特許第6585403号(P6585403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585403
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/80 20180101AFI20190919BHJP
   F24F 11/63 20180101ALI20190919BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20190919BHJP
   F24F 140/00 20180101ALN20190919BHJP
【FI】
   F24F11/80
   F24F11/63
   F24F110:10
   F24F140:00
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-138692(P2015-138692)
(22)【出願日】2015年7月10日
(65)【公開番号】特開2017-20717(P2017-20717A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】月元 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 陽介
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−064283(JP,A)
【文献】 特開2014−190563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/80
F24F 11/63
F24F 110/10
F24F 140/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に空調風を供給する複数の室内空調機と、
室内に予め設定された複数箇所の温度を検出する温度検出装置と、
前記複数の室内空調機それぞれが発揮する空調能力を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記各室内空調機から供給される空調風の温度変化と前記各箇所の温度変化との対応関係を示すデータを蓄積する蓄積処理、
前記蓄積処理の結果を利用して前記箇所毎に少なくとも1つの前記室内空調機を関連付ける関連付け処理、並びに
前記温度検出装置により検出された温度が予め設定された温度範囲を逸脱したときに、その逸脱した箇所(以下、逸脱箇所という。)に関連付けられた前記室内空調機から供給される空調風の温度を変更して当該逸脱箇所の温度を当該温度範囲に戻す第1能力増加処理が実行可能であり、
前記複数の室内空調機のうち現時に発揮している空調能力が予め設定された空調能力以上となっている前記室内空調機を上限状態室内機としたとき、
前記第1能力増加処理では、前記複数の室内空調機のうち前記上限状態室内機以外の室内空調機の空調能力を増加させ、
前記温度検出装置により検出された温度が前記温度範囲を逸脱していない箇所を非逸脱箇所としたとき、
前記制御装置は、
前記非逸脱箇所に関連付けられた少なくとも1つの前記室内空調機が発揮する空調能力を減少させる能力減少処理、並びに
前記能力減少処理の実行後、前記逸脱箇所が発生したときに、前記複数の室内空調機のうちいずれかの室内空調機が発揮する空調能力を増加させる第2能力増加処理が実行可能であり、
前記第2能力増加処理では、前記非逸脱箇所に関連付けられた少なくとも1つの前記室内空調機が発揮する空調能力を増加させ、
前記第2能力増加処理では、前記能力減少処理が実行された前記室内空調機が発揮する空調能力を増加させ、
前記複数の室内空調機のうち現時に発揮している空調能力が予め設定された空調能力以下となっている前記室内空調機を下限状態室内空調機としたとき、
前記能力減少処理では、前記複数の室内空調機のうち前記下限状態室内空調機以外の室内空調機の空調能力を減少させ、
前記制御装置は、
前記能力減少処理の実行後、前記逸脱箇所が発生しなかったときには、前記能力減少処理が実行されていない室内空調機に対して前記能力減少処理を実行し、
さらに、前記制御装置は、前記複数箇所の全てが前記非逸脱箇所であるときに前記能力減少処理を実行することを特徴とする空調システム。
