(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585203
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】涼感塗装用組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 1/08 20060101AFI20190919BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20190919BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20190919BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20190919BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20190919BHJP
C09D 5/33 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
C09D1/08
C09D5/02
C09D7/61
C09D7/65
C09D7/63
C09D5/33
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-19766(P2018-19766)
(22)【出願日】2018年2月7日
(65)【公開番号】特開2019-137729(P2019-137729A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2018年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】592216649
【氏名又は名称】有限会社伊東産業
(73)【特許権者】
【識別番号】516278458
【氏名又は名称】可児建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068663
【弁理士】
【氏名又は名称】松波 祥文
(72)【発明者】
【氏名】伊東 忠征
(72)【発明者】
【氏名】伊東 征一
【審査官】
仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第104356700(CN,A)
【文献】
特開2010−018492(JP,A)
【文献】
特開2004−251108(JP,A)
【文献】
特開平07−010627(JP,A)
【文献】
特開2006−151703(JP,A)
【文献】
特開平05−238801(JP,A)
【文献】
特開2010−018488(JP,A)
【文献】
特開2009−167661(JP,A)
【文献】
特開2011−079999(JP,A)
【文献】
特開2006−341628(JP,A)
【文献】
特開2015−074726(JP,A)
【文献】
特開2013−159496(JP,A)
【文献】
特開2011−195760(JP,A)
【文献】
特開2014−210867(JP,A)
【文献】
特開2015−151831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/08
C09D 5/02
C09D 5/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色アルミナセメント100重量部、アクリル系共重合体エマルジョンの樹脂固形分34〜140重量部、ガラス粉63〜200重量部、マイカ粉3〜31重量部、ウォラストナイト粉3〜31重量部、及びCIE1976L*a*b*色空間における明度L*の値が30を超える赤外線反射顔料1〜40重量部を含有する涼感塗装用組成物。
【請求項2】
添加剤として、ヒドロキシカルボン酸化合物、水溶性セルロースエーテル、アモルファスシリカ及び白華防止剤の単独又はそれぞれの組み合わせを含有することを特徴とする請求項1に記載の涼感塗装用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球温暖化やヒートアイランド現象に対応すべく、構造物の外壁、屋根、屋上、及び路面などに塗布され、日射熱エネルギーによる塗布面の温度上昇を抑制して、ヒートアイランド現象の抑制や、空調設備使用率の低減により電力消費量を削減し二酸化炭素排出量を抑制するための涼感塗装に関する。
【背景技術】
【0002】
日射熱エネルギーによる構造物の外壁、屋根、屋上、及び路面などの温度上昇を防ぐために、塗布される涼感塗装用組成物については、これまでにも検討がなされてきた。例えば、特許文献1には、夏期の高温時にアスファルト舗装が可塑化することを防ぐために、路面舗装の表面に、L
*a
*b
