(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平面視した場合に、前記第1ピースと前記第2ピースとが線対称形状であり、前記第3ピースと前記第4ピースとが線対称形状である請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の湿式摩擦材。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を、図を参照しながら説明する。ここで示す事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要で、ある程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0024】
また、以下、本明細書では、セグメントピース4の説明をする場合には、当該セグメントピース4を、時計文字盤の12時位置においた場合を想定して説明する。従って、所定のセグメントピース4において、「右」は、時計文字盤の9時位置から3時位置へ向かう方角を意味し、「左」は、時計文字盤の3時位置から9時位置へ向かう方角を意味する。更に、「上」は、時計文字盤の6時位置から12時位置へ向かう方角を意味し、「下」は、時計文字盤の12時位置から6時位置へ向かう方角を意味する。
【0025】
《1》第1発明の湿式摩擦材
本第1発明の湿式摩擦材(1)は、平板なリング形状をなすコアプレート(2)と、コアプレート(2)の主面(2a)に配置された摩擦部(3)と、を有する。
このうち、摩擦部(3)は、(G
1)〜(G
4)の4種のセグメントピース(4)が、油溝(5)を介してリング状に配置されてなる(
図1参照)。
(G
1)略四角形をなすピースの右下角が略四角形に切り欠かれた第1ピース
(G
2)略四角形をなすピースの左下角が略四角形に切り欠かれた第2ピース
(G
3)略四角形をなすピースの右上角が略四角形に切り欠かれた第3ピース
(G
4)略四角形をなすピースの左上角が略四角形に切り欠かれた第4ピース
更に、セグメントピース(4)は、第1ピース(G
1)、第2ピース(G
2)、第3ピース(G
3)及び第4ピース(G
4)の並び順で繰り返して配置されている。
【0026】
[1]コアプレート
上記コアプレート2は、平板なリング形状を呈する。即ち、板体中央が開孔された環形状である。コアプレート2は、リング形状の中心を回転中心Pとしている。コアプレート2が有する主面2aは、その面にセグメントピース4が接合されて摩擦部3が形成される面である。主面2aは、コアプレート2の一面のみに有してよいし、両面に有してもよい。即ち、摩擦部3は、コアプレート2の一面のみに形成されてもよいし、コアプレート2の両面に形成されていてもよい。
【0027】
また、コアプレート2は、上記主面2a以外に、適宜、必要な他構成を備えることができる。他構成としては、例えば、係合歯が挙げられる。係合歯は、コアプレート2の内周面や外周面から突設して設けることができる。具体的には、
図1に示すように、内周面21から突設された係合歯8を有することができる。係合歯8は、湿式摩擦材1に対して回転軸となるハブの外周に配置されたスプラインと噛み合うことができるように配設される。
【0028】
コアプレート2の大きさ等は限定されず、外径と内径との相関も限定されないが、例えば、外径をR
1(外周の直径)、内径をR
2(係合歯8を有する場合には、係合歯8を除いた内周面21を基準とする)とした場合、これらの比R
1/R
2は、1≦R
1/R
2≦10とすることができ、1.05≦R
1/R
2≦5とすることができ、1.1≦R
1/R
2≦3とすることができる。
また、コアプレート2の厚さをD(mm)とした場合、厚さDは限定されないが、例えば、0.1≦D(mm)≦10mmとすることができ、0.3≦D(mm)≦7とすることができ、0.5≦D(mm)≦5とすることができる。
更に、コアプレート2は、どのような材料から形成されてもよいが、例えば、各種炭素鋼(S35C、S55C等)、冷間圧延鋼板(SPCC、SPCCT等)、低炭素ハイテン鋼(NCH780等)などを用いることができる。
【0029】
[2]摩擦部
摩擦部3は、セグメントピース4と油溝5とから形成されている。具体的には、複数のセグメントピース4が油溝5を介してリング状に配置されて形成される。
そして、摩擦部3は、湿式摩擦材1と、これに隣接された相手材(セパレータプレート等)と、の接触の程度によって、湿式摩擦材1と相手材との連動具合を調節する機能を有する。即ち、相手材に対するブレーキ機能(制動機能)やトルク伝達機能を有する。
この摩擦部3は、コアプレート2の表側の主面2aと裏側の主面2aとで、同じ形態であってもよいし、異なる形態であってもよい。
【0030】
[3]セグメントピース
セグメントピース4は、上述のように摩擦部3を構成しており、その表面が摩擦面とされている。油溝5は、セグメントピース4によって区画形成されるため、セグメントピース4の外形と、その並び方により油溝5の形状も決定されることとなる。
本湿式摩擦材1で用いるセグメントピース4は、第1ピースG
1、第2ピースG
2、第3ピースG
3及び第4ピースG
4の少なくとも4種がある。
【0031】
第1ピースG
1は、略四角形をなすピースの右下角が略四角形に切り欠かれたセグメントピースである(
図2参照)。即ち、略四角形をなすピースの右下に略四角形の切欠部41Lを有した形状のセグメントピースである。
この第1ピースG
1は、
図2aに示すように、直線のみから形成できる。この場合、第1ピースG
1は、辺411〜416の6つの辺により構成できる。
また、第1ピースG
1は、
図2bに示すように、辺411、辺413及び辺415を曲線で形成できる。具体的には、回転中心Pからの距離に応じた曲率となるよう外周側S
Oへ膨らんだ曲線で形成できる。更に、略一定な溝幅を有する油溝5を目的として、辺412及び辺416を、その延長線上に回転中心Pが位置されるように傾斜させた直線で形成できる。更に、第1ピースG
1は、
図2cに示すように、各角部をR形状に面取りすることができる。
【0032】
第1ピースG
1における切欠部41Lの大きさは限定されないが、第1ピースG
1の最大幅をW
1とし、第1ピースの切欠部41Lの最大幅をW
2とした場合(
図8参照)に、0.10≦W
2/W
1≦0.80とすることができる。この範囲では優れた引き摺りトルク低減効果を得ることができる。このW
2/W
1は、更に0.15≦W
2/W
1≦0.70とすることができ、更に0.18≦W
2/W
1≦0.65とすることができ、更に0.20≦W
2/W
1≦0.60とすることができ、更に0.23≦W
2/W
1≦0.40とすることができ、更に0.25≦W
2/W
1≦0.40とすることができる。これらの各々の範囲では、より優れた引き摺りトルク低減効果を得ることができる。
【0033】
また、第1ピースG
1の最大高をH
1とし、第1ピースの切欠部41Lの最大高をH
2とした場合(
図8参照)に、0.25≦H
2/H
1≦0.75とすることができる。この範囲では優れた引き摺りトルク低減効果を得ることができる。このH
2/H
1は、更に0.10≦H
2/H
1≦0.80とすることができ、更に0.15≦H
2/H
1≦0.70とすることができ、更に0.20≦H
2/H
1≦0.65とすることができ、更に0.22≦H
2/H
1≦0.60とすることができ、更に0.24≦H
2/H
1≦0.50とすることができ、更に0.25≦H
2/H
1≦0.40とすることができる。これらの各々の範囲では、より優れた引き摺りトルク低減効果を得ることができる。
【0034】
第2ピースG
2は、略四角形をなすピースの左下角が略四角形に切り欠かれたセグメントピースである(
図3参照)。即ち、略四角形をなすピースの左下に略四角形の切欠部42Lを有した形状のセグメントピースである。
第1ピースG
1の場合と同様に、この第2ピースG
2は、
図3aに示すように、直線のみから形成できる。この場合、第2ピースG
2は、辺421〜426の6つの辺により構成できる。
また、第2ピースG
2は、
図3bに示すように、辺421、辺423及び辺425を曲線で形成できる。具体的には、回転中心Pからの距離に応じた曲率となるよう外周側S
Oへ膨らんだ曲線で形成できる。更に、略一定な溝幅を有する油溝5を目的として、辺422及び辺426を、その延長線上に回転中心Pが位置されるように傾斜させた直線で形成できる。更に、第2ピースG
2は、
図3cに示すように、各角部をR形状に面取りすることができる。
また、第2ピースG
2における切欠部42Lの大きさは限定されず、上記の第1ピースG
1に関するW
2/W
1及びH
2/H
1に関する記載を、そのまま第2ピースG
2へ読み換えて適用できる。
【0035】
これらの第1ピースG
1と第2ピースG
2とは、平面視した場合に、互いに非対象な形状であってもよいが、線対称形状であることが好ましい。即ち、より具体的には、第1ピースG
1と第2ピースG
2とは互いに鏡像対称であることが好ましい。
平面視において第1ピースG
1と第2ピースG
2とが線対称形状である場合には、第1ピースG
1と第2ピースG
2とで区画形成される油溝51の形状が、左右対称な形状となることによって、回転方向によらず、潤滑油に対して安定した性能を発揮できる。
加えて、第1ピースG
1を裏返すことで、第2ピースG
2として利用できるため、1回の型抜きにより第1ピースG
