(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハウジングと、前記ハウジング内に回転可能に支持されるとともに内周面に2条雌ねじを有するアウタロータと、前記アウタロータ内に挿入されるとともに回転可能に支持されて外周面に1条雄ねじを有するインナロータとを備え、前記インナロータとともに前記アウタロータが1/2の回転角度で連れ回り駆動するねじポンプであって、
前記インナロータを回転駆動するインナロータ駆動部と、前記アウタロータを回転駆動するアウタロータ駆動部と、前記アウタロータ駆動部を制御するコントローラとを備え、
前記インナロータ駆動部は、前記インナロータの後部に設けられてインナロータの回転角度を検知する位置検出器を有し、前記アウタロータ駆動部は、前記アウタロータの回転角度を検知するアウタロータ用位置検出器を有しておらず、
前記コントローラは、前記インナロータ駆動部の駆動情報に基づいて、前記アウタロータ駆動部を、前記インナロータの回転数の1/2となる回転数で駆動する回転制御信号と、前記アウタロータの回転抵抗以上且つ前記アウタロータの回転抵抗に前記インナロータと前記アウタロータ間の摩擦抵抗と前記アウタロータの回転に伴い前記アウタロータが受ける搬送流体からの粘性抵抗とを加えた合算抵抗以下の駆動力で駆動する出力制御信号とにより駆動することを特徴とするねじポンプ。
【背景技術】
【0002】
液や粉体等の搬送流体を定量圧送するねじポンプとしては、例えば一軸偏心ねじポンプが知られている。この種のねじポンプは、ロータリーポンプに比べて圧送時の脈動が少なく、定量精度に優れることから定量圧送の用途に多用されている。
この種のねじポンプとしては、
図7に示すように、固定されたステータ104にロータ102を内装し、そのロータ102を、ユニバーサルジョイント100を介して駆動軸103に連結したものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ステータ固定型のねじポンプによれば、駆動軸103を回転させることにより、ユニバーサルジョイント100を介してロータ102が回転しつつステータ104の軸心に対して偏心運動を行うことによって、搬送流体を吸入側Uから吐出側Dへ定量圧送することができる。
しかし、ステータ固定型のねじポンプは、ロータがステータの軸線を中心として公転する構造なので、駆動軸とロータとの間には自在継手および連結ロッドを介在させる必要がある。そのため、液や粉体を圧送するときは、自在継手と連結ロッドが振れ回るため、自在継手と連結ロッドを配置するスペースが必要となる。したがって、自在継手と連結ロッドの部分の洗浄性が悪く、また、圧送する液が変性を嫌うデリケートな液の場合には、圧送中に液を撹拌して液質を変化させてしまうという問題がある。
【0004】
これに対し、液や粉体を定量圧送するねじポンプとして、
図6に示すように、回転可能に支持されたアウタロータ204にインナロータ202を内装し、アウタロータ204がインナロータ202の回転に追従回転するアウタロータ従属回転型のねじポンプも知られている(例えば特許文献2参照)。
アウタロータ従属回転型のねじポンプによれば、インナロータ202の回転にアウタロータ204が追従回転する構造なので自在継手が不要である。また、インナロータを片持ち支持構造としているので洗浄性に優れている。さらに、自在継手が不要なので、自在継手のあるステータ固定型のねじポンプよりも圧送中の液の撹拌も少なくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記アウタロータ従属回転型のねじポンプは、インナロータの回転にアウタロータを追従回転させる構造なので、ねじポンプの小型化(例えばインナロータ径を10mm以下)を図る場合、インナロータとアウタロータ間の摩擦抵抗やアウタロータのシール部や軸受部の回転抵抗により、インナロータの回転にアウタロータがスムーズに追従回転することが困難な場合があり、負荷が過大であればインナロータが破損するおそれがある。
【0007】