【請求項2】
室内には、複数の情報通信技術装置(以下、ICT装置という。)が設置され、
さらに、前記複数の室内空調機は、前記複数のICT装置を冷却するための空調風を室内に供給することを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の空調システムでは、CPU温度に関連するパラメータ(吸込み温度)が上限温度を超えている場合には設定温度を下げる制御を行い、上限温度を超えていない場合には空調効率を高める方向に変更している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−214944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の空調システムに比べて、更に消費電力を低減することが可能な空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願では、室内に空調風を供給する複数の室内空調機(5)と、室内に予め設定された複数箇所の温度を検出する温度検出装置(11)と、複数の室内空調機(5)それぞれが発揮する空調能力を制御する制御装置(7)とを備え、制御装置(7)は、各室内空調機(5)から供給される空調風の温度変化と各箇所の温度変化との対応関係を蓄積する蓄積処理、蓄積処理の結果を利用して箇所毎に少なくとも1つの室内空調機(5)を関連付ける関連付け処理、並びに温度検出装置(11)により検出された温度が予め設定された温度範囲を逸脱したときに、その逸脱した箇所(以下、逸脱箇所という。)に関連付けられた室内空調機(5)から供給される空調風の温度を変更して当該逸脱箇所の温度を当該温度範囲に戻す第1能力増加処理が実行可能である。
【0006】
これにより、本願発明では、逸脱箇所に関連付けられた室内空調機(5)の空調能力を増加させるので、逸脱箇所との関連性が低い室内空調機(5)の空調能力を増加させてしまうことを抑制できる。したがって、逸脱箇所を効率よく空調することが可能となるので、更に消費動力を低減することが可能となる。
【0007】
なお、本願発明は、以下のように構成してもよい。
すなわち、温度検出装置(11)により検出された温度が温度範囲を逸脱していない箇所を非逸脱箇所としたとき、制御装置(7)は、非逸脱箇所に関連付けられた少なくとも1つの室内空調機(5)が発揮する空調能力を減少させる能力減少処理、並びに能力減少処理の実行後、逸脱箇所が発生したときに、いずれかの室内空調機(5)が発揮する空調能力を増加させる第2能力増加処理が実行可能である。
【0008】
これにより、非逸脱箇所との関連性の高い室内空調機(5)の空調能力を減少させることが可能となるので、消費動力を低減することが可能となる。
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】空調システムの概念図である。
図2】第1実施形態に係る空調システムの制御系ブロック図である。
図3】第1実施形態に係る蓄積処理の概念図である。
図4】第1実施形態に係る空調システムの制御を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態に係る空調システムの制御系ブロック図である。
図6】第2実施形態に係る蓄積処理の概念図である。
図7】第2実施形態に係る空調システムの制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明する「発明の実施形態」は実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、少なくとも符号を付して説明した機器は、「複数」や「2つ以上」等の断りをした場合を除き、少なくとも1つ設けられている。
【0012】
(第1実施形態)
1.空調システムの構成
本実施形態は、通信機器室やサーバ室等(以下、サーバ室という。)の空調を行う空調システムに本発明を適用したものである。サーバ室には、図1に示すように、複数の情報通信技術用機器(以下、ICT装置という。)及び複数の室内空調機51〜54等が設置されている。以下、室内空調機51〜54を総称するときは室内空調機5と記す。
【0013】
