(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数の実施形態による回転電機、及び回転電機の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。また、各実施形態において、「コイル」とは、銅線を所定回数巻回して環状に形成したものを意味するものとする。「固定子巻線」とは、複数のコイルを接続して構成したものを意味するものとする。
【0010】
(第一実施形態)
まず、第一実施形態について、
図1から
図7を参照して説明する。
本実施形態では、例として積層型の固定子50を備えるインナロータ型の回転電機について説明する。固定子50は、図示しない一般的な回転子とともに、インナロータ型の回転電機を構成する。この場合、回転電機は、永久磁石モータであっても誘導電動機であっても良い。また、回転電機は、インナロータ型に限られず、アウタロータ型でも良い。
【0011】
図1に示す三相交流の回転電機の固定子50は、固定子鉄心51と、三相各相の固定子巻線、すなわちU相の固定子巻線Uと、V相の固定子巻線Vと、W相の固定子巻線Wと、を備えている。固定子鉄心51は、例えば電磁鋼板を所定の形状に打ち抜き、その打ち抜いた電磁鋼板を複数枚積層して構成されている。固定子鉄心51には、例えば24個のスロット52が形成されている。固定子巻線U、V、Wは、それぞれスロット52に納められている。これにより、固定子50は、4極24スロットの固定子を構成している。
【0012】
U相の固定子巻線Uは、U相1段目単位コイル11とU相2段目単位コイル21とを4個ずつ有している。U相の各極は、U相1段目単位コイル11とU相2段目単位コイル21とをそれぞれ1個ずつ組み合わせて構成される。この場合、各極のU相1段目単位コイル11及びU相2段目単位コイル21は、それぞれ同一のスロットピッチ、例えば3スロットピッチで構成されている。また、各極のU相1段目単位コイル11及びU相2段目単位コイル21は、それぞれ同一のスロット52内において固定子鉄心51の径方向に重ねて配置されている。この場合、U相2段目単位コイル21は、U相1段目単位コイル11に対して、固定子鉄心51の径方向の内側に設けられている。
【0013】
V相の固定子巻線Vは、V相1段目単位コイル12とV相2段目単位コイル22とを4個ずつ有している。V相の各極は、V相1段目単位コイル12とV相2段目単位コイル22とをそれぞれ1個ずつ組み合わせて構成される。この場合、各極のV相1段目単位コイル12及びV相2段目単位コイル22は、それぞれ同一のスロットピッチ、例えば3スロットピッチで構成されている。また、各極のV相1段目単位コイル12及びV相2段目単位コイル22は、それぞれ同一のスロット52内において固定子鉄心51の径方向に重ねて配置されている。この場合、V相2段目単位コイル22は、V相1段目単位コイル12に対して、固定子鉄心51の径方向の内側に設けられている。
【0014】
W相の固定子巻線Wは、W相1段目単位コイル13とW相2段目単位コイル23とを4個ずつ有している。W相の各極は、V相1段目単位コイル13とW相2段目単位コイル23とをそれぞれ1個ずつ組み合わせて構成される。この場合、各極のW相1段目単位コイル13及びW相2段目単位コイル23は、それぞれ同一のスロットピッチ、例えば3スロットピッチで構成されている。また、各極のW相1段目単位コイル13及びW相2段目単位コイル23は、それぞれ同一のスロット52内において固定子鉄心51の径方向に重ねて配置されている。この場合、W相2段目単位コイル23は、W相1段目単位コイル13に対して、固定子鉄心51の径方向の内側に設けられている。また、この場合、各極の1段目単位コイル11、12、13と、2段目単位コイル21、22、23とは、その周長が異なるものの、配置関係やスロットピッチ等は同様に構成されている。
【0015】
図2には、24個の各スロット52について、Nを1〜24の整数とし、あるスロット52を第1スロットとした場合のN番目のスロットを第Nスロットして表している。各相の1段目単位コイル11、12、13、及び2段目単位コイル21、22、23は、それぞれコイルピッチが一定この場合3スロットで構成されている。
【0016】
