特許第6585252号(P6585252)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝エレベータ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6585252-乗客コンベア 図000002
  • 特許6585252-乗客コンベア 図000003
  • 特許6585252-乗客コンベア 図000004
  • 特許6585252-乗客コンベア 図000005
  • 特許6585252-乗客コンベア 図000006
  • 特許6585252-乗客コンベア 図000007
  • 特許6585252-乗客コンベア 図000008
  • 特許6585252-乗客コンベア 図000009
  • 特許6585252-乗客コンベア 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6585252
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/00 20060101AFI20190919BHJP
   B66B 31/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   B66B23/00 C
   B66B31/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-164873(P2018-164873)
(22)【出願日】2018年9月3日
【審査請求日】2018年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 和博
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−177974(JP,A)
【文献】 特開2011−037546(JP,A)
【文献】 実開昭55−160375(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 23/00
B66B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結した複数の踏み段を周回駆動して移動路を構成し、この移動路に対する乗降部には、その床下に形成された空間の上面開口を覆う乗降板が設けられた乗客コンベアであって、
前記空間を構成する躯体に設けられ、前記乗降板の縁部を載置させるベース部材と、
前記乗降板に、その表裏を貫通する状態で回転可能に設けられ、前記乗降板の外面側からの回転操作により前記ベース部材に係合し、かつ前記空間内の端部には、前記ベース部材との係合を解除する方向に回転操作可能な解除操作部を有するロック機構と、
を備えたことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記乗降板の前記ベース部材近くに形成された表裏を貫通する支持孔に回転可能に支持され、前記乗降板の外面側からの回転操作により、前記乗降板の内側に位置する端部に形成された前記解除操作部を兼ねる係合部が前記ベース部材に係合する構成であることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記乗降板の前記ベース部材に載置される部分に形成された第1のねじ孔、及び前記ベース部材に形成された、前記第1のねじ孔と同心を成す第2のねじ孔に、前記乗降板の外側からの回転操作により螺合され、かつ前記乗降板の内側に位置する端部には、前記空間内から前記螺合を解除する方向に回転操作可能な解除操作部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記解除操作部は、直線状態から、L字形に折り曲げ可能な構成であることを特徴とする請求項3に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記解除操作部は、前記第2のねじ孔に螺合する部分より細径に形成した部分をL字形に折り曲げ、このL字形の部分が前記第1及び第2のねじ孔を挿通できるように構成したことを特徴とする請求項3に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記解除操作部には、無照明状態でも目視可能なように蛍光塗料が塗布されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無端状に連結した複数の踏み段を周回駆動して移動路を構成し、この移動路に対する乗降部に、乗降板を設けた乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空港内建物や、デパートなどの各種の施設には、エスカレータやオートロードと呼ばれる乗客コンベアが設置されている。この乗客コンベアは、無端状に連結した複数の踏み段を周回駆動して移動路を構成している。この移動路の前方及び後方、すなわち、移動路に対する乗降部の床下には、この移動路を駆動する駆動機構等を収容するための空間がそれぞれ形成されている。
