(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Agを1質量%以上4質量%以下と、Sbを2質量%以上5質量%以下と、Niを0.01質量%以上0.15質量%以下と、Biを4.5質量%以下と、Coを0.001質量%以上0.15質量%以下含み残部がSnからなり、
AgとSbとNiとBiとCoのそれぞれの含有量(質量%)が下記式(A)から(C)の全てを満たすことを特徴とする鉛フリーはんだ合金。
(A)3.6≦Ag含有量+Sb含有量≦9.0
(B)0.17<(Ag含有量/3)+(Bi含有量/4.5)≦2.10
(C)0<(Ni含有量/0.15)+(Co含有量/0.15)≦1.3
【背景技術】
【0002】
プリント配線板やシリコンウエハといった基板上に形成される電子回路に電子部品を接合するには、はんだ合金を用いたはんだ接合方法が採用されている。従来、このはんだ合金には鉛を使用するのが一般的であった。しかし環境負荷の観点からRoHS指令等によって鉛の使用が制限されたため、近年では鉛を含有しない、所謂鉛フリーはんだ合金によるはんだ接合方法が一般的になりつつある。
この鉛フリーはんだ合金としては、例えばSn−Cu系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Bi系、Sn−Zn系はんだ合金等がよく知られている。その中でもテレビ、携帯電話等に使用される民生用電子機器や自動車に搭載される車載用電子機器には、Sn−3Ag−0.5Cuはんだ合金が多く使用されている。
鉛フリーはんだ合金は、鉛含有はんだ合金と比較してはんだ付性が多少劣るものの、フラックスやはんだ付装置の改良によってこのはんだ付性の問題はカバーされている。そのため、例えば車載用電子回路基板であっても、自動車の車室内のように寒暖差はあるものの比較的穏やかな環境下に置かれるものにおいては、Sn−3Ag−0.5Cuはんだ合金を用いて形成したはんだ接合部でも大きな問題は生じていない。
【0003】
しかし近年では、例えば電子制御装置に用いられる電子回路基板のように、エンジンコンパートメントやエンジン直載、モーターとの機電一体化といった寒暖差が特に激しく(例えば−30℃から110℃、−40℃から125℃、−40℃から150℃といった寒暖差)、加えて振動負荷を受けるような過酷な環境下での電子回路基板の配置の検討及び実用化がなされている。このような寒暖差の非常に激しい環境下では、実装された電子部品と基板との線膨張係数の差によるはんだ接合部の熱変位及びこれに伴う応力が発生し易い。そして寒暖差による塑性変形の繰り返しははんだ接合部への亀裂を引き起こし易く、更に時間の経過と共に繰り返し与えられる応力は上記亀裂の先端付近に集中するため、当該亀裂ははんだ接合部の深部まで横断的に進展し易くなる。このように著しく進展した亀裂は、電子部品と基板上に形成された電子回路との電気的接続の切断を引き起こしてしまう。特に激しい寒暖差に加え電子回路基板に振動が負荷される環境下にあっては、上記亀裂及びその進展は更に発生し易い。
そのため、上述の過酷な環境下に置かれる車載用電子回路基板及び電子制御装置が増える中で、十分な亀裂進展抑制効果を発揮し得るはんだ合金への要望は、今後ますます大きくなることが予想される。
【0004】
また、車載用電子回路基板としては銅箔を施した基板の表面に水溶性プリフラックス処理(Organic Solderbility Preservative)を施した基板(以下、本明細書においては「CuOSP基板」という。)が広く用いられている。当該CuOSP基板ははんだ合金のぬれ広がり性に劣るため、これに電子部品を搭載する場合、当該基板上に形成されたはんだ接合部にボイドが発生し易いという問題がある。そのため、CuOSP基板への電子部品搭載に用いられる場合であってもボイドの発生を抑制するはんだ合金への要望も大きくなることが予想される。
【0005】
更には、車載用電子回路基板に搭載されるQFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)といった電子部品のリード部分には、従来、Ni/Pd/AuめっきやNi/Auめっきのされた部品が多用されていた。しかし近年の電子部品の低コスト化や基板のダウンサイジング化に伴い、リード部分をSnめっきに替えた電子部品やSnめっきされた下面電極をもつ電子部品の検討及び実用化がなされている。
このような例えばリード部分をSnめっきに替えた電子部品やSnめっきされた下面電極をもつ電子部品は、Snめっき及びはんだ接合部に含まれるSnとリード部分や前記下面電極に含まれるCuとの相互拡散を発生させ易い。そのため、はんだ接合部と前記リード部分や前記下面電極との界面付近の領域(以下、本明細書においては「界面付近」という。)にて、金属間化合物であるCu
3Sn層が凸凹状に大きく成長し易い。このCu
3Sn層は元々硬くて脆い性質を有する上に、凸凹状に大きく成長したCu
3Sn層は更に脆くなる。よって特に上述の過酷な環境下においては、前記界面付近ははんだ接合部と比較して亀裂が発生し易く、また発生した亀裂はこれを起点として一気に進展するため、電気的短絡が生じ易い。
従って、今後は上述の過酷な環境下でNi/Pd/AuめっきやNi/Auめっきのなされていない電子部品を用いた場合であっても前記界面付近における亀裂進展抑制効果を発揮し得るはんだ合金への要望も大きくなることが予想される。