図2(a)、(b)に示すように、U相の1段目単位コイル11及び2段目単位コイル21は、第1スロット及び第4スロット、第7スロット及び第10スロット、第13スロット及び第16スロット、第19スロット及び第22スロットにそれぞれ巻かれて設けられている。V相1段目単位コイル12及び2段目単位コイル22は、第3スロット及び第6スロット、第9スロット及び第12スロット、第15ロット及び第18スロット、第21スロット及び第24スロットにそれぞれ巻かれて設けられている。W相1段目単位コイル13及び2段目単位コイル23は、第5スロット及び第8スロット、第11スロット及び第14スロット、第17スロット及び第20スロット、第23スロット及び第2スロットにそれぞれ巻かれて設けられている。
【0017】
次に、
図3を参照して、1段目単位コイル11、12、13、及び2段目単位コイル21、22、23の構成について説明する。
図3に示すように、各1段目単位コイル11、12、13は、それぞれ同一の構成である。また、各2段目単位コイル21、22、23も、それぞれ同一の構成である。
【0018】
1段目単位コイル11、12、13、及び2段目単位コイル21、22、23は、いずれも同一の巻数、例えば20巻きで構成されている。そして、1段目単位コイル11、12、13、及び2段目単位コイル21、22、23をそれぞれ組み合わせることにより、巻数を分割する前の例えば40巻きと同等の巻数を構成している。2段目単位コイル21、22、23の周長は、1段目単位コイル11、12、13の周長よりも短い。すなわち、固定子鉄心51の径方向の外側つまり外周側に設けられる1段目単位コイル11、12、13の周長よりも、固定子鉄心51の径方向の内側つまり内周側に設けられる2段目単位コイル21、22、23の周長の方が短い。
【0019】
ここで、
図4に示すように、固定子鉄心51の円周上において、1段目単位コイル11、12、13が配置される部分、すなわち固定子鉄心51の径方向の外側部分におけるスロット52間の距離をL1とする。また、固定子鉄心51の円周上において、2段目単位コイル21、22、23が配置される部分、すなわち固定子鉄心51の径方向の内側部分におけるスロット52間の距離をL2とする。この場合、1段目単位コイル11、12、13と、2段目単位コイル21、22、23とが設けられる部分における固定子鉄心51の径差によって、距離L2は距離L1よりも小さくなる。
【0020】
1段目単位コイル11、12、13の周長は、固定子鉄心51の径方向の外側部分に沿うように、距離L1に合わせて設定されている。これにより、1段目単位コイル11、12、13のコイルエンド部分の高さ寸法を極力低減している。また、1段目単位コイル11、12、13の内側にある2段目単位コイル21、22、23の周長は、外側にある1段目単位コイル11、12、13の周長よりも短い。そして、2段目単位コイル21、22、23の周長は、固定子鉄心51の径方向の内側部分に沿うように、距離L2に合わせて設定されている。そのため、2段目単位コイル21、22、23を、1段目単位コイル11、12、13と同じ周長にした場合に比べて、2段目単位コイル21、22、23のコイルエンド部分の高さ寸法を低減することができる。
【0021】
ここで、本実施形態においてコイルエンド部分の高さ寸法とは、
図5(a)、(b)にH1、H2で示すように、各単位コイル11、12、13、21、22、23が、スロット52の端部から軸方向の外側へ突出した部分の長さ寸法を意味する。ここで、従来構成のように、1段目単位コイル11、12、13の周長と、2段目単位コイル21、22、23の周長とが同一である場合、
図5(b)に示すように、2段目コイル群20のコイルエンドの高さ寸法H2は、1段目コイル群10のコイルエンドの高さ寸法H1よりも大きくなる。一方、本実施形態のように、2段目単位コイル21、22、23の周長を、1段目単位コイル11、12、13の周長よりも短いものとすれば、
図5(a)に示すように、1段目コイル群10のコイルエンドの高さ寸法H1と、2段目コイル群20のコイルエンドの高さ寸法H1とを、同程度に抑えることができる。
【0022】
なお、
図5は、U相単位コイル11、21と、V相単位コイル12、22と、W相単位コイル13、23とにおけるコイルエンドの高さ寸法を比較するため、これら単位コイル11、21、12、22、13、23を概念的に一列に並べて示したものである。したがって、
図5は、
図1におけるX5−X5線に沿って断面を示した場合の実際の見え方と異なる。
【0023】
1段目単位コイル11、12、13と、2段目単位コイル21、22、23とは、別の工程で、固定子鉄心51のスロット52内に配置される。すなわち、
