(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)、もしくはプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(B)を45〜97質量%、シンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)を3〜55質量%を含み、[但し、(A)または(B)+(D)=100質量%とする。]
前記シンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)は、JIS K 7121およびK 7122に準じ、昇温速度10℃/分で室温から250℃迄昇温した後に降温速度10℃/分で−50℃迄降温して得られるDSC曲線には発熱ピークが観察されない、
ことを特徴とするプロピレン系共重合体組成物を含んでなる二軸延伸フィルムからなる熱融着層と、
前記二軸延伸フィルムの片面に積層され、
アルミニウム箔、紙、ポリエステル樹脂のフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルクロライドフィルム、ポリビニリデンクロライドフィルムおよびポリプロピレンからなるフィルムから選ばれる基材層を有する、
多層二軸延伸フィルム。
前記シンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)は、プロピレン・α−オレフィン共重合体成分(d−1)と、シンジオタクティックプロピレン系重合体成分(d−2)から構成され、
前記シンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)の、JIS K 7121およびK 7122に準じ、昇温速度10℃/分で室温から250℃迄昇温して得られるDSC曲線から求めたシンジオタクティックプロピレン系重合体成分(d−2)に基づく結晶融解熱量が8.0〜15.0J/gの範囲にある、請求項1に記載の多層二軸延伸フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<プロピレン・ブロック共重合体(A)>
本発明のプロピレン系共重合体組成物(G)に含まれる重合体成分の一つであるプロピレン・ブロック共重合体(A)は、プロピレン重合体成分(a−1)及びプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(a−2)とから構成されている重合体である。
【0016】
本発明に係るプロピレン・ブロック共重合体(A)における(a−1)と(a−2)との構成割合は、その質量比を(a−1)/(a−2)で表すと、80/20〜95/5が好ましく、より好ましくは83/17〜90/10の範囲にある。
【0017】
本発明に係るプロピレン・ブロック共重合体(A)を構成するプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体成分(a−2)は、好ましくはプロピレン・エチレンランダム共重合体であり、好ましくは、エチレン単位の含有量は、好ましくは10〜20質量%、より好ましくは12〜18質量%の範囲にある。
【0018】
本発明に係るプロピレン・ブロック共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は、後述のシンジオタクチック系プロピレン重合体組成物(D)との組成物であるプロピレン系共重合体組成物(G)がフィルム形成能を有する限り特に限定はされないが、ASTM D−1238に準拠して230℃、2.16kg荷重下で測定した値が、通常、2〜10(g/10分)、好ましくは2.5〜8(g/10分)の範囲にある。
【0019】
<プロピレン重合体成分(a−1)>
本発明に係るプロピレン・ブロック共重合体(A)を構成する成分の一つであるプロピレン重合体(a−1)は、プロピレンの単独重合体、またはプロピレンと10質量%以下、好ましくは5質量%以下のα-オレフィンとの共重合体である。α-オレフィンとしては、プロピレン以外の炭素2〜10のα−オレフィンであって、例えば、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンを挙げることができる。これらの重合体の中でもプロピレン単独重合体を用いると、耐熱性に優れたフィルムを得ることができるので好ましい。
【0020】
本発明に係るプロピレン重合体(a−1)は、通常、アイソタクティック構造を有する重合体であり、融点(Tm1)が、120〜170℃の範囲にある。
本発明に係るプロピレン重合体(a−1)は、チーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒のようなオレフィン重合用触媒を用いて製造することができる。チーグラー・ナッタ触媒の一例として、活性マグネシウム化合物、チタン化合物、ハロゲン化合物、および内部電子供与体を必須成分とする固体チタン触媒成分を有機または無機担体に担持させ、それに周期律表第I族〜第III族金属の有機金属化合物成分を加え、さらに外部電子供与体を加えた触媒系を挙げることができる。
【0021】
<プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体成分(a−2)>
本発明に係るプロピレン・ブロック共重合体(A)を構成する成分の一つであるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体成分(a−2)は、プロピレンと前記したと同じポリプロピレン以外の炭素数2〜10のα−オレフィンとの共重合体であって、エラストマー的な性状を有している。α−オレフィンとしては、特にエチレンが好ましい。
【0022】
本発明に係るプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体成分(a−2)は、通常、プロピレン単位の含有量が、70〜85質量%、このましくは75〜83質量%、α-オレフィン単位の含有量は、15〜30質量%、好ましくは17〜25重量%の範囲(但し、プロピレンから導かれる単位とα−オレフィンから導かれる単位との合計を100質量%とする。)にある。プロピレン単位の含有量が前記の範囲にあると、この共重合体成分(a−2)を含むプロピレン系共重合体組成物(G)からなるフィルムは、耐低温衝撃強度及び低温ヒートシール性に優れ、熱処理後においても高いシール強度を保持したフィルムが得られる。なお、プロピレン単位の含有量は赤外線吸収スペクトル分析によって測定することができる。
【0023】
本発明に係るプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体成分(a−2)は、通常、非晶性あるいは低結晶性の共重合体であり、通常、融点を有しないか、DSC(10℃/分)の第1昇温工程で67±3℃に吸熱ピークを有し、第2昇温工程では67±3℃に吸熱ピークを有さない共重合体である。