【0006】
これまでもはんだ接合部における亀裂進展抑制を目的として、はんだ接合部の強度とこれに伴う熱疲労特性を向上させるためにSn−Ag−Cu系はんだ合金にAgやBiといった元素を添加する方法はいくつか開示されている(特許文献1から特許文献8参照)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の鉛フリーはんだ合金、並びに電子回路基板及び電子制御装置の一実施形態を詳述する。なお、本発明が以下の実施形態に限定されるものではないことはもとよりである。
【0024】
(1)鉛フリーはんだ合金
本実施形態の鉛フリーはんだ合金には、1質量%以上4質量%以下のAgを含有させることができる。Agを添加することにより、鉛フリーはんだ合金のSn粒界中にAg
3Sn化合物を析出させ、機械的強度を付与することができる。
但し、Agの含有量が1質量%未満の場合、Ag
3Sn化合物の析出が少なく、鉛フリーはんだ合金の機械的強度及び耐熱衝撃性が低下するので好ましくない。またAgの含有量が4質量%を超えると、鉛フリーはんだ合金の延伸性が阻害され、これを用いて形成されるはんだ接合部が電子部品の電極剥離現象を引き起こす虞があるので好ましくない。
またAgの含有量を2質量%以上3.8質量%以下とすると、鉛フリーはんだ合金の強度と延伸性のバランスをより良好にできる。更に好ましいAgの含有量は2.5質量%以上3.8質量%以下である。
【0025】
本実施形態の鉛フリーはんだ合金には、1質量%以上5質量%以下のSbを含有させることができる。この範囲でSbを添加することで、はんだ合金の延伸性を阻害することなくはんだ接合部の亀裂進展抑制効果を向上させることができる。Sbの含有量を2質量%以上4質量%以下とすると、亀裂進展抑制効果を更に向上させることができる。
【0026】
ここで、寒暖の差が激しい過酷な環境下に長時間曝されるという外部応力に耐えるには、鉛フリーはんだ合金の靭性(応力−歪曲線で囲まれた面積の大きさ)を高め、延伸性を良好にし、且つSnマトリックスに固溶する元素を添加して固溶強化をすることが有効であると考えられる。そして、十分な靱性及び延伸性を確保しつつ、鉛フリーはんだ合金の固溶強化を行うためにはSbが最適な元素となる。
即ち、実質的に母材(本明細書においては鉛フリーはんだ合金の主要な構成要素を指す。以下同じ。)をSnとする鉛フリーはんだ合金に上記範囲でSbを添加することで、Snの結晶格子の一部がSbに置換され、その結晶格子に歪みが発生する。そのため、このような鉛フリーはんだ合金を用いて形成されるはんだ接合部は、Sn結晶格子の一部のSb置換により前記結晶中の転移に必要なエネルギーが増大してその金属組織が強化される。更には、Sn粒界に微細なSnSb、ε−Ag
3(Sn,Sb)化合物が析出することにより、Sn粒界のすべり変形を防止することではんだ接合部に発生する亀裂の進展を抑制し得る。
【0027】
また、Sn−3Ag−0.5Cuはんだ合金に比べ、上記範囲でSbを添加した鉛フリーはんだ合金を用いて形成したはんだ接合部の組織は、寒暖の差が激しい過酷な環境下に長時間曝した後もSn結晶が微細な状態を確保しており、亀裂が進展しにくい構造であることを確認した。これはSn粒界に析出しているSnSb、ε−Ag
3(Sn,Sb)化合物が寒暖の差が激しい過酷な環境下に長時間曝した後においてもはんだ接合部内に微細に分散しているため、Sn結晶の粗大化が抑制されているものと考えられる。即ち、上記範囲内でSbを添加した鉛フリーはんだ合金を用いたはんだ接合部は、高温状態ではSnマトリックス中へのSbの固溶が、低温状態ではSnSb、ε−Ag
3(Sn,Sb)化合物の析出が起こるため、寒暖の差が激しい過酷な環境下に長時間曝された場合にも、高温下では固溶強化、低温下では析出強化の工程が繰り返されることにより、優れた耐冷熱衝撃性を確保し得ると考えられる。
【0028】
さらに、上記範囲でSbを添加した鉛フリーはんだ合金は、はんだ合金の延伸性を低下させずにその強度を向上させることができるため、外部応力に対する十分な靱性を確保でき、残留応力も緩和することができる。
ここで、延伸性の低いはんだ合金を用いて形成されたはんだ接合部を寒暖の差の激しい環境下に置いた場合、繰り返し発生する応力は当該はんだ接合部の電子部品側に蓄積し易くなる。そのため、深部亀裂は電子部品の電極近傍のはんだ接合部にて発生することが多い。この結果、この亀裂近傍の電子部品の電極に応力が集中してしまい、はんだ接合部が電子部品側の電極を剥離してしまう現象が生じ得る。しかし本実施形態の鉛フリーはんだ合金は上記範囲でSbを添加したことにより、Biといったはんだ合金の延伸性に影響を及ぼす元素を含有させる場合であってもそれ自体の延伸性が阻害され難く、よって上述のような過酷な環境下に長時間曝された場合であっても電子部品の電極剥離現象をも抑制することができる。
【0029】
但しSbの含有量が5質量%を超えると、鉛フリーはんだ合金の溶融温度が上昇してしまい、高温下でSbが再固溶しなくなる。そのため、寒暖の差が激しい過酷な環境下に長時間曝した場合、SnSb、ε−Ag
3(Sn,Sb)化合物による析出強化のみが行われるため、時間の経過と共にこれらの金属間化合物が粗大化し、Sn粒界のすべり変形の抑制効果が失効してしまう。またこの場合、鉛フリーはんだ合金の溶融温度の上昇により電子部品の耐熱温度も問題となるため、好ましくない。