1と第2ピースG
2とを同時製造できる。このため、セグメントピース4の製造が容易であり、コストメリットが大きい。
【0036】
第3ピースG
3は、略四角形をなすピースの右上角が略四角形に切り欠かれたセグメントピースである(
図4参照)。即ち、略四角形をなすピースの右上に略四角形の切欠部43Lを有した形状のセグメントピースである。
この第3ピースG
3は、
図4aに示すように、直線のみから形成できる。この場合、第3ピースG
3は、辺431〜436の6つの辺により構成できる。
また、第3ピースG
3は、
図4bに示すように、辺431、辺433及び辺435を曲線で形成できる。具体的には、回転中心Pからの距離に応じた曲率となるよう外周側S
Oへ膨らんだ曲線で形成できる。更に、略一定な溝幅を有する油溝5を目的として、辺432及び辺434を、その延長線上に回転中心Pが位置されるように傾斜させた直線で形成できる。更に、第3ピースG
3は、
図4cに示すように、各角部をR形状に面取りすることができる。
また、第3ピースG
3における切欠部43Lの大きさは限定されず、上記の第1ピースG
1に関するW
2/W
1及びH
2/H
1に関する記載を、そのまま第3ピースG
3へ読み換えて適用できる。
【0037】
第4ピースG
4は、略四角形をなすピースの左上角が略四角形に切り欠かれたセグメントピースである(
図5参照)。即ち、略四角形をなすピースの左上に略四角形の切欠部44Lを有した形状のセグメントピースである。
第3ピースG
3の場合と同様に、この第4ピースG
4は、
図5aに示すように、直線のみから形成できる。この場合、第4ピースG
4は、辺441〜446の6つの辺により構成できる。
また、第4ピースG
4は、
図5bに示すように、辺441、辺443及び辺445を曲線で形成できる。具体的には、回転中心Pからの距離に応じた曲率となるよう外周側S
Oへ膨らんだ曲線で形成できる。更に、略一定な溝幅を有する油溝5を目的として、辺442及び辺446を、その延長線上に回転中心Pが位置されるように傾斜させた直線で形成できる。更に、第4ピースG
4は、
図5cに示すように、各角部をR形状に面取りすることができる。
また、上記の第1ピースG
1に関するW
2/W
1及びH
2/H
1に関する記載を、そのまま第4ピースG
4へ読み換えて適用できる。
【0038】
これらの第3ピースG
3と第4ピースG
4とは、平面視した場合に、互いに非対象な形状であってもよいが、線対称形状であることが好ましい。即ち、より具体的には、第3ピースG
3と第4ピースG
4とは互いに鏡像対称であることが好ましい。
平面視において第3ピースG
3と第4ピースG
4とが線対称形状である場合には、第3ピースG
3と第4ピースG
4とで区画形成される油溝53の形状が、左右対称な形状となることによって、回転方向によらず、潤滑油に対して安定した性能を発揮できる。
加えて、第3ピースG
3を裏返すことで、第4ピースG
4として利用できるため、1回の型抜きにより第3ピースG
3と第4ピースG
4とを同時製造できる。このため、セグメントピース4の製造が容易であり、コストメリットが大きい。
【0039】
これらのセグメントピース4における最大幅W
1及び最大高H
1は、第1ピースG
1から第4ピースG
4までの4種のセグメントピース間で同じであることが好ましい。更に、これらのセグメントピース4における切欠部の最大幅W
2及び最大高H
2は、第1ピースG
1から第4ピースG
4までの4種のセグメントピース間で同じであることが好ましい。
【0040】
また、これらのセグメントピース4は、前述のように、第1ピースG
1、第2ピースG
2、第3ピースG
3及び第4ピースG
4の並び順を1つのグループとして、このグループの繰り返しによって配置されている。各セグメントピース4の間には、第1ピースG
1から第4ピースG
4に含まれない他のセグメントピースを挟むことができるが、通常、第1ピースG
1と第2ピースG
2との間には、他のセグメントピースを挟まないことが好ましい。更に、第3ピースG
3と第4ピースG
4との間にも、他のセグメントピースを挟まないことが好ましい。
【0041】
第1ピースG
1と第4ピースG
4との間には、他のセグメントピースを挟まないことが好ましいが、例えば、切欠部を有さない略四角形に形成されたセグメントピース4である第9ピースG
9を挟むことができる。即ち、第9ピースG
9は、いずれの角も切り欠かれておらず、全体として略四角形をなしたセグメントピース4である。各4角は、必要に応じてR面取りされていてもよい(
図9参照)。
第9ピースG
9を挟む場合、第9ピースG
9の最大幅W
1は、第1ピースG
1の最大幅W
1及び第4ピースG
4の最大幅W
1よりも小さいことが好ましい。例えば、第1ピースG
1の最大幅W
1と第4ピースG
4の最大幅W
1とは同じ大きさにすることができ、この最大幅をW
11とし、第9ピースG
9の最大幅W
1をW
12とした場合、0.1≦W
12/W
11≦1とすることができ、0.2≦W
12/W
11≦0.8とすることができ、0.3≦W
12/W
11≦0.7とすることができる。
尚、第1ピースG
1と第4ピースG
4との間に第9ピースG
9を挟む場合、後述する、第2ピースG
2と第3ピースG
3との間にも、同時に第9ピースG
9を挟むことができるが、挟まない構成とすることもできる。
【0042】
同様に、第2ピースG
2と第3ピースG
3との間には、他のセグメントピースを挟まないことが好ましいが、例えば、切欠部を有さない略四角形に形成されたセグメントピース4である第9ピースG
9を挟むことができる。即ち、第9ピースG
9は、いずれの角も切り欠かれておらず、全体として略四角形をなしたセグメントピース4である。各4角は、必要に応じてR面取りされていてもよい(
図9参照)。
第9ピースG
9を挟む場合、第9ピースG
9の最大幅W
1は、第2ピースG
2の最大幅W
1及び第3ピースG
3の最大幅W
1よりも小さいことが好ましい。例えば、第2ピースG
2の最大幅W
1と第3ピースG
3の最大幅W
1とは同じ大きさにすることができ、この最大幅をW
11とし、第9ピースG
9の最大幅W
1をW
12とした場合、0.1≦W
12/W
11≦1とすることができ、0.2≦W
12/W
11≦0.8とすることができ、0.3≦W
12/W
11≦0.7とすることができる。
尚、第2ピースG
2と第3ピースG
3との間に第9ピースG
9を挟む場合、前述した、第1ピースG
1と第4ピースG
4との間にも、同時に第9ピースG
9を挟むことができるが、挟まない構成とすることもできる。
【0043】
本湿式摩擦材1において、コアプレート2の1つの主面2aに配置されるセグメントピース4の数は限定されないが、例えば、10以上100以下とすることができる。この数は、15以上90以下が好ましく、20以上80以下がより好ましく、25以上60以下が特に好ましい。
【0044】
これらのセグメントピース4の構成は限定されず、例えば、基材繊維及び充填材を含んだ抄紙体を硬化性樹脂によって固めたものを利用できる。
このうち、基材繊維としては、各種の合成繊維、再生繊維、無機繊維、天然繊維等を利用できる。具体的には、セルロース繊維(パルプ)、アクリル繊維、アラミド繊維等が好ましい。更に、充填材としては、摩擦調整剤としてのカシューダスト、固体潤滑剤としてのグラファイト及び/又は二硫化モリブデン、体質顔料としてのケイソウ土等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。更に、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂及び/又はその変性樹脂を用いることができる。
また、セグメントピース4は、コアプレート2の主面2aに対して、通常、接合して固定されるが、コアプレート2との接合方法は限定されず、熱融着、接着剤等を介した貼着(接着)等の方法を用いることができる。
【0045】
[4]油溝
油溝5は、2つのセグメントピース4が離間して配置されることで、これらの間隙として形成される潤滑油の流路となる溝である。前述の第1ピースG
1から第4ピースG
4までの各セグメントピース4は、本湿式摩擦材1では、互いに離間して配置され、各々の間隙に油溝5を形成する。従って、本湿式摩擦材1において、油溝5は、内周側S
I及び外周側S
Oへ貫通された貫通溝である。
この油溝5は、本湿式摩擦材1の内周側S
Iから供給された潤滑油を、外周側S
Oへ向かって排出するガイドとして機能され得る。油溝5は、セグメントピース4の数に応じて複数が主面2a以上に配置される。通常、全てのセグメントピース4が、離間して配置されるため、油溝5は、セグメントピース4の数と同数が形成されることになる。
【0046】
本湿式摩擦材1では、隣り合った第1ピースG
1と第2ピースG
2とで区画された油溝を第1油溝51とする。また、隣り合った第2ピースG
2と第3ピースG
3とで区画された油溝を第2油溝52とする。更に、隣り合った第3ピースG
3と第4ピースG
4とで区画された油溝を第3油溝53とする。そして、隣り合った第1ピースG
1と第4ピースG
4とで区画された油溝を第4油溝54とする。
【0047】
各油溝は、その両側に位置されたセグメントピース4の各々外周壁(外側壁)の形状により、油溝の流路形状が決定される。本湿式摩擦材1では、切欠部41L〜44Lを有した第1ピースG
1から第4ピースG