【0024】
なお、プロピレン・ブロック共重合体(A)中に占める共重合体(a−2)の割合は、共重合体(A)サンプル(a:グラム)をp−キシレンに完全に溶解させ、その後23℃で24時間放置した後、遠心分離によって析出物(b:グラム)を分離してから、サンプル中のp−キシレン可溶部を共重合体(a−2)として次式によって算出することができる。
共重合体(a−2)の割合={(a−b)/a}×100(質量%)
【0025】
また共重合体(a−2)の極限粘度[η]は、デカリン溶媒、135℃で測定した極限粘度[η]が2.0〜10.0dl/g、好ましくは2.3〜8.0dl/g、より好ましくは2.5〜5.0dl/g、さらに好ましくは2〜3.5(dl/g)未満、最も好ましくは2.5〜3.3(dl/g)である。極限粘度[η]が前記の範囲にあると、それを含む組成物からは、レトルト処理後の低温での落下破袋強度が良好であり、さらにはフィッシュアイの発生を抑制しながら、耐ブロッキング性に優れたフィルムまたは二軸延伸フィルムを製造することができる。
【0026】
なお極限粘度[η]は、前記の分別操作によって分離したp−キシレン可溶部に過剰のアセトンを加えて溶解物を析出させ、回収した析出物についてデカリン溶媒中、135℃で測定した粘度から求めることができる。
【0027】
本発明に係るプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体成分(a−2)は、チーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒のようなオレフィン重合用触媒を用いて製造することができる。チーグラー・ナッタ触媒の一例として、活性マグネシウム化合物、チタン化合物、ハロゲン化合物、および内部電子供与体を必須成分とする固体チタン触媒成分を有機または無機担体に担持させ、それに周期律表第I族〜第III族金属の有機金属化合物成分を加え、さらに外部電子供与体を加えた触媒系を挙げることができる。
【0028】
<エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)>
本発明に係るプロピレン系共重合体組成物(G)、あるいはプロピレン・ブロック共重合体(A)は、前記プロピレン系重合体(a−1)及びプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体成分(a−2)に加え、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)を含むことにより、より耐低温衝撃強度と落下衝撃強度に優れたフィルムまたは二軸延伸フィルムを得ることができるという観点から好ましい。
【0029】
本発明に係るエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)は、エチレンと炭素数4以上、好ましくは4〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体である。α−オレフィンの具体例として、1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセンを挙げることができる。これらの中でも、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが特に好ましい。これらα−オレフィンは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて含有していてもよい。また、異なるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体どうしの混合物であってもよい。
【0030】
本発明に係るエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)の好ましい具体例としては、エチレン・1−ブテンランダム共重合体、エチレン・1−ヘキセンランダム共重合体、エチレン・1−オクテンランダム共重合体を挙げることができる。
【0031】
本発明に係るエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)は、好ましくは密度が、865〜910kg/m
3、好ましくは875〜900kg/m
3である。
本発明に係るエチレン・α‐オレフィンランダム共重合体(C)の密度は、神藤金属工業所プレス成形機を用い、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100Kg/cm
3の条件にてプレス成形した厚さ0.5mmのプレスシートを測定サンプルとし、密度勾配管で測定して求められる。
【0032】
本発明に係るエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)は、通常、エチレン単位の含有量が、好ましくは70〜95モル%、より好ましくは80〜93モル%、α−オレフィン単位の含有量は、好ましくは5〜30モル%、より好ましくは7〜20モル%(但し、エチレンから導かれる単位とα−オレフィンから導かれる単位との合計を100モル%とする。)の範囲にある。
【0033】
本発明に係るエチレン・α‐オレフィンランダム共重合体(C)は、通常、MFR〔荷重:2160g、温度:230℃〕が、0.5〜10g/10分、好ましくは0.5〜7.0g/10分である。
【0034】
本発明に係るエチレン・α‐オレフィンランダム共重合体(C)は、融点が、通常、100℃以下であるかまたは存在せず、融点が存在する場合その上限は好ましくは90℃であり、下限は特に制限はないが例えば40℃、さらには60℃を例示できる。
【0035】
本発明に係るエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)は、チーグラー・ナッタ系触媒(バナジウム系触媒など)やメタロセン系触媒のようなオレフィン重合用触媒を用いて製造することができる。
【0036】
本発明に係るプロピレン・ブロック共重合体(A)が、エチレン・α‐オレフィンランダム共重合体(C)を含む場合は、前記プロピレン重合体成分(a−1)及びプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(a−2)との合計量に対し、5〜30質量%、好ましくは、10〜25質量%、より好ましくは、12〜20質量%である(但し、エチレン・α‐オレフィンランダム共重合体(C)+プロピレン重合体成分(a−1)+プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(a−2)=100質量%)。
【0037】
<プロピレン・ブロック共重合体(A)の製造方法>