【0030】
本実施形態における鉛フリーはんだ合金は、その構成により、Sbの含有量を1質量%以上5質量%以下としても、鉛フリーはんだ合金の溶融温度の過度な上昇を抑制し、また形成されるはんだ接合部に良好な強度を付与する。そのため、本実施形態の鉛フリーはんだ合金においては、Biをその必須組成とせずとも、形成されるはんだ接合部の亀裂進展抑制効果を十分に発揮することが可能となる。
【0031】
本実施形態の鉛フリーはんだ合金には、0.01質量%以上0.15質量%以下のNiを含有させることができる。
鉛フリーはんだ合金にCuを添加しない場合、当該合金の溶融粘度を下げることができるため、これを用いて形成したはんだ接合部ではフラックスを起因とするガスが排出され易く、ボイドとして残留し難い。しかし溶融した鉛フリーはんだ合金側にCuがないことから、電極にあるCuが上記溶融はんだ合金側に拡散し易くなり、界面付近におけるCu
3Sn層がより一層成長し易くなるという問題がある。
しかし本実施形態の鉛フリーはんだ合金の構成であれば、上記範囲でNiを添加することにより、これにCuを添加せずとも溶融した鉛フリーはんだ合金への電極側のCuの過度な拡散を抑制することができ、且つ界面付近において微細な(Cu,Ni)
6Sn
5が形成されて母材中に分散するため、はんだ接合部における亀裂の進展を抑制し、更にその耐熱疲労特性を向上させることができる。
【0032】
また、本実施形態の鉛フリーはんだ合金は、Ni/Pd/AuめっきやNi/Auめっきがなされていない電子部品をはんだ接合する場合であっても、はんだ接合時にNiが前記界面付近に移動して微細な(Cu,Ni)
6Sn
5を形成するため、その界面付近におけるCu
3Sn層の成長を抑制することができ、前記界面付近の亀裂進展抑制効果を向上させることができる。
【0033】
ここでNiは溶融したはんだ合金の凝固するタイミングを早めるため、形成されるはんだ接合部のフィレットでは、はんだ合金の溶融中に外に抜け出ようとしたガスがその中に残ったまま凝固し易くなり、フィレット中にガスによる穴(ボイド)が発生し易い。このフィレット中のボイドは、特に−40℃から140℃、−40℃〜150℃といった寒暖差の激しい環境下においてはんだ接合部の耐熱疲労特性を低下させてしまう。
しかし本実施形態の鉛フリーはんだ合金においては、Niの含有量を上記範囲内として他の元素との含有量のバランスを図ることにより、このようなボイドの発生を抑制することができる。
【0034】
また上述の通り本実施形態の鉛フリーはんだ合金にはCuが含有されていないため、Niの添加によりはんだ接合部における亀裂の進展を抑制しつつ、CuOSP基板のようなはんだぬれ広がり性に劣る基板であっても上記ボイドの発生を抑制することができる。
【0035】
但しNiの含有量が0.01質量%未満であると、前記金属間化合物の改質効果が不十分となるため、前記界面付近の亀裂抑制効果は十分には得られ難い。またNiの含有量が0.15質量%を超える場合、特にフィレットにおいて上述したボイドが発生し易くなるため好ましくない。
【0036】
本実施形態の鉛フリーはんだ合金には、Niに加え0.001質量%以上0.15質量%以下のCoを含有させることができる。本実施形態の鉛フリーはんだ合金の構成であれば、この範囲でCoを添加することにより、Ni添加による上記効果を高めると共に溶融した鉛フリーはんだ合金への電極側のCuの過度な拡散を抑制することができ、界面付近において微細な(Cu,Co)
6Sn
5が形成されて母材中に分散するため、はんだ接合部のクリープ変形の抑制及び亀裂の進展を抑制しつつ、特に寒暖差の激しい環境下においてもはんだ接合部の耐熱疲労特性を向上させることができる。
【0037】
また、Coを添加した鉛フリーはんだ合金は、Ni/Pd/AuめっきやNi/Auめっきがなされていない電子部品をはんだ接合する場合であっても、Ni添加による上記効果を高めると共に、Coがはんだ接合時に前記界面付近に移動して微細な(Cu,Co)
6Sn
5を形成するため、その界面付近におけるCu
3Sn層の成長を抑制することができ、前記界面付近の亀裂進展抑制効果を向上させることができる。
【0038】
ここでCoはNiと同様に溶融したはんだ合金の凝固するタイミングを早めるため、形成されるはんだ接合部のフィレットでは、はんだ合金の溶融中に外に抜け出ようとしたガスがその中に残ったまま凝固し易くなり、フィレット中にガスによる穴(ボイド)が発生し易い。このフィレット中のボイドは、寒暖差の激しい環境下においてはんだ接合部の耐熱疲労特性を低下させてしまう。
しかし本実施形態の鉛フリーはんだ合金においては、Coの含有量を上記範囲内としてNiを含む他の元素との含有量のバランスをとることにより、このようなボイドの発生を抑制することができる。
【0039】
またCoはNiと併せてはんだ接合部における亀裂の進展を抑制することができるため、はんだ合金にCuを添加しないことによる弊害を更に抑制しつつ、CuOSP基板のようなはんだぬれ広がり性に劣る基板であっても上記ボイドの発生を抑制することができる。
【0040】
但し、Coの含有量が0.001質量%未満であると、Coによる前記金属間化合物の改質効果は不十分となる。