4までの各セグメントピースが、所定の配置をしていることで、内周側に大きく開口された油溝51と、外周側へ大きく開口された油溝53と、が対応して配置されている。
即ち、第1油溝51は、第1ピースG
1の切欠部41L及び第2ピースG
2の切欠部42Lとで形成された、溝幅が広い幅広部51wを、内周側S
Iに有する。一方、外周側S
Oには、溝幅が狭い幅狭部51nを有する(
図2〜
図3及び
図6〜
図7参照)。
同様に、第3油溝53は、第3ピースG
3の切欠部43L及び第4ピースG
4の切欠部44Lとで形成された、溝幅が広い幅広部53wを、内周側S
Iに有する。一方、外周側S
Oには、溝幅が狭い幅狭部53nを有する(
図4〜
図7参照)。
【0048】
本湿式摩擦材1は、このように、第1油溝51と第3油溝53とが対応して存在することで、高い引き摺りトルク低減効果が得られると考えられる。その機序は、明らかではないが、以下の通りに考えることができる。
即ち、湿式摩擦材1が、反時計回りに回転している場合、第2ピースG
2の切欠部42Lで堰き止められた潤滑油が、第2ピースG
2の表面へ乗り上げる。そうすると、湿式摩擦材1と相手材との間に潤滑油が介在して、両者を引き剥がし、引き摺りトルクを低減できると考えられる(
図3、
図6及び
図7参照)。
しかしながら、その後、この第2ピースG
2の表面に乗り上げた潤滑油を早期に排出しなければ、セグメントピースの表面に潤滑油が滞留され、即ち、潤滑油を連れ回ってしまい、この潤滑油の連れ周りに起因した引き摺りトルクを生じ、上記の引きはがし効果を十分に活用できないのではないかと考えることができる。
そこで、本湿式摩擦材1では、油溝51に対応させて、潤滑油の排出性に優れた油溝53を設けている。これにより、潤滑油の連れ周りを防止し、上記の引きはがし作用を効果的に活用できるものと考えられる。
【0049】
同様に、湿式摩擦材1が、時計回りに回転している場合、第1ピースG
1の切欠部41Lで堰き止められた潤滑油が、第4ピースG
4の表面へ乗り上げる。そうすると、湿式摩擦材1と相手材との間に潤滑油が介在して、両者を引き剥がし、引き摺りトルクを低減できると考えられる(
図2、
図6及び
図7参照)。
しかしながら、その後、この第4ピースG
4の表面に乗り上げた潤滑油を早期に排出しなければ、セグメントピースの表面に潤滑油が滞留され、即ち、潤滑油を連れ回ってしまい、この潤滑油の連れ周りに起因した引き摺りトルクを生じ、上記の引きはがし効果を十分に活用できないのではないかと考えることができる。
そこで、本湿式摩擦材1では、油溝51に対応させて、潤滑油の排出性に優れた油溝53を設けている。これにより、潤滑油の連れ周りを防止し、上記の引きはがし作用を効果的に活用できるものと考えられる。
【0050】
各油溝5の大きさは限定されず、コアプレート2に設けられた切欠部の大きさや、セグメントピース4の数等によって適宜の大きさにすることができる。
例えば、幅狭部51nの外周側S
Oへ通じる開口部をE51
Oとし、幅広部51wの内周側S
Iへ通じる開口部をE51
Iとする(
図7参照)と、開口部E51
Iは、開口部E51
Oの1.2倍以上10倍以下が好ましく、1.4倍以上9倍以下がより好ましく、1.5倍以上8倍以下が特に好ましい。
より具体的には、開口部E51
Iの開口幅は、1.5mm以上20mm以下とすることができ、更に、1.5mm以上15mm以下とすることができ、更に、2mm以上12mm以下とすることができる。
【0051】
同様に、幅狭部53nの内周側S
Iへ通じる開口部をE53
Iとし、幅広部53wの外周側S
Oへ通じる開口部をE53
Oとする(
図7参照)と、開口部E53
Oは、開口部E53
Iの1.2倍以上10倍以下が好ましく、1.4倍以上9倍以下がより好ましく、1.5倍以上8倍以下が特に好ましい。
より具体的には、開口部E53
Oの開口幅は、1.5mm以上20mm以下とすることができ、更に、1.5mm以上15mm以下とすることができ、更に、2mm以上12mm以下とすることができる。
【0052】
更に、油溝51の幅広部51wの開口部E51
Iとは反対側の端部(他端側)を、幅狭部51nへ通じる接続部51cとした場合、油溝51は、開口部E51
Iと接続部51cとの間に溝幅が一定であり且つ湿式摩擦材1の回転中心Pへ向かって流路が真っ直ぐな直流路51sを備えることが好ましい(
図7参照)。
同様に、油溝53の幅広部53wの開口部E53
Oとは反対側の端部(他端側)を、幅狭部53nへ通じる接続部53cとした場合、油溝53は、開口部E53
Oと接続部53cとの間に溝幅が一定であり且つ湿式摩擦材1の回転中心Pへ向かって流路が真っ直ぐな直流路53sを備えることが好ましい(
図7参照)。
【0053】
このように直流路51s及び53sを備える場合には、引き摺りトルクをより効果的に低減できる。その機序は明らかではないが、直流路51sを有する場合には、潤滑油を、第1ピースG
1の表面や第2ピースG
2の表面により効率よく乗り上げさせることができるために引き摺りトルクを低減し易いものと考えることができる。一方、直流路53sを有する場合には、潤滑油をより効率よく外周側S
Oへ排出できるため引き摺りトルクを低減し易いものと考えることができる。
【0054】
更に、本湿式摩擦材1では、油溝51及び油溝53以外に、これらの油溝間に、油溝52及び油溝54を備える。これにより、高回転時の潤滑油の排出性を向上させているものと考えられる。
油溝52及び油溝54の流路形状はどのようなものであってもよく、回転中心Pへ向かって曲がった流路を備えることもできるが、第2油溝52及び第4油溝54は、回転中心Pへ向かって流路が真っ直ぐな直流路を備えることが好ましい。
より具体的には、第2油溝52は、内周側S
Iの各開口部E52
Iと、外周側S
Oの各開口部E52
Oと、の間に、溝幅が略一定であり且つ本湿式摩擦材1の回転中心Pへ向かって流路が真っ直ぐな直流路52sを備えることが好ましい。
また、第4油溝54は、内周側S
Iの各開口部E54
Iと、外周側S
Oの各開口部E54
Oと、の間に、溝幅が略一定であり且つ本湿式摩擦材1の回転中心Pへ向かって流路が真っ直ぐな直流路54sを備えることが好ましい。
【0055】
直流路52s及び直流路54sを備えることにより、引き摺りトルクを低減することができる。なかでも、高回転時の引き摺りトルク低減に対して効果を発揮できる。その機序は、明らかではないが、以下の通りに考えらことができる。
即ち、前述のように、湿式摩擦材1が、反時計回りに回転している場合、第2ピースG
2の切欠部42Lで堰き止められた潤滑油が、第2ピースG
2の表面へ乗り上げて引き摺りトルクを低減していると考えられる(
図3、
図6及び
図7参照)。
そして、本湿式摩擦材1では、油溝51に対応して油溝53を備えることで、潤滑油の連れ周りを防止し、引きはがし効果を有効に活用できると考えられるが、更に、高回転時には、特に高い潤滑油の排出性が必要になると考えられる。このため、油溝52が存在にすることにより、潤滑油が、油溝53へ至る前に潤滑油の排出を行うことができ、摩擦面積を軽減することなく、高回転時の排出性を高めることができると考えられる。従って、油溝52は、潤滑油を滞留させることなく、よりスムーズに排出できる構成が好ましく、上述の通り、流路しては、直流路52sを有することが好ましいと考えられる。
【0056】
同様に、湿式摩擦材1が、時計回りに回転している場合には、第1ピースG
1の切欠部41Lで堰き止められた潤滑油が、第4ピースG
4の表面へ乗り上げて引き摺りトルクを低減していると考えられる(
図2、
図6及び
図7参照)。
そして、本湿式摩擦材1では、油溝51に対応して油溝53を備えることで、潤滑油の連れ周りを防止し、引きはがし効果を有効に活用できると考えられるが、更に、高回転時には、特に高い潤滑油の排出性が必要になると考えられる。このため、油溝54が存在にすることにより、潤滑油が、油溝53へ至る前に潤滑油の排出を行うことができ、摩擦面積を軽減することなく、高回転時の排出性を高めることができると考えられる。従って、油溝54は、潤滑油を滞留させることなく、よりスムーズに排出できる構成が好ましく、上述の通り、流路しては、直流路54sを有することが好ましいと考えられる。
【0057】
また、前述のように、第1ピースG
1と第4ピースG
4との間や、第2ピースG
2と第3ピースG
3との間に、第9ピースG
9を挟む構成である場合(
図9参照)にも、上記の理由から、各油溝は、直流路を備えることが好ましい。
即ち、第1ピースG
1と第4ピースG
4との間に、第9ピースG
9を挟む場合、第1ピースG
1と第4ピースG
4との間に、2つの油溝5を有することになる。この場合、第4ピースG
4側の油溝を第4a油溝541とし、第1ピースG
1側の油溝を第4b油溝542とする(
図9参照)。
同様に、第2ピースG
2と第3ピースG
3との間に、第9ピースG
9を挟む場合、第2ピースG
2と第3ピースG
3との間に、2つの油溝5を有することになる。この場合、第2ピースG
2側の油溝を第2a油溝521とし、第3ピースG
3側の油溝を第2b油溝522とする(
図9参照)。
この場合、各油溝541、油溝542、油溝521及び油溝522は、各々、直流路541s、直流路542s、直流路521s及び直流路522sを有することが好ましい。これにより、高回転時の引き摺りトルク低減の作用をより効果的に得ることができる。
【0058】
《2》第2発明の湿式摩擦材
