(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施形態としての潤滑構造について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0019】
以下の説明において、下方は重力の方向であり、上方は重力の方向と逆の方向である。
【0020】
[1.第一実施形態]
[1−1.構成]
(変速機)
まず、
図3を参照して、本実施形態に係る潤滑構造が適用された変速機1の構成を説明する。
【0021】
この変速機1は、車両に搭載され、エンジン2の動力を図示しない駆動輪に伝達するものである。以下、変速機1を搭載した車両が水平な路面上にあるものとして説明する。
【0022】
図3に示すように、変速機1は、トルクコンバータ10,前後進切替機構20及び変速機構30を有する。変速機1の出力回転は、減速機構40及び差動機構50を経て図示しない駆動輪に伝達される。
【0023】
トルクコンバータ10は、トルク増大機能を持つ発進要素であり、エンジン2の出力軸2aの回転を、流体を介してタービン軸11に出力する。また、トルクコンバータ10は、図示しないロックアップ機構を有し、トルクを増大させる必要が無い場合には、エンジン2の出力軸2aの回転を、流体を介さずにそのままタービン軸11に出力する。
【0024】
前後進切替機構20は、タービン軸11から変速機構30の入力軸31に入力される回転の方向を、正転方向と逆転方向とに切り替えるものであり、これによって車両の進行方向が前進方向と後進方向とに切り替えられる。
【0025】
変速機構30は、入力軸31と、入力軸31と平行な出力軸32とを有し、入力軸31の回転数と出力軸32の回転数との比である変速比を変化させるものである。本実施形態では、変速比を無段階に変化させる無段変速機構30を例示する。
【0026】
無段変速機構30は、入力軸(プライマリ軸)31上に設けられたプライマリ(駆動側)プーリ33と、出力軸(セカンダリ軸)32上に設けられたセカンダリ(従動側)プーリ34と、これらのプーリ33,34に巻回されて動力を伝達するベルト又はチェーン35(以下、略してベルト35という)とを有する。
【0027】
プライマリプーリ33は、入力軸31に固定された固定シーブ33aと、入力軸31の軸方向にスライド可能に設けられた可動シーブ33bとで構成され、これらのシーブ33a,33b間がV字状の溝をなす。
【0028】
同様に、セカンダリプーリ34は、出力軸32に固定された固定シーブ34aと、出力軸32の軸方向にスライド可能に設けられた可動シーブ34bとで構成され、これらのシーブ34a,34b間がV字状の溝をなす。
【0029】
ベルト35は、各プーリ33,34のV字状の溝に掛け渡されている。ベルト35の各プーリ33,34に対する巻付き半径が、油圧により可動プーリ33b,34bのスライド位置が制御されることで変更され、これにより変速比が変化する。
【0030】
減速機構40は、出力軸32の回転を減速して差動機構50へ伝達するものであり、二組のギヤ対40A,40Bを有する。
【0031】
第一のギヤ対40Aは、出力軸32上に設けられた第一ギヤ41と、出力軸32と平行なカウンタ軸(回転軸)44上に設けられた第二ギヤ42とが噛合して構成される。
【0032】
第二のギヤ対40Bは、カウンタ軸44上に設けられた第三ギヤ43と、差動機構50のファイナルギヤ51とが噛合して構成される。
【0033】
第一のギヤ対40Aは、出力軸32の回転を減速してカウンタ軸44に伝達する。また、第二のギヤ対40Bは、カウンタ軸44の回転を減速して差動機構50へ伝達する。
【0034】
差動機構50は、ファイナルギヤ51に伝達された回転を、駆動軸52,52を介して車両左右の駆動輪に伝達する。
【0035】
本実施形態の入力軸31,出力軸32及びカウンタ軸44は、それぞれの軸方向が水平又は略水平となるように配置されている。なお、カウンタ軸44の軸方向は水平又は略水平でなくてもよい。カウンタ軸44は、少なくとも、その軸方向が鉛直方向と交差する方向に配置されていればよい。
【0036】
変速機1は、ケース60に収容されている。本実施形態では、ケース60がメインケース60Aとサブケース60Bとで構成される場合を例示する。なお、ケース60の構成はこれに限定されない。
【0037】
メインケース60Aは一側面が開放された箱部材であり、サイドケース60Bはメインケース60Aの開放された一側面を覆う蓋部材である。メインケース60Aとサイドケース60Bとは、ボルト及びナット等で互いに締結固定されている。
【0038】
無段変速機構30の入力軸31及び出力軸32は、それぞれの軸方向の一端側(
図3中の左側)をサイドケース60Bによって支持され、他端側(
図3中の右側)をメインケース60Aによって支持されている。また、カウンタ軸44は、軸方向の両側をメインケース60Aによって支持されている。
【0039】
図1に示すように、カウンタ軸44には、カウンタ軸44の軸方向の一端側(
図1中の左側)を回転可能に支持する第一ベアリング3と、カウンタ軸44の軸方向の他端側(
図1中の右側)を回転可能に支持する第二ベアリング4とが外嵌されている。
【0040】