インナロータの破損防止対策として、インナロータとアウタロータを完全に同期させて駆動することも考えられるものの、両者を完全に同期させるためには、双方に位置検出器を設けなければならず、コストが嵩み、特に、小型のねじポンプの場合は、アウタロータ側に位置検出器を配設するのはスペース的に困難である。また、完全同期するための制御は複雑となるため、例えばハンチングや制御遅れにより逆に負荷が増大するおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、ねじポンプの小型化を図る場合であっても、インナロータの破断を防止または抑制するとともに、インナロータの回転にアウタロータをスムーズに追従回転させ得るねじポンプ
を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るねじポンプは、ハウジングと、前記ハウジング内に回転可能に支持されるとともに内周面に2条雌ねじを有するアウタロータと、前記アウタロータ内に挿入されるとともに回転可能に支持されて外周面に1条雄ねじを有するインナロータとを備え、前記インナロータとともに前記アウタロータが1/2の回転角度で連れ回り駆動するねじポンプであって、前記インナロータを回転駆動するインナロータ駆動部と、前記アウタロータを回転駆動するアウタロータ駆動部と、前記アウタロータ駆動部を制御するコントローラとを備え、前記インナロータ駆動部は、前記インナロータの後部に設けられてインナロータの回転角度を検知する位置検出器を有し、前記アウタロータ駆動部は、前記アウタロータの回転角度を検知するアウタロータ用位置検出器を有しておらず、前記コントローラは、前記インナロータ駆動部の駆動情報に基づいて、前記アウタロータ駆動部を、前記インナロータの回転数の1/2となる回転数で駆動する回転制御信号と、前記アウタロータの回転抵抗以上且つ前記アウタロータの回転抵抗に前記インナロータと前記アウタロータ間の摩擦抵抗と前記アウタロータの回転に伴い前記アウタロータが受ける搬送流体からの粘性抵抗とを加えた合算抵抗以下の駆動力で駆動する出力制御信号とにより駆動することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係るねじポンプによれば、インナロータとともにアウタロータが1/2の回転角度で連れ回り駆動する構造なので、インナロータの自在継手を不要とし、省スペース化を実現することができる。
ここで、アウタロータをインナロータに連れ回り駆動させる場合、上述のように、インナロータとアウタロータ相互間の摩擦抵抗やアウタロータのシール部や軸受部等の回転抵抗等によって円滑にアウタロータを連れ回り駆動させることが難しい場合がある。特に、起動時には円滑に立ち上げることが難しい。
【0011】
これに対し、本発明の一態様に係るねじポンプによれば、インナロータを回転駆動するインナロータ駆動部と、アウタロータを回転駆動するアウタロータ駆動部と、インナロータ駆動部およびアウタロータ駆動部を制御するコントローラとを備え、インナロータ駆動部は、インナロータの後部に設けられてインナロータの回転角度を検知する位置検出器を有し、アウタロータ駆動部は、アウタロータの回転角度を検知するアウタロータ用位置検出器を有しておらず、コントローラは、インナロータ駆動部の駆動情報に基づいて、アウタロータ駆動部を、インナロータの回転数の1/2となる回転数で駆動する回転制御信号と、アウタロータの回転抵抗以上且つアウタロータの回転抵抗にインナロータとアウタロータ間の摩擦抵抗とアウタロータの回転に伴いアウタロータが受ける搬送流体からの粘性抵抗とを加えた合算抵抗以下の駆動力で駆動する出力制御信号とにより駆動するので、インナロータとアウタロータ相互間の摩擦抵抗やアウタロータのシール部や軸受部等の回転抵抗をアウタロータ駆動部の回転力(以下、「補助駆動」ともいう)で低減させることができる。つまり、アウタロータ駆動部の補助駆動力で連れ回り駆動を不安定にさせる要因を相殺または低減することができる。よって、ねじポンプの小型化を図る場合でも、インナロータの破断を防止または抑制するとともに、インナロータにアウタロータが円滑に追従回転させることができる。
