(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、ポリオレフィン系成分を含む複合繊維糸を用いた繊維強化樹脂において、引張弾性率を低下させず、難燃性を付与することについて検討を重ねた。その結果、複合繊維糸において、複合繊維糸の表面の一部又は全部に配置されている第二成分に難燃剤を含ませることにより、引張弾性率が低下せず、難燃性が良好である繊維強化樹脂が得られることを見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明の繊維強化樹脂成形用基材は、複合繊維糸で構成されている。前記複合繊維糸は、第一成分と第二成分を含み、複合繊維糸の断面からみて、複合繊維糸の表面の一部又は全部には第二成分が配置されていればよく、その断面構造は特に限定されない。例えば、芯鞘構造、海島構造、積層構造等のいずれの構造であってもよい。
図1には、第一成分2が芯成分であり、第二成分3が鞘成分である芯鞘構造の複合繊維糸1が示されている。
図2には、第一成分11が島成分であり、第二成分12が海成分である海島構造の複合繊維糸10が示されている。
図3には、積層構造の複合繊維糸の断面図が示されている。第一成分21が中間層に配置され、第二成分22が両側の表面層に配置されている。前記複合繊維糸は、長繊維糸すなわち連続繊維であることが好ましい。複合繊維による補強効果が高く、繊維強化樹脂が強固になりやすい。
【0012】
芯鞘構造又は海島構造の複合繊維糸は、例えば複数のポリマー成分を個別に紡糸口金まで導き、紡糸口金で一体化して押し出し、延伸する複合紡糸法で作製することができる。なお、複合繊維糸には芯鞘構造の複合繊維糸を複数本まとめて鞘成分を溶融して繊維間を融合し海島構造的とするものがある。この場合は芯鞘構造の複合繊維糸でありかつ海島構造の複合繊維糸でもある。すなわち芯鞘構造と海島構造とは厳密に境界が無い場合も存在するが、本発明では便宜上海島構造として記載する。積層構造の複合繊維糸は、複数のフィルムを積層した積層フィルムをスリットしてスリットヤーンにすることで得ることができる。
【0013】
前記第一成分と第二成分は、いずれもポリオレフィン系成分である。ポリオレフィン系成分は、特に限定されず、各種エチレン系炭化水素の単独重合体であってもよく、二種以上のエチレン系炭化水素が共重合された共重合体であってもよい。共重合体は、二元共重合、三元共重合等多成分共重合体を含む。エチレン系炭化水素としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デケン等が挙げられる。ポリオレフィン系成分としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン、酸変性ポリブテン等が挙げられる。ポリエチレンは、エチレンの単独重合体でもよく、エチレンと他のエチレン系炭化水素との共重合体であってもよい。ポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体でもよく、プロピレンと他のエチレン系炭化水素との共重合体であってもよい。物性バランスに優れ、低コストの観点から、ポリオレフィン系成分は、ポリプロピレンやポリエチレンであることが好ましく、第一成分がポリプロピレンであり、第二成分がポリエチレンであることがより好ましい。
【0014】
前記複合繊維糸において、第一成分の含有量は35〜90質量%の範囲であり、第二成分の含有量は10〜65質量%の範囲であることが好ましく、第一成分の含有量は50〜65質量%の範囲であり、第二成分の含有量は35〜50質量%の範囲であることがより好ましい。上記の範囲であれば繊維強化樹脂における強化繊維の割合を高くすることができ、強度を高くすることができるうえ、繊維強化樹脂におけるマトリックス樹脂と強化繊維のバランスをとりやすい。
【0015】
前記第一成分の融点は前記第二成分の融点より高い。繊維強化樹脂成形体等の繊維強化樹脂において、前記第二成分はマトリックス樹脂となり、前記第一成分は強化繊維となる。繊維強化樹脂成形体等の繊維強化樹脂において、前記第二成分が溶融されてマトリックス樹脂となりやすく、前記第一成分が長繊維の形状を維持しやすい観点から、前記第一成分の融点は、前記第二成分の融点より20℃以上高いことが好ましく、30℃以上高いことがより好ましい。
【0016】