各室内空調機5は、サーバ室内に冷却用の空調風を供給することにより、各ICT装置1を冷却する。なお、複数のICT装置1はラック9A〜9Hに収納された状態で各サーバ室に設置されている。
【0014】
本実施形態に係る各室内空調機5は熱源装置(図示せず。)と協働して室内に供給する空気を冷却する。つまり、室内空調機5及び熱源装置によりサーバ室の空調を行う空調装置が構成される。熱源装置は、サーバ室から回収した熱を室外に放出して冷熱を生成する装置であって、室外に1台又は2台以上設置されている。
【0015】
制御装置7は、少なくとも各空調装置5それぞれが発揮する空調能力を制御する。制御装置7は、CPU、ROM及びRAM等を有するコンピュータにて構成されたものであって、ROM等の不揮発性記憶部に予め記憶されたプログラム(ソフトウェア)に従って各空調装置5の作動を制御する。
【0016】
制御装置7には、図2に示すように、温度検出装置11からの出力信号が入力されている。温度検出装置11は、室内に予め設定された複数箇所の温度を検出する。本実施形態に係る温度検出装置11は、複数箇所それぞれに配設された温度センサーS1〜Snによって構成されている。
【0017】
複数の温度センサーS1〜Snは、各室内空調機5の作動制御用に設置された温度センサー、又は各ICT装置1が有する温度センサー等、その種類は不問である。ICT装置1が有する温度センサーとは、ICT装置1に設けられた冷却ファンの作動制御するために予めICT装置1に設けられた温度センサーである。
【0018】
なお、ICT装置1は、情報処理を実行する演算ユニット(以下、CPUという。)、及びCPUに室内空気を供給する電動式の冷却ファンを有する。当該冷却ファンは、CPUに供給する室内空気の温度を温度上昇に応じて送風量が増加させる。そして、冷却ファンの回転数は、上記温度センサーが検出した温度信号を利用して制御される。
【0019】
2.制御の概要
制御装置7は、以下の制御処理が実行可能である。
<蓄積処理(図3参照)>
蓄積処理は、各室内空調機5から供給される空調風の温度変化と各箇所の温度変化との対応関係を示すデータ(以下、制御前温度データという。)を蓄積する処理である。
【0020】
具体的には、制御装置7は、複数の各室内空調機5のうちいずれか1つの室内空調機5(例えば、室内空調機51)が供給する空調風の温度を、例えば1deg(℃)上昇させる。このとき、温度検出装置11が検出した各箇所の温度変化を記憶部に記憶させる。記憶部はHDD等の不揮発性の記憶装置である。
【0021】
次に、制御装置7は、他の室内空調機5(例えば、室内空調機52)について、上記と同様な処理を実行する。そして、制御装置7は、上記と同様な処理を順次繰り返し、全ての室内空調機5についての制御前温度データを収集するとともに、その制御前温度データを蓄積していく。
【0022】
制御装置7は、制御前温度データの収集、つまり蓄積処理を予め設定されたタイミングで定期的に実行する。因みに、空調システムを設置した直後、つまり最初の蓄積処理は、設置作業を実施した施工者により強制的に実行される。
【0023】
そして、蓄積処理が実行される度に蓄積されているデータは更新・変更されていく。なお、データの更新・変更の手法は不問である。具体的には、例えば、過去のデータの平均値を更新されたデータの値としてもよい。
【0024】
なお、空調風の温度を上昇させることが適切でない場合には、制御装置7は畜接処理を実行しない。上記場合とは、例えば、サーバ室内の温度が予め設定された温度を超えている場合等である。
【0025】
<関連付け処理>
関連付け処理は、蓄積処理の結果を利用して箇所毎に少なくとも1つの室内空調機5を関連付ける処理である。本実施形態に係る関連付け処理では、例えば、「温度変化させた室内空調機5」と「当該温度変化に対して温度変化が大きい箇所」とが関連付けられる。
【0026】
具体的には、図3に示す制御前温度データにおいては、温度センサーS1が設置された箇所に対して少なくとも室内空調機51が関連付けられる。温度センサーS2が設置された箇所に対しては、少なくとも室内空調機53が関連付けられる。
【0027】
温度センサーS3が設置された箇所に対しては、少なくとも室内空調機54が関連付けられる。温度センサーS4が設置された箇所に対しては、少なくとも室内空調機53が関連付けられる。温度センサーS5が設置された箇所に対しては、少なくとも室内空調機54が関連付けられる。