*表色系における明度が45〜80である薄層舗装基材を敷設することが提案されている。しかしこの薄層舗装基材は、粒状の天然又は人工骨材が埋め込まれた塩化ビニル系樹脂などの合成樹脂基材から成っており、暗い色よりは少ないとはいえ、日射熱エネルギーを薄層舗装基材内に蓄積するため、温度が上昇することが避けられず、また合成樹脂基材であり耐候性・耐久性には限界がある。
【0003】
また、特許文献2には、日射反射率が15%以上であって、明度であるL
*値が24以下の顔料と耐候性に優れるビヒクルとを含有する濃彩色の遮熱性塗料が提案されているが、塗膜を濃彩色とすることの作用効果は塗膜の熱劣化を抑制し、優れた耐候性を得ることである(本文献段落0019、0023参照)。この塗料もビヒクルはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂等の合成樹脂が用いられており、塗膜の耐候性を向上させることが本文献記載の発明の課題である。
【0004】
さらに、特許文献3にも、濃彩色を与える特許文献2と同様の特性の顔料を用いた太陽熱遮断舗装体が提案されているが、この舗装体においても、バインダーとしては、ラジカル架橋型ビニルエステル樹脂(実施例1)やラジカル架橋型メチル(メタ)アクリレート樹脂が用いられている。しかしながら、前記した塗料も含めこれらの塗料は合成樹脂から構成されており、いずれも無機材質に比べ、塗膜内に熱エネルギーが蓄積され易く、耐候性には課題があり、また、顔料の明度のL
*値が低く、赤外線の反射率には限界があり、涼感塗装用組成物としての性能は必ずしも十分ではなかった。尚、本特許文献には、バインダーとしてセメントも使用される旨の記載があるが、セメント組成の具体的内容については全く記載されておらず、どのようなセメント組成が使用できるかについての具体的な示唆はされていない。
【0005】
そして、塗装用組成物として、合成樹脂を主成分とする場合には、近来改良がなされてきたとはいえ、有機材質であるが故に、熱や紫外線などによる劣化は避けられず、塗膜の耐候性・耐久性には限界がある。そのため、無機材質を主成分とする塗装用組成物も特許文献4〜6に示されるように提案されている。特許文献4には、アルミナセメント、顔料、骨材、及び有機高分子物質を欄有する急硬性着色防水材組成物が提案され、アルミナセメントとして白色アルミナセメントが用いられ、有機高分子物質としては、エチレン酢酸ビニルやアクリル樹脂を含む各種の有機高分子物質の水性溶液や水性分散液がもちいられている。しかし、ここで提案されている組成物は、従来からの問題点である硬化時間が長く、硬化後のモルタルにクラックやひび割れが入り易く、下地コンクリートとの付着力が弱く、着色ができないなどの点を解消するための組成物であり、急硬性、弾性、及び付着力に優れ、着色可能な急硬性着色防水材組成物であり、顔料を含有する着色組成物ではあるが、本特許文献には、本組成物を涼感塗装に応用することに関しては、記載も示唆も全く記載されていない。
【0006】
また、引用文献5には、アルミナセメント、合成樹脂エマルジョン、ワックスサスペンションを含有するポリマーセメント組成物が提案されている。この組成物はコンクリート構造物に防水性を付与するための組成物であり、接着性、付透水性、耐水性、及び下地ひび割れ追従性を有し、さらにタックを軽減し、施工性に優れるポリマーセメントの提供を目的とするものである。そのため、本特許文献ではこの組成物を着色したり、顔料を加えたりすることについては全く言及されていない。
【0007】
そして、引用文献6には、アルミナセメント及びポルトランドセメントから選ばれるセメント成分と、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョン及びアクリル系共重合体エマルジョンから選ばれる樹脂エマルジョンと、光遮蔽性顔料及び光遮蔽性フィラーから選ばれる光遮蔽性成分とを含むポリマーセメント組成物が示されている。ここで示されるポリマーセメント組成物は、コンクリート防水用のポリマーセメント組成物として必要な特性を有し、硬化物の乾燥時の表面色と湿潤時の表面色との色差(ΔE)を小さくして、硬化物層の上面に、塗装を行う必要のない、見栄えの良い硬化物を得るためのものである。そして、この色差(ΔE)の値を5以下とするために、光遮光性成分の添加量が調整されるものである(本特許文献の段落0006、0009等参照)。このように、本特許文献の組成物には光遮蔽性成分として顔料等が添加さているが、前記文献と同様に、本組成物を涼感塗装に応用することに関しては、記載も示唆も全く記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−1904号公報
【特許文献2】特開2000−129172号公報
【特許文献3】特開2008−69632号公報
【特許文献4】特開平5−238801号公報
【特許文献5】特開2005−220009号公報
