特許第6585299号(P6585299)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585299
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】インダクタンス調整装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 21/04 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   H01F21/04
【請求項の数】13
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2018-527531(P2018-527531)
(86)(22)【出願日】2017年7月4日
(86)【国際出願番号】JP2017024537
(87)【国際公開番号】WO2018012354
(87)【国際公開日】20180118
【審査請求日】2018年10月9日
(31)【優先権主張番号】特願2016-138655(P2016-138655)
(32)【優先日】2016年7月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591057278
【氏名又は名称】株式会社江口高周波
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】真弓 康弘
(72)【発明者】
【氏名】鶴崎 一也
(72)【発明者】
【氏名】江口 洋平
【審査官】 田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−147107(JP,A)
【文献】 実公昭03−008034(JP,Y1)
【文献】 国際公開第2010/067649(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F21/04
29/12
38/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路のインダクタンスを調整するインダクタンス調整装置であって、
第1の周回部と、第2の周回部と、第1の接続部とを有する第1のコイルと、
第3の周回部と、第4の周回部と、第2の接続部とを有する第2のコイルと、を有し、
前記第1の周回部、前記第2の周回部、前記第3の周回部、および前記第4の周回部は、それぞれ、その内側の領域を囲むように周回する部分であり、
前記第1の接続部は、前記第1の周回部の一端と、前記第2の周回部の一端とを相互に接続する部分であり、
前記第2の接続部は、前記第3の周回部の一端と、前記第4の周回部の一端とを相互に接続する部分であり、
前記第1のコイルと前記第2のコイルは、直列または並列に接続され、
前記第1の周回部と前記第2の周回部は、同一面にあり、
前記第3の周回部と前記第4の周回部は、同一面にあり、
前記第1の周回部および前記第2の周回部と、前記第3の周回部および前記第4の周回部は、間隔を有して平行な状態で配置され、
前記第1のコイルと前記第2のコイルとの少なくとも何れか一方は、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルの軸を回動軸として回動し、
前記軸は、前記第1の周回部の中心および前記第2の周回部の中心の中間の位置と、前記第3の周回部の中心および第4の周回部の中心の中間の位置とを通る軸であり、
前記第1の周回部と前記第2の周回部は、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルの少なくとも何れか一方が回動する方向における角度が180°ずれた状態を保つように配置され、
前記第3の周回部と前記第4の周回部は、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルの少なくとも何れか一方が回動する方向における角度が180°ずれた状態を保つように配置されることを特徴とするインダクタンス調整装置。
【請求項2】
第1の状態および第2の状態の両方または片方の状態が含まれるように、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルの少なくとも何れか一方が回動し、
前記第1の状態は、前記第1の周回部と前記第3の周回部とが相互に対向する位置にあり、且つ、前記第2の周回部と前記第4の周回部とが相互に対向する位置にある状態であり、
前記第2の状態は、前記第1の周回部と前記第4の周回部とが相互に対向する位置にあり、且つ、前記第2の周回部と前記第3の周回部とが相互に対向する位置にある状態であることを特徴とする請求項1に記載のインダクタンス調整装置。
【請求項3】
前記第1のコイルの第1の方向における回動角度の絶対値と、前記第2のコイルの前記第1の方向とは反対の方向である第2の方向における回動角度の絶対値の合計の範囲が0°〜180°であることを特徴とする請求項1または2に記載のインダクタンス調整装置。
【請求項4】
前記第1の周回部、前記第2の周回部、前記第3の周回部、および前記第4の周回部の形状および大きさは、それらの全長の60%以上の部分で同じであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインダクタンス調整装置。
【請求項5】
前記第1のコイルは回動し、前記第2のコイルは回動しないことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のインダクタンス調整装置。
【請求項6】
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルは、前記軸に垂直な方向において2回以上巻回されたコイルであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のインダクタンス調整装置。
【請求項7】
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルの組が複数あり、
前記複数の組は、直列または並列に接続されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のインダクタンス調整装置。
【請求項8】
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルはそれぞれ、前記軸に垂直な方向において複数配置されることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のインダクタンス調整装置。
【請求項9】
前記直列に接続することと前記並列に接続することとの切り替えを行う切り替え装置を更に有することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のインダクタンス調整装置。
【請求項10】
前記電気回路が動作しているときに前記回動が行われることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のインダクタンス調整装置。
【請求項11】
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルと電気的に接続されたコンデンサを更に有し、
前記コンデンサは、前記電気回路が通電された際に前記インダクタンス調整装置にかかる電位を低減するためのコンデンサであることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のインダクタンス調整装置。
【請求項12】
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルの少なくとも何れか一方の前記軸に沿う方向の位置を変更することを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載のインダクタンス調整装置。
【請求項13】
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルは、前記電気回路に流れる共振電流が分岐しないように前記電気回路に接続されることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載のインダクタンス調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタンス調整装置に関し、特に、電気回路のインダクタンスを調整するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地球温暖化防止のために二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量を削減するニーズは高い。例えば、鉄鋼分野では、高周波で焼入を行うための誘導加熱装置を高効率で運転することが実現されている。また、加熱効率の悪いガス加熱炉の代替技術としての誘導加熱装置の導入が近年増加してきている。また、自動車分野では、電気自動車に対して非接触で給電する技術の開発が行われている。
【0003】
これらの技術は、高周波発生装置にコンデンサ(静電容量C)と負荷コイル(インダクタンスL)とを直列または並列に接続して電圧共振または電流共振を発生させる技術である。これらの技術では、共振電流が負荷コイルに流れたときに発生する磁束で被加熱物を非接触で加熱することができる。また、これらの技術では、共振電流が負荷コイルに流れたときに発生する磁束に基づく電磁誘導現象を利用して非接触で給電することができる。尚、共振電流とは、周波数が共振周波数の電流のことを指す。
【0004】
このように共振現象を利用する場合、コンデンサ(静電容量C)と加熱コイル(インダクタンスL)とが決定すれば高周波発生装置における周波数(共振周波数)が一義的に決定される。このため、装置の立上時において、実際の周波数が目標周波数から外れている場合には、リアクタンスを調整する必要がある。そのための手段として、従来、目標周波数を得るために、回路の静電容量Cを調整する手段がとられていた。
【0005】
具体的に、コンデンサと負荷コイルとを含む回路に対し、予め準備しておいた微調整用コンデンサを接続したり切り離したりすることにより、回路の静電容量Cを調整する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、微調整用コンデンサを余分に設置する必要がある。このため、装置が高価になる。また、運転中に周波数を切り換える場合には、一旦電源を切り、遠隔から自動で微調整用コンデンサの給電端子を切り換え、再度電源を入りにして運転を継続する必要がある。このようにする場合には、遠隔操作が可能な端子切替器が必要になる。このため、装置が高価になる。また、大電流下において回路の静電容量Cを連続的に可変することは技術的に容易ではない。
【0006】
このため、回路のインダクタンスLを調整することが考えられる。回路のインダクタンスLを調整する技術として、以下の特許文献1〜3に記載の技術がある。
【0007】
特許文献1には、誘導加熱に関する技術として、ソレノイドコイル内で磁性コアを移動させることによりインダクタンスLを調整する方法が開示されている。具体的に特許文献1に記載の技術では、比透磁率の高い磁性コアをソレノイドコイル内で移動させることによりソレノイドコイル内の磁性コアの占有率を変化させることでインダクタンスLを調整する。
【0008】
特許文献2には、非接触給電に関する技術として、磁性コアを使用せずに、ソレノイドコイルを伸縮することによりインダクタンスLを調整する方法が開示されている。
【0009】
特許文献3には、基板上で使用する高周波電子回路に関する技術として、2つのコイル間の相対的な位置を変更することによりインダクタンスLを調整する方法が開示されている。具体的に特許文献3に記載の技術では、同一形状のコイルを2つ用いる。2つのコイルのギャップを変更したり、コイル端を軸にして2つのコイルを回動させたり開閉させたりすることにより2つのコイルの回動角度や開閉角度を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−30965号公報
【特許文献2】特開2016−9790号公報
【特許文献3】特開昭58−147107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ソレノイドコイルの中に磁性コアを挿入する。このため、ソレノイドコイルに大電流を流すとソレノイドコイルから発生する磁束が磁性コアに集中する。従って、特許文献1に記載の技術では、磁性コアの損失(鉄損やヒステリシス損)が大きくなる。更に、特許文献1に記載の技術では、磁性コアの端部に集中する磁束によりソレノイドコイルが誘導加熱される。よって、特許文献1に記載の技術では、加熱効率を向上させることが容易ではない。
【0012】
また、特許文献2に記載の技術では、ソレノイドコイルを伸縮してインダクタンスLを調整する。このため、ソレノイドコイルの伸縮量を、インダクタンスLの可変倍率に応じて長くする必要がある。従って、特許文献2に記載の技術では、装置全体が大きくなる。更に、特許文献2に記載の技術では、コイルの変形を支える支持構造が複雑になる。尚、インダクタンスLの可変倍率とは、インダクタンスLの最大値をインダクタンスLの最小値で割った値である。
【0013】
また、特許文献3に記載の技術は、基板上で使用する高周波電子回路に関する技術であるので、この高周波電子回路に大電流を流すのは容易ではない。また、仮に、この高周波電子回路に大電流を流せる状態にできたとしても、特許文献3に記載の技術では、コイル端を軸にして回動角度や開閉角度を変更する。誘導加熱を行う場合のように数百〜数千アンペアの大電流を流すと過大な反発力や吸引力が2つのコイル間に発生する。特許文献3に記載の技術では、コイル端を軸とする構造であるため、前述した反発力や吸引力が発生するにより、インダクタンスLを正確に調整することが容易でない。更に、特許文献3に記載の技術では、前述した反発力や吸引力が発生するにより、インダクタンス調整装置が破損する可能性がある。従って、特許文献3に記載の技術では、大電流を流すには特別な構造を採用いなければならない。また、特許文献3に記載の技術では、インダクタンスLの変化は、ギャップや角度の対数に比例する。このため、特許文献3に記載の技術では、2つのコイルのギャップや回動角度と、インダクタンスLとの関係が線形の関係から大きく外れる。このため、特許文献3に記載の技術では、周波数を高精度に制御することが容易ではない。
