(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明における空気弁と補修弁における流量制御構造の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、本発明の空気弁と補修弁における流量制御構造の第1実施形態を示しており、
その概要は、弁箱の下部側に管路からの入口側である流入口と上部側に出口側である大空気孔を設け、この弁箱内にはフロート弁体と遊動弁体を収納して空気弁本体を構成し、この空気弁本体の下部に、外部管路からの水圧を遮断可能な弁体を有する補修弁本体を設け、前記弁箱の上部側に前記大空気孔を被蓋するカバー体を取付け、このカバー体に前記弁機構部を設け、この弁機構部は、前記制御弁体の上下動又は回動により前記大空気孔の開口面積を縮小し、前記大空気孔から排気される空気流量を絞って抑制する機構である。なお、図2においては、
図1における空気弁の制御弁体の開状態を示している。
【0024】
図1において、本発明の流量制御構造では、管路である水道本管1から分岐されるT字管(分岐管)2に補修弁本体10が接続され、この補修弁本体10に空気弁本体20が接続される。空気弁本体20には、弁機構部21が設けられている。
【0025】
空気弁本体20は、いわゆる水道用急速空気弁と呼ばれる空気弁からなっており、圧力下排気機能、すなわち通水状態で管内に混入する空気が内部に溜まってきたときに、水圧が作用している状態であっても自動的に空気を排出できる機能と、多量排気機能、すなわち通水作業などにより管路1内に水が流入したときに、この管路1内で圧縮された空気を多量に排出可能な機構からなる双方の機能を発揮するように設けられている。空気弁本体20は、弁箱22、球状のフロート弁体23、円盤状の遊動弁体24、案内体25、カバー体26を有している。
【0026】
空気弁本体20の弁箱22は、例えばダクタイル鋳鉄製からなり、この弁箱22内には、例えば発砲エボナイトなどの樹脂製のフロート弁体23、ポリプロピレンなどの樹脂製の遊動弁体24、ABS樹脂などの樹脂製からなる案内体25が配設されている。
【0027】
弁箱22の下部側には管路1からの入口側である流入口30、上部側には開口部31が設けられている。上部側の開口部31には、例えばダクタイル鋳鉄製の蓋体32がボルト33等の固着手段で固定される。流入口30は、所定の流路面積を確保するように設けられる。この弁箱22の外周下部にはフランジ34が設けられている。
【0028】
蓋体32は、内周に大空気孔35を有し、この大空気孔35を介して弁箱22内に空気等の流体が吸入排出可能に設けられる。大空気孔35は、案内体25の開口部位よりも縮径した内径に設けられ、遊動弁体24によって塞がれたときに止水可能になっている。蓋体32上面側の大空気孔35の周囲には、ストッパ部36が適宜の間隔で上方に突出形成される。
【0029】
案内体25は、略筒状の容体状に設けられ、フロート弁体23、遊動弁体24を収納可能に弁箱22内に装着される。案内体25の上部には環状突部37が形成され、この環状突部37は弁箱22の内周に設けられた環状段部38に係合可能になっている。案内体25は、環状突部37が環状段部38に載置された状態で、この環状段部38と蓋体32とにより挟み込まれるように弁箱22内に固定される。案内体25の上部側には流体通過用の連通部39が複数の切欠き部位により等間隔になるように形成され、この連通部39の面積が流体通過時の面積になっている。また、案内体25の底面側には、所定径の孔40が形成されている。
【0030】
案内体25の内部には、フロート弁体23と、このフロート弁体23の上方に遊動弁体24が配設される。これらフロート弁体23、遊動弁体24は、弁箱22内の水位に応じて浮力を受けて案内体25内をそれぞれ上下移動し、この上下動作により水道水に含まれる空気が空気弁本体20の外部に排出可能に設けられる。遊動弁体24の中心位置には凹状の装着部41が設けられ、この装着部41に空気が排出可能な小空気孔42を有する例えばゴム製の弁座43、合成樹脂製のねじこま44が装着されている。
【0031】
カバー体26は、弁箱22の上部を包囲可能な略円盤状に設けられ、弁箱22の上部側に固着ボルト45で取付けられる。このとき、大空気孔35と大気とが連通した状態でカバー体26により蓋体32が被覆される。カバー体26の中央には弁機構部21が設けられる。