【0012】
ここで、アウタロータ駆動部の回転力の設定範囲について、下限の設定値をアウタロータの回転抵抗以上とする理由は、アウタロータの回転抵抗は搬送流体の質によらずほぼ一定なので、少なくともアウタロータの回転抵抗以上の回転力を付与することが、インナロータにアウタロータを円滑に追従回転させる上で好ましいからである。また、上限の設定値を、アウタロータの回転抵抗にインナロータとアウタロータ間の摩擦抵抗とアウタロータの回転に伴いアウタロータが受ける搬送流体からの粘性抵抗とを加えた合算抵抗以下とする理由は、インナロータとアウタロータ間の摩擦抵抗とアウタロータ回転に伴うアウタロータの搬送流体からの粘性抵抗は搬送流体の質によって大きく変わるため、その変動分の回転力を加味すれば、インナロータにアウタロータが円滑に追従回転させる上で十分な回転力を付与できるからである。
【0013】
そして、本発明の一態様に係るねじポンプによれば、インナロータ駆動部は、インナロータの後部に設けられてインナロータの回転角度を検知する位置検出器を有し、アウタロータ駆動部は、アウタロータの回転角度を検知するアウタロータ用位置検出器を有しておらず、コントローラは、インナロータ駆動部の駆動情報に基づいて、アウタロータ駆動部を、インナロータの回転数の1/2となる回転数で駆動するとともに、アウタロータ駆動部の出力を、アウタロータの回転抵抗以上且つアウタロータの回転抵抗にインナロータとアウタロータ間の摩擦抵抗とアウタロータの回転に伴いアウタロータが受ける搬送流体からの粘性抵抗とを加えた合算抵抗以下の力で駆動するので、アウタロータ駆動部の位置検出器および同期制御のためのシステムを不要とし、インナロータとアウタロータ相互の完全な同期をとらなくとも、アウタロータ駆動部の構造および制御を簡素化しつつ、インナロータの回転にアウタロータをスムーズに追従回転させることができる。
【0014】
ここで、本発明の一の態様に係るねじポンプにおいて、前記コントローラは、当該ねじポンプの停止時に前記インナロータ駆動部にかかるトルクを位相ずれトルクとして検出する位相ずれトルク検出部と、前記位相ずれトルクの値に基づいて、当該ねじポンプの停止状態から前記インナロータ駆動部および前記アウタロータ駆動部のうちいずれか一方の駆動部を前記位相ずれトルクが小さくなる方向に所定量だけ駆動する起動位置探査部と、前記位相ずれトルクがゼロとなったときにそのときの停止位置を前記インナロータ駆動部と前記アウタロータ駆動部の起動位置とする起動位置設定部とを有することは好ましい。
【0015】
このような構成であれば、ねじポンプの起動位置(回転角のゼロ点)の設定に際し、アウタロータの回転角度を検知する位置検出器を用いることなく、インナロータ駆動部とアウタロータ駆動部の起動時の回転角のゼロ点を位置決めすることができる。よって、インナロータの回転にアウタロータをスムーズに追従回転させる機器構成を簡略化する上で好適であり、また、ねじポンプの起動時に円滑に立ち上げる上で好適である。
【発明の効果】
【0018】
上述のように、本発明によれば、ねじポンプの小型化を図る場合であっても、インナロータの破断を防止または抑制するとともに、インナロータの回転にアウタロータをスムーズに追従回転させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0021】
図1に示すように、このねじポンプ1は、モータ45が内蔵された略円筒状のモータフレーム101と、モータフレーム10の前側端面のフランジ部10aに装着されたポンプハウジング20とを有する。ポンプハウジング20は、モータフレーム10に、複数のボルト11によって着脱可能に固定されている。ポンプハウジング20とモータフレーム10との接続部20sは、インロー嵌合になっており、ボルト11着脱時の軸心位置が容易に再現可能になっている。
【0022】
