(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6585320
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】足場つなぎ装置
(51)【国際特許分類】
E04G 5/04 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
E04G5/04 D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-102146(P2019-102146)
(22)【出願日】2019年5月31日
【審査請求日】2019年5月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508078824
【氏名又は名称】近江OFT株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518024482
【氏名又は名称】北海道ニスコ販売株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517439018
【氏名又は名称】一級建築士事務所 株式会社ビックウォーク
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】澤田 正治
【審査官】
西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特許第6485930(JP,B1)
【文献】
特開2000−129910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/04
F16B 23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に下穴加工無しでねじ込まれる自己穿孔ねじと、前記自己穿孔ねじと直列状に配置された第1ナット及び第2ナットを備えており、
前記自己穿孔ねじには、前記第1ナットが螺合する外向き雄ねじ部を形成している一方、
前記第2ナットには、前記第1ナットに螺合する軸部と係合穴付き頭とを有する連結ボルトが挿通されていて、前記連結ボルトの頭が前記第2ナットに抜け不能に保持されることにより、前記第2ナットが前記第1ナットに対して首振り自在に連結されており、
前記連結ボルトは、前記第2ナットに挿通したレンチによって回転駆動可能であり、かつ、前記第2ナットに、足場を構成するジョイント金具をボルトで締結可能になっている構成であって、
前記自己穿孔ねじの外向き雄ねじ部と前記連結ボルトの先端とに、軸方向の嵌め合いによって互いに係合して相対回転不能になる係合手段を形成している、
足場つなぎ装置。
【請求項2】
前記係合手段は、前記連結ボルトの先端に突設した係合突起と、前記自己穿孔ねじの外向き雄ねじ部に形成した係合穴とから成っている、
請求項1に記載した足場つなぎ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、鉄骨式等の建物の施工に際して設置される足場の組み立てに使用される足場つなぎ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄骨式等の建物を施工するに当たっては、建物を囲うように足場が組まれており、この足場は、倒れないように足場つなぎ装置を介して建物に固定されている。この足場つなぎ装置の例として、特許文献1には、ドリルねじと長ナット(高ナット)とから成る金具が開示されている。
【0003】
すなわち、特許文献1の金具は、足場に連結された連結用軸体(足場つなぎ)がねじ込まれる長ナットの一端部に、ドリルねじの頭を抱持する円筒部を形成して、長ナットをドリルねじの頭に対して揺動可能に連結したもので、長ナットの軸心をドリルねじの軸心に対してある程度の範囲で任意に変更できるため、連結用軸体の軸心とドリルねじの軸心とがずれていても、連結用軸体と長ナットとを連結することができる。
【0004】
他方、本願出願人の出願に係る特許文献2には、ドリルねじと第1及び第2のナット(中間部材と継手部材)とを直列状に配置して、第1ナット(中間部材)はドリルねじに設けて外向き雄ねじ部に螺合し、第2ナット(継手部材)はその内部に挿通したボルトによって一方のナットに首振り自在に連結し、他方のナットにジョイント金具がボルトで固定される金具が開示されている。
【0005】
