(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
人力駆動力の入力部から駆動輪に結合される結合部までの人力駆動力伝達経路に含まれる回転体の角加速度に基づいて、自転車の推進をアシスト可能なモータの出力を低下させる制御部を含み、
前記制御部は、前記角加速度が第1の所定値以上になると、前記モータの出力を低下させる、自転車用制御装置。
人力駆動力の入力部から駆動輪に結合される結合部までの人力駆動力伝達経路に含まれる回転体の角加速度に基づいて、自転車の推進をアシスト可能なモータの出力を低下させる制御部を含み、
前記制御部は、前記角加速度が第1の所定値以上になり、かつ、前記人力駆動力の単位時間あたりの減少量が第2の所定値以上になると、前記モータの出力を低下させる、自転車用制御装置。
人力駆動力の入力部から駆動輪に結合される結合部までの人力駆動力伝達経路に含まれる回転体の角加速度に基づいて、自転車の推進をアシスト可能なモータの出力を低下させる制御部を含み、
前記制御部は、前記角加速度が第1の所定値以上になったときのクランクの位相に基づいて、前記モータの出力を低下させる、自転車用制御装置。
人力駆動力の入力部から駆動輪に結合される結合部までの人力駆動力伝達経路に含まれる回転体の角加速度に基づいて、自転車の推進をアシスト可能なモータの出力を低下させる制御部を含み、
前記制御部は、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させるとき、クランクの位相が上死点または下死点に対応する位相にあるときよりも、前記クランクの位相が上死点と下死点との中間位置に対応する位相にあるときの方が、前記モータの出力が大きく低下するように前記モータを制御する、自転車用制御装置。
人力駆動力の入力部から駆動輪に結合される結合部までの人力駆動力伝達経路に含まれる回転体の角加速度に基づいて、自転車の推進をアシスト可能なモータの出力を低下させる制御部を含み、
前記制御部は、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させるとき、前記モータの出力を段階的に小さくする、自転車用制御装置。
人力駆動力の入力部から駆動輪に結合される結合部までの人力駆動力伝達経路に含まれる回転体の角加速度に基づいて、自転車の推進をアシスト可能なモータの出力を低下させる制御部を含み、
前記制御部は、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させるときに、前記モータとは異なる制動装置によって前記駆動輪を制動させる、自転車用制御装置。
人力駆動力の入力部から駆動輪に結合される結合部までの人力駆動力伝達経路に含まれる回転体の角加速度に基づいて、自転車の推進をアシスト可能なモータの出力を低下させる制御部を含み、
前記人力駆動力伝達経路は、変速機構を含み、
前記回転体は、前記人力駆動力伝達経路における前記変速機構の上流側に設けられ、
前記制御部は、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させるとき、前記駆動輪の回転速度と、クランクの回転速度とに基づいて、前記モータを制御する、自転車用制御装置。
人力駆動力の入力部から駆動輪に結合される結合部までの人力駆動力伝達経路に含まれる回転体の角加速度に基づいて、自転車の推進をアシスト可能なモータの出力を低下させる制御部を含み、
前記人力駆動力伝達経路は、変速機構を含み、
前記回転体は、前記人力駆動力伝達経路における前記変速機構の上流側に設けられ、
前記制御部は、前記変速機構が自転車の変速比を小さくするように動作していないとき、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させる、自転車用制御装置。
人力駆動力の入力部から駆動輪に結合される結合部までの人力駆動力伝達経路に含まれる回転体の角加速度に基づいて、自転車の推進をアシスト可能なモータの出力を低下させる制御部を含み、
前記制御部は、前記モータを前記人力駆動力に応じて制御し、前記回転体の角加速度に応じて、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの応答速度を変更する、自転車用制御装置。
人力駆動力の入力部から駆動輪に結合される結合部までの人力駆動力伝達経路に含まれる回転体の角加速度に基づいて、自転車の推進をアシスト可能なモータの出力を低下させる制御部を含み、
前記制御部は、前記モータを前記人力駆動力に応じて制御し、前記回転体の角加速度が第3の所定値以上になると、前記人力駆動力が減少するときの、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの応答速度を高くする、自転車用制御装置。
人力駆動力の入力部から駆動輪に結合される結合部までの人力駆動力伝達経路に含まれる回転体の角加速度に基づいて、自転車の推進をアシスト可能なモータの出力を低下させる制御部を含み、
前記制御部は、前記モータを前記人力駆動力に応じて制御し、前記回転体の角加速度に応じて、前記モータの出力の増減を繰り返すことによって前記モータの出力を低下させる、自転車用制御装置。
人力駆動力の入力部から駆動輪に結合される結合部までの人力駆動力伝達経路に含まれる回転体の角加速度に基づいて、自転車の推進をアシスト可能なモータの出力を低下させる制御部を含み、
前記制御部は、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させる制御を、前記駆動輪の回転速度に基づいて停止する、自転車用制御装置。
人力駆動力の入力部から駆動輪に結合される結合部までの人力駆動力伝達経路に含まれる回転体の角加速度に基づいて、自転車の推進をアシスト可能なモータの出力を低下させる制御部を含み、
前記制御部は、前記角加速度が第1の所定値以上になると、前記モータの出力を低下させ、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させる制御を、前記駆動輪の回転速度に基づいて停止し、前記角加速度が第1の所定値以上になる前の前記駆動輪の回転速度またはクランクの回転速度に基づいて、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させる制御を停止する、自転車用制御装置。
人力駆動力の入力部から駆動輪に結合される結合部までの人力駆動力伝達経路に含まれる回転体の角加速度に基づいて、自転車の推進をアシスト可能なモータの出力を低下させる制御部を含み、
前記制御部は、自転車のクランクアームが上死点または下死点を通過したとき、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させる制御を停止する、自転車用制御装置。
人力駆動力の入力部から駆動輪に結合される結合部までの人力駆動力伝達経路に含まれる回転体の角加速度に基づいて、自転車の推進をアシスト可能なモータの出力を低下させる制御部を含み、
前記制御部は、前記人力駆動力が所定の駆動力以上になったとき、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させる制御を停止する、自転車用制御装置。
前記制御部は、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させるとき、前記クランクの位相が上死点または下死点に対応する位相にあるときよりも、前記クランクの位相が上死点と下死点との中間位置に対応する位相にあるときの方が、前記モータの出力が大きく低下するように前記モータを制御する、請求項25〜27のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
前記制御部は、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させるとき、前記駆動輪の回転速度と、クランクの回転速度とに基づいて、前記モータを制御する、請求項31に記載の自転車用制御装置。
前記制御部は、前記駆動輪の回転速度が、前記回転体の回転速度と自転車の変速比とに基づいて演算される前記駆動輪の回転速度の推定値よりも大きいとき、前記駆動輪の回転速度が、前記推定値以下のときよりも、前記モータの出力を大きく低下させる、請求項32に記載の自転車用制御装置。
前記制御部は、前記モータを前記人力駆動力に応じて制御し、前記回転体の角加速度に応じて、前記人力駆動力が減少するときの、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの応答速度を変更する、請求項1〜34のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
前記制御部は、前記モータを前記人力駆動力に応じて制御し、前記回転体の角加速度に応じて、前記モータの出力の増減を繰り返すことによって前記モータの出力を低下させる、請求項1〜38のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
前記制御部は、前記角加速度が第1の所定値以上になると、前記モータの出力を低下させ、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させる制御を、前記駆動輪の回転速度に基づいて停止し、前記角加速度が第1の所定値以上になる前の前記駆動輪の回転速度またはクランクの回転速度に基づいて、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させる制御を停止する、請求項1〜39のいずれか一項に記載の自転車用制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自転車は、例えば、路面の摩擦係数等の路面の状況によって車輪がスリップ、または、空転することがある。このとき、上記自転車用駆動装置を搭載する自転車においては、モータのトルクが自転車の挙動に影響を与える。
本発明の目的は、自転車の挙動の安定性が向上する自転車用制御装置および自転車用駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に従う自転車用制御装置の一形態は、人力駆動力の入力部から駆動輪に結合される結合部までの人力駆動力伝達経路に含まれる回転体の角加速度に基づいて、自転車の推進をアシスト可能なモータの出力を低下させる制御部を含む。
上記制御部は、回転体の角加速度に基づいてモータの出力を低下させる。このため、駆動輪のスリップまたは空転が生じたときにモータの出力が低下するため、自転車の挙動の安定性が向上する。
【0006】
(2)前記(1)に記載の自転車用制御装置において、前記回転体は、クランク軸を含む。
上記回転体は、クランク軸を含むため、クランクの角加速度を検出することによって簡便に駆動輪のスリップまたは空転の発生を検出することができる。
【0007】
(3)前記(1)または(2)に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させるとき、前記モータに制動動作をさせる。