モータ45は、サーボモータであって、シャフト41の外周に、周方向に等配された複数の第一の永久磁石46が設けられ、第一の永久磁石46に対して対向方向に隙間を隔ててモータフレーム10内に第一の電磁コイルである固定子47が、周方向に離隔して所要の個数が配置されている。モータフレーム10の後端部には、シャフト41の後端に、モータ45の位置検出器50(回転角度を検知可能なセンサであって、例えば、エンコーダ、レゾルバ)が付設されている。これにより、この例では永久磁石ブラシレスモータがインナロータ駆動部として構成されている。
【0023】
モータフレーム10内には、モータ45のシャフト41が、モータフレーム10の前後両端で軸受42、43によって両持ち状態で軸方向に沿って回転自在に支持されている。シャフト41は、自身軸方向に沿って単一の内径で同軸に形成されたインナロータ装着穴41aを有する。
インナロータ装着穴41aには、片持ち構造のインナロータ40の基端部40jが挿入されている。インナロータ40は、シャフト41の後端から固定ボルト40gの締結によってシャフト41と一体で回転するようにキー40kによって基端部40jがインナロータ装着穴41aに固定されている。
【0024】
ポンプハウジング20は、モータフレーム10のフランジ部10a側から順に、吸込部21および本体部22を有する。吸込部21には、圧送流体である液または粉体等の搬送流体(輸送物)の吸込口21uが上部に形成されている。本体部22の吐出側には、吐出口23dを有するアダプタ23が装着されている。アダプタ23は、本体部22の前側端面にねじによって着脱可能に装着されている。そのため、このねじポンプ1は、アダプタ23の分解組立性に優れている。アダプタ23は、ねじ込み式の着脱構造により、用途に応じて換装されることで、吐出口23dの形状を変更可能になっている。
【0025】
ここで、このねじポンプ1は、主要な用途として精密部品の生産工程で使用する接着剤の塗布に用いられる。そのため、アダプタ23の吐出口23dは、軸方向に沿って延びる細径のノズル形状となっている。また、このねじポンプ1は、生産ラインで使用する際に、ロボットアームの先端にも取付けやすいように、モータ45のシャフト41の軸線からアダプタ23の吸込口21uの軸線までが同軸上に配置されるとともに、モータフレーム10の外周部分を固定可能なように、モータフレーム10の外周が片側支持可能な円筒形状になっている。なお、接着部品としては、スマートフォン、ソーラパネルの部品や自動車部品などを例示できる。
【0026】
ポンプハウジング20には、本体部22内に、雌ねじ状の内面をもつアウタロータ30と、アウタロータ30内に雄ねじ状の螺旋部40aが内装される上記インナロータ40とが備えられている。アウタロータ30は、両端が軸受31、32によって本体部22内に回転自在に支承されている。各軸受31、32の外側にはパッキン26、27がそれぞれ介装されている。なお、本実施形態のねじポンプ1は、アウタロータ30を支持する軸受31、32に深溝玉軸受を使用しているが、用途として食品への展開がある場合には、軸受31、32に無給油のセラミック玉軸受を用いれば、サニタリ性を容易に確保することができる。
【0027】
ここで、このねじポンプ1のインナロータ40は、螺旋部40aの外周面に1条雄ねじを有し、アウタロータ30は、その内周面に2条雌ねじを有するものである。アウタロータ30の回転中心軸Oとインナロータ40の回転中心軸Pとは、相互の軸心が軸心間距離Eだけ離れた平行な2軸でそれぞれ回転可能に支承されている。アウタロータ30内にインナロータ40の螺旋部40aが差し込まれると、相互の隙間には独立した密閉空間であるキャビティKが、軸方向の複数個所に搬送部として画成される。
【0028】
このねじポンプ1は、インナロータ40を回転させることで、アウタロータ30がインナロータ40の1/2の回転角度で連れ回るように回転する。このとき、上記キャビティKの断面積は、インナロータ40とアウタロータ30の位置に関わらず一定となる。そのため、吐出量も常に一定になり、時間あたりの吐出量は、インナロータ40の回転速度に正比例する。
【0029】
