(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585493
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】静電塗装機及びそのカートリッジ交換方法
(51)【国際特許分類】
B05B 5/16 20060101AFI20190919BHJP
B05D 1/04 20060101ALI20190919BHJP
B05B 5/04 20060101ALN20190919BHJP
【FI】
B05B5/16
B05D1/04 Z
!B05B5/04 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-245754(P2015-245754)
(22)【出願日】2015年12月17日
(65)【公開番号】特開2017-109174(P2017-109174A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100084984
【弁理士】
【氏名又は名称】澤野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100094123
【弁理士】
【氏名又は名称】川尻 明
(72)【発明者】
【氏名】石 川 勝 浩
【審査官】
高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−005518(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/096501(WO,A1)
【文献】
特開2006−347606(JP,A)
【文献】
米国特許第4151428(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B5/00−5/16
B05D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧印加経路を介してマイナス高電圧が印加される霧化機構が正面側に配され、ノズル挿込口が背面側に形成された塗装機本体と、前記ノズル挿込口に挿入されるカートリッジノズルが突出形成された塗料充填用のカートリッジと、そのカートリッジを覆うように着脱可能に取り付けられるカートリッジカバーとを備え、
前記カートリッジノズルを前記ノズル挿込口に挿入させた状態で塗装を行うクランプロック位置と、前記カートリッジを前記塗装機本体から後退させた状態でカートリッジを交換するクランプ解放位置との間でカートリッジを進退させるクランプ機構が設けられた静電塗装機において、
前記霧化機構に印加されていた高電圧が遮断された後、使用済のカートリッジを取り外す際に、少なくとも、カートリッジがクランプロック位置にある時点から、クランプ解放位置に後退してカートリッジカバーが外されるまでの間、前記高電圧印加経路を介して前記カートリッジノズルの電荷をアースに逃す導通端子が配されたことを特徴とする静電塗装機。
【請求項2】
前記カートリッジには、前記導通端子に接触する接点と前記カートリッジノズルとの間に導通路が形成された請求項1記載の静電塗装機。
【請求項3】
前記クランプ機構が、カートリッジに形成されたフランジと係合する進退可能なフッククランパを備え、前記導通路が前記フランジに形成され、前記導通端子が前記フッククランパに配されて成る請求項2記載の静電塗装機。
【請求項4】
前記導通端子がリード線を介して前記高電圧印加経路に接続されて成る請求項1乃至3いずれか記載の静電塗装機。
【請求項5】
前記導通端子がスプリングロッドを介して前記高電圧印加経路に接続されて成る請求項1乃至3いずれか記載の静電塗装機。
【請求項6】
高電圧印加経路を介してマイナス高電圧が印加される霧化機構が正面側に配され、ノズル挿込口が背面側に形成された塗装機本体と、前記ノズル挿込口に挿入されるカートリッジノズルが突出形成された塗料充填用のカートリッジと、そのカートリッジを覆うように着脱可能に取り付けられるカートリッジカバーとを備え、
