特許第6585443号(P6585443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585443
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】伸長回復性に優れた長繊維不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/541 20120101AFI20190919BHJP
【FI】
   D04H1/541
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-185247(P2015-185247)
(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公開番号】特開2017-57535(P2017-57535A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木原 幸弘
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−031819(JP,A)
【文献】 特開2002−069822(JP,A)
【文献】 特開2013−076182(JP,A)
【文献】 特開2005−120542(JP,A)
【文献】 特開2003−210921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル長繊維で構成されてなるポリエステル不織布において、不織布全体に亘って、不織布の一方向に山部と谷部とが交互に波形状の凹凸として形成されており、
該一方向における伸長回復率が、60%以上、山の高さが500μm以上、隣り合う山と山の距離が0.5〜3mmであり、
前記ポリエステル長繊維の横断面形状は、略Y字の下端で上下左右に連結した

形状(以下、「略Y4形状」という。)であり、
ポリエステル長繊維の単繊維繊度が、17デシテックス以上であることを特徴とする伸長回復性に優れた長繊維不織布。
【請求項2】
ポリエステル長繊維が、略Y4形状の各々の略V字部が低融点ポリエステルよりなり、その他の略+字部が高融点ポリエステルよりなる複合型ポリエステル長繊維であり、
不織布は、圧着部と非圧着部とを有し、圧着部では、該低融点ポリエステルを介して、該ポリエステル長繊維相互間が接着されていることを特徴とする請求項1記載の伸長回復性に優れた長繊維不織布。
【請求項3】
横断面形状が略Y4形状であり、単繊維繊度が17デシテックス以上であるポリエステル長繊維が多数本堆積してなるウェブを、熱エンボス装置に導入して、部分的に圧着してなる圧着部を形成させて、ポリエステル長繊維相互間を熱接着により一体化させ、ついで、座屈加工機に導入し座屈処理を施し、不織布全体に亘って、不織布の一方向に山部と谷部とを交互に形成させることを特徴とする伸長回復性に優れた長繊維不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸長回復性に優れた長繊維不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、不織布は、土木資材、農業資材、工業資材、家庭用品等の様々な分野における各種の用途に使用されている。また、各種の用途に適用する際には、その用途における要求性能に応じた機能を有する
不織布が用いられる。各種の用途に適用する際に求められる機能として、例えば、伸縮性、伸長回復性が挙げられる。このような伸縮性や伸長回復性を不織布に付与する手段としては、エラストマー弾性を有するエラストマー樹脂によって構成された長繊維を構成繊維として用いること、また、繊維構造として捲縮を有する並列型捲縮繊維を構成繊維として用いること、そして、このような構成繊維によって伸縮性を発現することが挙げられる(特許文献1)。このようにエラストマー樹脂により構成される長繊維や、捲縮繊維によって構成される不織布は、繊維自体が柔らかで肌当たりが良好なため、不織布自体も柔軟性に優れるものであり、一般的に伸縮性を有する不織布は、柔軟性に優れるものが多い。
【0003】
ところで、本発明者は、特殊な横断面形状を持つポリエステル不織布を開発した(特許文献2)。これは、ポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布であって、該ポリエステル長繊維の横断面形状が、略Y字の下端で上下左右に連結した