【0014】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、電気回路のインダクタンスを簡単且つコンパクトな構成で正確に調整できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のインダクタンス調整装置は、電気回路のインダクタンスを調整するインダクタンス調整装置であって、第1の周回部と、第2の周回部と、第1の接続部とを有する第1のコイルと、第3の周回部と、第4の周回部と、第2の接続部とを有する第2のコイルと、を有し、前記第1の周回部、前記第2の周回部、前記第3の周回部、および前記第4の周回部は、それぞれ、その内側の領域を囲むように周回する部分であり、前記第1の接続部は、前記第1の周回部の一端と、前記第2の周回部の一端とを相互に接続する部分であり、前記第2の接続部は、前記第3の周回部の一端と、前記第4の周回部の一端とを相互に接続する部分であり、前記第1のコイルと前記第2のコイルは、直列または並列に接続され、前記第1の周回部と前記第2の周回部は、同一面にあり、前記第3の周回部と前記第4の周回部は、同一面にあり、前記第1の周回部および前記第2の周回部と、前記第3の周回部および前記第4の周回部は、間隔を有して平行な状態で配置され、前記第1のコイルと前記第2のコイルとの少なくとも何れか一方は、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルの軸を回動軸として回動し、前記軸は、前記第1の周回部の中心および前記第2の周回部の中心の中間の位置と、前記第3の周回部の中心および第4の周回部の中心の中間の位置とを通る軸であり、前記第1の周回部と前記第2の周回部は、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルの少なくとも何れか一方が回動する方向における角度が180°ずれた状態を保つように配置され、前記第3の周回部と前記第4の周回部は、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルの少なくとも何れか一方が回動する方向における角度が180°ずれた状態を保つように配置されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A図1Aは、インダクタンス調整装置の構成の第1の例を示す図である。
図1B図1Bは、図1Aのインダクタンス調整装置の給電端子が配置されている面の様子の一例を示す図である。
図2A図2Aは、第1のコイルおよび第1の支持部材の第1の例を示す図である。
図2B図2Bは、第2のコイルおよび第2の支持部材の第1の例を示す図である。
図3A図3Aは、或る状態の第1のコイルと、当該状態から中心軸を回動軸として180°回動した状態の第1のコイルとを重ねて示す図である。
図3B図3Bは、或る状態の第2のコイルと、当該状態から中心軸を回動軸として180°回動した状態の第2のコイルとを重ねて示す図である。
図4図4は、第1のコイルと第2のコイルの位置関係の一例を示す図である。
図5A図5Aは、第1のコイルおよび第2のコイルに生じる磁束の向きの第1の例を、第1のコイルおよび第2のコイルの回路記号と共に示す図である。
図5B図5Bは、第1のコイルおよび第2のコイルに生じる磁束の向きの第2の例を、第1のコイルおよび第2のコイルの回路記号と共に示す図である。
図6A図6Aは、第1のコイルおよび第2のコイルに生じる磁束の第1の例を、インダクタンス調整装置に配置された状態の第1のコイルと第2のコイルと共に示す図である。
図6B図6Bは、第1のコイルおよび第2のコイルに生じる磁束の第2の例を、インダクタンス調整装置に配置された状態の第1のコイルと第2のコイルと共に示す図である。
図7A図7Aは、本実施形態のインダクタンス調整装置におけるインダクタンスと回動角度との関係の一例を示す図である。
図7B図7Bは、特許文献3に記載の技術におけるインダクタンスと回動角度との関係の一例を示す図である。
図8A図8Aは、第1のコイルおよび第1の支持部材の第1の変形例を示す図である。
図8B図8Bは、第2のコイルおよび第2の支持部材の第1の変形例を示す図である。
図9A図9Aは、第1のコイルおよび第1の支持部材の第2の変形例を示す図である。
図9B図9Bは、第2のコイルおよび第2の支持部材の第2の変形例を示す図である。
図10図10は、インダクタンス調整装置の構成の変形例を示す図である。
図11図11は、インダクタンス調整装置の構成の第2の例を示す図である。
図12A図12Aは、第1のコイルおよび第1の支持部材の第2の例を示す図である。
図12B図12Bは、第2のコイルおよび第2の支持部材の第2の例を示す図である。
図13図13は、インダクタンス調整装置の構成の第3の例を示す図である。
図14A図14Aは、第1のコイルおよび第1の支持部材の第3の例を示す図である。
図14B図14Bは、第2のコイルおよび第2の支持部材の第3の例を示す図である。
図15A図15Aは、インダクタンス調整装置の構成の第4の例を示す図である。
図15B図15Bは、図15Aのインダクタンス調整装置の給電端子が配置されている面の様子の一例を示す図である。
図16A図16Aは、第1のコイル、第2のコイル、第1のコイル、および第2のコイルの結線方法の第1の例を示す図である。
図16B図16Bは、第1のコイル、第2のコイル、第1のコイル、および第2のコイルの結線方法の第2の例を示す図である。
図16C図16Cは、第1のコイル、第2のコイル、第1のコイル、および第2のコイルの結線方法の第3の例を示す図である。
図16D図16Dは、第1のコイル、第2のコイル、第1のコイル、および第2のコイルの結線方法の第4の例を示す図である。
図17A図17Aは、第1のコイルおよび第1の支持部材の第5の例を示す図である。
図17B図17Bは、第2のコイルおよび第2の支持部材の第5の例を示す図である。
図18図18は、第1のコイルと第2のコイルとの接続を切り替えるための構成の一例を示す図である。
図19A図19Aは、インダクタンス調整装置が適用される電気回路の第1の例を示す図である。
図19B図19Bは、インダクタンス調整装置が適用される電気回路の第2の例を示す図である。
図19C図19Cは、インダクタンス調整装置が適用される電気回路の第3の例を示す図である。
図19D図19Dは、インダクタンス調整装置が適用される電気回路の第4の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態を説明する。
<インダクタンス調整装置の構成>
図1Aおよび図1Bは、本実施形態のインダクタンス調整装置の構成の一例を示す図である。尚、各図に示すX、Y、Z座標は、各図における向きの関係を示すものである。○の中に●が示されているものは、紙面の奥側から手前側に向かう方向を示す。○の中に×が示されているものは、紙面の手前側から奥側に向かう方向を示す。
【0018】
図1Aは、本実施形態のインダクタンス調整装置の構成の一例を示す図である。図1Bは、図1Aのインダクタンス調整装置の給電端子7a〜7dが配置されている面の様子の一例を示す図である。
【0019】
インダクタンス調整装置は、第1のコイル1と、第1の支持部材2と、第2のコイル3と、第2の支持部材4と、中心軸5と、駆動装置6と、給電端子7a〜7dと、給水端子8a〜8dと、筐体9とを有する。図1Aでは、筐体9の内部を透視して示す。尚、本実施形態のインダクタンス調整装置は、インダクタンスを調整するためのコアを有さない。
【0020】
図2Aは、第1のコイル1および第1の支持部材2の一例を示す図である。図2Bは、第2のコイル3および第2の支持部材4の一例を示す図である。図3Aは、或る状態の第1のコイル1と、当該状態から中心軸5を回動軸として180°回動した状態の第1のコイル1とを重ねて示す図である。図3Aでは、表記の都合上、これら2つの第1のコイル1の一方を実線で示し、他方を破線で示す。図3Bは、或る状態の第2のコイル3と、当該状態から中心軸5を回動軸として180°回動した状態の第2のコイル3とを重ねて示す図である。図3Bでも、図3Aと同様に、表記の都合上、これら2つの第2のコイル3の一方を実線で示し、他方を破線で示す。尚、後述するように第2のコイル3は回動しないが、図3Bでは、第2のコイル3が回動するものと仮定する。
【0021】
図2Aおよび図3Aは、図1Aにおいて、第1の支持部材2の第2の支持部材4と対向する面をZ軸に沿って見た図である。図2Bおよび図3Bは、図1Aにおいて、第2の支持部材4の第1の支持部材2と対向する面をZ軸に沿って見た図である。尚、図2Aおよび図2Bにおいて、第1のコイル1および第2のコイル3の中に示す矢印線は、同時刻における交流電流の向きである。第1のコイル1および第2のコイル3に流れる交流電流の向きについては、図4を参照しながら後述する。
【0022】
まず、第1のコイル1および第1の支持部材2について説明する。
第1の支持部材2は、第1のコイル1を支持するための部材である。第1のコイル1は、第1の支持部材2に取り付けられ、第1の支持部材2上で固定される。図2Aに示すように、第1の支持部材2には第1のコイル1が取り付けられるようにするための穴2a、2bが形成される。
【0023】
図2Aに示すように、第1の支持部材2の平面形状は、円形である。第1の支持部材2は、第1のコイル1のZ軸方向の位置が変化しないように第1のコイル1を支持できる強度を有し、且つ、絶縁性および非磁性を有する材料で形成される。第1の支持部材2は、例えば、熱硬化性樹脂を用いて形成される。
【0024】
図2Aに示すように、第1の支持部材2の中心には第1の支持部材2を中心軸5に取り付けられるようにするための穴2cが形成される。この穴2cに中心軸5を通すことにより、第1の支持部材2は、中心軸5と同軸になるように中心軸5に取り付けられ(固定され)、中心軸5の回動に伴い回動する。第1のコイル1は、第1の支持部材2により支持される。即ち、第1のコイル1は、第1の支持部材2上で固定される。このため、第1のコイル1は、第1の支持部材2の回動に伴い回動する。このように、第1のコイル1は、その回動軸と中心軸5とが同軸になるように配置される。
【0025】
図2Aにおいて、第1のコイル1は、第1の周回部1aと、第2の周回部1bと、第1の接続部1cと、第1の引出部1dと、第2の引出部1eとを有する。第1の周回部1a、第2の周回部1b、第1の接続部1c、第1の引出部1d、および第2の引出部1eは、一体である。
【0026】
本実施形態では、第1のコイル1の巻回数は1[回]である。また、本実施形態では、第1の周回部1a、第2の周回部1b、および第1の接続部1cによりアラビア数字の8の字の形状が形成される場合を例に挙げて説明する。尚、図3Aでは、表記の都合上、第1の引出部1dとおよび第2の引出部1eの図示を省略する。また、図3Aでは、重ねて示す2つの第1のコイル1のそれぞれに対し符号を付す。
【0027】
第1の周回部1aは、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第2の周回部1bも、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第1の周回部1aと第2の周回部1bは、同一の水平面(X−Y平面)に配置される。
第1の接続部1cは、第1の周回部1aの第1の端1fと、第2の周回部1bの第1の端1gとを相互に接続する部分であり、周回していない部分である。
【0028】
第1の引出部1dは、第1の周回部1aの第2の端1hに接続される。第1の周回部1aの第2の端1hは、穴2bの位置にある。第2の引出部1eは、第2の周回部1bの第2の端1iに接続される。第2の周回部1bの第2の端1iは、穴2aの位置にある。
【0029】
第1の引出部1dおよび第2の引出部1eは、第1のコイル1を外部と接続するための引き出し線となる。図2Aにおいて、第1の引出部1dおよび第2の引出部1eを破線で示しているのは、第1の引出部1dおよび第2の引出部1eが、図2Aに示す第1の支持部材2の面とは反対側の面にあることを示す。
【0030】
図3Aにおいて、第1のコイル1は、実線で示す状態から、中心軸5を回動軸として180°回動すると、破線で示す状態になる。
中心軸5は、穴2cに配置される。従って、中心軸5は、第1の周回部1aの中心1と、第2の周回部1bの中心1との中間の位置を含む位置に配置される。第1の周回部1aと第2の周回部1bは、穴2c(中心軸5)を介して反対側の位置にある。即ち、第1の周回部1aと第2の周回部1bは、第1のコイル1が回動する方向における角度が180°ずれた状態を保つように配置される。この角度は、穴2cの中心(中心軸5の軸芯)と、第1の周回部1aの中心1とを相互に最短距離で結ぶ仮想的な直線と、穴2cの中心(中心軸5の軸芯)と、第2の周回部1bの中心1とを相互に最短距離で結ぶ仮想的な直線とのなす角度である。尚、図3Aにおいて、第1の周回部1aの中心1と、第2の周回部1bの中心1は、仮想的に示す点であり、実在する点ではない。
【0031】
第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの形状および大きさは完全に同じであるのが最も好ましい。ただし、図2Aおよび図2Bに示すように、第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの形状および大きさを完全に同じにすることができない場合がある。
【0032】
第1のコイル1および第2のコイル3に交流電流を流した場合に、第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bのそれぞれの内部を貫く磁束の状態が、第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの形状および大きさが完全に同じである場合と大きく異ならなければ、第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの形状および大きさは完全に同じでなくてもよい。
【0033】
本発明者らは、第1〜第5の実施形態のインダクタンス調整装置を含む種々のインダクタンス調整装置について、第1のコイルおよび第2のコイルの大きさ、第1のコイルおよび第2のコイルのギャップ(Z軸方向の間隔)、第1のコイルおよび第2のコイルの形状等を変更し、可変倍率βを測定した。ただし、第1の周回部、第2の周回部、第3の周回部、および第4の周回部の形状および大きさは完全に同じにした。その結果、可変倍率βの範囲は、約2.3〜5.6倍であった。この範囲に対応する結合係数kの範囲は約0.4〜0.7になる。尚、結合係数kは、後述する(2)式で表される。そこで、第1のコイルおよび第2のコイル間の標準的な結合係数ksの値として、この範囲の平均値(=0.55(=(0.4+0.7)÷2))を採用する。この標準的な結合係数ksは、第1の周回部、第2の周回部、第3の周回部、および第4の周回部の形状および大きさとが完全に同じ場合の結合係数の代表値となる。
【0034】