上記制御部は、回転体の角加速度に基づいてモータの出力を低下させるとき、モータに制動動作をさせる。このため、駆動輪のスリップまたは空転が生じたときに駆動輪の回転速度を早期に適切な速度まで低下させることができる。
【0008】
(4)前記(3)に記載の自転車用制御装置において、前記制動動作は、回生動作を含む。
上記制動動作は回生動作を含むため、自転車用制御装置が使用する電力の効率化に貢献できる。
【0009】
(5)前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の自転車用制御装置において、前記回転体の回転速度に応じた信号を出力する第1のセンサをさらに含み、前記制御部は、前記第1のセンサが出力する信号に基づいて、前記モータを制御する。
上記制御部は、回転体の回転速度に応じた信号を出力する第1のセンサの出力する信号に基づいてモータを制御するとき、第1のセンサを通じて回転体の回転速度を簡単に取得することができる。
【0010】
(6)前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動力に基づいて、前記モータを制御する。
上記制御部は、人力駆動力に基づいてモータを制御するため、回転体の角加速度のみに基づいて駆動輪のスリップまたは空転を検出する場合と比較して、駆動輪のスリップまたは空転の検出精度を向上できる。
【0011】
(7)前記(6)に記載の自転車用制御装置において、前記人力駆動力に応じた信号を出力する第2のセンサをさらに含み、前記制御部は、前記第2のセンサが出力する信号に基づいて、前記モータを制御する。
上記制御部は、人力駆動力に応じた信号を出力する第2のセンサの出力する信号に基づいてモータを制御するとき、第2のセンサを通じて人力駆動力を簡単に取得することができる。
【0012】
(8)前記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記角加速度が第1の所定値以上になると、前記モータの出力を低下させる。
上記制御部は、回転体の角加速度が第1の所定値以上になると、モータの出力を低下させるため、駆動輪のスリップまたは空転に適合した第1の所定値を用いることによって自転車のスリップまたは空転が生じたときに適切にモータの出力を低下させることができる。
【0013】
(9)前記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記角加速度が第1の所定値以上になり、かつ、前記人力駆動力の単位時間あたりの減少量が第2の所定値以上になると、前記モータの出力を低下させる。
上記制御部は、回転体の角加速度が第1の所定値以上になり、かつ、人力駆動力の単位時間あたりの減少量が第2の所定値以上になると、モータの出力を低下させるため、自転車のスリップまたは空転に適合した第2の所定値を用いることによって自転車のスリップまたは空転が生じたときに適切にモータの出力を低下させることができる。
【0014】
(10)前記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、クランクの位相に応じて前記モータの出力を低下させる。
上記制御部は、クランクの位相に応じてモータの出力を低下させるため、モータの出力を人力駆動力に応じて適切に低下させることができる。
【0015】
(11)前記(10)に記載の自転車用制御装置において、前記クランクの位相に応じた信号を出力する第3のセンサをさらに含み、前記制御部は、第3のセンサが出力する信号に基づいて前記モータを制御する。
上記制御部は、クランクの位相に応じた信号を出力する第3のセンサの出力する信号に基づいてモータを制御するとき、第3のセンサを通じてクランクの位相を簡単に取得することができる。
【0016】
(12)前記(10)または(11)に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記角加速度が第1の所定値以上になったときの前記クランクの位相に基づいて、前記モータの出
力を低下させる。
上記制御部は、回転体の角加速度が第1の所定値以上になったときのクランクの位相に基づいてモータの出力を低下させるため、駆動輪にスリップまたは空転が生じたときのクランクの位相に基づいてモータを制御することができる。
【0017】
(13)前記(10)〜(12)のいずれか一項に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させるとき、前記クランクの位相が上死点または下死点に対応する位相にあるときよりも、前記クランクの位相が上死点と下死点との中間位置に対応する位相にあるときの方が、前記モータの出力が大きく低下するように前記モータを制御する。
クランクの位相が上死点と下死点との中間位置にあるとき、人力駆動力は大きくなるため、人力駆動力に基づくモータの出力も大きくなる。制御部は、回転体の角加速度に基づいてモータの出力を低下させるとき、クランクの位相が上死点または下死点に対応する位相にあるときよりも、クランクの位相が中間位置に対応する位相にあるときの方が、モータの出力が大きく低下するようにモータを制御する。このため、クランクの位相が上死点または下死点に対応する位相でスリップまたは空転したときでも、モータの出力を適切に低下させることができる。
【0018】
(14)前記(1)〜(13)のいずれか一項に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させるとき、前記モータの出
力を段階的に小さくする。
上記制御部は、回転体の角加速度に基づいてモータの出力を低下させるとき、モータの出
力を段階的に小さくする。このため、回転体の角加速度に基づいてモータの出力を連続的に変化させる場合と比較して演算にかかる負荷を低減できる。
【0019】
(15)前記(1)〜(14)のいずれか一項に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させるときに、前記駆動輪を制動する制動装置によって前記駆動輪を制動させる。
上記制御部は、駆動輪を制動する制動装置を用いて駆動輪の回転速度を制御するので、モータのみを制御して駆動輪の回転速度を制御するよりも駆動輪の回転速度が適切な回転速度に低下するまでの時間を短くすることができる。
【0020】
(16)前記(1)〜(15)のいずれか一項に記載の自転車用制御装置において、前記人力駆動力伝達経路は、変速機構を含み、前記回転体は、前記人力駆動力伝達経路における前記変速機構の上流側に設けられる。
上記回転体は、人力駆動力伝達経路における変速機構の上流側に設けられるため、変速機構によって変速される前の回転速度に基づいてモータを制御することができる。
【0021】
(17)前記(16)に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させるとき、前記駆動輪の回転速度と、クランクの回転速度とに基づいて、前記モータを制御する。
上記制御部は、回転体の角加速度に基づいてモータの出力を低下させるとき、駆動輪の回転速度と、クランクの回転速度とに基づいて、モータを制御する。したがって、例えば、駆動輪の回転速度と、クランクの回転速度との比較によって、駆動輪が空転しているかスリップしているかの判定を行うことができるため、駆動輪の空転およびスリップに適したモータの制御を行うことができる。
【0022】
(18)前記(17)に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記駆動輪の回転速度が、前記回転体の回転速度と自転車の変速比とに基づいて演算される前記駆動輪の回転速度の推定値よりも大きいとき、前記駆動輪の回転速度が、前記推定値以下のときよりも、前記モータの出力を大きく低下させる。
駆動輪の回転速度が高いほど、駆動輪が地面と接触したときの自転車の挙動が不安定になるおそれがある。上記制御部は、駆動輪の回転速度が推定値よりも大きいとき、駆動輪の回転速度が推定値以下のときよりも、モータの出力を大きく低下させることができる。このため、駆動輪の空転時において自転車の挙動を適切に安定させることができる。
【0023】
(19)前記(16)〜(18)のいずれか一項に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記変速機構が自転車の変速比を小さくするように動作していないとき、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させる。
上記制御部は、変速比を小さくする動作が行われているときには回転体の角加速度に基づいてモータの出力を低下させない。このため、変速比を小さくすることに伴う駆動輪の回転速度の上昇を駆動輪のスリップまたは空転と誤検出するおそれを低減できる。
【0024】
(20)前記(1)〜(19)のいずれか一項に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記モータを前記人力駆動力に応じて制御し、前記回転体の角加速度に応じて、前記人力駆動力が減少するときの、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの応答速度を変更する。
上記制御部は、駆動輪のスリップまたは空転が生じたときに人力駆動力が減少するときの人力駆動力の変化に対するモータの応答速度を変更することによって、モータの出力を低下させることができる。
【0025】
(21)前記(20)に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記回転体の角加速度が第3の所定値以上になると、前記応答速度を高くする。
上記制御部は、回転体の角加速度が第3の所定値以上になると応答速度を高くするため、回転体の角加速度が第3の所定値以上になると人力駆動力が低下しやすくなる。
【0026】
(22)前記(21)に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記応答速度を高くした後、所定期間が経過すると、前記応答速度を高くする制御を停止する。
上記制御部は、応答速度を高くした後、所定期間が経過すると、応答速度を高くする制御を停止する。このため、駆動輪のスリップまたは空転が生じたときにモータの応答速度が高い状態が過度に継続されない。
【0027】
(23)前記(21)に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記応答速度を高くした後、自転車のクランクアームが上死点または下死点を通過したとき、前記応答速度を高くする制御を停止する。
上記制御部は、応答速度を高くした後、自転車のクランクアームが上死点または下死点を通過したとき、応答速度を高くする制御を停止する。このため、駆動輪のスリップまたは空転が生じたときにモータの応答速度が高い状態が過度に継続されない。
【0028】
(24)前記(1)〜(23)のいずれか一項に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記モータを前記人力駆動力に応じて制御し、前記回転体の角加速度に応じて、前記モータの出力の増減を繰り返すことによって前記モータの出力を低下させる。