図1に示すように、1段目単位コイル11、12、13は、スロット52の奥側にあって、重ね巻き方式で形成された1段目コイル群10を構成している。2段目単位コイル21、22、23は、1段目コイル群10よりも内側すなわちスロット52の開放側にあって、重ね巻き方式で形成された2段目コイル群20を構成している。つまり、重ね巻き方式で形成された1段目コイル群10の内側に、2段目コイル群20が配置されている。
【0024】
なお、本実施形態において、重ね巻き方式とは、
図1に示すように、固定子鉄心51の周方向に隣接する各コイルが、固定子鉄心51の径方向に交互に重なるとともに、その重なりの内側と外側とが交互に入れ替わるように巻く方式をいう。この場合、1段目コイル群10及び2段目コイル群20は、それぞれ全体として環状に構成されている。そして、1段目コイル群10と2段目コイル群20とは、全体として同心円状に配置されており、1段目コイル群10は、2段目コイル群20の外側を囲んでいる。なお、この場合の「同心」とは、固定子巻線の巻き方の一種である「同心巻き方式」を意味するものではない。
【0025】
固定子50の製造方法は、まず、
図6(a)に示すように、固定子鉄心51のスロット52に対して各相の1段目単位コイル11、12、13を重ね巻き方式で挿入し、これによりスロット52の奥側のコイル群、この場合、1段目コイル群10を形成する。その後、
図6(b)に示すように、固定子鉄心51のスロット52に対して各相の2段目単位コイル21、22、23を重ね巻き方式で挿入し、これによりスロット52の開放側つまり内側のコイル群、この場合、2段目コイル群20を形成する。その後、
図6(c)に示すように、1段目コイル群10及び2段目コイル群20のコイルエンドを拡開し、これにより固定子50が完成する。
【0026】
固定子50は、
図1に示すように、第1相間絶縁紙53及び第2相間絶縁紙54を備えている。第1相間絶縁紙53は、
図7(a)に示すように、例えば絶縁性を有するアラミド紙を帯状に切断し、その帯状の両端を接続して環状に構成されている。第1相間絶縁紙53は、固定子鉄心51の軸方向の両端部にあって、1段目コイル群10と2段目コイル群20との間に設けられている。これにより、1段目コイル群10と2段目コイル群20とは電気的に絶縁されている。
【0027】
また、第2相間絶縁紙54は、
図7(b)に示すように、例えば絶縁性を有する矩形状のアラミド紙で構成されている。第2相間絶縁紙54は、1段目コイル群10における各相の単位コイル11、12、13の相互間、及び2段目コイル群20における各相の単位コイル21、22、23の相互間に設けられている。これにより、1段目コイル群10及び2段目コイル群20において、各相の単位コイルは電気的に絶縁されている。ちなみに、本実施形態の場合、スロット52内においては、異相のコイルが存在しないため、スロット52内に相間絶縁紙は設けられていない。
【0028】
これによれば、固定子50の固定子巻線において、U、V、W相の各極は、複数、本実施形態では2つに分割された単位コイル、つまり1段目単位コイル11、12、13と2段目単位コイル21、22、23とを組み合わせることで構成される。これにより、一つの磁極を構成するコイル全体としての巻数を変更すること無く、スロット52に対する挿入単位でのコイルすなわち単位コイルでの巻数を低減、この場合半減することができる。したがって、挿入単位である各単位コイル11、12、13、21、22、23の単体についてコイルの断面積が低下するとともに柔軟性が増す。その結果、各単位コイル11、12、13、21、22、23をスロット52に挿入する際の操作性が向上し、これにより、固定子鉄心51のスロット52に対するコイルの挿入を容易なものとすることができる。
【0029】
また、固定子鉄心51の径方向の内側に配置される2段目単位コイル21、22、23の周長は、径方向の外側に配置される1段目単位コイル11、12、13の周長に比べて短い。そのため、2段目単位コイル21、22、23に使用される銅線の量を低減することができ、その結果、2段目単位コイル21、22、23のコイルエンド部分の銅線の無駄と銅損を低減することができる。
【0030】
また、2段目単位コイル21、22、23に1段目単位コイル11、12、13と同じ周長のコイルを用いた場合に比べて、2段目単位コイル21、22、23のコイルエンド部の高さ寸法を低減することができる。したがって、固定子50の軸方向の寸法を低減でき、小型化が図られる。
【0031】
(第二実施形態)
次に第二実施形態について、
図8及び
図9を参照して説明する。