前記カートリッジノズルを前記ノズル挿込口に挿入させた状態で塗装を行うクランプロック位置と、前記カートリッジを前記塗装機本体から後退させた状態でカートリッジを交換するクランプ解放位置との間でカートリッジを進退させるクランプ機構が設けられた静電塗装機のカートリッジ交換方法において、
前記霧化機構に印加されていた高電圧が遮断された後、使用済のカートリッジを取り外す際に、少なくとも、カートリッジがクランプロック位置にある時点から、クランプ解放位置に後退してカートリッジカバーが外されるまでの間、前記カートリッジノズルと前記高電圧印加経路との導通状態を維持することを特徴とする静電塗装機のカートリッジ交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料を充填したカートリッジを塗装機本体に着脱可能に装着して塗装を行う静電塗装機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水性塗料などの導電性塗料を用いて静電塗装する場合に、塗料供給系に絶縁対策を施す面倒を無くすため、カートリッジタイプの静電塗装機が用いられている。
図4及び
図5はこの種の静電塗装機51を示し、回転霧化頭2などの霧化機構を備えた塗装機本体Bと、これに装着される塗料充填用のカートリッジCとからなる。
【0003】
カートリッジCは、その内部に塗料が充填される塗料バッグ11が収容され、塗料バッグ11の外側に作動流体を供給することによりその流体圧力で塗料バッグ11内の塗料を先端側に設けたカートリッジノズル12から吐出できるようになっている。
【0004】
塗装機本体Bの正面側には、マイナス高電圧が印加される回転霧化頭2が配され、背面側にはカートリッジCを装着した際にそのカートリッジノズル12が挿入されるノズル挿込口3が形成されている。
また、塗装機本体Bには、カートリッジCを塗装機本体Bに対し進退させて脱着させるクランプ機構52が設けられている。
このクランプ機構52は、カートリッジCのカートリッジノズル12と、塗装機本体Bのノズル挿込口3を所定間隔離して対向させた状態でカートリッジCの交換を行うクランプ解放位置(
図5(a)(b)の位置)と、カートリッジCのカートリッジノズル12を塗装機本体Bのノズル挿込口3に挿入させた状態で塗装を行うクランプロック位置(
図4(a)(b)の位置)との間で、カートリッジCを進退させることができるようになっている。
【0005】
なお、カートリッジC内の塗料バッグ11が破損すると、作動流体が塗料経路に混入したり、塗料が作動流体経路に混入したりするため、カートリッジ交換時などに内部の様子が簡単に視認し得るように、カートリッジCは透明樹脂で成形されている。
また、塗料ミストがカートリッジCの表面に直接付着して視認性を低下させることがないように、カートリッジCには、カートリッジカバー13が着脱可能に装着されている。
【0006】
そして、塗装機本体に固定されたカートリッジCを覆うようにカートリッジカバー13を被せた後、回転霧化頭2にマイナス高電圧を印加し、高速回転させた状態で、カートリッジCに作動流体を供給すると、その流体圧で塗料バッグ11が圧し潰され、充填塗料がノズル12から吐出されて回転霧化頭2に供給されて遠心霧化され、塗装が行われる。
被塗物に付着せずに舞い上がった塗料ミストはカートリッジカバー13に付着し、カートリッジCには付着しない。
したがって、カートリッジCの交換時に、カートリッジカバー13を外せばカートリッジCの内部を視認することができる。
【0007】
しかしながら、カートリッジカバー13を装着した静電塗装機51においては、カートリッジCを交換するときに、カートリッジノズル12の先端に付着していた塗料が液ダレを起こし、塗装機本体Bの背面を汚すことがあるという問題が判明した。
カートリッジCの交換手順は、ユーザにより異なるが、一般には、塗装終了した静電塗装機51をカートリッジ交換装置(図示せず)にセットした状態で、クランプ機構52を伸長させてクランプロック位置(
図4参照)にあった使用済みカートリッジCをクランプ解放位置(
図5(a)参照)まで移動させてから、カートリッジカバー13を取り外し(
図5(b)参照)、その後、使用済みカートリッジCをクランプ機構52から外して、塗料充填済みカートリッジCを装着することが多く、この手順でカートリッジCを交換するときに、液ダレをおこし易いことがわかった。