本第2発明の湿式摩擦材(1)は、平板なリング形状をなすコアプレート(2)と、コアプレート(2)の主面(2a)にリング状に配置された摩擦部(3)と、を有する。
このうち、摩擦部(3)は、(G
1)〜(G
4)の4種のセグメントピースを含む複数のセグメントピース(4)から構成され、且つ、(T
1)〜(T
2)の組合せを含んでいる(
図10及び
図1参照)。
(G
1)略四角形をなすピースの右下角が略四角形に切り欠かれた第1ピース
(G
2)略四角形をなすピースの左下角が略四角形に切り欠かれた第2ピース
(G
3)略四角形をなすピースの右上角が略四角形に切り欠かれた第3ピース
(G
4)略四角形をなすピースの左上角が略四角形に切り欠かれた第4ピース
(T
1)第1ピース(G
1)と第2ピース(G
2)とが、油溝(5)を介して、第1ピース(G
1)の右側と第2ピース(G
2)の左側とで対面配置された組合せ
(T
2)第3ピース(G
3)と第4ピース(G
4)とが、油溝(5)を介して、第3ピース(G
3)の右側と第4ピース(G
4)の左側とで対面配置された組合せ
【0059】
[1]コアプレート
コアプレート2は、前述した本第1発明の湿式摩擦材1におけるコアプレート2をそのまま適用できる。
【0060】
[2]摩擦部
摩擦部3は、前述した本第1発明の湿式摩擦材1における摩擦部3と同様に、セグメントピース4と油溝5とから形成されている。具体的には、複数のセグメントピース4が油溝5を介してリング状に配置されて形成される。
また、摩擦部3は、湿式摩擦材1と、これに隣接された相手材(セパレータプレート等)と、の接触の程度によって、湿式摩擦材1と相手材との連動具合を調節する機能を有する。即ち、相手材に対するブレーキ機能(制動機能)やトルク伝達機能を有することも同様である。
更に、摩擦部3は、コアプレート2の表側の主面2aと裏側の主面2aとで、同じ形態であってもよいし、異なる形態であってもよいことについても同様である。
【0061】
[3]セグメントピース
セグメントピース4は、上述のように摩擦部3を構成しており、その表面が摩擦面とされている。油溝5は、セグメントピース4によって区画形成されるため、セグメントピース4の外形と、その並び方により油溝5の形状も決定されることとなる。
本第2発明の湿式摩擦材1で用いるセグメントピース4は、第1ピースG
1、第2ピースG
2、第3ピースG
3及び第4ピースG
4の少なくとも4種のセグメントピースを含む複数のセグメントピース4から構成される。
【0062】
本第2発明の湿式摩擦材1で用いる第1ピースG
1、第2ピースG
2、第3ピースG
3、及び、第4ピースG
4には、本第1発明の湿式摩擦材1で説明した、各、第1ピースG
1、第2ピースG
2、第3ピースG
3、及び、第4ピースG
4をそのまま適用できる。
また、第1ピースG
1と第2ピースG
2とは、平面視した場合に、互いに非対象な形状であってもよいが、線対称形状であることが好ましいことについても同様である。
更に、第3ピースG
3と第4ピースG
4とも、平面視した場合に、互いに非対象な形状であってもよいが、線対称形状であることが好ましいことについても同様である。
また、セグメントピース4における最大幅W
1及び最大高H
1は、第1ピースG
1から第4ピースG
4までの4種のセグメントピース間で同じであることが好ましいこと、更に、これらのセグメントピース4における切欠部の最大幅W
2及び最大高H
2は、第1ピースG
1から第4ピースG
4までの4種のセグメントピース間で同じであることが好ましいこと、についても同様である。
【0063】
本第2発明の湿式摩擦材1の摩擦部3は、所定のセグメントピース4の組合せT
1及び組合せT
2の両方を含んでいる(
図11参照)。
このうち、組合せT
1(
図11a参照)は、第1ピースG
1と第2ピースG
2とが、油溝5を介して、第1ピースG
1の右側と第2ピースG
2の左側とで対面配置された組合せである。この組合せT
1(
図11a参照)により第1油溝51が形成される。第1油溝51は、第1ピースG
1の切欠部41L(
図2参照)及び第2ピースG
2の切欠部42L(
図3参照)とで形成された、溝幅が広い幅広部51wを、内周側S
Iに有し、溝幅が狭い幅狭部51nを外周側S
Oに有している。第1油溝51を有することにより、湿式摩擦材1が、反時計回りに回転している場合には、切欠部42Lで堰き止められた潤滑油を、第2ピースG
2の表面へ乗り上げさせることができる。また、時計回りに回転している場合には、切欠部41Lで堰き止められた潤滑油を、第1ピースG
1の表面へ乗り上げさせることができる。このため、湿式摩擦材1と相手材との間に潤滑油を介在させて、両者を引き剥がし、引き摺りトルクを低減できる。
【0064】
一方、組合せT
2(
図11b参照)は、第3ピースG
3と第4ピースG
4とが、油溝5を介して、第3ピースG
3の右側と第4ピースG
4の左側とで対面配置された組合せである。この組合せT
2(
図11b参照)により第3油溝53が形成される。第3油溝53は、第3ピースG
3の切欠部43L(
図4参照)及び第4ピースG
4の切欠部44L(
図5参照)とで形成された、溝幅が広い幅広部53wを、外周側S
Oに有し、溝幅が狭い幅狭部53nを内周側S
Iに有している。第3油溝53を有することにより、湿式摩擦材1が、反時計回りに回転している場合には、第3ピースG
3の表面へ乗り上げた潤滑油を切欠部43Lから排出させることができる。また、時計回りに回転している場合には、第4ピースG
4の表面へ乗り上げた潤滑油を切欠部44Lから排出させることができる。このため、セグメントピースの表面に潤滑油が滞留されて潤滑油を過度に連れ回してしまうことを防ぎ、引き摺りトルクを低減できる。
【0065】
本第2発明の湿式摩擦材1の摩擦部3は、組合せT
1及び組合せT
2の両方を摩擦部3として含めばよい。この数は限定されず、例えば、組合せT
1と組合せT
2とを同数含んでもよいし、異なる数で含んでもよい。異なる数で含む場合には、例えば、組合せT
1に対して組合せT
2を2倍数含むことができる。
また、その配置も限定されず、例えば、組合せT
1及び組合せT
2は、何らかのセグメントピースを挟んで配置されてもよいし、組合せT
1と組合せT
2とは、他のセグメントピースを挟むことなく、隣り合って配置されてもよい。これらのうちでは、組合せT
1と組合せT
2とが、他のセグメントピースを挟むことなく、隣り合って配置されることが好ましい。
【0066】
具体的には、
図1に例示するように、組合せT
1と組合せT
2とを隣り合って繰り返して有することができる。即ち、隣り合った組合せT
1と組合せT
2とをセットとして、このセットを繰り返して有することができる。
また、
図10に例示するように、組合せT
2と組合せT
1と組合せT
2とをこの順に隣り合わせて有することができる。
このように、組合せT
1と組合せT
2とが隣り合って配置される場合には、第1油溝51と第3油溝53とが隣り合って配置されることとなる。この場合には、特に高い引き摺りトルク低減効果が得られる。その機序は、明らかではないが、本第1発明の湿式摩擦材において前述した通りである。
【0067】
即ち、溝幅が広い幅広部51wを有する第1油溝51により、潤滑油を、第1ピースG
1又は第2ピースG
2の表面へ乗り上げさせて、湿式摩擦材1と相手材とを引き剥がすことで、引き摺りトルクを低減できる。更に、湿式摩擦材1の回転に伴って、第1ピースG
1の表面へ乗り上げた潤滑油が第4ピースG
1の表面へ移動されたり、第2ピースG
2の表面へ乗り上げた潤滑油が第3ピースG
3の表面へ移動されたりするが、第1油溝51に隣接して、溝幅が広い幅広部53wを有する第3油溝53を配置されていることにより、これらのセグメントピース表面に移動された潤滑油を、第3油溝53から外周側S
Oへ排出させることができる。このため、潤滑油の連れ周りによる引き摺りトルク上昇を抑制しつつ、潤滑油の引きはがし作用による引き摺りトルク低減を効果的に活用することができると考えられる。
このような機序から、更に、各組合せは、組合せT
2、組合せT
1、組合せT
2の並び順(
図12a「T
2−T
1−T
2」参照)、及び、組合せT
2、組合せT
1、組合せT
2の並び順(
図12b「T
1−T
2−T
1」参照)のうちの少なくとも一方の並び順を含んでいることが好ましい。この並び順を含むことにより、時計回り及び反時計回りの両方の回転方向に対してより均等な機能発揮をさせることができる。
【0068】
尚、第1油溝51及び第3油溝53の形状や、その好ましい形態については、本第1発明の湿式摩擦材において説明した通りである。
また、組合せT
1と組合せT
2とが隣り合って配置される場合には、油溝52及び油溝54の流路形状の油溝が形成されることについても前述の通りであり、その形状や、その好ましい形態については、本第1発明の湿式摩擦材において説明した通りである。
【0069】
また、本第2発明の湿式摩擦材1でも、本第1発明の湿式摩擦材1の場合と同様に、組合せT
1と組合せT
2との間に、第1ピースG
1〜第4ピースG
4の4種のセグメントピース以外の他のセグメントピースを介在させることができることは同様である。
他のセグメントピースの形状は限定されないが、例えば、本第1発明の湿式摩擦材1の場合と同様に、第9ピースG
9を挙げることができる。第9ピースG
9は、切欠部を有さない略四角形に形成されたセグメントピース4である。この第9ピースG
9は、
