(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の熱伝導シートのような場合、シリコーンゴムがマトリックスとなっており、密着性に優れる反面、シートの強度が低い。このため、当該熱伝導性シートを取り付ける際、または、ヒートシンクなどに貼合ずれしたシートを剥離する際に、熱伝導シートが破断してしまい作業性が低いという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とする処は、マトリックス樹脂の特性を維持して発熱体と放熱体との密着性を有し、かつ引張強さに優れる熱伝導シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、熱伝導シートに繊維を含有させてシート強度を向上すべく、従来の手法、例えば、(1)熱伝導性フィラーと樹脂とを混合し、ロール、カレンダー押出し機などによりシート状に成形した後にプレスして加硫する方法、(2)溶剤に希釈してドクターブレードでシート状に成形・乾燥・プレスして加硫する方法、(3)ニーダーなどの密閉式混練機で混合した粉末状ゴム材に成形し、金型に充填しプレスする方法などを検討した。しかしながら、これらの手法では、繊維が熱伝導シート全体に分散するため、強度を好適に向上させるに至らなかった。
そこで、本発明者らは、熱伝導シート中に繊維をどのように配置するかを鋭意検討した結果、下記発明を見出した。
【0007】
<1>熱伝導性フィラー、繊維、および樹脂を含む熱伝導シートであって、
前記繊維は面状に交絡しており、
上記交絡した繊維は、上記熱伝導性フィラーを坦持してベースシートを形成しており、
上記樹脂がベースシートに充填されていることを特徴とする熱伝導シート。
<2>当該熱伝導シートの厚さ方向において、熱伝導シートの厚さに対して50%以上の粒子径を有する熱伝導性フィラーを少なくとも含むことを特徴とする<1>に記載の熱伝導シート。
<3>当該熱伝導シートにおける熱伝導性フィラーの体積比率が、2%以上、45%以下であることを特徴とする<1>または<2>に記載の熱伝導シート。
<4>上記熱伝導シートの熱伝導性フィラーが凝集体であることを特徴とする<1>〜<3>の何れか1項に記載の熱伝導シート
<5>上記熱伝導シートの熱伝導性フィラーが熱異方性を有する粒子の凝集体であることを特徴とする<1>〜<4>の何れか1項に記載の熱伝導シート。
<6>上記熱伝導シートの繊維の体積比率が1%〜10%であることを特徴とする<1>〜<5>の何れか1項に記載の熱伝導シート。
<7>上記熱伝導シートの樹脂の体積比率が55%〜95%であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の熱伝導シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マトリックス樹脂の特性を維持して発熱体と放熱体との密着性を両立し、かつ、引張強さに優れる熱伝導シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明について説明するが、本発明は明細書に記載された具体例に基づき限定的に解釈されるものでない。
【0011】
《熱伝導シート》
本発明の熱伝導シートは、熱伝導性フィラー、繊維、および樹脂を含む熱伝導シートであって、上記繊維は面状に交絡しており、上記交絡した繊維は、上記熱伝導性フィラーを坦持してベースシートを形成しており、上記樹脂がベースシートに充填されているものである。
図1は、本発明の熱伝導シート10を示す断面図であり、熱伝導性フィラー1、繊維2、および樹脂3を含んでいる。
図1は、熱伝導シートの一例を示すにすぎず、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【0012】
<熱伝導性フィラー>
熱伝導性フィラーは、熱伝導性を発現するために熱伝導シート内に含有されるものであり、熱伝導性フィラーの一面から熱伝導性フィラーを媒介することで、熱伝導シートの一面から伝わった熱が他面へ放熱される。本発明で使用する熱伝導性フィラーとしては、熱伝導性が高いものが好ましいが、特に限定されるものではない。