以下、カウンタ軸44の一端側の端面(一方の軸端)を出口側端部44aといい、カウンタ軸44の他端側の端面(他方の軸端)を入口側端部44bという。
【0041】
これらのベアリング3,4は、カウンタ軸44とともにケース60に収容されている。本実施形態では、各ベアリング3,4が円錐ころ軸受である場合を例示する。
【0042】
第一ベアリング3は、内輪3A及び外輪3Bと、これらの間の隙間3E(以下、ベアリング隙間3Eという)に配置された複数の転動体3Cと、各転動体3Cを回転自在に保持する保持器3Dとを有する。
【0043】
同様に、第二ベアリング4は、内輪4A及び外輪4Bと、これらの間に配置された複数の転動体4Cと、各転動体4Cを回転自在に保持する保持器4Dとを有する。
【0044】
各内輪3A,4Aは、カウンタ軸44に外嵌され、カウンタ軸44と一体的に回転する。一方、各外輪3B,4Bは、メインケース60Aに固定されている。なお、第二ベアリング4の内輪4Aは、カウンタ軸44の入口側端部44bに固定されたナット45と第二ギヤ42とに挟持されている。
【0045】
本実施形態では、各ベアリング3,4が円錐ころ軸受であるため、各転動体3C,4Cは円錐台形状であって、各内輪3A,4Aの外周面及び各外輪3B,4Bの内周面は円錐面形状である。これらの内輪3A,4A及び外輪3B,4Bの各円錐面形状は、軸端側に向かって縮径するように設けられている。
【0046】
メインケース60Aは、カウンタ軸44の出口側端部44aに対向する出口側壁部(壁部)61と、この出口側壁部61からカウンタ軸44側に突設されて第一ベアリング3外輪3Bを保持する出口側保持部62とを有する。本実施形態の出口側壁部61は、カウンタ軸44の軸方向と直交する方向に立設されている。
【0047】
出口側保持部62は、第一ベアリング3の外輪3Bの外周面に当接する内周面である第一保持面62aと、外輪3Bの軸端側の端面に後述の遮蔽部材6を介して当接する平面状の第二保持面62bと、第二保持面62bと出口側壁部61との間に介在する内周面62cとを有する。
【0048】
出口側保持部62の第一保持面62a及び内周面62cは、円筒面形状であり、カウンタ軸44と略平行に延在している。出口側保持部62の内周面62cの直径は、第一ベアリング3の外輪3Bの最小内径と略等しくされている。
【0049】
また、メインケース60Aは、カウンタ軸44の入口側端部44bに対向する入口側壁部63と、この入口側壁部63からカウンタ軸44側に突設されて第二ベアリング4の外輪4Bを保持する入口側保持部64とを有する。
【0050】
入口側保持部64は、上述の出口側保持部62と同様に、第二ベアリング4の外輪4Bの外周面に当接する内周面である第一保持面64aと、外輪4Bの軸端側の端面に当接する平面状の第二保持面64bと、第二保持面64bと入口側壁部63との間に介在する内周面64cとを有する。
【0051】
入口側保持部64の第一保持面64a及び内周面64cは、円筒面形状であり、カウンタ軸44と略平行に延在している。入口側保持部64の内周面64cの直径は、第二ベアリング4の外輪4Bの最小内径と略等しくされている。
【0052】
以下、出口側保持部62の内周面62cで囲まれる空間S1を出口側空間(供給用空間)S1といい、入口側保持部64の内周面64cで囲まれる空間S2を入口側空間S2という。出口側空間S1は、出口側壁部61と、カウンタ軸44の出口側端部44a及び第一ベアリング3との間の空間でもあり、入口側空間S2は、入口側壁部63と、カウンタ軸44の入口側端部44b及び第二ベアリング4との間の空間でもある。
【0053】
(潤滑構造)
本実施形態に係る潤滑構造は、入口側壁部63内に設けられたケース内油路65を通じて第二ベアリング4に潤滑油を供給するとともに、このケース内油路65とカウンタ軸44内に設けられた軸内油路5とを通じて第一ベアリング3に潤滑油を供給するものである。
【0054】
ケース内油路65は、主流部65cと、この主流部65cから分岐した二つの供給部65a,65bとを有する。第一供給部65aは軸内油路5に潤滑油を供給するノズルであり、第二供給部65bは第二ベアリング4に潤滑油を供給するノズルである。
【0055】
本実施形態の第一供給部65aは、カウンタ軸44の軸線の延長線上(カウンタ軸44と同軸上)に延設され、軸内油路5の入口5bに対向して開口している。また、第二供給部65bは、カウンタ軸44よりも上方に設けられ、入口側空間S2の第二ベアリング4に対向する位置に開口している。
【0056】
ケース内油路65の主流部65cには、エンジン2で駆動される図示しないオイルポンプが接続され、このオイルポンプから潤滑油が供給される。ケース内油路65における潤滑油の流量(オイルポンプの単位時間当りの吐出量)は、エンジン2の回転数が所定回転数未満であればエンジン2の回転数に比例して増減し、エンジン2の回転数が所定回転数以上であれば略一定の流量となる。
【0057】
軸内油路5は、カウンタ軸44の軸方向(
図1中の一点鎖線参照)に沿って延設された貫通穴であり、入口側空間S2と出口側空間S1とに開口している。すなわち、軸内油路5の入口5bはカウンタ軸44の入口側端部44bに開口し、軸内油路5の出口5aはカウンタ軸44の出口側端部44aに開口している。