図9に「G
91」として示すように第1ピースG
1〜第4ピースG
4よりも幅狭の形状であってもよいし、
図10に「G
92」として示すように第1ピースG
1〜第4ピースG
4と略同幅の形状であってもよい。
【0070】
本第2発明の湿式摩擦材1において、コアプレート2の1つの主面2aに配置されるセグメントピース4の数は限定されず、前述の第1発明の湿式摩擦材1の場合と同様である。
また、セグメントピース4の構成は限定されず、前述の第1発明の湿式摩擦材1の場合と同様である。
更に、油溝5に関しても、前述の通りであり、第1発明の湿式摩擦材1において説明した各油溝5(第1油溝51〜第4油溝54等)を同様に備えることができ、その形状、大きさ等も第1発明の湿式摩擦材1における油溝5の説明を適用できる。
【0071】
《3》第3発明の湿式摩擦材
本第3発明の湿式摩擦材(1)は、平板なリング形状をなすコアプレート(2)と、コアプレート(2)の主面(2a)にリング状に配置された摩擦部(3)と、を有する。
このうち、摩擦部(3)は、(G
1)〜(G
4)の4種のセグメントピースを含む複数のセグメントピース(4)から構成され、且つ、(T
3)及び/又は下記(T
4)の組合せを含んでいる(
図13、
図1及び
図10参照)。
(G
1)略四角形をなすピースの右下角が略四角形に切り欠かれた第1ピース
(G
2)略四角形をなすピースの左下角が略四角形に切り欠かれた第2ピース
(G
3)略四角形をなすピースの右上角が略四角形に切り欠かれた第3ピース
(G
4)略四角形をなすピースの左上角が略四角形に切り欠かれた第4ピース
(T
3)第4ピース、第1ピース、第2ピース及び第3ピースが、この並び順で互いに油溝を介して配置された組合せ
(T
4)第2ピース、第3ピース、第4ピース及び第1ピースが、この並び順で互いに油溝を介して配置された組合せ
【0072】
[1]コアプレート
コアプレート2は、前述した本第1発明の湿式摩擦材1におけるコアプレート2をそのまま適用できる。
【0073】
[2]摩擦部
摩擦部3は、前述した本第1発明の湿式摩擦材1における摩擦部3と同様に、セグメントピース4と油溝5とから形成されている。具体的には、複数のセグメントピース4が油溝5を介してリング状に配置されて形成される。
また、摩擦部3は、湿式摩擦材1と、これに隣接された相手材(セパレータプレート等)と、の接触の程度によって、湿式摩擦材1と相手材との連動具合を調節する機能を有する。即ち、相手材に対するブレーキ機能(制動機能)やトルク伝達機能を有することも同様である。
更に、摩擦部3は、コアプレート2の表側の主面2aと裏側の主面2aとで、同じ形態であってもよいし、異なる形態であってもよいことについても同様である。
【0074】
[3]セグメントピース
セグメントピース4は、上述のように摩擦部3を構成しており、その表面が摩擦面とされている。油溝5は、セグメントピース4によって区画形成されるため、セグメントピース4の外形と、その並び方により油溝5の形状も決定されることとなる。
本第3発明の湿式摩擦材1で用いるセグメントピース4は、第1ピースG
1、第2ピースG
2、第3ピースG
3及び第4ピースG
4の少なくとも4種のセグメントピースを含む複数のセグメントピース4から構成される。
【0075】
本第3発明の湿式摩擦材1で用いる第1ピースG
1、第2ピースG
2、第3ピースG
3、及び、第4ピースG
4には、本第1発明の湿式摩擦材1で説明した、各、第1ピースG
1、第2ピースG
2、第3ピースG
3、及び、第4ピースG
4をそのまま適用できる。
また、第1ピースG
1と第2ピースG
2とは、平面視した場合に、互いに非対象な形状であってもよいが、線対称形状であることが好ましいことについても同様である。
更に、第3ピースG
3と第4ピースG
4とも、平面視した場合に、互いに非対象な形状であってもよいが、線対称形状であることが好ましいことについても同様である。
また、セグメントピース4における最大幅W
1及び最大高H
1は、第1ピースG
1から第4ピースG
4までの4種のセグメントピース間で同じであることが好ましいこと、更に、これらのセグメントピース4における切欠部の最大幅W
2及び最大高H
2は、第1ピースG
1から第4ピースG
4までの4種のセグメントピース間で同じであることが好ましいこと、についても同様である。
【0076】
本第3発明の湿式摩擦材1の摩擦部3は、所定のセグメントピース4の組合せT
3及び組合せT
4のうちの少なくとも1つの組合せを含んでいる(
図14参照)。
このうち、組合せT
3(
図14a参照)は、第4ピースG
4、第1ピースG
1、第2ピースG
2及び第3ピースG
3が、この並び順で互いに油溝を介して配置された組合せである。この組合せT
3(
図14a参照)により、第4ピースG
4の切欠部44Lと、第1油溝51と、第3ピースG
3の切欠部43Lと、が並んで配置されることとなる。第1油溝51については、第1発明の湿式摩擦材1においても説明した通りである。組合せT
3を有することで、湿式摩擦材1が、反時計回りに回転している場合には、切欠部42L(
図3参照)で堰き止められた潤滑油を、第2ピースG
2の表面へ乗り上げさせることができる。そして、湿式摩擦材1と相手材との間に潤滑油を介在させ、両者を引き剥がし、引き摺りトルクを低減できる。更に、第2ピースG
2の表面へ乗り上げた潤滑油の少なくとも一部は、湿式摩擦材1の反時計回りの回転に伴って、第3ピースG
3の表面へ連れ回ることになると考えられるが、第3ピースG
3は、右上角に切欠部43Lを有するため、切欠部43Lから潤滑油を効率よく排出でき、それ以上の潤滑油の連れ周りを抑制できる。この結果、潤滑油の連れ周りによる引き摺りトルク上昇を抑制しつつ、潤滑油の引きはがし作用による引き摺りトルク低減を効果的に得ることができる。
【0077】
この機序は、湿式摩擦材1が逆回転している場合にも同様に考えることができる。即ち、湿式摩擦材1が、時計回りに回転している場合には、切欠部41L(
図2参照)で堰き止められた潤滑油を、第1ピースG
1の表面へ乗り上げさせることができる。そして、湿式摩擦材1と相手材との間に潤滑油を介在させ、両者を引き剥がし、引き摺りトルクを低減できる。更に、第1ピースG
1の表面へ乗り上げた潤滑油の少なくとも一部は、湿式摩擦材1の時計回りの回転に伴って、第4ピースG
4の表面へ連れ回ることになると考えられるが、第4ピースG
4は、左上角に切欠部44Lを有するため、切欠部44Lから潤滑油を効率よく排出でき、それ以上の潤滑油の連れ周りを抑制できる。この結果、潤滑油の連れ周りによる引き摺りトルク上昇を抑制しつつ、潤滑油の引きはがし作用による引き摺りトルク低減を効果的に得ることができる。
【0078】
一方、組合せT
4(
図14b参照)は、第2ピースG
2、第3ピースG
3、第4ピースG
4及び第1ピースG
1が、この並び順で互いに油溝を介して配置された組合せである。この組合せT
4(
図14b参照)により、第2ピースG
2の切欠部42Lと、第3油溝53と、第1ピースG
1の切欠部41Lと、が並んで配置されることとなる。第3油溝53については、第1発明の湿式摩擦材1においても説明した通りである。組合せT
4を有することにより、組合せT
3と同様に、湿式摩擦材1が、反時計回りに回転している場合には、切欠部42Lで潤滑油を堰き止め、第2ピースG
2の表面へ乗り上げさせて引き摺りトルクを低減できる。更に、第2ピースG
2の表面の潤滑油は、湿式摩擦材1の反時計回りの回転に伴って、第3ピースG
3の表面へ連れ回るが、切欠部43Lから、その潤滑油を効率よく排出できる。従って、潤滑油の連れ周りによる引き摺りトルク上昇を抑制しつつ、潤滑油の引きはがし作用による引き摺りトルク低減を効果的に得ることができる。
この機序は、湿式摩擦材1が逆回転している場合にも同様に考えることができる点は、上述した組合せT
3の場合と同じである。
【0079】
本第3発明の湿式摩擦材1の摩擦部3は、組合せT
3及び組合せT
4のうちの少なくとも一方を摩擦部3として含めばよいが、両方を同時に含んでもよい。また、摩擦部3に含まれる組合せT
3又は組合せT
4の数は限定されない。組合せT
3及び組合せT
4の両方を含む場合には、例えば、組合せT
3と組合せT
4とを同数含んでもよいし、異なる数で含んでもよい。
また、その配置も限定されず、例えば、組合せT
3及び組合せT
4は、何らかのセグメントピースを挟んで配置されてもよいし、組合せT
3と組合せT
4とは、他のセグメントピースを挟むことなく、隣り合って配置されてもよい。これらのうちでは、組合せT
3と組合せT
4とが、他のセグメントピースを挟むことなく、隣り合って配置されることが好ましい。
【0080】
具体的には、
図1に例示するように、組合せT
4のみを連続して(繰り返して)有することができる。
また、
図10に例示するように、組合せT
3のみを連続して(繰り返して)有することができる。
更に、
図13に例示するように、組合せT
3と組合せT
4とを隣り合わせて、連続して(繰り返して)有することができる。
【0081】
尚、第1油溝51及び第3油溝53の形状や、その好ましい形態については、本第1発明の湿式摩擦材において説明した通りである。
また、油溝52及び油溝54の流路形状の油溝が形成されることについても前述の通りであり、その形状や、その好ましい形態については、本第1発明の湿式摩擦材において説明した通りである。
また、本第3発明の湿式摩擦材1でも、本第1発明の湿式摩擦材1の場合と同様に、組合せT