【0008】
原因としては以下のことが考えられる。
まず、塗装時は、
図4(a)に示すように、塗装機本体Bが高電圧印加経路(図示せず)を介してマイナス高電圧が印加されていることから、これに装着されているカートリッジCもマイナスに帯電し、塗料バッグ11内の塗料もマイナスに帯電している。
この状態で、カートリッジカバー13に塗料ミスト付着すると、その塗料ミストはカートリッジCと反対極性のプラスに帯電する。
【0009】
塗装が終了して、高電圧の印加を停止し、使用済みカートリッジCを交換するために塗装機本体Bをカートリッジ交換装置にセットすると、この時点では、高電圧印加経路はアース電位に落ちているので、
図4(b)に示すように、カートリッジカバー13に付着しているプラス電荷とバランスするマイナス電荷が塗料バッグ11の内周面側に静電気として蓄積され、両者が電気的にバランスする。
【0010】
次いで、
図5(a)に示すように、クランプ機構52を伸長させて、カートリッジCをクランプ解放位置まで後退させた状態では、カートリッジカバー13とカートリッジC間の静電気の状態はバランスが取れたまま維持されている。
ここで、
図5(b)に示すように、カートリッジカバー13をカートリッジCから取り外すと、カートリッジCの周囲に存在したプラスの電荷が消失するので、塗料バッグ11内の電荷がマイナス過多となる。
塗料バッグ11内の塗料と導通しているカートリッジノズル12は通常は金属等の導体で形成されていることから、その余剰電荷が、カートリッジノズル12先端から塗装機本体Bに放電され、このとき、カートリッジノズル12の先端に付着していた塗料が放電電荷と一緒に塗装機本体Bに飛散し、液ダレを起こすものと考えられる。
【0011】
なお、カートリッジCを交換する際に、カートリッジCをクランプロック位置に維持したままカートリッジカバー13を外せば、塗料バッグ11内で過多となった電荷がアースに逃されるので、その後、カートリッジCをクランプ解放位置に移動させても、放電による液ダレを起こすことはない。
しかしながら、この種の塗装機51の構造上、カートリッジCをクランプ解放位置に移動させなければ塗装機本体B側を洗浄することができないため、カートリッジカバー13を外した後にカートリッジCをクランプ解放位置に移動させるようにすると、洗浄開始時間が遅れ、その分、カートリッジCの交換に要するタクトタイムが長くなるという問題を生ずる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで本発明は、カートリッジCをクランプ解放位置に移動させた状態で、塗料バッグ内の電荷がマイナス過多となっても、カートリッジのカートリッジノズルから塗装機本体に液ダレを生じない静電塗装機を提供することを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、高電圧印加経路を介してマイナス高電圧が印加される霧化機構が正面側に配され、ノズル挿込口が背面側に形成された塗装機本体と、前記ノズル挿込口に挿入されるカートリッジノズルが突出形成された塗料充填用のカートリッジと、そのカートリッジを覆うように着脱可能に取り付けられるカートリッジカバーとを備え、
前記カートリッジノズルを前記ノズル挿込口に挿入させた状態で塗装を行うクランプロック位置と、前記カートリッジを前記塗装機本体から後退させた状態でカートリッジを交換するクランプ解放位置との間でカートリッジを進退させるクランプ機構が設けられた静電塗装機において、
前記霧化機構に印加されていた高電圧が遮断された後、使用済のカートリッジを取り外す際に、少なくとも、カートリッジがクランプロック位置にある時点から、クランプ解放位置に後退してカートリッジカバーが外されるまでの間、前記高電圧印加経路を介して前記カートリッジノズルの電荷をアースに逃す導通端子が配されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る静電塗装機によれば、塗装が終了して、カートリッジカバーに付着した塗料ミストにプラス静電気が蓄積され、カートリッジにマイナス静電気が蓄積されている場合に、使用済のカートリッジがクランプロック位置にある時点から、クランプ解放位置に後退して、さらに、カートリッジからカートリッジカバーが外されるまでの間、カートリッジノズルが導通端子を介して高電圧印加経路に電気的に接続され、導通状態に維持される。