本発明に係るプロピレン・ブロック共重合体(A)は、種々公知の製造方法、具体的には、例えば(a−1)と(a−2)とを多段重合により製造し得る。当該多段重合は1つの重合器で行っても良いし、複数の重合器を用いてそれぞれの段階を行っても良い。また、複数の重合器は並列的に用いてもよく、直列的に用いても良い。
また、本発明に係るプロピレン・ブロック共重合体(A)は、上記(a−1)と(a−2)をそれぞれ製造した後、常法に従い、溶融混合する方法により製造してもよい。
【0038】
本発明に係るプロピレン・ブロック共重合体(A)が、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)を含む場合は、(a−1)と(a−2)とを多段重合により製造した後、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)とを溶融混合する方法、あるいは、予め製造した上記プロピレン系重合体(a−1)及び上記プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体成分(a−2)とエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)とを溶融混合する方法を採り得る。
【0039】
<プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)>
本発明のプロピレン系共重合体組成物(G)は、前記プロピレン・ブロック共重合体(A)に替えて、プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)を含んでいてもよい。
【0040】
本発明に係るプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)は、通常、プロピレンから導かれる単位を90〜98質量%、好ましくは92〜98質量%含むプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体である。
【0041】
本発明に係るプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)を構成する共重合体成分であるα−オレフィンは、プロピレン以外の通常、炭素数2〜10のα−オレフィンであって、例えば、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテンであり、エチレン及び1−ブテンが好ましく、特に、エチレンが好ましい。
【0042】
本発明に係るプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)は、通常、MFR〔荷重:2160g、温度:230℃〕が0.5〜50g/10分、好ましくは2〜50g/10分である。MFRが上記範囲にあると、得られるプロピレン系重合体組成物(G)を容易にフィルム成形することができ、耐低温衝撃強度に優れたフィルムまたは二軸延伸フィルムを得ることができる。例えばMFRが20〜50g/10分、特に20〜40g/10分の範囲にあるものを用いてもかまわない。
【0043】
本発明に係るプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)は、通常、アイソタクティック構造を有する重合体であり、融点(Tm2)が、105〜150℃、好ましくは120〜150℃、より好ましくは130〜147℃の範囲にある。融点が、上記範囲にあるとヒートシール強度、剛性及び落袋衝撃強度のバランスに優れるフィルムまたは二軸延伸フィルムが得られる。
【0044】
本発明に係るプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)は、チーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒のようなオレフィン重合用触媒を用いて製造することができる。チーグラー・ナッタ触媒の一例として、活性マグネシウム化合物、チタン化合物、ハロゲン化合物、および内部電子供与体を必須成分とする固体チタン触媒成分を有機または無機担体に担持させ、それに周期律表第I族〜第III族金属の有機金属化合物成分を加え、さらに外部電子供与体を加えた触媒系を挙げることができる。
【0045】
本発明に係るプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)は、ランダムPPとして、製造・販売されており、例えば、サンアロマー株式会社から、ランダムPP:グレード名 PC630A、5C37F等が、プライムポリマー株式会社から、ランダムPP:商品名 プライムポリプロ グレード名F327、F337等が挙げられる。
【0046】
<シンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)>
本発明のプロピレン系共重合体組成物(G)に含まれる重合体成分の一つであるシンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)は、プロピレン・α−オレフィン共重合体成分(d−1)とシンジオタクティックプロピレン系重合体成分(d−2)から構成されている。
【0047】
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)は、シンジオタクティックプロピレン系重合体成分(d−2)を含むので、結晶化速度が遅いという特徴を有してしている。
【0048】
例えば、シンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)の熱融解特性をDSCで測定した場合、第1昇温過程(1st−run)において昇温速度10℃/分で250℃迄昇温し、シンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)を融解した後、第1降温過程において降温速度10℃/分で−50℃迄降温して冷却した場合(cool)は、シンジオタクティックプロピレン系重合体成分(d−2)は、結晶化ピークは観察されず、第2昇温過程(2nd−run)において昇温速度10℃/分で250℃迄昇温した場合に、50±3℃でシンジオタクティックプロピレン系重合体成分(d−2)が結晶化(発熱ピーク)した後、155±3℃でシンジオタクティックプロピレン系重合体成分(d−2)が融解(吸熱ピーク)するのに対し、第1降温過程において降温速度1℃/分で−50℃迄降温して冷却した場合は、70℃±3℃でシンジオタクティックプロピレン系重合体成分(d−2)が結晶化(発熱ピーク)し、再度1℃/分で250℃迄昇温した場合には、シンジオタクティックプロピレン系重合体成分(d−2)の結晶化ピークは生ぜず、160℃±3℃でシンジオタクティックプロピレン系重合体成分(d−2)が融解(吸熱ピーク)するのみである。
【0049】