【0028】
温度センサーS6が設置された箇所に対しては、少なくとも室内空調機52が関連付けられる。なお、各箇所に複数の室内空調機5を関連付けてもよい。例えば、温度センサーS4が設置された箇所に対しては、室内空調機53、54を関連付けてもよい。
【0029】
<第1能力増加処理>
第1能力増加処理は、温度検出装置11により検出された温度が予め設定された温度範囲(以下、設定温度範囲という。)を逸脱したときに、その逸脱した箇所(以下、逸脱箇所という。)に関連付けられた室内空調機5から供給される空調風の温度を変更して設定逸脱箇所の温度を当該温度範囲に戻す処理である。
【0030】
つまり、制御装置7は、逸脱箇所に関連付けられた少なくとも1台の室内空調機5(以下、関連空調機という。)が供給する空調風の温度を現時の温度より低い温度に変更する。その後、逸脱箇所の温度が設定温度範囲に戻った場合には、制御装置7は変更後の温度を維持する。
【0031】
逸脱箇所の温度が設定温度範囲に戻らない場合には、制御装置7は、関連空調機が供給する空調風の温度を更に低い温度に変更する。このように、制御装置7は、逸脱箇所の温度が設定温度範囲に戻るまで関連空調機が供給する空調風の温度を変更する。
【0032】
例えば、温度センサーS4が設置された箇所が逸脱箇所である場合において、室内空調機53が上限状態室内機となっているときには、制御装置7は、例えば室内空調機54が供給を空調風の温度を現時より低い温度に変更する。
【0033】
このとき、関連空調機のうち少なくとも1台が上限状態室内機となっている場合には、制御装置7は、1台又は複数の室内空調機5のうち上限状態室内機以外の室内空調機5の空調能力を増加させる。
【0034】
なお、関連空調機の全てが上限状態室内機となっている場合には、制御装置7は、逸脱箇所の温度が設定温度範囲に戻るまで関連空調機以外の室内空調機5が供給する空調風の温度を低下させる。
【0035】
上限状態室内機とは、現時に発揮している空調能力が予め設定された空調能力以上となっている室内空調機5をいう。つまり、上限状態室内機とは、現時より更に低い温度の空調風を供給することができない状態(上限状態)になっている室内空調機5をいう。
【0036】
<能力減少処理、第2能力増加処理>
能力減少処理は、温度検出装置11により検出された温度が温度範囲を逸脱していない箇所(以下、非逸脱箇所という。)に関連付けられた少なくとも1つの室内空調機5が発揮する空調能力を減少させる処理である。
【0037】
本実施形態に係る制御装置7は、複数箇所の全てが非逸脱箇所であるときに能力減少処理を実行する。したがって、本実施形態に係る「非逸脱箇所に関連付けられた室内空調機5」とは、「サーバ室に設置された室内空調機5の全て」となる。
【0038】
なお、本発明に係る能力減少処理は、逸脱箇所と非逸脱箇所とが混在している場合にも実施可能である。この場合には、「非逸脱箇所に関連付けられた室内空調機5」が能力減少処理の対象となる室内空調機5となる。
【0039】
第2能力増加処理は、能力減少処理の実行後、逸脱箇所が発生したときに、複数の室内空調機5のうちいずれかの室内空調機5が発揮する空調能力を増加させる処理である。
制御装置7は、第2能力増加処理において、非逸脱箇所に関連付けられた少なくとも1つの室内空調機5、及び能力減少処理が実行された室内空調機5のうち少なくとも一方の室内空調機5が発揮する空調能力を増加させる。
【0040】
本実施形態に係る制御装置7は、先ず、能力減少処理が実行された室内空調機5が供給する空調風の温度を現時より低くする第2能力増加処理を実行する。この第2能力増加処理によっても、逸脱箇所の温度が設定温度範囲に戻らない場合には、制御装置7は、非逸脱箇所に関連付けられた室内空調機5が供給する空調風の温度を現時より低くする。
【0041】
非逸脱箇所に関連付けられた室内空調機5が複数ある場合には、制御装置7は、最も関連性が高い室内空調機5、つまり図3において温度変化が最も大きい室内空調機5から順次、空調風の温度を低くする。
【0042】