【0032】
空気弁本体20に設けられる弁機構部21は、制御弁体50、操作用ボルト51、ナット52、ナット部材53を有している。制御弁体50は、大空気孔35の穴径よりも大径の円板状に形成され、操作用ボルト51の端部側にナット52で挟着されて固定される。操作用ボルト51は、カバー体26に固定されたナット部材53のめねじに螺合するおねじを有し、これらの螺合によりカバー体26に上下移動可能に取り付けられる。これにより、操作用ボルト51を回転操作することで制御弁体50を上下動させることができ、この制御弁体50の上下動で大空気孔35への開口面積を調節可能な弁機構部21となり、この弁機構部21で大空気孔35から排気される空気流量を抑制して流量を制御することが可能になる。
この場合、制御弁体50を予め設定した位置にワンタッチで固定できる構造に設けたり、水圧に応じて開度を設定しておくようにしてもよい。
弁機構部21は、空気弁本体20或は補修弁本体10に設けることができ、上記のように空気弁本体20に設ける以外にも、補修弁本体10側に設けることもできる。
【0033】
弁機構部21は、制御弁体50の上下動時において、この制御弁体50を下方向に移動したときにストッパ部36に当接して大空気孔35の開口面積を縮小させ、この大空気孔35から排気される空気流量を絞って抑制する機構となる。このようにストッパ部36により確実に絞り時の開口面積を確保することで、管路1内に不用意な負圧、加圧が発生した場合にもこの空気を確実に外部に逃がすことが可能になる。ストッパ部36を所定の高さに設定すれば、制御弁体50が当接したときの絞り量を設定可能となり、この場合に最小の開口面積となる。弁機構部21は、制御弁体50の上下動以外にも、制御弁体50の回動により大空気孔35の開口面積を縮小する機構に設けることもできる。
【0034】
図1における補修弁本体10は、空気弁本体20の下部において、直下に併設するように接続され、この空気弁本体20の補修を実施するときに管路1内からの水圧を遮断可能に設けられる。この補修弁本体10は、ボデー60、弁体61、レバー62を有している。
【0035】
補修弁本体10のボデー60の上部、下部側にはそれぞれフランジ63、64が形成され、補修弁本体10は、上部のフランジ63に空気弁本体20の下部のフランジ34、下部のフランジ64に分岐管2の上部のフランジ65がそれぞれ図示しない取付用ボルトで接続されることにより配設される。弁体61は、例えばボール弁体からなり、このボール弁体61は弁棒67に接続される。弁棒67にはレバー62が取付けられ、このレバー62の操作によりボール弁体61を開閉操作可能となり、ボール弁体61の開閉により管路1から空気弁本体20への水圧を遮断可能となる。
【0036】
補修弁本体10は、一般に用いられているものであればよく、例えば、本実施形態で示したようにボール弁を用いることができ、この場合、ボール弁10の弁棒67の90°の回動により開閉操作することが可能になる。補修弁本体10としてボール弁を使用する場合、そのボール口径を空気弁の内部流路の口径と略同じにすることが望ましい。なお、後述するように、補修弁本体10における弁体は、
図17及び
図18に示すように、バタフライバルブのジスク202であってもよい。
【0037】
続いて、本発明の空気弁と補修弁における流量制御構造の上記実施形態における動作並びに作用を説明する。
図1において、空気弁本体20の弁箱22内に水が無いときにはフロート弁体23、遊動弁体24が降下して大空気孔35が開放した状態になり、この状態から急速排気や急速吸気の動作がおこなわれる。
【0038】
急速排気は、補修弁本体10を開状態にして空気弁本体20内に充水するときに、管路1内の空気を大空気孔35を介して急速に多量に排気するときの動作となる。
図1において、急速排気時には、遊動弁体24、フロート弁体23はともに浮き上がることなく案内体25の下方に位置するため、大空気孔35が全開状態になる。これにより、管路1内の空気が空気弁本体20を介して効率的に外部に排出される。
【0039】
急速吸気は、管路1内の水を排出するときに、空気弁本体20を介して急速にこの管路1内に多量の吸気をおこなうときの動作となる。急速吸気時には、
図1に示すように遊動弁体24、フロート弁体23が降下した状態となる。この場合、大空気孔35が開口し、この大空気孔35から効率的に吸気して管路1内の排水が迅速におこなわれる。このとき、孔40から案内体25内に蓄積した水も排水される。急速吸気時には、フロート弁体23、遊動弁体24が上昇することはない。