形状(以下、「略Y4形状」という。)であることを特徴とするポリエステル不織布というものである。かかるポリエステル不織布は、高剛性であるという特性を持っている。
【特許文献1】特許第5174802号公報
【特許文献2】特開2013−76182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、上記ポリエステル不織布を用いて種々研究を行っていたところ、このポリエステル不織布に座屈処理を施すと、厚み方向に圧縮しても座屈加工による山部と谷部の形状が変形しにくく、また、変形しても回復性が高い不織布が得られることを見出した。また、座屈加工により形成される山部と谷部からなる襞は、引っ張ると伸び、引張を解除すると元の襞の形態に戻るため縮み、いわゆる伸縮性を有し、付与された襞の形状は変形しにくいため、伸長回復性に優れる不織布が得られるのである。本発明はかかる知見に基づくものである。したがって、本発明の課題は、座屈加工により付与された形状が変形しにくく、変形しても回復性に優れる不織布を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリエステル長繊維で構成されてなるポリエステル不織布において、不織布全体に亘って、不織布の一方向に山部と谷部とが交互に波形状の凹凸として形成されており、
該一方向における伸長回復率が、60%以上、山の高さが500μm以上、隣り合う山と山の距離が0.5〜3mmであり、
前記ポリエステル長繊維の横断面形状は、略Y字の下端で上下左右に連結した略Y4形状であり、
ポリエステル長繊維の単繊維繊度が、17デシテックス以上であることを特徴とする伸長回復性に優れた長繊維不織布を要旨とする。
【0006】
また、本発明は、多数のポリエステル長繊維が堆積してなるウェブを、熱エンボス装置に導入して、部分的に圧着してなる圧着部を形成させて、ポリエステル長繊維相互間を熱接着により一体化させ、ついで、座屈加工機に導入し座屈処理を施し、不織布全体に亘って、不織布の一方向に山部と谷部とを交互に形成させることを特徴とする伸長回復性に優れた長繊維不織布の製造方法を要旨とする。
【0007】
まず、本発明で用いられるポリエステル長繊維について説明する。このポリエステル長繊維は、その横断面形状に特徴を有するものである。この横断面形状は、図1に示すような略Y字を四個持つものである。そして、略Y字の下端1で上下左右に連結して、図2に示すような略Y4形状となっている。この略Y4形状は、四個の凹部2と八個の凸部3と四個の小凹部4とを有している。このように多数の凹部2、多数の小凹部4、多数の凸部3を持っており、嵩高性に優れている。また、四個の凹部2の箇所に塵埃が捕捉されやすく、塵埃除去性に優れている。そして、中央の略+字部5と、略+字部5の各先端に連結された四個の略V字部6により、高剛性となっている。すなわち、六角形やY字等の単なる異形ではなく、剛性の高い略+字部5と略V字部6の組み合わせによって、より高剛性となるのである。かかるポリエステル長繊維を集積して、高剛性のポリエステル不織布を準備する。特に、ポリエステル長繊維相互間を熱融着等により結合して、嵩高で且つ高剛性のポリエステル不織布を準備することができる。長繊維相互間の結合は、熱エンボス装置に導入して、部分的に熱と圧力を加えて、圧着部を形成させて、ポリエステル長繊維相互間を熱接着により一体化させることが好ましい。
【0008】
ポリエステル長繊維は、一種類のポリエステルからなるものでもよいが、低融点ポリエステルと高融点ポリエステルとを組み合わせるのが好ましい。すなわち、ポリエステル長繊維の横断面形状の略V字部6が低融点ポリエステルで形成され、略+字部5が高融点ポリエステルで形成された複合型するのが好ましい。複合型ポリエステル長繊維を集積した後、低融点ポリエステルを軟化又は溶融させた後、固化させることにより、ポリエステル長繊維相互間が低融点ポリエステルによって熱融着されたポリエステル不織布が得られるからである。また、ポリエステル不織布を構成するポリエステル長繊維の繊度は、17デシテックス以上とする。繊度が17デシテックス未満になると、長繊維の剛性が低下する傾向が生じ、ひいてはポリエステル不織布の剛性も低下する傾向が生じ、形成してなる波形状を維持しにくくなる。また、ポリエステル不織布の目付は、15〜200g/mであるのが好ましい。目付が15g/m未満になると、ポリエステル不織布の剛性が低下する傾向が生じる。目付の上限は特に限定されないが、座屈加工によって、良好な波形状の山部と谷部を形成するためには、厚みが大きすぎないほうがよいため、200g/m程度がよい。なお、本発明で用いるポリエステル不織布の詳細については、上記した特許文献2に詳述されている。