【0058】
軸内油路5は、第一供給部65aから入口5bに潤滑油を供給され、出口5aから潤滑油を噴出する。軸内油路5の出口5aから噴出された潤滑油は、出口側空間S1を介してベアリング隙間3Eに供給される。
【0059】
本実施形態では、軸内油路5の入口5bと出口5aとが何れも円形状であって、それらの中心が何れもカウンタ軸44の軸心C上に位置している場合を例示する。なお、軸内油路5は、少なくともカウンタ軸44の軸方向に沿って延びていればよく、その入口5b及び出口5aの各形状が円形状でなくてもよいし、カウンタ軸44の軸心Cに対して偏心して設けられていてもよい。
【0060】
本実施形態に係る潤滑構造は、軸内油路5の出口5aから噴出されて飛散する潤滑油の第一ベアリング3への供給量を制限するための構成として、軸内油路5の出口5aと第一ベアリング3との間の出口側空間S1に、ベアリング隙間3Eを覆う(遮蔽する)ように設けられた遮蔽部材6を有する。
【0061】
本実施形態の遮蔽部材6は、薄くて平たい円板形状であって、その中心Oがカウンタ軸44の軸心C上に位置している。本実施形態の遮蔽部材6は、多量の潤滑油がベアリング隙間3Eに浸入することを制限する機能に加えて、第一ベアリング3に予圧を与える予圧調整用シムとしての機能も持つ。遮蔽部材6は、メインケース60Aの出口側保持部62の第二保持面62bと、第一ベアリング3の外輪3Bの軸端側の端面との間に挟持されている。
【0062】
図1及び
図2に示すように、遮蔽部材6は、軸内油路5から出口側空間S1へと潤滑油を流出させるための第一連通穴7と、出口側空間S1からベアリング隙間3Eへと潤滑油を導くための第二連通穴8とを有する。これらの第一連通穴7及び第二連通穴8は何れも、遮蔽部材6を貫通する貫通穴である。
【0063】
第一連通穴7は、軸内油路5の出口5a及び出口側空間S1を連通する。本実施形態の第一連通穴7は、丸穴であって、軸内油路5の出口5aと同心,同径である。すなわち、本実施形態の第一連通穴7は、軸内油路5の出口5a及び出口側空間S1を、軸内油路5の出口5aの全部分において連通している。
【0064】
なお、第一連通穴7は、適度な潤滑油の流出量を確保可能な流通面積を備えていれば良いので、その穴径を軸内油路5の出口5aの直径と同等とすることは必須ではなく、形状も円形状以外(例えば楕円形状)であっても良い。また、その位置も遮蔽部材の中心Oを中心とする必要はなく、多少偏心していても何ら問題はない。つまり、第一連通穴7は、軸内油路5の出口5a及び出口側空間S1を、軸内油路5の出口5aの少なくとも一部分において連通していればよい。
【0065】
ただし、軸内油路5の出口5aから潤滑油を流出させるという観点からは、カウンタ軸44の軸線方向視において(遮蔽部材6をカウンタ軸44の軸方向から視たときに)、第一連通穴7を形成する縁部7aが軸内油路5の出口5aを包含するように、第一連通穴7が設けられることが好ましい。
【0066】
また、ベアリング隙間3Eを遮蔽するという観点からは、カウンタ軸44の軸線方向視において、上述の縁部7aがカウンタ軸44の外周面に包含されるように、第一連通穴7が設けられることが好ましい。
【0067】
本実施形態では、第一連通穴7が軸内油路5の出口5aと同心,同径であることから、遮蔽部材6は軸内油路5の出口5aの周囲の出口側端部44aを覆っている。遮蔽部材6は、第一ベアリング3の内輪3Aと、軸内油路5の出口5aの周囲の出口側端部44aとに対して、カウンタ軸44の軸方向にクリアランス(微小な隙間)を存して設けられている。
【0068】
一方、第二連通穴8は、出口側空間S1及びベアリング隙間3Eを、ベアリング隙間3Eの一部分において連通する。本実施形態の第二連通穴8は、出口側空間S1及びベアリング隙間3Eを、ベアリング隙間3Eの下部において連通するように設けられている。
【0069】
遮蔽部材6は、上述の第二開口8を有することにより、ベアリング隙間3Eのうちの大部分を遮蔽しつつ、第二連通穴8が存在する一部分ではベアリング隙間3Eを遮蔽しない。すなわち、遮蔽部材6は、ベアリング隙間3Eに浸入しようとする潤滑油の大部分を遮蔽するとともに、一部の潤滑油は第二連通穴8からベアリング隙間3Eへと浸入(流入)させる。
【0070】
本実施形態の第二連通穴8は、遮蔽部材6の中心Oを通る水平線HLよりも下側に設けられている。より具体的には、第二連通穴8は、第一連通穴7の下側に設けられている。なお、本実施形態の遮蔽部材6は、その中心Oがカウンタ軸44の軸心C上に位置していることから、遮蔽部材6の中心Oを通る水平線HL及び鉛直線VLは何れも、カウンタ軸44の軸心Cを通る線である。
【0071】
本実施形態では、第二連通穴8が水平方向に長い長穴であって、その開口幅(水平方向の長さ寸法)が第一連通穴7の穴径よりも大きくされ、遮蔽部材6の中心Oを通る鉛直線VLについて対称な形状とされている。ただし、第二連通穴8の形状及び位置はこれに限定されない。
【0072】
なお、本実施形態のように円板形状の遮蔽部材6において、第一連通穴7及び第二連通穴8が何れも上述の鉛直線VLについて対称な形状とされていれば、遮蔽部材6の両面が同一形状となるため、遮蔽部材6の扱いが容易になる。