上記制御部は、モータの出力の増減を繰り返すことによってモータの出力を低下させるため、モータの出力が急激に低下することが抑制される。このため、例えば凹凸の多い路面を自転車が走行するときに生じる短期間の駆動輪のスリップまたは空転が発生したときに運転者が意図しないモータの出力の大きな低下が生じにくい。
【0029】
(25)前記(1)〜(24)のいずれか一項に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させる制御を、前記駆動輪の回転速度に基づいて停止する。
上記制御部は、回転体の角加速度に基づいてモータの出力を低下させる制御を、駆動輪の回転速度に基づいて停止する。このため、駆動輪のスリップまたは空転が終了したときにモータの出力の低下を終了させることができる。
【0030】
(26)前記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記角加速度が第1の所定値以上になると、前記モータの出力を低下させ、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させる制御を、前記駆動輪の回転速度に基づいて停止し、前記角加速度が第1の所定値以上になる前の前記駆動輪の回転速度またはクランクの回転速度に基づいて、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させる制御を停止する。
上記制御部は、回転体の角加速度が第1の所定値以上になる前の駆動輪の回転速度またはクランクの回転速度に基づいて、回転体の角加速度に基づいてモータの出力を低下させる制御を停止する。このため、駆動輪の回転速度を回転体の角加速度に基づいてモータの出力を低下させる制御を開始する前の駆動輪にスリップまたは空転が生じる前の回転速度に近づけることができる。
【0031】
(27)前記(1)〜(24)のいずれか一項に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させる制御を、予め定める時間に応じて停止する。
上記制御部は、回転体の角加速度に基づいてモータの出力を低下させる制御を、予め定める時間に応じて停止するため、駆動輪のスリップまたは空転が生じたときのモータの出力の低下を適切なタイミングで停止することができる。
【0032】
(28)前記(1)〜(24)のいずれか一項に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、自転車のクランクアームが上死点または下死点を通過したとき、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させる制御を停止する。
上記制御部は、自転車のクランクアームが上死点または下死点を通過したとき、モータの出力を低下させる制御を停止する。このため、駆動輪のスリップまたは空転が生じたときに過度にモータの出力が低い状態が継続されない。
【0033】
(29)前記(1)〜(24)のいずれか一項に記載の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動力が所定の駆動力以上になったとき、前記回転体の角加速度に基づいて前記モータの出力を低下させる制御を停止する。
上記制御部は、人力駆動力が所定の駆動力以上になったときに、回転体の角加速度に基づいてモータの出力を低下させる制御を停止するため、駆動輪のスリップまたは空転が生じたときに過度にモータの出力が低い状態が継続されない。
【0034】
(30)本発明に従う自転車用制御装置の一形態は、クランクの回転をモータに伝達可能な駆動ユニットの制御装置であって、人力駆動力の入力部から駆動輪までの第1の動力伝達経路に含まれる第1の回転体の角加速度、または自転車の推進をアシスト可能なモータから前記駆動輪までの第2の動力伝達経路に含まれる第2の回転体の角加速度に基づいて、前記モータによる負荷を制御する制御部を含む。
上記制御部は、第1の回転体または第2の回転体の角加速度に基づいてモータの出力による負荷を制御する。このため、駆動輪のスリップまたは空転が生じたときに、自転車の挙動の安定性が向上する。
【0035】
(31)本発明に従う自転車用制御装置の一形態は、自転車の推進をアシスト可能なモータを、人力駆動力に応じて制御する制御部を含み、前記制御部は、前記自転車の駆動輪がスリップまたは空転したとき、前記人力駆動力が減少するときの、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの応答速度を高くする。
上記制御部は、駆動輪のスリップまたは空転が生じたときに人力駆動力が減少するときの人力駆動力の変化に対するモータの応答速度を高くすることによって、モータの出力を低下させることができる。このため、駆動輪のスリップまたは空転が生じたときに、自転車の挙動の安定性が向上する。
【0036】
(32)本発明に従う自転車用駆動装置の一形態は、前記(1)〜(31)のいずれか一項に記載の自転車用制御装置と、前記モータとを含む。
上記自転車用駆動装置は、自転車の挙動の安定性を向上できる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の自転車用制御装置および自転車用駆動装置は、自転車の挙動の安定性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(第1の実施形態)
図1〜
図4を参照して、第1の実施形態の自転車用駆動装置を搭載する自転車について説明する。
【0040】
図1に示されるとおり、自転車10は、前輪12、後輪14、自転車本体16、人力駆動力伝達経路18、操作部22、バッテリユニット24、および、自転車用駆動装置60を備える。本実施形態では、後輪14が、駆動輪である。自転車本体16は、フレーム26、フレーム26に接続されるフロントフォーク28、および、フロントフォーク28にステム30Aを介して着脱可能に接続されるハンドルバー30Bを備えている。フロントフォーク28は、フレーム26に支持されて、前輪12の車軸12Aに接続される。自転車10には、前輪12、後輪14をそれぞれ制動する制動装置(図示略)と、制動装置を制御する制動操作装置(図示略)とが設けられている。
【0041】
図2に示されるとおり、自転車10は、人力駆動力が人力駆動力伝達経路18を介して後輪14に伝達されることによって走行する。人力駆動力伝達経路18は、変速機構20、クランク32、および一対のペダル38を含む。変速機構20は、フロントスプロケット36、リアスプロケット40、および、チェーン42を含む。ペダル38は、人力駆動力の入力部を含む。リアスプロケット40は、後輪14との結合部である。
【0042】
図1に示されるとおり、クランク32は、回転体44、および、一対のクランクアーム46を含む。回転体44は、フレーム26またはフレーム26に連結されるモータ62のハウジング62Aに回転可能に支持される。回転体44は、クランク軸を含む。一対のクランクアーム46は、回転体44に取り付けられている。一対のペダル38は、ペダル本体38Aおよびペダル軸38Bを含む。ペダル軸38Bは、クランクアーム46のそれぞれに連結される。ペダル本体38Aは、ペダル軸38Bに対する回転が可能な状態でペダル軸38Bのそれぞれに支持される。
【0043】
フロントスプロケット36は、回転体44に連結されている。フロントスプロケット36は、回転体44と同軸に設けられる。フロントスプロケット36は、回転体44と相対回転しないように連結されてもよいし、回転体44が前転するときには、フロントスプロケット36も前転するようにワンウェイクラッチ(図示略)を介して連結されてもよい。フロントスプロケット36は、1または複数のスプロケットを含む。
【0044】
リアスプロケット40は、後輪14の車軸14Aまわりに回転可能に後輪14に取り付けられている。リアスプロケット40は、後輪14に連結される。後輪14は、ハブ(図示略)を含む。ハブは、ハブシェルと、リアスプロケット40を保持する駆動体と、ハブシェルおよび駆動体との間に設けられるワンウェイクラッチとを含む。チェーン42は、フロントスプロケット36とリアスプロケット40とに巻き掛けられている。ペダル38に加えられる人力駆動力によってクランク32が一方向に回転するとき、フロントスプロケット36、チェーン42、および、リアスプロケット40によって、後輪14も一方向に回転する。なお、クランク32および後輪14が一方向に回転するとき、自転車10は前進する。
【0045】
変速機構20は、変速機50をさらに含む。変速機50は、第1の変速機50Aおよび第2の変速機50Bを含む。フロントスプロケット36およびリアスプロケット40は、それぞれ複数のスプロケットを含んでいるが、フロントスプロケット36が1つのスプロケットのみを含み、リアスプロケット40が複数のスプロケットを含む構成としてもよい。また、フロントスプロケット36が複数のスプロケットを含み、リアスプロケット40が1つのスプロケットのみを含む構成としてもよい。フロントスプロケット36およびリアスプロケット40の一方が1つのスプロケットのみを含む構成の場合、第1の変速機50Aおよび第2の変速機50Bの一方は省略できる。第1の変速機50Aは、フロントスプロケット36まわりに設けられ、複数のスプロケット間でチェーン42を掛け替え可能な外装変速機である。第1の変速機50Aは、フロントディレーラである。第2の変速機50Bは、リアスプロケット40まわりに設けられ、複数のスプロケット間でチェーン42を掛け替え可能な外装変速機である。第2の変速機50Bは、リアディレーラである。回転体44は、人力駆動力伝達経路18における変速機構20の上流側に設けられる。第1の変速機50Aおよび第2の変速機50Bは、それぞれアクチュエータ48を含む。変速機構20は、フロントスプロケット36およびリアスプロケット40がそれぞれ含む複数のスプロケット間でチェーン42を掛け替えることによって、自転車10のクランク32の回転数に対する後輪14の回転数(以下、「変速比r」)を変更する。
【0046】
図1に示す操作部22は、ハンドルバー30Bに取り付けられる。操作部22は、制御装置70の制御部72(
図3参照)と図示しないケーブルによって電気的に接続されている。操作者によって操作部22が操作されるとき、操作部22はシフトアップ信号またはシフトダウン信号を制御部72に送信する。なお、シフトアップは変速比rが大きくなる方向への変速であり、シフトダウンは変速比rが小さくなる方向への変速である。なお、操作部22と制御部72とを無線通信によって通信可能に接続することもできる。操作部22は、第1の変速機50Aと第2の変速機50Bとを個別に操作するために2つの操作部を含んでいてもよい。また、操作部22は、第1の変速機50Aと第2の変速機50Bとを予め定めるシフトルートで連動して変速させるための1つの操作部のみを含んでいてもよい。シフトルートは、第1の変速機50Aおよび第2の変速機50Bの動作によって決定する自転車10の変速比rが段階的に大きくなる第1のルートと、自転車10の変速比rが段階的に小さくなる第2のルートとを含む。制御部72は、シフトアップ信号を受信したとき、第1のルートに沿って第1の変速機50Aおよび第2の変速機50Bの少なくとも一方を制御する。制御部72は、シフトダウン信号を受信したとき、第2のルートに沿って第1の変速機50Aおよび第2の変速機50Bの少なくとも一方を制御する。