このねじポンプ1は、インナロータ40がアウタロータ30内で回転すると、これにより、アウタロータ30がインナロータ40の1/2の回転角度で連れ回り駆動されてキャビティKが吐出側へと移動する。そのため、アウタロータ30とインナロータ40の接線で吸込側と吐出側を遮断するシールラインが吸込側から吐出側に連続的に移動し、キャビティK内に囲い込まれた搬送流体が吐出側に連続的に定量圧送可能になっている。なお、インナロータ40の回転方向を反転させれば、吸込・吐出の方向を反転することができる。
【0030】
ここで、このねじポンプ1は、駆動機構として、インナロータ40を駆動する上記モータ45に加え、
図2に示すように、更に、アウタロータ30を補助的に回転駆動するアウタロータ駆動部35と、モータ45およびアウタロータ駆動部35を制御するコントローラ60とを備えている。そして、コントローラ60は、上記モータ45に設けられた位置検出器50の位置信号に基づいて、インナロータ40の回転角度(回転数)の1/2の回転角度(回転数)となる回転制御信号、および所定の回転力となる出力制御信号をそれぞれ生成し、アウタロータ駆動部35のドライバにこれら制御信号を送りアウタロータ駆動部35を駆動するようになっている。
【0031】
詳しくは、
図1に示すように、ねじポンプ1は、ポンプハウジング20の本体部22の内部に、アウタロータ駆動部35を有する。アウタロータ駆動部35は、アウタロータ30の外周に周方向に等配された複数の第二の永久磁石36と、第二の永久磁石36の外周面に対向して設けられて周方向に離隔して所要の個数が配置された第二の電磁コイル37とを有する永久磁石ブラシレスモータである。なお、アウタロータ駆動部35は、アウタロータ30の回転角度を検知する位置検出器を有していない。
【0032】
図2に示すように、モータ45(以下、M1とも記す)は、固定子47を制御する第一のドライバ48(以下、M1ドライバとも記す)を有し、また、アウタロータ駆動部35(以下、M2とも記す)は、固定子37を制御する第二のドライバ38(以下、M2ドライバとも記す)を有する。コントローラ60は、モータ45に設けられた位置検出器50の位置信号、および、各ドライバ38、48内部のコンパレータから駆動時の電流値をそれぞれ取得可能である。
【0033】
そして、このねじポンプ1は、上述のように、精密部品の生産工程で使用する接着剤の塗布に用いられるが、ねじポンプ1のコントローラ60には、接着剤の塗布が必要なときに、当該生産工程を管理する上位コンピュータからの駆動指令が入力される。コントローラ60は、上位コンピュータから駆動指令が入力されると、
図3に示す駆動制御処理を実行するようになっている。
【0034】
コントローラ60で駆動制御処理が実行されると、
図3に示すように、インナロータ駆動部であるモータ45に対するM1駆動制御処理と、アウタロータ駆動部35に対するM2駆動制御処理とが同時並行して実行される。
M1駆動制御処理では、ステップS11に移行し、モータ45の位置検出器50から位置情報(位置信号)を取得してステップS12に移行する。ステップS12では、モータ45の第一のドライバ48に必要な制御信号を出力してステップS13に移行する。ステップS13では、取得された位置情報が駆動指令に応じた目標値に到達しているか否かを判定し、到達していなければ(No)ステップS11に処理を戻し、目標値に到達したならば(Yes)ステップS14に移行する。ステップS14では、モータ45を停止して処理を戻す。
【0035】
一方、M2駆動制御処理では、ステップS21に移行し、モータ45の位置検出器50から取得された位置情報(位置信号)に基づき、モータ45が駆動されたか否かを判定する。つまり、モータ45が駆動されていれば(Yes)ステップS22に移行し、そうでなければ(No)ステップS21で待機する。ステップS22では、インナロータ用の位置検出器50で検知されたモータ45の回転角度(回転数)に基づいて、アウタロータ30を補助駆動するために予め設定された制御信号をアウタロータ駆動部35の第二のドライバ38に出力する。
【0036】