この特許文献2では、ドリルねじは、建物の表面に重なるフランジを備えており、第1ナットとフランジとの対向面に、互いに噛み合うカムを形成することにより、外向き雄ねじ部に対する一方のナットの食いつきを防止しつつ、第1ナットの回転トルクをドリルねじに伝達できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2764232号公報
【特許文献2】特許第6485930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種の金具が使用される建物では、アングル材なC型鋼等から成る構造材にALC板や断熱パネル等の壁材が固定されており、特許文献1のドリルねじは、ALC板等の壁材を貫通して構造材にねじ込まれている。
【0008】
そして、特許文献1では、長ナットの一端部でドリルねじの頭を抱持しているので、長ナットを取り外すためには、ドリルねじをレンチでねじ戻して建物から取り外す作業が必要であり、長ナットとセットになっているドリルねじを取り外してから、別の固定用ドリルねじを同じ箇所にねじ込み直して壁材を固定している。このため、足場つなぎ用ドリルねじの取り外し工程と、同じ箇所に別のドリルねじをねじ込む工程との2つの工程が必要であり、このため、建物の施工に手間がかかるという問題があった。
【0009】
これに対して特許文献2では、ドリルねじは建物に存置したままになることから、ドリルねじによって壁材などを構造材に固定するが可能であり、従って、建物の施工の手間を軽減できる。また、足場つなぎ装置による連結を解除した状態で壁材を構造材に固定する作業は必要ないため、作業者の安全性も向上できる。
【0010】
このように、特許文献2の足場つなぎ装置は優れた効果を有するが、本願発明者が検討したところ、ドリルねじの回転操作の確実性の点において改良の余地があることが判明した。
【0011】
すなわち、特許文献2では、第1ナットとドリルねじのフランジとの対向面に、互いに噛み合う端面カムを形成することにより、ドリルねじの外向き雄ねじ部に対する第1ナットの食いつきを防止しているが、加工誤差により、ごく稀ながら、カム同士が噛み合わずに突っ張り合ってこじれてしまうおそれがあった。
【0012】
本願発明はこのような現状を背景に成されたものであり、特許文献2のようにドリルねじ等の自己穿孔ねじと2本のナットとを使用しつつ、自己穿孔ねじの回転操作を確実化できる足場つなぎ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明の足場つなぎ装置は、
「建物に下穴加工無しでねじ込まれる自己穿孔ねじと、前記自己穿孔ねじと直列状に配置された第1ナット及び第2ナットを備えており、
前記自己穿孔ねじには、前記第1ナットが螺合する外向き雄ねじ部を形成している一方、
前記第2ナットには、前記第1ナットに螺合する軸部と係合穴付き頭とを有する連結ボルトが挿通されていて、前記連結ボルトの頭が前記第2ナットに抜け不能に保持されることにより、前記第2ナットが前記第1ナットに対して首振り自在に連結されており、
前記連結ボルトは、前記第2ナットに挿通したレンチによって回転駆動可能であり、かつ、前記第2ナットに、足場を構成するジョイント金具をボルトで締結可能になっている」
という基本構成において、
「前記自己穿孔ねじの外向き雄ねじ部と前記連結ボルトの先端とに、軸方向の嵌め合いによって互いに係合して相対回転不能になる係合手段を形成している」
という構成が付加されている。
【0014】
自己穿孔ねじとしては、ドリルねじやタッピンねじ、先端を尖らせた木ねじ状のねじ(揉み切りねじ)など、様々な構造のものを採用可能であり、建物を構成する部材の種類に応じて選択したらよい。すなわち、例えば鉄骨にねじ込む場合はドリルねじを使用して、ALCやコンパネ材にねじ込む場合は揉み切りねじを使用するというように、相手部材の材質に合わせて種類を選択したらよい。
【0015】
係合手段は様々な構成を採用できるが、請求項2では、
「前記係合手段は、前記連結ボルトの先端に突設した係合突起と、前記自己穿孔ねじの外向き雄ねじ部に形成した係合穴とから成っている」
という構成を採用している。
【0016】
係合突起及び係合穴の形態としては、六角や四角、星形のような角形、十字形、三ツ矢形などの様々な形態を採用できる。マイナス形(スリワリ形)も採用できるが、これは、長方形の四角形に含まれるといえる。
【発明の効果】
【0017】
本願発明では、ドリルねじ等の自己穿孔ねじは連結ボルトを介して建物の構造材等にねじ込まれるが、連結ボルトと自己穿孔ねじとは、軸方向の嵌め合わせによって相対回転不能に係合しているため、レンチで連結ボルトを回転させると、自己穿孔ねじは連結ボルトによって回転する。従って、自己穿孔ねじを、レンチで回転操作するのと同じ状態で回転駆動できる。