3と組合せT
4との間に、第1ピースG
1〜第4ピースG
4の4種のセグメントピース以外の他のセグメントピースを介在させることができることは同様である。
【0082】
本第3発明の湿式摩擦材1において、コアプレート2の1つの主面2aに配置されるセグメントピース4の数は限定されず、前述の第1発明の湿式摩擦材1の場合と同様である。
また、セグメントピース4の構成は限定されず、前述の第1発明の湿式摩擦材1の場合と同様である。
更に、油溝5に関しても、前述の通りであり、第1発明の湿式摩擦材1において説明した各油溝5(第1油溝51〜第4油溝54等)を同様に備えることができ、その形状、大きさ等も第1発明の湿式摩擦材1における油溝5の説明を適用できる。
【0083】
《4》第4発明の湿式摩擦材
本第4発明の湿式摩擦材(1)は、平板なリング形状をなすコアプレート(2)と、コアプレート(2)の主面(2a)にリング状に配置された摩擦部(3)と、を有する。
このうち、摩擦部(3)は、(G
5)及び(G
6)のセグメントピースを含む複数のセグメントピース(4)が、油溝(5)を介してリング状に配置されてなる(
図15〜
図19参照)。
(G
5)略四角形をなすピースの右下角及び左上角が各々略四角形に切り欠かれた第5ピース
(G
6)略四角形をなすピースの右上角及び左下角が各々略四角形に切り欠かれた第6ピース
【0084】
第5ピースG
5は、略四角形をなすピースの右下角及び左上角が各々略四角形に切り欠かれたセグメントピースである(
図18参照)。即ち、略四角形をなすピースの右下角に切欠部45L
1を有し、略四角形をなすピースの左上角に切欠部45L
2を有するセグメントピースである。
第1ピースG
1〜第4ピースG
4の場合と同様に、第5ピースG
5は、
図18aに示すように、直線のみから形成できる。この場合、第5ピースG
5は、辺451〜458の8つの辺により構成できる。
また、第5ピースG
5は、
図18bに示すように、辺451、辺453、辺455及び辺457を曲線で形成できる。具体的には、回転中心Pからの距離に応じた曲率となるよう外周側S
Oへ膨らんだ曲線で形成できる。更に、略一定な溝幅を有する油溝5を目的として、辺452及び辺456を、その延長線上に回転中心Pが位置されるように傾斜させた直線で形成できる。更に、第5ピースG
5は、
図18cに示すように、各角部をR形状に面取りすることができる。
【0085】
第5ピースG
5における切欠部45L
1及び切欠部45L
2の大きさは限定されず、第5ピースG
5の最大幅をW
1とし、第5ピースG
5の切欠部45L
1の最大幅をW
2とした場合(
図17参照)に、0.05≦W
2/W
1≦0.40とすることができる。この範囲では優れた引き摺りトルク低減効果を得ることができる。このW
2/W
1は、更に0.07≦W
2/W
1≦0.35とすることができ、更に0.09≦W
2/W
1≦0.32とすることができ、更に0.10≦W
2/W
1≦0.30とすることができ、更に0.11≦W
2/W
1≦0.25とすることができ、更に0.12≦W
2/W
1≦0.20とすることができる。上述の各範囲は第5ピースG
5の切欠部45L
2についても同様である。これらの各々の範囲では、より優れた引き摺りトルク低減効果を得ることができる。
【0086】
また、第5ピースG
5の最大高をH
1とし、第5ピースG
5の切欠部45L
1の最大高をH
2とした場合(
図17参照)に、0.25≦H
2/H
1≦0.75とすることができる。この範囲では優れた引き摺りトルク低減効果を得ることができる。このH
2/H
1は、更に0.10≦H
2/H
1≦0.80とすることができ、更に0.15≦H
2/H
1≦0.70とすることができ、更に0.20≦H
2/H
1≦0.65とすることができ、更に0.22≦H
2/H
1≦0.60とすることができ、更に0.24≦H
2/H
1≦0.50とすることができ、更に0.25≦H
2/H
1≦0.40とすることができる。上述の各範囲は第5ピースG
5の切欠部45L
2についても同様である。これらの各々の範囲では、より優れた引き摺りトルク低減効果を得ることができる。
【0087】
第6ピースG
6は、略四角形をなすピースの右上角及び左下角が各々略四角形に切り欠かれたセグメントピースである(
図19参照)。即ち、略四角形をなすピースの右上角に切欠部46L
1を有し、略四角形をなすピースの左下角に切欠部46L
2を有するセグメントピースである。
第6ピースG
6は、
図19aに示すように、直線のみから形成できる。この場合、第6ピースG
6は、辺461〜468の8つの辺により構成できる。
また、第6ピースG
6は、
図19bに示すように、辺461、辺463、辺465及び辺467を曲線で形成できる。具体的には、回転中心Pからの距離に応じた曲率となるよう外周側S
Oへ膨らんだ曲線で形成できる。更に、略一定な溝幅を有する油溝5を目的として、辺464及び辺468を、その延長線上に回転中心Pが位置されるように傾斜させた直線で形成できる。更に、第6ピースG
6は、
図19cに示すように、各角部をR形状に面取りすることができる。
【0088】
更に、第6ピースG
6における切欠部46L
1及び切欠部46L
2の大きさは限定されず、上記の第5ピースG
5に関するW
2/W
1及びH
2/H
1に関する記載を適用できる。
また、第5ピースG
5及び第6ピースG
6の各最大幅W
1及び各最大高H
1は異なってもよいが、同じであることが好ましい。更に、これらの第5ピースG
5及び第6ピースG
6のセグメントピースの切欠部の最大幅W
2及び最大高H
2は、異なってもよいが、同じであることが好ましい。同じである場合には、両セグメントピースが区画形成する油溝5の形状を揃えることができる。このため、ばらつきを抑制して、引き摺りトルク低減をより確実に達することができる。
【0089】
また、第5ピースG
5と第6ピースG
6とは、平面視した場合に、互いに非対象な形状であってもよいが、線対称形状にすることができる(
図18a〜
図18cと
図19a〜
図19cとは各々鏡像対称である)。線対称形状である場合には、第5ピースG
5を裏返すことで、第6ピースG
6として利用できるため、1回の型抜きにより第5ピースG
5と第6ピースG
6とを同時製造できる。このため、セグメントピース4の製造が容易であり、コストメリットに優れる。
【0090】
本第4発明の湿式摩擦材1の摩擦部3は、所定のセグメントピース4の組合せT
5及び組合せT
6を含んでいる(
図15及び
図16参照)。
このうち、組合せT
5(
図16a参照)は、第5ピースG
5と第6ピースG
6とが、油溝5を介して、第5ピースG
5の右側と第6ピースG
6の左側とで対面配置された組合せである。組合せT
5(
図16a参照)により、第5ピースG
5の切欠部45L
2と、第5油溝55と、第6ピースG
6の切欠部46L
1と、が並んで配置される。この組合せT
5は、第3発明の湿式摩擦材1における組合せT
3と同様の効果を与える。
即ち、組合せT
5(
図16a参照)を有することで、湿式摩擦材1が反時計回りに回転している場合、切欠部46L
2(
図19参照)で堰き止めた潤滑油を、第6ピースG
6の表面へ乗り上げさせることができる。そして、湿式摩擦材1と相手材との間に潤滑油を介在させ、両者を引き剥がし、引き摺りトルクを低減できる。また、第6ピースG
6は、右上角に切欠部46L
1を有している。このため、第6ピースG
6の表面へ乗り上げた潤滑油を、湿式摩擦材1の反時計回りの回転に伴って、切欠部46L
1から効率よく排出できる。この結果、潤滑油の連れ周りによる引き摺りトルク上昇を抑制しつつ、潤滑油の引きはがし作用による引き摺りトルク低減を効果的に得ることができる。
【0091】
この機序は、湿式摩擦材1が逆回転している場合にも同様である。即ち、湿式摩擦材1が、時計回りに回転している場合には、切欠部45L
1(
図18参照)で堰き止めた潤滑油を、第5ピースG
5の表面へ乗り上げさせることができる。そして、湿式摩擦材1と相手材との間に潤滑油を介在させ、両者を引き剥がし、引き摺りトルクを低減できる。また、第5ピースG
5は、左上角に切欠部45L
2を有している。このため、第5ピースG
5の表面へ乗り上げた潤滑油を、湿式摩擦材1の反時計回りの回転に伴って、切欠部45L
2から効率よく排出できる。この結果、潤滑油の連れ周りによる引き摺りトルク上昇を抑制しつつ、潤滑油の引きはがし作用による引き摺りトルク低減を効果的に得ることができる。
【0092】
尚、前述した第5油溝55は、組合せT
5内で第5ピースG
5と第6ピースG
6とに挟まれて区画形成された油溝である。第5油溝55は、第5ピースG
5の切欠部45L
1及び第6ピースG
6の切欠部46L
2を含んだ油溝であり、油溝51と同様に、内周側S
Iに溝幅が広い幅広部を有し、外周側S
Oに溝幅が狭い幅狭部を有する。
第5油溝55において、幅狭部と幅広部との幅の相関は限定されないが、油溝51と同様の形状にすることができる。即ち、幅狭部の外周側S
Oへ通じる開口部をE55
Oとし、幅広部の内周側S
Iへ通じる開口部をE55
Iとした場合、開口部E55
Iは、開口部E55
Oの1.2倍以上10倍以下が好ましく、1.4倍以上9倍以下がより好ましく、1.5倍以上8倍以下が特に好ましい。より具体的には、開口部E55