ここで、上記予め設定された制御信号は、インナロータ40の回転角度(回転数)の1/2の回転角度(回転数)となる回転制御信号の他、アウタロータ駆動部35において第二の電磁コイル37から第二の永久磁石36に伝達する回転力が、アウタロータ30の回転抵抗以上であり、アウタロータ30の回転抵抗にインナロータ40とアウタロータ30間の摩擦抵抗とアウタロータ30の回転に伴いアウタロータ30が受ける搬送流体からの粘性抵抗とを加えた合算抵抗以下の回転力となる出力制御信号である。
【0037】
続くステップS23では、モータ45の位置検出器50から取得された位置情報(位置信号)に基づき、モータ45が停止されたか否かを判定する。つまり、モータ45が停止されていれば(Yes)ステップS24に移行し、そうでなければ(No)ステップS22に処理を戻す。ステップS24では、モータ45を停止して処理を戻す。
【0038】
さらに、このねじポンプ1のコントローラ60は、上記駆動制御処理以外の処理として、モータ45とアウタロータ駆動部35の起動時の回転角のゼロ点を位置決めするために、
図4に示す起動位置設定処理を実行する。起動位置設定処理は、生産工程を管理する上位コンピュータからの駆動指令が入力されていないときに実行される。
コントローラ60で起動位置設定処理が実行されると、ステップS1では、ねじポンプ1が停止状態か否かを判定し、停止状態であれば(Yes)ステップS2に移行し、そうでなければ(No)処理を戻す。ステップS2では、モータ45の第一のドライバ48のコンパレータから電流値M1eを取得してステップS3に移行する。ステップS3では、取得した電流値M1eが、零または零よりも大きい若しくは小さいか否かを判定する。その結果、取得した電流値M1eが、零よりも小さければステップS4に移行し、零よりも大きければステップS5に移行し、零であればステップS6に移行する。
【0039】
ステップS4では、取得した電流値M1eが零に近づくように、モータ45のみを所定量だけ正転方向に駆動してインナロータ40を微小量だけ正回転させた後にねじポンプ1を停止させてステップS2に処理を戻す。なお、このステップS4において、アウタロータ駆動部35のみを所定量だけ逆転方向に駆動してアウタロータ30を微小量だけ逆回転させてもよい。
【0040】
ステップS5では、取得した電流値M1eが零に近づくように、モータ45のみを所定量だけ逆転方向に駆動してインナロータ40を微小量だけ逆回転させた後にねじポンプ1を停止させてステップS2に処理を戻す。なお、このステップS5において、アウタロータ駆動部35のみを所定量だけ正転方向に駆動してアウタロータ30を微小量だけ逆回転させてもよい。
【0041】
ステップS6では、電流値M1eが零なので、位相ずれトルクがないと判定する。ここで、サーボモータであるモータ45では、電流値M1eからモータ45にかかるトルクを推定できることから、電流値M1eに基づき、モータ45にかかるトルクを位相ずれトルクとして検出することができる。
つまり、電流値M1eが零でなければ(ステップS4またはS5)位相ずれトルクがあると判定してステップS2に処理を戻す一方、電流値M1eが零であれば(ステップS6)位相ずれトルクがゼロであると判定し、その位置をモータ45とアウタロータ駆動部35の起動時の回転角のゼロ点とし、当該ねじポンプ1の起動位置に設定して処理を戻す。起動位置設定処理にてゼロ点設定を行った後は、駆動制御処理が実行されるまで待機する。
【0042】
なお、上記ステップS1〜S3の処理が、上記課題を解決する手段に記載の、「位相ずれトルク検出部」および「位相ずれトルク検出工程」に対応し、ステップS3での判断に基づくステップS4およびS5の処理が、「起動位置探査部」および「起動位置探査工程」に対応し、ステップS3での判断に基づくステップS6の処理が、「起動位置設定部」および「起動位置設定工程」に対応している。
【0043】
ここで、上記ステップS1〜S3の処理での電流値M1eの実測結果の一例を
図5に示す。同図に示すように、ポンプ停止時のモータ45の電流値M1eについて、この例では、0.22Aの電流値(トルク換算0.7N・m)がポンプ停止時に、インナロータ40とアウタロータ30の位相ズレの力としてサーボモータにかかっている。