ここで、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βの最低値βminを2.0と仮定する。合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βは、後述する(4)式で表される。この可変倍率βの最低値βmin(=2.0)を(4)式に代入すると、第1のコイルおよび第2のコイル間の結合係数の最低値kminは約0.33になる。この結合係数の最低値kmin(=0.33)を、標準的な結合係数ks(=0.55)で割ると、0.6(=0.33/0.55)になる。つまり、可変倍率βの最低値βmin(=2.0)を確保するには、結合係数の最低値kminとして0.33が必要になる。結合係数の最低値kminとして0.33を実現するためには、第1の周回部、第2の周回部、第3の周回部、および第4の周回部の形状および大きさが、それらの全長の60%の部分で同じであればよい。また、実用上、可変倍率βの最低値βminは、2.5が好ましく、3.0がより好ましい。これに対応するためには、前述したのと同様の計算の結果から、第1の周回部、第2の周回部、第3の周回部、および第4の周回部の形状および大きさが、それらの全長の78%の部分で同じになるのが好ましく、91%以上の領域で同じになるのがより好ましい。
【0035】
以上の観点から、第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの形状および大きさが、それらの全長の60%以上の部分で同じであれば、第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの形状および大きさは同じであるものとみなすことができる。ただし、以上の説明において、可変倍率βの最低値βminに応じて、60%は、78%であることが好ましく、91%であることがより好ましい。
【0036】
このことから、第1の周回部1aと第2の周回部1bの形状および大きさに関し、以下のことが言える。
第1のコイル1が中心軸5を回動軸として180°回動したときに、第1の周回部1aの全長の60%以上の長さの部分が、前記回動する前に第2の周回部1bがあった領域と重なる。第1の周回部1aの全長は、第1の周回部1aの第1の端1fから第2の端1hまでの長さである。
【0037】
図3Aにおいて、実線で示す状態から破線で示す状態になるものとすると、図3Aにおいて破線で下側に示す第1の周回部1aの全長の60%以上の長さの部分が、実線で下側に示す第2の周回部1bと重なる。
【0038】
また、第1のコイル1が中心軸5を回動軸として180°回動したときに、第2の周回部1bの全長の60%以上の長さの部分が、前記回動する前に第1の周回部1aがあった領域と重なる。第2の周回部1bの全長は、第2の周回部1bの第1の端1gから第2の端1iまでの長さである。
【0039】
図3Aにおいて、実線で示す状態から破線で示す状態になるものとすると、図3Aにおいて破線で上側に示す第2の周回部1bの全長の60%以上の長さの部分が、実線で上側に示す第1の周回部1aと重なる。
尚、前述したように、以上の説明において、可変倍率βの最低値βminに応じて、60%は、78%であることが好ましく、91%であることがより好ましい。
【0040】
次に、第2のコイル3および第2の支持部材4について説明する。
第2の支持部材4は、第2のコイル3を支持するための部材である。第2のコイル3は、第2の支持部材4に取り付けられ、第2の支持部材4上で固定される。図2Bに示すように、第2の支持部材4には第2のコイル3が取り付けられるようにするための穴4a、4bが形成される。
【0041】
図2Bに示すように、第2の支持部材4の平面形状は、矩形である。第2の支持部材4は、第2のコイル3のZ軸方向の位置が変化しないように第2のコイル3を支持できる強度を有し、且つ、絶縁性および非磁性を有する材料で形成される。第2の支持部材4は、例えば、熱硬化性樹脂を用いて形成される。
【0042】
図1Aに示すように、第2の支持部材4は、中心軸5と同軸になるように筐体9に取り付けられ、筐体9に固定される。図2Bに示すように、第2の支持部材4の中心には第2の支持部材4が中心軸5と同軸に配置されるようにするための穴4cが形成される。図1Aに示すように、穴4cに中心軸5を通した際に、第2の支持部材4が中心軸5と間隔を有するように、穴4cが形成される。このようにすることによって、中心軸5が回動しても第2の支持部材4は回動せずに、筐体9に固定された状態になる。
【0043】
図2Bにおいて、第2のコイル3は、第3の周回部3aと、第4の周回部3bと、第2の接続部3cと、第3の引出部3dと、第4の引出部3eとを有する。第3の周回部3a、第4の周回部3b、第2の接続部3c、第3の引出部3d、および第4の引出部3eは、一体である。
【0044】
本実施形態では、第2のコイル3の巻回数は1[回]である。また、本実施形態では、第3の周回部3a、第4の周回部3b、および第2の接続部3cによりアラビア数字の8の字の形状が形成される場合を例に挙げて説明する。尚、図3Bでは、表記の都合上、第3の引出部3dとおよび第4の引出部3eの図示を省略する。また、図3Bでは、重ねて示す2つの第2のコイル3のそれぞれに対し符号を付す。
【0045】
第3の周回部3aは、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第4の周回部3bも、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第3の周回部3aと第4の周回部3bは、同一の水平面(X−Y平面)に配置される。
【0046】
第2の接続部3cは、第3の周回部3aの第1の端3fと、第4の周回部3bの第1の端3gとを相互に接続する部分であり、周回していない部分である。
【0047】
第3の引出部3dは、第3の周回部3aの第2の端3hに接続される。第3の周回部3aの第2の端3hは、穴4aの位置にある。第4の引出部3eは、第4の周回部3bの第2の端3iに接続される。第4の周回部3bの第2の端3iは、穴4bの位置にある。
【0048】
第3の引出部3dおよび第4の引出部3eは、第2のコイル3を外部と接続するための引き出し線となる。図2Bにおいて、第3の引出部3dおよび第4の引出部3eを破線で示しているのは、第3の引出部3dおよび第4の引出部3eが、図2Bに示す第2の支持部材4の面とは反対側の面にあることを示す。
【0049】
前述したように本実施形態では、第2のコイル3は回動しない。しかしながら、図3Bでは、第2のコイル3が、中心軸5を回動軸として回動すると仮定する。そうすると、第2のコイル3は、実線で示す状態から、中心軸5を回動軸として180°回動して、破線で示す状態になる。
【0050】
中心軸5は、穴4cに配置される。従って、中心軸5は、第3の周回部3aの中心3jと、第4の周回部3bの中心3kとの中間の位置を含む位置に配置される。第3の周回部3aと第4の周回部3bは、穴4c(中心軸5)を介して反対側の位置にある。即ち、第3の周回部3aと第4の周回部3bは、第1のコイル1が回動する方向における角度が180°ずれた状態を保つように配置される。この角度は、穴4cの中心(中心軸5の軸芯)と、第3の周回部3aの中心3jとを相互に最短距離で結ぶ仮想的な直線と、穴4cの中心(中心軸5の軸芯)と、第4の周回部3bの中心3kとを相互に最短距離で結ぶ仮想的な直線とのなす角度である。尚、図3Bにおいて、第3の周回部3aの中心3jと、第4の周回部3bの中心3kは、仮想的に示す点であり、実在する点ではない。
【0051】
前述したように、中心軸5は、第1の周回部1aの中心1jと、第2の周回部1bの中心1kとの中間の位置を含む位置と、第3の周回部3aの中心3jと、第4の周回部3bの中心3kとの中間の位置を含む位置とに配置される。従って、中心軸5は、第1の周回部1aの中心1jと、第2の周回部1bの中心1kとの中間の位置と、第3の周回部3aの中心3jと、第4の周回部3bの中心3kとの中間の位置とを通る。図1Aに示す例では、中心軸5は、Z軸方向に延びる。
【0052】
また、第3の周回部3aと第4の周回部3bの形状および大きさに関し、以下のことが言える。
第2のコイル3が中心軸5を回動軸として180°回動すると仮定したときに、第3の周回部3aの全長の60%以上の長さの部分が、前記回動する前に第4の周回部3bがあった領域と重なる。第3の周回部3aの全長は、第3の周回部3aの第1の端3fから第2の端3hまでの長さである。
【0053】
図3Bにおいて、実線で示す状態から破線で示す状態になるものと仮定すると、図3Bにおいて破線で上側に示す第3の周回部3aの全長の60%以上の長さの部分が、実線で上側に示す第4の周回部3bと重なる。
【0054】
また、第2のコイル3が中心軸5を回動軸として180°回動すると仮定したときに、第4の周回部3bの全長の60%以上の長さの部分が、前記回動する前に第3の周回部3aがあった領域と重なる。第4の周回部3bの全長は、第4の周回部3bの第1の端3gから第2の端3iまでの長さである。
【0055】
図3Bにおいて、実線で示す状態から破線で示す状態になるものとすると、図3Bにおいて破線で下側に示す第4の周回部3bの全長の60%以上の長さの部分が、実線で下側に示す第3の周回部3aと重なる。
尚、以上の説明において、可変倍率βの最低値βminに応じて、60%は、78%であることが好ましく、91%であることがより好ましい。
【0056】
次に、第1のコイル1と第2のコイル3の位置関係について説明する。
図4は、第1のコイル1と第2のコイル3の位置関係の一例を示す図である。図4の一番上には、第1のコイル1と第2のコイル3による合成インダクタンスGLが最小値になるときの第1のコイル1と第2のコイル3の配置を示す。図4の一番下には、第1のコイル1と第2のコイル3による合成インダクタンスGLが最大値になるときの第1のコイル1と第2のコイル3の配置を示す。図4の真ん中には、第1のコイル1と第2のコイル3による合成インダクタンスGLが中間値(最小値を上回り最大値を下回る値)になるときの第1のコイル1と第2のコイル3の配置を示す。
【0057】
図4において、表記の都合上、第1のコイル1を実線で示し、第2のコイル3を破線で示す。また、図4において、実線、破線で示す矢印線は、それぞれ、第1のコイル1、第2のコイル3に流れる交流電流の(同時刻における同一の方向から見た場合の)向きを示す。
【0058】
図4の一番下に示す状態を第1の状態とする。また、図4の一番上に示す状態を第2の状態とする。
図4の一番下に示すように、第1の状態は、第1のコイル1の第1の周回部1aと、第2のコイル3の第3の周回部3aとが相互に対向する位置にあり、且つ、第1のコイル1の第2の周回部1bと、第2のコイル3の第4の周回部3bとが相互に対向する位置にある状態である。
【0059】
図4の一番上に示すように、第2の状態は、第1のコイル1の第1の周回部1aと、第2のコイル3の第4の周回部3bとが相互に対向する位置にあり、且つ、第1のコイル1の第2の周回部1bと、第2のコイル3の第3の周回部3aとが相互に対向する位置にある状態である。
【0060】
ここで、第1の周回部1aおよび第2の周回部1bの形状および大きさと、第3の周回部3aおよび第4の周回部3bの形状および大きさに関し、以下のことが言える。
【0061】
図4の一番下に示す第1の状態において、第1のコイル1および第2のコイル3を中心軸5に沿う方向(Z軸方向)から見た場合に、第1の周回部1aの全長の60%以上の長さの部分と、第3の周回部3aの全長の60%以上の長さの部分とが相互に重なる。また、第1の状態において、第1のコイル1および第2のコイル3を中心軸5に沿う方向(Z軸方向)から見た場合に、第2の周回部1bの全長の60%以上の長さの部分と、第4の周回部3bの全長の60%以上の長さの部分とが相互に重なる。
【0062】
図4の一番上に示す第2の状態において第1のコイル1および第2のコイル3を中心軸5に沿う方向(Z軸方向)から見た場合に、第1の周回部1aの全長の60%以上の長さの部分と、第4の周回部3bの全長の60%以上の長さの部分とが相互に重なる。また、第2の状態において第1のコイル1および第2のコイル3を中心軸5に沿う方向(Z軸方向)から見た場合に、第2の周回部1bの全長の60%以上の長さの部分と、第3の周回部3aの全長の60%以上の長さの部分とが相互に重なる。
尚、以上の説明において、可変倍率βの最低値βminに応じて、60%は、78%であることが好ましく、91%であることがより好ましい。
【0063】
ここで、第1の接続部1cおよび第2の接続部3cの長さは、第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの長さに比べて短い。従って、第1のコイル1(第1の周回部1a、第2の周回部1b、および第1の接続部1c)および第2のコイル3(第3の周回部3a、第4の周回部3b、および第2の接続部3c)の形状および大きさが、それらの全長の60%以上(好ましくは78%以上、より好ましくは91%以上)の部分で同じであるとしても実質的な相違はない。従って、前述した説明において、第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの形状および大きさに替えて、第1のコイル1(第1の周回部1a、第2の周回部1b、および第1の接続部1c)および第2のコイル3(第3の周回部3a、第4の周回部3b、および第2の接続部3c)の形状および大きさで前述した規定をしてもよい。
【0064】
次に、第1のコイル1および第2のコイル3を構成する部材について説明する。
本実施形態では、第1のコイル1および第2のコイル3を、水冷ケーブルを用いて形成する。水冷ケーブルは、例えば、ホースと、当該ホース内に通された電線とを有する。ホースも電線も可撓性を有するものとする。従って、第1のコイル1および第2のコイル3も可撓性を有する。尚、ホースは、絶縁性を有する材料で構成される。また、電線は、1本で構成しても、複数本で構成してもよい。複数本で電線を構成する場合、例えば、電線をリッツ線とすることができる。
【0065】
次に、インダクタンス調整装置における第1のコイル1および第2のコイル3の配置について説明する。
本実施形態では、図1Aに示すように、第1のコイル1および第2のコイル3を配置した際に、第1のコイル1および第2のコイル3のコイル面が、一定の間隔Gを有した状態で平行になるようにする。間隔Gの大きさは、例えば、インダクタンス調整装置で変更可能なインダクタンスの最大値等に応じて設定することができる。第1のコイル1のコイル面とは、第1の周回部1aおよび第2の周回部1bで囲まれる領域における水平面(X−Y平面)である。第2のコイル3のコイル面とは、第3の周回部3aおよび第4の周回部3bで囲まれる領域における水平面(X−Y平面)である。
【0066】
前述したように中心軸5は、第1のコイル1を回動させるためのものである。中心軸5は、ベアリング等を介して筺体9に回動可能に取り付けられる。駆動装置6は、中心軸5を回動させるための駆動源であり、モータ等を有する。
【0067】
次に、第1のコイル1および第2のコイル3の接続について説明する。