【0018】
従って、連結ボルトと自己穿孔ねじとの間に食い付きのような現象が生じることは皆無であり、その結果、自己穿孔ねじを確実に回転駆動できると共に、施工後において連結ボルトを自己穿孔ねじの外向き雄ねじ部7から抜き外すことも、第1ナットを自己穿孔ねじの外向き雄ねじ部から取り外することも、問題なく容易に行える。
【0019】
従って、本願発明は、ドリルねじ等の自己穿孔ねじによって壁材を構造材に固定できることによる施工能率向上効果は特許文献2と同様に保持しつつ、自己穿孔ねじのねじ込みを確実化できる。
【0020】
請求項2のように、係合手段として角形や十字形等の係合突起と係合穴との組み合わせを採用すると、連結ボルトから自己穿孔ねじへのトルクの伝達を確実化できて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態を示す図で、(A)は一部破断分離図、(B)は(A)のB−B視拡大図、(C)は(A)のC−C視拡大図である。
【
図2】(A)はねじ込み状態を示す図、(B)は取り外し状態を示す図である。
【
図3】(A)は足場用ジョイント金具を取り付け状態の図、(B)は足場を解体した後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1).構造の説明
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。足場つなぎ装置は、略同心に配置されたドリルねじ1と第1ナット2と第2ナット3と連結ボルト4とを備えている。ドリルねじ1は自己穿孔ねじの一例であり、その一端部に形成されたドリル部5とこれに続く基本ねじ部6とを備えており、他端部は外向き雄ねじ部7になっている。基本ねじ部6と外向き雄ねじ部7との間にはフランジ8が一体に形成されている。基本ねじ部6には、皿状の座金9とパッキン10とが嵌め込まれている。外向き雄ねじ部7は、基本ねじ部6よりも大径になっている。
【0023】
第1ナット2は六角形の高ナット(ロングナット)を使用しており、内部には、ドリルねじ1の外向き雄ねじ部7と螺合する雌ねじ11が全長に亙って形成されている。他方、第2ナット3は六角高ナットと同じ外観を呈しており、内部には雌ねじ12が形成されているが、第2ナット3は第1ナット2よりも一回り大径になっていて、雌ねじ12の内径も第1ナット2の雌ねじ11より大径になっている。
【0024】
連結ボルト4は第2ナット3に挿通されており、その軸部は第2ナット3から露出して第1ナット2にねじ込まれるようになっている。また、連結ボルト4は、第2ナット3の内部に位置した皿頭13を備えており、第2ナット3のうち第1ナット2の側に位置した一端部に、連結ボルト4における皿頭13の座面が抜け不能に重なるテーパ面14と、連結ボルト4の軸が遊嵌する内向きフランジ15とを形成している。皿頭13の頂面には、六角レンチ16が嵌まる六角の係合穴(リセス)17が空いている。
【0025】
第1ナット2と第2ナット3とは一種の自在継手になっており、第2ナット3は、ある程度の範囲で第1ナット2と交差した姿勢に任意に姿勢変更できる。換言すると、第2ナット3は、ある程度(例えば、第1ナット2の軸心に対して約10°程度)の範囲で、第1ナット2に対して自由に首振りさせることができる。
【0026】
そして、連結ボルト4の先端に六角の係合突起18を形成している一方、ドリルねじ1における外向き雄ねじ部7の端面には、係合突起18が相対回転不能に嵌合する係合穴19が形成されており、これら係合突起18と係合穴19とにより、請求項に記載した係合手段が構成されている。なお、外向き雄ねじ部7に係合突起18を形成して、連結ボルト4の先端面に係合穴19を形成することも可能である。
【0027】
図2(B)から理解できるように、ドリルねじ1を第1ナット2から離反させた状態で連結ボルト4を第1ナット2にねじ込んで、係合突起18を第1ナット2の一端から突出させることにより、連結ボルト4の係合突起18を外向き雄ねじ部7の係合穴19に嵌め込むことができる。そして、係合突起18を係合穴19に嵌合させてから、第1ナット2を外向き雄ねじ部7にねじ込むと、
図2(A)のように、足場つなぎ装置は全体として連結された1つの外観を呈した状態になる。
【0028】
従って、第1ナット2をドリルねじ1の外向き雄ねじ部7に取り付けた状態で、第1ナット2と第2ナット3との間に、少なくとも外向き雄ねじ部7の突出寸法と同じ寸法の間隔を空け得るように設定することにより、係合穴19に対する係合突起18の挿脱が許容されている。
【0029】
(2).まとめ