【0041】
本実施形態の鉛フリーはんだ合金には、4.5質量%以下のBiを添加することができる。
本実施形態における鉛フリーはんだ合金においては、Biをこの範囲内で添加することにより、はんだ合金の延伸性を阻害することなく、良好な耐熱衝撃性を保つことができる。但しBiの含有量が4.5質量%を超えると鉛フリーはんだ合金の延伸性が阻害され、また耐熱衝撃性が低下するので好ましくない。
なお、Biの含有量を3質量%以上4質量%以下とした場合、その延伸性を阻害することなく、耐熱衝撃性を更に向上することができる。
【0042】
ここで本実施形態の鉛フリーはんだ合金にAgとSbとNiとBiとCoとを含有させる場合、AgとSbとNiとBiとCoのそれぞれの含有量(質量%)は下記式(A)から(C)の全てを満たすことが好ましい。
(A)3.6≦Ag含有量+Sb含有量≦9.0
(B)0.17<(Ag含有量/3)+(Bi含有量/4.5)≦2.10
(C)0<(Ni含有量/0.15)+(Co含有量/0.15)≦1.3
AgとSbとNiとBiとCoの含有量を上記範囲内とすることで、過酷な環境下におけるはんだ接合部の亀裂進展の抑制効果、CuOSP基板上への電子部品搭載時に発生し易いはんだ接合部のボイドの抑制効果、及びNi/Pd/AuめっきやNi/Auめっきがなされていない電子部品を基板上に搭載する場合に発生し易いCu
3Sn層の成長による界面付近の亀裂進展の抑制効果のいずれもをバランスよく発揮させることができ、はんだ接合部の信頼性を一層向上させることができる。
【0043】
また本実施形態の鉛フリーはんだ合金には、6質量%以下のInを含有させることができる。この範囲内でInを添加することにより、Sbの添加により上昇した鉛フリーはんだ合金の溶融温度を低下させると共に亀裂進展抑制効果を向上させることができる。即ち、InもSbと同様にSnマトリックス中へ固溶するため、鉛フリーはんだ合金を更に強化することができるだけでなく、AgSnIn、及びInSb化合物を形成しこれをSn粒界に析出させることでSn粒界のすべり変形を抑制する効果を奏する。
但しInの含有量が6質量%を超えると、鉛フリーはんだ合金の延伸性を阻害すると共に、寒暖の差が激しい過酷な環境下に長時間曝されている間にγ−InSn
4が形成され、鉛フリーはんだ合金が自己変形してしまうため好ましくない。
なお、Inのより好ましい含有量は、4質量%以下であり、1質量%から2質量%が特に好ましい。
【0044】
また本実施形態の鉛フリーはんだ合金には、P、Ga、及びGeの少なくとも1種を0.001質量%以上0.05質量%以下含有させることができる。この範囲内でP、Ga、及びGeの少なくとも1種を添加することにより、鉛フリーはんだ合金の酸化を防止することができる。但し、これらの含有量が0.05質量%を超えると鉛フリーはんだ合金の溶融温度が上昇し、またはんだ接合部にボイドが発生し易くなるため好ましくない。
【0045】
更に本実施形態の鉛フリーはんだ合金には、Fe、Mn、Cr、及びMoの少なくとも1種を0.001質量%以上0.05質量%以下含有させることができる。この範囲内でFe、Mn、Cr、及びMoの少なくとも1種を添加することにより、鉛フリーはんだ合金の亀裂進展抑制効果を向上させることができる。但し、これらの含有量が0.05質量%を超えると鉛フリーはんだ合金の溶融温度が上昇し、またはんだ接合部にボイドが発生し易くなるため好ましくない。
【0046】
なお、本実施形態の鉛フリーはんだ合金には、その効果を阻害しない範囲において、他の成分(元素)、例えばCd、Tl、Se、Au、Ti、Si、Al、Mg、Zn等を含有させることができる。また本実施形態の鉛フリーはんだ合金には、当然ながら不可避不純物も含まれるものである。
【0047】
また本実施形態の鉛フリーはんだ合金は、その残部はSnからなることが好ましい。なお好ましいSnの含有量は、80.1質量%以上97.99質量%以下である。
【0048】
本実施形態のはんだ接合部の形成は、例えばフロー方法、はんだボールによる実装、ソルダペースト組成物を用いたリフロー方法等、はんだ接合部を形成できるものであればどのような方法を用いても良い。なおその中でも特にソルダペースト組成物を用いたリフロー方法が好ましく用いられる。
【0049】
(2)ソルダペースト組成物
このようなソルダペースト組成物としては、例えば粉末状にした前記鉛フリーはんだ合金とフラックスとを混練しペースト状にすることにより作製される。
【0050】
このようなフラックスとしては、例えば合成樹脂と、チキソ剤と、活性剤と、溶剤とを含むフラックスが用いられる。
【0051】
前記合成樹脂としては、例えばトール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン及び水添ロジン、重合ロジン、不均一化ロジン、アクリル酸変性ロジン、マレイン酸変性ロジン等のロジン誘導体を含むロジン系樹脂;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の各種エステル、メタクリル酸の各種エステル、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸のエステル、無水マレイン酸のエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、塩化ビニル、酢酸ビニル等の少なくとも1種のモノマーを重合してなるアクリル樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂等が挙げられる。これらは単独でまたは複数を組合せて用いることができる。