【0073】
[1−2.作用]
上述の潤滑構造では、
図1及び
図2に太矢印で示すように、オイルポンプからケース内油路65に供給された潤滑油が、第一供給部65aから軸内油路5に供給されるとともに、第二供給部65bから入口側空間S2に供給される。
【0074】
軸内油路5に供給された潤滑油は、軸内油路5を入口5b側から出口5a側に向かって流れ、軸内油路5の出口5aから遮蔽部材6の第一連通穴7を通じて出口側空間S1に流出する。このとき潤滑油は、カウンタ軸44の回転によって生じる遠心力を受けて放射状に(カウンタ軸44の径方向外側に向かって)飛散する。
【0075】
軸内油路5の出口5aから出口側空間S1に飛散した潤滑油は、メインケース60Aの出口側壁部61及び出口側保持部62の内周面62cや遮蔽部材6にぶつかると、重力の作用によって下方に落下する。潤滑油は、このように遮蔽部材6にぶつかることによって、ベアリング隙間3Eへの浸入が制限される。
【0076】
また、上述のように落下した潤滑油は、出口側空間S1の下部に一時的に貯留されて所謂「油溜まり」を形成する。潤滑油は、この油溜まりから第二連通穴8を通過し、ベアリング隙間3Eへ流入する。そして、第一ベアリング3の複数の転動体3Cの間を通って出口側空間S1の外部へと徐々に流出する。この過程で、潤滑油の一部が各転動体3Cの表面に供給される。これにより、第一ベアリング3が潤滑される。
【0077】
なお、潤滑油は、遮蔽部材6とカウンタ軸44の出口側端部44aとの間のクリアランスからもベアリング隙間3Eへ浸入するが、このクリアランスを通過する潤滑油の量は僅かである。このため、ベアリング隙間3Eには主に第一連通穴7,出口側空間S1及び第二連通穴8を通過するルートで潤滑油が供給される。
【0078】
一方、第二供給部65bから入口側空間S2に供給された潤滑油は、重力の作用によって下方へ流れ、入口側空間S2の下部に油溜まりを形成する。潤滑油は、この油溜まりから第二ベアリング4の複数の転動体4Cの間を通って入口側空間S2の外部へと徐々に流出する。この過程で、潤滑油の一部が各転動体4Cの表面に供給される。これにより、第二ベアリング4が潤滑される。
【0079】
[1−3.効果]
上述の潤滑構造によれば、軸内油路5の出口5aから噴出された潤滑油は、遮蔽部材6によりベアリング隙間3Eへの浸入が制限され、遮蔽部材6の第二連通穴8を通じて出口側空間S1からベアリング隙間3Eへ供給される。
【0080】
このため、軸内油路5の出口5aから多量の潤滑油が供給されたとしても、多量の潤滑油がベアリング隙間3Eに浸入することを防止することができ、第一ベアリング3に作用する撹拌抵抗を低減することができる。したがって、攪拌抵抗を低減しながら第一ベアリング3を適切に潤滑することができる。
【0081】
また、第二連通穴8が遮蔽部材6の中心Oを通る水平線HLよりも下側に設けられているため、出口側空間S1内に形成される油溜まりから第二連通穴8を通じてベアリング隙間3Eへ潤滑油を供給することができる。このため、油溜まりを利用して第一ベアリング3を適切に潤滑することができるとともに、油溜まり以外からベアリング隙間3Eへの潤滑油の供給が抑制されるため、第一ベアリング3に作用する攪拌抵抗をより低減することができる。
【0082】
また、遮蔽部材6がカウンタ軸44の出口側端部44aに対してクリアランス(微小な隙間)をあけて設けられているため、このクリアランスにより、遮蔽部材6とカウンタ軸44との干渉を防止しつつ、潤滑油をベアリング隙間3Eへ浸入しにくくすることができる。このため、第一ベアリング3に作用する攪拌抵抗をより低減することができる。
【0083】
また、遮蔽部材6がメインケース60Aの出口側保持部62と第一ベアリング3の外輪3Bとによって挟持されているため、遮蔽部材6をスペーサとして機能させることができるとともに、遮蔽部材6を利用して第一ベアリング3に予圧を与えることができる。
【0084】
つまり、厚みが互いに異なる複数の遮蔽部材6を用意しておき、これらの複数の遮蔽部材6のうちから適当な厚みのものを選んで上述の潤滑構造に適用すれば、遮蔽部材6をスペーサや予圧調整用シムとして兼用することができる。これにより、装置の簡素化やコスト削減に寄与することができる。
【0085】
また、本実施形態に係る潤滑構造は、エンジン2の変速機1に適用されているため、上述のように第一ベアリング3に作用する攪拌抵抗が低減されることにより、エンジン2の燃費を向上させることができる。
【0086】
[2.第二実施形態]
[2−1.構成]
図4及び
図5を参照して、第二実施形態に係る潤滑構造について説明する。
【0087】
本実施形態に係る潤滑構造は、上述の第一実施形態のものに対して、遮蔽部材16に係る構成が異なり、その他の構成は同様である。以下の説明では、上述の第一実施形態で説明した要素と同一または対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0088】
図4及び
図5に示すように、本実施形態に係る遮蔽部材16は、上述の第一実施形態で示した遮蔽部材6と略等しく構成された円板形状の平板部16Aと、この平板部16Aから突出した突起部16Bとを有する。