【0047】
バッテリユニット24は、バッテリ52、および、バッテリ52をフレーム26に着脱可能に取り付けるためのバッテリホルダ54を備えている。バッテリ52は、1または複数のバッテリセルを含む。バッテリ52は、充電池によって構成される。バッテリ52は、自転車用駆動装置60のモータ62に電気的に接続されて、モータ62に電力を供給する。
【0048】
図3に示されるとおり、自転車用駆動装置60は、自転車用制御装置70(以下、単に「制御装置70」)と、モータ62とを含む。一例では、自転車用駆動装置60は、モータ62の駆動回路64をさらに含む。制御装置70は、バッテリ52に電気的に接続されて、バッテリ52から電力が供給される。
【0049】
図2に示すモータ62は、人力駆動力をアシスト可能である。モータ62は、自転車10の推進をアシスト可能である。モータ62は、
図1に示すフレーム26に支持されるハウジング62Aに設けられる。
図2に示すモータ62は、電気モータによって構成される。モータ62は、回転体44に結合される。モータ62と回転体44との間の動力伝達経路には、クランク32を前転させたときに回転体44の回転力によってモータ62を回転しないようにワンウェイクラッチ(図示略)が設けられるのが好ましい。別の例では、モータ62は、チェーン42、または、後輪14に結合される。モータ62は、回生可能に構成されている。後輪14にスリップまたは空転が生じたとき、制御装置70の制御部72は、モータ62の出力TMを低下させる。
【0050】
制御装置70は、制御部72を含む。一例では、制御装置70は、記憶部74、第1のセンサ76、第2のセンサ78、第3のセンサ80、第4のセンサ82、および、変速状態検出装置84をさらに含む。
【0051】
図3に示されるとおり、第1のセンサ76は、回転体44の回転速度(以下、「回転速度CA」)に応じた信号を出力する。回転速度CAは、クランク32の回転速度である。第1のセンサ76は、回転体44の回転位置に応じた信号も出力する。第1のセンサ76は、フレーム26に取り付けられる。第1のセンサ76は、第1の磁石86の磁界を検出する第1の素子76Aと、第2の磁石88の磁界を検出する第2の素子76Bとを含む。第1の磁石86は、環状の磁石であって、周方向に複数の磁極が交互に並んで配置されている。第1の磁石86は、回転体44またはクランクアーム46に設けられ、回転体44に同軸に配置される。第2の磁石88は、回転体44または左右のクランクアーム46のいずれか一方に取り付けられる。
【0052】
第1のセンサ76は、ケーブルによって制御部72と電気的に接続されている。第1のセンサ76は、第1の素子76A、第2の素子76B、および、演算部76Cを含む。第1のセンサ76は、回転体44の回転速度に応じた信号および回転体44の回転角度に応じた信号を制御部72に与える。第1のセンサ76は、いわゆるケイデンスセンサとして機能する。第1の素子76Aは、第1の磁石86の磁界の変化に応じた信号を出力する。第1の素子76Aは、フレーム26またはモータ62のハウジング62Aに対するクランク32の相対角度位置を検出する。第1の素子76Aは、クランク32が1回転するとき、360°を同極の磁極の数で割った角度を1周期とした信号を出力する。第2の素子76Bは、第2の磁石88の磁界を検出する。第2の素子76Bは、フレーム26またはモータ62のハウジング62Aに対するクランク32の基準角度位置を検出する。第2の素子76Bは、クランク軸の1回転を1周期とした信号を出力する。
【0053】
演算部76Cは、第1の素子76Aおよび第2の素子76Bの少なくとも一方の出力に基づいて、回転体44の回転速度RAを演算する。演算部76Cは、回転体44の回転速度RAを表す情報および回転体44の回転位相を表す情報を制御部72に送信する。すなわち、第1のセンサ76は、クランク32の位相に応じた信号を出力する第3のセンサ80と共通化されている。第1のセンサ76が検出可能なクランク32の最小角度は、180度以下であり、好ましくは15度であり、さらに好ましくは、6度である。演算部76Cは、制御部72に含まれていてもよい。第1のセンサ76と、第3のセンサ80とは別体で設けられていてもよい。第1のセンサ76は、第1の素子76Aおよび第2の素子76Bの一方のみを含んでいてもよい。第1のセンサ76が第1の素子76Aのみを含む場合は、第3のセンサ80は第1のセンサ76と別体に設けられて、第2の素子76Bと同様の素子を含んで構成される。
【0054】
第2のセンサ78は、人力駆動力Tに応じた信号を出力する。第2のセンサ78は、クランク32(
図1参照)に与えられる人力駆動力Tを検出する。第2のセンサ78は、
図2に示す回転体44からフロントスプロケット36までの間に設けられてもよく、回転体44またはフロントスプロケット36に設けられてもよく、クランクアーム46またはペダル38に設けられてもよい。第2のセンサ78は、例えば、歪センサ、磁歪センサ、光学センサおよび圧力センサなどを用いて実現することができ、クランクアーム46またはペダル38に加えられる人力駆動力Tに応じた信号を出力するセンサであれば、いずれのセンサを採用することもできる。
【0055】
第4のセンサ82は、後輪14(
図1参照)の回転速度を検出する。第4のセンサ82は、ボルトおよびナット、またはバンドなどによってフレーム26に固定される。第4のセンサ82は、ケーブルによって制御部72と電気的に接続されている。第4のセンサ82は、後輪14のスポーク14Bに取り付けられる磁石90の磁界を検出する素子82Aおよび演算部82Bを含む。第4のセンサ82は、いわゆる車速センサである。素子82Aは、後輪14(
図1参照)の1回転を1周期とした信号を出力する。演算部82Bは、素子82Aの出力から後輪14の回転速度RAを演算し、制御部72に出力する。磁石90に代えて第1の磁石86のような周方向に複数の磁極が交互に並んで配置される環状の磁石をハブに取付けて、第4のセンサ82によって検出してもよい。この場合、後輪14の回転速度をより正確に検出することができる。
【0056】
変速状態検出装置84は、ケーブルによって制御部72に電気的に接続されている。変速状態検出装置84は、変速機構20の現在の変速状態を検出する。変速状態検出装置84は、変速機50A,50Bの変速位置、すなわち変速比rに関連する情報を出力する。変速状態検出装置84は、アクチュエータ48の変位量、または、変速機50A,50Bの所定位置の回転角度などを検出する。変速状態検出装置84は、ポテンショメータ、または、磁石とこの磁石を検出する磁気センサとを含む検出装置などによって構成される。
【0057】
制御部72は、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。記憶部74には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部74には、第1のセンサ76、第2のセンサ78、第3のセンサ80、第4のセンサ82、および、変速状態検出装置84の出力が記憶される。
【0058】
制御部72は、モータ62および変速機構20を制御する。制御部72は、第2のセンサ78が出力する信号に基づいて、モータ62を制御する。制御部72は、人力駆動力Tに基づいて、モータ62を制御する。制御部72は、記憶部74に記憶される人力駆動力Tとモータ62の出力TMとの関係を示すマップまたは計算式に基づいて、駆動回路64を制御してモータ62に電力を供給する。駆動回路64は、インバータ回路を含む。制御部72は、操作部22からの変速信号に基づいて変速機構20を制御する。制御部72は、操作部22からシフトアップ信号が入力されたとき、変速比rが大きくなるように第1の変速機50Aおよび第2の変速機50Bの少なくとも一方のアクチュエータ48に電力を供給して変速機50を動作させる。制御部72は、操作部22からシフトダウン信号が入力されたとき、変速比rが小さくなるように第1の変速機50Aまたは第2の変速機50Bの少なくとも一方のアクチュエータ48に電力を供給して変速機50を動作させる。
【0059】
制御部72は、後輪14の回転速度RAの推定値RXを回転体44の回転速度CAに基づいて演算する。制御部72は、回転体44の回転速度CAにそのときの変速比rを乗算することによって推定値RXを演算する。
【0060】
制御部72は、回転体44の角加速度DCを演算する。角加速度DCは、回転体44の正回転時の加速度である。回転体44の正回転は、自転車10が前進するときの回転体44の回転方向に等しい。制御部72は、例えば、回転体44の回転速度CAを微分することによって角加速度DCを演算してもよく、回転体44の回転速度CAの所定時間の変化量を角加速度DCとして演算してもよい。
【0061】
制御部72は、後輪14の角加速度DRを演算する。角加速度DRは、後輪14の正回転時の加速度である。後輪14の正回転は、自転車10が前進するときの後輪14の回転方向に等しい。制御部72は、例えば、後輪14の回転速度RAを微分することによって角加速度DRを演算してもよく、後輪14の回転速度RAの所定時間の変化量を角加速度DRとして演算してもよい。
【0062】
制御部72は、第1のセンサ76が出力する信号に基づいて、モータ62を制御する。一例では、制御部72は、第1のセンサ76、第2のセンサ78、および、第3のセンサ80の出力に基づいて後輪14の空転およびスリップを検出し、モータ62の出力TMを低下させる第1の制御を実行する。具体的には、制御部72は、角加速度DC、人力駆動力Tの減少量DT、および、角加速度DRに基づいて後輪14の空転およびスリップを検出し、モータ62の出力TMを低下させる。
【0063】
第1の制御では、制御部72は、角加速度DCが第1の所定値DCX以上になり、かつ、人力駆動力Tの単位時間あたりの減少量DTが第2の所定値DTX以上になると、モータ62の出力TMを低下させる。制御部72は、回転体44の角加速度DCに基づいてモータ62の出力TMを低下させるとき、後輪14の回転速度RAと、クランク32の回転速度CAとに基づいて、モータ62を制御する。制御部72は、変速機構20が自転車10の変速比rを小さくするように動作していないとき、回転体44の角加速度DCに基づいてモータ62の出力TMを低下させる。
【0064】
また、制御部72は、回転体44の角加速度DCに基づいてモータ62の出力TMを低下させる制御を、後輪14の回転速度に基づいて停止する。制御部72は、角加速度DCが第1の所定値DCX以上になる前の回転体44の回転速度CAに基づいて、回転体44の角加速度DCに基づいてモータ62の出力TMを低下させる制御を停止する。
【0065】
図4を参照して、制御部72によって実行される第1の制御について説明する。本処理は制御装置70に電源が投入されている間、所定周期ごとに繰り返し実行される。
【0066】
制御部72は、ステップS11において、人力駆動力Tの減少量DTが第2の所定値DTX