給電端子7a〜7dは、不図示の交流電源回路から供給される交流電力を、第1のコイル1および第2のコイル3に供給するための端子である。図1Aおよび図1Bに示すように、給電端子7a〜7dは、その先端側の領域が露出するように、筐体9に取り付けられる(固定される)。
【0068】
本実施形態では、第1のコイル1の両端部のうち、第1の支持部材2の穴2aから引き出される一端部(第2の周回部1bの第2の端1i)は、給電端子7aに接続される。一方、第1のコイル1の両端部のうち、第1の支持部材2の穴2bから引き出される他端部(第1の周回部1aの第2の端1h)は給電端子7dに接続される。
【0069】
また、第2のコイル3の両端部のうち、第2の支持部材4の穴4aから引き出される一端部(第3の周回部3aの第2の端3h)は、給電端子7bに接続される。一方、第2のコイル3の両端部のうち、第2の支持部材4の穴4bから引き出される他端部(第4の周回部3bの第2の端3i)は、給電端子7cに接続される。
【0070】
不図示の交流電源回路は、給電端子7a、7cに電気的に接続される。また、給電端子7b、7dは、相互に電気的に接続される。
以上のようにすることによって、第1のコイル1と第2のコイル3とは直列に接続される。即ち、交流電源回路から供給される交流電流は、「交流電源回路→給電端子7a→第1のコイル1→給電端子7d→給電端子7b→第2のコイル3→給電端子7c→交流電源回路」の経路と、「交流電源回路→給電端子7c→第2のコイル3→給電端子7b→給電端子7d→第1のコイル1→給電端子7a→交流電源回路」の経路とを交互に流れる。
【0071】
図2Aに示すように、第1のコイル1の第1の周回部1aおよび第2の周回部1bの中心軸5側の直線部分に(同時刻に)流れる交流電流の(同一の方向から見たときの)向きは、同じになる(図2Aの第1のコイル1内に付している矢印線を参照)。同様に、図2Bに示すように、第2のコイル3の第3の周回部3aおよび第4の周回部3bの中心軸5側の直線部分に(同時刻に)流れる交流電流の(同一の方向から見たときの)向きは、同じになる(図2Bの第2のコイル3内に付している矢印線を参照)。
【0072】
給電端子7a〜7dは、空洞部を有する。以上のようにして第1のコイル1および第2のコイル3を給電端子7a〜7dに接続するに際し、この空洞部と、第1のコイル1および第2のコイル3を構成するホースの内部とが連通する。
【0073】
給水端子8a〜8dは、不図示のポンプ等を用いて供給される冷却水を、第1のコイル1および第2のコイル3内に供給するための端子である。尚、第1のコイル1および第2のコイル3内とは、第1のコイル1および第2のコイル3を構成するホースの内部のことである。給水端子8a〜8dは、空洞部を有する。給電端子7a〜7dの空洞部と給水端子8a〜8dの空洞部とが相互に連通するように、給水端子8a〜8dは、それぞれ給電端子7a〜7dの先端側の領域(筐体9から露出している領域)に取り付けられる。
【0074】
給水端子8b、8dは不図示のホースにより相互に接続される。一方、給水端子8a、8cには、冷却水を供給するための不図示のホースがそれぞれ取り付けられる。冷却水は、この給水端子8a、8cに取り付けられたホースを通して、給水端子8a、8cに対して流出入する。
【0075】
以上のようにすることで、第1のコイル1および第2のコイル3内に冷却水の流路を形成することができる。従って、第1のコイル1および第2のコイル3を冷却することができ、第1のコイル1および第2のコイル3に大電流を流すことができる。例えば、100[A]以上の電流、好ましくは500[A]以上の電流を第1のコイル1および第2のコイル3に流すことができる。
【0076】
<インダクタンスの調整>
次に、図4図5A図5B図6A図6Bを参照しながら、インダクタンス調整装置におけるインダクタンスの調整方法の一例を説明する。インダクタンス調整装置におけるインダクタンスは、第1のコイル1と第2のコイル3による合成インダクタンスGLである。第1のコイル1と第2のコイル3による合成インダクタンスGLは、前述した交流電源回路から見た場合のインダクタンスであるものとする。また、以下の説明では、第1のコイル1と第2のコイル3による合成インダクタンスGLを、必要に応じて、合成インダクタンスGLと略称する。
【0077】
図5A図5B図6A図6Bは、第1のコイル1と第2のコイル3に交流電流を流すことにより生じる磁束の向きの一例を示す図である。図5A図5Bでは、第1のコイル1と第2のコイル3を示す回路記号と共に磁束の向きを示す。図6A図6Bでは、インダクタンス調整装置に配置された状態の第1のコイル1と第2のコイル3と共に磁束の向きを示す。
【0078】
図5A図6Aは、合成インダクタンスGLが最小値になるときの磁束の向きを示す図である。図5B図6Bは、合成インダクタンスGLが最大値になるときの磁束の向きを示す図である。
【0079】
図5Aおよび図5Bにおいて、第1のコイル1と第2のコイル3に付している矢印は、交流電流の向きを示す。また、第1のコイル1と第2のコイル3を貫く矢印線は、磁束の向きを示す。図6Aおよび図6Bにおいて、○の中に●、×が示されているものは、交流電流の向きを示す。○の中に●が示されているものは、紙面の奥側から手前側に向かう方向を示し、○の中に×が示されているものは、紙面の手前側から奥側に向かう方向を示す。また、図6Aにおいて破線で示す矢印線と、図6Bにおいて矢印と共に実線で示すループは、磁束の向きを示す。
【0080】
図4の一番上に示す第2の状態では、第1のコイル1の第1の周回部1aと第2のコイル3の第4の周回部3bとが相互に対向し、第1のコイル1の第2の周回部1bと第2のコイル3の第3の周回部3aとが相互に対向する。そして、第1のコイル1の第1の周回部1aと第2のコイル3の第4の周回部3bに流れる交流電流の向きは逆向きである。同様に、第1のコイル1の第2の周回部1bと第2のコイル3の第3の周回部3aに流れる交流電流の向きは逆向きである。
【0081】
従って、図5Aに示すように、第1のコイル1および第2のコイル3から発生する磁束は相互に弱め合う。この場合の合成インダクタンスGLは、第1のコイル1の自己インダクタンスをL1、第2のコイル3の自己インダクタンスをL2、第1のコイル1および第2のコイル3の相互インダクタンスをMとすると、以下の(1)式で表される。
GL=L1+L2−2M ・・・(1)
【0082】
(1)式で表される合成インダクタンスGLが、合成インダクタンスGLの最小値になる。
ここで、第1のコイル1および第2のコイル3の相互インダクタンスMは、第1のコイル1および第2のコイル3間の結合係数をkとすると、以下の(2)式で表される。
M=±k√(L1・L2) ・・・(2)
結合係数kは、第1のコイル1および第2のコイル3の形状、大きさ、相対位置で決まるものであり、0≦k≦1の関係がある。k=1は漏れ磁束がない場合であるが実際には漏れ磁束が発生するので結合係数kは1未満の値となる。
このとき、第1のコイル1および第2のコイル3に交流電流を流すことにより発生する磁束は、図6Aに示すようになる。
【0083】
図4の一番下に示す第1の状態は、図4の一番上に示す第2状態から、第1のコイル1を180°回動させた状態である。この第1の状態では、第1のコイル1の第1の周回部1aと第2のコイル3の第3の周回部3aとが相互に対向し、第1のコイル1の第2の周回部1bと第2のコイル3の第4の周回部3bとが相互に対向する。そして、第1のコイル1の第1の周回部1aと第2のコイル3の第3の周回部3aに流れる交流電流の向きは同じである。同様に、第1のコイル1の第2の周回部1bと第2のコイル3の第4の周回部3bに流れる交流電流の向きは同じ向きである。
【0084】
従って、図5Bに示すように、第1のコイル1および第2のコイル3から発生する磁束は相互に強め合う。この場合の合成インダクタンスGLは、以下の(3)式で表される。
GL=L1+L2+2M ・・・(3)
(3)式で表される合成インダクタンスGLが、合成インダクタンスGLの最大値になる。
【0085】
以上のように、図4の一番上に示す第2の状態から、第1のコイル1を180°回動させると、図4の一番下に示す第1の状態になる。第1のコイル1を回動させることにより、第1のコイル1と第2のコイル3に流れる交流電流の向きを同じにしたり逆にしたりすることができる。
【0086】
従って、図4の一番上に示す第2の状態のときの第1のコイル1の回動角度を0°とすると、0°〜180°の範囲内で第1のコイル1を回動させれば、合成インダクタンスGLを最小値から最大値まで変化させることができる。よって、本実施形態では、駆動装置6により、0°〜180°の範囲内で第1のコイル1を回動させるものとする。尚、特に断りのない限り、以下に示す第1のコイル1の回動角度も、図4の一番上に示す第2の状態のときの第1のコイル1の回動角度を0°とした場合の角度であるものとする。
【0087】
図4の真ん中に示す状態は、図4の一番上に示す状態と図4の一番下に示す状態との間の状態である。従って、この状態での合成インダクタンスGLは、(3)式で示す最大値と(1)式で示す最小値との間の値を示す。この値は、第1のコイル1の回動角度に応じて定まる。
本実施形態では、このようにして第1のコイル1を回動させて合成インダクタンスGLを変えることにより、インダクタンス調整装置が接続される電気回路のインダクタンスをオンラインで調整することができる。
【0088】
第1のコイル1の回角度を0°〜180°の間で連続的に変えた場合、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βは、第1のコイル1の回角度が180°の場合の合成インダクタンスGLを、第1のコイル1の回角度が0°の場合の合成インダクタンスGLで除した値で表される。従って、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βは、以下の(4)式で表される。
β=(2L+2M)÷(2L−2M)=(2L+2kL)÷(2L−2kL)=(1+k)÷(1−k) ・・・(4)
【0089】
ただし、ここでは、説明を簡単にするために、第1のコイル1と第2のコイル3の自己インダクタンスL1、L2をL(L1=L2=L)とする。この場合、第1のコイル1および第2のコイル3間の結合係数kは、以下の(5)式で表される。
M=±k√(L1・L2)=±k√(L・L)=±kL ・・・(5)
【0090】
例えば、k=0.5であると仮定すると、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βは、3倍(β=(1+0.5)÷(1−0.5)=3)になる。例えば、k=0.5倍以上であれば、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βを3以上にすることができる。第1のコイル1および第2のコイル3間の結合係数kを大きくすることにより、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βを大きくすることができる。従って、第1のコイル1および第2のコイル3間の結合係数kが大きくなるように、第1のコイル1および第2のコイル3の形状、大きさ、相対位置を決めるのが好ましい。
【0091】
以上のように本実施形態では、第1のコイル1を回動させることにより、合成インダクタンスGLを調整する。従って、特許文献1に記載の技術のように、ソレノイドコイル内の磁性体の占有率を変える必要も、特許文献2に記載の技術のようにコイルを伸縮する必要もない。よって、インダクタンス調整装置の構造を簡素にすることができると共に、インダクタンス調整装置をコンパクトにすることができる。これにより、インダクタンス調整装置のコストの削減につながる。
【0092】
また、前述したように、第1のコイル1と第2のコイル3のコイル面は平行である。また、第1のコイル1(第1の周回部1aと第2の周回部1b)と、第2のコイル3(第3の周回部3aと第4の周回部3b)は、それぞれ中心軸5を介して反対側の位置(2回対称となる位置)に配置される。また、第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの大きさおよび形状は同じである。従って、第1のコイル1と第2のコイル3に大電流が流れ、第1のコイル1と第2のコイル3間に吸引力や反発力が生じても、第1のコイル1の両サイド(第1の周回部1a側および第2の周回部1b側)と、第2のコイル3の両サイド(第3の周回部3a側および第4の周回部3b側)とで、前述した反発力や吸引力のバランスがとれる。従って、特許文献3に記載のようにコイル端を支持する構造である場合に比べ、前述した反発力や吸引力によってコイルが動くことを容易に抑制することができる。よって、第1の支持部材2、第2の支持部材4は、Z軸方向の位置が可及的にずれないように、第1のコイル1、第2のコイル3を支持できる強度を有していればよい。このため、第1の支持部材2および第2の支持部材4の強度の設計を容易にすることができる。
【0093】
また、特許文献3に記載の技術では、2つのコイルは、それぞれ、同軸の周回部を1つしか有しない。従って、一方のコイルに対する他方のコイルの回動角度が90°よりも大きくなると、2つのコイルが重ならなくなる。このため、2つのコイルの相互インダクタンスの大きさの変化の割合(単位角度当たりの変化)が小さくなる。従って、インダクタンスの変化は、回動角度の対数に比例する。
【0094】
これに対し本実施形態では、第1のコイル1の回動角度が0°〜90°の範囲と90°〜180°の範囲とで、第1のコイル1と第2のコイル3の相互インダクタンスMを、符号以外は同じように変化させることができる。従って、合成インダクタンスGLの大きさと第1のコイル1の回動角度との関係が、特許文献3に記載の技術よりも良好な線形の関係を示す。よって、周波数の制御を高精度に行うことができる。
【0095】
図7Aは、本実施形態のインダクタンス調整装置におけるインダクタンスと回動角度との関係の一例を示す図である。ここで、インダクタンスは、合成インダクタンスGLであり、回動角度は、第1のコイル1の回動角度である。図7Bは、特許文献3に記載の技術におけるインダクタンスと回動角度との関係の一例を示す図である。ここで、インダクタンスは、特許文献3に記載の2つのコイルの合成インダクタンスであり、回動角度は、当該2つのコイルがコイル端を軸として回動する角度の絶対値の和である。
【0096】
図7Aに示すように、本実施形態のインダクタンス調整装置では、回動角度の変化に対するインダクタンスの変化の割合(即ち、図7Aに示すグラフの傾き)は、回動角度に関わらず概ね一定になる。これに対し、特許文献3に記載の技術では、回動角度が小さいときには、回動角度の変化に対するインダクタンスの変化の割合が大きくなる。そして、回動角度が大きくなるにつれて、回動角度の変化に対するインダクタンスの変化の割合が小さくなる。従って、特許文献3に記載の技術では、インダクタンスの調整が容易でなくなる。
【0097】
<変形例>
[変形例1]
((変形例1−1))
