(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585480
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】生麺用日持ち向上剤および生麺の日持ち向上方法
(51)【国際特許分類】
A23L 3/349 20060101AFI20190919BHJP
A23L 3/3508 20060101ALI20190919BHJP
A23L 3/3562 20060101ALI20190919BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20190919BHJP
【FI】
A23L3/349 501
A23L3/3508
A23L3/3562
A23L7/109 C
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-229634(P2015-229634)
(22)【出願日】2015年11月25日
(65)【公開番号】特開2017-93355(P2017-93355A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 紘平
(72)【発明者】
【氏名】貝沼 直亮
(72)【発明者】
【氏名】上杉 謙吾
【審査官】
福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−256355(JP,A)
【文献】
特開昭56−160980(JP,A)
【文献】
特開平06−113802(JP,A)
【文献】
特開平07−079755(JP,A)
【文献】
特開2008−220345(JP,A)
【文献】
特開平10−042814(JP,A)
【文献】
食品と開発, 2008, vol.43, no.7, p.45-51
【文献】
物産フードサイエンス株式会社,2014,「物性一覧」,URL,http://www.bfsci.co.jp/products/generation1/,[検索日:2019年5月15日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノール100重量部に対し、乳酸20〜35重量部、乳酸ナトリウム10〜25重量部、還元水飴50〜80重量部(還元水飴は、重合度1の糖アルコールを8重量%以下、重合度2の糖アルコールを42〜54重量%、重合度3の糖アルコールを19〜31重量%および重合度4以上の糖アルコールを15〜27重量%含有する)およびコハク酸1〜3重量部を含む、生麺用日持ち向上剤。
【請求項2】
エタノール10〜75重量%、乳酸2〜20重量%、乳酸ナトリウム1.5〜10重量%、還元水飴5〜40重量%およびコハク酸0.1〜1.2重量%を含む、請求項1に記載の生麺用日持ち向上剤。
【請求項3】
生麺の原料の全重量に対し、1〜3.5重量%の量で使用される、請求項1または2に記載の生麺用日持ち向上剤。
【請求項4】
エタノール40〜95重量%、乳酸0〜1重量%および乳酸ナトリウム0〜1重量%を含有する液体製剤A、および、乳酸10〜30重量%、乳酸ナトリウム5〜15重量%、還元水飴20〜60重量%およびコハク酸0.1〜2重量%を含有する液体製剤Bを含む、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の生麺用日持ち向上剤。
【請求項5】
生麺の原料の全重量に対し、液体製剤A0.5〜3重量%、液体製剤B0.5〜3重量%の量で使用される、請求項4に記載の生麺用日持ち向上剤。
【請求項6】
生麺のpHを5.0〜7.0に調整する、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の生麺用日持ち向上剤。
【請求項7】
生そば用である、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の生麺用日持ち向上剤。
【請求項8】
脱酸素剤と併用される、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の生麺用日持ち向上剤。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の生麺用日持ち向上剤を含む生麺。
【請求項10】
生麺の原料の全重量に対し、エタノール0.4〜2.5重量%、乳酸0.09〜0.6重量%、乳酸ナトリウム0.05〜0.35重量%、還元水飴0.1〜1.3重量%、およびコハク酸0.004〜0.03重量%を含む、請求項9に記載の生麺。