【0089】
平板部16Aは、上述の第一実施形態で示した遮蔽部材6に対して第二連通穴18の開口幅(水平方向の長さ寸法)が短くされている。本実施形態では、第二連通穴18の開口幅が第一連通穴7の穴径と略等しくされている場合を例示する。なお、平板部16Aは、この第二連通穴18に係る構成を除いて、第一実施形態の遮蔽部材6と同様に構成されている。
【0090】
突起部16Bは、平板部16Aの第一連通穴7を形成する縁部7aからカウンタ軸44の軸方向に沿って延びた略筒形状の部位である。本実施形態では、突起部16Bが平板部16Aからメインケース60Aの出口側壁部61に向かって(すなわち、軸内油路5から離隔する方向に)延びている。
【0091】
突起部16Bは、後述する第三連通穴9の形成箇所を除いて、出口側空間S1を内側と外側とに区画する。突起部16Bの先端は、出口側壁部61に当接していてもよいし、製造誤差を考慮して、出口側壁部61との間にクリアランス(微小な隙間)が確保されていてもよい。
【0092】
突起部16Bは、軸内油路5の出口5aから流出した潤滑油を突起部16Bの内側から外側へ排出するための第三連通穴9を有する。第三連通穴9は、突起部16Bから切り欠かれた部分であり、突起部16Bの内側と外側とを連通している。
【0093】
第三連通穴9は、遮蔽部材16の中心Oに対して第二連通穴18と同じ側に設けられている。つまり、第三連通穴9は、突起部16Bの内側にある潤滑油を第二連通穴18へ向けて排出するように、第二連通穴18に向かって形成されている。
【0094】
本実施形態では、第二連通穴18が中心Oの真下(鉛直方向直下)に位置している。このため、本実施形態の第三連通穴9も中心Oの真下に位置するように設けられている。すなわち、本実施形態の第三連通穴9は、突起部16Bの下端部に設けられ、下側に向かって開放されている。
【0095】
また、本実施形態の第三連通穴9は、その開口幅(水平方向の長さ寸法)が第一連通穴7の穴径と略等しくされている。したがって、本実施形態では、第一連通穴7の穴径と、第二連通穴18の開口幅と、第三連通穴9の開口幅とが互いに略等しくされている。
【0096】
[2−2.作用及び効果]
本実施形態に係る潤滑構造では、遮蔽部材16が突起部16Bを有するため、軸内油路5の出口5aから突起部16Bの内側に飛散した潤滑油は、この突起部16Bにぶつかることで、突起部16Bの外側の出口側空間S1への飛散が制限される。
【0097】
このため、軸内油路5の出口5aから多量の潤滑油が供給されたとしても、潤滑油が出口側空間S1内で広範囲に飛散することを防止することができ、これによりベアリング隙間3Eへの潤滑油の浸入も抑制することができる。この結果、第一ベアリング3に作用する撹拌抵抗をより低減することができる。
【0098】
また、突起部16Bが第三連通穴9を有するため、潤滑油は第三連通穴9を通じて突起部16Bの内側から外側へと流出し、重力の作用によって下方へ流れて出口側空間S1の下部に油溜まりを形成する。
【0099】
このように、突起部16Bに第三連通穴9を設けることで、潤滑油を突起部16Bの内側から外側へと適切に排出することができる。このため、第一ベアリング3を適切に潤滑することができる。
【0100】
また、遮蔽部材16が平板部16Aに加えて突起部16Bを有するので、遮蔽部材16の剛性が高くなり、例えばカウンタ軸44の回転により遮蔽部材16が起振されても、その変形が抑制される。このため、突起部16Bの先端がメインケース60Aの出口側壁部61に当接している場合には、この当接状態を維持することができる。また、突起部16Bの先端とメインケース60Aの出口側壁部61との間にクリアランスが設けられている場合には、このクリアランスを維持することができる。
【0101】
つまり、上述の何れの場合にも遮蔽部材16の形状及び位置を安定化することができる。このため、カウンタ軸44の出口側端部44aと遮蔽部材16との間のクリアランスを小さくしても、両者の干渉を防止することができる。
【0102】
また、本実施形態に係る潤滑構造によれば、第一連通穴7の穴径と第二連通穴18の開口幅と第三連通穴9の開口幅とが互いに略等しいため、軸内油路5の出口5aからベアリング隙間3Eの一部分までの潤滑油の通り道を適切に確保することができる。これにより、適度な量の潤滑油をベアリング隙間3Eに安定して供給することができ、第一ベアリング3をより適切に潤滑することができる。
【0103】
なお、第三連通穴9は、適当な流量の潤滑油を突起部16Bの内側から外側へ排出可能であればよいので、その開口面積は確保すべき潤滑油の流量を勘案して設定されればよい。すなわち、第三連通穴9は、上述のように筒形状の突起部16Bの一部を切り欠いて形成されたものに限られず、例えば、筒形状の突起部16Bに適当な開口面積の貫通穴を穿設することで第三連通穴9を形成してもよい。
【0104】
第三連通穴9の開口面積を可能な限り小さくすると、潤滑油の拡散範囲が制限されるため、ベアリング隙間3Eへの潤滑油の浸入をより効果的に抑制できるうえ、突起部16Bの強度が増すので遮蔽部材16の剛性向上にも寄与することができる。
【0105】
また、本実施形態に係る潤滑構造によれば、上述の第一実施形態と同様の構成からは同様の作用,効果を得ることができる。