【0015】
高電圧印加経路は高電圧停止時には高電圧発生器を介してアース電位に落とされ、カートリッジカバーを外すことにより、静電気のバランスが崩れて、カートリッジがマイナス過多の状態になったとしても、そのマイナス静電気が導通端子を介して高電圧印加経路を通りアース電位へ逃されるので、カートリッジノズルと塗装機本体との間で放電を生じることがなく、したがって、塗料の液ダレを生ずることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る静電塗装機の要部を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本例は、カートリッジカバーを外してカートリッジを交換する場合でも、カートリッジのカートリッジノズルから塗装機本体に液ダレを生じさせないようにするという目的を達成するために、高電圧印加経路を介してマイナス高電圧が印加される霧化機構が正面側に配され、ノズル挿込口が背面側に形成された塗装機本体と、前記ノズル挿込口に挿入されるカートリッジノズルが突出形成された塗料充填用のカートリッジと、そのカートリッジを覆うように着脱可能に取り付けられるカートリッジカバーとを備え、前記カートリッジノズルを前記ノズル挿込口に挿入させた状態で塗装を行うクランプロック位置と、前記カートリッジを前記塗装機本体から後退させた状態でカートリッジを交換するクランプ解放位置との間でカートリッジを進退させるクランプ機構が設けられた静電塗装機において、前記霧化機構に印加されていた高電圧が遮断された後、使用済のカートリッジを取り外す際に、少なくとも、カートリッジがクランプロック位置にある時点から、クランプ解放位置に後退してカートリッジカバーが外されるまでの間、前記高電圧印加経路を介して前記カートリッジノズルの電荷をアースに逃す導通端子を配した。
【実施例1】
【0018】
図1は、本例の静電塗装機の要部を示す説明図である。なお、カートリッジカバーは省略されており、
図4及び5と共通する部分については同一符号を付して詳細説明を省略する。
【0019】
静電塗装機1は、正面に回転霧化頭2などの霧化機構を備えた塗装機本体Bと、その背面に装着される塗料充填用のカートリッジCとからなる。
カートリッジCは、その内部に塗料が充填される塗料バッグ11が収容されて、塗料バッグ11内の塗料室と、塗料バッグ11外の作動流体室に仕切られ、作動流体室に作動流体を供給することによりその流体圧力で塗料室内の塗料を先端側に設けた金属製のカートリッジノズル12から吐出できるようになっている。
また、カートリッジノズル12を挟んでその左右両側には、後述する塗装機本体Bのクランプ機構5のフッククランパ6に係合されるフランジ14が形成されている。
【0020】
塗装機本体Bには、高電圧発生器(図示せず)が内蔵され、高電圧発生時には高電圧印加経路(図示せず)を介して回転霧化頭2などにマイナスの高電圧が印加され、高電圧停止時には高電圧印加経路(図示せず)を介して回転霧化頭2などをアース電位に落とすことができるようになっている。
塗装機本体Bに配された金属部品(導電部材)は、高電圧停止時にアース電位となるように、全機構電圧印加経路に接続されている。
また、塗装機本体Bの背面側にはカートリッジCのカートリッジノズル12が挿入されるノズル挿込口3が形成されており、当該挿入口3には、カートリッジノズル12が挿入されたときに、ノズル先端に形成されたボールバルブ(図示せず)を開成させるニードルロッド4が配されている。
また、塗装機本体Bには、カートリッジCを塗装機本体Bに対し進退させて脱着させるクランプ機構5が設けられている。
【0021】
このクランプ機構5は、カートリッジCを
図1の紙面に直交する方向にスライドさせることにより、カートリッジCのフランジ14と係脱される一対のフッククランパ6を備えている。