【請求項11】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の生麺用日持ち向上剤を生麺に添加することを特徴とする、生麺の日持ち向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生麺類の日持ち向上に適した日持ち向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
そばやうどん等の生麺類は、その原料であるそば粉や小麦粉に細菌やカビが多く付着しているために、これらの原料を用いて製造された生麺類は、腐敗やカビが発生し易く、従来から問題となっていた。
【0003】
生麺類の腐敗やカビの発生を抑制する代表的な方法として、エタノールや有機酸を含有させる方法が知られている。しかしながら、十分な日持ち向上効果が得られる程度のエタノールや有機酸を生麺類に添加すると、エタノールの苦味、エタノール臭、酸味、酸臭等が強くなり、生麺類の味質や風味の低下が避けられないことから、エタノールや有機酸の添加量を低く抑える必要があった。したがって、エタノールや有機酸を含有させる方法では、十分な日持ち向上効果が得られていないのが実情である。
【0004】
上記のような背景から、生麺類の味質や風味に影響を与えずに保存性を改善するための保存剤や日持ち向上剤が従来より提案されている。
【0005】
特許文献1には、エタノールと糖類または/および糖アルコールと有機酸または/およびその塩とアミノ酸または/およびその塩類とを100:10〜30:0.2〜5:0.2〜5の重量割合で含有する食品用保存剤が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、エタノール、1種以上の有機酸、1種以上の有機酸塩、アミノ酸および水を含有することを特徴とする食品用日持向上剤が提案されている。
【0007】
しかしながら、上記技術においてもエタノールの苦味、エタノール臭、酸味、酸臭等の抑制は不十分であり、さらなる改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭57−43668号公報
【特許文献2】特開2008−220345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、生麺類の味質や風味への影響が少なく、優れた日持ち向上効果を奏する生麺類用日持ち向上剤を提供することにある。本発明の目的は、また、日持ちが向上した生麺類、および、生麺類の日持ち向上方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、エタノールに、乳酸、乳酸ナトリウム、特定の還元水飴および特定の有機酸を含む液体製剤を組み合わせることにより、生麺類の味質や風味を低下させることなく、保存性を向上させ得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、エタノール、乳酸、乳酸ナトリウム、重合度3の糖アルコールを17〜33重量%および重合度4以上の糖アルコールを13〜29重量%含有する還元水飴、ならびにコハク酸、アジピン酸およびフィチン酸よりなる群から選ばれる1種以上の有機酸を含む、生麺用日持ち向上剤を提供する。本発明はまた、当該生麺用日持ち向上剤を含む生麺を提供する。本発明はまた、当該生麺用日持ち向上剤を生麺に添加することを特徴とする、生麺の日持ち向上方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のある態様では、本発明の生麺用日持ち向上剤は、エタノール100重量部に対し、乳酸5〜90重量部、好ましくは10〜50重量部、より好ましくは20〜35重量部、乳酸ナトリウム3〜55重量部、好ましくは5〜35重量部、より好ましくは10〜25重量部、重合度3の糖アルコールを17〜33重量%および重合度4以上の糖アルコールを13〜29重量%含有する還元水飴8〜310重量部、好ましくは25〜210重量部、より好ましくは50〜80重量部、ならびに、コハク酸、アジピン酸およびフィチン酸よりなる群から選ばれる1種以上の有機酸0.3〜5重量部、好ましくは0.5〜4重量部、より好ましくは1〜3重量部を含む。
【0013】
本発明の生麺用日持ち向上剤に使用するエタノールは特に制限はなく、食品添加物として許容されるエタノール、工業用エタノール、変性剤として食品香料等を任意の割合で含有する変性エタノールであってもよい。
【0014】
本発明の生麺用日持ち向上剤におけるエタノールの割合は、日持ち向上剤全重量に対して、例えば10〜75重量%、好ましくは20〜60重量%、より好ましくは30〜45重量%であり得る。本発明の生麺用日持ち向上剤により、例えば生麺類の原料の全重量に対して0.4〜2.5重量%、好ましくは0.5〜2重量%、より好ましくは0.55〜1.5重量%でエタノールを添加し得る。生麺類の原料の全重量に対するエタノールの割合が、0.4重量%未満の場合、生麺類の静菌が不十分となり、日持ち向上効果が不十分になる傾向がある。また、2.5重量%を超える場合、エタノールの苦味やエタノール臭が強くなり、生麺類の風味が損なわれる傾向がある。