これらの急速排気、急速吸気により、管路1への最初の送水や排水などの作業が短時間でおこなわれる。
【0040】
空気弁本体20内への充水が完了し、管路1内が満水状態になって弁箱22内が水で満たされているときには、
図2に示すようにフロート弁体23、遊動弁体24が浮力によって上昇し、遊動弁体24が蓋体32の下面32aに密着して大空気孔35を塞ぎ、かつ、フロート弁体23が遊動弁体24の小空気孔42を塞ぐ。これにより、弁箱22内が完全に遮蔽された状態になり、外部への水の流出が防がれる。
【0041】
この満水時の圧力下において、管路1内に混入している空気は、徐々に空気弁本体20に集まって弁箱22内に溜まる。この空気量が一定に達すると、先ずフロート弁体23のみが降下し、遊動弁体24の小空気孔42が開いた状態になる。これは、大空気孔35と小空気孔42とにおける孔径の大小関係により、圧力下においては遊動弁体24が大空気孔35を有する蓋体32の下面32aから離れないためであり、その結果、フロート弁体23のみが自重により降下する。その際、フロート弁体23が確実に降下し、開口状態の小空気孔42から空気弁本体20内の空気が外部に排出される。空気の排出により弁箱22内の空気量が少なくなると、フロート弁体23が浮力により上昇して再び小空気孔42を塞ぐ。以上の動作を繰り返すことにより、空気弁本体20を介して管路1内に溜まった空気が自動的に弁外に排出される。
【0042】
本発明の空気弁と補修弁における流量制御構造では、空気弁本体20の下部に補修弁本体10を設け、空気弁本体20のカバー体26に弁機構部21を設け、この弁機構部21の操作用ボルト51を介して制御弁体50を上下させて大空気孔35への開口面積を調節しているので、内部に安全弁を設けることなく急速排気時において大空気孔35から排気される空気流量を抑制しながら流量制御できる。
【0043】
この場合、
図1に示すように、蓋体32上面側の大空気孔35にストッパ部36を設けていることで、制御弁体24が下方向に移動したときにはこのストッパ部36に当接して大空気孔35を完全に塞ぐこと無く空気流量を絞り、弁機構部21による開口面積を縮小して大空気孔35から排気される空気流量の抑制機能を発揮する。
【0044】
弁機構部21を操作する場合、制御弁体50を任意の位置に上下動でき、この場合、
図2に示すように制御弁体50を上昇させて大空気孔35を全開状態にすれば、空気弁本体20を通常の作動状態にして圧力下排気、多量排気が可能になり、初期充水を実施できる状態となる。初期充水後の平常運転時には、
図1に示すように操作用ボルト51を操作して制御弁体50を下降させて大空気孔35を絞ることで空気排気量を制限した状態にすればよい。これにより、地震等で管路1が損傷し、負圧、加圧の発生で急激な充水になり空気が急速に排出されるような場合でも、空気流量を一定以下に抑えて空気弁本体20が破損することのない一定以下の水撃に抑えることができる。
【0045】
使用圧力に応じて最小開度を設定しておき、操作用ボルト51によって最小開度にしたり、開度確認用の目盛を設けて本管水圧に応じて流速を制御するような弁構造としてもよい。さらには、開度目盛を水圧値に置き換えれば、空気弁本体20が設置された現場で作業者が確認しやすくなる。また、補修弁本体10は、ボール弁形式以外にも、仕切弁形式や玉形弁形式などの異なる構造であってもよい。
【0046】
ここで、上述した地震等の不用意な充水時に、大空気孔35から排気される空気流量を小さくすることで水撃を効果的に抑えることができることの理由を説明する。
図1において、管路1から水が分岐管2に到達し、空気弁本体20内に流入したときには、空気弁本体20内のフロート弁体23を押し上げて大空気孔35を急閉塞して流水が急閉止し、空気弁本体20内に水撃が発生する。このとき、空気弁本体20のフロート弁体23を閉止したときの水撃上昇値Pwは、水の流速Vwによって、
Pw=a・Vw/g
の式により計算される。ここで、a:管材質、流体の種類等で決まる定数、g:重力加速度(9.8m/s
2)とし、水撃上昇値の単位はmAqとなる。この式において、水の流速Vwを小さくすることにより水撃上昇値Pwを低減できることを確認できる。
【0047】