以上か否かを判定する。制御部72は、人力駆動力Tの減少量DTが第2の所定値DTX
以上のとき、すなわち、人力駆動力Tが急峻に低下したと判定したとき、ステップS12に移る。制御部72は、人力駆動力Tの減少量DTが第2の所定値DTXより
小さいとき、所定周期後に再びステップS11の判定処理を実行する。第2の所定値DTXとしては、例えば−15ニュートンメートル/50ミリ秒が用いられる。第2の所定値DTXは、制御装置70に外部のコンピュータを接続することによって設定変更が可能である。
【0067】
制御部72は、ステップS12において、回転体44の角加速度DCが第1の所定値DCX以上か否かを判定する。制御部72は、回転体44の角加速度DCが第1の所定値DCX以上のとき、すなわち、回転体44の回転速度CAが急峻に上昇したと判定したとき、ステップS13に移る。制御部72は、回転体44の角加速度DCが第1の所定値DCX未満のとき、所定周期後に再びステップS11の判定処理を実行する。第1の所定値DCXとしては、例えば回転体44の30回転/50ミリ秒が用いられる。第1の所定値DCXは、制御装置70に外部のコンピュータを接続することによって設定変更が可能である。
【0068】
制御部72は、ステップS13において、後輪14の角加速度DRが第4の所定値DRX以上か否かを判定する。制御部72は、後輪14の角加速度DRが第4の所定値DRX以上のとき、すなわち、後輪14の回転速度RAが急峻に上昇したと判定したとき、ステップS14に移る。制御部72は、後輪14の角加速度DRが第4の所定値DRX未満のとき、所定周期後に再びステップS11の判定処理を実行する。第4の所定値DRXとしては、例えば後輪14の回転速度RAが50ミリ秒で200パーセント増加に相当する値が用いられる。第4の所定値DRXは、制御装置70に外部のコンピュータを接続することによって設定変更が可能である。
【0069】
制御部72は、ステップS14において変速比rを小さくする動作中か否かを判定する。シフトダウンが行われると、走行負荷等の条件が同一である場合、人力駆動力Tが低下し、回転体44の回転速度CAが上昇する。このため、ステップS14では、ステップS11およびステップS12の判定結果が変速比rを小さくする動作に起因するものか否かを判定する。制御部72は、変速比rを小さくする動作中ではないと判定した場合、ステップS15に移る。制御部72は、変速比rを小さくする動作中であると判定した場合、所定周期後に再びステップS11の判定処理を実行する。
【0070】
制御部72はステップS15において、推定値RXが後輪14の回転速度RA未満か否かを判定する。変速比rを小さくする動作が行われていない状態において後輪14が地面に接触しているとき、推定値RXと回転速度RAとが実質的に一致する。他方、変速比rを小さくする動作が行われていない状態において後輪14が地面に接触していないとき、推定値RXが回転速度RA未満になる。このため、制御部72は、推定値RXが後輪14の回転速度RA未満か否かを判定することによって後輪14が地面に接触しているスリップ状態か、後輪14が地面に接触していない空転状態かを判定する。
【0071】
制御部72は、推定値RXが後輪14の回転速度RA未満のとき、ステップS16に移り、自転車10の後輪14が空転状態であると判定し、ステップS17に移る。制御部72は、ステップS17において記憶部74から空転状態を判定する直前の後輪14の回転速度RAを目標値RYとして取得し、ステップS18に移行する。目標値RYは、例えば回転体44の角加速度DCが第1の所定値DCXになったときよりも所定時間前の後輪14の回転速度RAが選ばれる。所定時間は、例えば0.1〜1秒である。目標値RYは、例えば回転体44の角加速度DCが第1の所定値DCXになったときよりも所定時間前における後輪14の回転速度RAの平均値であってもよい。後輪14の回転速度RAの平均値は、予め定める時間の平均値である。予め定める時間は、例えば1〜5秒である。
【0072】
制御部72は、ステップS18においてモータ62の回転速度制御を実行し、ステップS19に移る。制御部72は、ステップS18においてモータ62の出力TMを低下させる、または、駆動を停止する。
【0073】
制御部72は、ステップS19において推定値RXが目標値RY以下になったか否かを判定する。制御部72は、推定値RXが目標値RYよりも大きいとき、ステップS18に戻る。制御部72は、ステップS19において推定値RXが目標値RY以下になったとき、ステップS20に移り、ステップS18にて実行したモータ62の回転速度制御を終了して、本処理を終了する。制御部72は、ステップS18〜S20の処理によって、推定値RXが目標値RYに到達するまでモータ62の回転速度制御が継続される。
【0074】
制御部72は、ステップS15において、推定値RXが後輪14の回転速度RA以上のとき、ステップS
21に移り、自転車10の後輪14がスリップ状態であると判定し、ステップS
22に移る。制御部72は、ステップS
22において記憶部74からスリップ状態を判定する直前の後輪14の回転速度RAを取得し、ステップS
23に移行する。制御部72は、ステップS
23においてスリップ時のモータ62の回転速度制御を実行し、ステップS
24に移る。制御部72は、ステップS
23においてモータ62の出力TMを低下させる、または、駆動を停止する。
【0075】
制御部72は、後輪14の回転速度RAが、回転体44の回転速度CAと自転車10の変速比rとに基づいて演算される後輪14の回転速度RAの推定値RXよりも大きいとき、後輪14の回転速度RAが、推定値RX以下のときよりも、モータ62の出力TMを大きく低下させるのが好ましい。このため、後輪14の回転速度RAと推定値RXとの比較結果以外の他の条件が同一である場合、ステップS18におけるモータ62の出力TMよりもステップS23におけるモータ62の出力TMの方が大きい。
【0076】
制御部72は、ステップS
24において推定値RXが目標値RY以下になったか否かを判定する。制御部72は、推定値RXが目標値RYよりも大きいとき、ステップS
23に戻る。制御部72は、ステップS24において推定値RXが目標値RY以下になったとき、ステップS20に移り、ステップS
23にて実行したモータ62の回転速度制御を終了して、本処理を終了する。制御部72は、ステップS
23、ステップS
24、および、ステップS20の処理によって、推定値RXが目標値RYに到達するまでモータ62の回転速度制御が継続される。
【0077】
自転車用駆動装置60によれば、以下の作用および効果を得られる。
制御部72は、回転体44の角加速度DCに基づいてモータ62の出力TMを低下させる。このため、後輪14のスリップまたは空転が生じたときにモータ62の出力TMが低下するため、自転車10の挙動の安定性が向上する。
【0078】
制御部72は、第1の制御においてモータ62の出力TMを低下させるとき、モータ62に制動動作をさせる。このため、後輪14のスリップまたは空転が生じたときに後輪14の回転速度RAを早期に適切な速度まで低下させることができる。
【0079】
制御部72は、第2のセンサ78の出力に基づいてモータ62の出力TMを低下させる。このため、回転体44の角加速度DCのみに基づいて後輪14のスリップまたは空転を検出する場合と比較して、後輪14のスリップまたは空転の検出精度を向上できる。
【0080】
制御部72は、回転体44の角加速度DCに基づいてモータ62の出力TMを低下させるとき、後輪14の回転速度RAと、クランク32の回転速度RAとに基づいて、モータ62を制御する。後輪14の回転速度RAと、クランク32の回転速度RAとの比較によって、後輪14が空転しているかスリップしているかの判定を行うことができるため、後輪14の空転およびスリップに適したモータ62の出力TMの制御を行うことができる。
【0081】
後輪14の空転時においては、後輪14が地面から離れていると想定される。このため、後輪14の回転速度RAが高いほど、後輪14が地面と接触したときの自転車10の挙動が不安定になるおそれがある。制御部72は、後輪14の回転速度RAが推定値RXよりも大きいとき、後輪14の回転速度RAが推定値RX以下のときよりも、モータ62の出力TMを大きく低下させることができる。このため、後輪14の空転時において自転車10の挙動を適切に安定させることができる。
【0082】
制御部72は、変速比rを小さくする動作が行われているときには回転体44の角加速度DCに基づいてモータ62の出力TMを低下させない。このため、変速比rを小さくすることに伴う後輪14の回転速度RAの上昇を後輪14のスリップまたは空転と誤検出するおそれを低減できる。
【0083】
(第2の実施形態)
図5および
図6を参照して、第2の実施形態の自転車用駆動装置60について説明する。第1の実施形態と共通する構成については、第1の実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。第2の実施形態の自転車用駆動装置60は、第1の実施形態の自転車用駆動装置60と同様の構成を有し、制御部72によって実行される制御が異なる。
【0084】
図5に示されるとおり、自転車10は、後輪14を制動する制動装置92を搭載している。制動装置92は、ブレーキ機構94およびアクチュエータ96を含む。制御部72は、アクチュエータ96を介してブレーキ機構94を制御する。ブレーキ機構94は、リムブレーキ機構およびディスクブレーキ機構のいずれであってもよい。アクチュエータ96は、たとえば電気モータ、ソレノイドなどを含む。
【0085】
図6を参照して、制御部72によって実行される第2の制御について説明する。
制御部72は、回転体44の角加速度DCに基づいてモータ62の出力TMを低下させるときに、制動装置92によって後輪14を制動させる。制御部72は、第2の制御において第1の実施形態の第1の制御のステップS18の処理に代えてステップS31の処理を実行し、ステップS23の処理に代えてステップS32の処理を実行し、ステップS20の処理に代えてステップS33の処理を実行する。
【0086】
制御部72は、ステップS31においてブレーキ制御を実行し、ステップS19に移る。制御部72は、ステップS31においてブレーキ機構94を動作させて後輪14の回転速度を低下させる。制御部72は、ステップS19において推定値RXが目標値RYに到達したと判定したとき、ステップS33においてブレーキ制御を終了する。
【0087】
制御部72は、ステップS32においてブレーキ制御を実行し、ステップS24に移る。制御部72は、ステップS32においてブレーキ機構94を動作させ、後輪14の回転速度を低下させる。制御部72は、ステップS24において推定値RXが目標値RYに到達したと判定したとき、ステップS33においてブレーキ制御を終了する。
【0088】
制御部72は、後輪14の回転速度RAが、回転体44の回転速度CAと自転車10の変速比rとに基づいて演算される後輪14の回転速度RAの推定値RXよりも大きいとき、後輪14の回転速度RAが、推定値RX以下のときよりも、ブレーキ機構94の制動力を大きくする。