フッククランパ6は、シリンダ16等の直動機構により往復移動可能に配され、本例の場合、カートリッジCのカートリッジノズル12と、塗装機本体Bのノズル挿込口3を所定間隔離して対向させた状態(実線図示)でカートリッジCの交換を行うクランプ解放位置と、カートリッジCのカートリッジノズル12を塗装機本体Bのノズル挿込口3に挿入させた状態(鎖線図示)で塗装を行うクランプロック位置との間で、カートリッジCを進退させることができるようになっている。
【0022】
また、フッククランパ6には、カートリッジCを装着した際にフランジ14と接する内側の面に、導通端子7が突出形成されている。
この導通端子7は、フランジ14に確実に接するようにスプリング8により突出方向に付勢されている。
また、導通端子7は、リード線9を介して高電圧印加経路に接続された塗装機本体Bの導電部材10に接続されている。
【0023】
一方、フランジ14には、導通端子7の接点と、カートリッジノズル12とを電気的に接続する導通路15が設けられている。
これにより、カートリッジCが塗装機本体Bに装着されると、そのフランジ14がフッククランパ6に係合するので、塗装機本体Bに形成された導通端子7がカートリッジCに設けられた導通路15を介してカートリッジノズル12に導通される。
【0024】
したがって、使用済のカートリッジCを取り外す際に、少なくとも、使用済のカートリッジCがクランプロック位置にある時点から、クランプ解放位置に後退して、さらに、カートリッジCからカートリッジカバー13が外されるまでの間、導通端子7は、導通路15を介してカートリッジCのカートリッジノズル12に電気的に導通されていることになる。
【0025】
以上が本発明の一例構成であって、次にその作用について説明する。
まず、塗料充填済のカートリッジCのフランジ14をクランプ解放位置にあるフッククランパ6に係合させると、カートリッジCの導通路15がフッククランパ6に形成された導通端子7に接触する。
次いで、クランプ機構5によりフッククランパ6をクランプロック位置まで移動させると、カートリッジCのカートリッジノズル12が塗装機本体Bのノズル挿込口3に挿入された状態にセットされ、カートリッジノズル12にニードルロッド4が挿通され、先端のボールバルブが開成される。
カートリッジカバー13(
図4、
図5参照)は、予めカートリッジCに取り付けておいても、カートリッジCを塗装機本体Bに装着後に取り付けてもよいが、いずれにしろカートリッジCにカートリッジカバー13を取り付けた状態で塗装作業を行う。
【0026】
塗装作業においては、マイナス高電圧を印加した回転霧化頭2を回転駆動し、カートリッジCの作動流体室に作動流体を供給すると、その流体圧力により塗料バッグ11が圧し潰され、塗料がカートリッジノズル12から吐出されて回転霧化頭2に供給され、塗料が遠心霧化されて塗装される。
このとき、回転霧化頭2に印加されたマイナス高電圧が、カートリッジC内の塗料にも印加され、カートリッジC全体がマイナスの静電気を帯びるのに対し、カートリッジカバー13の表面に付着した塗料ミストがプラスの静電気を帯び、両者が電気的にバランスする。
【0027】
塗装が終了すると、使用済みカートリッジCを取外し、塗装機本体Bの残存塗料を洗浄する色替洗浄を行った後、塗料充填済のカートリッジCに交換する交換作業を行う。
静電塗装機1をカートリッジ交換装置(図示せず)にセットした状態で、フッククランパ6を伸長させ、クランプロック位置にあるカートリッジCをクランプ解放位置まで移動させると、カートリッジノズル12がノズル挿通口3から抜脱される。
【0028】
次いで、カートリッジカバー13を取り外すと、その表面に付着していたプラスに帯電していた塗料ミストがカートリッジCから離れるので、カートリッジCの周囲に存在したプラス静電気が消失してカートリッジCの静電気のバランスが崩れ、マイナス電荷が過多となる。
このとき、カートリッジノズル12は、導通路15−導通端子7を介して高電圧印加経路に接続されており、静電塗装機1の高電圧印加経路は高電圧発生器を介してアース電位に落とされているので、カートリッジノズル12もアース電位に維持される。
したがって、塗料バッグ11内に生じたマイナスの余剰電荷は、カートリッジノズル12を介してアースに逃されることとなり、カートリッジノズル12の先端からノズル挿込口3へ放電を起こすことがなく、放電に伴う塗料の液ダレを生じることも防止される。