これらの中でもロジン系樹脂、その中でも特に酸変性されたロジンに水素添加をした水添酸変性ロジンが好ましく用いられる。
【0052】
前記合成樹脂の酸価は10mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましく、その配合量はフラックス全量に対して10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
【0053】
前記チキソ剤としては、例えば水素添加ヒマシ油、脂肪酸アマイド類、オキシ脂肪酸類が挙げられる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。前記チキソ剤の配合量は、フラックス全量に対して3質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0054】
前記活性剤としては、例えば有機アミンのハロゲン化水素塩等のアミン塩(無機酸塩や有機酸塩)、有機酸、有機酸塩、有機アミン塩を配合することができる。更に具体的には、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩、酸塩、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。前記活性剤の配合量は、フラックス全量に対して5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0055】
前記溶剤としては、例えばイソプロピルアルコール、エタノール、アセトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、グリコールエーテル等を使用することができる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。前記溶剤の配合量は、フラックス全量に対して20質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0056】
前記フラックスには、鉛フリーはんだ合金の酸化を抑える目的で酸化防止剤を配合することができる。この酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリマー型酸化防止剤等が挙げられる。その中でも特にヒンダードフェノール系酸化剤が好ましく用いられる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。前記酸化防止剤の配合量は特に限定されないが、一般的にはフラックス全量に対して0.5質量%以上5質量%程度以下であることが好ましい。
【0057】
前記フラックスには、その他の樹脂、並びにハロゲン、つや消し剤、消泡剤及び無機フィラー等の添加剤を加えてもよい。
前記添加剤の配合量は、フラックス全量に対して10質量%以下であることが好ましい。またこれらの更に好ましい配合量はフラックス全量に対して5質量%以下である。
【0058】
なお、本実施形態のソルダペースト組成物においては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の各種エステル、メタクリル酸の各種エステル、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸のエステル、無水マレイン酸のエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、塩化ビニルおよび酢酸ビニルの少なくとも1種のモノマーを重合してなるアクリル樹脂、カルボキシル基を有するロジン系樹脂とダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合してなる誘導体化合物の少なくともいずれかの樹脂と、チキソ剤と、活性剤と、溶剤とを含み、これを加熱して形成するフラックス固化物に−40℃/30分〜125℃/30分を1サイクルとする冷熱衝撃試験を2000サイクル与えた後の前記フラックス固化物の接着力が0.2N/mm
2以上となるフラックスが好ましく用いられる。なお、当該接着力は、規格番号JIS C60068−2−21に準拠して測定する。
【0059】
前記鉛フリーはんだ合金とフラックスとの配合比率は、はんだ合金:フラックスの比率で65:35から95:5であることが好ましい。より好ましい配合比率は85:15から93:7であり、特に好ましい配合比率は87:13から92:8である。
【0060】
(3)電子回路基板
本実施形態の電子回路基板の構成を
図1を用いて説明する。本実施形態の電子回路基板100は、基板1と、絶縁層2と、電極部3と、電子部品4と、はんだ接合体10とを有する。はんだ接合体10は、はんだ接合部6とフラックス残渣7とを有し、電子部品4は、外部電極5と、端部8を有する。
基板1としては、プリント配線板、シリコンウエハ、セラミックパッケージ基板等、電子部品の搭載、実装に用いられるものであればこれらに限らず基板1として使用することができる。