足場つなぎ装置の使用対象になる建物は、アングル材やC型鋼等の構造材20にALCパネルや断熱パネル等の壁材21を取付けた構造であり、
図2(A)に示すように、連結ボルト4を介してレンチ16でドリルねじ1を回転操作することにより、足場つなぎ装置が建物に取付けられる。すなわち、パッキン10及び座金9を介してフランジ8で壁材21を押さえた状態で、ドリルねじ1が建物の構造材20にねじ込まれにことにより、足場つなぎ装置が建物に取付けられる。
【0030】
図3(A)に示すように、足場はパイプ製の支柱22を備えており、支柱22を抱持するジョイント金具23がボルト24で第2ナット3の端面に固定される。この場合、第2ナット3はある程度の範囲で首振りできるため、支柱22の位置が多少ずれていても、ジョイント金具23を第2ナット3に締結することができる。なお、ボルト24のねじ込みは、第2ナット3をスパナで回転不能に保持した状態で行われる。
【0031】
足場の撤去に際しては、ジョイント金具23を取り外してから、第1ナット2を手でねじ戻したらよい。第1ナット2はドリルねじ1の外向き雄ねじ部7に食い込んではいないため、ドリルねじ1の連れ戻りを防止した状態で簡単に取り外すことができる。
【0032】
ドリルねじ1の外向き雄ねじ部7には係合穴19が形成されているため、第1ナット2を取り外した後にレンチ16で増し締めすることができる。また、ドリルねじ1を取り外す必要が生じた場合は、容易に取り外すことができる。
【0033】
足場を解体した後もドリルねじ1は建物に取付けられたままになっていて、ドリルねじ1が壁材21の締結部材として機能し続けている。従って、建物の施工の手間を軽減できる。なお、建物の完成後にドリルねじ1の外向き雄ねじ部7が露出したままになる場合は、
図3(B)に一点鎖線で示すように、樹脂製等のキャップ25で露出部を被覆したらよい。外向き雄ねじ部7がモルタルで隠れたりサイディング材で覆われたりする場合は、特段の被覆手段は必ずしも必要ない。
【0034】
本実施形態では、第1ナット2を外向き雄ねじ部7にねじ込んだ状態で、第1ナット2と第2ナット3との間に外向き雄ねじ部7の突出寸法と同じ程度の間隔が空くが、
図3(A)に一点鎖線で示すように、C形の弾性変形自在なスペーサ26を連結ボルト4に嵌め込むことにより、隙間を小さくしておくことも可能である。このスペーサ26は、足場の撤去に際して取り外される。
【0035】
実施形態では、ドリルねじ1と第1ナット2と第2ナット3とがセットになっているが、足場を撤去したら第1ナット2と第2ナット3とは建物から取り外される。取り外した第1ナット2と第2ナット3とは廃棄してもよいし、ドリルねじ1を補充して新たなセットとして再利用してもよい。
【0036】
本願発明は、他にも様々に具体化できる。例えば、上記の実施形態では、連結ボルト4の頭を皿頭13に形成したが、連結ボルト4の頭は、円柱状頭や鍋頭、球状頭なども採用できる。第2ナット3の一端部に、テーパ面14を形成せずに内向きフランジ15のみを形成することも可能である。また、第1ナット2及び第2ナット3の外形は円形や四角形などに形成することも可能である。更に、係合突起18及び係合穴19は、既に触れたように、四角形や五角形などの他の角形形状や星型の形状、ギア状の形状、楕円形状なども採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本願発明は、足場つなぎ装置に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 自己穿孔ねじの一例としてのドリルねじ
2 第1ナット
3 第2ナット
4 連結ボルト
5 ドリル部
6 建物にねじ込まれる基本ねじ部
7 外向き雄ねじ部
8 フランジ
13 連結ボルトの皿頭
16 レンチ
17 連結ボルトのレンチ用係合穴(リセス)
18 係合手段を構成する係合突起
19 係合手段を構成する係合穴
20 構造材
21 建物の壁材
22 足場を構成する支柱
23 足場を構成するジョイント金具
【要約】
【課題】足場の組み立てが容易でしかも建物の施工の手間を軽減できる足場つなぎ装置において、ドリルねじの回転駆動の確実化を図る。
【解決手段】足場つなぎ装置は、ドリルねじ1と第1ナット2と第2ナット3と連結ボルト4とで構成されている。ドリルねじ1はフランジ8と外向き雄ねじ部7とを備えており、第1ナット2は外向き雄ねじ部7に螺合する。第2ナット3は、連結ボルト4で第1ナット2に組振り可能に連結されている。連結ボルト4の先端に係合突起18を形成して、外向き雄ねじ部7の端面には係合穴19が形成されている。連結ボルト4がレンチの役割を果たすため、ドリルねじ1を確実に回転駆動できる。
【選択図】
図1