1段目コイル群10及び2段目コイル群20は、その形状は上記第一実施形態と同一であるが、配置が異なる。すなわち、固定子鉄心51の径方向の外側に設けられる1段目コイル群10と、固定子鉄心51の径方向の内側に設けられる2段目コイル群20とは、挿入されるスロット52を1スロットずつずらして配置されている。この場合、各相において、一の磁極は、異なるスロット52に挿入された複数の単位コイルによって形成されている。
【0032】
つまり、U相2段目単位コイル21は、当該U相2段目単位コイル21と同極同相であって固定子鉄心51の径方向の外側に設けられるU相1段目単位コイル11と異なるスロットに挿入されている。V相2段目単位コイル22は、当該V相2段目単位コイル22と同極同相であって固定子鉄心51の径方向の外側に設けられるV相1段目単位コイル12と異なるスロットに挿入されている。W相2段目単位コイル23は、当該W相2段目単位コイル23と同極同相であって固定子鉄心51の外側に設けられるW相1段目単位コイル13と異なるスロットに挿入されている。
【0033】
具体的には、
図9(a)に示すように、第二実施形態における1段目コイル群10は、第一実施形態の1段目コイル群10と同様に配置されている。一方、
図9(b)に示すように、第二実施形態における2段目コイル群20は、第一実施形態の2段目コイル群20に対して1スロットずらして配置されている。
【0034】
すなわち、
図9(b)に示すように、U相の2段目単位コイル21は、第2スロット及び第5スロット、第8スロット及び第11スロット、第14スロット及び第17スロット、第20スロット及び第23スロットにそれぞれ巻かれて設けられている。V相の2段目単位コイル22は、第4スロット及び第7スロット、第10スロット及び第13スロット、第16スロット及び第19スロット、第22スロット及び第1スロットにそれぞれ巻かれて設けられている。W相の2段目単位コイル23は、第6スロット及び第9スロット、第12スロット及び第15スロット、第18スロット及び第21スロット、第24及び第3スロットにそれぞれ巻かれて設けられている。
【0035】
ちなみに、この場合、各スロット52内において、異相の単位コイルが配置されることになる。そのため、スロット52内には、異相の単位コイル間に図示しない相間絶縁紙が設けられ、これにより異相の単位コイル間が電気的に絶縁される。
【0036】
これによれば、上記第一実施形態と同様の作用効果が得られる。さらに、これによれば、図示しない回転子にスキューを設けた構造と同等の作用効果を得ることができる。すなわち、例えば、かご形三相誘導電動機について見ると、一般に、固定子かごは、回転子の軸方向両端部にある2個のエンドリングと、この2個のエンドリングを繋ぐ複数のバーで構成されている。そして、このような回転子かごは、トルクむらを抑制するため、エンドリングとバーを垂直に配置せず一定の角度を付けたスキュー構造としている。しかし、このような回転子は、例えばアルミダイカストで形成されるが、スキューを設ける構成とすると、その製造が難しい。これに対し、第二実施形態の構成によれば、1段目コイル群10と2段目コイル群20とを固定子鉄心51の周方向へずらして配置することで、固定子にスキューを設けた場合と同等の作用効果を得ることができる。そのため、固定子にスキューを設ける必要が無くなり、その結果、回転子の構成を簡素化することができる。
【0037】
(第三実施形態)
次に第三実施形態について、
図10を参照して説明する。
図10は、4極36スロットの固定子50について、各単位コイルの配置を示している。第三実施形態において、固定子50は、1段目コイル群60及び2段目コイル群70を備えている。1段目コイル群60は、第一実施形態における各1段目単位コイル11、12、13をさらに3分割したような形態で構成されている。すなわち、第三実施形態における1段目コイル群60は、U相1段目単位コイル群61と、V相1段目単位コイル群62と、W相1段目単位コイル群63と、を2組ずつ有している。
【0038】
U相1段目単位コイル群61は、例えば9スロットピッチで構成されて1ピッチずつずらして配置された3個の単位コイル611、612、613により構成されている。同様に、V相1段目単位コイル群62は、9スロットピッチで構成されて1ピッチずつずらして配置された3個の単位コイル621、622、623により構成されている。同様に、W相1段目単位コイル群63は、9スロットピッチで構成されて1ピッチずつずらして配置された3個の単位コイル631、632、633により構成されている。
【0039】