この場合、管路1内に空気が導入され、再度充水されるときには、分岐管2内の水の流速Vwは空気弁本体20から排出される空気量(空気の流速Vair)と管路1内の圧力とに依存する。そのため、水流速Vwは、空気の流速Vairを小さくすることで小さくできる。
空気の流速Vairを小さく抑えるためには、出口側である大空気孔35の開度を絞るようにすればよい。開度を絞るためには、弁機構部21を設け、この弁機構部21により大空気孔35から排気される空気流量を抑制して流量を制御する。
【0048】
本実施形態の空気弁本体20の場合、例えば、水撃上昇値Pwが25MPa程度では内部部品が破損する可能性があり、水撃上昇値Pwが10MPa以下で部品の破損を防ぐことが可能になる。このため、上記の関係において、水撃上昇値Pwが5MPa以下となるような水流速Vw(=空気の流速Vair)を求めておき、管路1内圧力に応じて空気の流速Vairとなるような補修弁本体10の開度を設定することにより、この開度に合わせることで水撃を防止できる。
図示しないが、補修弁本体10の開度は、レバー62に開度表示部を設けることで確認でき、レバー62にストッパ機構を設けてこのストッパ機構で保持することで空気弁本体20が破損しない一定圧力以下の水撃値に抑えることができる。
【0049】
図3においては、空気弁本体における弁機構部の他例を示している。
図3(a)、
図3(b)における弁機構部70は、ローレットタイプからなり、
図3(a)においては、制御弁体50を下降して大空気孔35を絞った状態、
図3(b)においては、制御弁体50を上昇した全開状態を示している。弁機構部70における操作用ボルト51には、ローレット加工が施された把持部71が設けられ、この把持部71を手指で把持して操作用ボルト51を回転すれば、スパナ等の工具を必要とすることなく弁機構部70を操作できる。
【0050】
図3(c)、
図3(d)における弁機構部72は、ハンドルタイプからなり、
図3(c)においては、制御弁体50を下降して大空気孔35を絞った状態、
図3(d)においては、制御弁体50を上昇した全開状態を示している。弁機構部72の操作用ボルト51には、ハンドル部73が取付けられ、このハンドル部73を手指で把持しながら操作用ボルト51を回転すれば、スパナ等の工具を必要とすることなく弁機構部72を操作できる。
【0051】
図3(e)、
図3(f)における弁機構部74は、ピン留めタイプからなり、
図3(e)においては、制御弁体50を下降して大空気孔35を絞った状態、
図3(f)においては、制御弁体50を上昇した全開状態を示している。この弁機構部74では制御弁体50が略L字形の取付部75に取付けられ、この取付部75が固定台75aに取付けられて抜け止めピン76で抜け止め防止されている。弁機構部74の操作時には、抜け止めピン76を抜き、取付部75を固定台75aに対して上下方向にずらして嵌め込み、再度抜け止めピン76を取付ければ、制御弁体50を下降、上昇させて適宜の位置に配置できる。
これらは何れも
図1の弁機構部21の場合と同様に、制御弁体50をストッパ部36に当接させたときに最小の絞り量を確保するようにしてもよいが、制御弁体50に所定の面積の図示しない貫通穴を設け、この貫通穴を制御弁体50の全閉時の開口部としてその開口面積による最小絞り量を確保してもよい。
【0052】
図4においては、空気弁本体における弁機構部の更に他例を示している。
この空気弁本体80の弁機構部81は、制御弁体82を回動させることにより蓋体83に設けた大空気孔84の開口面積を縮小してこの大空気孔84から排気される空気流量を絞るようにしたものである。大空気孔84は、蓋体83の表面に向かってテーパ状に拡がっており、全開時は多量排気できる面積を確保している。
この弁機構部81において、制御弁体82は、カバー体26に回動可能に設けられた操作用ボルト51にナット52で一体に固着される。制御弁体82は、
図5(b)に示すように、略扇形状部位を対称につなぎ合わせたような形状になっている。
【0053】
一方、蓋体83は、空気弁本体80の弁箱85に取付けられ、この蓋体83の内周側に
図5(a)においてクロスハッチングで示した領域に大空気孔84が制御弁体82と略相似形になるように形成される。蓋体83には、制御弁体82を絞り方向に回転したときにこの制御弁体82の側面が当接可能なストッパ部87が形成されている。なお、以降の図において、大空気孔から排気される空気流量を絞るための開口部分をクロスハッチングで示す。