第1の周回部、第2の周回部、および第1の接続部により形成される形状は、アラビア数字の8の字状に限定されない。同様に、第3の周回部、第4の周回部、および第2の接続部により形成される形状も、アラビア数字の8の字状に限定されない。例えば、図8Aおよび図8Bのようにしてもよい。
【0098】
図8Aは、第1のコイル81および第1の支持部材82の第1の変形例を示す図である。図8Bは、第2のコイル83および第2の支持部材84の第1の変形例を示す図である。図8Aは、図2Aに対応する図であり、図8Bは、図2Bに対応する図である。
【0099】
第1の支持部材82は、第1のコイル81を支持するための部材である。第1のコイル81は、第1の支持部材82に取り付けられ、第1の支持部材82上で固定される。図8Aに示すように、第1の支持部材82には第1のコイル81が取り付けられるようにするための穴82a、82bが形成される。また、第1の支持部材82の中心には第1の支持部材82を中心軸5に取り付けられるようにするための穴82cが形成される。第1のコイル81および第1の支持部材82は、第1の支持部材82の回動に伴い回動する。第1の支持部材82は、図2Aに示した第1の支持部材2と同じもので実現することができる。
【0100】
第1のコイル81は、第1の周回部81aと、第2の周回部81bと、第1の接続部81cと、第1の引出部81dと、第2の引出部81eとを有する。第1の周回部81a、第2の周回部81b、第1の接続部81c、第1の引出部81d、および第2の引出部81eは、一体である。
【0101】
第1の周回部81aは、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第2の周回部81bも、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第1の周回部81aと第2の周回部81bは、同一の水平面(X−Y平面)に配置される。
【0102】
第1の接続部81cは、第1の周回部81aの第1の端81fと、第2の周回部81bの第1の端81gとを相互に接続する部分であり、周回していない部分である。
第1の引出部81dは、第1の周回部81aの第2の端81hに接続される。第1の周回部81aの第2の端81hは、穴82bの位置にある。第2の引出部81eは、第2の周回部81bの第2の端81iに接続される。第2の周回部81bの第2の端81iは、穴82aの位置にある。
【0103】
第2の支持部材84は、第2のコイル83を支持するための部材である。第2の支持部材84は、中心軸5と同軸になるように筐体9に取り付けられ、筐体9に固定される。第2のコイル83は、第2の支持部材84に取り付けられ、第2の支持部材84上で固定される。図8Bに示すように、第2の支持部材84には第2のコイル83が取り付けられるようにするための穴84a、84bが形成される。また、第2の支持部材84の中心には第2の支持部材84が中心軸5と同軸に配置されるようにするための穴84cが形成される。穴84cに中心軸5を通した際に、第2の支持部材84が中心軸5と間隔を有するように、穴84cが形成される。このようにすることによって、中心軸5が回動しても第2の支持部材84は回動せずに、筐体9に固定された状態になる。第2の支持部材84は、図2Bに示した第2の支持部材4と同じもので実現することができる。
【0104】
第2のコイル83は、第3の周回部83aと、第4の周回部83bと、第2の接続部83cと、第3の引出部83dと、第4の引出部83eとを有する。第3の周回部83a、第4の周回部83b、第2の接続部83c、第3の引出部83d、および第4の引出部83eは、一体である。
【0105】
第3の周回部83aは、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第4の周回部83bも、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第3の周回部83aと第4の周回部83bは、同一の水平面(X−Y平面)に配置される。
【0106】
第2の接続部83cは、第3の周回部83aの第1の端83fと、第4の周回部83bの第1の端83gとを相互に接続する部分であり、周回していない部分である。
第3の引出部83dは、第3の周回部83aの第2の端83hに接続される。第3の周回部83aの第2の端83hは、穴84aの位置にある。第4の引出部83eは、第4の周回部83bの第2の端83iに接続される。第4の周回部83bの第2の端83iは、穴84bの位置にある。
【0107】
尚、第1の周回部、第2の周回部、第3の周回部、および第4の周回部の最外周の輪郭の形状は、その他の形状(例えば、真円、楕円、矩形)であってもよい。
【0108】
((変形例1−2))
第1の周回部および第2の周回部の接続と、第3の周回部および第4の周回部の接続は、図2Aおよび図2Bに示す接続に限定されない。即ち、第1の周回部および第2の周回部を流れる交流電流の向きと、第3の周回部および第4の周回部を流れる交流電流の向きは、図2Aおよび図2Bに示す向きに限定されない。
【0109】
図9Aは、第1のコイル91および第1の支持部材92の第2の変形例を示す図である。図9Bは、第2のコイル93および第2の支持部材94の第2の変形例を示す図である。図9Aは、図2Aに対応する図であり、図9Bは、図2Bに対応する図である。
【0110】
第1の支持部材92は、第1のコイル91を支持するための部材である。第1のコイル91は、第1の支持部材92に取り付けられ、第1の支持部材92上で固定される。図9Aに示すように、第1の支持部材92には第1のコイル91が取り付けられるようにするための穴92a、92bが形成される。また、第1の支持部材92の中心には第1の支持部材92を中心軸5に取り付けられるようにするための穴92cが形成される。第1のコイル91および第1の支持部材92は、第1の支持部材92の回動に伴い回動する。第1の支持部材92は、図2Aに示した第1の支持部材2と同じもので実現することができる。
【0111】
第1のコイル91は、第1の周回部91aと、第2の周回部91bと、第1の接続部91cと、第1の引出部91dと、第2の引出部91eとを有する。第1の周回部91a、第2の周回部91b、第1の接続部91c、第1の引出部91d、および第2の引出部91eは、一体である。
【0112】
第1の周回部91aは、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第2の周回部91bも、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第1の周回部91aと第2の周回部91bは、同一の水平面(X−Y平面)に配置される。
【0113】
第1の接続部91cは、第1の周回部91aの第1の端91fと、第2の周回部91bの第1の端91gとを相互に接続する部分であり、周回していない部分である。
第1の引出部91dは、第1の周回部91aの第2の端91hに接続される。第1の周回部91aの第2の端91hは、穴92bの位置にある。第2の引出部91eは、第2の周回部91bの第2の端91iに接続される。第2の周回部91bの第2の端91iは、穴92aの位置にある。
【0114】
第2の支持部材94は、第2のコイル93を支持するための部材である。第2の支持部材94は、中心軸5と同軸になるように筐体9に取り付けられる(固定される)。第2のコイル93は、第2の支持部材94に取り付けられ、第2の支持部材94上で固定される。図9Bに示すように、第2の支持部材94には第2のコイル93が取り付けられるようにするための穴94a、94bが形成される。また、第2の支持部材94の中心には第2の支持部材4が中心軸5と同軸に配置されるようにするための穴94cが形成される。穴94cに中心軸5を通した際に、第2の支持部材94が中心軸5と間隔を有するように、穴94cが形成される。このようにすることによって、中心軸5が回動しても第2の支持部材94は回動せずに、筐体9に固定された状態になる。第2の支持部材94は、図2Bに示した第2の支持部材4と同じもので実現することができる。
【0115】
第2のコイル93は、第3の周回部93aと、第4の周回部93bと、第2の接続部93cと、第3の引出部93dと、第4の引出部93eとを有する。第3の周回部93a、第4の周回部93b、第2の接続部93c、第3の引出部93d、および第4の引出部93eは、一体である。
【0116】
第3の周回部93aは、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第4の周回部93bも、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第3の周回部93aと第4の周回部93bは、同一の水平面(X−Y平面)に配置される。
【0117】
第2の接続部93cは、第3の周回部93aの第1の端93fと、第4の周回部93bの第1の端93gとを相互に接続する部分であり、周回していない部分である。
第3の引出部93dは、第3の周回部93aの第2の端93hに接続される。第3の周回部93aの第2の端93hは、穴94aの位置にある。第4の引出部93eは、第4の周回部93bの第2の端93iに接続される。第4の周回部93bの第2の端93iは、穴94bの位置にある。
【0118】
図2A図2Bに示す構成では、図2A図2Bの紙面に向かって、同時刻において、第1の周回部1aでは左回りに電流が流れ、第2の周回部1bでは右回りに電流は流れ、第3の周回部3aでは右回りに電流が流れ、第4の周回部3bでは左回りに流れる。従って、2つの周回部(第1の周回部1aと第2の周回部1b、第3の周回部3aと第4の周回部3b)に流れる電流の向きは逆向きである。
【0119】
これに対し、図9A図9Bに示す構成では、図9A図9Bの紙面に向かって、同時刻において、第1の周回部91aおよび第2の周回部91bでは右回りに電流が流れ、第3の周回部93aおよび第4の周回部93bでは左回りに電流が流れる。従って、2つの周回部(第1の周回部91aおよび第2の周回部91b、第3の周回部93aおよび第4の周回部93b)に流れる電流の向きは同じ向きである(図9Aおよび図9Bにおいて第1のコイル91および第2のコイル93の傍らに示す矢印線を参照)。図9A図9Bに示す場合の合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βは、図2A図2Bに示す構成の場合と異なるが、合成インダクタンスGLを変化させる原理は、図2A図2Bおよび図9A図9Bに示す何れの構成でも同じである。
【0120】
[変形例2]
本実施形態では、中心軸5を回動させることにより、中心軸5に取り付けられた第1のコイル1を回動させる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、第1のコイル1と第2のコイル3の少なくとも何れか一方を、中心軸5と略同軸で回動させるようにしていれば、必ずしもこのようにする必要はない。
【0121】
例えば、駆動装置6の替わりに、第1のコイル1が中心軸5と略同軸で回動するように第1の支持部材2を回動させる駆動装置を設けてもよい。即ち、駆動装置を中心軸5ではなく第1の支持部材2に取り付けてもよい。
【0122】
また、第1のコイル1に加え、第2のコイル3を回動させてもよい。この場合、第2の支持部材4を中心軸5と同軸で回動させる駆動装置が必要になる。このようにする場合、第1のコイル1の第1の方向(例えば右回り)における回動角度の絶対値と、第2のコイル3の第2の方向(第1の方向とは反対方向、例えば左回り)における回動角度の絶対値の合計の範囲を0°〜180°にするのが好ましい(即ち、当該合計の最大値を180°にするのが好ましい)。このようにすれば、第1のコイル1および第2のコイル3の双方を回動させることにより、図4の一番下に示す第1の状態と、図4の一番上に示す第2の状態と、それらの状態の間の状態とを連続的に得ることができる。
【0123】
[変形例3]
本実施形態では、第1のコイル1と第2のコイル3とが直列に接続される場合を例に挙げて説明した。しかしながら、第1のコイル1と第2のコイル3とを並列に接続してもよい。例えば、第1のコイル1の両端部のうち、第1の支持部材2の穴2aから引き出される一端部(第2の周回部1bの第2の端1i)と、第2のコイル3の両端部のうち、第2の支持部材4の穴4aから引き出される一端部(第3の周回部3aの第2の端3h)とを相互に電気的に接続すると共に、第1のコイル1の両端部のうち、第1の支持部材2の穴2bから引き出される他端部(第1の周回部1aの第2の端1h)と、第2のコイル3の両端部のうち、第2の支持部材4の穴4bから引き出される他端部(第4の周回部3bの第2の端3i)とを相互に電気的に接続することができる。このようにする場合、これら接続した部分に、不図示の交流電源回路から交流電力が供給されるようにする。例えば、第1のコイル1の両端部のうち、第1の支持部材2の穴2aから引き出される一端部と、第2のコイル3の両端部のうち、第2の支持部材4の穴4aから引き出される一端部とを給電端子7aに接続し、第1のコイル1の両端部のうち、第1の支持部材2の穴2bから引き出される他端部と、第2のコイル3の両端部のうち、第2の支持部材4の穴4bから引き出される他端部とを給電端子7bに接続し、不図示の交流電源回路を給電端子7a、7bに接続することができる。
【0124】
第1のコイル1と第2のコイル3とを並列に接続した場合、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βは、これらを直列に接続した場合と変わらない(β=(1+k)÷(1−k))。一方、合成インダクタンスGLの可変範囲は、(2L−2kL)÷4〜(2L+2kL)÷4=(L−kL)÷2〜(L+kL)÷2となる。即ち、第1のコイル1と第2のコイル3を直列回路から並列回路に変更した場合、合成インダクタンスGLは1/4倍になる。ただし、ここでは、説明を簡単にするため、第1のコイル1と第2のコイル3の自己インダクタンスL1、L2をLとする。
【0125】
[変形例4]
本実施形態では、第1のコイル1および第2のコイル3のコイル面が一定の間隔Gを有した状態で相互に略平行になるようにする場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はなく、第1のコイル1および第2のコイル3の少なくとも何れか一方をZ軸方向に動かすことにより、間隔Gを可変にしてもよい。
【0126】
図10は、インダクタンス調整装置の変形例の構成を示す図である。
図10に示すように、第1の支持部材2が中心軸5のZ軸方向における位置を変えられるように、第1の支持部材2が中心軸5に取り付けられる(図10の白抜き矢印線と、破線で示す第1のコイル1および第1の支持部材2を参照)。例えば、ユーザが手動で第1の支持部材2のZ軸方向における位置を調整することができるように、第1の支持部材2を中心軸5に取り付ける。このようにする場合の一例を説明すると、第1の支持部材2が中心軸5上を動くようにすると共に、第1の支持部材2を固定する取付具(治具)を用意する。ユーザは、取付具を用いて第1の支持部材2を中心軸5上の任意の位置で固定する。また、駆動装置6が、中心軸5を回動させることに加えて第1の支持部材2をZ軸方向に動かすことができるように各部を構成してもよい。この場合、駆動装置6は、インダクタンス調整装置が適用される電気回路が動作しているときに、第1の支持部材2をZ軸方向に動かすことができる。