【0009】
本発明のポリエステル不織布は、不織布全体に亘って、不織布の一方向に山部と谷部とが交互に波形状の凹凸として形成されている。不織布全体に亘って一方向に交互に波形状の凹凸が形成されているとは、一方向に進行する波状の凹凸(起伏)が形成されているという意味であり、一方向に波立っており、一つの波の山および谷は一方向と直交する方向に連続している。そして、不織布の一部分にこの波形状が付与されているのではなく、不織布全体に波形状が付与されている。
【0010】
この波形状の山の高さは、500μm以上である。山の高さとは、波の起伏の高さであり、波の山と谷との距離である。山の高さが500μm未満であると、所望の伸縮性を不織布に付与できなくなる傾向が生じる。一方、山の高さの上限は、適宜設計すればよいが、形状維持性を考慮すると、1500μm程度がよい。なお、山の高さは、無荷重下ではなく、加重1.96kPaの荷重下での厚みを山の高さとする。
【0011】
波形状を形成する山と山との間隔(あるいは谷と谷との間隔)は、0.5〜3mmである。山と山との間隔(距離)は、拡大投影機を用いて、不織布断面より任意の10箇所を選択して、隣り合う山と山の間の距離を測定し、その平均値を求める。山と山との間隔が0.5mmmより小さいと、山の形状がシャープであり、山底の長さに対して山の頂点部の高さの比が大きいものであり、このような形状を維持するためには、不織布を構成する長繊維に極めて過大な曲げモーメントを付加して折り曲げることを要することになり、山谷の形状を付与する際に長繊維が損傷しやすい。また、山と山との距離が3mmを超えると、山と山との間隔または谷と谷との間隔が長くなるため、所望の伸縮性を不織布に付与できなくなる傾向が生じる。
【0012】
本発明のポリエステル不織布の伸縮性は、不織布全体に亘って波形状の凹凸が形成されていることによって発現する。したがって、この伸縮性は、ポリエステル不織布の山谷が交互に形成されてなる一方向において発現する。この山谷が交互に形成されてなる一方向における伸長回復率は60%以上である。伸長回復率が30%未満では、良好な伸縮性を有するとはいい難い。なお、伸長回復率(%)の測定方法は、以下の方法により行う。すなわち、JIS L 1096 伸長弾性率(伸長回復率)に基づき測定した。なお、測定する長さ方向が、山谷が形成された一方向となるように試料片を準備し、つかみ間隔は100mmとなるように試験片を取り付けた。
【0013】
本発明において、ポリエステル不織布に、波形状の凹凸を形成させて、伸長回復性に優れた長繊維不織布は以下の方法により製造することができる。
【0014】
すなわち、上記したポリエステル不織布を準備し、この不織布の一方向に座屈処理を施す。一般には、ポリエステル不織布の長手方向となる機械方向に座屈処理を施す。座屈処理は、ポリエステル不織布を一定の供給速度で進行させて、この供給速度よりも遅い速度で排出させることによって行うことができ、この速度差に応じて、ポリエステル不織布に曲げモーメントが働き、座屈処理が行われるのである。座屈処理を施す装置は、マイクレックス社製のマイクロクレーパー機を用いるとよい。マイクロクレーパー機によれば、ポリエステル不織布を、まず一対の供給ローラーを通し、レターダーに押し込む。この際、一対の供給ローラーの表面を若干加熱(例えば40〜100℃程度)しておいて、ポリエステル不織布を構成する長繊維が座屈しやすいようにしておいてもよい。レターダーに押し込まれることによって、ポリエステル不織布は導入された方向に座屈処理が施されて、波状起伏が生じる。従って、波形状の山の高さやピッチ(山と山との距離)は、供給速度 と排出速度の差及びレターダーの間隔等によって、任意に決定できるのである。
【0015】