電極部3は、はんだ接合部6を介して電子部品4の外部電極5と電気的に接合している。
またはんだ接合部6は、本実施形態に係るはんだ合金を用いて形成されている。
【0061】
このような構成を有する本実施形態の電子回路基板100は、はんだ接合部6が亀裂進展抑制効果を発揮する合金組成であるため、はんだ接合部6に亀裂が生じた場合であってもその亀裂の進展を抑制し得る。また基板1がCuOSP基板であった場合にも、はんだ接合部6におけるボイドの発生を抑制することができる。
更には、本実施形態の電子回路基板100は、電子部品4にNi/Pd/AuめっきやNi/Auめっきがなされていない場合であっても、はんだ接合部6と電子部品4との界面付近における亀裂進展抑制効果をも発揮することができる。
【0062】
このような電子回路基板100は、例えば以下のように作製される。
先ず、所定のパターンとなるように形成された絶縁層2及び電極部3を備えた基板1上に、前記ソルダペースト組成物を上記パターンに従い印刷する。
次いで印刷後の基板1上に電子部品4を実装し、これを230℃から260℃の温度でリフローを行う。このリフローにより基板1上にはんだ接合部6及びフラックス残渣7を有するはんだ接合体10が形成されると共に、基板1と電子部品4とが電気的接合された電子回路基板100が作製される。
【0063】
またこのような電子回路基板100を組み込むことにより、本実施形態の電子制御装置が作製される。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳述する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
フラックスの作製
以下の各成分を混練し、実施例及び比較例に係るフラックスを得た。
水添酸変性ロジン(製品名:KE−604、荒川化学工業(株)製) 51質量%
硬化ひまし油 6質量%
ドデカン二酸 10質量%(製品名:SL−12、岡村製油(株)製)
マロン酸 1質量%
ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩 2質量%
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(製品名:イルガノックス245、BASFジャパン(株)製) 1質量%
ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル 29質量%
【0066】
ソルダペースト組成物の作製
前記フラックス11.0質量%と、表1及び表2に記載の各鉛フリーはんだ合金の粉末(粉末粒径20μmから38μm)89.0質量%とを混合し、実施例
14から実施例27、参考例1
から参考例13及び比較例1から17に係る各ソルダペースト組成物を作製した。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
(1)はんだ亀裂試験(−40℃から125℃)
・3.2mm×1.6mmチップ部品(チップA)
3.2mm×1.6mmのサイズのチップ部品(Ni/Snめっき)と、当該サイズのチップ部品を実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記チップ部品を接続する電極(1.6mm×1.2mm)とを備えたガラスエポキシ基板(CuOSP基板)と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペースト組成物を印刷し、それぞれ前記チップ部品を搭載した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP−538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各ガラスエポキシ基板を加熱してそれぞれに前記ガラスエポキシ基板と前記チップ部品とを電気的に接合するはんだ接合部を形成し、前記チップ部品を実装した。この際のリフロー条件は、プリヒートを170℃から190℃で110秒間、ピーク温度を245℃とし、200℃以上の時間が65秒間、220℃以上の時間が45秒間、ピーク温度から200℃までの冷却速度を3℃から8℃/秒とし、酸素濃度は1500±500ppmに設定した。
次に、−40℃(30分間)から125℃(30分間)の条件に設定した冷熱衝撃試験装置(製品名:ES−76LMS、日立アプライアンス(株)製)を用い、冷熱衝撃サイクルを1,000、1,500、2,000、2,500、3,000サイクル繰り返す環境下に前記各ガラスエポキシ基板をそれぞれ曝した後これを取り出し、各試験基板を作製した。
次いで各試験基板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤及び硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol−25、丸本ストルアス(株)製)を用いて各試験基板に実装された前記チップ部品の中央断面が分かるような状態とし、形成されたはんだ接合部に発生した亀裂がはんだ接合部を完全に横断して破断に至っているか否かを走査電子顕微鏡(製品名:TM−1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察し、以下の基準にて評価した。その結果を表3及び表4に表す。なお、各冷熱衝撃サイクルにおける評価チップ数は10個とした。