【0015】
本発明の生麺用日持ち向上剤に用いる乳酸および乳酸ナトリウムは、食品に添加可能なものであればよく、合成法および発酵法のいずれによって得られたものであっても使用可能である。
【0016】
本発明の生麺用日持ち向上剤における乳酸の割合は特に限定されないが、日持ち向上剤全重量に対して、例えば2〜20重量%、好ましくは5〜15重量%、より好ましくは8〜12重量%であり得る。本発明の生麺用日持ち向上剤により、例えば生麺類の原料の全重量に対して0.09〜0.6重量%、好ましくは0.1〜0.45重量%、より好ましくは0.11〜0.3重量%で乳酸を添加し得る。
【0017】
また、乳酸ナトリウムの割合も特に限定されないが、日持ち向上剤全重量に対して、例えば1.5〜10重量%、好ましくは3.5〜8重量%、より好ましくは5〜7重量%であり得る。本発明の生麺用日持ち向上剤により、例えば生麺類の原料の全重量に対して0.05〜0.35重量%、好ましくは0.06〜0.25重量%、より好ましくは0.07〜0.18重量%で乳酸ナトリウムを添加し得る。
【0018】
本発明の生麺用の日持ち向上剤は、重合度の異なる糖アルコールを特定の割合で含有する還元水飴を含む。本発明において使用可能な還元水飴は、重合度3の糖アルコールを17〜33重量%および重合度4以上の糖アルコールを13〜29重量%含有するものであればよく、重合度3の糖アルコールを18〜32重量%および重合度4以上の糖アルコールを14〜28重量%含有するものが好ましく、重合度3の糖アルコールを19〜31重量%および重合度4以上の糖アルコールを15〜27重量%含有するものがより好ましい。
尚、本発明において用いる還元水飴中の各種糖アルコールの割合は、該還元水飴中の固形分あたりの割合を示すものである。
【0019】
また、本発明において用いる好適な還元水飴として、固形分中の糖アルコールの割合が(a)重合度1の糖アルコール:10重量%以下、重合度2の糖アルコール:40〜56重量%、重合度3の糖アルコール:17〜33重量%、重合度4以上の糖アルコール:13〜29重量%であるもの、(b)重合度1の糖アルコール:9重量%以下、重合度2の糖アルコール:41〜55重量%、重合度3の糖アルコール:18〜32重量%、重合度4以上の糖アルコール:14〜28重量%であるもの、および(c)重合度1の糖アルコール:8重量%以下、重合度2の糖アルコール:42〜54重量%、重合度3の糖アルコール:19〜31重量%、重合度4以上の糖アルコール:15〜27重量%であるものが挙げられる。これらの中でも、酸味および酸臭のマスキング効果に優れる点で、(c)の還元水飴が特に好ましい。ここで、重合度1の糖アルコールとは、単糖を還元して得られる糖アルコールを意味し、本明細書において「単糖アルコール」とも称する。また、本明細書において、重合度Xの糖アルコール(Xは2以上の整数)を「X糖アルコール」とも称する。
【0020】
本発明において用いる還元水飴中の固形分の割合は特に限定されないが、通常は60〜80重量%であり、好ましくは65〜75重量%である。
【0021】
本発明に用いる還元水飴は、タピオカ澱粉、コーンスターチ等の澱粉を、上記条件に該当するように酵素によって加水分解し、精製および濃縮して製造したものの他、上記条件に該当する市販品を用いてもよい。本発明の生麺用日持ち向上剤に適用可能な市販の還元水飴としては、上野製薬株式会社製のMU−50などが例示される。また、個別に製造した複数種の糖アルコール(又は糖アルコール溶液)を混合することによって上記と同じ成分組成の糖アルコールシロップを作成し、これを本発明の生麺用日持ち向上剤における還元水飴として用いることもできる。
【0022】
本発明の生麺用日持ち向上剤における還元水飴の割合は、特に限定されないが、日持ち向上剤全重量に対して、例えば5〜40重量%、好ましくは12〜35重量%、より好ましくは20〜27重量%であり得る。本発明の生麺用日持ち向上剤により、例えば、生麺類の原料の全重量に対して0.1〜1.3重量%、好ましくは0.2〜1重量%、より好ましくは0.3〜0.7重量%で還元水飴を添加し得る。生麺類の原料の全重量に対する還元水飴の割合が、0.1重量%未満の場合、酸臭および酸味が強くなる傾向があり、1.3重量%を超える場合、生麺類の味質に影響が及ぶ可能性がある。
【0023】
本発明の生麺用日持ち向上剤は、上記エタノール、乳酸、乳酸ナトリウムおよび還元水飴に加え、コハク酸、アジピン酸およびフィチン酸よりなる群から選ばれる1種以上の有機酸を含む。これら有機酸の中でも、コハク酸およびアジピン酸が好ましく、生麺類の味質改善効果の点でコハク酸がより好ましい。
【0024】