そして、この座屈処理による波状起伏が生じている間に(波状起伏が消失しないうちに)、熱処理装置に通して熱処理し、形状を固定することがよい。熱処理は、ポリエステル不織布を構成している長繊維の融点以下の温度で行う。融点以上の温度で熱処理を行うと、長繊維が溶融する恐れがあり、得られる不織布の風合いが低下する恐れがある。また、この熱処理は、無押圧下で行う。押圧すると、座屈処理により生じた波状起伏が消失してしまう恐れがある。この熱処理によって、座屈処理により生じた波形状が不織布に熱固定されて、その形態が保持される。
【0016】
以上のような座屈処理をポリエステル不織布に施すことによって、本発明に係る伸長回復性に優れた長繊維不織布を得ることができる。
本発明の伸長回復性に優れた長繊維不織布は、伸縮性、伸長回復性、嵩高性、クッション性に優れ、ボリューム感があり、通気性に優れるとともに、付与された形状の形態安定性、形態維持性に優れる。波状の凹凸を利用して、ワイピングクロスの部材やワイピングクロス、クッション材や緩衝材、衝撃吸収材、吸音材、フィルター材等の様々な分野に適用しうるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の長繊維不織布は、特定の異型断面を有する長繊維によって構成される高剛性のポリエステル不織布に、不織布の一方向に山部と谷部とが交互に波形状の凹凸として形成されている。ポリエステル不織布自体が、高剛性であることから、形成された波形状の凹凸は、不織布の厚み方向に荷重を掛けても凹凸の形状を維持し、消失しにくく、嵩高性を良好に維持する。したがって、例えば、通常、長尺の不織布はロール巻きにして保管や搬送がされ、特にロール巻の中心部に近いほど厚み方向に荷重がかかるため変形しやすいが、本発明の長繊維不織布は、荷重をかけても凹凸の形状が消失しにくいため、当初の波形状の凹凸を維持することができる。また、引張に対しても、凹凸の形状を維持するので、伸長回復性にも優れる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例における特性値は、以下により求めた。
(1)ポリエステルの極限粘度[η]:フェノールを四塩化エタンとの等質量比の混合溶媒100ccに試料0.5gを溶解し、測定した。
(2)融点:パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−7型を用い、昇温速度20℃/分で測定した。
(3)不織布の厚み(μm):標準状態の資料から、縦10cm×横10cmの資料片10点を作成し、JIS L 1913 6.1A法に準拠し、ダイヤルシックネスゲージ(プレッサーフード35.7mmφ、加重9.8kPa)を用いて、それぞれの厚みを測定し、その平均値を不織布の厚みとした。
(4)不織布を構成する長繊維の単繊維繊度(dtex):温度20℃、湿度60%の環境下で1昼夜保管した長さ1.8mの資料5点の質量について、上皿天秤(Mettler AE50)を用いて測定し、その平均値より単繊維繊度を求めた。
【0019】
実施例1
[ポリエステル不織布の準備]
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸(TPA)92mol%及びイソフタール酸(IPA)8mol%を用い、ジオール成分としてエチレングリコール(EG)100mol%を用いて共重合し、低融点ポリエステル(相対粘度〔ηrel〕1.44、融点230℃)を得た。この低融点ポリエステルに、結晶核剤として4.0質量%の酸化チタンを添加して、低融点ポリエステル重合体を準備した。一方、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸(TPA)100mol%とジオール成分としてエチレングリコール(EG)100mol%を用いて共重合し、高融点ポリエステル重合体(ポリエチレンテレフタレート、相対粘度〔ηrel〕1.38、融点260℃)を準備した。そして、図3に示したノズル孔を用い、V字部に低融点ポリエステル樹脂を供給し、+字部に高融点ポリエステル樹脂を供給して、紡糸温度285℃、単孔吐出量8.33g/分で溶融紡糸した。なお、低融点ポリエステル樹脂の供給量と高融点ポリエステル樹脂の供給量の重量比は、1:2であった。