【0127】
[変形例5]
本実施形態では、第1のコイル1および第2のコイル3を、水冷ケーブルを用いて構成する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、銅管等を用いて第1のコイル1および第2のコイル3の形状をパイプ状にしてもよい。このようにする場合、第1のコイル1および第2のコイル3の中空部分に冷却水を流す。また、第1のコイル1および第2のコイル3の引出部(第1の引出部1d、第2の引出部1e、第3の引出部3d、第4の引出部3e)を、可撓性を有する導電体で構成するのが好ましい。この場合、当該導電体は、第1のコイル1、第2のコイル3の第2の端1h、1i、3h、3iに電気的に接続される。
また、例えば、インダクタンス調整装置が適用される電気回路に大電流を流さない場合には、第1のコイル1および第2のコイル3を水冷する必要はない。
【0128】
[変形例6]
本実施形態では、0°〜180°の範囲内で第1のコイル1を回動させる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、第1のコイル1の回動角度の範囲は、0°〜180°に限定されない。例えば、第1のコイル1の第1の方向(例えば右回り)における回動角度の絶対値と、第2のコイル3の第2の方向(例えば左回り)における回動角度の絶対値の合計の範囲を0°〜360°にしてもよい。このようにする場合、例えば、第2のコイル3を回動させずに、第1のコイル1の回動角度の範囲を0°〜360°にすることができる。尚、変形例2で説明したように、第1のコイル1および第2のコイル3の双方を回動してもよい。また、図4の一番下に示す第1の状態と、図4の一番上に示す第2の状態との両方または片方の状態にならないようにしてもよい。
【0129】
[変形例7]
本実施形態のように、図4の一番下に示す第1の状態と、図4の一番上に示す第2の状態とが含まれるように第1のコイル1を回動させるようにすれば、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βを大きくすることができるので好ましい。しかしながら、これら2つの状態の少なくとも何れか一方の状態が含まれていなくてよい。
[変形例8]
以上の変形例1〜8の2つ以上(一部または全部)を組み合わせてもよい。
【0130】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を説明する。第1の実施形態では、第1のコイル1および第2のコイル3の巻回数がそれぞれ1[回]である場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、第1のコイルおよび第2のコイルの巻回数が複数回である場合について説明する。このように本実施形態と第1の実施形態は、第1のコイルおよび第2のコイルの巻回数が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1図10に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0131】
<第1の例>
図11は、本実施形態のインダクタンス調整装置の構成の第1の例を示す図である。図11は、図1Aに対応する図である。図12Aは、第1のコイル111および第1の支持部材112の一例を示す図である。図12Bは、第2のコイル113および第2の支持部材114の一例を示す図である。図12Aは、図2Aに対応する図であり、図12Bは、図2Bに対応する図である。
【0132】
本例では、図11図12A、および図12Bに示すように、第1のコイル111および第2のコイル113の巻回数をそれぞれ2回とし、同じ巻回数とする。また、図11図12A、および図12Bに示すように、第1のコイル111および第2のコイル113の形状を平巻き形状とする。ここで、平巻きとは、図11図12A、および図12Bに示すように、第1のコイル111、第2のコイル113の軸(中心軸5)に垂直な方向において水冷ケーブルを巻き回すことをいう。言い換えると、第1のコイル111、第2のコイル113を構成する水冷ケーブルが、第1のコイル111、第2のコイル113の軸(中心軸5)に垂直な方向に並ぶように、当該水冷ケーブルが巻き回される。
【0133】
このように平巻き形状にすれば、第1のコイル111と第2のコイル113を、それらのコイル面が間隔Gを有して相互に略平行になるように配置したときに、図11に示すコイル幅Wを広くすることができる。コイル幅Wとは、相互に隣接する冷却ケーブル群の、中心軸5に垂直な方向の長さである。間隔Gが同じであれば、コイル幅Wが広いほど、間隔Gの間を磁束が通りづらくなり、磁気抵抗が大きくなる。従って、結合係数kを大きくすることができる。このため、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βを大きくすることができる((4)式を参照)。言い換えると、平巻き形状にした場合、巻回数が多いほど、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βを大きくすることができる。
【0134】
<第2の例>
図13は、本実施形態のインダクタンス調整装置の構成の第2の例を示す図である。図13は、図1Aに対応する図である。図14Aは、第1のコイル131および第1の支持部材132の一例を示す図である。図14Bは、第2のコイル133および第2の支持部材134の一例を示す図である。図14Aは、図2Aに対応する図であり、図14Bは、図2Bに対応する図である。
【0135】
本例では、図13図14A、および図14Bに示すように、第1のコイル131および第2のコイル133の巻回数をそれぞれ2回とし、同じ巻回数とする。また、図13図14A、および図14Bに示すように、第1のコイル131および第2のコイル133の形状を縦巻き形状とする。ここで、縦巻きとは、図13図14A、および図14Bに示すように、第1のコイル11、第2のコイル13の軸(中心軸5)に沿う方向に水冷ケーブルを巻き回すことをいう。言い換えると、第1のコイル131、第2のコイル133を構成する水冷ケーブルが、第1のコイル131、第2のコイル133の軸(中心軸5)に沿う方向に並ぶように、当該水冷ケーブルが巻き回される。
【0136】
このように縦巻き形状にした場合には、コイル幅Wは、巻回数が1回の場合と同じである。従って、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βは、巻回数が1回の場合と同じであり、平巻き形状にした場合よりも小さい。しかしながら、合成インダクタンスGLは、巻回数の2乗に比例する。従って、平巻き形状、縦巻き形状の形態に関係なく、コイルの巻回数が1回の場合に比べ、合成インダクタンスGLを大きくすることができる。また、コイルの面積を大きくすることで、合成インダクタンスGLを大きくすることができる。
【0137】
<変形例>
本実施形態では、巻回数が2回である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、巻回数は2回に限定されず、3回以上であってもよい。巻回数は、インダクタンス調整装置の大きさ、可変倍率β、合成インダクタンスGLの大きさ、インダクタンス調整装置のコスト等に応じて決めればよい。また、本実施形態では、第1のコイル111の巻回数と、第1のコイル131の巻回数とが同じである場合を例に挙げて説明した。しかしながら、これらの巻回数は異なっていてもよい。
また、本実施形態においても、第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0138】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を説明する。本実施形態では、第1のコイルと第2のコイルの組を複数組設ける。このように本実施形態と第1、第2の実施形態は、第1のコイルと第2のコイルの組の数が異なることによる構成が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1、第2の実施形態と同一の部分については、図1図14Bに付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0139】
図15A図15Bは、本実施形態のインダクタンス調整装置の構成の一例を示す図である。図15Aは、図11に対応する図であり、図15Bは、図1Bに対応する図である。図15Aでは、図11に示した第1のコイル111、第1の支持部材112、第2のコイル113、および第2の支持部材114の組を2組設けた場合を例に挙げて示す。即ち、本実施形態のインダクタンス調整装置は、第1のコイル111a、第1の支持部材112a、第2のコイル113a、および第2の支持部材114aの組と、第1のコイル111b、第1の支持部材112b、第2のコイル113b、および第2の支持部材114bの組とを有する。
【0140】
図16A図16Dは、第1のコイル111a、第2のコイル113a、第1のコイル111b、および第2のコイル113bの結線方法の一例を示す図である。図16A図16Dは、図5A図5Bに対応する図である。
図16A図16B図16Cは、第1のコイル111a、第2のコイル113a、第1のコイル111b、第2のコイル113bを直列に接続する例を示す。
【0141】
図16Aでは、第1のコイル111aおよび第2のコイル113aから発生する磁束と、第1のコイル111bおよび第2のコイル113bから発生する磁束とがそれぞれ強め合うような接続を示す。図16Bでは、第1のコイル111aおよび第2のコイル113aから発生する磁束と、第1のコイル111bおよび第2のコイル113bから発生する磁束とがそれぞれ弱め合うような接続を示す。図16Cでは、第1のコイル111aおよび第2のコイル113aから発生する磁束が強め合い、第1のコイル111bおよび第2のコイル113bから発生する磁束が弱め合うような接続を示す。
【0142】
図16Dは、第1のコイル111aおよび第2のコイル113aを直列に接続し、第1のコイル111bおよび第2のコイル113bを直列に接続し、これら直列に接続した第1のコイル111aおよび第2のコイル113aと、第1のコイル111bおよび第2のコイル113bとを並列に接続する例を示す。
尚、図16A図16に示す回路の両端が交流電源回路に接続される。
【0143】
また、第1のコイル111a、第2のコイル113a、第1のコイル111b、および第2のコイル113bの結線方法は、直列または並列に接続された第1のコイルおよび第2のコイルの組が、その他の組と直列または並列に接続されるようにしていれば、図16A図16に示すものに限定されない。例えば、第1のコイル111a、第2のコイル113a、第1のコイル111b、および第2のコイル113bを並列に接続してもよい。
【0144】
図15Bに示すように本実施形態のインダクタンス調整装置は、給電端子1507a〜1507hと給水端子1508a〜1508hとを有する。第1のコイル111a、第2のコイル113a、第1のコイル111b、および第2のコイル113bの結線方法に応じて、第1のコイル111a、第2のコイル113a、第1のコイル111b、および第2のコイル113bの端部は、給電端子1507a〜1507hの何れかに電気的に接続される。
以上のようにすれば、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βを大きくすることができる。
【0145】
<変形例>
本実施形態では、第2の実施形態の第1の例(図11に示す構成)の第1のコイル111および第2のコイル113の組を2組設ける場合を例に挙げて説明した。しかしながら、第1の実施形態(図1A図2Bに示す構成)、第2の実施形態の第2の例(図13図14Bに示す構成)において、第1のコイル1、131および第2のコイル3、133の組を2組設けてもよい。
【0146】
また、第1のコイルおよび第2のコイルの組の数は、2組に限定されず、3組以上であってもよい。第1のコイルおよび第2のコイルの組数をN組とした場合、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βを、(L−kL)÷2N〜(L+kL)×2Nの範囲で切り替えることができる。尚、ここでは、説明を簡単にするため、第1のコイルと第2のコイルの自己インダクタンスL1、L2をLとする。第1のコイルおよび第2のコイルの組の数を増やすことによって、より汎用的なインダクタンス調整装置を実現することができる。従って、インダクタンス調整装置のコストの削減につながる。
【0147】
また、本実施形態は、第1の実施形態および第2の実施形態の何れに対しても適用することができる。更に、本実施形態においても、第1、第2の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0148】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態を説明する。第1〜第3の実施形態では、第1のコイルと第2のコイルを、それらの軸(中心軸5)に垂直な方向において1つずつ配置する場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、第1のコイルと第2のコイルを、それらの軸(中心軸5)に垂直な方向においてそれぞれ複数配置する場合について説明する。このように本実施形態と第1〜第3の実施形態は、中心軸5に垂直な方向において配置する第1のコイルおよび第2のコイルの数が異なることによる構成が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1〜第3の実施形態と同一の部分については、図1図16Dに付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0149】
図17Aは、第1のコイル171a、171bおよび第1の支持部材172の構成の一例を示す図である。図17Bは、第2のコイル173a、173bおよび第2の支持部材174の構成の一例を示す図である。図17Aは、図2Aに対応する図であり、図17Bは、図2Bに対応する図である。
【0150】
第1のコイル171a、171bは、その回動軸と中心軸5とが同軸になるように配置される。また、第1のコイル171a、171bは、同一の水平面(X−Y平面)に配置される。また、第1のコイル171a、171bは、それらの回動方向における角度が90°ずれた状態を保つように配置される。