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)は、DSCを用いて、JIS K 7121およびK 7122に準じ、試料約5mgを第1昇温過程において昇温速度10℃/分で室温〜250℃迄昇温して得られるDSC曲線(1st−run)から求めたシンジオタクティックプロピレン系重合体成分(d−2)に基づく結晶融解熱量が通常8.0〜15.0J/gの範囲、好ましくは9.0〜14.0J/gの範囲、より好ましくは、10.0〜13.0J/gの範囲にあり、結晶融解ピーク温度が150〜160℃の範囲、好ましくは153〜159℃の範囲にある。また、シンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)に含まれるプロピレン・α−オレフィン共重合体成分(d−1)に基づく結晶融解熱量は通常2.0〜12.0J/gの範囲、好ましくは2.5〜11.0J/gの範囲にあり、結晶融解ピーク温度が45〜55℃の範囲、好ましくは47〜53℃の範囲にある。
【0050】
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)は、上記250℃迄昇温した後、第1降温過程において降温速度10℃/分で−50℃迄降温して得られるDSC曲線(cool)には発熱ピークが観察されず、シンジオタクティックプロピレン系重合体成分(d−2)およびプロピレン・α−オレフィン共重合体成分(d−1)は前記第1降温過程では結晶化しないものと考えらえる。
【0051】
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)は、上記第1降温過程において−50℃迄降温した後、再度第2昇温過程において昇温速度10℃/分で−50℃〜250℃迄昇温して得られるDSC曲線(2nd−run)には、上記第1降温過程での降温の際に結晶化しなかったシンジオタクティックプロピレン系重合体成分(d−2)の結晶化に基づく発熱量が通常7.0〜13.0J/gの範囲、好ましくは8.0〜12.0J/gの範囲にあり、より好ましくは9.0〜11.0J/gの範囲にある。結晶化ピーク温度が通常45〜55℃の範囲、好ましくは47〜53℃の範囲、より好ましくは49〜52℃の範囲にあり、結晶化したシンジオタクティックプロピレン系重合体成分(d−2)に基づく結晶融解熱量は通常8.0〜18.0J/gの範囲、好ましくは10.0〜16.0J/gの範囲、より好ましくは12.0〜14.0J/gの範囲にあり、結晶融解ピーク温度が150〜160℃の範囲、好ましくは152〜157℃の範囲
より好ましくは153〜155にある。なお、上記DSC曲線(2nd−run)には、シンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)に含まれるプロピレン・α−オレフィン共重合体成分(d−1)に基づく結晶化ピークも結晶融解ピークも観察されない。
【0052】
JISK7122に基づくDSC(示差走査熱量測定)において、第2昇温工程(10℃/min)の40〜60℃の範囲に結晶化熱量が20J/g以下のピークおよび135〜155℃の範囲に、結晶融解熱量が20J/g以下のピークを有するものである。本明細書において、DSCについては、JISK7122に準じて測定したものである。
【0053】
なお、本発明に係るシンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)に類似する組成物として、アイソタクティックプロピレン系重合体成分(h−2)とプロピレン・α−オレフィン共重合体成分(h−1)を含むアイソタクティックプロピレン系重合体組成物(H)があるが、当該アイソタクティックプロピレン系重合体組成物(H)を本発明に係るシンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)に替えて用いてもヒートシール強度は左程改良されない。
【0054】
なお、アイソタクティックプロピレン系重合体組成物(H)は、上記記載の方法でDSC曲線を測定した場合、DSC曲線(1st−run)では、プロピレン・α−オレフィン共重合体成分(h−1)に基づく結晶融解熱量が4〜13J/g、結晶ピーク温度が44〜51℃の範囲にあり、アイソタクティックプロピレン系重合体成分(h−2)に基づく結晶融解熱量が9.0〜18.0J/gの範囲、結晶融解ピークが160〜162℃の範囲にある。そして、降温して得られるDSC曲線(cool)には、アイソタクティックプロピレン系重合体成分(h−2)に基づく結晶化熱量が11〜17J/gの範囲、結晶化ピークが76〜90℃の範囲にある。そして、DSC曲線(2nd−run)には、アイソタクティックプロピレン系重合体成分(h−2)に基づく結晶融解熱量が10〜17J/gの範囲にあり、結晶融解ピーク温度が161〜163℃の範囲の範囲にある。
【0055】
本発明に係るアイソタクティックプロピレン系重合体組成物(H)は、例えば、ノティオ
TMPN2060、PN3560などの商品名で、三井化学株式会社から製造・販売されている。
【0056】
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)に含まれる成分であるプロピレン・α−オレフィン共重合体成分(d−1)を構成するα‐オレフィンは、通常、プロピレンを除く、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6、具体的には、例えば、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテンなどであり、α‐オレフィンは、一種、あるいは二種以上からなる。
【0057】
プロピレン・α−オレフィン共重合体成分(d−1)の具体例としては、例えば、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体などであり、中でも、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体が好ましい。
【0058】
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)は、通常、MFR(JISK6721、230℃、2.16kg荷重)が、0.01〜200g/10分、好ましくは0.05〜150g/10分、さらに好ましくは0.05〜100g/10分の範囲であることが好ましい。
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)は、例えばノティオ
TMSN0285の商品名で、三井化学株式会社から製造・販売されている。
【0059】
<プロピレン系共重合体組成物(G)>