そして、能力減少処理の実行後、逸脱箇所が発生しなかったときには、制御装置7は、能力減少処理が実行されていない室内空調機5に対して、順次、能力減少処理を実行する。なお、本実施形態に係る制御装置7は、複数箇所の全てが非逸脱箇所であるときに能力減少処理を実行するので、最終的には、全ての室内空調機5について能力減少処理が実行されることとなる。
【0043】
因みに、逸脱箇所と非逸脱箇所とが混在している場合に能力減少処理が実行された場合には、非逸脱箇所に関連付けられた複数の室内空調機5に対して、順次、能力減少処理が実行される。
【0044】
制御装置7は、能力減少処理を実行する際には、複数の室内空調機5のうち下限状態室内空調機以外の室内空調機5を選択して空調能力を減少させる。下限状態室内空調機とは、現時に発揮している空調能力が予め設定された空調能力以下となっている室内空調機5、つまり、現時より更に高い温度の空調風を供給することができない状態(下限状態)になっている室内空調機5をいう。
【0045】
3.制御の詳細(図4参照)
図4は、本実施形態に係る制御フローを示す一例である。図4に示す制御フロー(以下、制御処理という。)を実行するためのプログラムは、ROM等の不揮発性記憶部に予め記憶されている。当該制御処理は、制御装置7で実行される。
【0046】
制御処理が起動されると、先ず、制御前温度データが収集されるとともに、収集された制御前温度データが蓄積されていく(S1、S3)。次に、逸脱箇所があるか否かが判定される(S5)。
【0047】
逸脱箇所があると判定された場合には(S5:YES)、当該逸脱箇所に関連付けられた室内空調機5の空調能力が増加された後(S7)、当該逸脱箇所の温度が設定温度範囲に戻ったか否か、つまり逸脱箇所があるか否かが再度判定される(S9)。
【0048】
逸脱箇所がない、つまり当該逸脱箇所の温度が設定温度範囲に戻ったと判定された場合には(S9:YES)、本制御処理が終了する。逸脱箇所がある、つまり当該逸脱箇所の温度が設定温度範囲に戻っていないと判定された場合には(S9:NO)、再び、S7が実行される。
【0049】
S5にて逸脱箇所がないと判定された場合には(S5:NO)、いずれかの室内空調機5の空調能力が減少された後(S11)、当該室内空調機5から供給される空調風の温度変化と各箇所の温度変化との対応関係を示すデータ(以下、制御後温度データという。)が収集されるとともに、その制御後温度データが記憶部に蓄積されていく(S13、S15)。つまり、逸脱箇所がないと判定された場合には(S5:NO)、蓄積処理が実行されて制御前温度データが更新される。
【0050】
次に、逸脱箇所があるか否か、つまり、いずれかの室内空調機5の空調能力が減少されたことにより、逸脱箇所が発生したか否か判定される(S17)。逸脱箇所があると判定された場合には(S17:YES)、当該逸脱箇所に関連付けられた室内空調機5の空調能力が増加された後(S21)、更新された内容で関連付け処理が実行される(S23)。
【0051】
逸脱箇所がないと判定された場合には(S17:NO)、空調能力を減少させたことで空調システムの消費電力(PWS)が低下したか否かが判定される(S19)。消費電力(PWS)が低下していないと判定された場合には(S19:NO)、S21が実行される。
【0052】
つまり、この場合(S19:NO)には、ICT装置1の処理負荷が増大する等、サーバ室での発熱量が増加して可能性がある。そこで、制御装置7は、少なくとも減少させた空調能力を元に戻す程度まで空調能力を増加させる。
【0053】
S19にて、消費電力(PWS)が低下したと判定された場合には(S19:YES)、全ての室内空調機5について制御後温度データの収集が実行されたか否か、つまり全ての室内空調機5に対してS11以降が実行されたか否か判定される(S25)。
【0054】
全ての室内空調機5について制御後温度データの収集が実行されていないと判定された場合には(S25:NO)、他の室内空調機5についてS11以降が実行される。全ての室内空調機5について制御後温度データの収集が実行されたと判定された場合には(S25:YES)、更新された内容で関連付け処理が実行される(S27)。
【0055】
3.本実施形態に係る空調システムの特徴
本実施形態では、逸脱箇所に関連付けられた室内空調機5の空調能力を増加させるので、逸脱箇所との関連性が低い室内空調機5の空調能力を増加させてしまうことを抑制できる。したがって、逸脱箇所を効率よく空調することが可能となるので、更に消費動力を低減することが可能となる。