【0106】
[3.第三実施形態]
[3−1.構成]
図6を参照して、第三実施形態に係る潤滑構造について説明する。
【0107】
本実施形態に係る潤滑構造は、上述の第一実施形態のものに対して、メインケース60Aの出口側壁部61に係る構成が異なり、その他の構成は同様である。
【0108】
図6に示すように、本実施形態に係るメインケース60Aは、軸内油路5の出口5aに対向する出口側壁部61に排出口61aを有する。なお、このメインケース60Aは、排出口61aを有する点を除いて第一実施形態のものと同様に構成されている。
【0109】
排出口61aは、出口側空間S1から潤滑油を排出するために、出口側壁部61を貫通するように形成された貫通穴である。つまり、排出口61aは、出口側空間S1と、この出口側空間S1に対して出口側壁部61で仕切られた外部空間とを連通するように設けられている。
【0110】
排出口61aは、第二連通穴8の最下点(最も下側に位置する点)よりも上側に位置する。本実施形態の排出口61aは、第二連通穴8の最下点と軸内油路5の出口5aの最下点との間の高さ領域H内に位置している。言い換えると、本実施形態では、排出口61aの最下点が第二連通穴8の最下点よりも高い位置に設けられ、排出口61aの最上点(最も上側に位置する点)が軸内油路5の出口5aの最下点よりも低い位置に設けられている。
【0111】
[3−2.作用,効果]
本実施形態に係る潤滑構造によれば、潤滑油が排出口61aを通じて出口側空間S1から排出されるため、出口側空間S1に過剰な油溜まりが形成されることを防ぐことができ、油溜まりから第一ベアリング3に大きな攪拌抵抗が作用することを防止できる。
【0112】
また、排出口61aが第二連通穴8の最下点よりも上側に設けられているため、油溜まりの油面高さを第二連通穴8の最下点よりも高くすることができる。このため、第二連通穴8からベアリング隙間3Eへと潤滑油を常時供給することができる。これにより、第一ベアリング3をより確実に潤滑することができる。
【0113】
さらに、排出口61aが第二連通穴8の最下点と軸内油路5の出口5aの最下点との間の高さ領域H内に設けられているため、油溜まりの油面高さを第二連通穴8の最下点よりも上側かつ軸内油路5の出口5aの最下点よりも下側の高さにすることができる。
【0114】
このため、ベアリング隙間3Eに供給される潤滑油の量をより確実に確保することができるとともに、出口側空間S1に過剰な油溜まりが形成されることをより確実に防止することができる。
【0115】
また、本実施形態に係る潤滑構造によれば、上述の第一実施形態と同様の構成からは同様の作用,効果を得ることができる。
【0116】
[4.変形例]
[4−1.第一変形例]
図7(a),(b)を参照して、第一変形例に係る遮蔽部材26について説明する。
【0117】
本変形例に係る遮蔽部材26は、上述の第一実施形態に係る遮蔽部材6に対して、第二連通穴28の形状が異なり、その他の構成は同様である。なお、この遮蔽部材26は、上述の実施形態に係る潤滑構造において上述の遮蔽部材6,16と同様に適用される。
【0118】
図7(a)に示すように、本変形例に係る遮蔽部材26では、第二連通穴18が遮蔽部材26の中心Oを通る鉛直線VLについて非対称な形状とされている。本変形例では、第二連通穴28が遮蔽部材26の中心Oを中心とした円弧に沿って延びている場合を例示する。
【0119】
なお、本変形例に係る第二連通穴28も、上述の実施形態に係る第二連通穴8,18と同様に、遮蔽部材26の中心Oを通る水平線HLよりも下側に設けられ、出口側空間S1及びベアリング隙間3Eを、ベアリング隙間3Eの一部分において連通している。
【0120】
ここで、第二連通穴28のうち、カウンタ軸44の回転方向Dを基準として、上述の鉛直線VLよりも下流側〔
図7(a)中の左側〕にある部位を下流部28aといい、上流側〔
図7(a)中の右側〕にある部位を上流部28bという。本変形例では、下流部28aが上流部28bよりも高い位置まで延びている。
【0121】
図7(b)に示すように、下流部28aの面積A
1は、上流部28bの面積A
2よりも大きくされている(A
2<A
1)。ここでいう面積A
1,A
2とは、第二連通穴28を正面から視たときの開口面積である。
【0122】
上述の面積A
1,A
2の大小関係は、カウンタ軸44とともに回転する第一ベアリング3によって、潤滑油がカウンタ軸44の回転方向Dに連れ回されることに基づいている。つまり、油溜まりは、第一ベアリング3の回転によって連れ回されると、上述の鉛直線VLに対してカウンタ軸44の回転方向Dの下流側に偏ることから、その油面OLは上述の鉛直線VLの下流側に向かって上り傾斜する〔
図7(a)中の二点鎖線参照〕。
【0123】
上述のように潤滑油が偏ると、ベアリング隙間3Eに供給される潤滑油の量が不足する虞がある。そこで、本変形例の第二連通穴28は、下流部28aの面積A
1と上流部28bの面積A
2とが、潤滑油の偏りに対応するように互いに異なった大きさとされている。
【0124】
本変形例に係る遮蔽部材26を用いれば、第一ベアリング3の回転に伴って潤滑油が上述の鉛直線VLに対して偏ることを考慮して、第二連通穴28の下流部28aの面積A