同様に、第2のコイル173a、173bは、その回動軸と中心軸5とが同軸になるように配置される。また、第2のコイル173a、173bは、同一の水平面(X−Y平面)に配置される。また、第2のコイル173a、173bは、第1のコイル171a、171bの回動方向における角度が90°ずれた状態を保つように配置される。
【0151】
また、第1〜第3の実施形態で説明したように、第1のコイル171a、171bおよび第2のコイル173a、173bを配置した際に、第1のコイル171a、171bのコイル面および第2のコイル173a、173bのコイル面が、間隔Gを有した状態で、平行になるようにする。間隔Gは、一定であっても可変であってもよい。
【0152】
図17Aに示すように、第1の支持部材172には、第1のコイル171aが取り付けられるようにするための穴172a、172bが形成される。また、第1の支持部材172には、第1のコイル171bが取り付けられるようにするための穴172c〜172fが形成される。穴172e、172fは、第1のコイル171a、171bが図17Aに示す面上で相互に干渉しないように、第1のコイル171bの第1のコイル171aと重なる部分を、図17Aに示す面とは反対側の面に配置するためのものである。また、第1の支持部材172の中心には第1の支持部材172が中心軸5に取り付けられるようにするための穴172gが形成される。
【0153】
図17Bに示すように、第2の支持部材174には、第2のコイル173aが取り付けられるようにするための穴174a、174bが形成される。また、第2の支持部材174には、第2のコイル173bが取り付けられるようにするための穴174c〜174fが形成される。穴174e、174fは、第2のコイル173a、173bが図17Bに示す面上で相互に干渉しないように、第2のコイル173bの第2のコイル173aと重なる部分を、図17Bに示す面とは反対側の面に配置するためのものである。また、第2の支持部材174の中心には第2の支持部材174が中心軸5と略同軸に配置されるようにするための穴174gが形成される。穴174gに中心軸5を通した際に、第2の支持部材174が中心軸5と間隔を有するように、穴174gが形成される。
【0154】
第1〜第3の実施形態では、第1のコイル1、81、91、111、131の回動角度の範囲を0°〜180°とする。これに対し、本実施形態では、以上のように構成することで、第1のコイル171a、171bの回動角度の範囲を0°〜90°にしても、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βを、第1〜第3の実施形態のインダクタンス調整装置の値と同じにすることができる。
【0155】
このように第1のコイル171a、171bの回動角度の範囲を小さくすることにより、第1のコイル171a、171bを構成する水冷ケーブルを大きく変形させることを抑制する。従って、第1のコイル171a、171bの可撓性に余裕ができ、第1のコイル171a、171bを回動させるための制御精度を向上させることができる。
【0156】
ただし、第1の実施形態の変形例6で説明したのと同様に、第1のコイル171a、171bの回動角度の範囲は0°〜90°に限定されない。例えば、第1のコイル171a、171bの回動角度の範囲は、0°〜180°であってもよい。
【0157】
<変形例>
本実施形態では、中心軸5に垂直な方向において配置する第1のコイル171a、171bおよび第2のコイル173a、173bの数が2つである場合を例に挙げて説明した。しかしながら、中心軸5に垂直な方向において配置する第1のコイルおよび第2のコイルの数は、3以上であってもよい。中心軸5に垂直な方向において配置する第1のコイルおよび第2のコイルの数をN(Nは2以上の整数)とし、第1のコイルの回動方向における角度が90/(N/2)°ずれた状態を保つようにすれば、第1のコイルの回動角度の範囲を0°〜180/N°にすることができる。
【0158】
また、本実施形態は、第1〜第3の実施形態の何れに対しても適用することができる。更に、本実施形態においても、第1〜第3の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0159】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態を説明する。第1〜第4の実施形態では、第1のコイル1、81、91、111、131、171a、171bと、第2のコイル3、83、93、113、133、173a、173bとを直列または並列に接続し、その接続を変更しない場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、第1のコイルと第2のコイルとの接続を自動的に変更する。このように本実施形態と第1〜第4の実施形態は、第1のコイルと第2のコイルとの接続の切り替えの有無が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1〜第4の実施形態と同一の部分については、図1図17Bに付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0160】
図18は、第1のコイル1と第2のコイル3との接続を切り替えるための構成の一例を示す図である。
図18に示すように、本実施形態のインダクタンス調整装置は、第1の実施形態で説明したインダクタンス調整装置に対し、制御装置181と、接点切替器182とを更に有する。制御装置181と、接点切替器182とを用いることにより、第1のコイルと第2のコイルとの接続を自動的に変更する切り替え装置が構成される。
【0161】
接点切替器182は、接点182a〜182cを有する。制御装置181は、接点切替器182に対し、切替指示信号を出力する。この切替指示信号には、接点182a〜182cのそれぞれを開および閉の何れにするのかを示す情報が含まれる。接点切替器182は、制御装置181から出力された切替指示信号に含まれる情報に従って、接点182a〜182cを開または閉にする。図18に示す例では、接点182a、182bが開き、接点182cが閉じると、第1のコイル1および第2のコイル3は直列に接続される。一方、接点182a、182bが閉じ、接点182cが開くと、第1のコイル1および第2のコイル3は並列に接続される。図18では、第1のコイル1および第2のコイル3が直列に接続されている状態を示す。
【0162】
尚、切替指示信号は、制御装置181に対するオペレータによる指示に基づいて生成され、接点切替器182に送信されるようにしても、予め設定されたスケジュールに基づいて生成され、接点切替器182に送信されるようにしてもよい。また、その他の方法で切替指示信号が生成されてもよい。
【0163】
また、図18に示す例では、接点切替器182の出力端182d、182eと給電端子とが相互に電気的に接続される。従って、図1に示す給電端子7a〜7dの何れかと接点切替器182の出力端182d、182eとを相互に電気的に接続すればよい。また、この場合、給電端子の数は4つである必要はなく、2つあればよい。
【0164】
以上のようにすれば、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βを、(L−kL)÷2〜(L+kL)×2の範囲で切り替えることができる。ただし、ここでは、説明を簡単にするため、第1のコイル1と第2のコイル3の自己インダクタンスL1、L2をLとする。第1のコイル1と第2のコイル3との接続を、直列接続から並列接続に切り替えることと、並列接続から直列接続に切り替えることとを行うことにより、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βを、第1の実施形態に比べ増加させることができる。従って、インダクタンス調整装置を、より多くの適用箇所、より多様な目的に適用することができる。よって、より汎用的なインダクタンス調整装置を実現することができ、インダクタンス調整装置のコストの削減につながる。
【0165】
<変形例>
本実施形態は、第1〜第4の実施形態の何れに対しても適用することができる。また、1つのコイル(第1のコイル、第2のコイル)の単位で、コイルの接続を、直列接続および並列接続の何れかに切り替えることができる。例えば、第1のコイルが2つあり、第2のコイルが2つある場合、2つの第1のコイルを直列または並列に接続することと、2つの第2のコイルを直列または並列に接続することと、それら直列または並列に接続された2つの第1のコイルおよび2つの第2のコイルを直列または並列に接続することとを行うことができる。
更に、本実施形態においても、第1〜第4の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0166】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態を説明する。インダクタンス調整装置を電気回路内に接続する場合、特許文献1に開示されているように、コンデンサと加熱コイルとの間に、加熱コイルと直列または並列にインダクタンス調整装置を接続するのが一般的である。加熱コイルと直列にインダクタンス調整装置を接続する場合、インダクタンス調整装置には、加熱コイルへの印加電圧に加えてインダクタンス調整装置の印加電圧が加算された電位がかかる。このため、インダクタンス調整装置の絶縁破壊等のトラブルが発生しないように、絶縁強化が必要であり、インダクタンス調整装置が高価になる。また、加熱コイルと並列にインダクタンス調整装置を接続する場合には、インダクタンス調整装置に流れる電流を小さくするために、例えば、加熱コイルのインダクタンスの10倍程度に、インダクタンス調整装置のインダクタンスを大きくする必要がある。このため、インダクタンス調整装置を構成するコイルおよび磁性体の損失が大きくなる。
【0167】
そこで、本実施形態では、第1〜第5の実施形態で説明したインダクタンス調整装置を、共振電流に対して誘導性負荷と直列に接続し、当該誘導性負荷を含む電気回路が通電された際に、当該インダクタンス調整装置にかかる電位を低減するための構成の一例を説明する。また、本実施形態では、電気回路が動作しているときに、第1のコイルおよび第2のコイルの少なくとも何れか1つの回動を、当該電気回路が共振回路となるように行うための構成を説明する。本実施形態のインダクタンス調整装置は、第1〜第5の実施形態のインダクタンス調整装置の構成に対し、第1のコイルおよび第2のコイルに直列に接続されるコンデンサを更に有する。以下の説明では、このコンデンサを必要に応じて電圧降下補償用コンデンサと称する。また、本実施形態のインダクタンス調整装置は、第1〜第5の実施形態のインダクタンス調整装置の構成に対し、第1のコイルおよび第2のコイルの少なくとも何れか1つの回動を行うための制御を行う制御装置を更に有する。
【0168】
このように本実施形態のインダクタンス調整装置は、第1〜第5の実施形態のインダクタンス調整装置に対し、電圧降下補償用コンデンサと、制御装置とを追加したものとなる。従って、本実施形態の説明において、第1〜第5の実施形態と同一の部分については、図1図18に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。尚、前記において、インダクタンス調整装置を、共振電流に対して誘導性負荷と直列に接続するとは、インダクタンス調整装置を共振回路に電気的に接続することにより、共振電流が分岐しないようにインダクタンス調整装置を共振回路に接続することをいう。
【0169】
図19A図19Dは、インダクタンス調整装置の接続例を示す図である。ここでは、誘導加熱装置にインダクタンス調整装置を接続する場合を例に挙げて説明する。誘導加熱装置は、加熱コイルに交流電流を流すことにより発生する磁界が、鋼板等の金属板を貫くことにより発生する渦電流により、当該金属板を誘導加熱する。
【0170】
図19A図19Dでは、表記の都合上、相互に電気的に接続された第1のコイルおよび第2のコイルをコイル191aとして纏めて示す。コイル191aの一端は電圧降下補償用コンデンサ191bの一端に電気的に接続される。従って、電圧降下補償用コンデンサ191bは、第1のコイルおよび第2のコイルに電気的に接続される。コイル191aの他端と、電圧降下補償用コンデンサ191bの他端とが、インダクタンス調整装置の外部と接続される。従って、図19A図19Dに示す例では、コイル191aの他端および電圧降下補償用コンデンサ191bの他端が給電端子7a〜7dの何れかに電気的に接続される。また、第5の実施形態のインダクタンス調整装置に電圧降下補償用コンデンサ191bを設ける場合には、前述した説明において、コイル191aの一端、他端が、それぞれ接点切替器182の出力端182d、182eに置き換わる。
【0171】
本実施形態では、交流電源回路として、電流型インバータ192aまたは電圧型インバータ192bの何れかを用いる場合を例に挙げて説明する。
図19Aに示す第1の例では、電流型インバータ192aと、変圧器193と、共振用コンデンサ194と、加熱コイル195とを有する誘導加熱装置にインダクタンス調整装置191を接続する。図19Aに示す第1の例では、電流型インバータ192aから見た場合に、共振用コンデンサ194と加熱コイル195とが並列に接続され、共振用コンデンサ194と加熱コイル195との間にインダクタンス調整装置191が接続される。図19Aに示す第1の例では、並列共振で発生する大電流が加熱コイル195に流れることにより誘導加熱が行われる。共振電流Iは、インダクタンス調整装置191、共振用コンデンサ194、加熱コイル195を巡回する経路を流れる。
【0172】
図19Bに示す第2の例では、電圧型インバータ192bと、変圧器193と、共振用コンデンサ196a、196bと、加熱コイル195とを有する誘導加熱装置にインダクタンス調整装置191を接続する。図19Bに示す第2の例では、電圧型インバータ192bから見た場合に、共振用コンデンサ196a、196bと加熱コイル195とが直列に接続され、共振用コンデンサ196aと加熱コイル195との間にインダクタンス調整装置191が接続される。図19Bに示す第2の例では、直列共振で発生する大電流が加熱コイル195に流れることにより誘導加熱が行われる。共振電流Iは、インダクタンス調整装置191、共振用コンデンサ196a、変圧器193(の2次巻線)、共振用コンデンサ196b、加熱コイル195を巡回する経路を流れる。
【0173】
図19Aおよび図19Bに示す第1、第2の例において、コイル191aのインダクタンスは、前述した合成インダクタンスGLである。また、共振用コンデンサ194の静電容量と、共振用コンデンサ196a、196bの合成静電容量とをそれぞれC2とし、電圧降下補償用コンデンサ191bの静電容量をC1とし、加熱コイル195のインダクタンスをLLとする。そうすると、コイル191aのインダクタンス(即ち、合成インダクタンスGL)と、加熱コイル195のインダクタンスLLとの合成インダクタンスLTは、以下の(6)式で表される。また、共振用コンデンサ194の静電容量C2または共振用コンデンサ196a、196bの合成静電容量C2と、電圧降下補償用コンデンサ191bの静電容量C1との合成静電容量CTは、以下の(7)式で表される。そうすると、共振周波数fは、以下の(8)式で表される。