【0056】
そして、蓄積処理及び関連付け処理が定期的に実行されるので、関連付けの精度を高めることができ得る。したがって、逸脱箇所をより確実に効率よく空調することが可能となる。
【0057】
(第2実施形態)
1.本実施形態の概要
本実施形態は、空調システムの制御を介して間接的にICT装置1の消費電力を低減することを目的とする。
【0058】
すなわち、空冷式のICT装置1は、CPU(中央演算ユニット)に室内空気を供給する電動式の冷却ファン(図示せず。)等を有する。当該冷却ファンは、CPUに供給する室内空気の温度を温度上昇に応じて送風量が増加させる。
【0059】
具体的には、各ICT装置1には、冷却ファンの回転数、つまりCPUに供給する冷却風量を制御する制御部(図示せず。)、冷却ファンが供給する冷却風の温度を検出する温度センサー(図示せず。)を有している。
【0060】
各ICT装置1に設けられた制御部は、各ICT装置1に設けられた温度センサーの検出信号を利用して冷却ファンの回転数を制御する。つまり、空調システムの制御装置7は、各ICT装置1に設けられた冷却ファンの回転を直接的に制御することはできない。
【0061】
冷却ファンは電動モータにより駆動されるので、CPU等の半導体部品に比べて消費電力が大きい。そこで、本実施形態は、空調システムの制御を介して間接的にICT装置1の消費電力を低減することを目的とする。
【0062】
2.空調システムの概要
本実施形態に係る空調システムの空調対象は第1実施形態(図1参照)と同じである。本実施形態に係る空調システムの制御装置7には、図5に示すように、電力検出部13の出力信号及び処理検出部15の検出信号が入力されている。
【0063】
電力検出部13は、複数のICT装置1ぞれぞれの消費電力を検出する。具体的には、各ICT装置1には、消費電力を示す信号を出力するセンサ部Ps1〜Psnが設けられている。制御装置7は、各センサ部Ps1〜Psn(以下、電力検出部13ともいう。)からの信号を利用して各ICT装置1の消費電力を認識する。
【0064】
処理検出部15はCPUの処理量を検出する。具体的には、各ICT装置1には、CPUの処理量を示す信号を出力するセンサ部Ts1〜Tsnが設けられている。制御装置7は、各センサ部Ts1〜Tsn(以下、処理検出部15ともいう。)からの信号を利用して各CPUの処理量を認識する。
【0065】
本実施形態では、処理検出部15は、処理量の絶対値ではなく、「CPUの負荷率」を示す信号を、処理量を示す信号として出力する。「CPUの負荷率」とは、処理可能な最大処理量に対する現時の処理量の割合を示す値である。なお、図5において、第1実施形態と同一の要素は同一の符号を付してある。
【0066】
3.制御の概要
制御装置7は、室内空調機5が発揮する冷房能力を増大させた後、電力検出部13により検出された消費電力(以下、検出電力という。)が冷房能力を増大させる前に比べて低下したが否かを判定する(以下、低下判定処理という。)。
【0067】
制御装置7は、低下判定処理を実行した場合において、検出電力が低下していないと判定された場合には冷房能力を現時より低下させ、検出電力が低下したと判定された場合には、現時の冷房能力を維持する。
【0068】
制御装置7は、低下判定処理を実行するか否かの判定処理(以下、実行判定処理という。)により実行すると判定されたときに、低下判定処理を実行する。実行判定処理では、現時の冷房能力に対応する電力低下率を利用して判定される。電力低下率とは、室内空気温度の低下量に対する消費電力の低下量の割合をいう。
【0069】
具体的には、制御装置7は、検出電力と温度検出装置11が検出した温度(以下、検出温度という。)との対応関係を示すデータであって、電力低下率の算出に利用されるデータを蓄積する(以下、蓄積処理という。)。
【0070】
蓄積処理では、図6に示すように、予め設定された複数種類のCPU処理量毎に対応したデータが不揮発性記憶部に記憶されて蓄積される。そして、例えば、CPUの負荷率が10%のとき、実行判定処理では、以下のように判定がされる。
【0071】