前記複合繊維糸は、紡糸安定性及び生産性の観点から、第一成分が島成分であり、第二成分が海成分である断面構造が海島型の複合繊維糸であることが好ましい。なお、第一成分がポリプロピレンであり、第二成分がポリエチレンであることがより好ましい。
【0017】
前記複合繊維糸は、中間層はポリプロピレンで構成され、両側の表面層は低融点ポリプロピレンで構成されている3層構造の積層フィルムを一軸延伸又は二軸延伸した後に、スリットすることで得た、第一成分であるポリプロピレンが中間層に配置され、第二成分である低融点ポリプロピレンが両側の表面層に配置されているスリットヤーンであってもよい。
【0018】
前記第二成分には、難燃剤が含まれている。前記第一成分には、難燃剤が含まれない。難燃剤としては、特に限定されず、公知の難燃剤を用いることができる。例えば、臭素系難燃剤やリン系難燃剤等が挙げられる。前記難燃剤は臭素系難燃剤であることが好ましい。臭素系難燃剤は難燃効果に優れ、少量でも複合繊維糸や繊維強化樹脂に難燃性を付与することができ、複合繊維糸の剛性を低下せず、加工性が良好になる。
【0019】
臭素系難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、エチレンビス(ペンタブロモベンゼン)、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモベンゼン、1,1−スルホニル[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)]ベンゼン、ポリジブロモフェニレンオキサイド、テトラブロムビスフェノール−S、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、トリブロモネオペンチルアルコール、ブロム化ポリスチレン、ブロム化ポリエチレン、テトラブロムビスフェノール−A、テトラブロムビスフェノール−A誘導体、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマーまたはポリマー、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマーまたはポリマー、ブロム化フェノールノボラックエポキシ等のブロム化エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2−ヒドロキシジエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモシクロオクタン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ジブロモネオペンチルグリコール、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。中でも、臭素の含有量が高い観点から、エチレンビス(ペンタブロモベンゼン)、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリブロモネオペンチルアルコール、トリブロモフェノール等が好ましい。これらの臭素系難燃剤は、一種で用いてもよく、二種以上を組み合わせても用いてもよい。
【0020】
前記臭素系難燃剤は、融点が230℃以下であることが好ましい。二種以上の臭素系難燃剤を組み合わせて用いる場合、少なくとも一種の臭素系難燃剤の融点が230℃以下であることが好ましい。オレフィン系樹脂の複合紡糸は、通常120〜280℃で行うが、融点が230℃以下である臭素系難燃剤を用いることにより、複合繊維糸の繊維としての物性を良好にすることができ、ひいては繊維強化樹脂成形体等の繊維強化樹脂の加工性が良好になる。融点が230℃以下の臭素系難燃剤としては、例えば、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、テトラブロムビスフェノール−A、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン等を用いることができる。また、前記臭素系難燃剤は融点が50℃以上であることが好ましい。実用的な耐熱温度を確保することができる。
【0021】
前記複合繊維糸は、特に限定されないが、難燃性を良好にしつつ、複合繊維糸の繊維としての物性を良好にする観点から、複合繊維糸の全体質量に対して、第二成分に添加する臭素系難燃剤を5〜30質量%程度含み、好ましくは5〜20質量%である。複合繊維糸における難燃剤の含有量が上記の範囲内であると、複合繊維糸の加工性も良好になる。