本発明のプロピレン系共重合体組成物(G)は、前記プロピレン・ブロック共重合体(A)又は前記プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)を45〜97質量%、好ましくは50〜92質量%、より好ましくは、55〜90質量%及び前記シンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)を3〜55質量%、好ましくは8〜50質量%、より好ましくは、10〜45〔但し、(A)+(D)、あるいは(B)+(D)=100質量%とする。〕含む組成物である。
【0060】
シンジオタクティックプロピレン系共重合体組成物(D)の含有量が3質量%未満の組成物は、得られるフィルムまたは二軸延伸フィルムの低温ヒートシール強度が改良されず、又、当該フィルムを熱処理した後のヒートシール強度の低下が大きい。一方、シンジオタクティックプロピレン系重合体(D)の含有量が55質量%を超える組成物は、得られるフィルムまたは二軸延伸フィルムの成形性が低下する可能性がある。
【0061】
本発明のプロピレン系共重合体組成物(G)として、前記プロピレン・ブロック共重合体(A)を含む組成物は、得られるフィルムの耐ピンホール性がより優れ、又、当該フィルムまたは二軸延伸フィルムを熱処理した後のヒートシール強度の低下がより少ない。
【0062】
<添加剤>
本発明のプロピレン系共重合体組成物(G)には、必要に応じて、前記プロピレン・ブロック共重合体(A)又は前記プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B)、及び前記シンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)に加え、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(a−2)、エチレン・α‐オレフィンランダム共重合体(C)、及びシンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D)以外のエラストマー成分を添加することができる。そのようなエラストマー成分の例として、エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム、エチレン・1−ブテン・ジエン共重合ゴム、プロピレン・1−ブテン共重合ゴム、スチレン・ブタジエンブロック共重合体あるいはスチレン・イソプレンブロック共重合体の水素添加物を挙げることができる。
【0063】
また、本発明のプロピレン系共重合体組成物(G)、あるいは、本発明のプロピレン系共重合体組成物(G)を構成する各重合体には、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、塩酸吸収剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、核剤、顔料、染料、あるいは各種の重合体等を配合してもよい。
【0064】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、有機ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等を挙げることができる。アンチブロッキング剤としては、酸化アルミニウム、微粉末シリカ、ポリメチルメタアクリレート粉末、シリコン樹脂等を挙げることができる。
【0065】
スリップ剤としては、エチレンビスステアロアマイド等のビスアマイド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の高級脂肪酸アミド等を挙げることができる。滑剤としてはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸金属塩等の高級脂肪酸金属塩、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス等を挙げることができる。核剤としては、ジベンジリデンソルビトール、ロジン酸の部分金属塩等のロジン系核剤、アルミニウム系核剤、タルク等を挙げることができる。
【0066】
本発明のプロピレン系共重合体組成物(G)は、種々公知の成形方法により、フィルム、二軸延伸フィルム、シート、中空体、溶融成形など種々の成形方法により成形して使用することができる。
【0067】
<フィルム>
本発明のフィルムは、前記プロピレン系共重合体組成物(G)からなるフィルムであり、種々公知のフィルム成形方法、具体的には、T−ダイキャストフィルム成形方法、インフレーションフィルム成形方法により製造し得る。
【0068】
本発明のフィルムは、通常、延伸されておらず、厚さが5μm以上、好ましくは5〜55μm、より好ましくは10〜50μmの範囲にある。厚さが5μm未満のフィルムは、熱融着層に用いた場合に、落袋強度が不十分な包装材料となる虞がある。
【0069】
本発明のフィルムの厚さの上限は、特に限定はされないが、50μmを超えるフィルムは、そのヒートシール性能と破袋強度の性能を維持し、且つ薄肉であるというコスト上のメリットが薄れる場合がある。
本発明のフィルムは、用途に応じて、用途に応じてその厚さが50〜100μmと厚いフィルムも利用可能である。
【0070】
<二軸延伸フィルム>
本発明の二軸延伸フィルムは、上記フィルムを二軸延伸してなるフィルムであり、二軸延伸することにより、より機械的物性が向上する。
【0071】
本発明の二軸延伸フィルムは、通常、厚さが5μm以上、好ましくは5〜55μm、より好ましくは10〜50μmの範囲にある。厚さが5μm未満のフィルムは、熱融着層に用いた場合に、落袋強度が不十分な包装材料となる虞がある。
【0072】
本発明の二軸延伸フィルムの厚さの上限は、特に限定はされないが、50μmを超えるフィルムは、そのヒートシール性能と破袋強度の性能を維持し、且つ薄肉であるというコスト上のメリットが薄れる場合がある。
【0073】
本発明の二軸延伸フィルムは、用途に応じて、用途に応じてその厚さが50〜100μmと厚いフィルムも利用可能である。
本発明のフィルムおよび二軸延伸フィルム(以下、併せて「二軸延伸フィルム等」と呼称する場合がある。)は、前記プロピレン系共重合体組成物(G)からなる限り、単層であっても二層以上の多層であってもよい。例えば、二軸延伸フィルム等を三層構成とする場合は、通常、内層の厚さが全体の厚さの50〜99パーセント、両表面層の厚さががそれぞれ全体の0.5〜25パーセントの厚さとする。また、表面層の厚さは、0.5〜15μm、特に1〜10μmであることが好ましい。このように、二軸延伸フィルム等を多層とした場合は品質管理が容易で最終的な収率も高くなりコスト上のメリットがある。
また、本発明の二軸延伸フィルム等の表面は、基材層との接着性を改良するために、必要に応じて片面あるいは両面をコロナ処理、火炎処理等の表面処理をしてもよい。
【0074】
本発明の二軸延伸フィルム等は、透明性、剛性等の機械強度、低温ヒートシール性、熱融着強度(ヒートシール強度)、熱処理(加圧・加熱処理)後のヒートシール強度の保持性などの物性と、袋にした場合の、熱処理後の低温での落下破袋強度とのバランスが優れる。さらに耐ブロッキング性にも優れる傾向にある。さらに本発明の二軸延伸フィルム等は、その熱収縮率が小さく、すなわち加熱時の寸法安定性にも優れる。