【0029】
その後、使用済みカートリッジCを
図1の紙面垂直方向にスライドさせてフッククランパ6とフランジ14の係合を解き、カートリッジCが外された状態で、塗装機本体Bの残存塗料を洗浄除去し、次色塗料が充填された塗料充填済みのカートリッジCを装着して、次の被塗物に対して塗装を行う。
【0030】
このように、使用済のカートリッジCを取り外す際に、少なくとも、カートリッジCがクランプロック位置にある時点から、クランプ解放位置に後退し、カートリッジカバー13が外されるまでの間、カートリッジノズル12が塗装機本体B側に設けた導通端子7に電気的に導通されているので、カートリッジカバー13を取り外すことによりカートリッジCがマイナス過多となっても余剰電子を逃がすことができ、カートリッジノズル12と塗装機本体Bとの間で放電を起こすことがなく、その結果、カートリッジノズル12からの液ダレが防止される。
【実施例2】
【0031】
図2は、他の実施例の要部を示す説明図である。本例においても、カートリッジカバーは省略されており、
図1、
図4、
図5と共通する部分は同一符号を付して詳細説明を省略する。
本例の静電塗装機21も往復移動されるフッククランパ6に導通端子7が設けられており、その導通端子7が塗装機本体Bに設けられた導電性のスプリングロッド22を介して高電圧印加経路(図示せず)に接続されている点を除き、実施例1と同様である。
【0032】
導通端子7は、フッククランパ6の背面側に金属プレートで形成された接点23と接するスプリングロッド22を備え、スプリング24により塗装機本体Bから突出する方向に付勢されると共に、塗装機本体Bに内蔵された高電圧発生器(図示せず)で発生された高電圧を印加する高電圧供給経路に接続されている。
これにより、フッククランパ6がクランプロック位置にあるときは、スプリングロッド22が塗装機本体B内に収縮した状態で当該ロッド22の先端が接点23に接触し、フッククランパ6がクランプ解放位置にあるときは、スプリングロッド22が塗装機本体Bから伸長した状態で当該ロッド22の先端が接点23に接触するようになっている。
この間、高電圧発生器からの高電圧の出力が停止されていれば、カートリッジノズル12は、導通路15−導通端子7−スプリングロッド22を介して高電圧供給経路に接続され、高電圧発生器を介してアース電位に落とされている。
したがって、カートリッジカバー13を取り外すことにより(
図4、
図5参照)、カートリッジCがマイナス過多となっても余剰電子を逃がすことができ、カートリッジノズル12と塗装機本体Bとの間で放電を起こすことがなく、その結果、カートリッジノズル12からの液ダレが防止される。
【実施例3】
【0033】
図3は、さらに他の実施例を示す説明図である。
本例の静電塗装機31は、塗装機本体Bの背面側にカートリッジCが着脱可能に装着され、カートリッジCの外側にカートリッジカバー32が着脱可能に装着されている。
塗装機本体Bは、内蔵されたエアモータ33の中空回転軸34の先端に回転霧化頭35が取り付けられており、塗装機本体Bの背面に形成されたノズル挿込口36が中空回転軸34と同軸的に形成され、塗装機本体Bに内蔵された高電圧発生器(図示せず)から高電圧印加経路(図示せず)を介して回転霧化頭35に高電圧が印加され、高電圧停止時は高電圧印加経路を介してアース電位に落とされるようになっている。
【0034】
カートリッジCは、その内部に塗料が充填される塗料バッグ37が収容されて、塗料バッグ37内の塗料室と、塗料バッグ37外の作動流体室に仕切られ、作動流体室に作動流体を供給することによりその流体圧力で塗料室内の塗料を先端側に設けた金属製のカートリッジノズル38から吐出できるようになっている。
カートリッジノズル38は、カートリッジCを塗装機本体Bに装着した状態で、ノズル挿込口36から中空回転軸34を通り回転霧化頭35内に達する長さに形成されている。
【0035】
塗装機本体B及びカートリッジCには、クランプ機構として磁力を利用したマグネチッククランプ(図示せず)が配され、カートリッジノズル38をノズル挿込口36に挿入して塗装機本体Bに圧し当てたクランプロック位置で、互いに磁着された状態に装着されるようになっている。