よって、取得された電流値M1eが零に近づくようにアウタロータ駆動部35(またはモータ45)を微小量だけ駆動し、電流値M1eが零になるまでアウタロータ30(またはインナロータ40)を回転させ、電流値M1eが零のときをインナロータ40とアウタロータ30のゼロ点(起動位置)としている。
【0044】
次に、上記ねじポンプの動作および作用・効果について説明する。
このねじポンプ1は、インナロータ40が、駆動軸であるシャフト41とダイレクトに連結され、モータ45の駆動によりシャフト41と同軸上でインナロータ40が回転するとともに、アウタロータ30が連れ回り回転するに際し、アウタロータ駆動部35の駆動により、インナロータ40の回転角度の1/2の回転角度で補助駆動されることで、インナロータ40の支持端側の吸込口21uから自由端側の吐出口23dに搬送流体を定量圧送することができる。
【0045】
このねじポンプ1は、インナロータ40およびアウタロータ30が共に回転する構造であり、インナロータ40は、自在継手が不要な片持ち支承構造なので、ポンプハウジング20とモータフレーム10の部分を結合する複数のボルト11を外してポンプハウジング20をモータフレーム10から分割し、軸方向の吐出口23d側にポンプハウジング20を引けば、ポンプハウジング20よりも左側の搬送部全体をモータフレーム側から容易に取り外して分割することができる。
【0046】
特に、ポンプハウジング20の上記分解作業は、インナロータ40およびアウタロータ30が共に回転する構造なので、軸方向の吐出口23dに引けば、ロータ相互が回転することにより軸方向にスルスルと簡単に抜けるので、分解作業が極めて容易である。そのため、このねじポンプ1によれば、ポンプハウジング20の内部洗浄、およびインナロータ40の螺旋部40aの洗浄を容易に効率良く行うことができる。なお、フランジ部10aの固定にボルト11を使用している理由は、当該ねじポンプ1の搬送物に接着剤を想定しているためであり、当該ねじポンプ1を食品用とする場合は、フランジ部10aの着脱可能な締結手段としてへルールクランプを用いてもよい。
【0047】
さらに、このねじポンプ1によれば、インナロータ40を駆動するモータ45に加え、更に、アウタロータ30を補助的に回転駆動するアウタロータ駆動部35を有するので、インナロータ40がアウタロータ30を連れ回りさせるための駆動トルクを大幅に軽減することができる。このとき、アウタロータ30は、インナロータ40との軸心間距離Eだけずれた位置で回転するので、アウタロータ30がインナロータ40と完全に同期が取られていなくとも、インナロータの回転の1/2の回転角度で従属回転させることができる。
【0048】
よって、このねじポンプ1によれば、インナロータ40の破断を効果的に防止または抑制することができる。そして、このねじポンプ1によれば、脈動がほとんどない円滑な圧送を可能としつつも、アウタロータ30とインナロータ40との精度の高い同期制御が不要なので、機器構成の簡略化を図ることができ、コストを下げることができる。
すなわち、本実施形態では、インナロータ40を回転駆動するモータ45と、アウタロータ30を回転駆動するアウタロータ駆動部35と、モータ45およびアウタロータ駆動部35を制御するコントローラ60とを備え、コントローラ60は、モータ45を駆動するとともに、モータ45用の位置検出器50から取得した位置情報に基づいて、アウタロータ駆動部35をモータ45の回転角度の1/2の回転角度で補助駆動させるので、インナロータの回転にアウタロータをよりスムーズに追従回転させることができる。
【0049】
そして、アウタロータ駆動部35は、コントローラ60からの回転制御信号と、出力制御信号とに応じて、第二のドライバ38を介して第二の電磁コイル37から第二の永久磁石36にインナロータ40の1/2の回転角度となる回転力を伝達するので、インナロータ40とアウタロータ30間の摩擦抵抗やアウタロータ30のシール部や軸受部等の回転抵抗を、第二の電磁コイル37からアウタロータ30の外周に配置された第二の永久磁石36に伝達された回転力で相殺して、インナロータ40の回転の1/2の回転角度でアウタロータ30をスムーズに追従回転させる上で好適である。
【0050】