【0075】
<二軸延伸フィルムの製造方法>
本発明の二軸延伸フィルムは、前記プロピレン系共重合体組成物(G)を公知の二軸延伸フィルム成形方法を用いて成形し得る。
【0076】
二軸延伸は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、多段延伸等の方法が適宜採用される。
二軸延伸の条件としては、公知の二軸延伸フィルムの製造条件、例えば、逐次二軸延伸法では、縦延伸温度を100℃〜145℃、延伸倍率を4〜7倍の範囲、横延伸温度を150〜190℃、延伸倍率を8〜11倍の範囲とすることが挙げられる。
【0077】
<多層フィルム・多層二軸延伸フィルム>
本発明の多層フィルムおよび多層二軸延伸フィルム(以下、「多層二軸延伸フィルム等」と呼称する場合がある。)は、前記フィルムあるいは二軸延伸フィルムの片面に基材層を積層してなるフィルムである。
【0078】
基材層としては、シート状、フィルム状、トレーあるいは容器状のもので包装材料として使用できるものあれば、特に限定されない。基材層の例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルからなるフィルム、ポリカーボネートフィルム、ナイロン6、ナイロン66等からなるポリアミドフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、およびポリプロピレン等のポリオレフィンからなるフィルム等の熱可塑性樹脂フィルム、あるいはそれら熱可塑性樹脂からなるシート、更にはシートを熱成形したトレーあるいはカップ状の容器、アルミニウム箔、紙等から構成されるそれら形状物が挙げられる。
【0079】
熱可塑性樹脂フィルムからなる基材層は、無延伸フィルムであっても、一軸あるいは二軸延伸フィルムであってもよい。勿論、基材層は1層でも2層以上としてもよい。また、熱可塑性樹脂フィルムは、アルミニウム、亜鉛、シリカ等の金属、無機物あるいはその酸化物を蒸着したフィルムであってもよい。
【0080】
本発明の二軸延伸フィルム等と前記基材層とを積層する方法としては、一般に行われる積層方法をそのまま採用することができ、その際二軸延伸フィルム等と前記基材層との間に接着層を設けることができる。例えば、基材層にウレタン系やイソシアネート系のアンカーコート剤を塗布し、その上に本発明の二軸延伸フィルム等をドライラミネートしたり、あるいは二軸延伸フィルム等に基材層となる熱可塑性樹脂を押し出しラミネートないし押し出しコーティングする方法で製造することもできる。
【0081】
また、本発明の多層二軸延伸フィルム等は、熱処理後の低温での落下破袋強度が顕著に優れる。言い換えると、本発明の多層二軸延伸フィルムは、包装材料に用いた際にフィルム層のヒートシール強度(ヒートシール部の剥離強度)、熱処理(加圧・加熱処理)後のヒートシール強度の保持性,剛性などの機械特性、などの物性と、袋にした場合の、熱処理後の低温での落下破袋強度とのバランスが優れる。さらに耐ブロッキング性にも優れる傾向にある。
【0082】
本発明の多層二軸延伸フィルム等は、前記二軸延伸フィルム等を熱融着層(ヒートシール層)に用いることにより、耐熱性、高いヒートシール強度、剛性等の機械強度を有し、また基材層の種類によっては高いガスバリヤー性や機械的強度等が付与されることから、加熱殺菌あるいは加圧・加熱殺菌を要する医薬、あるいはレトルト食品の包装用フィルムとして好適である。本発明の多層二軸延伸フィルムは、フィルム状態で包装材として使用できるし、またトレーや容器の形状に変えてから包装材として使用することもできる。
【0083】
<加熱殺菌用包装体>
本発明に係る加熱殺菌用包装体は、本発明の二軸延伸フィルム等あるいは多層二軸延伸フィルム等からなる包装材料を用い、多層二軸延伸フィルム等を用いる場合は二軸延伸フィルム等の層を内側にして内容物である医薬、あるいは食品(被包装材料)などを包装(充填)し、二軸延伸フィルム等の層をヒートシールすることによって内容物が密封包装されてなるものである。
【0084】
包装材としては、二軸延伸フィルム等であってもよいが、前記した多層二軸延伸フィルム等が基材層の持つ特性を利用できるので好ましい。また加熱殺菌用包装体として用いる場合には、通常、前記基材層が二軸延伸フィルム等の片面に積層されている。多層二軸延伸フィルム等の例として、次の組み合わせを挙げることができる。
【0085】
ポリエステル層/二軸延伸フィルム等、ポリアミド層/二軸延伸フィルム等、ポリエステル層/ポリアミド層/二軸延伸フィルム等、ポリエステル層/アルミニウム箔/二軸延伸フィルム等、ポリエステル層/ポリアミド層/アルミニウム箔/二軸延伸フィルム等、ポリアミド層/ポリ塩化ビニリデン層/ポリエステル層/二軸延伸フィルム等、などが例示できる。
【0086】
このように二軸延伸フィルム等の層が最内層に配置されてヒートシール部を形成しているので、その包装体は、強固にヒートシールされており、また加熱殺菌、加圧・加熱殺菌処理後においても低温での落下破袋強度が優れ、また高いヒートシール強度が保持されている。従って、このような加熱殺菌用包装体は、例えば低温での輸送時あるいは店頭もしくは家庭等での取扱い時にも内容物である食品などが洩れ出るおそれが少なく、常温下であるいは冷蔵・冷凍下での長期間保存を行っても、内容物をほとんど変質させることなく保つことができる。
【実施例】
【0087】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
本発明の実施例、及び比較例で使用したポリプロピレンを以下に示す。
(1)プロピレン・ブロック共重合体(A−1)
プロピレン単独重合体成分(a−1−1)86質量%及びプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(a−2−1)14重量%(エチレン含有量26.6モル%、極限粘度[η]3.1dl/g)を含むプロピレン・ブロック重合体(A−1−1)86質量%とエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(D−1)14質量%(融点:68℃、密度885kg/m
3、MFR0.5g/10分(JISK7210,温度190℃)とを溶融混練した組成物(融点164℃、MFR2.5g/分(JISK7210温度230℃))
(2)プロピレン・ブロック共重合体(A−1−1)
プロピレン単独重合体成分(a−1−1)86質量%及びプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(a−2−1)14重量%(エチレン含有量26.6モル%、極限粘度[η]3.1dl/g)を含むプロピレン・ブロック重合体(A−1−1)(融点164℃、MFR3g/10分(JISK7210温度230℃))