2段目コイル群70も、1段目コイル群60と同様に、第一実施形態における各2段目単位コイル21、22、23をさらに3分割したような形態で構成されている。すなわち、第三実施形態における2段目コイル群70は、U相2段目単位コイル群71と、V相2段目単位コイル群72と、W相2段目単位コイル群73と、を2組ずつ有している。
【0040】
U相2段目単位コイル群71は、例えば9スロットピッチで構成されて1ピッチずつずらして配置された3個の単位コイル711、712、713により構成されている。同様に、V相2段目単位コイル群72は、9スロットピッチで構成されて1ピッチずつずらして配置された3個の単位コイル721、722、723により構成されている。同様に、W相2段目単位コイル群73は、9スロットピッチで構成されて1ピッチずつずらして配置された3個の単位コイル731、732、733により構成されている。
【0041】
この場合、1段目コイル群60を構成する各単位コイル611、612、613、621、622、623、631、632、633の巻数と、2段目コイル群70を構成する各単位コイル711、712、713、721、722、723、731、732、733の巻数とは、同一である。一方、2段目コイル群70を構成する各単位コイル711、712、713、721、722、723、731、732、733の周長の方が、1段目コイル群60を構成する各単位コイル611、612、613、621、622、623、631、632、633の周長よりも短い。
【0042】
この場合、U、V、W相の固定子巻線U、V、Wは、単層重ね巻き方式で構成される。単層重ね巻き方式とは、重ね巻き方式であって、同一スロット52内に異相の単位コイルが収納されていない構成、すなわち、一のスロット52内には一の相の単位コイルのみが設けられている構成をいう。
【0043】
また、U相1段目単位コイル群61及びU相2段目単位コイル群71の巻数の総数は、第一実施形態と同様に例えば40巻きとなる。V相1段目単位コイル群62及びV相2段目単位コイル群72の巻数の総数は、第一実施形態と同様に例えば40巻きとなる。W相1段目単位コイル群63及びW相2段目単位コイル群73の巻数の総数は、第一実施形態と同様に例えば40巻きとなる。
【0044】
これによれば、上記第一実施形態及び第二実施形態と同様の作用効果が得られる。さらに、スロット52内への挿入単位となる単位コイルの巻数をさらに低減することができるため、単位コイルの柔軟性が増し、スロット52への単位コイルの挿入をさらに容易になものとすることができる。
【0045】
各相の固定子巻線U、V、Wは、単層重ね巻き方式で形成されている。すなわち、同一のスロット52内には、異相の単位コイルが配置されていない。そのため、スロット52内において、異相の単位コイル間の電気的絶縁を考慮する必要が無く、スロット52内に相間絶縁紙を設ける必要が無い。したがって、固定子50の構成がより簡素化出来るとともに、スロット52内における空間をより広く確保することができるため、単位コイルの挿入をさらに容易なものとすることができる。
【0046】
なお、固定子50は、上記各実施形態のものに限られず、スロット52の数や極数を適宜変更しても良い。すなわち、固定子50は、4極24スロットや4極36スロットのものに限られず、例えば4極48スロットなど他の構成であっても良い。また、一つの磁極を構成するコイルを、3分割以上で分割し、1段目コイル群、2段目コイル群、3段目コイル群のように分割して配置させても良い。
【0047】
以上説明した実施形態によれば、回転電機の固定子は、固定子鉄心のスロットに対して複数の単位コイルを重ね巻き方式で挿入して構成されたコイル群を複数有している。そして、複数のコイル群のうち、固定子鉄心の外周側に位置するコイル群を構成する単位コイルと比べて固定子鉄心の内周側に位置するコイル群を構成する単位コイルの方がその周長が短い。これにより、各単位コイルを形成する銅線の無駄を削減し、さらにコイルの銅損やコイルエンドの高さの低減を図ることができる。さらに、一の極を構成するコイルの巻数の総数を変更すること無く、スロットへの挿入単位である単位コイルの巻数が低減されることから、各単位コイル単体についてコイルの断面積が低下するとともに柔軟性が増す。したがって、各単位コイルを固定子鉄心のスロットに挿入する際の操作性が向上し、その結果、固定子鉄心のスロットに対するコイルの挿入を容易なものとすることができる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変更は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。