Iの開口幅は、1.5mm以上20mm以下とすることができ、更に、1.5mm以上15mm以下とすることができ、更に、2mm以上12mm以下とすることができる。
【0093】
一方、組合せT
6(
図16b参照)は、第5ピースG
5と第6ピースG
6とが、油溝5を介して、第5ピースG
5の左側と第6ピースG
6の右側とで対面配置された組合せである。この組合せT
6(
図16b参照)により、第6ピースG
6の切欠部46L
2と、第6油溝56と、第5ピースG
5の切欠部45L
1と、が並んで配置される。この組合せT
6は、第3発明の湿式摩擦材1における組合せT
4と同様の効果を与える。
即ち、組合せT
6(
図16b参照)を有することで、湿式摩擦材1が反時計回りに回転している場合、切欠部46L
2で堰き止めた潤滑油を、第6ピースG
6の表面へ乗り上げさせることができる。そして、湿式摩擦材1と相手材との間に潤滑油を介在させ、両者を引き剥がし、引き摺りトルクを低減できる。また、第6ピースG
6は、右上角に切欠部46L
1を有している。このため、第6ピースG
6の表面へ乗り上げた潤滑油を、湿式摩擦材1の反時計回りの回転に伴って、切欠部46L
1から、即ち、第6油溝56から効率よく排出できる。この結果、潤滑油の連れ周りによる引き摺りトルク上昇を抑制しつつ、潤滑油の引きはがし作用による引き摺りトルク低減を効果的に得ることができる。
【0094】
同様に、湿式摩擦材1が時計回りに回転している場合、切欠部45L
1で堰き止めた潤滑油を、第5ピースG
5の表面へ乗り上げさせることができる。そして、湿式摩擦材1と相手材との間に潤滑油を介在させ、両者を引き剥がし、引き摺りトルクを低減できる。また、第5ピースG
5は、左上角に切欠部45L
2を有している。このため、第5ピースG
5の表面へ乗り上げた潤滑油を、湿式摩擦材1の時計回りの回転に伴って、切欠部45L
2から、即ち、第6油溝56から効率よく排出できる。この結果、潤滑油の連れ周りによる引き摺りトルク上昇を抑制しつつ、潤滑油の引きはがし作用による引き摺りトルク低減を効果的に得ることができる。
【0095】
本第4発明の湿式摩擦材1の摩擦部3は、組合せT
5及び組合せT
6を含めばよく、摩擦部3に含まれる組合せT
3又は組合せT
4の数は限定されない。
また、その配置も限定されず、例えば、組合せT
5及び組合せT
6は、何らかのセグメントピースを挟んで配置されてもよいし、組合せT
5と組合せT
6とは、他のセグメントピースを挟むことなく、隣り合って配置されてもよい。これらのうちでは、組合せT
5と組合せT
6とが、他のセグメントピースを挟むことなく、隣り合って配置されることが好ましい。
具体的には、
図15に例示するように、組合せT
5と組合せT
6とを隣り合わせて、連続して(繰り返して)有することができる。
【0096】
また、本第4発明の湿式摩擦材1でも、本第1発明の湿式摩擦材1の場合と同様に、組合せT
5と組合せT
6との間に、第1ピースG
1〜第4ピースG
4の4種のセグメントピースやこれら以外の他のセグメントピースを介在させることができる。
また、他のセグメントピースを備える場合には、第5油溝55及び第6油溝56以外の他の油溝5を備えることができる。この他の油溝5としては、前述の通り、第2油溝52や第4油溝54等が挙げられる。これらの形状、大きさ等も第1発明の湿式摩擦材1における油溝5の説明の通りである。
更に、本第4発明の湿式摩擦材1において、コアプレート2の1つの主面2aに配置されるセグメントピース4の数は限定されず、前述の第1発明の湿式摩擦材1の場合と同様である。
また、セグメントピース4の構成は限定されず、前述の第1発明の湿式摩擦材1の場合と同様である。
【0097】
尚、第1ピースG
1〜第4ピースG
4の4種のセグメントピースやこれら以外の他のセグメントピースとしては、前述した第9ピースG
9以外に、下記の第7ピースG
7及び第8ピースG
8が挙げられる。
第7ピースG
7は、略四角形をなすピースの右下角及び左下角が各々略四角形に切り欠かれたセグメントピースである(
図20参照)。即ち、略四角形をなすピースの右下角に切欠部47L
1を有し、更に、略四角形をなすピースの左下角に切欠部47L
2を有するセグメントピースである。
この第7ピースG
7は、
図20aに示すように、直線のみから形成できる。この場合、第7ピースG
7は、辺471〜478の8つの辺により構成できる。
また、第7ピースG
7は、
図20bに示すように、辺471、辺473、辺475及び辺477を曲線で形成できる。具体的には、回転中心Pからの距離に応じた曲率となるよう外周側S
Oへ膨らんだ曲線で形成できる。更に、略一定な溝幅を有する油溝5を目的として、辺472及び辺476を、その延長線上に回転中心Pが位置されるように傾斜させた直線で形成できる。更に、第7ピースG
7は、
図20cに示すように、各角部をR形状に面取りすることができる。
また、第7ピースG
7における切欠部47L
1及び切欠部47L
2の大きさは限定されず、上記の第5ピースG
5に関するW
2/W
1及びH
2/H
1に関する記載を、そのまま第7ピースG
7へ適用できる。
【0098】
第8ピースG
8は、略四角形をなすピースの右上角及び左上角が各々略四角形に切り欠かれたセグメントピースである(
図21参照)。即ち、略四角形をなすピースの右上角に切欠部48L
1を有し、更に、略四角形をなすピースの左上角に切欠部48L
2を有するセグメントピースである。
この第8ピースG
8は、
図21aに示すように、直線のみから形成できる。この場合、第8ピースG
8は、辺481〜488の8つの辺により構成できる。
また、第8ピースG
8は、
図21bに示すように、辺481、辺483、辺485及び辺487を曲線で形成できる。具体的には、回転中心Pからの距離に応じた曲率となるよう外周側S
Oへ膨らんだ曲線で形成できる。更に、略一定な溝幅を有する油溝5を目的として、辺484及び辺488を、その延長線上に回転中心Pが位置されるように傾斜させた直線で形成できる。更に、第8ピースG
8は、
図21cに示すように、各角部をR形状に面取りすることができる。
また、第8ピースG
8における切欠部48L
1及び切欠部48L
2の大きさは限定されず、上記の第5ピースG
5に関するW
2/W
1及びH
2/H
1に関する記載を、そのまま第8ピースG
8へ適用できる。
【実施例】
【0099】
以下では、本発明を実施例によって説明する。尚、各実施例に共通する説明は省略する。
[1]湿式摩擦材の調整
[実施例1]
下記要素を用いて実施例1の湿式摩擦材を得た(
図1参照)。
コアプレート2は、平板なリング形状(外径R
1=158mm、内径R
2=144mm、比R
1/R
2=1.10)をなし、内周から突設されたスプライン歯8(係合歯8)を有する。このコアプレート2の両主面2a(表側の主面2a及び裏側の主面2aの両面)に下記のセグメントピース4を接合して実施例1の湿式摩擦材を得た。
セグメントピース4は、複数のセグメントピースが互いに油溝を挟んでリング状に配置されて構成されている。
【0100】
セグメントピース4として、下記の異なる4種のセグメントピース(第1ピースG
1〜第4ピースG
4)を用いた。
第1ピースG
1:略四角形をなすピースの右下角が略四角形に切り欠かれたセグメントピース(
図2c参照)
第2ピースG
2:略四角形をなすピースの右下角が略四角形に切り欠かれたセグメントピース(
図3c参照)
第3ピースG
3:略四角形をなすピースの右下角が略四角形に切り欠かれたセグメントピース(
図4c参照)
第4ピースG
4:略四角形をなすピースの右下角が略四角形に切り欠かれたセグメントピース(
図5c参照)
【0101】
但し、各セグメントピースの各部の寸法は以下の通りである。
セグメントピースの最大幅W
1=9.6mm
セグメントピースの最大高H
1=8.9mm
切欠部の最大幅W
2=2.5mm
切欠部の最大高H
2=5.0mm
【0102】
また、第2ピースG
2は、鏡像対称であり、第1ピースG
1を裏返して第2ピースG
2として利用している。同様に、第4ピースG
4は、鏡像対称であり、第3ピースG
3を裏返して第4ピースG
4として利用している。
【0103】
セグメントピースは、これらの第1ピースG
1から第4ピースG
4までの4種のピースのみからなり、これらのセグメントピースを、時計周りに、第1ピースG
1、第2ピースG
2、第3ピースG
3及び第4ピースG
4の順に並べたグループを1つのグループとし、このグループを10グループ繰り返し、40枚のセグメントピース(4種のセグメントピースグループ×10)からなる摩擦部3を形成した。各セグメントピースは、油溝を介して対向されている。即ち、すべての隣り合ったセグメントピース同士の間には油溝が配置されている。従って、1つの主面2aの摩擦部3は、40枚のセグメントピースと、40個の油溝から構成され、同配置の摩擦部3を、表側の主面2aと裏側の主面2aとの両面に有している。
従って、実施例1の摩擦部3は、第1発明の湿式摩擦材1に特有の並び順を備えている。また、実施例1の摩擦部3は、第2発明の湿式摩擦材1に特有の組合せT
1及びT
2の両方を備えるとともに、並び順T
2−T
1−T
2及び並び順T
1−T
2−T
1の両方を備えている。更に、実施例1の摩擦部3は、第3発明の湿式摩擦材1に特有の組合せT
3及びT
4の両方を備えている。
【0104】
また、実施例1の湿式摩擦材1において各油溝の開口幅は以下の通りである。
油溝51の開口部E51
Iの開口幅=7mm