【0003】
これらの空間の上面は床面に開口しており、その上面開口は通常時は板体により覆われ、移動路への乗客の乗降を可能としている。したがって、この板体は乗降板と呼ばれる。保守点検時には、この乗降板を取り外して空間内に作業員が入り、駆動機構などの保守点検作業を行う。作業終了後は、再び乗降板により上面開口を覆い、これをねじ止めして固定する。
【0004】
この点検作業終了後の床下空間閉鎖時に、何らかの事情により、人が床下空間内に居ることに気付かずに乗降板を取り付け、これを外部からねじ止め固定してしまうことが考えられる。この場合、床下空間内に閉じ込めが生じることとなる。乗降板は、上述のように外部からねじ止め固定されていることから、閉じ込められた人は床下空間内から乗降板を取り外すことができず、自力で脱出できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−189388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように乗降板を床下空間内から取り外すことができないため、閉じ込められた人が自力で脱出できなかった。
【0007】
本発明は、乗降板を床下空間内から取り外せるようにして、床下空間からの自力での脱出を可能とした乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施の形態に係る乗客コンベアは、無端状に連結した複数の踏み段を周回駆動して移動路を構成し、この移動路に対する乗降部には、その床下に形成された空間の上面開口を覆う乗降板が設けられた乗客コンベアであって、前記空間を構成する躯体に設けられ、前記乗降板の縁部を載置させるベース部材と、前記乗降板に、その表裏を貫通する状態で回転可能に設けられ、前記乗降板の外面側からの回転操作により前記ベース部材に係合し、かつ前記空間内の端部には、前記ベース部材との係合を解除する方向に回転操作可能な解除操作部を有するロック機構とを備えたことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、床下の空間内から、ロック機構を解除操作することができるので、閉じ込められた人が自力で脱出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る乗客コンベアの外観を示す正面図である。
図2】一実施の形態に係る乗客コンベアの概略構成を説明する側面構成図である。
図3】一実施の形態の要部である乗降板の取付構成を示す側断面図である。
図4図3で示した部分の平面図である。
図5図3で示した乗降板の他の取付構成例を示す平面図である。
図6】他の実施の形態における乗降板の取付構成を説明する側断面図である。
図7図6で示した部分の平面図である。
図8図6で示したロック機構の一例を示す斜視図である。
図9図6で示したロック機構の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1及び図2は、乗客コンベアとしてエスカレータを例示した場合を示しており、以下、エスカレータを例にとって説明する。
【0013】
図1及び図2において、乗客コンベアの一例であるエスカレータ10は、複数の踏み段11を無端状に連結して、これを周回駆動することで移動路12を構成している。この移動路12に対する乗降部(移動路12の進行方向前方及び後方の床面)13には、乗降板14が設けられている。すなわち、乗降部13の床下には、図2で示すように、移動路12を周回駆動するための駆動機構16を収容する空間17がそれぞれ形成されており、それらの上面開口は乗降板14によって覆われている。
【0014】
なお、駆動機構16は、モータ161、減速機162などを介して回転駆動される駆動側のスプロケット163、この駆動側のスプロケット163と従動側のスプロケット164との間に掛け渡される駆動チェーン165などで構成される。そして、この駆動チェーン165に連結されたに複数の踏み段11を周回駆動することで移動路12を構成する。この駆動機構16及びそれを収容する空間17は建物の上下階に渡って設けられるトラス(構造フレーム)18内に構成される。
【0015】
図3及び図4は乗降板14の取付け構造を拡大して示している。図3及び図4において、乗降板14は、空間17を構成する躯体(建物の構造体又はトラス18の一部)21に設けられたベース部材22上に載置される。すなわち、ベース部材22は、空間17内上部の上面開口に近い位置に設けられており、乗降板14の縁部が載置されたとき、乗降板14の上面が周囲の床面と面一となる位置関係で設けられる。