ノズル孔から排出されたフィラメント群を、2m下のエアーサッカー入口に導入し、複合型ポリエステル長繊維の繊度が17デシテックスとなるように牽引した。エアーサッカー出口から排出された複合型ポリエステル長繊維群を開繊装置にて開繊した後、移動するネット製コンベア上に集積し、繊維ウェブを得た。この繊維ウェブを、表面温度が213℃のエンボスロール(各エンボス凸部先端の面積は0.7mm2で、ロール全面積に対するエンボス凸部の占める面積率は15%)とフラットロールからなる熱融着装置に導入し、両ロール間の線圧30kgf/cmの条件として、複合型ポリエステル長繊維相互間を低融点成分で熱融着して、目付40.9g/m2、厚み312μmのポリエステル不織布を得た。
【0020】
[波形状の凹凸を形成させた不織布の製造]
上記したポリエステル不織布を、マイクレックス社製のマイクロクレーパー機に導入した。すなわち、ポリエステル不織布の機械方向に沿って、マイクロクレーパー機に導入して、不織布の機械方向に山部と谷部とが交互に波形状の凹凸として形成させた。なお、マイクロクレーパー機における供給ローラーの表面温度は40℃に設定した。
【0021】
得られた不織布は、目付51.5g/m2、山の高さ(不織布の厚み)706μm、山と山との距離は1.7mm(山の個数が15.24個/2.54cm)、伸長回復率は64.5%であった。伸長回復率測定の際の20%伸長させた際の応力は0.0026kNであった。
また、圧縮に対する形態保持性(圧縮歪)を評価するために、不織布を平板に挟んで、荷重を22.54kPaかけて厚みの変化を確認した。すなわち、上記した荷重9.8kPaでの厚みに対して、荷重22.54kPaかけた際の厚みの減少率を算出したところ、21.53%であり、大きく荷重をかけた際でも、凹凸を維持していた。
【0022】
比較例1
[長繊維不織布の製造]
融点260℃、極限粘度[η]0.70ポリエチレンテレフタレートを準備し、公知の溶融紡糸装置を用い、繊維の横断面が円形となる紡糸孔を30個備えた紡糸口金より、紡糸温度280℃でポリエステル長繊維を溶融紡出した。紡糸口金とエアーサッカーまでの距離は140cmに設定し、紡出長繊維をエアーサッカーに導入した。このとき、ひとつのエアーサッカーに30本の長繊維を導入した。そして、エアーサッカーにて、長繊維の繊度が3.0デシテックスとなるように紡糸速度5000m/分で牽引し、紡出長繊維は、開繊装置でばらばらになるように開繊させた後、コンベアネット上に捕集・堆積させて、長繊維ウェブを得た。得られた長繊維ウエブを、エンボスロール(エンボスロールの凸部の面積0.42mm2、面積率37%)とフラットロールとからなる熱エンボス装置に導き、両ロールの表面温度235℃、線圧490N/cmの条件下で部分的に熱圧接処理を施し、目付40g/m2、厚み240μmの長繊維不織布を得た。この長繊維不織布は、構成繊維である長繊維の横断面が円形であり、単繊維繊度が小さいため、実施例1で用いたポリエステル不織布に比べて、剛性も低いものであった。
【0023】
[波形状の凹凸を形成させた不織布の製造]
得られた上記した比較例の長繊維不織布を、マイクレックス社製のマイクロクレーパー機に導入した。導入する際の条件は、実施例1と同様として、不織布の機械方向に山部と谷部とが交互に波形状の凹凸として形成
させた。
【0024】
得られた不織布は、目付60.9g/m2、山の高さ(不織布の厚み)837μm、山と山との距離は1.3mm(山の個数18.33個/2.54cm)、伸長回復率は78.5%であった。伸長回復率測定の際の20%伸長させた際の応力は0.0013kNであった。伸長時の応力が実施例の半分の値であり、変形しやすいことが分かる。
また、圧縮に対する形態保持性(圧縮歪)を評価するために、不織布を平板に挟んで、荷重を22.54kPaかけて厚みの変化を確認したところ、厚みの減少率は26.88%であり、実施例と比べて変形が大きかった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明で用いるポリエステル長繊維の横断面形状である略Y4形状の一つの略Y字を示した図である。
図2】本発明で用いるポリエステル長繊維の横断面形状である略Y4形状を示した図である。
図3】実施例1で用いたポリエステル不織布を製造するときに用いる紡糸孔の形状を示した図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ポリエステル長繊維の横断面形状である略Y4形状の一つの略Y字の下端
2 略Y4形状で形成された凹部
3 略Y4形状で形成された凸部
4 略Y4形状で形成された小凹部
5 略Y4形状中の略+字部
6 略Y4形状中の略V字部
図1
図2
図3