1が上流部28bの面積A
2よりも大きくされているので、ベアリング隙間3Eに供給される潤滑油の量を確保することができる。このため、第一ベアリング3をより適切に潤滑することができる。
【0125】
また、第二連通穴28の下流部28aが上流部28bよりも高い位置まで延びているため、第一ベアリング3の回転に伴って傾斜した油面OLと第二連通穴28の位置とを対応させることができる。この結果、ベアリング隙間3Eへの潤滑油の供給量をより適切に確保することができる。
【0126】
[4−2.第二変形例]
図8(a),(b)を参照して、第二変形例に係る遮蔽部材36について説明する。
【0127】
本変形例に係る遮蔽部材36は、複数の第二連通穴38A〜38Dを有する点を除いて、上述の第一変形例に係る遮蔽部材26と同様に構成されている。なお、本変形例に係る遮蔽部材36も、上述の実施形態に係る潤滑構造において上述の遮蔽部材6,16と同様に適用される。
【0128】
図8(a)示すように、本変形例に係る第二連通穴38A〜38Dは、上述の第一変形例に係る第二連通穴28を四つに分割したようなものであって、遮蔽部材36の中心Oを通る鉛直線VLについて非対称に配置され、遮蔽部材36の中心Oを中心とした円弧に沿って等間隔に並んでいる。
【0129】
四つの第二連通穴38A〜38Dのうち、カウンタ軸44の回転方向Dを基準として、二つの第二連通穴38A,38Bは上述の鉛直線VLよりも下流側〔
図8(a)中の左側〕の領域に位置し、一つの第二連通穴38Dは上述の鉛直線VLよりも上流側〔
図8(a)中の右側〕の領域に位置している。また、残りの一つの第二連通穴38Cは、上述の鉛直線VL上に位置し、その中心が上述の鉛直線VLと重なっている。
【0130】
本変形例では、各第二連通穴38A〜38Dが同一の大きさの丸穴である場合を例示する。すなわち、本変形例の第二連通穴38A〜38Dは、互いに等しい面積Aを有する。なお、ここでいう面積Aは、第二連通穴38A〜38Dを正面から視たときの開口面積である。
【0131】
これらの第二連通穴38A〜38Dのうち、上述の鉛直線VLよりもカウンタ軸44の回転方向Dの下流側の領域に位置する部位の総面積A
3(以下、下流側面積A
3という)は、上述の鉛直線VLよりもカウンタ軸44の回転方向Dの上流側の領域に位置する部位の総面積A
4(以下、上流側面積A
4という)よりも大きくされている(A
3<A
4)。
【0132】
図8(b)に示すように、本変形例では、下流側面積A
3が二つの第二連通穴38A,38Bと一つの第二連通穴38Cの半分との各面積の合計(A
3=2.5A)であり、上流側面積A
4という)が一つの第二連通穴38Cの半分と一つの第二連通穴38Dとの各面積の合計(A
4=1.5A)である。
【0133】
本変形例に係る遮蔽部材36を用いれば、第一ベアリング3の回転に伴って潤滑油が上述の鉛直線VLに対して偏ることを考慮して、下流側面積A
3が上流側面積A
4よりも大きくされているので、第一変形例に係る遮蔽部材26を用いる場合と同様に、ベアリング隙間3Eへの潤滑油の供給量を確保することができる。このため、第一ベアリング3をより適切に潤滑することができる。
【0134】
また、本変形例に係る遮蔽部材36では、上述の鉛直線VLよりも下流側の領域に位置する第二連通穴38Aが、上流側の領域に位置する第二連通穴38Dよりも高い位置に設けられている。このため、上述の第一変形例に係る遮蔽部材26と同様に、第一ベアリング3の回転に伴って傾斜した油面OLと第二連通穴38A,38Dの位置とを対応させることができる。この結果、ベアリング隙間3Eに供給される潤滑油の量をより適切に確保することができる。
【0135】
[4−3.第三変形例]
図9及び
図10を参照して、第三変形例に係る遮蔽部材46について説明する。
【0136】
本変形例に係る遮蔽部材46は、上述の第二実施形態に係る遮蔽部材16に対して、第一連通穴47及び突起部46Bに係る構成が異なり、その他の構成は同様である。以下の説明では、上述の第二実施形態で説明した要素と同一または対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0137】
図9及び
図10に示すように、本変形例に係る遮蔽部材46は、上述の第二実施形態で示した平板部16Aと略等しく構成された平板部46Aと、この平板部46Aから突出した突起部16Bとを有する。
【0138】
平板部46Aは、上述の第二実施形態で示した平板部16Aに対して、第一連通穴47の穴径がやや小さくされている。すなわち、本変形例に係る第一連通穴47は、軸内油路5の出口5aの直径よりもやや小さい穴径を有する丸穴である。なお、平板部46Aは、この第一連通穴47に係る構成を除いて、第二実施形態の平板部16Aと同様に構成されている。
【0139】
突起部46Bは、上述の第二実施形態で示した突起部16Bと同様に、平板部46Aの第一連通穴47を形成する縁部47aからカウンタ軸44の軸方向に沿って延びた筒形状の部位であって、平板部46Aから突出している。本変形例に係る突起部46Bは、平板部46Aから軸内油路5側に向かって延びている。
【0140】