【特許文献6】特開2006−151703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、構造物の外壁、屋上や路面などに塗布され、日射熱エネルギーによる塗布面の温度上昇を効率よく抑制し、耐候性・耐久性に優れた涼感塗装用組成物の提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の涼感塗装用組成物は、白色アルミナセメント、アクリル系共重合体エマルジョン、無機充填材、及びCIE1976L*a*b*色空間における明度L*の値が30を超える赤外線反射顔料を含有することを特徴とする。
【0011】
カルシウムアルミネートを主成分とするセメントであるアルミナセメントは、原料等に起因する不純物により、通常灰色ないしは褐色に着色したものが多いが、本発明においては不純物の含有量が少なく、着色のない白色アルミナセメントが用いられる。白色アルミナセメントは、白色タイプ又はホワイトタイプの品種として市販されており、この品種のアルミナセメントであって、着色がなく白色の品種であれば使用できる。
【0012】
アクリル系共重合体エマルジョンは各種のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルなどのアクリル系モノマーとスチレン、酢酸ビニルなどとの共重合体のエマルジョンである。アクリル系共重合体エマルジョンの配合量は、エマルジョンの樹脂固形分が、白色アルミナセメント100重量部に対して34〜140重量部の含有量となるように配合されることが好ましい。
【0013】
無機充填材としては、通常の塗料やコーティング剤に用いられる粒子状、板状、繊維状などの形状の粉体を用いることができるが、ガラス粉、マイカ粉、ウォラストナイト粉が好ましく、それぞれ単独又は組み合わせて用いることができる。無機充填材の含有量は、白色アルミナセメント100重量部に対して、69〜262重量部の含有量となるように配合され、無機充填材としてのガラス粉、マイカ粉、ウォラストナイト粉はそれぞれ63〜200重量部、3〜31重量部、3〜31重量部の含有量となるように配合されることが好ましい。
【0014】
赤外線反射顔料は日射熱エネルギーである赤外線を反射する明るい色の顔料であり、顔料を測定セルに入れ、その表面における日射反射率(全波長域300〜2500nm)が20%以上の顔料が好ましく、CIE1976L
*a
*b
*色空間における明度L
*の値が30を超える顔料が用いられる。尚、日射反射率はJIS K 5602:2008「塗膜の日射反射率の求め方」の(7)分光反射率の測定及び(8)日射反射率の求め方に準じて求めたものであり、CIE1976L
*a
*b
*色空間における明度L
*はJIS Z 8722:2009「色の測定方法−反射及び透過物体色」の(5.3)反射物体の測定法に準じて三刺激値を測定し、JIS Z 8781−4:2013「測色−第4部:CIE1976L
*a
*b
*色空間」の(4)計算方法に準じて算出したものである。赤外線反射顔料の配合量は、白色アルミナセメント100重量部に対して、1〜40重量部の含有量となるように配合されることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の涼感塗装用組成物には、添加剤として、ヒドロキシカルボン酸化合物、水溶性セルロースエーテル、アモルファスシリカ、及び白華防止剤それぞれを単独又は組み合わせて配合することが好ましい。これらの添加剤の配合量は、白色アルミナセメント100重量部に対して、各添加剤の各成分がそれぞれ0.04〜0.20、0.21〜0.94、0.07〜0.52、0.1〜0.70重量部の含有量で配合されることが好ましい。
【0016】
また、本発明の涼感塗装用祖組成物は水性ベースの組成物であり、媒体として水が用いられている。そして、白色アルミナセメント、無機充填材、赤外線反射顔料等の粉体成分と液体成分であるアクリル系共重合体エマルジョンとを配合したものであり、液体成分であるエマルジョンは水を含有しているが、組成物の配合時に、さらに水を加えて組成物の粘度の調整を行うが、アクリル系エマルジョンに含有される水と追加して加えられる水とを合計して、白色アルミナセメント100重量部に対して、54〜88重量部の含有量となるように調整されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の涼感塗装用組成物は、主成分が無機物である白色アルミナセメントと無機充填材とから成るモルタルであり、白色アルミナセメントの水和反応により形成される塗膜は、無機物が主成分であり、有機物である樹脂により形成される塗膜に比べ耐候性・耐久性に優れる。そして、白色アルミナセメントの水和反応により形成される塗膜は、樹脂により形成される塗膜に比べ日射熱エネルギーを塗膜内に蓄積することが少なく、さらに、明るい色の顔料である赤外線反射顔料による日射熱エネルギーを反射する作用も加わり、塗膜の温度上昇を減少させて、涼感塗装としての機能を発揮する。