本発明の生麺用日持ち向上剤におけるこれら1種以上の有機酸の割合の合計は、日持ち向上剤全重量に対して、例えば0.1〜1.2重量%、好ましくは0.2〜1.0重量%、より好ましくは0.3〜0.9重量%であり得る。本発明の生麺用日持ち向上剤により、例えば、生麺類の原料の全重量に対して0.004〜0.03重量%、好ましくは0.005〜0.025重量%、より好ましくは0.006〜0.015重量%で有機酸を添加し得る。生麺類の原料の全重量に対する有機酸の割合の合計が、0.004重量%未満の場合、生麺類の旨味が弱くなる傾向があり、0.03重量%を超える場合、均一な液剤が得られ難い傾向がある。
【0025】
本発明の生麺用日持ち向上剤は、各成分を全て含む製剤であってもよく、1つまたはそれ以上の成分を含む製剤の組合せであってもよい。日持ち向上剤の安定性の点から、本発明の生麺用日持ち向上剤は、エタノールを含む製剤と含まない製剤の組合せであるのが好ましい。
【0026】
エタノールを含む製剤と含まない製剤としては、例えば、エタノール40〜95重量%、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは60〜85重量%、乳酸0〜1重量%、好ましくは0.02〜0.5重量%、より好ましくは0.04〜0.1重量%および乳酸ナトリウム0〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%、より好ましくは0.1〜0.3重量%含有する液体製剤Aと、乳酸10〜30重量%、好ましくは12〜25重量%、より好ましくは15〜20重量%、乳酸ナトリウム5〜15重量%、好ましくは6〜13重量%、より好ましくは8〜12重量%、重合度3の糖アルコールを17〜33重量%および重合度4以上の糖アルコールを13〜29重量%含有する還元水飴20〜60重量%、好ましくは30〜50重量%、より好ましくは35〜45重量%、ならびにコハク酸、アジピン酸およびフィチン酸よりなる群から選ばれる1種以上の有機酸0.1〜2重量%、好ましくは0.5〜1.6重量%、より好ましくは0.8〜1.2重量%を含有する液体製剤Bが挙げられる。
【0027】
本発明の生麺用日持ち向上剤の生麺類への添加量は特に限定されず、生麺類の原料の全重量に対する日持ち向上剤の各成分の割合が、上記した各成分の割合の範囲内であるように添加するのが好ましい。本発明の生麺用日持ち向上剤は、生麺類の原料の全重量に対し、例えば1〜3.5重量%、好ましくは1.2〜3重量%、より好ましくは1.3〜2.5重量%の量で添加される。
【0028】
液体製剤AおよびBの生麺類への添加量は特に限定されず、生麺類の原料の全重量に対する液体製剤AおよびBの各成分の割合の合計が、上記した各成分の割合の範囲内であるように添加するのが好ましい。液体製剤AおよびBの割合としては、例えば、生麺類の原料の全重量に対し、液体製剤Aを0.5〜3重量%、液体製剤Bを0.5〜3重量%添加するのが好ましく、液体製剤Aを0.6〜2重量%、液体製剤Bを0.6〜2重量%添加するのがより好ましく、液体製剤Aを0.65〜1.5重量%、液体製剤Bを0.65〜1.5重量%添加するのがさらに好ましい。
【0029】
本発明の生麺用日持ち向上剤は、必要に応じて、グリシン、乳化剤、可溶性デンプン等の副成分を含んでもよい。これら副成分の割合は、生麺類の原料の全重量に対して、1重量%以下が好ましく、0.8重量%以下がより好ましく、0.2〜0.5重量%がさらに好ましい。
【0030】
本発明の生麺用日持ち向上剤の上記成分以外の残部は、水である。例えば、上記液体製剤Aを構成するエタノール、乳酸、乳酸ナトリウムおよび必要に応じて添加し得る副成分以外の残部は、水である。同様に液体製剤Bを構成する乳酸、乳酸ナトリウム、還元水飴中の固形分、有機酸(コハク酸、アジピン酸およびフィチン酸より選ばれる1種以上)および必要に応じて添加し得る副成分以外の残部は、水である。本発明の生麺用日持ち向上剤を調製する方法は、特に限定されず、例えば、各成分(水溶液形態のものを含む)を単純に混合する方法や各成分と水を単純に混合する方法等によって調製することができる。
【0031】
本発明の生麺用日持ち向上剤の生麺類への添加手段としては、生麺類の原材料への直接添加の他、成型後の生麺類への噴霧等による添加が挙げられる。各成分を生麺類へ噴霧する場合には、例えば、上記液体製剤Aおよび液体製剤Bを予め調製し、各液体製剤をそれぞれ生麺類の表面に噴霧してもよい。本発明の生麺用日持ち向上剤は、好ましくは、生麺類の原材料に直接添加される。
【0032】
また、本発明の生麺用日持ち向上剤は、生麺類のpHを5.0〜7.0に調整するのが好ましく、5.2〜6.8がより好ましく、5.5〜6.5がさらに好ましい。pHが5.5未満の場合、日持ち向上効果は増すが酸味や酸臭が強くなり、pHが6.5を超える場合、日持ち向上効果が低下する傾向がある。
【0033】