【0022】
臭素系難燃剤の難燃効果を向上させる観点から、難燃助剤としてアンチモン化合物を併用してもよい。アンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン及びアンチモン酸ナトリウム等を用いることができる。複合繊維糸は、難燃性を良好にしつつ、複合繊維糸の繊維としての物性を良好にする観点から、複合繊維糸の全体質量に対して、アンチモン化合物を1〜10質量%程度使用する。
【0023】
前記第一成分及び第二成分には、本発明の目的が損なわれない範囲で、各種添加剤、例えば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、結晶造核剤、銅害防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、抗ブロッキング剤、防曇剤、着色剤、充填剤等を配合することができる。
【0024】
前記複合繊維糸は、強度の観点から、繊度が250〜3000dtexであることが好ましく、より好ましくは500〜2000dtexである。
【0025】
前記繊維強化樹脂成形用基材は、複合繊維糸の集合体であればよく、その形態は特に限定されない。例えば、複合繊維糸を引き揃えたシート、織物、編物、多軸挿入たて編み物、組み物等が挙げられる。前記繊維強化樹脂成形用基材は、前記複合繊維糸が少なくとも一方向に配列されているシート状の基材であることが好ましい。前記シート状の基材において、複合繊維糸は、一方向に1層又は多層配列されてもよい。なお、難燃性や強度物性等に支障のない範囲で複合繊維糸以外の糸を含ませることも可能である。
【0026】
本発明の繊維強化樹脂成形体は、前記繊維強化樹脂用基材を前記第二成分の融点以上、且つ前記第一成分の融点未満の範囲の温度に加熱して所定の形状に成形することで得ることができる。成形方法としては、公知の成形方法を用いることができ、例えば、ホットスタンピング法、プリプレグ成形法、プレス成形法等が挙げられる。賦形性や生産性の観点から、プレス成形法を用いることが好ましい。好ましくは、前記複合繊維糸が少なくとも一方向に配置された繊維強化樹脂用基材を、前記第二成分の融点以上、且つ前記第一成分の融点未満の温度下で加熱プレス成形し、前記第一成分を強化繊維とし、溶融された前記第二成分をマトリックス樹脂とする繊維強化樹脂成形体を得ることができる。
【0027】
プレス成形法としては、熱ロールの間を通過させるような熱ロールプレス成形でも良いが、通常はカム、トグル、圧空又は油圧等を使用して金型又は加熱板を上下させる機構により、シートを目的の形にプレス成形する方法が用いられる。プレス成形の場合は、成形天井及びドアトリムのような深絞り成形が必要とされる用途にも使用可能である。プレス成形する際には真空成形又は減圧成形と組み合わせることもできる。プレス成形において、金型温度は、前記第二成分の融点以上、且つ前記第一成分の融点未満の温度の範囲内でなるべく高い方が好ましい。例えば、第一成分がポリプロピレンであり、第二成分がポリエチレンである場合、金型温度は120〜145℃であることが好ましく、より好ましくは125〜140℃である。圧力は、0.1〜10MPaであることが好ましく、0.5〜5MPaであることがより好ましい。加熱プレス成形時間は0.5〜20分程度が好ましく、2〜10分程度がより好ましい。
【0028】
図4A−Cには、本発明の繊維強化樹脂成形体の一実施形態の繊維強化樹脂シートの製造方法が示されている。
図4Aに示されているように、メタルフレーム100に複合繊維糸30を一方向に巻き付ける。複合繊維糸30は所定の幅に隙間なく並べて巻き付け、且つ、図示はないが、必要に応じて、所定の厚みになるように重ねて巻き付ける。次に、
図4B〜Cに示すように、熱プレス金型200、300によってメタルフレーム100に巻き付けた複合繊維糸30を加熱プレスし、溶融一体化させることで、繊維強化樹脂シートが得られる。金型温度は、前記第二成分の融点以上、且つ第一成分の融点未満の温度の範囲内でなるべく高い方が好ましい。例えば、第一成分がポリプロピレンであり、第二成分がポリエチレンである場合、金型温度は120〜145℃であることが好ましく、より好ましくは125〜140℃である。圧力は、0.1〜10MPaであることが好ましく、0.5〜5MPaであることがより好ましい。加熱プレス成形時間は0.5〜20分程度が好ましく、2〜10分程度がより好ましい。