さらに、本実施形態では、モータ45は、モータ45の後部に設けられたモータ45用の位置検出器50を有し、アウタロータ駆動部35は、アウタロータ30の回転角度を検知する位置検出器を有しておらず、コントローラ60は、上記予め設定された制御信号として、モータ45用の位置検出器50で検知されたモータ45の回転角度に基づいて、モータ45の回転角度の1/2の回転角度になる回転制御信号と、アウタロータ駆動部35の出力をアウタロータ30の回転抵抗以上且つアウタロータ30の回転抵抗にインナロータ40とアウタロータ30間の摩擦抵抗とアウタロータ30の回転に伴いアウタロータ30が受ける搬送流体からの粘性抵抗とを加えた合算抵抗以下の回転力で駆動する出力制御信号とをアウタロータ駆動部35に伝達するので、アウタロータ30の回転角度を検知する位置検出器を用いることなく、インナロータ40とアウタロータ30相互の回転角を精度良く同期させることができる。
【0051】
つまり、アウタロータ30は連れ回りが基本であり、アウタロータ30に設けられたアウタロータ駆動部35は、補助動力に過ぎないので、上記構成により、アウタロータ駆動部35の構成を低コストとしつつ複雑な制御も不要なので、複雑な制御に起因するような弊害も発生しない。よって、補助駆動に係る機器構成の簡略化を図る上でより好適である。
【0052】
以上説明したように、このねじポンプ1によれば、アウタロータ従属回転型のねじポンプにおいては、インナロータ径が10mm以下の小型化を図る場合に問題となった、インナロータ40が破断するという問題を回避するとともに、インナロータ40にアウタロータ30を円滑に追従回転させ、脈動の極めて少ない定量精度に優れたねじポンプを安価に提供することができる。
【0053】
特に、本実施形態では、連れ回りするアウタロータ30に補助動力としてアウタロータ駆動部35を設け、モータ45の回転角度の1/2の回転角度になる回転制御信号と、予め設定された出力制御信号とによりアウタロータ駆動部35を制御し、予め設定された出力制御信号は、アウタロータ駆動部35が第二の電磁コイル37から第二の永久磁石36に伝達する回転力が、アウタロータ30の回転抵抗以上であってアウタロータ30の回転抵抗にインナロータ40とアウタロータ30間の摩擦抵抗とアウタロータ30の回転に伴いアウタロータ30が受ける搬送流体からの粘性抵抗とを加えた合算抵抗以下の回転力となるように設定されているので、アウタロータ駆動部35のトルク(≒モータの電流値)を、回転負荷による回転力不足分を補う値に設定することができる。これにより、回転角度(回転数)の指令(≒モータのパルス指令)は、単純にインナロータ40の回転数指令の1/2の回転数指令とし、アウタロータ駆動部35の回転力が必要十分な値にすることができる。そのため、アウタロータ駆動部35のフィードバック制御を一切不要として機器構成の簡略化を図りつつも、モータ45とアウタロータ駆動部35相互の回転角をより精度良く同期させることができるのである。
【0054】
なお、本発明に係るねじポンプおよびねじポンプの定量圧送方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
例えば、上記実施形態では、インナロータの回転にアウタロータが連れ回り駆動するねじポンプにおいて、完全な同期制御ではなく、連れ回り駆動を円滑にする"補助駆動"を行うねじポンプの一例として、内周面に2条雌ねじを有するアウタロータ30と、外周面に1条雄ねじを有するインナロータ40とを備え、インナロータ40とともにアウタロータ30が1/2の回転角度で連れ回り駆動可能なねじポンプ1を例に説明したが、これに限定されない。
【0055】
つまり、本発明は、インナロータの回転にアウタロータが連れ回り駆動するねじポンプであれば、内周面に(N+1)条雌ねじを有するアウタロータと、外周面にN条雄ねじを有するインナロータとを備え、インナロータとともにアウタロータがN/(N+1)の回転角度で連れ回り駆動するねじポンプ(但し、Nは、1〜3のいずれかの自然数である。)に対して、連れ回り駆動を円滑にする"補助駆動"を行うことができる。