第2の実施形態の自転車用駆動装置60によれば、第1の実施形態に準じた効果に加えて、以下の作用および効果を得られる。
【0089】
ブレーキ機構94を用いて後輪14の回転速度を制御するので、モータ62のみを制御して後輪14の回転速度を制御するよりも後輪14の回転速度RAが目標値RYにまで達する時間を短くすることができる。
【0090】
(第3の実施形態)
図7および
図8を参照して、第3の実施形態の自転車用駆動装置60について説明する。第1の実施形態と共通する構成については、第1の実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。第3の実施形態の自転車用駆動装置60は、第1の実施形態の自転車用駆動装置60と同様の構成を有し、制御部72によって実行される制御が異なる。
【0091】
制御部72は、クランク32の位相に応じてモータ62の出力TMを低下させる。制御部72は、第3のセンサ80が出力する信号に基づいてモータ62を制御する。制御部72は、角加速度DCが第1の所定値DCX以上になったときのクランク32の位相に基づいて、モータ62の出力TMを低下させる。制御部72は、回転体44の角加速度DCに基づいてモータ62の出力TMを低下させるとき、クランク32の位相が上死点または下死点に対応する位相にあるときよりも、クランク32の位相が上死点と下死点との中間位置に対応する位相にあるときの方が、モータ62の出力TMが大きく低下するようにモータ62を制御する。
【0092】
制御部72は、
図3のステップS18において
図7に示す処理を実行する。制御部72は、ステップS41において角加速度DCが第1の所定値DCX以上になったときのクランク32の位相GXを取得し、ステップS42に移行する。制御部72は、ステップS42において、クランク32の位相GXに基づいてモータ62の出力TMを設定する。具体的には、制御部72は、クランク32の位相が上死点または下死点に対応する位相にあるときよりも、クランク32の位相が上死点と下死点との中間位置に対応する位相にあるときの方が、モータ62の出力TMが大きく低下するようにモータ62の出力TMを設定する。制御部72は、ステップS42において設定したモータ62の出力TMに応じてモータ62の出力TMを低下させる。
【0093】
制御部72は、
図3のステップS23において
図8に示す処理を実行する。制御部72は、ステップS43において角加速度DCが第1の所定値DCX以上になったときのクランク32の位相GXを取得し、ステップS44に移行する。制御部72は、ステップS44において、クランク32の位相GXに基づいてモータ62の出力TMを設定する。具体的には、制御部72は、クランク32の位相が上死点または下死点に対応する位相にあるときよりも、クランク32の位相が上死点と下死点との中間位置に対応する位相にあるときの方が、モータ62の出力TMが大きく低下するようにモータ62の出力TMを設定する。制御部72は、ステップS44において設定したモータ62の出力TMに応じてモータ62の出力TMを低下させる。
【0094】
第3の実施形態の自転車用駆動装置60によれば、第1の実施形態に準じた効果に加えて、以下の作用および効果を得られる。
クランク32の位相が上死点と下死点との中間位置にあるとき、人力駆動力Tは大きくなる。このため、人力駆動力Tに基づいてアシスト力が設定されるモータ62の出力も大きくなる。制御部72は、回転体44の角加速度DCに基づいてモータ62の出力TMを低下させるとき、クランク32の位相が上死点または下死点に対応する位相にあるときよりも、クランク32の位相が上死点と下死点との中間位置に対応する位相にあるときの方が、モータ62の出力TMが大きく低下するようにモータ62を制御する。このため、出力を低下させる前のモータ62の出力TMが大きいとき、モータ62の出力TMを適切に小さくすることができる。
【0095】
(第4の実施形態)
図3、
図4、および、
図9を参照して、第4の実施形態の自転車用制御装置70について説明する。第1の実施形態と共通する構成については、第1の実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。第4の実施形態の自転車用制御装置は、第1の実施形態の自転車用制御装置70と同様の構成を有し、制御部72によって実行される制御が異なる。本実施形態において、モータ62と回転体44との間の動力伝達経路には、ワンウェイクラッチが設けられていない。
【0096】
自転車10は、第1の動力伝達経路18Aおよび第2の動力伝達経路18Bを含む。第1の動力伝達経路18Aは、人力駆動力のペダル38から後輪14までが含まれる。ペダル38は、人力駆動力の入力部を含む。一例では、第1の動力伝達経路18Aは、ペダル38、クランクアーム46、第1の回転体44A、変速機構20、および、後輪14を含む。第1の回転体44Aは、クランク軸を含む。第2の動力伝達経路18Bは、人力駆動力をアシストするモータ62から後輪14までが含まれる。一例では、第2の動力伝達経路18Bは、モータ62、変速機構20、および、後輪14を含む。なお、第2の動力伝達経路18Bは、モータ62と第1の回転体44Aとの間に設けられる減速機構を含んでもよい。
【0097】
図3に示す制御装置70は、駆動ユニット100の制御装置である。駆動ユニット100は、クランク32の回転をモータ62に伝達可能である。制御部72は、第1の動力伝達経路18Aに含まれる第1の回転体44Aの角加速度DCに基づいて、モータ62による負荷を制御する。具体的には、
図4のステップS17およびステップS22において、モータ62の負荷量を演算し、ステップS18およびステップS23において、モータ62の出力TMを低下させてモータ62によるアシストを停止させるとともに、モータ62が負荷として機能するように、モータ62に制動動作をさせる。制御部72は、モータ62を制動動作させる場合、エネルギを廃棄してもよいが、回生動作させてエネルギをバッテリ52に回収することが好ましい。この場合、第1の回転体44Aの角加速度DCに基づいてモータの出力TMを低下させるときのモータ62の制動動作は回生動作を含む。制御装置70は、ステップS18では、ステップS23よりも、負荷量が大きくなるようにモータ62を制御することが好ましい。第4の実施形態によれば、第1の実施形態に準じた効果を奏することができる。
【0098】
(第5の実施形態)
図10を参照して、第5の実施形態の自転車用制御装置70について説明する。第1の実施形態と共通する構成については、第1の実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。第5の実施形態の自転車用制御装置70は、第1の実施形態の自転車用制御装置70と同様の構成を有し、制御部72によって実行される制御が異なる。
【0099】
制御部72は、モータ62を人力駆動力Tに応じて制御し、回転体44の角加速度DCに応じて、人力駆動力Tが減少するときの、人力駆動力Tの変化に対するモータ62の応答速度(以下、「応答速度K」)を変更する。クランクアーム46の位置、すなわち、クランク32の位相が上死点または下死点から上死点と下死点との中間位置に向かってクランク32が回転するとき、人力駆動力Tは増加する。クランク32の位相が中間位置から上死点または下死点に向かってクランク32が回転するとき、人力駆動力Tは減少する。制御部72は、人力駆動力Tが減少するときの応答速度Kを人力駆動力Tが増加するときの応答速度Kよりも低くすることによって、人力駆動力Tが減少するときのモータ62の出力TMが減少しにくくなるようにしてモータ62の出力TMの変動を小さくする。
【0100】
制御部72は、回転体44の角加速度DCが第3の所定値DCD以上になると、応答速度Kを高くする。クランク32の位相が中間位置から上死点または下死点に向かってクランク32が回転するとき、人力駆動力Tは減少するため、人力駆動力Tが減少するときの応答速度Kが高くなることによって、人力駆動力Tの減少にともなってモータ62の出力TMが低下しやすくなる。制御部72は、人力駆動力Tが減少するときにおいて後輪14のスリップまたは空転が生じるような角加速度DCになったときに、応答速度Kを高くすることによって、モータ62の出力TMを低下させることができる。
【0101】
制御部72は、自転車10のクランクアーム46が上死点または下死点を通過したとき、回転体44の角加速度DCに基づいてモータ62の出力TMを低下させる制御を停止する。すなわち、制御部72は、人力駆動力Tの変化が低下から上昇に切り替わったときには、応答速度Kを高くする処理を停止する。
【0102】
制御部72によって実行されるモータ制御について説明する。モータ制御は、制御部72に電力が供給されるとき、所定周期ごとに繰り返される。
制御部72は、ステップS51において人力駆動力Tを演算する。次に、制御部72は、ステップS52において、人力駆動力Tに基づいて補正駆動力TXを演算し、ステップS53に移行する。ステップS52では、例えば、制御部72は、一次ローパスフィルタを用いることによって人力駆動力Tに対応する補正駆動力TXを演算する。一次ローパスフィルタは、時定数を含む。このため、時定数に応じて人力駆動力Tの変化に対して遅れた補正駆動力TXが演算される。
【0103】
制御部72は、ステップS53において人力駆動力Tが低下しているか否かを判定する。例えば、制御部72は、今回の演算周期における人力駆動力Tが前回の演算周期における人力駆動力Tよりも小さいとき、人力駆動力Tが低下していると判定する。
【0104】
制御部72は、ステップS53において人力駆動力Tが低下していると判定したとき、ステップS54において回転体44の角加速度DCが第3の所定値DCD以上か否かを判定する。制御部72は、回転体44の角加速度DCが第3の所定値DCD未満と判定したとき、ステップS55に移行し、ステップS52において演算した補正駆動力TXに対応するモータ62の出力TMを演算し、ステップS56に移行する。制御部72は、ステップS56においてモータ62の出力TMに基づいてモータ62を制御し、所定周期後に再びステップS51からの処理を実行する。
【0105】
制御部72は、ステップS54において、回転体44の角加速度DCが第3の所定値DCD以上と判定したとき、ステップS57に移行し、人力駆動力Tに対応するモータ62の出力TMを演算し、ステップS56に移行する。制御部72は、ステップS56においてモータ62の出力TMに基づいてモータ62を制御し、所定周期後に再びステップS51からの処理を実行する。このため、回転体44の角加速度DCが第3の所定値DCD以上のときには、モータ62の出力TMは、補正駆動力TXを用いるときよりも応答速度Kが高くなる。
【0106】
制御部72は、ステップS53において人力駆動力Tが低下していないと判定したとき、ステップS58において人力駆動力Tが補正駆動力TXよりも大きいか否かを判定する。制御部72は、ステップS58において人力駆動力Tが補正駆動力TXよりも大きいと判定したとき、ステップS59において人力駆動力Tに対応するモータ62の出力TMを演算し、ステップS56に移行する。制御部72は、ステップS56においてモータ62の出力TMに基づいてモータ62を制御し、所定周期後に再びステップS51からの処理を実行する。