現時の冷房能力を示す空調設定温度が24℃から23℃に低下したときには、検出電力が2.3Wから2.2Wに低下する。空調設定温度が23℃から22℃に低下しても検出電力は低下しない。つまり、空調設定温度が23℃以下では電力低下率が0となる。
【0072】
このため、実行判定処では、CPUの負荷率が10%の場合において、空調設定温度が23℃より高いときには低下判定処理を実行すると判定され、空調設定温度が23℃以下のときには低下判定処理を実行しないと判定される。
【0073】
同様に、CPUの負荷率が60%の場合においては、空調設定温度が24℃より高いときには低下判定処理を実行すると判定され、空調設定温度が24℃以下のときには低下判定処理を実行しないと判定される。
【0074】
空調設定温度とは、室内空調機5からサーバ室内に供給される空気の目標温度である。制御装置7は、各室内空調機5から空調設定温度の空気が供給されるように各室内空調機5を制御する。なお、空調設定温度は、室内空調機5毎に相違している場合、全ての室内空調機5で同一である場合のいずれであってもよい。
【0075】
なお、空調設定温度が所定温度以下の場合に電力低下率が0となる理由は、以下の通りである。冷却ファンは、CPUに供給する室内空気の温度上昇に応じて送風量が増加させる。このため、室内空気の温度、つまり検出温度の上昇に応じて検出電力が増加し、空調設定温度の低下に応じて検出電力が低下する。
【0076】
冷却ファンは、その下限回転数未満の回転数で回転できない。このため、冷却ファンの回転数が下限回転数に到達すると、冷却ファンは下限回転数で回転するので、空調設定温度が低下しても検出電力は低下しなくなる。つまり、冷却ファンの回転数が下限回転数に到達した以降は、空調システムの冷房能力を増大させてもICT装置1の消費電力は低下しない。
【0077】
そこで、制御装置7は、電力低下率が0となったときに、冷却ファンの回転数が下限回転数に到達したとみなして低下判定処理を実行しない。制御装置7は、電力低下率が0より大きいときには、冷却ファンの回転数が下限回転数より大きいとみなして低下判定処理を実行する。
【0078】
低下判定処理において、冷房能力を変更する室内空調機5とCPU(ICT装置1)との関係は、以下の通りである。
すなわち、制御装置7は、各室内空調機5から供給される空調風の温度変化と温度検出装置11が温度を検出する各箇所の温度変化との対応関係を蓄積する(以下、第2の蓄積処理という。)。なお、第2の蓄積処理の具体内容は、第1実施形態に係る蓄積処理(図3参照)と同じである。
【0079】
制御装置7は、第2の蓄積処理の結果を利用して箇所毎に少なくとも1つの室内空調機5を関連付ける(以下、関連付け処理という。)。当該関連付け処理は、第1実施形態に係る関連付け処理と同じである。
【0080】
複数のICT装置1それぞれは、複数箇所それぞれに対して予め関連付けられている。そして、複数の室内空調機5のうち低下判定処理にて冷房能力が増大された室内空調機5に関連付けられた箇所を関連箇所としたとき、低下判定処理では、関連箇所に関連付けられたICT装置1の消費電力が利用されて判定される。
【0081】
なお、「関連箇所」とは、例えば、(a)温度検出装置11が検出する箇所、つまり予め設定された箇所が対象となるCPU(ICT装置1)の位置と一致する場合には当該箇所、又は(b)当該CPUに近接した箇所であって温度検出装置11が検出する箇所等である。
【0082】
4.制御の詳細(図7参照)
図7は、本実施形態に係る制御フローを示す一例である。図7に示す制御フロー(以下、制御処理という。)を実行するためのプログラムは、ROM等の不揮発性記憶部に予め記憶されている。当該制御処理は、制御装置7で実行される。
【0083】
制御処理が起動されると、先ず、制御前データが収集されるとともに、収集された制御前データが蓄積されていく(S31、S33)。なお、制御前データとは、本実施形態に係る蓄積処理及び第2の蓄積処理に係るデータをいう。
【0084】
次に、現時のCPUの負荷率において電力低下率が最小(本実施形態では0)となる室内空調温度の設定値が決定された後(S35)、室内空調機5の空調能力(冷房能力)が増大されて低下判定処理が開始される(S37)。
【0085】
このとき、本実施形態に係る蓄積処理及び第2の蓄積処理に係るデータ(以下、制御後データという。)が新たに収集されるとともに(S39)、その収集された制御後データが不揮発性記憶部に蓄積されていく(S41)。