LT=GL+LL ・・・(6)
CT=C1・C2/(C1+C2) ・・・(7)
f=1/2π√(LT・CT) ・・・(8)
【0174】
図19Cに示す第3の例では、電流型インバータ192aと、変圧器193と、加熱コイル195とを有する誘導加熱装置にインダクタンス調整装置191を接続する。図19Cに示す第3の例では、電流型インバータ192aから見た場合に、インダクタンス調整装置191と加熱コイル195とが並列に接続される。図19Cに示す第3の例では、並列共振で発生する大電流が加熱コイル195に流れることにより誘導加熱が行われる。共振電流Iは、インダクタンス調整装置191、加熱コイル195を巡回する経路を流れる。
【0175】
図19Dに示す第4の例では、電圧型インバータ192bと、変圧器193と、加熱コイル195とを有する誘導加熱装置にインダクタンス調整装置191を接続する。図19Dに示す第4の例では、電圧型インバータ192bから見た場合に、インダクタンス調整装置191と加熱コイル195とが直列に接続される。図19Dに示す第4の例では、直列共振で発生する大電流が加熱コイル195に流れることにより誘導加熱が行われる。共振電流Iは、インダクタンス調整装置191、加熱コイル195、変圧器193(の2次巻線)を巡回する経路を流れる。
【0176】
図19Cおよび図19Dに示す第3、第4の例において、コイル191aのインダクタンス(即ち、合成インダクタンスGL)と、加熱コイル195のインダクタンスをLLの合成インダクタンスLTは、前述した(6)式で表される。そうすると、共振周波数fは、以下の(9)式で表される。
f=1/2π√(LT・C1) ・・・(9)
【0177】
前述したようにインダクタンス調整装置191の合成インダクタンスGLは、第1のコイルの回動等により自動的に連続的に変化させることができる。従って、電源を切ることなく(即ち、電流型インバータ192aや電圧型インバータ192bの動作を止めることなく)、共振回路におけるインダクタンスを連続的に変えることができる。よって、誘導加熱装置を安定して運転することができる。電圧降下補償用コンデンサの静電容量C1は、インダクタンス調整装置191の合成インダクタンスGLの遅れ分を補償が可能なように以下の(10)式に従い選定することができる。
C1=1/{(2πf)・GL} ・・・(10)
【0178】
(10)式における合成インダクタンスGLとしては、インダクタンス調整装置191における合成インダクタンスGLの代表値を採用する。インダクタンス調整装置191における合成インダクタンスGLの代表値は、例えば、インダクタンス調整装置191における合成インダクタンスGLの可変範囲(最大値と最小値)の1/2の値(即ち平均値)である。また、(10)式におけるfは、共振周波数である。
【0179】
また、共振電流Iに対して加熱コイル195と直列にインダクタンス調整装置191を接続する場合には、インダクタンス調整装置191には、加熱コイル195の印加電圧(=V2)に加えてインダクタンス調整装置191の印加電圧(=V1−V2)が加算された電位がかかる。このため、インダクタンス調整装置の高電圧対策(絶縁対策)を行うと、インダクタンス調整装置が非常に高価となる。この高電圧になる原因は、誘導性負荷である加熱コイル195に流れる遅れ電流により、インダクタンス調整装置191の電圧降下分が、加熱コイル195の印加電圧に加算されるためである。
【0180】
そこで、本実施形態では、図19A図19Bに示すように、コイル191の負荷側に、電圧降下補償用コンデンサ191bを直列に接続する。このようにすることにより、この遅れ電流によるインダクタンス調整装置191の電圧降下分を補償する。これにより、インダクタンス調整装置191の印加電圧が低くなり、インダクタンス調整装置191に対し高電圧対策を施す必要がなくなる。その結果、インダクタンス調整装置191を低コストで実現することができる。
【0181】
制御装置197は、加熱コイル195のインダクタンスの値を監視する。制御装置197は、加熱コイル195のインダクタンスの値に応じて、インダクタンス調整装置191における合成インダクタンスGLを変更する。インダクタンス調整装置191における合成インダクタンスGLの変更は、第1のコイルおよび第2のコイルの少なくとも何れか一方を回動することにより行われる。このとき、制御装置197は、加熱コイル195に流れる電流の周波数が共振周波数fになるように、インダクタンス調整装置191における合成インダクタンスGLを変更する。このようにして、加熱コイル195を含む電気回路が共振回路になる。
【0182】
第1のコイルおよび第2のコイルの少なくとも何れか一方の回動角度を決定する方法は、例えば、以下のようになる。まず、第1のコイルおよび第2のコイルの少なくとも何れか一方の回動角度と、インダクタンス調整装置191における合成インダクタンスGLとの関係を予め調査する。制御装置197は、この関係を示す情報を記憶する。制御装置197は、加熱コイル195のインダクタンスの値に応じて、共振周波数fにするためのインダクタンス調整装置191における合成インダクタンスGLの値を計算する。そして、制御装置197は、計算した値に対応する回動角度を、前記関係から導出する。
【0183】
尚、本実施形態においても、第1〜第5の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
また、各実施形態において、設計上の公差の範囲内であれば、大きさの違いや、向きのズレはないものと見なすことができる。
【0184】
(実施例)
次に、実施例を説明する。
<実施例1>
本実施例では、第1の実施形態のインダクタンス調整装置を用いた。
第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの形状は図2Aおよび図2Bに示す形状である。第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの長手方向の長さを300mmとし、短手方向の長さを150mmとした。
【0185】
45sqのリッツ線をホースに通したものを第1のコイル1および第2のコイル3とし、第1のコイル1および第2のコイル3を直列に接続した。第1のコイル1および第2のコイル3に1500A、35kHzの交流電流を流し、第1のコイル1および第2のコイル3から発生する磁界が最も弱め合う状態(図4の一番上に示す第2の状態)のときの第1のコイル1の回動角度を0°として第1のコイル1を0°〜180°の範囲で30°ピッチで回動させた場合の合成インダクタンスGLと、インダクタンス調整装置の電力損失を測定した。その結果を以下に示す。
【0186】
合成インダクタンスGLの最小値(0°):0.59μH
合成インダクタンスGLの最大値(180°):1.93μH
可変倍率β=1.93/0.59≒3.27倍
電力損失W=4.3kW
また、第1のコイル1の回角度と合成インダクタンスGLとの関係は略比例関係になった。
【0187】
<比較例1>
実施例1の比較例となるインダクタンス調整装置として、水冷銅管により3ターンのソレノイドコイルを作成し、当該ソレノイドコイル内に、特許文献1に記載のように磁性コアを配置したものを作製した。このソレノイドコイルに1500A、35kHzの交流電流を流した状態で、磁性コアのソレノイドコイルにおける占有率を変え、インダクタンス調整装置のインダクタンスと、インダクタンス調整装置の電力損失とを測定した。その結果を以下に示す。
【0188】
インダクタンスの最小値:0.025μH
インダクタンスの最大値:0.08μH
可変倍率β=0.08/0.025≒3.3倍
電力損失W=131kW
以上のように実施例1と比較例1とでは、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βは略同等であるが、比較例1では、電力損失Wが実施例1の約30倍になった。
【0189】
<実施例2>
本実施例では、第2の実施形態の第1の例のインダクタンス調整装置を用いた。
第1の周回部、第2の周回部、第3の周回部、および第4の周回部の形状は図12Aおよび図12Bに示す形状である。第1の周回部、第2の周回部、第3の周回部、および第4の周回部の長手方向の長さを300mm、短手方向の長さを150mmとした。また、第1のコイル111および第2のコイル113の巻回数を2回とした。
【0190】
ホースに45sqのリッツ線を通したものを第1のコイル111および第2のコイル113とし、第1のコイル111および第2のコイル113を直列に接続した。第1のコイル111および第2のコイル113に1500A、35kHzの交流電流を流し、第1のコイル111および第2のコイル113から発生する磁界が最も弱め合う状態の第1のコイル111の回動角度を0°として第1のコイル111を0°〜180°の範囲で30°ピッチで回動させた場合の合成インダクタンスGLと、インダクタンス調整装置の電力損失を測定した。その結果を以下に示す。
【0191】
合成インダクタンスGLの最小値(0°):2.23μH
合成インダクタンスGLの最大値(180°):7.70μH
可変倍率β=7.70/2.23≒3.45倍
電力損失W=8.45kW
また、第1のコイル111の回角度と合成インダクタンスGLとの関係は略比例関係になった。
【0192】
本実施例では、実施例1に比べて、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βが大きくなり、また、本実施例でも、比較例1に比べ、電力損失を大幅に低減することができた。
【0193】
<実施例3>
本実施例では、第2の実施形態の第2の例のインダクタンス調整装置を用いた。
第1の周回部、第2の周回部、第3の周回部、および第4の周回部の形状は図13図14A、および図14Bに示す形状である。第1の周回部、第2の周回部、第3の周回部、および第4の周回部の長手方向の長さを300mm、短手方向の長さを150mmとした。また、第1のコイル131および第2のコイル133の巻回数を2回とした。
【0194】
ホースに45sqのリッツ線を通したものを第1のコイル131および第2のコイル133とし、第1のコイル131および第2のコイル133を直列に接続した。第1のコイル131および第2のコイル133に1500A、35kHzの交流電流を流し、第1のコイル131および第2のコイル133から発生する磁界が最も弱め合う状態の第1のコイル131の回動角度を0°として第1のコイル131を0°〜180°の範囲で30°ピッチで回動させた場合の合成インダクタンスGLと、インダクタンス調整装置の電力損失を測定した。その結果を以下に示す。
【0195】
合成インダクタンスGLの最小値(0°):2.69μH
合成インダクタンスGLの最大値(180°):7.56μH
可変倍率β=7.56/2.69≒2.8倍
電力損失W=8.63kW
また、第1のコイル131の回角度と合成インダクタンスGLとの関係は略比例関係になった。
【0196】
本実施例では、縦巻き形状の第1のコイル131および第2のコイル133を用いているので、実施例2に比べて、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βは小さくなるが、その値は、実用上問題のないレベルである。また、比較例1に比べ、電力損失を大幅に低減することができた。
【0197】
<実施例4>
本実施例では、第1のコイル111および第2のコイル113を並列に接続した他は、実施例2と同じ条件で合成インダクタンスGLと、インダクタンス調整装置の電力損失を測定した。その結果を以下に示す。
【0198】
合成インダクタンスGLの最小値(0°):0.56μH
合成インダクタンスGLの最大値(180°):1.93μH
可変倍率β=1.93/0.56≒3.45倍
電力損失W=8.6kW
また、第1のコイル111の回角度と合成インダクタンスGLとの関係は略比例関係になった。
【0199】
本実施例では、実施例1に比べて、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βが大きくなった。また、本実施例でも、比較例1に比べ、電力損失を大幅に低減することができた。また、本実施例と実施例2とを比較すると、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βは同じであるが、本実施例では、合成インダクタンスGLの大きさが実施例2の1/4になった。従って、第5の実施形態のようにしてインダクタンス調整装置を構成して、第1のコイル111および第2のコイル113の接続を切り替えることにより、合成インダクタンスGLの範囲を広げることができる。
【0200】
<実施例5>
本実施例では、図19Aに示す誘導加熱装置に接続されるインダクタンス調整装置191にかかる電位(=V1)を以下の条件で計算した。その結果、V1≒5kVとなった。
【0201】
・電気定数条件
加熱コイル195のインダクタンスLL=5.7μH
共振用コンデンサ194の静電容量C2=3.66μF
合成インダクタンスGL=8.5μH
電圧降下補償用コンデンサ191bの静電容量C1=2.43μF
ただし、(10)式において、GLを8.5μH、共振周波数fを35kHzとして電圧降下補償用コンデンサ191bの静電容量C1を概算した。
【0202】
・運転条件
運転周波数f=35kHz
加熱コイル15に流す共振電流I=4000A
【0203】
<実施例6>
本実施例では、実施例5に対し、電圧降下補償用コンデンサ191bを設けずに構成したインダクタンス調整装置にかかる電位(=V1)を以下の条件で計算した。その結果、V1≒12.5kVとなり、実施例5に比べて高い電位がインダクタンス調整装置にかかることが確認された。ただし、高電圧対策を施せる範囲であるので、高電圧対策を施せば、実用上の問題はない。
【0204】
・電気定数条件
加熱コイル195のインダクタンスLL=5.7μH
共振用コンデンサ194の静電容量C2=1.46μF
合成インダクタンスGL=8.5μH
電圧降下補償用コンデンサ191bの静電容量C1:0μF(電圧降下補償用コンデンサ191bを設けない)
【0205】
・運転条件
運転周波数f=35kHz
加熱コイル195に流す共振電流I=4000A
【0206】
尚、以上説明した本発明の実施形態および実施例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0207】
本発明は、誘導性負荷を有する電気回路等に利用できる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図18
図19A
図19B
図19C
図19D