【0018】
また、白色アルミナセメントの水和反応速度は速いため、刷毛やローラーによる塗装後の塗膜の形成も早く、塗装作業の効率化にも寄与する。そして、セメントが白色であるため明るい色の顔料による赤外線反射を妨げることがなく、さらに顔料により塗膜を種々の色彩に着色することが容易にできる。
【0019】
無機充填材としてのガラス粉は塗膜の強度保持に寄与し、また吸水性がなく、塗膜の耐久性を向上させると共に、珪砂を使用した場合よりも白華リスクを低減できる。そして、板状結晶であるマイカ粉や繊維状結晶のウォラストナイト粉は塗膜の強度を向上させ、塗膜のひび割れや欠落を防ぐ効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
本発明の涼感塗装用組成物は、前記したように白色アルミナセメント、無機充填材、赤外線反射顔料等の粉体成分と液体成分であるアクリル系共重合体エマルジョンとを混合して配合される。この配合方法としては、ヒドロキシカルボン酸化合物を添加したアクリル系共重合体エマルジョンからなる液体混合物A材に、白色アルミナセメントと、ガラス粉、マイカ粉、ウォラストナイト粉などの無機充填材と、水溶性セルロースエーテル、アモルファスシリカ、白華防止剤などの粉体添加剤とを混合して配合した粉体混合物B材、及び赤外線反射顔料と粉体混合物B材を混合した顔料分散粉体とを加え、さらに粘度調整用の水を加えて混合することで配合する。
【0022】
上記の調合において、各構成成分の好ましい配合量は白色アルミナセメント100重量部に対して、液体混合物A材はアクリル系共重合体の樹脂固形分が34〜140重量部となるように配合し、粉体混合物B材には、白色アルミナセメント以外の粉体として無機充填材としてのガラス粉は63〜200重量部、マイカ粉は3〜31重量部、ウォラストナイト粉は3〜31重量部の含有量となるように配合される。そして、赤外線反射顔料は同じく1〜40重量部の含有量となるように配合されるが、顔料を組成物中に均一に分散させ、色ムラの発生を防ぐために、予め粉体混合物B材と混合して顔料分散粉体C材を作成し、この顔料分散粉体C材を加えることで配合される。顔料分散粉体C材における赤外線反射顔料と粉体混合物B材の配合割合は重量比で1:1〜2の割合で配合される。この場合、各構成成分の含有量はこの顔料分散粉体C材に配合される粉体混合物B材の成分を加えて算出される。
【0023】
涼感塗装用組成物に添加剤を加える場合には、添加剤が粉体の場合は前記したように粉体混合物B材に配合し、液体の場合は液体混合物A材に配合して加えられるが、添加剤成分が水溶性である場合には、液体混合物A材に溶解して加えてもよい。添加剤の好ましい配合量は、白色アルミナセメント100重量部に対してヒドロキシカルボン酸化合物0.04〜0.20重量部、水溶性セルロースエーテル0.21〜0.94重量部、アモルファスシリカ0.07〜0.52重量部、及び白華防止剤0.1〜0.70重量部の含有量となるように配合されることが好ましい。
【0024】
液体混合物A材を構成するアクリル系共重合体エマルジョンは、公知の製造方法、例えば、乳化剤、重合開始剤の存在下にて、水中でアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルなどのアクリル系モノマーとスチレン、酢酸ビニルなどのモノマーを乳化重合させる方法で製造することができる。また、各種のエマルジョンが塗料、コーティング材ないしはそれらの原材料として市販されており、これらの市販品も使用することができる。アクリル系共重合体エマルジョンとしては樹脂固形分が40〜55重量%に調整されたエマルジョン溶液が好ましく用いられ、前記したように白色アルミナセメント100重量部に対して、樹脂固形分が34〜140重量部の含有量となるように配合される。
【0025】
粉体混合物B材に配合される無機充填材としては、ガラス粉、マイカ(白雲母)粉、ウォラストナイト(桂灰石)粉がそれぞれ単独又はそれぞれを組み合わせたものが好ましく用いられる。ガラス粉はガラスを粉末状とし、粒度を揃えたものであり、ガラスとしてはソーダ石灰ガラス(ソーダガラス)を粉砕したものでよく、特に特殊なガラスでなくともよい。粉末の粒度としては16〜200メッシュのものを好ましく用いることができ、異なる粒度の粉末を混合して併用することも有用である。マイカ粉は天然の鉱物を粉砕し粉末にして用い、ウォラストナイト粉は天然繊維状鉱物を長さ600μm程度に粉砕して用いる。
【0026】
添加剤としては、ヒドロキシカルボン酸化合物、水溶性セルロースエーテル、アモルファスシリカ及び白華防止剤などがそれぞれ単独又はそれぞれを組み合わせて用いられる。そして、前記したように、それぞれの性状に応じて液体混合物A材又は粉体混合物B材に配合して用いることができる。
【0027】