突起部46Bは、カウンタ軸44の内周面に対してクリアランスを存して設けられている。また、突起部46Bは、カウンタ軸44の内周面に対向し、平板部46Aとカウンタ軸44の出口側端部44aとの間のクリアランスを軸内油路5側から遮蔽する。
【0141】
本変形例に係る遮蔽部材46を用いれば、突起部46Bが平板部46Aとカウンタ軸44の出口側端部44aとの間のクリアランスを遮蔽するため、このクリアランスを通過する潤滑油の量を低減することができる。これにより、軸内油路5からベアリング隙間3Eへの潤滑油の浸入が制限されるため、軸内油路5の出口5aから多量の潤滑油が供給されたとしても、多量の潤滑油がベアリング隙間3Eに浸入することを防止することができる。この結果、第一ベアリング3に作用する撹拌抵抗をより低減することができる。
【0142】
[4−4.その他]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上述した実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
【0143】
例えば、上述の第二実施形態及び第三変形例では、遮蔽部材16,46が一つの突起部16B,46Bを有する場合について説明したが、上述の突起部16B,46Bを組み合わせて、遮蔽部材が二つの突起部16B,46Bを有するようにしてもよい。
【0144】
なお、平板部16Aからメインケース60Aの出口側壁部61に向かって延びる突起部16Bには第三連通穴9が形成されるが、平板部46Aから軸内油路5に向かって延びる突起部46Bに第三連通穴9は不要である。
【0145】
遮蔽部材16,46が少なくとも一方の突起部16B,46Bを有していれば(換言すると、何れの突起部16B,46Bを有する遮蔽部材16,46を適用しても)、多量の潤滑油がベアリング隙間3Eに浸入することを防止することができるため、第一ベアリング3に作用する撹拌抵抗をより低減することができる。
【0146】
また、これらの突起部16B,46Bの一方あるいは両方と、上述の第一変形例に係る第二連通穴28又は上述の第二変形例に係る第二連通穴38A〜38Dとを組み合わせてもよい。
【0147】
遮蔽部材6,16,26,36,46の形状及び位置は、上述の実施形態及び変形例で示したものに限られない。例えば、遮蔽部材6,16,26,36,46は、その中心Oがカウンタ軸44の軸心C上に位置していなくてもよいし、遮蔽部材6,26,36及び平板部16A,46Aは、少なくともベアリング隙間3Eを部分的に遮蔽する形状のであればよく、上述のような円板形状でなくてもよい。
【0148】
また、遮蔽部材6,16,26,36,46は、スペーサとしての機能や予圧調整用シムとしての機能を備えていなくてもよい。
【0149】
また、上述の第三実施形態で示した排出口61aは、上述の第一実施形態に係る遮蔽部材6に限らず、他の遮蔽部材16,26,36,46とともに適用されてもよい。上述の排出口61aを複数の第二連通穴を有する遮蔽部材とともに適用する場合には、複数の第二連通穴のうちの最下点(上述の遮蔽部材36では、中心Oを通る鉛直線VL上に位置する第二連通穴38Cの最下点)よりも上側に、排出口61aを設ければよい。
【0150】
また、排出口61aは上述の高さ領域Hの外部に設けられていてもよい。少なくとも、出口側空間S1をその外部の空間と連通するように排出口61aが設けられていれば、排出口61aを通じて出口側空間S1から潤滑油を排出することができる。
【0151】
ただし、排出口61aが上述の高さ領域Hに設けられていれば、油溜まりの油面を適度な高さに保持することができる。このため、出口側空間S1に過剰な油溜まりが形成されることを防ぐことができ、油溜まりから第一ベアリング3に大きな攪拌抵抗が作用することを防止することができる。
【0152】
また、上述の実施形態及び変形例では、遮蔽部材6,16,26,36,46がカウンタ軸44の軸端44aとの間にクリアランスをあけて設けられる場合を示したが、例えば第一連通穴7,47の穴径をカウンタ軸44の外径よりも大きくして、遮蔽部材6,16,26,36,46をカウンタ軸44の外周に位置させてもよい。
【0153】
この場合であっても、遮蔽部材6,16,26,36,46がベアリング隙間3Eを遮蔽することによりベアリング隙間3Eへの潤滑油の浸入が制限されるため、第一ベアリング3に作用する撹拌抵抗を低減することができる。
【0154】
また、上述の実施形態及び変形例では各ベアリング3,4が円錐ころ軸受である場合を例示したが、ベアリング3,4は少なくともカウンタ軸44を回転可能に支持するものであればよく、その種類や形状は特に限定されない。
【0155】
また、本潤滑構造が適用される対象は、上述のカウンタ軸44以外の回転軸であってもよい。
【0156】
なお、
図7(a)及び
図8(a)にはカウンタ軸44の回転方向Dが図中時計回りである場合を例示したが、カウンタ軸44の回転方向Dはこれと逆回りであってもよい。その場合には、例えば、上述の第二連通穴28,38A〜38Dを
図7(a)及び
図8(a)中の鉛直線VLについて左右反転させて、上述の面積A
1〜A
4の大小関係(A
2<A
1,A
4<A
3)を満たすようにすればよい。