【0054】
図5(a)に示した蓋体83に対して、制御弁体82を
図5(c)に示すように回転させると大空気孔84を絞った状態となり、上記のように制御弁体82の側面がストッパ部87に当接したときに、大空気孔84と制御弁体82との間に所定の面積の開口部88が確保される。
一方、蓋体83に対して、制御弁体82を
図5(d)の状態まで回転させると、大空気孔84が全開状態となる。
【0055】
なお、
図4に示すように、この空気弁本体80では、円板状のフロート弁体89と遊動弁体90とが案内体100に収納され、この案内体100がネジ101により弁箱85内に固定された構造となっている。フロート弁体89の下面には凹状部102が形成されており、これによりフロート弁体89と案内体100の底面との接触面積が小さくなる。そのため、フロート弁体89は、汚れ等により案内体100に付着することがなく確実に動作可能になる。
このように、空気弁本体の内部構造を適宜の態様に設けることができ、この場合にも弁箱上部側のカバー体26に弁機構部81を設けることが可能になる。
【0056】
図6においては、空気弁本体における弁機構部の更に別の他例を示している。
この空気弁本体110では、上述の回動により制御弁体82を操作して大空気孔84の開口面積を縮小するタイプの弁機構部81に、回転操作用のレバー111を装着したものである。この場合、工具等を用いることなくレバー111を操作し、
図6(a)の開口面積の絞りの状態から
図6(b)の全開状態までの任意の状態に制御弁体82を容易に開閉可能にできる。
【0057】
図7、
図8に示した空気弁本体112では、回動により制御弁体82を操作して大空気孔84の開口面積を縮小するタイプの弁機構部81において、回転操作用のいわゆる時計型のレバー113を装着し、このレバー113をカバー体26の上面側に配置したものである。これにより、工具等を用いることなくレバー113を操作して、
図7(a)、
図7(b)に示した開口面積の絞りの状態から、
図8(a)、
図8(b)に示した全開状態までの任意の状態に制御弁体82を開閉可能にできることは勿論のこと、
図7(b)、
図8(b)において、カバー体26の上面に、例えば、「開」、「絞り」等の文字等を記した表示部114を設けるようにすれば、回転操作時に表示部114をレバー113の先端側が指し示すことで、制御弁体82の開状態や絞り状態を容易に視認可能となる。また、高さが標準品と同じ高さで製作できる。
【0058】
図9においては、弁機構部の更に異なる別の他例を示している。
この空気弁本体120の弁機構部121は、制御弁体となる絞り筒体122、コイルバネ123を有している。絞り筒体122の上面側には蓋部124が一体に設けられ、側面には複数の開口部125が略等間隔に形成されている。絞り筒体122は、カバー体126の対応する位置に設けられたガイド筒部127に蓋部124を上側にして遊嵌され、この絞り筒体122とカバー体126との間にコイルバネ123が装着される。蓋体128の内周には、絞り筒体122の底面が当接可能な環状突起部129が形成され、この環状突起部129によりコイルバネ123で弾発されている絞り筒体122が位置規制される。
【0059】
空気弁本体120において、弁箱85内に水が無い場合、及び急速排気時、急速吸気時には、
図9(b)に示すように絞り筒体122の弾発状態が保持され、開口部125がガイド筒部127より外方に飛び出すことで全開状態が確保される。
【0060】
一方、地震等により負圧、加圧が発生して空気が急速に排出されるときには、この空気により、
図9(a)において、ガイド筒部127がコイルバネ123を圧縮しながら上方に移動する。そのため、同図に示すように、開口部125がガイド筒部127に重なって開口面積が縮小し、蓋体128に設けられた大空気孔130から排気される空気流量を絞って抑制可能になる。このようにして、この弁機構部121は、手動で操作することなく自動でガイド筒部127が動作することにより、開口部125の開口面積が絞られる。
【0061】
図10、
図11においては、本発明の空気弁と補修弁における流量制御構造の第2実施形態を示している。なお、この実施形態以降において、前記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
この流量制御構造では、
図10(a)において、空気弁本体140の弁箱141の下部側に設けられる