【0036】
カートリッジCを装着すると、
図3(a)に示すように、塗装機本体B及びカートリッジCの作動流体供給系39が接続されるので、この状態で、回転霧化頭35をエアモータ33で高速回転駆動させ、高電圧発生器(図示せず)から回転霧化頭35に高電圧を印加させながら、作動流体供給系39を介してカートリッジCに作動流体を供給すると、その液圧により塗料バッグ37内の塗料がカートリッジノズル38を介して回転霧化頭35に供給されて霧化される。
【0037】
また、塗装機本体Bには、カートリッジCを取り外すための空気圧シリンダ40が配されており、カートリッジCには、シリンダ40のピストンロッド41が挿入される嵌合孔42が形成されている。
空気圧シリンダ40によりピストンロッド41を伸長させると、磁着されたカートリッジCを強制的にクランプロック位置からクランプ解放位置まで後退させて、磁力によるクランプ状態を解除することができる。
【0038】
クランプロック位置では、
図3(a)に示すように、カートリッジノズル38の先端が回転霧化頭35内に達しており、クランプ解放位置では、
図3(b)に示すように、カートリッジノズル38の先端が回転霧化頭35の背面側に退出されている。
したがって、この状態で、カートリッジカバー32を外すと、塗料バッグ37内の電荷のバランスが崩れ、カートリッジノズル38の先端から回転霧化頭35の背面に放電を生じ、ノズル38の先端に付着していた塗料が回転霧化頭35の背面に付着する液ダレ現象を起こすおそれがある。
【0039】
そこで、この電荷を逃がすため、カートリッジCの正面側には、カートリッジノズル38に導通された導通路43が配され、塗装機本体Bの背面には、カートリッジCを装着した際に前記導通路43と接する導通端子44が形成されている。
この導通端子44は、導通路43に確実に接するようにスプリング45により突出方向に付勢されている。
【0040】
また、導通端子44は、リード線46を介して高電圧印加経路(図示せず)に接続された塗装機本体Bの導電部材(本例ではエアモータ33の金属部品)に接続されている。
塗装機本体B内の金属部品は、高電圧を停止した時点でアース電位に落とすことができるように高電圧印加経路に接続されているので、導通端子44も塗装機本体B内の金属部品に接続することにより高電圧印加経路に接続することができる。
【0041】
塗装が終了して使用済のカートリッジCを取り外す際は、高電圧発生器から出力されていた高電圧を停止させ、静電塗装機31を所定のカートリッジ交換位置まで移送し、
図3(b)に示すように、空気圧シリンダ40を伸長させると、カートリッジCがクランプロック位置からクランプ解放位置に後退すると同時に、導通端子44がスプリング45の弾発力により導通路43との接触状態と維持したまま伸長される。
【0042】
このとき、カートリッジノズル38は、導通路43−導通端子44を介して高電圧印加経路に接続されており、静電塗装機31の高電圧印加経路は高電圧発生器を介してアース電位に落とされているので、カートリッジノズル38もアース電位に維持される。
【0043】
この状態で、ロボットアームなどを用いてカートリッジカバー32を外すことにより、塗料バッグ37内にマイナスの余剰電荷を生じることがあっても、カートリッジノズル38を介してアースに逃されることとなり、カートリッジノズル38の先端から回転霧化頭35の背面側へ放電を生じることがなく、したがって、放電に伴う塗料の液ダレを生じることも防止される。
【0044】
その後、ロボットアームなどを用いてカートリッジCをそのまま上方へ抜き取り、塗料充填済みの他のカートリッジCを装着して塗装を行う。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、塗料を充填したカートリッジを塗装機本体に着脱可能に装着して塗装を行う静電塗装機の用途に適用し得る。
【符号の説明】
【0046】
1 静電塗装機
B 塗装機本体
C カートリッジ
3 ノズル挿込口
5 クランプ機構
6 フッククランパ
7 導通端子
12 カートリッジノズル
13 カートリッジカバー
15 導通路