【0107】
制御部72は、ステップS58において人力駆動力Tが補正駆動力TX以下と判定したとき、ステップS60において補正駆動力TXに対応するモータ62の出力TMを演算し、ステップS56に移行する。制御部72は、ステップS56においてモータ62の出力TMに基づいてモータ62を制御し、所定周期後に再びステップS51からの処理を実行する。すなわち、人力駆動力Tが増加している期間においては、人力駆動力Tおよび補正駆動力TXのうちの大きな方に基づいてモータ62が制御される。第5の実施形態によれば、第1の実施形態に準じた効果を奏することができる。
【0108】
(変形例)
上記各実施形態に関する説明は、本発明に従う自転車用駆動装置および自転車用制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う自転車用駆動装置および自転車用制御装置は、例えば以下に示される上記各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0109】
・第1の実施形態の第1の制御を
図11に示す第3の制御に変更することもできる。第3の制御において、制御部は72、回転体44の角加速度DCに基づいてモータ62の出力TMを低下させる制御を、予め定める時間に応じて停止することもできる。すなわち、制御部72は、
図4のステップS19の処理に代えて、
図11に示すステップS25の処理を実行する。制御部72は、ステップS25においてモータの回転速度制御を実行してから予め定める時間が経過したと判定したとき、ステップS20に移行し、モータの回転速度制御を終了する処理に変更する。また、制御部72は、
図4のステップS24の処理に代えて、
図11に示すステップS26の処理を実行する。制御部72は、ステップS26においてモータの回転速度制御を実行してから予め定める時間が経過したと判定したとき、ステップS20に移行し、モータの回転速度制御を終了する処理に変更する。この場合、ステップS25またはステップS26において、モータの回転速度制御を実行してから予め定める時間が経過するまで、モータの回転速度制御は継続される。
【0110】
・第1および第2の実施形態において、制御部72は、回転体44の角加速度DCに基づいてモータ62の出力TMを低下させるとき、モータ62に制動動作をさせてもよい。この場合、モータ62と回転体44との間の動力伝達経路には、ワンウェイクラッチが設けられない。制動動作は、回生動作を含む。空転時のモータ62の回転速度制御において、制御部72は、モータ62の出力TMを低下させるとともに、さらにモータ62に制動動作をさせて、人力駆動力伝達経路18に伝達される回転力に負荷を与える。またスリップ時のモータ62の回転速度制御においては、制御部72は、モータ62の出力TMを低下させるとともに、さらにモータ62に制動動作をさせて、人力駆動力伝達経路18に伝達される回転力に負荷を与える。制御部72は、モータ62を制動動作させる場合、エネルギを廃棄してもよいが、回生動作させてエネルギをバッテリ52に回収することが好ましい。制御装置70は、ステップS18では、ステップS23よりも、負荷が大きくなるようにモータ62を制御することが好ましい。
【0111】
・第2の実施形態において、自転車10からモータ62を省略することもできる。
・第2の実施形態において、制御部72は、第2の制御の各ステップS31,S32においてブレーキ制御に加えて第1の制御のステップS18またはステップS23と同様のモータ62の制御を実行してもよい。
【0112】
・第4の実施形態において、制御部72は、第1の回転体44Aの角加速度DCではなく、第2の動力伝達経路18Bに含まれる第2の回転体の角加速度DCに基づいて、モータ62による負荷を制御することもできる。第2の回転体は、モータ62、フロントスプロケット36、チェーン42、リアスプロケット40、および、後輪14から選ばれる。なお、第2の動力伝達経路18Bがモータ62と第1の回転体44Aとの間に設けられる減速機構を含む場合、第2の回転体は減速機構を構成する複数の回転体の中から選ぶこともできる。この場合、第1のセンサ76は、第2の回転体の回転速度に応じた信号を出力するが、検出対象が第1の回転体44Aから第2の回転体に変更されるだけであり、第1のセンサ76の構成自体に変更はない。
【0113】
・各実施形態において制御部72は、回転体44,第1の回転体44Aの角加速度DCに基づいてモータ62の出力TMを低下させるとき、モータ62の出力TMを段階的に小さくすることもできる。具体的には、
図4のステップS18,S19、ステップS23,S24、
図6のステップS18,S31、および、ステップS23,S32において、推定値RXが目標値RYに到達するまで、モータ62の出力TMを段階的に小さくする。
【0114】
・各実施形態において制御部72は、角加速度DCが第1の所定値DCX以上になる前の後輪14の回転速度RAに基づいて、回転体44の角加速度DCに基づいてモータ62の出力TMを低下させる制御を停止することもできる。具体的には、
図4のステップS19,S24において、角加速度DCが第1の所定値DCX以上になる前の後輪14の回転速度RAに到達したとき、ステップS20においてモータ62の回転速度制御を終了する。また、
図6のステップS31,S32において、角加速度DCが第1の所定値DCX以上になる前の後輪14の回転速度RAに到達したとき、ステップS33においてブレーキ制御を終了する。
【0115】
・各実施形態において変速機50は、変速比rを変更することができれば、クランク軸とフロントスプロケット36との間の動力伝達経路に設けられてもよく、後輪14に設けられてもよい。このような変速機50は、例えば、遊星歯車機構を含む。変速機50がクランク軸とフロントスプロケット36との間の動力伝達経路に設けられる場合、変速機50は内装変速機によって実現可能である。変速機50を後輪14に設ける場合、変速機50は内装変速機によって実現可能である。遊星歯車機構は、遊星ローラ機構に変更してもよい。内装変速機は、遊星歯車機構の歯車の連結状態を変更することによって変速比rを変更するものであってもよく、遊星歯車機構の歯車をモータによって回転させることによって変速比rを変更する差動遊星歯車機構であってもよい。
【0116】
・上記変形例において、第2の変速機50Bをクランク軸とフロントスプロケット36との間の動力伝達経路に設けられる内装変速機に変更することもできる。また、第1の変速機50Aを後輪14に設けられる内装変速機とすることもできる。
【0117】
・各実施形態において回転体44,44Aは、ペダル38、クランクアーム46、フロントスプロケット36、チェーン42、および、リアスプロケット40のいずれかを含むように変更することもできる。回転体44,44Aは、ペダル軸であってもよく、ペダル本体であってもよい。この場合、第1のセンサによって、ペダル軸に対するペダル本体の角加速度、ペダル本体のペダル軸に対する角加速度を検出する。また、後輪14の車軸14Aまわりに内装変速機を備える自転車においては、回転体44を内装変速機に含まれる回転体に変更することもできる。要するに、人力駆動力が入力される入力部から後輪14との結合部までに含まれる回転体であれば、いずれの回転体であっても回転体44,44Aとして用いることができる。
【0118】
・各実施形態において制御部72は、後輪14の回転速度RA、クランク軸の回転速度、および人力駆動力Tに基づいて、自転車10の走行抵抗を演算し、走行抵抗の単位時間当たりの変化量に基づいて、後輪14にスリップまたは空転が生じていると判定することもできる。走行抵抗は、自転車10が出力する運動量から自転車10に入力した運動量を減算して求めることができる。自転車10が出力する運動量は、後輪14の回転速度RAと、自転車10およびライダーの重量とに基づいて演算することができる。自転車10に入力した運動量は、人力駆動力Tおよびクランク軸の回転速度とに基づいて演算することができる。走行抵抗が急激に変化し、たとえば走行抵抗の単位時間当たりの変化量が所定値よりも大きい場合、後輪14がスリップまたは空転している可能性が高くなる。制御部72は、ステップS11〜ステップS14の処理に加えて、自転車10の走行抵抗の単位時間当たりの変化量が所定値よりも大きいか否かを判定してもよいし、ステップS11〜ステップS14の処理に代えて走行抵抗の単位時間当たりの変化量が所定値よりも大きい否かを判定してもよい。
【0119】
・第1の実施形態の第1の制御を
図12に示す第4の制御に変更することもできる。この第4の制御においては、
図4のステップS11、および、S13〜S19の処理を省略している。制御部72は、回転体44の角加速度DCが第1の所定値DCX以上になると、モータ62の出力TMを低下させる。第4の制御において、第4の実施形態のようにモータ62を負荷として動作させてもよい。第1の所定値DCXは、後輪14がスリップしてないと考えられる値に選ばれていてもよい。この場合、スリップする前にモータ62の出力TMを低下させたり、モータ62を負荷として機能させたりするので、後輪14がスリップしにくくなる。
【0120】
・第2の実施形態の第2の制御を
図13に示す第5の制御に変更することもできる。この制御においては、
図6のステップS11、S13〜S17、S21、S31、および、S19の処理を省略している。制御部72は、回転体44の角加速度DCが第1の所定値DCX以上になると、制動装置92によって後輪14を制動する。第2の制御および4の制御において、第4の実施形態のようにモータ62を負荷として動作させてもよい。第1の所定値DCXは、後輪14がスリップしてないと考えられる値に選ばれていてもよい。この場合、スリップする前にモータ62の出力TMを低下させたり、モータ62を負荷として機能させたりするので、後輪14がスリップしにくくなる。
【0121】
・
図4の第1の制御において、ステップS11,S13,S14,S16,S21の少なくとも1つを省略してもよい。
図4の第1の制御において、ステップS15〜S19,S21の処理を省略してもよい。
図4の第1の制御において、ステップS11,S13,S14,S16,S21の各処理と、ステップS15〜S19,S21の処理とは、任意に省略することができる。ステップを省略する場合、省略されるステップの処理に必要な情報を取得するためのセンサも省略することができる。
【0122】
・
図6の第2の制御において、ステップS11,S13,S14,S16,S21の少なくとも1つを省略してもよい。
図6の第2の制御において、ステップS15〜S17,S31,S19,S21の処理を省略してもよい。
図6の第2の制御において、ステップS11,S13,S14,S16,S21の各処理と、ステップS15〜S17,S31,S19,S21の処理とは任意に省略することができる。ステップを省略する場合、省略されるステップの処理に必要な情報を取得するためのセンサも省略することができる。
【0123】