(3)エチレン含量4質量%のプロピレン・エチレンランダム共重合体(B−1)
融点:143.5℃、MFR(230℃、2.16kg);7.5g/分(サンアロマ−株式会社製、グレード PC630A)
(3)プロピレン単独重合体(F−1)
融点:165℃、MFR:3/10分、プライムポリマー社製 商品名 プライムポリプロF113A。
(4)シンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D−1)
MFR:1.4g/10分、前記方法で測定したDSC曲線(1st−run)で測定したプロピレン・α−オレフィン共重合体成分(d−1−1)に基づく結晶融解熱量:7.5J/g、結晶融解ピーク温度:52.4℃、シンジオタクティックプロピレン系重合体成分(d−2−1)に基づく結晶融解熱量:8.7J/g、結晶融解ピーク温度:155℃、降温して得られるDSC曲線(cool)にはシンジオタクティックプロピレン系重合体成分(d−2−1)およびプロピレン・α−オレフィン共重合体成分(d−1−1)は生ぜず。DSC曲線(2nd−run)で測定したシンジオタクティックプロピレン系重合体成分(d−2−1)に基づく結晶化ピーク温度:50.6℃、結晶化熱量:10.3J/g、結晶融解ピーク温度:155℃、結晶融解熱量:13.3J/g、MFR:1.4g/10分、三井化学株式会社製 商品名 ノティオ
TMSN0285。
DSC曲線を
図1に示す。
【0088】
(5)アイソタクティックプロピレン系重合体組成物(H)
(5−1)アイソタクティックプロピレン系重合体組成物(H−1)
MFR:6g/10分、前記方法で測定したDSC曲線(1st−run)で測定したプロピレン・α−オレフィン共重合体成分(h−1−1)に基づく結晶融解熱量:12.5J/g、結晶融解ピーク温度:50.6℃、アイソタクティックプロピレン系重合体成分(h−2−1)に基づく結晶融解熱量:9.8J/g、結晶融解ピーク温度:161℃、降温して得られるDSC曲線で測定したアイソタクティックプロピレン系重合体成分(h−2−1)に基づく結晶化熱量:11.5J/g、結晶化ピーク温度:77.0℃、DSC曲線(2nd−run)で測定したアイソタクティックプロピレン系重合体成分(h−2−1)に基づく結晶融解ピーク温度:162℃、結晶融解熱量:10.6J/g、プロピレン・α−オレフィン共重合体成分(h−1−1)に基づく結晶融解ピークなし、三井化学株式会社製 商品名 ノティオ
TMPN2060。
DSC曲線を
図2に示す。
【0089】
(5−2)アイソタクティックプロピレン系重合体組成物(H−2)
MFR:6g/10分、前記方法で測定したDSC曲線(1st−run)で測定したプロピレン・α−オレフィン共重合体成分(h−1−2)に基づく結晶融解熱量:4.4J/g、結晶融解ピーク温度:44.2℃、アイソタクティックプロピレン系重合体成分(h−2−2)に基づく結晶融解熱量:17.1J/g、結晶融解ピーク温度:161℃、降温して得られるDSC曲線で測定したアイソタクティックプロピレン系重合体成分(h−2−2)に基づく結晶化熱量:16.4J/g、結晶化ピーク温度:89.8℃、DSC曲線(2nd−run)で測定したアイソタクティックプロピレン系重合体成分(h−2−2)に基づく結晶融解ピーク温度:162.0℃、結晶融解熱量:16.5J/g、プロピレン・α−オレフィン共重合体成分(h−1−2)に基づく結晶融解ピークなし、MFR:6g/10分、三井化学株式会社製 商品名 ノティオ
TMPN3560。
DSC曲線を
図3に示す。
本発明における二軸延伸フィルム及び多層二軸延伸フィルムの物性は以下の方法で測定した。
【0090】
(1)二軸延伸フィルム物性測定方法
(1−1)ヘイズ
日本電色工業社製ヘイズメーター300Aを用いて二軸延伸フィルムのヘイズ(HZ)を測定した。
【0091】
(1−2)引張試験
二軸延伸フィルムから流れ方向(MD)及び幅方向(TD)に夫々短冊状の試験片(長さ:50あるいは150mm、幅:15mm)を採取して、引張試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC−1225)を使用し、チャック間距離100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分で測定)で、引張試験を行い、引張強さ(MPa)及びヤング率(MPa)を求めた。
【0092】
(1−3)熱収縮率
二軸延伸フィルムの長さ方向がフィルムの流れ方向(MD)、幅方向(TD)となるように100mm幅、100mm長さの試験片を切り出し、これを120℃のオーブン内に15分放置後、取り出して室温まで放冷した後の試験片の寸法変化を測定し、熱収縮率を測定した。
【0093】
(1−4)耐屈曲性
テスター産業製のゲルボフレックステスターを使用し、二軸延伸フィルムから210mm幅、297mm長さの試験片を切り出し、屈曲角度440度、屈曲速度40回/分で、0℃、−30℃の各雰囲気下で、3000回の屈曲試験を行った後、屈曲試験後の試験片で袋をつくり、三菱ガス化学製のエージレスシールチェックでピンホール数(個/m
2)を測定した。
【0094】
(2)多層二軸延伸フィルムの物性
(2−1)ヒートシール強度
ヒートシール強度測定に用いる多層二軸延伸フィルムとして、二軸延伸ポリアミドフィルム(厚さ:15μm)およびプロピレン系共重合体組成物の二軸延伸フィルムを用意し、二軸延伸ポリアミドフィルムと二軸延伸フィルムをラミネート機で貼り合せ、多層二軸延伸フィルムを得た。なお、アンカー剤はタケラックA310、タケネートA3(三井化学製)に、溶剤として酢酸エチル(廣島和光純薬製)を混合したものを使用した。東洋精機製ヒートシールテスターを使用し、多層二軸延伸フィルムから100mm幅、150mm長さの試験片を切り出し、半分に折って、ヒーターが180℃〜230℃で圧力が0.2MPaで、シール時間1秒で、ヒートシールを行った後、シールした試験片に切り出し、オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC−1225を使用し、ヒートシール強度を測定した。
【0095】
一方、レトルト殺菌処理した後のヒートシール強度の測定は、次の方法で行った。すなわち、前記の方法で作成した試験片を熱水シャワー式の高圧高温殺菌処理装置に入れて121℃30分間処理し、その後冷却した。次いで、前記と同じ方法でヒートシール強度(N/15mm)を測定した。
【0096】
〔実施例1〕
プロピレン系共重合体組成物として、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A−1):シンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D−1)を60:40(質量比)で計量し、ブルックナー社製の単軸押出機(スクリュー径:60mm、スクリュー長:L/D=27、バリアフライトスクリュー)でT−ダイシート成形機で、厚さ約1.5mmのシートを成形した。このシートを120℃で加熱し、シートの流れ方向(縦方向)に5倍延伸した。この5倍延伸したシートを160℃で加熱し、流れ方向に対して直行する方向(横方向)に10倍延伸して、40μmの熱融着フィルムを得た。熱融着フィルムの片面にコロナ処理を施した。