本発明の生麺用日持ち向上剤は、脱酸素剤と併用し得る。脱酸素剤は、鉄粉等を主剤とする無機系脱酸素剤、あるいはアスコルビン酸、グリセリン酸等を主剤とする有機系脱酸素剤のいずれでもよい。
【0034】
本発明の生麺用日持ち向上剤を脱酸素剤と併用する場合、本発明の生麺用日持ち向上剤を添加した生麺類および脱酸素剤を、ガスバリア性の包装袋または容器に密封するのが好ましい。ガスバリア性の包装袋または容器は、酸素透過度が20ml/m2・24hr・atm以下の包装材料で構成されたものであるのが好ましく、15/m2・24hr・atm以下の包装材料で構成されたものであるのがより好ましい。このような包装材料としては、アルミ蒸着(AlVM)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリ塩化ビニデンコートポリプロピレン(KOP)、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ナイロン(KON)等が例示される。
【0035】
本発明の生麺用日持ち向上剤を適用し得る生麺類は、小麦粉、そば粉、米粉等の穀物粉またはデンプンを主原料として製麺または成形したものであって、加熱されていないものであればよく、そば、うどん、平麺、素麺、米粉麺、冷麺、マカロニ類、スパゲッティ類、ソフトスパゲティ式麺、大麦麺、大麦そば、餃子の皮、わんたんの皮、焼売の皮、春巻きの皮等が例示されるがこれらに限定されず、特にそばが好ましい。本発明に関して、生麺類は、典型的には20〜55重量%、好ましくは22〜50重量%、より好ましくは25〜45重量%の水を原料に含む。本発明に関して、「生麺類の原料の全重量」は、水を含む生麺類の原料の全重量を意味する。
【0036】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0037】
実施例1〜2および比較例1〜2
以下の方法で生そばを製造し、保存性試験および官能性試験に供した。
生そばの製造
そば粉と小麦粉(強力粉)を125gずつ混合し、1.6mm角麺用キャップを取り付けた家庭用製麺機(ヌードルメーカーHR2365/01、フィリップス社製)に投入した。次に、冷水90g、食塩2gと共に、表1に示す実施例1または2の製剤5g(生そばの原料の全重量に対して1.46%)または比較例2の製剤2.5g(生そばの原料の全重量に対して0.73%)を投入した後、または、製剤を投入せずに(比較例1)、8分間ミキシングを行い、製麺機により押し出された生そばを得た。
表1
【表1】
単位:%(生そばの原料の全重量に対する重量%)
※1 還元水飴:上野製薬株式会社製MU−50(固形分70%、固形分の組成は単糖アルコール:7重量%以下、二糖アルコール:43〜53重量%、三糖アルコール:20〜30重量%、四糖以上の糖アルコール:16〜26重量%)
※2 脱酸素剤:上野製薬株式会社製オキシーターHKOM−50
【0038】
保存性試験
上記方法により得られた生そばを滅菌袋に5gずつ入れ(脱酸素剤を併用する場合は同時に入れる)、10℃の恒温器内で保存し、製造直後(初発)および7日間経過後にそれぞれサンプリングし、標準寒天培地を用いた平板混釈法により、生菌数を求めた。
また、上記の方法で得られた生そばを滅菌袋に入れて脱イオン水で5倍希釈し、ストマッカーにかけた後、pHメーター(pHメータD−51、株式会社堀場製作所製)により生そばのpHを測定した。
本発明の日持ち向上剤が適用された生そばは、他の試験区に比べ、細菌の増殖が抑制されていた。結果を表2に示す。
【0039】
表2
【表2】
【0040】
官能性試験
製造した生そばを用い、パネラー12名により、エタノール臭について、実施例1の方法で得られた生そばと比較例2の方法で得られた生そばを比較した。
本発明の日持ち向上剤が適用された生そばは、他の試験区に比べ、エタノール臭が抑制されていた。結果を表3に示す。
表3
【表3】
【0041】
実施例3および比較例3〜5
表4に示す液体製剤A〜Dを調製し、その合計量で比較例3は2.5g(生そばの原料の全重量に対して0.733%)、その他は6.25g(生そばの原料の全重量に対して1.833%)を添加した以外は、上記と同様にして生そばを製造し、保存性試験および官能評価試験に供した。
表4
【表4-1】
【表4-2】
単位:%(生そばの原料の全重量に対する重量%)
※3 ソルビトール:上野製薬株式会社製ソルビトール「ウエノ」(固形分70%、固形分の組成は単糖アルコール60重量%、その他糖類10重量%)
【0042】
保存性試験
本発明の日持ち向上剤が適用された生そばは、他の試験区に比べ、細菌の増殖が抑制されていた。結果を表5に示す。
表5
【表5】
【0043】
官能評価試験
本発明の日持ち向上剤が適用された生そばは、他の試験区に比べ、苦味およびエタノール臭が抑制されていた。結果を表6〜8に示す。
【0044】
表6
【表6】
【0045】
表7
【表7】
【0046】
表8
【表8】