図1の補修弁本体10との間に弁機構部142が設けられ、この弁機構部142は、空気弁本体140の流入口30の開口面積を縮小可能なゲート弁体143を弁機構として有する、いわゆるナイフゲート方式の開閉構造を呈している。
【0062】
ゲート弁体143は、ステム145を介して弁箱141内に取付けられ、このステム145には操作ハンドル146が取付けられる。弁機構部142は、操作ハンドル146によりゲート弁体143を制御弁体としてスライドして流入口30の開口面積を調節し、この開口面積によって弁箱141の二次側に設けられた大空気孔35への開口面積を縮小してこの大空気孔35から排気される空気流量を絞って抑制して流量を制御できる機構になっている。
【0063】
図10(b)は、
図10(a)のA−A断面図を示している。同図に示すように、弁箱141のゲート弁体143が対向する位置にはストッパ部147が突出形成される。このようにゲート弁体143を右方にスライドさせたときには、このストッパ部147にゲート弁体143の先端側が当接して流入口30側に所定の開口面積による開口部148が確保される。手動操作時で絞りの状態から力を更に加えた場合にも、空気弁本体140の流入口30側を完全に塞ぐことがない。
【0064】
空気弁本体140の弁機構部142を操作する場合には、前述した空気弁本体20の場合と同様に、使用圧力に応じて開度を調整したり設定した最小開度に固定できる。
図11(a)においては、空気弁本体140のゲート弁体143を全開状態まで動作させた状態を示し、
図11(b)においては、
図11(a)のB−B断面図を示している。図に示すように、ゲート弁体143による流量制御機構を設けた場合、流路を全開にして開口部148の面積を大きく確保できる。このため、例えば、初期充水時には空気流量を抑制することなく多量排気が可能になり、スムーズかつ迅速な充水が可能になる。一方、平常運転時には、
図10(a)、
図10(b)に示すように流入口30を絞るようにすれば、上述の場合と同様にして水撃が抑制される。
【0065】
図12(a)においては、上記の空気弁本体における弁機構部の他例を示し、
図12(b)には、
図12(a)のC−C断面図を示している。この弁機構部150では、
図12(b)において、弁機構として用いたゲート弁体151に所定の面積の貫通穴152を設けることより、ストッパ部を設けることなく弁箱153を形成したものである。ゲート弁体151の締切り時には、貫通穴152が全閉時の開口部となり、最小絞り時の開口面積を確保する。
【0066】
図13には、本発明の空気弁と補修弁における流量制御構造の第3実施形態を示している。
この流量制御構造では、
図13(a)に示すように、空気弁本体と補修弁本体とからなる流量制御構造のうち、補修弁本体の一次側に絞り機構である弁機構部を設けたものである。この補修弁本体160における弁機構部161は、前述した
図10の空気弁本体140の場合と同様にナイフゲート方式の開閉構造を呈しており、この補修弁本体160の上部に接続される図示しない空気弁本体の流入口への開口面積を縮小可能なゲート弁体162を弁機構として有し、このゲート弁体162を制御弁体として空気弁本体の大空気孔から排気される空気流量を絞って抑制する。
図13(b)には、補修弁本体160内の開口部163の絞り状態である
図13(a)のD−D断面図を示しており、
図13(c)にはゲート弁体162を全開状態まで動作させた状態を示している。
このように、ナイフゲート方式の弁機構部161を補修弁本体160側に設けることもでき、この場合、前記のナイフゲート方式の空気弁本体140の場合と同様に弁機構部161により流量制御を実施可能となる。なお、空気弁本体の流入口の開口面積を縮小可能な弁機構としてゲート弁体以外による機構を用いてもよい。
【0067】
図14、
図15においては、本発明の空気弁と補修弁における流量制御構造の第4実施形態を示している。
この実施形態の流量制御構造では、補修弁本体170が弁箱171、弁体172、ステム173、レバー部174を有し、弁箱171内に弁体172がステム173を介して回転可能に設けられた弁機構部175を有し、ステム173にはレバー部174がロック機構176を介して取付けられている。
【0068】