具体例には、例えば、酸化珪素(シリカ)、酸化アルミ(アルミナ)、酸化マグネシウムなどの金属酸化物;水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、炭化珪素などの窒化物または炭化物;ステンレス繊維などの金属繊維;銀、金などの金属粒子などが挙げられる。中でも、絶縁性の観点から、酸化アルミ(アルミナ)、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素などの窒化物または炭化物が好ましく、更に、熱伝導率の観点から窒化ホウ素を使用することが特に好ましい。
【0013】
熱伝導性フィラーの形状としては、不定形、球状、板状、球状、繊維状などのいずれであってもよく、粒子が凝集した凝集体が好ましく用いられる。
熱伝導率の高い熱伝導性フィラーにおいては、熱伝導率に方向異方性(熱異方性)を持つものが存在する。通常、このような熱伝導率に方向異方性を持つ粒子は、熱伝導性の高い方向に配向させて熱伝導率を向上させる手法が取られるため、熱伝導性フィラーを配向させる為の特殊な手法、装置を使用しなければならず、生産性が悪く、コストが高くなる。例えば、熱伝導性フィラーとして使用される窒化ホウ素は六方晶系の窒化ホウ素であり、粒子形状がその製法に由来して鱗片状となることに起因して、その熱伝導率に方向異方性があり、鱗片状粒子の面方向の熱伝導率が、厚さ方向の熱伝導率に対して数十倍高いという特徴がある。この場合、熱伝導性の高い面方向に配向させなければ熱伝導性が発現し難く、配向させるためには特殊な手法、装置を必要とする。
【0014】
一方、本発明では窒化ホウ素の凝集体が好ましく用いられる。窒化ホウ素凝集体は上記鱗片状の一次粒子がランダムに圧着した構造を有している。その構造に起因して、窒化ホウ素凝集体の熱伝導率は鱗片状の粒子の厚さ方向の熱伝導率と面方向の熱伝導率の中間の熱伝導率として捕らえることができ、面方向の高熱伝導性を生かすことができる。また、熱伝導率の方向についても凝集体内全体で見ればなど方性が有る材料として使用することができる。そのため、窒化ホウ素凝集体を使用した場合は通常の六方晶窒化ホウ素のように配向する必要がない、高熱伝導性フィラーとして活用することが可能である。
【0015】
熱伝導性フィラーの粒子径(直径)は、特に限定されず、例えば、0.5μm〜1000μmであり、好ましくは50μm〜500μm、より好ましくは、100μm〜400μmである。なお、熱伝導性フィラーが凝集体である場合、凝集体の粒子径とは2次粒子径を意味する。上記粒子径は、熱伝導シートの厚さに応じて設定すればよく、具体的には、本発明の熱伝導シートは、熱伝導シートの厚さ方向において、熱伝導シートの厚さに対して50%以上の粒子径を有する熱伝導性フィラーを少なくとも含むことが好ましい。熱伝導性フィラーの粒子径が大きい、すなわち、熱伝導シートの厚さ方向に占める熱伝導性フィラーの割合が高いことで、発熱体から熱伝導シートの一面に伝わった熱は、それぞれの熱伝導性フィラーの内部を伝導して対面に速やかに伝導される。このように、効率的な放熱が可能であるため、
図3に示すような熱伝導率フィラー11が高充填され、樹脂13の体積比率が小さい熱伝導シート100とは異なり、熱伝導性フィラーの体積比率が低くとも、熱伝導性に優れるものである。
【0016】
熱伝導性フィラーの体積比率は限定されないが、熱伝導率の維持、及び、後述する樹脂の柔軟性やコストと両立するため、熱伝導性フィラーの体積比率を2%〜45%、樹脂の柔軟性を重視すると5%〜20%と低く抑えることが好ましい。
【0017】
<繊維>
繊維は熱伝導シートの引張強さを向上することで熱伝導シート自体の強度を向上し、作業性を向上するために含有される。本発明では、繊維は面状に交絡している。すなわち、繊維同士が、面状に絡み合っている。
図2は、樹脂を充填する前のベースシート20を示す断面図である。ベースシートは、繊維2が絡み合うことで引張強さの向上に寄与しており、かつ、絡み合った繊維2に熱伝導性フィラー1が坦持されているため、熱伝導性フィラー1が熱伝導シートから脱落し難い。
【0018】
本発明で使用する繊維材料としては、柔軟性を有するパルプ状繊維を用いるのが好ましい。繊維の柔軟性により、繊維同士が絡み合い易く、高い引張強さを発現でき、さらに、熱伝導性フィラーに絡まり易く、好適に坦持できるというメリットがある。
【0019】