・第1、第3、および第4の実施形態において制御部72は、モータ62を、後輪14の回転速度RAが目標値RYになるまで出力を低下、または負荷として機能させているが、代わりに所定時間、モータ62の出力TMを低下させたり、モータ62を負荷として機能させたりしてもよい。また、第2の実施形態において制御部72は、ブレーキ機構94を後輪14の回転速度RAが目標値RYになるまで動作させているが、代わりに所定時間、ブレーキ機構94を動作させてもよい。
【0124】
・第5の実施形態のモータ制御を
図14に示すモータ制御に変更することもできる。この制御においては、制御部は72、回転体44の角加速度DCに基づいてモータ62の出力TMを低下させる制御を、予め定める時間に応じて停止する。制御部72は、応答速度Kを高くした後、所定期間が経過すると、応答速度Kを高くする制御を停止する。具体的には、制御部72は、ステップS53において人力駆動力Tが低下していると判定したとき、ステップS54において回転体44の角加速度DCが第3の所定値DCD以上か否かを判定する。制御部72は、回転体44の角加速度DCが第3の所定値DCD未満と判定したとき、ステップS55に移行し、ステップS52において演算した補正駆動力TXに対応したモータ62の出力TMを演算し、ステップS56に移行する。制御部72は、ステップS56においてモータ62の出力TMに基づいてモータ62を制御し、所定周期後に再びステップS51からの処理を実行する。制御部72は、ステップS54において、回転体44の角加速度DCが第3の所定値DCD以上と判定したとき、ステップS57に移行し、人力駆動力Tに対応したモータ62の出力TMを演算し、ステップS61に移行する。制御部72は、ステップS61においてモータ62の出力TMに基づいてモータ62を制御し、ステップS62に移行する。制御部72は、ステップS62において回転体44の角加速度DCに基づいてモータ62の出力を低下させる制御を開始してから、所定期間が経過したか否かを判定する。例えば、制御部72は、ステップS54における肯定判定の継続期間が所定期間を超えたか否かを判定する。制御部72は、ステップS62において所定期間が経過しているとき、所定周期後に再びステップS51からの処理を実行する。制御部72は、ステップS62において所定期間が経過していないとき、ステップS63において人力駆動力Tを演算し、再びステップS57からの処理を繰り返す。すなわち、制御部72は、応答速度Kを高くした後に所定期間が経過するまでは応答速度Kが高い状態を維持する。制御部72は、応答速度Kを高くした後に所定期間が経過したときには、応答速度Kを後輪14のスリップまたは空転が生じていないときの応答速度Kに戻す。
【0125】
・
図14に示す変形例のモータ制御を
図15に示すモータ制御に変更することもできる。この制御においては、制御部72は、応答速度Kを高くした後、自転車10のクランクアーム46が上死点または下死点を通過したとき、応答速度Kを高くする制御を停止する。具体的には、制御部72は、ステップS53において人力駆動力Tが低下していると判定したとき、ステップS54において回転体44の角加速度DCが第3の所定値DCD以上か否かを判定する。制御部72は、回転体44の角加速度DCが第3の所定値DCD未満と判定したとき、ステップS55に移行し、ステップS52において演算した補正駆動力TXに対応したモータ62の出力TMを演算し、ステップS56に移行する。制御部72は、ステップS56においてモータ62の出力TMに基づいてモータ62を制御し、所定周期後に再びステップS51からの処理を実行する。制御部72は、ステップS54において、回転体44の角加速度DCが第3の所定値DCD以上と判定したとき、ステップS57に移行し、人力駆動力Tに対応したモータ62の出力TMを演算し、ステップS61に移行する。制御部72は、ステップS61においてモータ62の出力TMに基づいてモータ62を制御し、ステップS64に移行する。制御部72は、ステップS64においてクランクアーム46が上死点または下死点を通過したか否かを判定する。制御部72は、ステップS64においてクランクアーム46が上死点または下死点を通過しているとき、所定周期後に再びステップS51からの処理を実行する。制御部72は、ステップS64においてクランクアーム46が上死点または下死点を通過していないとき、ステップS63において人力駆動力Tを演算し、再びステップS57からの処理を繰り返す。すなわち、制御部72は、応答速度Kを高くした後にクランクアーム46が上死点または下死点を通過するまでは応答速度Kが高い状態を維持する。制御部72は、応答速度Kを高くした後にクランクアーム46が上死点または下死点を通過したときには、応答速度Kを後輪14のスリップまたは空転が生じていないときの応答速度Kに戻す。
【0126】
・
図14に示す変形例のモータ制御を
図16に示すモータ制御に変更することもできる。この制御においては、制御部72は、人力駆動力Tが所定の駆動力TA以上になったとき、回転体44の角加速度DCに基づいてモータ62の出力を低下させる制御を停止する。具体的には、制御部72は、ステップS53において人力駆動力Tが低下していると判定したとき、ステップS54において回転体44の角加速度DCが第3の所定値DCD以上か否かを判定する。制御部72は、回転体44の角加速度DCが第3の所定値DCD未満と判定したとき、ステップS55に移行し、ステップS52において演算した補正駆動力TXに対応したモータ62の出力TMを演算し、ステップS56に移行する。制御部72は、ステップS56においてモータ62の出力TMに基づいてモータ62を制御し、所定周期後に再びステップS51からの処理を実行する。制御部72は、ステップS54において、回転体44の角加速度DCが第3の所定値DCD以上と判定したとき、ステップS57に移行し、人力駆動力Tに対応したモータ62の出力TMを演算し、ステップS61に移行する。制御部72は、ステップS61においてモータ62の出力TMに基づいてモータ62を制御し、ステップS65に移行する。制御部72は、ステップS65において人力駆動力Tが所定の駆動力TA以上になったか否かを判定する。制御部72は、ステップS65において人力駆動力Tが所定の駆動力TA以上になったとき、所定周期後に再びステップS51からの処理を実行する。制御部72は、ステップS65において人力駆動力Tが所定の駆動力TA以上になっていないとき、ステップS63において人力駆動力Tを演算し、再びステップS57からの処理を繰り返す。すなわち、制御部72は、応答速度Kを高くした後に人力駆動力Tが所定の駆動力TA以上になるまでは応答速度Kが高い状態を維持する。制御部72は、応答速度Kを高くした後に人力駆動力Tが所定の駆動力TA以上になったときには、応答速度Kを後輪14のスリップまたは空転が生じていないときの応答速度Kに戻す。
【0127】
・第5の実施形態のモータ制御を
図17に示すモータ制御に変更することもできる。この制御においては、制御部72は、自転車の後輪14がスリップまたは空転したとき、かつ、人力駆動力Tが減少するときの、人力駆動力Tの変化に対するモータ62の応答速度Kを高くする。具体的には、制御部72は、ステップS53において人力駆動力Tが低下していると判定したとき、ステップS66において後輪14がスリップまたは空転しているか否かを判定する。制御部72は、後輪14がスリップまたは空転していないと判定したとき、ステップS55に移行し、ステップS52において演算した補正駆動力TXに対応したモータ62の出力TMを演算し、ステップS56に移行する。制御部72は、ステップS56においてモータ62の出力TMに基づいてモータ62を制御し、所定周期後に再びステップS51からの処理を実行する。制御部72は、ステップS66において後輪14がスリップまたは空転していると判定したとき、ステップS57に移行し、人力駆動力Tに対応したモータ62の出力TMを演算し、ステップS56に移行する。制御部72は、ステップS56においてモータ62の出力TMに基づいてモータ62を制御し、所定周期後に再びステップS51からの処理を実行する。このため、自転車の後輪14がスリップまたは空転したとき、人力駆動力Tが減少するときの、人力駆動力Tの変化に対するモータ62の応答速度Kが高くなるため、モータ62の出力が低下しやすくなる。ステップS53における後輪14のスリップまたは空転の判定は、回転体44の角加速度DCを用いてもよく、後輪14の回転速度を用いてもよく、後輪14にかかる荷重を用いてもよい。また、前輪12と後輪14との回転速度差に基づいて後輪14のスリップまたは空転を判定することもできる。要するに、後輪14のスリップまたは空転の判定が行える構成であればいずれの構成を採用することもできる。
【0128】
・第5の実施形態において、回転体44の角加速度DCが第3の所定値DCD以上と判定したとき、時定数を小さくすることによって、応答速度Kを高くすることもできる。時定数が「0」の場合、モータ62の出力は、人力駆動力Tに対応したモータ62の出力TMを演算する場合と等しくなる。
【0129】
・各実施形態において、制御部72は、モータ62を人力駆動力Tに応じて制御し、回転体44の角加速度DCに応じて、モータ62の出力TMの増減を繰り返すことによってモータ62の出力TMを低下させることもできる。
図18は、モータ62の出力TMを増減させる様子を示すタイミングチャートである。
図18の時刻t10は、第1の実施形態においては回転体44の角加速度DCが第1の所定値DCX以上になったことに基づいてモータの回転速度制御の実行が開始された時刻に相当する。
図18の時刻t10は、第5の実施形態においては、回転体44の角加速度DCが第3の所定値DCD以上になったことに基づいて人力駆動力Tに対応したモータの出力TMによるモータ62の制御を開始した時刻を示す。時刻t10以降において、制御部72は、所定周期ごとにモータ62の出力TMを人力駆動力Tに対応させる状態と、モータ62の駆動を停止する状態とに切り替えることによって、モータ62の出力TMの増減を繰り返している。第5の実施形態では、制御部72は、所定周期ごとにモータ62の出力TMを補正駆動力TXに対応する状態と人力駆動力Tに対応する状態に切り替えることによってモータ62の出力TMの増減を繰り返すようにしてもよい。
【0130】
・上記変形例において、制御部72は、モータ62の駆動を停止させる制御と人力駆動力Tに応じたモータ62の出力TMでモータ62を駆動させる制御を繰り返すことによって、モータ62の出力TMの増減を繰り返すこともできる。
【0131】
・各実施形態において、自転車用駆動装置60は、モータ62と回転体44,44Aとの間に設けられる減速機構を含んでもよい。
・各実施形態の自転車用制御装置70は、前輪12を駆動するタイプの自転車の駆動装置の制御にも適用可能であり、この場合、駆動輪は前輪である。
【0132】
・各実施形態において、変速機構20を省略することができる。この場合、第1〜第3の実施形態の制御部72は、第1および第2の制御においてステップS14の処理を省略する。
【0133】
(付記)
前記駆動輪を制動する制動装置の制御装置であって、
人力駆動力の入力部から駆動輪までの第1の動力伝達経路に含まれる第1の回転体の加速度、または人力駆動力をアシストするモータから前記駆動輪までの第2の動力伝達経路に含まれる第2の回転体の加速度に基づいて、前記制動装置に前記駆動輪を制動させる制御部を含む、自転車の制御装置。