◎:3,000サイクルまではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生しない
○:2,501から3,000サイクルの間ではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生
△:2,001から2,500サイクルの間ではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生
×:2,000サイクル未満ではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生
【0070】
・2.0×1.2mmチップ部品(チップB)
2.0×1.2mmのサイズのチップ部品(Ni/Snめっき)と、当該サイズのチップ部品を実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記チップ部品を接続する電極(1.25mm×1.0mm)とを備えたガラスエポキシ基板(CuOSP基板)を用いた以外は3.2mm×1.6mmチップ部品と同じ条件にて試験基板を作成し、且つ同じ方法にて評価した。その結果を表3及び表4に表す。
【0071】
(2)SnめっきSONにおけるはんだ亀裂試験
6mm×5mm×0.8tmmサイズの1.3mmピッチSON(Small Outline Non−leaded package)部品(端子数8ピン、製品名:STL60N3LLH5、STMicroelectronics社製)と、当該SON部品を実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記SON部品を接続する電極(メーカー推奨設計に準拠)とを備えたガラスエポキシ基板(CuOSP基板)と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペースト組成物を印刷し、それぞれに前記SON部品を搭載した。その後、冷熱衝撃サイクルを1,000、2,000、3,000サイクル繰り返す環境下に各ガラスエポキシ基板を置く以外は上記(1)はんだ亀裂試験と同じ条件にて前記ガラスエポキシ基板をリフロー及び冷熱衝撃を与え、各試験基板を作製した。
次いで各試験基板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤及び硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol−25、丸本ストルアス(株)製)を用いて各試験基板に実装された前記SON部品の端子中央断面が分かるような状態とし、はんだ接合部に発生した亀裂がはんだ接合部を完全に横断して破断に至っているか否かについて走査電子顕微鏡(製品名:TM−1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察した。この観察に基づき、はんだ接合部について、はんだ母材(本明細書においてはんだ母材とは、はんだ接合部のうちSON部品の電極の界面及びその付近以外の部分を指す。以下同じ。なお表3及び表4においては単に「母材」と表記する。)に発生した亀裂と、はんだ接合部とSON部品の電極の界面(の金属間化合物)に発生した亀裂に分けて以下のように評価した。その結果を表3及び表4に表す。なお、各冷熱衝撃サイクルにおける評価SON数は20個とし、SON1個あたりゲート電極の1端子を観察し、合計20端子の断面を確認した。
【0072】
・はんだ母材に発生した亀裂
◎:3,000サイクルまではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生しない
○:2,001から3,000サイクルの間ではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生
△:1,001から2,000サイクルの間ではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生
×:1,000サイクル未満ではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生
【0073】
・はんだ接合部とSON部品の電極の界面に発生した亀裂
◎:3,000サイクルまで前記界面を完全に横断する亀裂が発生しない
○:2,001から3,000サイクルの間で前記界面を完全に横断する亀裂が発生
△:1,001から2,000サイクルの間で前記界面を完全に横断する亀裂が発生
×:1,000サイクル未満で前記界面を完全に横断する亀裂が発生
【0074】
(3)はんだ亀裂試験(−40℃から150℃)
車載用基板等は寒暖差の非常に激しい過酷な環境下に置かれるため、これに用いられるはんだ合金は、このような環境下においても良好な亀裂進展抑制効果を発揮することが求められる。そのため、本実施例に係るはんだ合金がこのようなより過酷な条件下においても当該効果を発揮し得るかどうかを明確にすべく、液槽式冷熱衝撃試験装置を用いて−40℃から150℃の寒暖差におけるはんだ亀裂試験を行った。その条件は以下のとおりである。