【0029】
前記繊維強化樹脂成形体は、厚みが増すにつれて、難燃性は高くなる。前記繊維強化樹脂成形体は、厚みが3mmの繊維強化樹脂シートの場合、UL−94V規格に準拠した20mm垂直法燃焼試験において、V−0の基準を満たすことが好ましく、厚みが1.5mmの繊維強化樹脂シートの場合、UL−94V規格に準拠した20mm垂直法燃焼試験において、V−0の基準を満たすことがより好ましく、厚みが0.2mmの繊維強化樹脂シートの場合、UL−94V規格に準拠した20mm垂直法燃焼試験において、V−0の基準を満たすことがさらに好ましい。
【0030】
前記繊維強化樹脂成形体は、引張弾性率が高く、引張弾性率が6GPa以上であることが好ましく、6.5GPa以上であることがより好ましく、7GPa以上であることがさらに好ましい。
【0031】
前記繊維強化樹脂成形体は、難燃性を有し、軽量で引張弾性率等の物理特性が高く、廃棄も容易である。前記繊維強化樹脂成形体は、難燃性が要求されるとともに、軽量性が求められる。特に、家電、電子機器、自動車の天井材やドア材等の内装材等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0032】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
<難燃剤を混合したポリエチレンの作製>
ポリエチレン(エチレンとヘキセンー1の共重合体、株式会社プライムポリマー製「エボリュー(登録商標)SP1071C」、融点100℃、以下において、「PE」とも記す。)、臭素系難燃剤1(トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、大八化学工業株式会社製「CR-900」、臭素含有量71質量%、融点181℃)、臭素系難燃剤2(エチレンビスペンタブロモベンゼン、株式会社鈴裕化学製「FCP−801」、臭素含有量82質量%、融点345℃)、酸化防止剤(BASF社製「irganox1010」)を下記表1に示す配合割合で混合し、二軸混練押出機(株式会社神戸製鋼所製「KTX−37(スクリュー径37mm)」に投入し、シリンダー温度190℃、スクリュー回転200rpm、吐出量5kg/hrで混練押出を行った。ダイスから出てきた混合材料のストランドを冷却水槽で冷却した後にストランドカッター(いすず化工機株式会社製「SCF−150」)で切断して長さ約3mmの円柱状のポリエチレンに難燃剤が混合されたコンパウンドペレット(以下において、「難燃剤入りPE」と記す。)を得た。
【0034】
<複合繊維糸の作製>
芯成分にポリプロピレン(プロピレンの単独重合体、株式会社プライムポリマー社製「プライムポリプロJ105G」、融点163℃、以下において「PP」とも記す。)と酸化防止剤を下記表1に示す配合割合で混合した混合物を用い、鞘成分に上記で得られた難燃剤入りPEを使用し、定法の複合紡糸設備及び芯鞘型複合紡糸ノズル(240ホール)を用い、芯成分と鞘成分の質量比が(芯鞘比)が表1に示す割合となるように260℃で紡糸し、芯鞘型複合繊維を得た。得られた芯鞘型複合繊維を直結する延伸装置に導いて、0.42Mpa、145℃の飽和水蒸気下で、延伸倍率13倍で延伸を行い、延伸とともに鞘成分を溶融して繊維間を融合してトータル繊度1850dtex、フィラメント数240本の、芯鞘型複合単繊維における芯のPPを島成分、芯鞘型複合単繊維における鞘の難燃剤入りPEを海成分とする海島型複合繊維糸を得た。
【0035】
<繊維強化樹脂シートの作製>
上記で得られた複合繊維糸を一方向に配列した後に加熱プレスして繊維強化樹脂用シートを得た。まず、
図4Aに示されているように、メタルフレーム100に複合繊維糸30を一方向に並べて巻き付けた。メタルフレーム100のサイズは、200mm×200mm×5mm(高さ)であった。複合繊維糸30は幅100mmに隙間なく並べて巻き付け、且つ、図示はないが、必要に応じて、所定の厚みになるように重ねて巻き付けた。次に、
図4B〜Cに示すように、熱プレス金型200、300によってメタルフレーム100に巻き付けた複合繊維糸30を加熱加圧し、溶融一体化させて、繊維強化樹脂シートを得た。金型温度はPE樹脂の融点以上の140℃に設定し、圧力2MPa、成形時間を5分間とした。