【0016】
乗降板14にはロック機構25が設けられている。このロック機構25は、乗降板14が空間17の上面開口を覆った閉鎖状態でベース部材22と係合して、乗降板14を閉鎖状態にロックする。すなわち、ロック機構25は、乗降板14の表裏を貫通する状態で回転可能に設けられおり、乗降板14の外面側からの回転操作によりその下端部に形成された係合部25aが、ベース部材22に係合する。この係合部25aは、空間17内に位置しており、後述するように、ベース部材22との係合を解除する方向に回転操作可能な解除操作部としても機能する。
【0017】
具体的には、ロック機構25は、乗降板14の、ベース部材22近くに形成された表裏を貫通する支持孔14aに、回転可能な状態で、かつ軸方向には不動な状態で支持されている。このロック機構25の上端部には、図示しないが角型形状の操作穴(以下、角型穴と呼ぶ)が形成されており、乗降板14の外面側から、この角型穴に角棒部を有する回転操作具27を嵌合することで、外部からの回転操作が可能である。
【0018】
また、ロック機構25の下端部、すなわち、乗降板14の内側(空間17内)に位置する端部には、前述した係合部25aが設けられている。この係合部25aは、図示のように水平部を有するL字形に形成されており、ロック機構25が回転操作具27により乗降板14の外側から回転操作されることにより、水平部がベース部材22の下面と係合し、乗降板14を、空間17の上面開口を覆った閉鎖状態にロックする。
【0019】
また、この係合部25aは、L字形であることから、空間17内から、このL字形の水平部をつかんで回転操作することができる。すなわち、この回転操作によりロック機構25の係合部25aをベース部材22から外して、前述したロック状態を解除することができる。したがって、この係合部25aは、前述のように、ロック状態を解除する解除操作部を兼ねる。
【0020】
上記構成において、乗降板14は、図示のように、下階側及び上階側の乗降部13に配設されており、乗客がエスカレータ10の乗降時にその上を通行するものである。移動路12を構成する踏み段11は、乗客を乗せる踏み面を水平状として、一方の乗降板14に沿ってトラス18内から進出し、他方の乗降板14に沿ってトラス18内へ進入する。
【0021】
乗降板14は、その下方のトラス18内に在る空間(機械室)17の出入口の蓋を兼ねており、エスカレータ10の保守点検時は、必要に応じて取り去られ、空間(機械室)17への出入口となる。乗降板14を取り外す場合は、回転操作具27の角棒部を、乗降板14に設けられたロック機構25の上端の角穴に嵌合させ、これを回転操作する。この回転操作により、ロック機構25の下端のL字形の係合部25aの水平部は、ベース部材22の下面から外れる。このため乗降板14のロックは解除され、空間17の上面開口を覆った状態から取り外し可能となる。
【0022】
このようにして乗降板14を取り外したのち、作業員は開放された上面開口から空間(機械室)17内に入り、駆動機構16等に対する所定の保守点検作業を実施する。作業終了後、乗降板14を元の位置に戻して空間17の上面開口を覆い、回転操作具27によりロック機構25を回転操作し、下端のL字形の係合部25aをベース部材22の下面に係合させ、乗降板14をロック状態とする。
【0023】
このとき、空間17内に人がいることに気付かずに上述のロック操作を行った場合、空間17内の人は閉じ込め状態となる。この場合、閉じ込められた人は、空間17内においてロック機構25の下端のL字形の係合部(解除操作部)25aを掴み、これを回転操作する。この回転操作により係合部25aはベース部材22の下面から外れ、乗降板14のロック状態は解除される。このため、閉じ込められた人はロックが解除された乗降板14を押し上げ、空間17の上面開口を開放して外部に脱出することができる。
【0024】
このように、乗降板14は通常時はロック機構25により、床下の空間17の上面開口を覆った状態にロックされ、不用意に外れたりすることはない。また万一、床下の空間17内に人が閉じ込められた場合であっても、閉じ込められた人は空間17内でロック機構25の係合部(解除操作部)25aをつかんで回転操作することでロック状態を解除し、自力で脱出することができる。
【0025】
なお、図4の例では、ロック機構25を、乗降板14の乗降方向後端部(図示左端部)に設けたが、図5で示すように、乗降板14の左右両側部(図示上下部)にそれぞれ設けてもよい。
【0026】
次に、図6乃至図8で示す実施の形態を説明する。この実施の形態では、乗降板14の、ベース部材22に載置される部分に第1のねじ孔14sを形成する。この第1のねじ孔14sと対向するベース部材22上に、この第1のねじ孔14sと同心を成す第2のねじ孔22sを形成する。