【0086】
そして、蓄積処理等が実行される度に蓄積されているデータは更新・変更されていく。なお、データの更新・変更の手法は不問である。具体的には、例えば、過去のデータの平均値を更新されたデータの値としてもよい。
【0087】
次に、検出電力(制御後PWS)が冷房能力を増大させる前の消費電力(制御前PWS)に比べて低下したか否かが判定される(S43)。低下したと判定された場合には(S43:YES)、現時の冷房能力が維持されるとともに、各室内空調機5と温度検出装置11が温度検出する箇所とを関連付けられる(S47)。なお、既に関連付けがされている場合には、当該関連付けの内容が更新される。
【0088】
低下していないと判定された場合には(S43:NO)、現時の冷房能力が低下された後(S45)、S47が実行される。なお、本実施形態に係るS45では、S37で増大させた空調能力(冷房能力)を増大させる以前の能力、つまり元の能力まで戻される。
【0089】
5.本実施形態に係る空調システムの特徴
本実施形態では、室内空調機5が発揮する冷房能力を増大させた後、ICT装置1の消費電力が冷房能力を増大させる前に比べて低下したが否かを判定し、低下したと判定された場合には、現時の冷房能力を維持するので、ICT装置1の消費電力低減することができ得る。
【0090】
(その他の実施形態)
第1実施形態に係る空調システムでは、サーバ室を冷房する空調システムであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、事務室等の空調(冷房、暖房及び除湿等)を行う空調システムにも適用可能である。
【0091】
第2実施形態では、室内空調機5が発揮する冷房能力を増大さるので、空調システムの消費電力が大きく増大する可能性がある。したがって、第2実施形態においては、「室内空調機5が発揮する冷房能力を増大させたことによるICT装置1の消費電力低下量」と「空調システムの消費電力増加量」とを比較し、消費電力低下量が消費電力増加量より大きい場合に現時の冷房能力を維持する構成としてもよい。
【0092】
第2実施形態では、CPUの負荷率毎に収集した電力低下率(図6参照)を蓄積したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、予め設定された1つの負荷率についてのみ電力低下率を収集してもよい。
【0093】
第2実施形態では、複数のICT装置1(CPU)が設置されたサーバ室であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも1つのICT装置1(CPU)が設置されたサーバ室にも本発明に係る空調システムを適用できる。
【0094】
第2実施形態に係る冷却ファンは、CPUに供給する室内空気の温度上昇に応じて送風量が増加するものであったが、本発明が適用されるICT装置1はこれに限定されるものではない。
【0095】
すなわち、CPUの温度上昇に応じて送風量が増加する冷却ファンであってもよい。この場合、CPUの温度を直接的若しくは間接的に検出するセンサの出力、又はCPUの負荷率に基づいて冷却ファンの回転数が制御される。
【0096】
上述の実施形態に係る温度検出装置11は、複数の温度センサーS1〜Snにて構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば赤外線カメラ等にて温度検出装置11を構成してもよい。
【0097】
上述の実施形態では、室内空調機5が室内に供給する空調風の温度(設定温度)を変更することにより、当該室内空調機5が発揮する空調能力を変更したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、室内空調機5が室内に供給する空調風の風量を変更してもよい。
【0098】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0099】
1… ICT装置
5… 室内空調機
7… 制御装置
11… 温度検出装置
13… 電力検出部
15… 処理検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7