繊維は、互いに交絡し、熱伝導性フィラーを坦持できればよく、特に限定されないが、例えば、天然繊維、合成高分子繊維、再生繊維、無機系繊維などを用いることができる。
天然繊維の原料としては、木材および非木材が挙げられ、木材としては、パルプとして通常使用される針葉樹、広葉樹が挙げられ、パルプ処理したものを好適に使用できる。パルプの種類は特に限定されないが、例えば、MP(Mechanical pulp:機械パルプ)としては、GP(Ground pulp:砕木パルプ)、RGP(Refiner ground pulp:リファイナーグランドパルプ)、CGP(Chemi ground pulp:ケミグラウンドパルプ)などが挙げられ、CP(Chemical pulp:化学パルプ)としては、SP(Sulfide pulp:サルファイドパルプ)、AP(Alkaline pulp:アルカリパルプ)、KP(Kraft pulp:クラフトパルプ)、SCP(Semi chemical pulp:セミケミカルパルプ)などが挙げられ、これらは未晒しパルプでも晒しパルプでもよい。
非木材としては、木綿、わら、竹、エスパルト、バガス、リンター、マニア麻、亜麻、麻、黄麻、雁皮などが挙げられる。
合成高分子繊維としては、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維などのオレフィン樹脂繊維、ポリアセタール、ポリイミド、アラミド、PBO、PTFEなどのフッ素系樹脂、ナイロン、ポリエステル繊維、スチレン及びその共重合体、アクリル酸エステル及びその共重合体などの合成繊維が挙げられる。
再生繊維としては、レーヨン、リオセル、キュプラなどが挙げられる。
無機系繊維としては、例えば、ガラス繊維;アルミナ繊維;セラミックスファイバー;銅、鉄、ステンレスなどの金属繊維;カーボン繊維などの高分子繊維などが挙げられる。
【0020】
これら繊維としては、叩解機によるフィブリル化、または、紡糸時にフィブリル化したものを使用できる。叩解機はシングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)、ビーターなどで適宜おこなうことができる。繊維の叩解度としては、カナダ標準濾水度(JIS P 8121)で、750mL〜100mL、好ましくは500mL〜250mLである。繊維長としては、0.1mm以上であることが好ましい。なお、本発明においては、物理的な強度が強いことから針葉樹パルプが好ましい。
【0021】
また、紙の強度、こしの強さを向上させる目的で上記の叩解した繊維と一緒に、非叩解のステープル状の繊維を用いることが可能である。非叩解繊維の繊維長としては、1mm〜30mm、好ましくは2mm〜15mmである。繊維径としては、1〜30μmφ、好ましくは2〜15μmφである。非叩解繊維の配合量は、叩解した繊維100質量部に対して10〜200質量部、好ましくは20〜100質量部、特に20〜50質量部である。
【0022】
熱伝導シートに対する繊維の体積比率は、例えば、1%〜10%であり、好ましくは4%〜7%である。上記範囲であれば、ベースシートを形成可能な繊維量を確保して引張強さを好適な範囲としつつも、繊維の比率が高すぎないため、熱伝導性フィラーまたは樹脂の体積比率を低減させず、熱伝導率または密着性を好適な範囲に維持できる。
【0023】
<樹脂>
樹脂はベースシートに充填されており、熱伝導シートが発熱体と放熱体との間に設置された際、発熱体、および放熱体との密着性を高めるものである。このため、繊維を主体とする熱伝導シートよりも密着性が高い。
本発明で使用する樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、などを用いることが挙げられ、耐久性及び密着性の観点からシリコーン樹脂が好ましい。
また、本発明では上記の通り、熱伝導性フィラーの体積比率を抑えることが可能であるため、密着性に寄与する樹脂の体積比率を高めることができる。熱伝導シートに対する樹脂の体積比率は、例えば、55%〜95%であり、好ましくは75%〜90%である。
【0024】
<熱伝導シートの物性>
