と第二緩衝部材と第三緩衝部材が共に、軸方向に湾曲することにより、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材が、軸方向の振動成分を吸収する。また、半径方向の振動成分については、半径方向に、第一緩衝部材の線材及び第三緩衝部材の線材の間隔が狭くなったり、広くなったりする弾性変形を繰り返すことにより、第一緩衝部材及び第三緩衝部材が半径方向の振動成分を吸収する。このようにして、本発明の第四の形態の連結具では、遮蔽体の防振がなされる。このとき、第二緩衝部材の外径側は、第一緩衝部材及び第三緩衝部材の外径側と共に、結合部材の第一保持部内に保持されており、且つ、第二緩衝部材の内径側は、第二緩衝部材の半径方向の移動が可能となるように、カラー部材の第一フランジ部と第二フランジ部とで挟まれているので、半径方向に第一緩衝部材及び第三緩衝部材が、線材の間隔が狭くなったり、広くなったりする弾性変形を繰り返すと、第二緩衝部材は、内径側がカラー部材の円筒部に近づいたり、カラー部材の円筒部から離れたりする、半径方向の移動を繰り返す。そして、このような第二緩衝部材の半径方向の繰り返し移動は、カラー部材の円筒部と第二緩衝部材の内径側との間の半径方向の隙間が存在していることにより可能となる。なお、実際の振動は、様々の方向を向く、軸方向の振動成分と半径方向の合力であるため、実際には、第一緩衝部材の線材及び第三緩衝部材の線材の半径方向の弾性変形及び第二緩衝部材の半径方向の繰り返し移動と、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材の軸方向の湾曲と、が複合的に同時に起こる。
【0111】
本発明の第四の形態の連結具では、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材の内径側は、半径方向の振動により、第二緩衝部材の内径側が、カラー部材の円筒部に近づいたり、カラー部材の円筒部から離れたりする、第二緩衝部材の半径方向の繰り返し移動が可能となるように、カラー部材の第一フランジ部と第二フランジ部とで挟まれている。ここで、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材の内径側が、強い力をもって、カラー部材の第一フランジ部と第二フランジ部とで挟まれていると、第一緩衝部材の線材及び第三緩衝部材の線材の半径方向の弾性変形又は第二緩衝部材の半径方向の繰り返し移動ができなくなる。一方、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材の内径側と、カラー部材の第一フランジ部と第二フランジ部との間に、大き過ぎる隙間があると、振動が加わったときに、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材の内径側が、第一フランジ部及び第二フランジ部との間から外れてしまう。そのため、本発明の第四の形態の連結具では、第一緩衝部材の線材及び第三緩衝部材の線材の半径方向の弾性変形及び第二緩衝部材の半径方向の繰り返し移動が可能の程度の小さい隙間をもって、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材の内径側が、カラー部材の第一フランジ部と第二フランジ部とで挟まれているか、あるいは、第一緩衝部材の線材及び第三緩衝部材の線材の半径方向の弾性変形及び第二緩衝部材の半径方向の繰り返し移動が可能となる程度に、第一緩衝部材及び第三緩衝部材の内径側が、カラー部材の第一フランジ部及び第二フランジ部に接触して、第一緩衝部材、第二緩衝部材及び第三緩衝部材カラー部材の第一フランジ部と第二フランジ部とで挟まれている。
【0112】
本発明の第四の形態の連結具では、第一緩衝部材及び第三緩衝部材の内径とカラー部材の円筒部の外径との差が、第二緩衝部材の内径側とカラー部材の円筒部との間の隙間の大きさ以上になると、半径方向の振動が伝達されたときに、第一緩衝部材及び第三緩衝部材が半径方向に弾性変形する前に、第二緩衝部材の半径方向の移動により、第二緩衝部材の内径側がカラー部材の円筒部に衝突するので、本発明の作用及び効果が得られない。そのため、本発明の第四の形態の連結具では、第一緩衝部材及び第三緩衝部材の最内径部は、カラー部材の円筒部に接触しているか、あるいは、第一緩衝部材及び第三緩衝部材の内径とカラー部材の円筒部の外径との差が、第二緩衝部材の内径側とカラー部材の円筒部との間の隙間より小さい範囲且つ本発明の作用及び効果を奏する範囲で、第一緩衝部材及び第三緩衝部材の最内径部と、カラー部材の円筒部との間に隙間が存在する。
【0113】
なお、本発明の第四の形態の連結具では、第二緩衝部材の内径側が、カラー部材の第一フランジ部と第二フランジ部との間から外に外れないように、第二緩衝部材の内径側とカラー部材の円筒部との間の隙間の大きさが調節されている。言い換えると、本発明の第四の形態の連結具では、第二緩衝部材の内径側が、カラー部材の第一フランジ部と第二フランジ部との間から外に外れないように、第二緩衝部材の内径と、カラー部材の円筒部の外径と、第一フランジ部及び第二フランジ部の半径方向の張り出し長さが調節されている。
【0114】
このようにして、本発明の第四の形態の連結具では、カラー部材から緩衝部材へ伝達される振動が緩衝される。そして、第一緩衝部材及び第三緩衝部材の片面側に、平板状の第二緩衝部材が存在し、振動時には、第二緩衝部材の片面側に沿って、第一緩衝部材及び第三緩衝部材の線材の途中部分が摺動するので、第一緩衝部材の線材及び第三緩衝部材の線材の途中部分が、軸方向に飛び出すことが防止される。また、本発明の第四の形態の連結具では、第一緩衝部材と第三緩衝部材との間に第二緩衝部材があるので、振動時に、第一緩衝部材の線材と第三緩衝部材の線材の途中部分同士が、絡み合うことが防止される。
【0115】
また、本発明の第四の形態の連結具では、平板状の第二緩衝部材とカラー部材の円筒部との間には、隙間が存在し、且つ、振動による第二緩衝部材のカラー部材の円筒部に向かう移動を、渦巻き状の線材からなる第一緩衝部材及び第三緩衝部材が弾性変形することにより受け止めることになるので、第二緩衝部材の内径側が、カラー部材の円筒部に強く衝突することが防がれる。このことにより、カラー部材からの振動で、第二緩衝部材の内径側が、カラー部材の円筒部に繰り返し強く衝突して生じる「カタカタ音」の発生が防止される。