この流量制御構造においては、補修弁本体170の弁体172が弁機構部175の制御弁体になっており、この弁体172を遮断用の弁体として管路からの圧力を遮断することで図示しない空気弁本体の補修が可能になり、かつ、弁体172を弁機構部175の制御弁体としたときには、弁機構部175による開口部177の開口面積が、空気弁本体が破損する水撃値以下の空気流量となるように制御弁体172が使用圧力に応じて開度調整され、又は最小開度が設定されるようになっている。
【0069】
このように、補修弁本体170に弁機構部175を設けることで、新たに絞り機構を設ける必要がなく、前述したように補修弁本体170を補修弁として使用しつつ弁機構部175として機能が発揮され、空気弁本体の大空気孔からの空気流量を抑制して流量制御可能になる。
【0070】
補修弁本体170のレバー部174は、制御弁体172の開度を外部より調節可能に設けられる。レバー部174は、ロック機構176を介して、いわゆるロックレバー式によりステム173先端側に固定されて設定開度に位置決め保持可能に設けられる。
【0071】
ロック機構176は、レバー部174に設けられた図示しない係止部と、弁箱171の軸装部位に取付け固定されるプレート178に切欠き形成されたノッチ179とを有し、このノッチ179に係止部が係止可能に設けられる構造となっている。ノッチ179を弁体172の開位置、閉位置、絞り位置に形成するようにすれば、レバー部174を回転操作したときに係止部を各位置のノッチ179にクリックストップでき、確実かつ容易に弁体172を所定の状態に保持できる。このため、補修弁本体170の作動中に開度が変わることがなく、誤操作も防止可能になる。
プレート部178の上面には、弁体172の開位置、閉位置、絞り位置を示した開度表示部180が設けられ、この開度表示部180を確認することで弁体172の状態を把握できる。
【0072】
図14(a)においては、弁体172を絞り位置でロック機構176によりロックした状態であり、
図14(b)は、
図14(a)の矢視Eを示している。このとき、
図14(b)に示すように、弁箱171と弁体172との間に所定の絞り量の開口部177が設けられる。
【0073】
図15(a)においては、弁体172を閉位置でロック機構176によりロックした状態であり、
図15(b)には
図15(a)の矢視Fを示している。この場合には、
図15(b)に示すように、流路が開状態となる。
【0074】
図16においては、本発明の空気弁と補修弁における流量制御構造の第5実施形態を示している。
この実施形態では、
図14、
図15に示した構成の補修弁本体に空気弁本体を組合わせるように、空気弁本体190と補修弁本体191の弁箱192を一体構造に設けたものである。このように空気弁本体190と補修弁本体191とを一体化した場合、多量排気による充水完了時の水撃値を抑えることが可能になり、全体のコンパクト化や部品点数の削減も可能になる。
空気弁本体と補修弁本体との弁箱を一体構造に設ける場合、
図14、
図15に示した実施形態に限ることはなく、空気弁本体の内部構造を適宜の態様とし、この空気弁本体に上述した各種の構造の補修弁本体を組合わせ、これらの空気弁本体或は補修弁本体に弁機構部を設けることも可能である。
【0075】
図17においては、本発明の空気弁と補修弁における流量制御構造の第6実施形態を示している。
図18は、同実施形態における全開状態をレバー部と共に示した半裁断面図である。同図において、補修弁本体200は、空気弁本体20の下部に別体に又は一体に設けている。この補修弁本体200は、バタフライバルブ構造であり、ボデー201、ジスク(弁体)202、レバー部203を有し、レバー部203の端部に設けた軸着部210を介して略90°の範囲で開閉又は中間開度に制御可能である。なおこの場合、ウェハー形バタフライ弁であってもよい。またこの場合、
図13に示すように、補修弁本体200の一次側に弁機構部161を設けるようにしても良い。なお、
図17において、204はフランジ、205は短管であり、206は短管205の一方のフランジ、209はシールリング部である。
【0076】
補修弁本体200のレバー部203は、プレート207に設けた2つの係止部208の間で略90°の範囲で作動させて、任意の位置で流量制御するようにしている。なお、本例におけるレバー部を
図14及び
図15における流量制御位置が固定できる構造にしてもよい。
【0077】
本例におけるバタフライバルブ構造の補修弁本体200は、流量調整が良好であり、本発明における空気弁において好適である。