本発明の熱伝導シートは、繊維を面状に交絡したベースシートを備えているため、引張強さに優れている。引張強さは少なくとも0.1MPa以上であることが好ましく、より好ましくは、0.3MPa以上である。上限値は高い程良いが、0.1MPa以上、10MPa以下であれば十分作業性を有し、0.1MPa以上、7MPa以下であっても実用性に問題はない。
また、熱伝導シートの熱伝導率は高いことが好ましく、例えば、0.8W/(m・K)以上であり、より好ましくは1.0W/(m・K)以上、さらには5.0W/(m・K)以上である。熱伝導率は高いほど好ましいため、上限は限定されない。
発熱体および放熱体との密着性については、熱伝導シートと被着体との間に剥がれが生じなければよく、剥がれが生じた場合には、熱伝導率が低下することとなる。
【0025】
《熱伝導シートの製造方法》
本発明の熱伝導シートの作成方法は、通常の熱伝導シートの作成方法、つまり、熱伝導性フィラーとマトリックス樹脂とを混合し、ロール、カレンダー押出し機などによりシート状に成形した後にプレスして加硫する方法、溶剤に希釈してドクターブレードでシート状に成形・乾燥・プレスして加硫する方法、ニーダーなどの密閉式混練機で混合した粉末状ゴム材に成形し、金型に充填しプレスする方法などでは作成が困難である。理由としては熱伝導シートの内部に、繊維が面状に交絡したベースシートを含有しているためであり、熱伝導性フィラーとマトリックス樹脂の混錬と併せて繊維を混錬する方法では、繊維同士を交絡させることができないためである。
【0026】
本発明の熱伝導シートの製造方法は、当該熱伝導シートを製造できれば特に限定されないが、代表的には、通常の製紙に用いられる湿式抄造法を用いて熱伝導性フィラーと繊維を混抄した母体となるシートを作成し、作成した混抄シートにマトリックス樹脂を含浸して熱伝導シートを作製する手法が挙げられる。
具体的には、まず、原材料である熱伝導性フィラー、および繊維をそれぞれ規定量秤量し、水中で混合攪拌して離解したスラリーを長網式、円網式などの湿式抄造機に適用し、連続したワイヤーメッシュ状の脱水パートで脱水し、その後、多筒式ドライヤーやヤンキードライヤーで乾燥して混抄シートを得る。次に作製した混抄シートに樹脂を含浸し、プレスして加硫して作成をする。
【0027】
ベースシートを作成する場合、300μm以上の粒子径の大きい熱伝導性フィラーを作成される熱伝導シート内に均一に分散させるため、増粘剤を使用することが必要である。増粘剤としては、ポリアクリルアミド、CMC(カルボキシメチルセルロース)などが挙げられ、使用量(質量)は、通常、使用する水に対して0.015%〜0.2%である。
また、熱伝導シートの母体である混抄シートの強度を向上するためにバインダー、紙力材を使用してもよいし、熱伝導性フィラーの収率を上げるために凝集剤を使用してもよい。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例における物性測定は以下の手順にて行なった。
【0029】
〔熱伝導性フィラーの粒子径〕
50mm×50mm角の熱伝導シート内の凝集体の粒子径をSEM観察して得られた断面写真により確認し、平均値粒子径を粒子径とした。
【0030】
〔熱伝導性フィラーの体積比率、及び、繊維、マトリックス樹脂の体積比率〕
熱伝導性フィラーの体積比率及び繊維、マトリックス樹脂の体積比率は作製した試験片の重量、面積、厚さ、原材料の組成、及び各部材の密度より算出して求めた。
【0031】
〔熱伝導率〕
熱伝導率は熱拡散率を測定し、得られた熱拡散率から熱伝導シートの密度と比熱を用いて算出した。熱拡散率は温度波熱分析法(アイフェイズ・モバイル:アイフェイズ社製)にて測定した。密度は高精度電子比重計(アルファーミラージュ社製:MD-300S)にて測定したものを使用し、比熱は上記で求めた熱伝導性フィラーの体積比率及び、繊維、樹脂の体積比率と各部材の文献値の比熱を用いて算出したものを使用した。
熱伝導率は、熱伝導率をλ(W/mK)、熱拡散率(m
2/s)をα、熱伝導シートの密度(kg/m
3)をρ、熱伝導シートの比熱容量(J/kgK)をcとして下記の計算式にて算出される。
λ=αρc
【0032】
〔引張強さ〕
引張強さはJIS K6251 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方に準拠して測定した。試料をダンベル試験片(ダンベル状8号形:平行部の厚さ2.0±0.2mm、平行部分の幅4.0±0.1mm、初期の標線間距離10.0±0.5mm)に切断し、引張試験機(テンシロン社製)を用いて測定した。引張強さをTS(MPa)、最大の力(N)をF