オキシカルボン酸化合物は水酸基を有するカルボン酸化合物であり、グルコン酸、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸及びこれらのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアンモニウム塩等の水溶性塩などが挙げられる。この化合物は25〜40重量%程度の水溶液にされ、モルタルやコンクリート用の減水剤や凝固遅延剤として用いられるものであり、塗装における作業性を改善するために加えられる。本発明においては、この水溶液を液体混合物A材に添加して使用する。水溶性セルロースエーテルは、天然のセルロースをエーテル化剤と反応させて、水溶性セルロース化合物としたものであり、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどの化合物である。この化合物は塗料用組成物の粘度を調整するために加えられる。
【0028】
アモルファスシリカは珪藻土などの天然品、又はクロロシラン類から生産される合成品のいずれであってもよく、粉末状にして使用され、白色アルミナセメントの水和反応による塗膜の生成を促進し、塗膜の下地への付着力を促進する作用を有する。白華防止剤は、セメント組成物が硬化途中ないしは硬化後、組成物中のカルシウムイオンが組成中の水や雨水などにより塗膜表面に溶け出し、空気中の炭酸ガスなどと反応して白色の結晶を生ずる白華現象を防止するための添加剤であり、遊離するカルシウムイオンをトラップして、塗膜表面に溶け出すのを防ぐ作用を有するものであり、変性ロジンを構成成分として含有する。
【0029】
本発明の涼感塗装用組成物であるモルタルは、配合後ただちに水和反応が開始されるため、使用直前に配合して、塗装作業に供される。モルタルの配合は、予めそれぞれ配合された液体混合物A材、粉体混合物B材、顔料分散粉体C材及び水を混合装置に投入し撹拌混合して行うことができる。そして各材料は、液状混合物A材は18kg入金属缶に、粉体混合物B材は20kg入袋に、顔料分散粉体C材は250g入袋にそれぞれ詰められて供給され、使用に際して配合される。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
予め、下記の配合比にて、液体混合物A材、粉体混合物B材、顔料分散粉体C材を配合し、これらにさらに水を加えて、撹拌混合して涼感塗装用組成物であるモルタルを作成して、塗装作業に供した。
【0031】
(各材料の配合比)
・液体混合物A材 (下記のエマルジョン18kgにヒドロキシカルボン酸塩を30〜
32重量%含有するコンクリート用化学混和剤50gを添加)
アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン共重合体固形分
47〜49重量%
水 51〜53重量%
・粉体混合物B材(20.09kg分)
白色アルミナセメント(TERNAL[登録商標]White ケルネオス社製)
9.5 kg
ガラス粉末(30メッシュ) 6.0 kg
ガラス粉末(100メッシュ) 3.0 kg
マイカ 0.5 kg
ウォラストナイト 1.0 kg
メチルセルロース 0.03kg
アモルファスシリカ 0.01kg
白華防止剤(EROTEX[登録商標]ERA200 アクゾノーベル社製)
0.05kg
・顔料分散粉体C材(1kg分、250g入に小分けして使用)
赤外線反射顔料 0.40kg
粉体混合物B材 0.60kg
【0032】
(モルタルの配合)
撹拌混合装置に各材料を下記の配合量を投入し、撹拌混合し色つき塗装用モルタルを作成した。このモルタルを駐車場に塗布し、日射を受けた場合の塗装面における温度上昇を無塗装面との比較を行った。用いた赤外線顔料はシェファードカラージャパンインク社の顔料Blue211であり、この顔料の明度L
*は前記した測定法で44.6であり、赤外線の日射反射率(全波長域)で39.6%であった。
(配合量)
液体混合物A材 18kg入×1缶
粉体混合物B材 20kg入×2袋
顔料分散粉体C材 250g入×8袋
水(粘度調整用) 6リットル
(温度上昇結果)
平均温度上昇 最高温度上昇 同時刻最高温度差
塗装有 8.1℃ 24.0℃ 11.4℃
塗装なし 15.1℃ 31.9℃
【0033】
(実施例2)
顔料を次の顔料を用いた他は、実施例1と同様な操作を行った結果は次の通りであった。用いた赤外線顔料はシェファードカラージャパンインク社の顔料Yellow20P296であり、この顔料の明度L*は前記した測定法で61.0であり、赤外線の日射反射率(全波長域)で48.3%であった。
(配合量)
液体混合物A材 18kg入×1缶
粉体混合物B材 20kg入×2袋
顔料分散粉体C材 250g入×8袋
水(粘度調整用) 6リットル
(温度上昇結果)
平均温度上昇 最高温度上昇 同時刻最高温度差
塗装有 7.9℃ 23.1℃ 11.9℃
塗装なし 15.1℃ 31.9℃