はんだ接合部形成後の各ガラスエポキシ基板(CuOSP基板)を−40℃(30分間)から150℃(30分間)の条件に設定した液槽式冷熱衝撃試験装置(製品名:ETAC WINTECH LT80、楠本(株)製)を用いて冷熱衝撃サイクルを1,000、2,000、3,000サイクル繰り返す環境下に曝す以外は上記(1)はんだ亀裂試験と同じ条件にて、3.2×1.6mmチップ部品(チップA)搭載及び2.0×1.2mmチップ部品(チップB)搭載の各試験基板を作製した。
次いで各試験基板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤及び硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol−25、丸本ストルアス(株)、
製)を用いて各試験基板に実装された前記チップ部品の中央断面が分かるような状態とし、形成されたはんだ接合部に発生した亀裂がはんだ接合部を完全に横断して破断に至っているか否かを走査電子顕微鏡(製品名:TM−1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察し、以下の基準にて評価した。その結果を表3及び表4に表す。なお、各冷熱衝撃サイクルにおける評価チップ数は10個とした。
◎:3,000サイクルまではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生しない
○:2,001から3,000サイクルの間ではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生
△:1,001から2,000サイクルの間ではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生
×:1,000サイクル未満ではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生
【0075】
(4)ボイド試験
2.0×1.2mmのサイズのチップ部品(Ni/Snめっき)と、当該サイズのチップ部品を実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記チップ部品を接続する電極(1.25mm×1.0mm)とを備えたガラスエポキシ基板(CuOSP基板)と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペースト組成物を印刷し、それぞれ前記チップ部品を搭載した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP−538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各ガラスエポキシ基板を加熱してそれぞれに前記ガラスエポキシ基板と前記チップ部品とを電気的に接合するはんだ接合部を形成し、前記チップ部品を実装した各試験基板を作製した。この際のリフロー条件は、プリヒートを170℃から190℃で110秒間、ピーク温度を245℃とし、200℃以上の時間が65秒間、220℃以上の時間が45秒間、ピーク温度から200℃までの冷却速度を3℃から8℃/秒とし、酸素濃度は1500±500ppmに設定した。
次いで各試験基板の表面状態をX線透過装置(製品名:SMX−160E、(株)島津製作所製)で観察し、各試験基板中20箇所のランドにおいて、チップ部品の電極下の領域(
図3の破線で囲った領域(a))に占めるボイドの面積率(ボイドの総面積の割合。以下同じ。)とフィレットが形成されている領域(
図3の破線で囲った領域(b))に占めるボイドの面積率の平均値を求め、それぞれについて以下のように評価した。その結果を表3及び表4に表す。
◎:ボイドの面積率の平均値が3%以下であって、ボイド発生の抑制効果が極めて良好
○:ボイドの面積率の平均値が3%超5%以下であって、ボイド発生の抑制効果が良好
△:ボイドの面積率の平均値が5%超8%以下であって、ボイド発生の抑制効果が十分
×:ボイドの面積率の平均値が8%を超え、ボイド発生の抑制効果が不十分
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
以上に示す通り、実施例に係る鉛フリーはんだ合金を用いて形成したはんだ接合部は、寒暖の差が激しく振動が負荷されるような過酷な環境下にあっても、Cuを添加せずとも、そのチップのサイズを問わず、また電極にNi/Pd/AuめっきやNi/Auめっきがされているといないとを問わず、はんだ接合部及び前記界面付近における亀裂進展抑制効果と共に、はんだ合金のぬれ広がり性に劣るCuOSP基板を用いた場合であっても、電極下及びフィレットの双方においてボイドの抑制効果も発揮し得る。特に液槽式冷熱衝撃試験装置を用いて寒暖の差を−40℃から150℃とした非常に過酷な環境下においても、実施例のはんだ接合部は良好な亀裂抑制効果を奏することが分かる。
またNiとCoとを併用した実施例14から実施例27においては、特にフィレットのボイド抑制効果が良好であることが分かる。
【0079】
以上、本発明の鉛フリーはんだ合金は、車載用電子回路基板といった高い信頼性の求められる電子回路基板にも好適に用いることができる。更にこのような電子回路基板は、より一層高い信頼性が要求される電子制御装置に好適に使用することができる。