【0036】
(実施例2及び3)
ポリエチレン、臭素系難燃剤1、臭素系難燃剤2、酸化防止剤を下記表1に示す配合割合で混合した以外は、実施例1と同様にして、長さ約3mmの円柱状の難燃剤入りPEを作製した。得られた難燃剤入りPEを鞘成分に用い、実施例1と同様にして、複合繊維糸を作製した。得られた複合繊維糸を用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す所定の厚みの繊維強化樹脂シートを作製した。
【0037】
(実施例4〜6)
ポリエチレン、臭素系難燃剤1、臭素系難燃剤2、酸化防止剤を下記表1に示す配合割合で混合した以外は、実施例1と同様にして、長さ約3mmの円柱状の難燃剤入りPEを作製した。得られた難燃剤入りPEを鞘成分に用い、芯鞘比が表1に示す割合となるようにした以外は、実施例1と同様にして、複合繊維糸を作製した。得られた複合繊維糸を用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す所定の厚みの繊維強化樹脂シートを作製した。
【0038】
(比較例1)
鞘成分に難燃剤及び酸化防止剤を混合していないPEをそのまま用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す所定の厚みの繊維強化樹脂シートを作製した。
【0039】
(比較例2)
<難燃剤を混合したPE及びPPの作製>
実施例3と同様にして、難燃剤入りPEを作製した。
【0040】
<難燃剤を混合したPPの作製>
PP(プロピレンの単独重合体、株式会社プライムポリマー社製「プライムポリプロJ105G」、融点163℃)と、臭素系難燃剤1と、酸化防止剤を下記表1に示す配合割合で混合し、二軸混練押出機(株式会社神戸製鋼所製「KTX−37(スクリュー径37mm)」に投入し、シリンダー温度250℃、スクリュー回転200rpm、吐出量5kg/hrで混練押出を行った。ダイスから出てきた混合材料のストランドを冷却水槽で冷却した後にストランドカッター(いすず化工機株式会社製「SCF−150」)で切断して長さ約3mmの円柱状のPP樹脂に難燃剤が混合されたコンパウンドペレット(以下において、「難燃剤入りPP」と記す。)を得た。
【0041】
<複合繊維糸の作製>
芯成分に上記で得られた難燃剤入りPPを用い、鞘成分に上記で得られた難燃剤入りPEを使用した以外は、実施例1と同様にして複合繊維糸を作製した。
【0042】
上記で得られた複合繊維糸を用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す所定の厚みの繊維強化樹脂シートを作製した。
【0043】
実施例1〜6、比較例1及び2で得られた繊維強化樹脂シートの難燃性を及び引張弾性率を下記のように測定評価し、それらの結果を下記表1示した。下記表1には、複合繊維糸における臭素系難燃剤及び臭素の含有量も示した。複合繊維糸における臭素の含有量は、繊維強化樹脂シートにおける臭素の含有量と同じ値である。下記表1において、「%」は、質量%を意味する。
【0044】
(難燃性)
UL−94V規格に準拠して20mm垂直法燃焼試験(ASTM D3801)にて難燃性を測定評価した。所定の厚みの繊維強化樹脂シートから125mm×13mmの試験片を切り出し、切り出した試験片をクランプに垂直に取付け、20mm炎による10秒間接炎を2回行い、その燃焼挙動によりV−0、V−1、V−2、Notの判定を行った。
【0045】
(引張弾性率)
試験片(200mm×20mm×0.2mm)の試験片を用い、JIS K 7165:2008に準拠した引張試験を行い、引張弾性率を測定した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1から、鞘成分に難燃剤を含む複合単繊維で構成された複合繊維糸を用いた、実施例1〜6の繊維強化樹脂シートは、難燃性が良好であり、厚みが3mmの場合、UL−94V規格に準拠した20mm垂直法燃焼試験(ASTM D3801)において、V−0の評価を得た。また、実施例1〜6の繊維強化樹脂シートは、引張弾性率が6Gpa以上であり、剛性に優れていた。一方、比較例1は、難燃剤を含まず、難燃性を示していなかった。また、芯成分にも難燃剤を含む複合単繊維で構成された複合繊維糸を用いた、比較例2の繊維強化樹脂シートは、引張弾性率が6Gpa未満であり、剛性が劣っていた。