m、平行部分の厚さ(mm)をt、平行部分の幅(mm)をWとして引張強さは下記の計算式にて算出される。
TS=F
m/Wt
【0033】
〔密着性試験〕
密着性はRa=3〜4のすりガラスを用意し、熱伝導シートを貼り合わせ、目視により確認した。貼り合わせ後、密着性が良好に張り付いたものを○、張り付いたが気泡が混入したものを△、張り付かないものは×とする。
【0034】
〔実施例1〕
熱伝導性フィラーとして窒化ホウ素凝集体(平均粒子径300〜350μm、メッシュ作業を施し300μm未満の粒子を除去)70重量部、繊維として天然パルプ30重量部、バインダーとしてアクリレート系ラテックス0.75重量部、紙力剤としてエポキシポリマー0.75重量部、もう一種の紙力剤として変性ポリアクリルアミド0.75重量部、凝集剤としてポリアクリルアミド系高分子水分散剤0.05重量部を増粘剤としてポリアクリルアミド60重量部を溶かして増粘した水溶液中に投入してスラリーを調整し、このスラリーを湿式抄紙法により抄紙し、加熱乾燥して混抄シートを作成した。得られた混抄シートに、マトリックス樹脂としてシリコーンゲルを含浸し、600μmのスペーサーを用いて加熱プレス(70℃×30min)して硬化し、熱伝導シートを作製した。
【0035】
〔実施例2〕
窒化ホウ素凝集体の使用量を80重量部、天然パルプの使用量を20重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして熱伝導シートを作製した。
【0036】
〔実施例3〕
窒化ホウ素凝集体を平均粒子径15〜30μmのものに変更し、窒化ホウ素の使用量を80重量部、天然パルプの使用量を20重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして熱伝導シートを作製した。
【0037】
〔比較例1〕
熱伝導性フィラーとして窒化ホウ素凝集体(平均粒子径300〜350μm、メッシュ作業を施し300μm以下の粒子を除去)40重量部、マトリックス樹脂として付加反応型のシリコーンゲル100重量部を混合し、600μmのスペーサーを用いて加熱プレス(70℃×30min)して硬化し、熱伝導シートを作製した。
【0038】
〔比較例2〕
熱伝導性フィラーとして窒化ホウ素凝集体(平均粒子径15〜30μm)200重量部、マトリックス樹脂としてシリコーンゲル100重量部を混合し、600μmのスペーサーを用いて加熱プレス(70℃×30min)して硬化し、熱伝導シートを作製した。
【0039】
表1に実施例1〜3及び比較例1、2の手順によって作成された熱伝導シートの厚さ、体積比率、熱伝導率、引張強さ、密着性を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例1の熱伝導シートは熱伝導率4.16W/mKと良好な値を示し、引張強さは4.52MPaと高い値であった。また、密着性も良好であった。
実施例2より本発明で作成された熱伝導シートの熱伝導性フィラーの体積比率は9%、繊維の体積比率は4%、マトリックス樹脂の体積比率は87%であった。熱伝導率は14.40W/mKを得た。また、Ra=3〜4の凹凸面への密着が確認され、マトリックス樹脂の特性を維持した高い密着性を有していることが確認された。また、引張強さは0.41MPaであった。これは熱伝導シートを取り付け及び剥離する際に形状を維持するには十分に高い値であり、作業性が向上されていることが確認された。
実施例3では、熱伝導性フィラーの粒子径が小さいために熱伝導率が低い水準であったが、引張強さ、密着性共に良好な結果が得られた。
【0042】
比較例1では、粒子径の大きな熱伝導性フィラーを使用することで熱伝導率が向上していることが確認されたが、熱伝導シートに繊維が含まれていないため、引張強さが0.02MPaと小さく、シートの作業性が悪いことが確認された。
比較例2では、粒子径の小さい熱伝導性フィラーを使用してマトリックス樹脂に高充填したことにより、熱伝導率の向上が確認されたが、熱伝導シートに繊維が含まれていないため、引張強さがさほど高くなかった。また、密着性試験で、気泡の混入が確認された。