油溝51の開口部E51
Oの開口幅=2mm
油溝52の開口部E52
Iの開口幅=2mm
油溝52の開口部E52
Oの開口幅=2mm
油溝53の開口部E53
Iの開口幅=2mm
油溝53の開口部E53
Oの開口幅=7mm
油溝54の開口部E54
Iの開口幅=2mm
油溝54の開口部E54
Oの開口幅=2mm
【0105】
尚、各セグメントピース4は、パルプ及びアラミド繊維等の繊維基材と、カシューダスト等の摩擦調整剤と、珪藻土等の充填剤と、を抄造して得られた抄紙体に、硬化性樹脂を含浸させたのち硬化させたものである。そして、各セグメントピース4は、コアプレート2の主面2aに加圧加熱により接合している。
【0106】
[実施例2]
下記要素を用いて実施例2の湿式摩擦材を得た(
図10参照)。
コアプレート2は、実施例1に共通である。セグメントピース4は、複数のセグメントピースが互いに油溝を挟んでリング状に配置されて構成されている。
セグメントピース4として、下記の異なる5種のセグメントピース(第1ピースG
1、第2ピースG
2、第3ピースG
3、第4ピースG
4及び第9ピースG
9)を用いた。
第1ピースG
1:実施例1と共通
第2ピースG
2:実施例1と共通
第3ピースG
3:実施例1と共通
第4ピースG
4:実施例1と共通
第9ピースG
9:略四角形をなすピース(第1ピース〜第4ピースと同幅・同高)
【0107】
但し、各セグメントピースの各部の寸法は以下の通りである。
セグメントピースの最大幅W
1=9.6mm
セグメントピースの最大高H
1=8.9mm
切欠部の最大幅W
2=2.5mm
切欠部の最大高H
2=5.0mm
尚、第2ピースG
2は、鏡像対称であり、第1ピースG
1を裏返して第2ピースG
2として利用している。同様に、第4ピースG
4は、鏡像対称であり、第3ピースG
3を裏返して第4ピースG
4として利用している。
【0108】
セグメントピースは、第3ピースG
3、第4ピースG
4、第1ピースG
1、第2ピースG
2、第3ピースG
3、第4ピースG
4、第9ピースG
9(G
92)及び第9ピースG
9(G
92)の順に並べたグループを1つのグループとし、このグループを5グループ繰り返し、40枚のセグメントピースからなる摩擦部3を形成した。各セグメントピースは、油溝を介して対向されている。即ち、すべての隣り合ったセグメントピース同士の間には油溝が配置されている。従って、1つの主面2aの摩擦部3は、40枚のセグメントピースと、40個の油溝から構成され、同配置の摩擦部3を、表側の主面2aと裏側の主面2aとの両面に有している。
従って、実施例2の摩擦部3は、第2発明の湿式摩擦材1に特有の組合せT
1及びT
2の両方を備えるとともに、並び順T
2−T
1−T
2を備えている。更に、実施例2の摩擦部3は、第3発明の湿式摩擦材1に特有の組合せT
3を備えている。
【0109】
また、実施例2の湿式摩擦材1において各油溝の開口幅は以下の通りである。
油溝51の形状は、実施例1の油溝51と同様
油溝52の形状は、実施例1の油溝52と同様
油溝53の形状は、実施例1の油溝53と同様
油溝54の形状は、実施例1の油溝54と同様
油溝541の外周側及び内周側の開口幅=2mm
油溝59の外周側及び内周側の開口幅=2mm
油溝522の外周側及び内周側の開口幅=2mm
尚、各セグメントピース4の材料構成は、実施例1に共通である。
【0110】
[比較例1]
下記要素を用いて比較例1の湿式摩擦材を得た(
図22参照)。
コアプレート2は、実施例1に共通である。セグメントピース4は、複数のセグメントピースが互いに油溝を挟んでリング状に配置されて構成されている。
セグメントピース4として、下記の異なる3種のセグメントピース(第1ピースG
1、第2ピースG
2及び第9ピースG
9)を用いた。
第1ピースG
1:実施例1と共通
第2ピースG
2:実施例1と共通
第9ピースG
9:略四角形をなすピース(第1ピース〜第4ピースと同幅・同高)
【0111】
但し、各セグメントピースの各部の寸法は以下の通りである。
セグメントピースの最大幅W
1=9.6mm
セグメントピースの最大高H
1=8.9mm
切欠部の最大幅W
2=2.5mm
切欠部の最大高H
2=5.0mm
尚、第2ピースG
2は、鏡像対称であり、第1ピースG
1を裏返して第2ピースG
2として利用している。
【0112】
セグメントピースは、第9ピースG
9(G
92)、第1ピースG
1、第2ピースG
2及び第9ピースG
9(G
92)の順に並べたグループを1つのグループとし、このグループを10グループ繰り返し、40枚のセグメントピースからなる摩擦部3を形成した。各セグメントピースは、油溝を介して対向されている。即ち、すべての隣り合ったセグメントピース同士の間には油溝が配置されている。従って、1つの主面2aの摩擦部3は、40枚のセグメントピースと、40個の油溝から構成され、同配置の摩擦部3を、表側の主面2aと裏側の主面2aとの両面に有している。
【0113】
また、比較例1の湿式摩擦材1において各油溝の開口幅は以下の通りである。
油溝51の開口部E51
Iの開口幅=7mm
油溝51の開口部E51
Oの開口幅=2mm
その他の油溝の内周側S
Iの開口幅=2mm
その他の油溝の外周側S
Oの開口幅=2mm
尚、各セグメントピース4の材料構成は、実施例1に共通である。
【0114】
[比較例2]
下記要素を用いて比較例2の湿式摩擦材を得た(
図23参照)。
コアプレート2は、実施例1に共通である。セグメントピース4は、複数のセグメントピースが互いに油溝を挟んでリング状に配置されて構成されている。
セグメントピース4として、下記の異なる2種のセグメントピース(第9ピースG
9及び第10ピースG
10)を用いた。
第9ピースG
9:比較例1と共通
第10ピースG
10:第9ピースG
9の内周側S
Iを下端から5.0mm切除したピース
【0115】
但し、各セグメントピースの各部の寸法は以下の通りである。
セグメントピースの最大幅W
1=9.6mm
セグメントピースの最大高H
1=8.9mm
切欠部の最大高H
2=5.0mm
【0116】
セグメントピースは、第10ピースG
10、第9ピースG
9(G
92)、第9ピースG
9(G
92)及び第9ピースG
9(G
92)の順に並べたグループを1つのグループとし、このグループを10グループ繰り返し、40枚のセグメントピースからなる摩擦部3を形成した。各セグメントピースは、油溝を介して対向されている。即ち、すべての隣り合ったセグメントピース同士の間には油溝が配置されている。従って、1つの主面2aの摩擦部3は、40枚のセグメントピースと、40個の油溝から構成され、同配置の摩擦部3を、表側の主面2aと裏側の主面2aとの両面に有している。
【0117】
また、比較例2の湿式摩擦材1において各油溝の開口幅は以下の通りである。
各油溝の内周側S
Iの開口幅=2mm
各油溝の外周側S
Oの開口幅=2mm
尚、各セグメントピース4の材料構成は、実施例1に共通である。
【0118】
[2]引き摺りトルクの測定
上記[1]の実施例1−2及び比較例1−2の各湿式摩擦材を、各々4枚用いて、下記条件下でSAE摩擦試験機により、その回転数500−3000rpmの間で測定した。得られた結果を
図24(
図24は、縦軸上側程、引き摺りトルクが大きいことを示す)にグラフにして示した。
自動変速機潤滑油(AutoAtic Transmission Fluid、「ATF」は出光興産株式会社の登録商標であるが、ここでは当該登録商標とは無関係に以下「ATF」と略す。)油温:40℃、ATF油量:1000mL/分(軸心潤滑)、パッククリアランス:0.20mm/枚の環境下で、試験体の湿式摩擦材を4枚セットし、回転速度を500〜3000rpmまで変化させ、500rpm、1000rpm、1500rpm、2000rpm、2500rpm、3000rpmの6点において引き摺りトルク(N・m)を測定した。
【0119】
[3]実施例の効果
図24の結果から、比較例1の構成(特許文献1及び特許文献2の形態)では、相対回転数が高い領域における引き摺りトルクに比べて、相対回転数が低い領域における引き摺りトルクが大きくなっていることが分かる。これに対して、比較例2の構成(特許文献3の形態)では、相対回転数が低い領域における引き摺りトルクを低減できることが分かる。これに対して、実施例2の構成では、比較例1及び比較例2の構成に比べて、相対回転数が低い領域における引き摺りトルクを更に大幅に低減できることに加えて、相対回転数が高い領域における引き摺りトルクも低減できることが分かる。更に、実施例1の構成では、比較例1及び比較例2の構成に比べて、相対回転数が低い領域における引き摺りトルクを更に大幅に低減できることに加えて、相対回転数が高い領域における引き摺りトルクも低減して、全体として、よりフラットな引き摺りトルクを達することができることが分かる。また、相対回転数が低い領域における引き摺りトルクは、実施例2の構成と比較しても更に低減できることが分かる。
【0120】
尚、本発明においては、上記の具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【解決手段】本湿式摩擦材1は、平板なリング形状をなすコアプレート2と、コアプレート2の主面2aに配置された摩擦部3と、を有する湿式摩擦材1であり、摩擦部3は、第1ピース、第2ピース、第3ピース及び第4ピースの4種のセグメントピース4が、油溝5を介してリング状に、この並び順で繰り返して配置されてなる。