【0097】
<多層二軸延伸フィルムの製造>
二軸延伸ポリアミドフィルム(厚さ:15μm)と前記プロピレン系共重合体組成物からなる二軸延伸フィルム(熱融着層)を用意し、二軸延伸ポリアミドフィルムと二軸延伸フィルムをラミネート機で貼り合せ、多層二軸延伸フィルムを得た。なお、アンカー剤はタケラックA310、タケネートA3(三井化学製)に、溶剤として酢酸エチル(廣島和光純薬製)を混合したものを使用した。
得られた二軸延伸フィルム(熱融着層)、多層二軸延伸フィルムの物性を上記方法で測定した。結果を表1に示す。
【0098】
〔実施例2〕
プロピレン系共重合体組成物として、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A−1):シンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D−1)を80:20(質量比)としたプロピレン系共重合体組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行い、二軸延伸フィルム(熱融着層)、及び多層二軸延伸フィルムを得た。測定結果を表1に示す。
【0099】
〔実施例3〕
プロピレン系共重合体組成物として、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A−1):シンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D−1)を90:10(質量比)としたプロピレン系共重合体組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行い、二軸延伸フィルム(熱融着層)、及び多層二軸延伸フィルムを得た。測定結果を表1に示す。
【0100】
〔実施例4〕
プロピレン系共重合体組成物として、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A−1):シンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D−1)を95:5(質量比)としたプロピレン系共重合体組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行い、二軸延伸フィルム(熱融着層)、及び多層二軸延伸フィルムを得た。測定結果を表1に示す。
【0101】
〔実施例5〕
プロピレン系共重合体組成物として、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A−1−1):シンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D−1)を80:20(質量比)としたプロピレン系共重合体組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行い、二軸延伸フィルム(熱融着層)、及び多層二軸延伸フィルムを得た。測定結果を表1に示す。
【0102】
〔比較例1〕
プロピレン系共重合体組成物として、実施例1で用いたプロピレン系共重合体組成物に替えて、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A−1)を単独で用いる以外は、実施例1と同様に行い、二軸延伸フィルム(熱融着層)、多層二軸延伸フィルムを得た。測定結果を表1に示す。
【0103】
〔比較例2〕
プロピレン系共重合体組成物として、実施例1で用いたプロピレン系共重合体組成物に替えて、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A−1−1)を単独で用いる以外は、実施例1と同様に行い、二軸延伸フィルム(熱融着層)、多層二軸延伸フィルムを得た。測定結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
〔実施例6〕
実施例2で用いたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A−1)に替えて、プロピレン・エチレンランダム共重合体(B−1)を用いたプロピレン系共重合体組成物を用いる以外は、実施例2と同様に行い、二軸延伸フィルム(熱融着層)、及び多層二軸延伸フィルムを得た。測定結果を表2に示す。
【0106】
〔実施例7〕
実施例4で用いたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A−1)に替えて、プロピレン・エチレンランダム共重合体(B−1)を用いたプロピレン系共重合体組成物を用いる以外は、実施例2と同様に行い、二軸延伸フィルム(熱融着層)、及び多層二軸延伸フィルムを得た。測定結果を表2に示す。
【0107】
〔比較例3〕
実施例2で用いたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A−1)に替えて、プロピレン単独重合体(F−1)を用いた組成物を用いる以外は、実施例2と同様に行い、二軸延伸フィルム(熱融着層)、及び多層二軸延伸フィルムを得た。測定結果を表2に示す。
【0108】
〔比較例4〕
実施例4で用いたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A−1)に替えて、プロピレン単独重合体(F−1)を用いた組成物を用いる以外は、実施例4と同様に行い、二軸延伸フィルム(熱融着層)、及び多層二軸延伸フィルムを得た。測定結果を表2に示す。
【0109】
〔比較例5〕
プロピレン系共重合体組成物として、実施例5で用いたプロピレン・エチレンランダム共重合体(B−1)を単独で用いる以外は、実施例5と同様に行い、二軸延伸フィルム(熱融着層)、及び多層二軸延伸フィルムを得た。測定結果を表2に示す。
【0110】
〔比較例6〕
実施例2で用いたシンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D−1)に替えて、アイソタクティックプロピレン系重合体組成物(H−1)を用いる以外は、実施例2と同様に行い、二軸延伸フィルム(熱融着層)、及び多層二軸延伸フィルムを得た。測定結果を表2に示す。
【0111】
〔比較例7〕
実施例2で用いたシンジオタクティックプロピレン系重合体組成物(D−1)に替えて、アイソタクティックプロピレン系重合体組成物(H−2)を用いる以外は、実施例2と同様に行い、二軸延伸フィルム(熱融着層)、及び多層二軸延伸フィルムを得た。測定結果を表2に示す。
【0112】
【表2】