【0027】
この実施の形態に用いるロック機構35の上端部にも、角型形状の操作穴(角型穴)が形成されており、乗降板14の外面側から、この角型穴に角棒部を有する回転操作具27を嵌合することで、外部からの回転操作が可能である。また、このロック機構35の軸部外周には雄ねじ部35sが形成されており、乗降板14の外側からの回転操作により上述した第1のねじ孔14s及び第2のねじ孔22sと螺合する。さらに、このロック機構35の下端部、すなわち、乗降板14の内側(空間17内)に位置する端部には、L字形の解除操作部35aを設けている。
【0028】
この解除操作部35aは、ロック機構35を、空間17内から、第1のねじ孔14s及び第2のねじ孔22sとの螺合を解除する方向に回転操作するためのものである。すなわち、L字形に形成された解除操作部35aをつまむことにより、ロック機構35の雄ねじ部35sを回転させ、上述した螺合を解除することができる。
【0029】
なお、ロック機構35の解除操作部35aは、第2のねじ孔22sに螺合する雄ねじ部35sの軸径より細径に形成し、L字形の部分が第1のねじ孔14s及び第2のねじ孔22sを挿通できるように構成した。
【0030】
上記構成において、点検作業終了後、乗降板14は元の位置に戻され、空間17の上面開口を覆う。この状態で回転操作具27によりロック機構35を回転操作し、その雄ねじ部35sを第1のねじ孔14s及び第2のねじ孔22sにねじ込む。この操作により、乗降板14は、ロック機構35によりベース部材22に一体的にねじ止めされたロック状態となり、不用意に外れることはない。なお、このときロック機構35の下端の解除操作部35aは、空間17内に突出している。
【0031】
上述のロック操作を、空間17内に人がいることに気付かずに行った場合、空間17内の人は閉じ込め状態となる。この場合、閉じ込められた人は、空間17内に突出しているロック機構35の下端のL字形の解除操作部35aを掴み、第1のねじ孔14s及び第2のねじ孔22sとの螺合を解除する方向に回転操作する。この回転操作により雄ねじ部35sはベース部材22に設けられた第2のねじ孔22sから外れ、乗降板14のロック状態は解除される。このため、閉じ込められた人はロックが解除された乗降板14を押し上げ、空間17の上面開口を開放して外部に脱出することができる。
【0032】
このように、乗降板14は通常時はロック機構35により、床下の空間17の上面開口を覆った状態にロックされ、不用意に外れたりすることはない。また万一、床下の空間17内に人が閉じ込められた場合であっても、閉じ込められた人は空間17内でロック機構35の解除操作部35aをつかんで回転操作することでロック状態を解除し、自力で脱出することができる。
【0033】
なお、解除操作部35aは、図8で示したようにL字形に折り曲げ加工したものを用いたが、図9で示すように、枢支部35a1を設け、直線状態から、L字形に折り曲げ可能な構成としてもよい。
【0034】
このように構成すると、解除操作部35aを、第1のねじ孔14s及び第2のねじ孔22sに挿通させるときは直線状とし、閉じ込め脱出時は、枢支部35a1を中心にL字形に折り曲げることにより、回転操作可能とすることができる。
【0035】
また、閉じ込め時、空間17内は無照明状態となるので、無照明状態でも目視可能なように、解除操作部35aに、蛍光塗料を塗布するとよい。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
10…乗客コンベアの一例であるエスカレータ
11…踏み段
12…移動路
13…乗降部
14…乗降板
14a…支持孔
14s…第1のねじ孔
16…駆動機構
17…床下の空間
18…トラス
21…躯体
22…ベース部材
22s…第2のねじ孔
25,35…ロック機構
25a,35a…係合部(解除操作部)
35s…雄ねじ部
【要約】
【課題】乗降板を床下空間内から取り外せるようにして、床下空間からの自力での脱出を可能とした乗客コンベアを提供する。
【解決手段】 無端状に連結した複数の踏み段を周回駆動して移動路を構成し、この移動路に対する乗降部13には、その床下に形成された空間17の上面開口を覆う乗降板14が設けられている。空間17は、躯体21に設けられ、乗降板14の縁部を載置させるベース部材22を有する。乗降板14には、その表裏を貫通する状態でロック機構25を回転可能に設けている。ロック機構25は、外面側からの回転操作によりベース部材22に係合し、かつ空間17内の端部には、ベース部材22との係合を解除する方向に回転操作可能な解除操作部25aを有する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9